(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043617
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】滴下液剤用粉体製剤、滴下液剤および温熱液体滴下施療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/232 20060101AFI20240326BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240326BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240326BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240326BHJP
A61K 36/12 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240326BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240326BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240326BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K36/232
A61K9/14
A61K31/12
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/18
A61P43/00 121
A61K36/12
A61K47/14
A61K9/08
A61P25/20
A61K36/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148699
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】521216083
【氏名又は名称】株式会社チームパワーソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】中西 洋子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA29
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD29
4C076DD51
4C076EE30
4C076FF52
4C076GG06
4C088AA18
4C088AB38
4C088AB41
4C088AC02
4C088BA09
4C088CA05
4C088MA02
4C088MA08
4C088MA23
4C088MA43
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA05
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA43
4C206MA63
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】原料が日本において比較的入手し易く、しかも日本人の皮膚(頭皮)等に触れてもアレルギーや色素沈着を起こさず、しかもさらさらで取り扱い易い滴下液剤用粉体製剤を提供する。
【解決手段】本発明の滴下液剤用粉体製剤は、温熱液体滴下装置用の滴下液剤を調整するための滴下液剤用粉体製剤であって、当帰または当帰エキスと、カンナビジオールと、アパタイト被覆酸化チタンと、グアーガムと、グリシンとを含有することを特徴とする。各成分の分量は、当帰または当帰エキスを1~5質量%、カンナビジオールを1~5質量%、アパタイト被覆酸化チタンを0.1~1質量%、グアーガムを80~90質量%で、残部がグリシンであることが好ましい。アパタイト被覆酸化チタンとしては、多孔性アパタイト被覆二酸化チタンであることが好ましい。本発明の粉体製剤には、更に、スギナ粉末やラベンダーエキス等の香料が添加されていることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温熱液体滴下装置用の滴下液剤を調整するための滴下液剤用粉体製剤であって、当帰または当帰エキスと、カンナビジオールと、アパタイト被覆酸化チタンと、グアーガムと、グリシンとを含有することを特徴とする滴下液剤用粉体製剤。
