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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004362
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】立体造形物製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20240109BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20240109BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240109BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20240109BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240109BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/264
B29C64/209
B29C64/321
B33Y10/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103993
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】594034005
【氏名又は名称】ホッティーポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】堀田 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】田鍋 史生
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AB12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL22
4F213WL24
4F213WL25
4F213WL29
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL64
4F213WL74
4F213WL76
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用して紫外線硬化方式により立体造形物を製造することができる立体造形物製造方法を提供する。
【解決手段】紫外線硬化材料を射出して、未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する未硬化造形物要素形成ステップS1と、未硬化造形物要素形成ステップS1により形成された未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素に紫外線を照射することにより、硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する硬化造形物要素形成ステップS2と、を交互に繰り返すことにより立体造形物を製造することを特徴とする立体造形物製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化材料が積層されるステージと、前記ステージに前記紫外線硬化材料を射出する材料射出装置と、前記ステージに射出された前記紫外線硬化材料に紫外線を照射する紫外線照射装置と、を備え、紫外線硬化材料を積層しつつ紫外線により硬化させて立体造形物を製造する3Dプリンタ装置を使用して立体造形物を製造する立体造形物製造方法であって、
前記材料射出装置により前記ステージに前記紫外線硬化材料を射出して、未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する未硬化造形物要素形成ステップと、
前記未硬化造形物要素形成ステップにより形成された前記未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素に、前記紫外線照射装置により紫外線を照射することにより、硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する硬化造形物要素形成ステップと、
を交互に実行することにより立体造形物を製造することを特徴とする立体造形物製造方法。
【請求項2】
前記硬化造形物要素形成ステップにより形成された前記硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素の上に紫外線不透過性部材を配置する紫外線不透過性部材配置ステップを有し、
前記紫外線不透過性部材配置ステップの後に、前記未硬化造形物要素形成ステップを実行することにより、当該紫外線不透過性部材を覆う未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成した後、前記硬化造形物要素形成ステップを実行することを特徴とする請求項1記載の立体造形物製造方法。
【請求項3】
前記紫外線硬化材料は、顔料が添加された紫外線硬化シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1記載の立体造形物製造方法。
【請求項4】
前記材料射出装置は、
前記紫外線硬化材料を収容した材料カートリッジと、
前記材料カートリッジを交換可能に保持するカートリッジ保持部と、
前記カートリッジ保持手段に保持された前記材料カートリッジから前記紫外線硬化材料を射出させる材料射出手段と、を備え、
