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特開2024-43524ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物、それを得るための方法、及びそれを含む化粧用組成物又は皮膚科学組成物
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  • 特開-ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物、それを得るための方法、及びそれを含む化粧用組成物又は皮膚科学組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043524
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物、それを得るための方法、及びそれを含む化粧用組成物又は皮膚科学組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240322BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20240322BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20240322BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/49
A61K36/752
A61P17/16
A61K31/352
A61K31/7048
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023150305
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】22196220
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521440585
【氏名又は名称】シャネル・パルファム・ボーテ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・リアック
(72)【発明者】
【氏名】マエヴァ・ジレ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB172
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC662
4C083AC682
4C083AC712
4C083AC792
4C083AC841
4C083AC852
4C083AD052
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD532
4C083AD572
4C083AD602
4C083AD632
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC21
4C083CC22
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE11
4C083EE23
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086EA11
4C086GA17
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C088AB62
4C088AC04
4C088BA10
4C088BA14
4C088BA23
4C088BA32
4C088CA06
4C088CA17
4C088MA16
4C088MA28
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZA92
(57)【要約】
【課題】落屑を制限及び/又は防止し、それによって、皮膚の快適性に寄与するための、皮膚又は頭皮の過度な落屑に対して作用する新規の活性剤を手に入れる必要がある。
【解決手段】本発明は、ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物、特に皮膚の落屑に対する予防的な効果を有するそのような抽出物を含む化粧用組成物、及びその調整方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘスペリジン、ノビレチン、及びイソシネンセチンの混合物を含む、ヒラミレモン(Citrus depressa)の皮のアルコール抽出物。
【請求項2】