【請求項2】
当帰エキスを1~5質量%と、カンナビジオールを1~5質量%と、アパタイト被覆酸化チタンを0.1~1質量%と、グアーガムを80~90質量%とを含有し、残部がグリシンである請求項1の滴下液剤用粉体製剤。
【請求項3】
粉末当帰を1~5質量%と、カンナビジオールを1~5質量%と、アパタイト被覆酸化チタンを0.1~1質量%と、グアーガムを80~90%質量%とを含有し、残部がグリシンである請求項1の滴下液剤用粉体製剤。
【請求項4】
前記当帰が大和当帰または北海当帰である請求項1の滴下液剤用粉体製剤。
【請求項5】
前記当帰が大和当帰である請求項4の滴下液剤用粉体製剤。
【請求項6】
アパタイト被覆酸化チタンが、多孔性アパタイト被覆二酸化チタンである請求項1の滴下液剤用粉体製剤。
【請求項7】
アパタイトが、リン酸カルシウム系アパタイトである請求項1または6の滴下液剤用粉体製剤。
【請求項8】
更に、スギナ粉末が添加された請求項1の滴下液剤用粉体製剤。
【請求項9】
更に、香料を含有する請求項1~8のいずれかの滴下液剤用粉体製剤。
【請求項10】
前記香料が、粉末であるラベンダーまたはラベンダーエキスである請求項9の滴下液剤用粉体製剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかの滴下液剤用粉体製剤を、水に溶融して形成した温熱液体滴下装置用の滴下液剤。
【請求項12】
更に、脂肪酸グリセリルが添加された請求項12の滴下液剤。
【請求項13】
請求項11または12の滴下液剤を38度~41℃に維持して、実際の温熱液体滴下施療を行う温熱液体滴下施療方法。
【請求項14】
温熱液体滴下装置用の滴下液剤を調整するための滴下液剤用粉体製剤であって、当帰または当帰エキスと、カンナビジオールと、アパタイト被覆二酸化チタンと、グアーガムと、グリシンとを含有することを特徴とする滴下液剤用粉体製剤を製造する方法において、少なくとも当帰または当帰エキスをフリーズドドライ製法により製造されたものを用いることを特徴とする滴下液剤用粉体製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滴下液剤用粉体製剤、滴下液剤および温熱液体滴下施療方法に関し、さらに詳細には、インドの古代からの伝統医学(アユルベーダ)に用いられる、人間の頭部に加温した滴下剤を滴下して種々の症状を癒す頭部滴下療法(シローダーラー、Shirodhara)の実施するために用いられる滴下液剤用粉体製剤、滴下液剤および温熱液体滴下施療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記頭部滴下療法(シローダーラー)用の温熱液体滴下装置においては、約40°C前後に加温して人間の頭部に滴下する滴下液剤として、(a)主として、ゴマ油を液体状にしてシローダーラーの滴下液剤(オイル)として使用していた(特開平11―221261号公報、特許文献1参照)。
【0003】
(b)また、ゴマ油以外に、ヤシ油、米油、薬草のエキスなどを加えて液体状にしたシローダーラーの滴下液剤も知られている。
【0004】
そして、上記(a)、(b)のいずれのシローダーラーの滴下液剤は、前記温熱液体滴下装置に設けた貯槽に適量を供給してから、その滴下液剤をヒータで適温に加温し、給油管を介して、被験者の頭部上方に設けたノズルから額に滴下するもので、適宜に額上を移動させながら所定時間に亘り滴下するものである。これにより、マッサージ効果を与えて、深いリラクゼーションを発揮させ、老廃物の浄化、ストレスの解消、不眠症の解消等の効果があるものである。
【0005】
しかしながら、前記(a)、(b)に記載した従来例では、温熱液体滴下装置の滴下剤として、(イ)ゴマ油を必須とするとともに、(b)ではヤシ油や米油等の油を必須とするものであるため、額に付着した油をシャンプーして拭き取りしても除去し難く、その拭き取り作業が約10回位かかり煩わしいと共に、少なくとも約20分位の拭き取り時間がかかる欠点があった。