前記材料カートリッジは、
紫外線遮蔽材料により形成されたシリンジ状の材料容器部と、
当該材料容器部に挿入されたピストン部と、を有し、
前記材料射出手段は、前記紫外線硬化材料を前記材料容器部から射出させるべく前記ピストン部を駆動する手段であり、
前記紫外線照射部は、前記ステージ部の上面に対向する紫外線照射面を有し、該紫外線照射面は平面視方形状に形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の立体造形物製造方法。
【請求項5】
前記材料カートリッジは、収容している前記紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類のものが用意されていることを特徴とする請求項4記載の立体造形物製造方法。
【請求項6】
前記カートリッジ保持部及び前記紫外線照射部に対して前記ステージ部を移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項5記載の立体造形物製造方法。
【請求項7】
前記材料カートリッジ、前記カートリッジ保持部、前記材料射出装置、前記ステージ、前記移動手段及び前記紫外線照射装置を覆う紫外線遮蔽体を有することを特徴とする請求項6記載の立体造形物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化材料を積層しつつ紫外線により硬化させて立体造形物を製造する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化材料を用いて立体造形物を製造する3Dプリンタ装置が知られている(例えば、特許文献1-4参照)。この種の3Dプリンタは、紫外線硬化材料からなる未硬化の造形物を形成した後、当該未硬化の造形物に紫外線を照射することにより、未硬化の造形物を硬化させて目的の立体造形物を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-209494号公報
【特許文献2】特開2018-111246号公報
【特許文献3】特開2015-202689号公報
【特許文献4】特開2005-205670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の立体造形物製造方法では、顔料が添加された紫外線硬化材料を使用して、造形物を良好に硬化させることは困難であった。顔料が添加された紫外線硬化材料は、顔料が添加されていない紫外線硬化材料と比較して紫外線透過率が低いためである。
【0005】
このため従来、顔料が添加された紫外線硬化材料を用いた造形物として得られる製品は、医療分野において血液等の検査に使用されるマイクロ流路、ナノインプリント用ソフトモールド、転写印刷用ブランケット、等、厚さ寸法が比較的薄く全体的に透明な製品に限られていた。
【0006】
また、従来の立体造形物製造方法では、金属部材等、紫外線を透過させない部材(以下、「紫外線不透過性部材」と称す。)が混在する造形物を製造することは困難であった。紫外線不透過性部材の影になる部分に紫外線を照射することができないからである。
【0007】
そこで、本発明は、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した場合や、紫外線不透過性部材が混在した場合であっても、紫外線硬化方式により立体造形物を製造することができる立体造形物製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の立体造形物製造方法は、紫外線硬化材料が積層されるステージと、前記ステージに前記紫外線硬化材料を射出する材料射出装置と、前記ステージに射出された前記紫外線硬化材料に紫外線を照射する紫外線照射装置と、を備え、紫外線硬化材料を積層しつつ紫外線により硬化させて立体造形物を製造する3Dプリンタ装置を使用して立体造形物を製造する立体造形物製造方法であって、前記材料射出装置により前記ステージに前記紫外線硬化材料を射出して、未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する未硬化造形物要素形成ステップと、前記未硬化造形物要素形成ステップにより形成された前記未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素に、前記紫外線照射装置により紫外線を照射することにより、硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する硬化造形物要素形成ステップと、を交互に実行することにより立体造形物を製造することを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の立体造形物製造方法によれば、未硬化造形物要素形成ステップと硬化造形物要素形成ステップと、を交互に繰り返すことにより、紫外線硬化材料からなる薄膜の造形物要素を複数層積層して所望の厚さ寸法の立体造形物を製造することができる。
この場合、一層分の造形物要素は薄く、紫外線が良好に透過するため、顔料が添加された紫外線硬化材料など、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した場合でも、一層分の造形物要素であれば紫外線照射により良好に硬化させることができる。