- 乾燥抽出物の重量に対して、0.1~5質量%、好ましくは0.5~2質量%のヘスペリジン、
- 0.1~5質量%、好ましくは1~2質量%のノビレチン、
- 0.1~3質量%、好ましくは0.5~1質量%のイソシネンセチンを含み、
100分率は、乾燥抽出物の質量に対する質量で表される、請求項1に記載のアルコール抽出物。
【請求項3】
ヘスペリジン、ノビレチン、及びイソシネンセチンは、0.5/1/1.5及び1.5/3/4の間のヘスペリジン/ノビレチン/イソシネンセチンの質量比、好ましくは1.1/1.4/0.7の質量比で存在する、請求項1又は2に記載のアルコール抽出物。
【請求項4】
化粧的又は薬学的に許容可能な媒体中に、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒラミレモンの皮から抽出されるアルコール抽出物を含む、化粧用組成物又は皮膚科学組成物。
【請求項5】
外用塗布用に適することを特徴とする、請求項4に記載の化粧用組成物又は皮膚科学組成物。
【請求項6】
以下の工程:
a)少なくとも一種のアルコール溶媒で、事前に乾燥され、すりつぶされたヒラミレモンの皮から抽出する工程;
b)工程a)から得られた混合物をろ過し、任意選択で活性炭上の吸着により、得られたろ液を脱色する工程;
c)乾燥抽出物をエバポレーションで、乾燥抽出物含有量5~20%、好ましくは9~12%に濃縮する工程;
d)c)で得られた混合物を、少なくとも6時間、4つの区別できる相が得られるまで、静置する工程;
e)工程d)で形成された相を、二つの固体及びオイル状の下部相、並びにエッセンシャルオイルの上部層の除去により、分離し、ヒラミレモンの皮の抽出物を含むアルコール相を収集する工程;
を含む、ヒラミレモンの皮から抽出する方法。
【請求項7】
工程a)が50℃~70℃の温度で、1時間から5時間エタノールで実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抽出が、二つの工程:
a)事前に乾燥され、すりつぶされたヒラミレモンの皮を、50℃~70℃の温度で1時間から5時間エタノールで第一抽出し、その後50μm~150μmにふるいにかける工程;
a')工程a)で得られたヒラミレモンの皮の残渣を、50℃~70℃の温度で1時間から5時間エタノールで第二抽出し、その後50μm~150μmのふるいにかける工程;
で行われる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
工程b)におけるろ過は、30μm、好ましくは15μmの閾値まで実施され、活性炭上のろ液の脱色は、1時間~6時間、好ましくは3時間行われ、その後炭は、5μm、好ましくは2μmの閾値までのろ過により除去される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
以下の工程:
f)工程e)において収集されたアルコール画分を5μm、好ましくは2μmの閾値にろ過し、その後別のアルコール溶媒でろ過された抽出物を最終希釈する工程、
g)工程a)で導入された抽出溶媒を、抽出溶媒の残留濃度が1%未満、好ましくは0.5%未満に達するまで蒸発させる工程、
h)g)で得られた混合物を、少なくとも6時間静置し、その後5μm、好ましくは2μmの閾値までろ過する工程、
をさらに含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
過度な落屑を制限/保護し、皮膚の快適性に寄与するための、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒラミレモンの皮のアルコール抽出物の化粧的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒラミレモン(Citrus depressa)の皮の抽出物、それを得るための方法、それを含有する化粧用組成物又は皮膚科学組成物、及びその化粧的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、主に3つの層で構成されており、最外層から、表皮、真皮、及び皮下組織となっている。
【0003】
皮膚の外部層である表皮は、重層化し、外部攻撃から皮膚を保護することに大きく寄与している。それは、主に三種の細胞から構成され、ケラチノサイト(極めて優勢)、メラノサイト及びランゲルハンス細胞である。これらの細胞タイプは、それぞれの機能を通じて、生体内で皮膚が果たす本質的な役割、特に、「バリア機能」と呼ばれる外部攻撃(気候、紫外線、タバコなど)から生体を保護する役割に貢献している。