【0006】
(ロ)また、油の酸化した臭いが残る欠点もあった。
【0007】
(ハ)さらに、前記油の滴下流量は、通常は、被験者1人当り1.5リットル3.0リットル/分であって、使用後の油は廃棄タンクへ排出するか、貯槽に戻し循環して再利用するものであった。そのため、前者の場合、廃棄タンク内の廃油を油凝固シート等で固化するとか、又は新聞紙などで吸着して固化するとかして、ごみとして廃棄していたので廃棄に手間取ると共に、環境に良くない欠点があった。
【0008】
(ニ)しかも、前記油、特にゴマ油は高価であるという難点があった。
【0009】
(ホ)さらに、温熱液体滴下装置(シローダーラー機)には、額に滴下した前記油が付着するため、タオル等で清掃する作業が煩わしいばかりか、清掃作業に時間がかかった。
【0010】
上記従来技術の有する問題点を解消する、特許第5921854号公報では、次のような温熱液体滴下装置用の滴下剤が提案された。
【0011】
上記目的を達成するため、前記温熱液体滴下装置用の滴下剤は、グアーガムと、粘着性を有しない材料のエキスとを配合して粉粒体の固形状としたものであり、粘着性を有しない材料のエキスとして、ヘンナのエキス、グリシンを含有し、さらにメリアアジラクタエキス、アンマロウエキス、タカサブロウエキス、アカシナコン汁果実エキス、ツボクサエキス、ヤシ脂肪酸グリセリル、ラベンダー油の少なくとも1種以上を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11-221261号公報
【特許文献2】特許第5921854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した特許公報で提案された温熱液体滴下装置用の滴下剤によれば、グアーガムと、粘着性を有しない材料のエキスとを配合して粉粒体等の固形状としているから、この固形状体を温熱液体滴下装置(シローダーラー機)の貯槽内で約40°Cのお湯で溶かし温粘調液を作り、この温粘調液をノズルより人間の額に滴下しながら施術する場合、付着する油分がないので、人間の額や温熱液体滴下装置自体に、何らべとつくことがない。そのため、従来の如く、額や温熱液体滴下装置に付着した油分を、シャンプーしたり拭き取ったりする清掃作業が不要となると共に、油の酸化等による臭いもなくなる。また、拭いたタオル等の廃棄に伴う環境汚染や火災の虞れも解消できると共に、使用した滴下液は生活排水として廃棄できるため環境によい。さらに、特に高価なゴマ油を使用しないので経済的に安価な滴下液が提供できる。
【0014】
さらにまた、上記滴下剤は、前述したように、温熱液体滴下装置で実際に使用する場合には温粘調液になるものであるが、使用以前には粉末や粒状の粉粒体の固形状であるので、粉末や顆粒状の薬剤のように薬袋状のものに収納して保管ないし運搬できる。そのため、荷が嵩張らず保管場所をとらないので、輸送コストが低減できるばかりか、持ち運び時に軽く取り扱い易い等の利点がある。
【0015】
その上、上記の滴下剤にはグアーガムを含有しているから、このグアーガムの成分によって、増粘剤・ゲル化剤としてとろみが与えられると共に、血糖値上昇抑制作用、コレステロール低下作用、便通改善等の効果を有する。さらに、この滴下剤によれば、上記効果のほかに、ヘンナのエキスを含有しているから、豊かな髪を作ったり、フケや頭皮のかゆみを予防し、抗菌作用を有する効果があり、グリシンを含有しているから、解毒作用を有すると共に、中枢神経系における抑制性の伝達物質として作用する効果があり、このような効果の他に、メリアアジラクタエキス、アンマロウエキス、タカサブロウエキス、アカシナコン汁果実エキス、ツボクサエキス、ヤシ脂肪酸グリセリル、ラベンダー油の少なくとも1つ以上を含有しているから、それらの成分の有する効果がある。例えば、メリアアジラクタ(ニーム)エキスを含めた場合には頭皮を健やかにし、フケ、カユミの防止作用があり、アンマロウ(アムラ)エキスは美髪力や育毛作用があり、タカサブロウエキスは抜け毛や薄毛や吐血防止の効果があり、アカシナコン汁果実(シカカイ)は白髪染め等の効果があり、ツボクサエキスは皮膚のただれ、湿疹などに対する効果があり、ヤシ脂肪酸グリセリルは頭皮を保護する効果があり、ラベンダー油を含めた場合には香りが良く、癒しの効果がある。
