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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043532
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】生地
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20240322BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240322BHJP
   D04D 7/02 20060101ALI20240322BHJP
   D04D 9/04 20060101ALI20240322BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240322BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20240322BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B5/02 D
D04D7/02
D04D9/04
A41D31/00 502A
A41D31/00 502U
A41D31/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023173249
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2022161948
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522393859
【氏名又は名称】田島 浩樹
(71)【出願人】
【識別番号】518292955
【氏名又は名称】合同会社森林堂
(72)【発明者】
【氏名】田島 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】水戸 大志
(72)【発明者】
【氏名】森 真琴
【テーマコード(参考)】
4F100
4L049
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK22A
4F100AK22C
4F100AK22G
4F100AK25B
4F100AK53A
4F100AK53C
4F100AK53G
4F100AT00
4F100BA03
4F100CB10A
4F100CB10C
4F100CB10G
4F100DG07A
4F100DG07C
4F100DG08A
4F100DG08C
4F100DG15B
4F100EC182
4F100EC18A
4F100EC18C
4F100EC18G
4F100GB72
4F100GB90
4L049AA11
4L049AA16
4L049BA16
4L049CA01
4L049CA02
4L049CA11
4L049DA19
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、残糸を使った生地を制作することによって糸の廃棄問題を解決すること及び、従来実現できなかった素材を組み合わせた生地を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明の生地は、糸1を基材3の表面に貼り付けて模様を形成することを特徴とする。これにより、従来捨てられていた残糸を再利用して種々の用途に使える新たな生地に生まれ変わらすことができる。また、従来の紡績では実現が難しかった糸の素材を組み合わせて従来に無かった新たな味わいの生地を制作できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を基材の表面に貼り付けて模様を形成した生地。
【請求項2】
前記基材の裏面に糸を貼り付けて模様を形成した請求項1に記載の生地。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の生地を複数積層して貼り合わせて厚みを持たせた生地。
【請求項4】
請求項3に記載の生地を前記基材と並行、垂直または斜めのいずれかにスライスしてできた生地。
【請求項5】
前記糸で覆われていない部分の面積率(開口率)が5%以上70%以下である請求項1に記載の生地。
【請求項6】
前記基材が光透過性の素材でできた請求項1に記載の生地。
【請求項7】
前記糸の公定水分率が5%以上である請求項1に記載の生地。
【請求項8】
前記糸の長さが5cm以上である請求項1に記載の生地