【0004】
表皮のエージングは、第一に、厚さの減少として現れる。表皮の萎縮は、遅延したケラチノサイトの増殖、及び老化したケラチノサイトの蓄積の結果である。階層の皮膚角質層がくすむようになる。
【0005】
落屑は、皮膚の上部層を構成する、表皮が、常に再生している事実と関連する自然現象である。表皮は、細胞のいくつかの層から構成され、一番深い層は、未分化細胞を構成する基底層である。時間の経過とともに、これらの細胞は分化し、表皮の表面に移動して、表皮の表面で、落屑によって除去される死細胞である、角質細胞を形成するまで、表皮の様々な層を構成する。この表面の損失は、基底層から表皮の表面の細胞の移動によって、補われる。これは、皮膚の定期的な再生である。
【0006】
しかしながら、階層の皮膚角質細胞の多すぎる又は不規則な落屑は、肉眼で見え、「鱗屑」又は頭皮における「ふけ」と呼ばれる、大きく、厚い細胞の塊の形成を招く、あるいは他の場合において、緊張及び不快な感覚を生じる、階層の角質層の薄化を招き得る。異常な又は不規則な落屑から生じる落屑疾患は、表皮のバリア特性において、脆弱性又は欠乏までも招き得る。
【0007】
鱗屑及びふけの存在は、しばしば再発する状態であり、見苦しく明らかに不快であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】KR2012/0043288
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、落屑を制限及び/又は防止し、それによって、皮膚の快適性に寄与するための、皮膚又は頭皮の過度な落屑に対して作用する新規の活性剤を手に入れる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ヒラミレモンは、日本で生育するミカン科由来の柑橘類である。一般的に、これらの果実の水抽出物は、化粧品用途に探索され得る。
【0011】
例えば、文献KR2012/0043288は、皮膚の再生を刺激する、美白剤としてヒラミレモンの抽出物の使用を提案している。
【0012】
本発明の著者は、極めて驚くべきことに、ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物が、落屑に関するメカニズムにおける活性、特に、落屑に関する特定の酵素を阻害することによる活性を示すことを、今回証明した。
【0013】
この知見は、特に落屑を抑制又は制限することにより皮膚の快適性を向上することを望むすべての用途に有用である、新規の非治療的な化粧用組成物の開発に通じる。
【0014】
したがって、第一の態様によると、本発明は、ヘスペリジン、ノビレチン、及びイソシネンセチンの混合物を含む、ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物に関する。
【0015】
本発明の別の目的は、薬学的に許容可能な媒体中に、本発明のホルヒラミレモンの皮の、少なくとも一つのアルコール抽出物を含む化粧用組成物である。
【0016】
第三の態様によると、本発明は、以下の工程:
a)少なくとも一種のアルコール溶媒で、事前に乾燥され、すりつぶされたヒラミレモンの皮から抽出する工程;
b)工程a)から得られた混合物をろ過し、任意選択で活性炭上の吸着により、得られたろ液を脱色する工程;
c)乾燥抽出物をエバポレーションで、乾燥抽出物含有量5~20%、好ましくは9~12%に濃縮する工程;
d)c)で得られた混合物を、少なくとも6時間、4つの区別できる相が得られるまで、静置する工程;
e)工程d)で形成された相を、二つの固体及びオイル状の下部相、並びにエッセンシャルオイルの上部層の除去により、分離し、ヒラミレモンの皮の抽出物を含むアルコール相を収集する工程;
を含む、ヒラミレモンの皮から抽出する方法に関する。
【0017】
最後に、第四の態様による本発明の目的は、過度の落屑を制限/保護し、皮膚の快適性に寄与するために、上述のヒラミレモンの皮のアルコール抽出物の非治療的な化粧的使用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、0.033%での本発明のヒラミレモンの皮のアルコール抽出物で処理した後の、カリクレイン(KLK)KLK5及びKLK7の遺伝子発現における、皮膚の落屑に関する、二つのセリンプロテアーゼの減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ヒラミレモン
ヒラミレモンは、シークァーサーとしても知られ、ミカン科由来の柑橘類であり、日本で生育している。
【0020】