【0016】
上記特許公報に記載された滴下剤は、以上説明したように効果も多いが、主な添加成分がインド等の固有の植物等のエキスを用いているため、入手しずらく高価のものとなっているとともに、体質的に日本人には合わなく、アレルギー反応等を起こす者もあった。具体的には、アナフィラキシーショックや皮膚への色素沈着等である。
【0017】
そこで、本発明は、日本において比較的入手し易く、しかも日本人の皮膚(頭皮)等に触れてもアレルギーや色素沈着を起こさず、しかも前記特許公報に記載された滴下剤と同様さらさらで取り扱い安い滴下液剤用粉体製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の滴下液剤用粉体製剤は、下記(1)~(14)の構成を有するものである。
(1)
温熱液体滴下装置用の滴下液剤を調整するための滴下液剤用粉体製剤であって、当帰または当帰エキスと、カンナビジオールと、アパタイト被覆酸化チタンと、グアーガムと、グリシンとを含有することを特徴とする滴下液剤用粉体製剤。
(2)
当帰エキスを1~5質量%と、カンナビジオールを1~5質量%と、アパタイト被覆酸化チタンを0.1~1質量%と、グアーガムを80~90質量%とを含有し、残部がグリシンである前記(1)の滴下液剤用粉体製剤。
(3)
粉末当帰を1~5質量%と、カンナビジオールを1~5質量%と、アパタイト被覆酸化チタンを0.1~1質量%と、グアーガムを80~90%質量%とを含有し、残部がグリシンである前記(1)の滴下液剤用粉体製剤。
(4)
前記当帰が大和当帰または北海当帰である前記(1)の滴下液剤用粉体製剤。
(5)
前記当帰が大和当帰である前記(4)の滴下液剤用粉体製剤。
(6)
アパタイト被覆酸化チタンが、多孔性アパタイト被覆二酸化チタンである前記(1)の滴下液剤用粉体製剤。
(7)
アパタイトが、リン酸カルシウム系アパタイトである前記(1)または(6)の滴下液剤用粉体製剤。
(8)
更に、スギナ粉末が添加された前記(1)の滴下液剤用粉体製剤。
(9)
更に、香料を含有する前記(1)~(8)のいずれかの滴下液剤用粉体製剤。
(10)
前記香料が、粉末であるラベンダーまたはラベンダーエキスである前記(9)の滴下液剤用粉体製剤。
(11)
前記(1)~(10)のいずれかの滴下液剤用粉体製剤を、水に溶融して形成した温熱液体滴下装置用の滴下液剤。
(12)
更に、脂肪酸グリセリルが添加された前記(11)の滴下液剤。
(13)
前記(12)の滴下液剤を38度~41℃に維持して、実際の温熱液体滴下施療を行う温熱液体滴下施療方法。
(14)
温熱液体滴下装置用の滴下液剤を調整するための滴下液剤用粉体製剤であって、当帰または当帰エキスと、カンナビジオールと、アパタイト被覆二酸化チタンと、グアーガムと、グリシンとを含有することを特徴とする滴下液剤用粉体製剤を製造する方法において、少なくとも当帰または当帰エキスをフリーズドドライ製法により製造されたものを用いることを特徴とする滴下液剤用粉体製剤の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態による温熱液体滴下装置用の滴下液剤が適用される温熱液体滴下装置の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
先ず、本発明の実施の形態による温熱液体滴下装置用の滴下液剤が適用される温熱液体滴下装置の一例(シローダーラー機)について、以下、簡単に説明する。
【0021】
この例で示す温熱液体滴下装置1は、滴下液剤を適温に加温するためのヒータ2を備えた、滴下液剤を収納する貯槽3と、該貯槽3内の滴下液剤が配管4A、4Bを介して供給される滴下液剤トレー5、この滴下液剤トレー5の底部に垂下したノズル6と、前記滴下液剤を滴下液剤トレー5に移送するためのポンプ7と、前記ヒータ2を制御し、貯槽3内の滴下液剤の温度を調節して、配管4A、4Bを介して滴下液剤トレー5内に移送される滴下液剤の温度を調節するための温度調節器やタイマー等の制御装置8と、人間の頭部を載せるとともに、前記ノズル6より人間の頭部に滴下され使用済みの滴下液剤を受けるため凹部12が上面に形成された支持台11と、前記支持台11の凹部で受けられた使用済み滴下液剤を前記貯槽3の返戻口10に返戻するための返戻管9を備えた構造となっている。