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な用途で使用できる生地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来衣料業界では生産段階における残糸は廃棄されることがほとんどだった。また従来、紡績では組み合わせづらい原料が多かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、残糸を使った生地を制作することによって糸の廃棄問題を解決すること及び、従来実現できなかった素材を組み合わせた生地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の生地は、糸を基材の表面に貼り付けて模様を形成することを特徴とする。これにより、従来捨てられていた残糸を再利用して種々の用途に使える新たな生地に生まれ変わらすことができる。また、従来の紡績では実現が難しかった糸の素材を組み合わせて従来に無かった新たな味わいの生地を制作できる。
また、本発明の生地は、前記基材の裏面に糸を貼り付けて模様を形成しても良い。これにより、リバーシブル生地としての用途に用いることができる。また、異なる基材同士を貼りあわせることにより表裏それぞれに異なる外観、風合い、特性を兼ね備えたリバーシブルの生地を作成することができる。それは、表裏の基材と糸の組み合わせのパターンより幾通りにも増やすことができる。
また、本発明の生地は、前記生地を複数積層して貼り合わせて厚みを持たせても良い。これにより、耐久性をあげる及び、厚みの調整が可能になりより広い用途に用いることができる。
また、本発明の生地は、前記生地を前記基材と並行、垂直、斜めのいずれか一方向にスライスしてできた生地でも良い。これにより、これまでにない糸の断面の見せるデザインや、積層により生み出される新たなデザインを表現することができる。
また、本発明の生地は、前記糸で覆われていない部分の面積率(開口率)が5%以上から70%以下にしても良い。これにより、糸と基材のデザインの組み合わせを可能にし、更に基材の特性(吸湿性等)をより大きくすることができる。
また、本発明の生地は、前記基材が光透過性の素材でも良い。これにより、ライトアップ効果をもつ生地の作成ができる。
また、本発明の生地は、前記糸の公定水分率が2%以上のものが望ましい。これにより、生地の表面をより安定させることができる。
また、本発明の生地は、前記糸の長さが2cm以上で25cm以下のものが望ましい。これにより、糸によるカーブやカールによるデザインを調整しやすくなる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、残糸を再利用(リサイクル、アップサイクル)した生地を制作することによって、糸が廃棄される課題を解決することができる。また、従来実現できなかった素材を組み合わせることにより、新たな機能性、風合いといった特性を持ち合わせた生地を作成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施例1を示す図である。
図2】本発明の実施例2の断面を表した模式図である。
図3】本発明の実施例3の断面を表した模式図である。
図4】本発明の実施例4の断面を表した模式図である。
図5】本発明の実施例5の平面を表した模式図である。
図6】本発明の実施例6の平面を表した模式図である。
図7】本発明の実施例8を示す平面図である。
図8】本発明の生地の製造方法の一例を示す図である。
図9】本発明の実施例9を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1から図8を参照して実施例について以下に説明する。
本発明は実施例に説明した素材、寸法、用途に限定されるものではない。
【実施例0008】
実施例1の生地は糸1を基材3の表面に接着剤2を用いて貼り付けて模様を形成した物である[図1]。[図1(a)]は断面を表した模式図、[図1(b)]は平面図である。そしてその代表的な作成方法一例を示したものが図8であり、糸1を基材3に接着剤で貼り付ける際にプレス機6により、熱または圧力を加えることもある[図8]。
使用する糸1はあらゆる天然繊維(絹、綿 麻、レーヨン、竹、い草、リヨセル、カポック、紙等の植物繊維、ウール、アルパカ、ミンク等の動物繊維)、あらゆる人工繊維(ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリウレタン、炭素繊維や金属繊維、光ファイバー等、特殊素材の物も含めあらゆる素材が可能)はじめ接着可能なものはすべて可能である。また糸1は残糸でなくても良い。
使用する糸1の形状は糸と認識されるもの全てが可能であり、丸いもの扁平なもの異形断面のものなど糸と認識されうるものは全てが可能である。