シークァーサーという言葉は、植物及び果実の両方を指し示す。
【0021】
それは、約5mの高さの小さい枝葉の多い木であり、活発で密生し、実をつける。白色の開花が4月に起こる(花の直径3cm)。果実は、10月から11月に収穫される。
【0022】
果実は、小さく(直径2.5~4cm、高さ2~3cm、重さ25~60g)、両極でわずかに凹んでおり、薄い果皮(皮)を有する。それは、特に8又は10の果汁を含むセグメント及び種を含有する。果肉は柔らかく、ゼラチン質で、果汁は酸性である。果皮内に含まれるエッセンスは、ウンシュミカン(Satsuma Mandarin)の芳香を有する。したがって、ジュースは、第一に食品産業に使用され、皮は、エッセンシャルオイルの調製に使用される。
【0023】
本発明の抽出物は、ヒラミレモンの皮から得られ、好ましくは、ジュースを得るための果実の圧縮の後に得られる。
【0024】
ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物
本発明によるヒラミレモンの皮のアルコール抽出物は、ヘスペリジン、ノビレチン、及びイソシネンセチンの混合物を含む。
【0025】
非常に特殊な抽出工程の方法により得られるこれらの三種の注目分子の組み合わせは、実際、皮膚の落屑に関する二つのセリンプロテアーゼ、カリクレイン(KLK)KLK5及びKLK7の遺伝子発現の減少、すなわち過度な落屑を限定/保護し、皮膚の快適性に寄与することを可能にする。
【0026】
好ましい実施態様によると、本発明によるヒラミレモンの皮のアルコール抽出物は:
- 乾燥抽出物の重量に対して、0.1~5質量%、好ましくは0.5~2質量%のヘスペリジン、
- 0.1~5質量%、好ましくは1~2質量%のノビレチン、
- 0.1~3質量%、好ましくは0.5~1質量%のイソシネンセチン
(100分率は、乾燥抽出物の質量に対する質量で表される)を含む。
【0027】
好ましくは、ヘスペリジン、ノビレチン、及びイソシネンセチンは、0.5/1/1.5及び1.5/3/4の間のヘスペリジン/ノビレチン/イソシネンセチンの質量比、好ましくは1.1/1.4/0.7の質量比で存在する。
【0028】
ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物の調製方法
ある特定の実施態様によると、本発明の目的は、以下の工程:
a)少なくとも一種のアルコール溶媒で、事前に乾燥され、すりつぶされたヒラミレモンの皮から抽出する工程;
b)工程a)から得られた混合物をろ過し、任意選択で活性炭上の吸着により、得られたろ液を脱色する工程;
c)乾燥抽出物をエバポレーションで、乾燥抽出物含有量5~20%、好ましくは9~12%に達するまで濃縮する工程;
d)c)で得られた混合物を、少なくとも6時間、4つの区別できる相が得られるまで、静置する工程;
e)工程d)で形成された相を、二つの固体及びオイル状の下部相、並びにエッセンシャルオイルの上部層の除去により、分離し、ヒラミレモンの皮の抽出物を含むアルコール相を収集する工程;
を含む、ヒラミレモンの皮から抽出する方法である。
【0029】
実際、ヒラミレモンの皮から非常に特殊な条件下で抽出することにより、ヘスペリジン、ノビレチン及びイソシネンセチンなどの、落屑防止に関心のある分子が豊富になる抽出物を得ることが可能であることを証明したことは、出願人の名誉である。
【0030】
本発明による方法は、少なくとも一つのアルコール溶媒で、ヒラミレモンの皮から抽出する第一工程a)を実行する。
【0031】
果実の圧縮から得られた皮は、好ましくは乾燥され、その後、例えば、ナイフミル内で室温、又は好ましい実施態様によっては低温でのすりつぶしなどの、当業者に従来知られる任意のすりつぶし工程により、分散可能な粉末にされる。
【0032】
好ましくは、本発明による抽出物の調製に使用される、ヒラミレモンの皮の分散可能な粉末は、500μm未満、好ましくは300μm未満の平均粒子径を有する。
【0033】
工程a)において、ヒラミレモンの皮は、1種以上のアルコール溶媒、例えば:
- C~Cのモノアルコール、例えば、メタノール、エタノール又はイソプロパノール;及び
- ジオール、例えばプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、又はジプロピレングリコール、
から選択されるアルコール溶媒で抽出を受ける。
【0034】
好ましくは、アルコール溶媒は、2~4個の炭素原子を含むモノアルコール、より好ましくはエタノールである。
【0035】