【0022】
以上説明した温熱液体滴下装置(シローダーラー機)を使用して頭部滴下療法(シローダーラー)を実施する際に使用される本発明の実施の形態による滴下液剤用粉体製剤について以下説明する。
【0023】
本発明の実施の形態による滴下液剤用粉体製剤は、当帰または当帰エキスと、カンナビジオールと、アパタイト被覆二酸化チタンと、グアーガムと、グリシンとを含有する。本発明の実施の形態による滴下液剤用粉体製剤は、更に、スギナ粉末や香料が添加されていることが好ましい。
【0024】
以下、前記粉体製剤の成分についてそれぞれ説明する。
当帰
当帰としては、大和当帰、ホッカイトウキ、ツクバトウキ、ミヤマトウキ、カラトウキ、セイヨウトウキ等があり、いずれも用いることが出来るが、本発明の目的、効能、入手のし易さから、大和当帰およびホッカイトウキが好ましく、特に、大和当帰が好ましい。
【0025】
当帰は、根はブチリデンフタリド、カルバクロル、カンフェンなどの精油を含み、この精油に大脳皮質に鎮静作用、延髄中枢に対して軽い刺激作用があるため、血液循環を高める作用があり、呼吸や物質代謝に好影響があるといわれ、充血によって生じる痛みの緩和に有効。膿を出し、肉芽形成作用があるとされている。その他有効成分として、シトステロール、パルミチン酸、リノール酸、ビタミンB1、ニコチン酸などを含んでいる。日本薬局方では「生薬トウキ」の基原植物は、トウキおよびホッカイトウキとされる。
【0026】
当帰自体の乾燥粉末体は、例えば、フリーズドライ法を用いて製造することができる。
ここで、フリーズドライとは、水分を含んだ原料(たとえば、根)をマイナス30℃程度で急速に凍結し、さらに減圧して真空状態で水分を昇華させて乾燥させることである(水は圧力が低い状態だと温度にかかわらず気体となるので、原料が凍っている状態で十分に圧力を下げると、原料中の水分が固体[氷]から直接気体[水蒸気]に変化して、原料の表面から外部へ逃げていく。これによって原料中の水分だけを簡単に取り除くことができ、乾燥させることができる)。
【0027】
出来た当帰の乾燥粉末体は、ナノ粒子向き分散機(アシザワ・ファインテック社製「ナノ・ゲッター」(登録商標)を用いて、その平均粒子径を200nm以下としたものが好ましい。被施術者の頭髪、皮膚への浸透が、より良好となるためである。
【0028】
当帰エキスの粉体は、例えば、漢方薬で用いている方法により製造することができる。
具体的には、次の方法による。
原料 → エキスの熱水抽出→抽出液の固体残渣からの分離 → 濃縮液 →乾燥→ エキス粉末
熱水抽水工程
抽出温度・昇温速度・加熱時間を厳密に管理しつつ熱水によりエキス分を熱水中に抽出
分離工程
その後、すみやかに抽出液を固体残渣から分離(遠心分離機を用いる)
このとき、殺菌を行うことが望ましい。自然由来の原料を用いることにより、原料に微生物や細菌が付着していることが多い。
濃縮工程
減圧濃縮法を採用し、抽出液を濃縮液にする。このとき、60℃以下で実施することが好ましい。
乾燥工程
乾燥効率の高いスプレードライ方式を採用し、濃縮液を乾燥させ、エキス粉末を得る。熱履歴が短縮されていることが好ましい。
【0029】
前記当帰の乾燥粉末体またはエキス粉末は、滴下液剤用粉体製剤の全体の1~5質量%であることが好ましい。
前記当帰の乾燥粉末体またはエキス粉末の量が、前記の範囲未満であると、効果が極めて薄くなり、前記の範囲を超えると、効果のコストパフォーマンスが悪くなる傾向がある。
【0030】
カンナビジオール
CBDとも称されるもので、鎮静・鎮痛・リラックス・不眠解消等の効果が得られるとされている。このCBDとしては、水溶性のものが好ましく、粉状態で市販されている。
前記CBDは、滴下液剤用粉体製剤の全体の1~5質量%であることが好ましい。
【0031】
アパタイト被覆酸化チタン