従来は各繊維のもつ長所を活かすために紡績を行い、またその糸を使用し生地を作成するが、例えば炭素繊維や金属繊維と絹やウール等の天然繊維の混紡は難しいものでありそのような原料の生地の作成は困難であったが、当該生地では従来難しいとされてきた組み合わせの原料を用いた生地の作成を可能にし、これまで実現できなかった新たな機能性を持たせた生地を作成することが可能になった。
更には基材3にも吸湿性等の効果をもつ素材を使用することにより、糸1と基材3のもつそれぞれの特性が相乗効果となる生地を作成可能になった。
糸1の色を1本の糸のなかで複数の色を使用する糸を用いることで糸のグラデーションを用いた生地を作成可能になった。
【0009】
また生地にコーティングを施すことにより、撥水、耐熱や防炎効果等種々の効果をもたせたることも可能である。上記のような効果を実現するために使用する糸1は天然繊維と天然繊維、天然繊維と人工繊維、人工繊維と人工繊維等複数糸の混紡糸等接着可能な組み合わせのものは全て可能である。その中でも吸水性の高い糸を使用することでなめらかで安定した表面の仕上がりにできる。接着剤2は基材3を貼り付けることできる、接着効果を生み出すものであればどんなものでも可能である。一例として柔らかい仕上げの際には酢酸ビニル系、硬度をあげるにはエポキシ系のものを用いるとよい。各種接着剤のブレンドにより柔軟性、硬度、表面の質感を調整することが可能である。接着剤2の代わりに天然ゴムや合成ゴムを使用し貼り付けることも可能である。また基材3と糸1の組み合わせより接着剤を使用せず圧着や埋め込みも可能である。
【0010】
基材3は天然素材、人工素材、また天然素材と人工素材の混合素材など接着可能なものは全て利用できる。中でも柔軟性をもたせる場合は不織布、光を透過性させる際には透明のアクリル板など用途に応じて使い分けることが特に好ましい。
また、生地の裏面の素材により衣類に適した生地として作成したり、生地の裏面を接着可能な素材にすることにより直接壁に接着できる生地を作成できる。一例として基材3の片面を接着テープにすることにより、そのまま壁面等に貼り付けることのできるパネルの作成や、基材3をウール等衣類に使用するものを用いることで縫い合わせて衣類とし使用することができる。更には基材3を金属や炭素繊維などの硬度をもつものにすることにより、より強度の求められる建築資材としても利用可能となる。さらに生地の表面をコーティングすることにより、撥水や防火等の機能を付加することも可能である。
【0011】
糸1の1本の糸のグラデーションと同じく、基材3も1つの基材3のなかに異なる色彩やデザイン、素材特性をもつものを使用することにより、糸1とのデザイン的、素材特性的なグラデーションをもつ生地を作成できる。
また、染色や印刷可能な糸1、基材3等を使用することにより、生地の配置のみならず印刷によるデザインを施すことも可能である。さらに糸1、基材3に反射素材を用いることで光を反射、またその反射によるデザインを生み出す生地を作成することが可能である。糸1、接着剤2、基材3の組み合わせにより硬質のものから、折り曲げ可能な生地も作成可能である。
このように、本発明は残糸のアップサイクルという着想から作成されたが、作成する生地の特性や目的を鑑み、使用する糸1は残糸に限るものではない。使用する糸1、接着剤2、基材3の形状、長短、色彩等も特定のものに限るものではない。
【実施例0012】
本発明の実施例2の生地は実施例1の生地の裏面にも糸1を貼り付けることで両面で糸1または糸1と基材3を組み合わせたデザインをもたせたリバーシブルの生地を作成することが可能である[図2]。生地の両面にそれぞれ異なったデザインを要する展示パネルや、片面には吸水性、もう一面には疎水性が必要となるような衣類の生地等の作成が可能である。
【実施例0013】
本発明の実施例3の生地は実施例1の生地を積層することで厚みと強度をあげる生地の作成が可能である[図3(a)、図3(b)]。図3(a)のような糸1、接着剤2、基材3という交互の積層だけでなく、図3(b)のようにまずは基材3を幾層も作成後に糸1を接着することも可能である。積層することで、より強度を必要とする建築資材としての用途や壁面等の隙間に適応させた生地を作成可能である。また積層した生地をスライスする際のデザインを考慮して積層させることでスライス時の断面のデザインを調整することが可能になる。
【実施例0014】
本発明の実施例4の生地は実施例3の生地を基材3にたいして水平方向にスライスすることにより糸1または基材3の断面が現れるデザイン[図4(a)]、生地と垂直方向にスライスすることにより積層面の柄[図4(b)]、生地を斜めにスライスすることで積層面の柄及び1枚生地の中で厚みの異なる生地を作成可能である[図4(c)、図4(d)]。