抽出物は、一般に、上述の1種以上の溶媒中、ヒラミレモンの皮を、例えば、室温から80℃までの範囲の温度で、30分から8時間の間、撹拌しながら浸漬させることによって行われる。好ましくは、工程a)の抽出は、1~5時間の間、50℃~70℃の温度で行われる。
【0036】
特に、ヒラミレモンの皮/アルコール溶媒の質量比は、1/1~1/15の間、好ましくは、1/8である。
【0037】
抽出工程に続いて、好ましくは、50μm~150μmの間、好ましくは100μmのふるいにかけられる。
【0038】
ある特定の実施態様によると、抽出工程a)は、2回行われる。そして、本発明の方法は:
a)事前に乾燥され、すりつぶされたヒラミレモンの皮を、50℃~70℃の温度で、1時間から5時間、アルコール溶媒、好ましくはエタノールで第一抽出し、その後50μm~150μmにふるいにかける工程;
a')工程a)で得られたヒラミレモンの皮の残渣を、50℃~70℃の温度で、1時間から5時間、アルコール溶媒、好ましくはエタノールで第二抽出し、その後50μm~150μmのふるいにかける工程;を含む。
【0039】
工程a)の後、本発明による方法は、好ましくは、30μm、好ましくは15μmの閾値まで行われるろ過工程b)を実行する。
【0040】
工程b)はまた、任意選択で、活性炭上の色素の吸着による、得られたろ液の脱色を含む。活性炭上のろ液の脱色は、例えば1~6時間、好ましくは3時間、撹拌しながら、20℃~30℃の間、好ましくは室温(20℃)で行われる。
【0041】
脱色については、活性炭含有量は、一般に、抽出物の乾燥物質の総質量に対して20~40質量%、好ましくは約30質量%である。
【0042】
脱色の終了時に、活性炭は、5μm、好ましくは2μmの閾値までろ過により除去される。
【0043】
工程b)から得られた、場合によっては脱色された、アルコールろ液は、その後、5~20%、好ましくは9~12%の乾燥抽出物含有量が、得られるまで、溶媒をエバポレーションすることによって、濃縮される(工程c)。溶媒のエバポレーションは、例えば、ロータリーエバポレーター又は流下膜式蒸発器によって行われ得る。
【0044】
工程c)から得られた濃縮抽出物は、その後、4つの区別できる相:二つの固体及びオイル状の下部相、エッセンシャルオイルの上部層、並びにヒラミレモンの皮の抽出物を含む中間アルコール相が得られるまで、少なくとも6時間静置される。静置は、例えば、アンプル中で実施され得る。
【0045】
好ましい実施態様によると、静置工程d)は、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは24~48時間行われる。
【0046】
静置は、0~25℃、好ましくは1~10℃、より好ましくは4~5℃の温度で行われる。
【0047】
一度、静置が完了し、4つの相が得られたら、関心のある相は、二つの固体及びオイル状の下部相、並びにエッセンシャルオイルを含有する上部層の除去により、抽出され、ヒラミレモンの皮の抽出物を含むアルコール相が、収集される。
【0048】
ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物は、その後、5μm、好ましくは2μmの閾値にろ過され得(工程f)、その後、工程a)で使用された抽出溶媒と異なるアルコール溶媒中に希釈される。
【0049】
工程a)において導入された抽出溶媒は、その後、抽出溶媒の残留濃度が1%未満、好ましくは0.5%未満に達するまで、蒸発される(工程g)。
【0050】
最終的に、工程g)の終了時に得られた混合物は、少なくとも6時間、好ましくは12時間静置され、その後5μm、好ましくは2μmの閾値にろ過される。静置は、これまで通り、0~25℃、好ましくは1~10℃、より好ましくは4~5℃の温度で行われる。
【0051】
したがって、好ましい実施態様によると、ヒラミレモンの皮からの抽出方法は、以下の工程:
a)事前に乾燥され、すりつぶされたヒラミレモンの皮を、50℃~70℃の温度で1時間から5時間アルコール溶媒、好ましくはエタノールで第一抽出し、その後50μm~150μmにふるいにかける工程;
a')工程a)で得られたヒラミレモンの皮の残渣を、50℃~70℃の温度で1時間から5時間アルコール溶媒、好ましくはエタノールで第二抽出し、その後50μm~150μmのふるいにかける工程;
b)工程a)から得られた混合物をろ過し、任意選択で活性炭上の吸着により、得られたろ液を脱色する工程;
c)乾燥抽出物をエバポレーションで、乾燥抽出物含有量5~20%、好ましくは9~12%まで濃縮する工程;
d)c)で得られた混合物を、少なくとも6時間、4つの区別できる相が得られるまで、静置する工程;