このアパタイト被覆二酸化チタンとしては、二酸化チタンである基材の表面を多孔性アパタイト(リン酸カルシウム)で被覆した光触媒性複合組成物であることが好ましい。このような光触媒性複合組成物は、特許第4652776号公報に記載されているものが好ましく、この光触媒性複合組成物は、光触媒機能を有する基材を多孔性リン酸カルシウム合成用の処理液(繊維状蛋白質(シルク繊維)と接触させて当該基材の表面を多孔性リン酸カルシウム(アパタイトあるいはその類縁化合物)で被覆して製造される。この光触媒性複合組成物の製造方法では、処理液中に繊維状蛋白質を添加したため、基材表面での多孔性リン酸カルシウムの生成が不完全であり、基材表面の一部のみが多孔性リン酸カルシウムで被覆された状態になる。また、処理液中に繊維状蛋白質を添加すると、基材表面での多孔性リン酸カルシウムの生成が不完全であり、リン酸カルシウムの結晶化度が低いため、基材表面の全体が多孔性リン酸カルシウムで覆われている場合でも、ボールミルで軽く攪拌した場合、あるいはボールミルよりも破砕力の小さな装置で攪拌した場合でも、多孔性リン酸カルシウムの一部が基材表面から脱落し、基材表面の一部のみが多孔性リン酸カルシウムで被覆された状態になる。 このように製造された光触媒性複合組成物は、従来の光触媒性複合組成物と比較して水などの溶媒への分散性が高く、本発明の滴下液剤に用いて極めて好ましい。
このような光触媒性複合組成物は、株式会社アクアプロジェクト(福岡)から商品名「トリニティ」で販売されている。
アパタイト被覆二酸化チタンの量は、滴下液剤用粉体製剤の全体の0.1~1質量%であることが好ましい。
【0032】
グアーガム(Guar Gum)
グアーガムとは、グアー豆のいわゆる胚乳(正確には子葉)部から得られる水溶性の天然多糖類である。本発明においては、滴下液剤とした際に、油の代わりにある程度の粘性を持たせるために用いる。粘性が高すぎる場合には、粘性の小さい「グアーガム分解物」を用いることが好ましい。
グアーガムの量は、滴下液剤用粉体製剤の全体の80~90質量%であることが好ましい。
【0033】
グリシン
滴下液剤用粉体製剤の残部を占める。
【0034】
本滴下液剤用粉体製剤は、スギナ粉末や香料を含有することが出来る。前記香料としては、粉末であるラベンダーまたはラベンダーエキスを用いることができる。香料の添加の量は、任意である。
スギナ粉末は、市販されている。スギナ粉末には、葉緑素、水溶性ケイ素、エキセトニン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛等が含まれており、この成分の中で特に水溶性ケイ素が、CBDに伴われて、被施術者の皮膚下に浸透し、消炎効果や精神安定効果をもたらす可能性がある。このスギナ粉末の含有量は、粉体製剤全体の0.5~1質量%程度が好ましい。
【0035】
温熱液体滴下装置用の滴下液剤は、以上説明した滴下液剤用粉体製剤を、水に溶融して形成することが出来る。この滴下液剤は、実際の温熱液体滴下施療を行う温熱液体滴下施療方法に用いる場合には、38度~41℃に維持して用いられることが好ましい。滴下液剤には、脂肪酸グリセリルを含有させることができる。
【0036】
(実施例1)
下記の処方で100グラムの滴下液剤用粉体製剤を準備した。
大和当帰エキス:3グラム
カンナビジオール:0.5グラム
多孔性アパタイト被覆二酸化チタン:0.5グラム
グアーガム:86.5グラム
グリシン:9.5グラム
【0037】
これに、ラベンダーエキスを少量添加して実証実験のために使用する滴下液剤用粉体製剤を調整し、以上の組成からなる滴下液剤用粉体製剤4グラムに対して、1600mlの精製水を二度に分けて加えて撹拌し滴下液剤を製造した。
この滴下液剤を、約39℃に加温し、これを少量ずつ、被施術者の額に滴下した。
以上を10代から90代の女性の被施術者70人および男性の被施術者30人に30分間行ったところ、男女合わせて97人の被施術者が充分にリラックスしたとの回答があった。
また、全員から従来のシロダーラと比べてさっぱりしていて、爽やかだったとの感想があった。その一方で、2人からごま油等の油分を用いたものより物足りなかったとの意見があった。
【0038】
以上から、本発明の効果が明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1温熱液体滴下装置
2ヒータ
3貯槽
5滴下液トレー
6ノズル
7ポンプ
8制御装置
11上蓋
12凹部