したがって、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した場合でも、各層を形成する造形物要素毎に紫外線照射を実施してその都度、硬化させ、これを複数層積層することにより、全体的に良好に硬化した立体造形物を製造することができる。この方法によれば、一層分の造形物要素毎に紫外線照射を実施して硬化させるため、例えば、従来は製作が困難であってアンダーカット部を有する立体造形物も製造し得る。
【0010】
請求項2記載の立体造形物製造方法は、請求項1記載の立体造形物製造方法において、前記硬化造形物要素形成ステップにより形成された前記硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素の上に紫外線不透過性部材を配置する紫外線不透過性部材配置ステップを有し、前記紫外線不透過性部材配置ステップの後に、前記未硬化造形物要素形成ステップを実行することにより、当該紫外線不透過性部材を覆う未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成した後、前記硬化造形物要素形成ステップを実行することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の立体造形物製造方法によれば、硬化造形物要素形成ステップと未硬化造形物要素形成ステップとの間に、紫外線不透過性部材配置ステップを実行することにより、紫外線不透過性部材を包含する立体造形物を製造することができる。
すなわち、紫外線照射方式による従来の立体造形物製造方法では、紫外線不透過性部材の影になる部分には紫外線を照射することができないため、紫外線不透過性部材包含する立体造形物を製造することは極めて困難であったが、請求項2記載の立体造形物製造方法によれば、紫外線不透過性部材の影になる部分の紫外線硬化材料を硬化させてから、その上に紫外線不透過性部材を配置するため、紫外線不透過性部材の影になる部分も良好に硬化させて、紫外線不透過性部材を包含する立体造形物を高品質に製造することができる。
【0012】
請求項3記載の立体造形物製造方法は、請求項1記載の立体造形物製造方法において、前記紫外線硬化材料は、顔料が添加された紫外線硬化シリコーンゴムであることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の立体造形物製造方法によれば、顔料が添加された紫外線硬化シリコーンゴムを紫外線硬化材料に使用して、紫外線照射法により立体造形物を製造することができる。
【0014】
請求項4記載の立体造形物製造方法は、請求項1、2又は3記載の立体造形物製造方法において、前記材料射出装置は、前記紫外線硬化材料を収容した材料カートリッジと、前記材料カートリッジを交換可能に保持するカートリッジ保持部と、前記カートリッジ保持手段に保持された前記材料カートリッジから前記紫外線硬化材料を射出させる材料射出手段と、を備え、前記材料カートリッジは、紫外線遮蔽材料により形成されたシリンジ状の材料容器部と、当該材料容器部に挿入されたピストン部と、を有し、前記材料射出手段は、前記紫外線硬化材料を前記材料容器部から射出させるべく前記ピストン部を駆動する手段であり、前記紫外線照射部は、前記ステージ部の上面に対向する紫外線照射面を有し、該紫外線照射面は平面視方形状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
紫外線硬化材料は、材料カートリッジのシリンジ状の材料容器部に予め収容されており、材料射出手段が材料カートリッジのピストン部を駆動することによりステージ部に射出される。材料容器部は紫外線遮蔽材料により形成されているので、材料カートリッジ内の紫外線硬化材料は劣化することなく高品質に保たれる。
【0016】
そして、この立体造形物製造方法に使用する3Dプリンタは、材料カートリッジが交換可能であることにより、材料カートリッジを別の材料を収容している材料カートリッジに交換するだけで、使用する材料を別の材料に変えることができるので、従来のようなディスペンサ部の洗浄作業が不要である。よって、この立体造形物製造方法によれば、立体造形物を高品質且つ高効率に製造可能である。
また、前記紫外線照射部は、前記ステージ部の上面に対向する紫外線照射面を有し、該紫外線照射面は平面視方形状に形成されていることから、薄厚の各造形物要素を形成する未硬化造形物要素に対して、面的に、かつ均一に紫外線を照射させることができ、各造形物要素の効果的な硬化が可能となる。
【0017】
請求項5記載の立体造形物製造方法は、請求項4記載の立体造形物製造方法において、前記材料カートリッジは、収容している前記紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類のものが用意されていることを特徴とする。このように、収容している紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類の材料カートリッジが用意されていることにより、材料カートリッジを交換するだけで、紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類の製品を高品質且つ高効率に製造可能である。また部分ごとに、異なる数種の材料で、1つの造形物を作成することも可能となる。
【0018】
請求項6記載の立体造形物製造方法は、請求項5記載の立体造形物製造方法において、前記カートリッジ保持部及び前記紫外線照射部に対して前記ステージ部を移動させる移動手段を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の立体造形物製造方法によれば、カートリッジ保持部とステージとを相対移動させつつ、紫外線硬化材料を材料カートリッジからステージに射出するとともに、ステージ上の紫外線硬化材料に紫外線を照射することにより、紫外線硬化材料を硬化させて、効率良く立体造形物を製造することができる。