e)工程d)で形成された相を、二つの固体及びオイル状の下部相、並びにエッセンシャルオイルの上部層の除去により、分離し、ヒラミレモンの皮の抽出物を含むアルコール相を収集する工程;
f)工程e)において収集されたアルコール画分を5μm、好ましくは2μmの閾値にろ過し、その後別のアルコール溶媒中にろ過された抽出物を最終希釈する工程;
g)工程a)で導入された抽出溶媒を、抽出溶媒の残留濃度が1%未満、好ましくは0.5%未満に達するまで蒸発させる工程;
h)g)で得られた混合物を、少なくとも6時間静置し、その後5μm、好ましくは2μmの閾値までろ過する工程;
を含む。
【0052】
より一層好ましくは、ヒラミレモンの皮からの抽出方法は、以下の工程:
a)事前に乾燥され、すりつぶされたヒラミレモンの皮を、エタノールで、ヒラミレモンの皮/エタノールの質量比1/8で、50℃~70℃の温度で1時間から5時間、第一抽出し、その後100μmのふるいにかける工程;
a')工程a)で得られたヒラミレモンの皮の残渣を、エタノールで、ヒラミレモンの皮/エタノールの質量比1/8で、50℃~70℃の温度で1時間から5時間、第二抽出し、その後100μmのふるいにかける工程;
b)工程a)から得られた混合物をろ過し、3時間室温で、活性炭上の吸着により、得られたろ液を脱色する工程;
c)乾燥抽出物をエバポレーションで、乾燥抽出物含有量10~11%に濃縮する工程;
d)c)で得られた混合物を、少なくとも12時間、4~5℃の温度で、4つの区別できる相が得られるまで、静置する工程;
e)工程d)で形成された4つの相を、二つの固体及びオイル状の下部相、並びにエッセンシャルオイルの上部層の除去により、分離し、ヒラミレモンの皮の抽出物を含むエタノール相を収集する工程;
f)工程e)において収集されたエタノール画分を2μmの閾値にろ過し、その後ペンチレングリコール中にろ過された抽出物を最終希釈する工程;
g)工程a)で導入された抽出エタノールを、残留エタノール濃度が0.5%未満に達するまで蒸発させる工程;
h)工程g)で得られた混合物を、少なくとも12時間、4~5℃の温度で静置し、その後2μmの閾値までろ過する工程;
を含む。
【0053】
化粧用組成物
本発明のさらなる目的は、薬学的に許容可能な溶媒中に、上述のヒラミレモンの皮から抽出された、少なくとも一つのアルコール抽出物を含む化粧用組成物である。
【0054】
本発明にしたがって使用される組成物は、上述の抽出物に加えて、毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応のリスクがなく、特に不快感(赤み、つっぱり感、ひりひり感)を引き起こさない、ヒトの皮膚との接触の使用に適したものであることを意味する、薬学的に許容可能な、好ましくは化粧的に許容可能な媒体を一般に含む。
【0055】
有利には、上記化粧用組成物又は皮膚科学の組成物は、粉末、エマルション、マイクロエマルション、ナノエマルション、懸濁液、溶液、ローション、クリーム、水性ゲル若しくは水性アルコールゲル、フォーム、セラム、エアロゾル溶液若しくはエアロゾル分散体、又は脂質小胞の分散体の形態であってもよい。
【0056】
エマルションの場合、組成物は、油中水又は水中油型エマルションであり得る。
【0057】
本発明の化粧用組成物又は皮膚科学組成物は、様々な成分及び投与形態に応じて、選択される溶媒も含んでもよい。
【0058】
例えば、水(好ましくは脱ミネラル水、若しくはフローラルウォーター)又はエタノールなどのアルコールが挙げられる。
【0059】
前記化粧用組成物は、本発明による抽出物に加えて、例えば、軟化剤又はぬれ剤、ゲル化剤及び/又は増粘剤、界面活性剤、オイル、活性剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、活性剤、有機粉末又は鉱物粉末、日焼け止め剤、及び香料から選択される少なくとも一種の化合物、当技術分野で慣習的に認められた少なくとも一種の添加剤を含んでもよく、特に以下の添加剤である。
【0060】
- ポリオール(グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、カプリリルグリコール、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール)、糖類、ヒアルロン酸並びにその塩及びエステルなどのグリコースアミノグリカン;並びにリピジュア-PMBなどのポリクオタニウムなどの一種以上のぬれ剤。前記ぬれ剤は、組成物中に、組成物の総質量の0~30質量%、好ましくは0.005~10質量%の含有量で存在し得る。
【0061】