例として水平方向にスライスすることで、糸1の水平方向へのスライスによる糸1の断面をいかしたデザインを、また糸1の断面と基材3及び基材3の水平方向のスライスと糸1をいかしたデザインが可能である。基材3に対して垂直及び斜め方向のスライスにおいては、積層を調節することで、糸1と基材3の積層断面をいかした生地を作成可能である[図4(d)]。また基材3に対して斜め方向へのスライスにより、厚みや長さを変えた生地を作成可能である。さらに、実施例4の生地は[図4(e)]のように異なる基材3同士を貼りつけたうえに、同じまたは異なる糸1を接着、または[図4(f)]のように異なる基材3同士を貼り付けて、片面は糸1を貼りつけないことで表裏それぞれに異なる外観、風合い、特性を兼ね備えたリバーシブルの生地を作成することができる。そうすることにより、表裏で異なる特性が求められる製品への対応が可能になり、生産コストや生産時のロスを減らすことができる。
【実施例0015】
本発明の実施例5の生地は、糸1で覆われていない部分の面積率(開口率)を5%以上70%以下にすることにより糸1と基材3のデザインを組み合わることが可能である[図5図6]。
開口率は基材3にマスキング等を施すことにより調節することが可能である。開口率をあげることにより基材3の特性(吸湿性等)をより大きくすることが可能である。一例として、基材3に特徴的なマークやデザインがある場合、その部分は糸1で覆わずに隙間4をつくり露出させることで基材3のマーク及びデザインと糸1を組み合わせた生地を作成することが可能である[図6]。また基材3に吸湿性等の機能があり、それを糸1で覆うことがその機能を妨げしまう際などにはその部分を隙間4としてあけることで基材3の特性を生かすことができるようになる。
【実施例0016】
本発明の実施例6の生地は、基材3に光透過性の素材を使用することで、ライトアップ効果をもつ生地の作成が可能である[図5図6]。例として、壁面パネル等を作成し生地に光を透過させる際に、基材3に光透過性をもたせて隙間4をつくることでライトアップ効果をもつ生地の作成が可能である。さらに糸1にも光透過性を有するものを使用することでライトアップ効果を高めた生地を作成可能である。さらには基材3にライトアップ効果を期待したデザインをもたせることで基材3のデザイン及び糸1のデザインを投影させることを可能にする。例としてランプシェードや各種カーテン、インテリアパネル等の作成に適した生地の作成が可能である。
すなわち、光透過性を有する基材3、にデザインを施し、糸1の配置とを組み合わせて双方のデザインをいかした生地を作成することが可能である。
【実施例0017】
本発明の実施例7の生地は、糸の公定水分率が2%以上のものを使用することで、生地の表面をより安定させることができる。一例として、公定水分率の高い糸1を使用することで表面の均一性がもとめられる衣類用や生地に表面加工を施して使用するものなどに適した生地を作成することができる。
【実施例0018】
本発明の実施例8の生地は、糸の長さが2cm以上の糸1を使用することで、糸1によるカーブやカールを調整しやすくなる[図7]。糸1のもつ曲線や絡みが作り出すランダムデザイン、および糸1の曲線を用いて意図的に作成するデザイン、さらに円や楕円形、および一筆書きのようなデザインをより美しく作成することが可能である。
また1本の糸1の中に複数の色彩や特性をもつ糸を使用する際により長い糸を使用することで多彩なグラデーションを表現することが可能である。
【実施例0019】
本発明の実施例9の生地は糸1を起毛やループ状、または毛羽立たせることで独特な風合いを表現することができ、その後の付加加工時における染み込み具合の調整を行うことができる。
【実施例0020】
本発明の実施例10の生地は糸1を粉体にすることで、微細な表現を可能にし、生地への糸1の塗布量や接着剤2の使用量を減らすことも可能になり生地の重量の軽量化が可能になる。
【実施例0021】
本発明の実施例11の生地は糸1、基材3にコーティングを施すことにより、インクや墨汁などとそれに類似するものによる印刷、描写における色彩、輝度や滲み等を調節することができる。
なお、糸1の太さはおおよそ(0.01mm~10cm)のものをいい、丸いもののみならず扁平なものなどその形状は問わない。
なお、紡績技術や糸1同士を撚り合わせる、または溶接等により繋げたりすることにより、糸1が10cmを超えるような場合も当該生地の作成に用いることができるものは糸1と定義する。
なお、糸1は作成する生地の大きさや表現する図柄、または使用する糸1の特性により適当とされる長さは常に変化する。
なお、糸1を集めて糸1同士を固めたもの、または糸1の塊を基材3に接着剤2で貼り付けることもできる。
【符号の説明】
【0022】
1 糸
2 接着剤
3 基材
4 隙間
5 5cm以上の長さの糸
6 プレス機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9