- 例えば、ホホバエステルなどのエステル、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル(オクチルドデシルミリステート、トリエチルヘキサノイン、ジカプリリルカーボネート、イソステアリルイソステアレート、カプリル酸/カプリン酸 トリグリセリド)、シアバター(シアバターノキ(butyrospermum parkii)バター抽出物、シアバターエチルエステル、商品名LIPEX SHEASOFT, LIPEX SHEA-U, LIPEX SHEA, LIPEX SHEALIGHT, LIPEX SHEA TRIS)又はモリンガバター(モリンガオイル/水素化モリンガオイルエステル)などのバター、ワックス(フサアカシア(acacia decurrens)花ロウ及びヒマワリ種子ロウ(helianthus annuus seed cera seed wax)、C10-C18トリグリセリド)、植物油、フィトスクワラン、アルカン(ウンデカン、トリデカン)から選択され得る、一種以上の軟化剤。前記軟化剤は、組成物中に、組成物の総質量の0.1~30質量%、好ましくは0.5~10質量%の含有量で存在し得る。
【0062】
- セルロース誘導体、植物由来のゴム(グアー、イナゴマメ、アルギン酸塩、カラギーナン、ペクチン)、微生物由来のゴム(キサンタン)、クレイ(ラポナイト)、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)、及び/若しくはアクリルアミド、及び/若しくはアクリル酸、及び/若しくはアクリル酸の塩若しくはエステルの、架橋又は非架橋の親水性又は両親媒性のホモポリマー及びコポリマー(商品名ARISTOFLEX AVC, Aristoflex AVS, Aristoflex HMB, SIMULGEL NS, Simulgel EG, Simulgel 600, Simulgel 800, Pemulen, carbopol, Sepiplus 400, Seppimax zen, Sepiplus S, COSMEDIA SP)から例えば選択される、水性相に対する一種以上のゲル化剤並びに/又は増粘剤。前記ゲル化剤及び/又は増粘剤は、組成物中に、組成物の総質量の0.1~10質量%の含有量で存在し得る。
【0063】
- 一種以上の界面活性剤、特に:
・イセチオネート、タウレート、サルコシネート、グリシネート、グルタメート、ホスフェート(C20-22アルキルホスフェート、商品名SENSANOV WR)などのアニオン性界面活性剤
・ベタイン誘導体、アンホ酢酸塩などの両性界面活性剤
・ポリグリセロール誘導体、糖誘導体(グルコシド又はキシロシドの誘導体、商品名MONTANOV 68, MONTANOV 202, Montanov 82, MONTANOV L, EASYNOV)、レシチンなどの非イオン性界面活性剤
【0064】
前記界面活性剤は、組成物の総質量に対して約0.1~15質量%、好ましくは0.5~10質量%の含有量で存在し得る。
【0065】
- ビタミンC及びその誘導体(アスコルビン酸グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、アスコルビン酸テトライソパルミテート)、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンB3又はナイアシンアミドなどのビタミン類、パンテノール、微量元素、アラトイン、アデノシン、ペプチド(パルミトイルテトラペプチド-7、パルミトイルトリペプチド-1、パルミトイルペンタペプチド-4、アセチルジペプチド-1セチルエステル、アセチルテトラペプチド-5、商品名NP RIGIN, MATRIXYL 3000, IDEALIFT, EYESERYL)、植物抽出物(スペインカンゾウ(glycyrrhiza glabra)抽出物、ツボクサ(centella asiatica)葉抽出物、ライムギ(secale cereale)種子抽出物)、イースト抽出物、グリコール酸又は乳酸などのアルファヒドロキシ酸、セチルトラネキサム酸エステルなどのトラネキサム酸及びその誘導体などから例えば選択される、生物活性を有し、バイオロジカルサイトを通じて皮膚に効力を有する、天然、バイオテクノロジーの、又は合成由来の一種以上の活性剤。前記活性剤は、組成物中に、組成物の総質量の約0.1~10質量%の含有量で存在し得る。
【0066】
化粧品に通常使用される、他の添加剤は、本発明による組成物中に存在してもよく、特に防腐剤、酸化防止剤、又は香料が当技術分野でよく知られる。
【0067】
当業者は、これら可能性のある添加剤の全てから、組成物が、その特性の全てを保持するように、組成物に添加されるものの性質及び量の両方を選択することができる。
【0068】
本発明は、過度な落屑を制限/保護し、皮膚の快適性に寄与する、ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物の非治療的な、化粧的使用にも関する。
【0069】
この実施態様において、抽出物又は組成物は、変化しているが、病的ではない皮膚に適用される。
【0070】
本発明のさらなる目的は、上述のようなヒラミレモンの皮のアルコール抽出物の、カリクレイン(KLK)KLK5及びKLK7の遺伝子発現の阻害剤としての、非治療的な化粧的使用である。
【実施例0071】
以下の非制限的な実施例によって、本発明が、説明され得る。
【0072】
実施例1:本発明によるヒラミレモンの皮のアルコール抽出物で処理された、正常なヒトケラチノサイトにおける落屑に関する酵素の発現の阻害
抽出物調製:
本発明による、ヒラミレモンの皮のアルコール抽出物を、以下の工程により調製した:
a)1kgの乾燥した皮を粉末にすりつぶした。皮からの抽出は、8kgの96°エタノール中で、60℃2時間攪拌しながら、行った。混合物を、100μmでふるいにかけ、皮の残渣を収集し、抽出物を脇に置いた。
a')皮の残渣を、再び、8kgの96°エタノール中で、60℃2時間攪拌しながら、抽出に供した。混合物を100μmでふるいにかけた。
b)工程a)及びa')からの液体画分を、合わせて、その後15μmでろ過した。
エタノールの画分を、70gの活性炭(抽出物の乾燥物質に対して30質量%)で、3時間室温で撹拌しながら、脱色した。
その後、活性炭を、2μmでのろ過により除去した。
c)エタノール抽出物を、ロータリーエバポレーター又は流下膜式蒸発器におけるエタノールを蒸発させることにより濃縮し、乾燥物質含有量10%~11%を有する濃縮抽出物を得た。
d)全体を、アンプル中、4℃で1~2日間静置した。
e)下部の固体及びオイル状の相を、エッセンシャルオイルを含有する上部相と同様に除去した。
f)エタノールの画分を収集し、2μmでろ過した。乾燥物質の測定を、抽出液に対して行い、抽出液には、135gの乾燥抽出物が含まれていた。
1215gのペンチレングリコールをエタノール抽出物に添加し、最終抽出物を10%乾燥物質に希釈した。
g)エタノールを、ロータリーエバポレーター又は流下膜式蒸発器において完全に蒸発させた(0.5%未満の最終エタノール濃度)。
h)抽出物を、4℃で一晩おき、2μmでろ過した。
1350gの最終抽出物1701EXTを得た。
【0073】
手順:
3人の異なるドナーからの正常なヒト表皮ケラチノサイトを、24-ウェルプレートに播種し、ケラチノサイト-SFM(k-SFM)添加培地で、48h、37℃、5%COで培養した。細胞を、その後0.033%抽出物で、又は抽出物なし(非処理条件)で48時間インキュベートした。それぞれの条件を二重に行った。TriPure Isolation Reagent(登録商標)を使用して、サプライヤーに推奨された手順により、総RNA抽出を行った。相補DNAを合成し、トランスクリプトームをAffymetrix GeneChip Human Transcriptome Array2.0チップ上に生成した。発現が少なくとも2のファクターにより調節される遺伝子の生物情報学の分析を、Ingenuity Pathway Analysisソフトウェア(IPA(登録商標), QIAGEN)で行った。
【0074】
結果:
抽出物は、皮膚落屑に関する2つのセリンプロテアーゼである、カリクレイン(KLK)KLK5及びKLK7の転写発現を減少させることができる。KLKファミリーは、皮膚の上部層において発現し、表皮のホメオスタシスに関係する、KLK5及びKLK7を含み、15のアイソフォームを含む。実際、これらの2つの酵素は、角質層を構成する角質細胞間の結合を保証する表層コルネオデスモソームを分解する能力がある。
【0075】
図1は、正常なヒトケラチノサイトにおける0.033%抽出物によって、KLK5及びKLK7の転写発現の阻害を示している。
【0076】
実施例2:化粧用組成物
以下の組成物を、当業者には慣習的な方法で調製し得た。下記に記載された数値は、重量割合で表されている。大文字での材料は、INCI名によって特定された。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
これらの組成物は、毎日、朝及び/又は晩、皮膚に塗布され得る。それらは、過度な落屑を防ぎ、使用者に快適性を与える。
図1
【外国語明細書】