【0020】
請求項7の立体造形物製造方法は、請求項6記載の立体造形物製造方法において、前記材料カートリッジ、前記カートリッジ保持部、前記材料射出装置、前記ステージ、前記移動手段及び前記紫外線照射装置を覆う紫外線遮蔽体を有することを特徴とする。
【0021】
請求項7の立体造形物製造方法によれば、外部からの紫外線の入射を紫外線遮蔽体により防止して、紫外線硬化材料からなる造形物を高品質に製造することができる。そして、材料容器部が紫外線遮蔽材料により形成されているので、紫外線遮蔽体と材料容器部とによる二重の紫外線遮蔽効果により、材料カートリッジに収容された紫外線硬化材料を外部からの紫外線から強力に保護することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の立体造形物製造方法によれば、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した場合や、紫外線不透過性部材が混在している場合であっても、紫外線硬化方式により立体造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態の立体造形物製造方法に使用する3Dプリンタの全体の構造の概念図である。
図2図1に示す3Dプリンタの要部の構造の概念図である。
図3図1に示す3Dプリンタの材料カートリッジの概念図である。
図4】第1実施形態の立体造形物製造方法を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態の立体造形物製造方法を示すフローチャートである。
図6図6(a)は、未硬化造形物要素形成ステップにより、未硬化の第1層目の造形物要素が形成された状態を示す概念図である。図6(b)は、第1層目の造形物要素に対し、硬化造形物要素形成ステップを実行している状態を示す概念図である。図6(c)は、未硬化造形物要素形成ステップにより、未硬化の第2層目の造形物要素が形成された状態を示す概念図である。図6(d)は、第2層目の造形物要素に対し、硬化造形物要素形成ステップを実行している状態を示す概念図である。
図7】第1実施形態の立体造形物製造方法により製造された立体造形物を例示する概念図である。
図8図8(a)は、硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素の上に、紫外線不透過性部材配置ステップにより、紫外線不透過性部材を配置した状態を示す概念図である。図8(b)は、紫外線不透過性部材を覆う未硬化の造形物要素を、未硬化造形物要素形成ステップにより形成した状態を示す概念図である。図8(c)は、紫外線不透過性部材を覆う未硬化の造形物要素に対し、硬化造形物要素形成ステップを実行している状態を示す概念図である。図8(d)は、硬化した造形物要素の上に配置された紫外線不透過性部材を覆う硬化した造形物要素が形成された状態を示す概念図である。
図9】第2実施形態の立体造形物製造方法により製造された立体造形物を例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、一実施形態の立体造形物製造方法について、図面を参照しながら説明する。
[3Dプリンタ]
まず、一実施形態の立体造形物製造方法に使用する3Dプリンタについて、図1乃至図3を参照して説明する。
【0025】
図1及び図2に示す3Dプリンタ10は、紫外線硬化材料Mを射出する材料射出装置(ディスペンサ)20と、材料射出装置20から射出された紫外線硬化材料Mが積層されるステージ30と、ステージ30に射出された紫外線硬化材料Mに紫外線UVを照射する紫外線照射装置40と、材料射出装置20及び紫外線照射装置40に対してステージ30を移動させる移動機構部50と、プリンタ本体60と、これら全てを覆う筐体70と、を有する。筐体70は装置20の外部から内部から浸入する紫外線を遮蔽するように構成されている。
【0026】
プリンタ本体60は、3Dプリンタ10の底部を構成する基部61と、基部61から上方に延びる二つの支持部62、63とを有する。材料射出装置20は一方の支持部62に支持されており、紫外線照射装置40は他方の支持部63に支持されている。ステージ30は、基部61上に設けられている。
【0027】
材料射出装置20は、紫外線硬化材料Mを収容した材料カートリッジ21と、材料カートリッジ21を交換可能に保持するカートリッジ保持部22と、カートリッジ保持部22に保持(装着)された材料カートリッジ21から紫外線硬化材料Mを射出させる圧縮空気供給部(材料射出手段)23と、を有する。
【0028】
カートリッジ保持部22は、昇降機構51を介して支持部62に支持されている。昇降機構51は、カートリッジ保持部22を上下方向(矢印Zで示す方向)に移動させる。
【0029】
圧縮空気供給部23は、支持部62に固定して設けられている。圧縮空気供給部23は、圧縮空気を吐出する圧縮空気吐出機構23aと、圧縮空気吐出機構23aから吐出された圧縮空気を、カートリッジ保持部22に装着された材料カートリッジ21に供給するための圧縮空気供給管23bと、を有している。
【0030】
図2に示すように、材料カートリッジ21は、シリンジ状の材料容器部21aと、材料容器部21aに挿入されたピストン部21bと、を有する。
材料容器部21aの基端(上端)には、圧縮空気供給管23bが接続される圧縮空気入口21cが設けられている。材料カートリッジ21は、圧縮空気吐出機構23aから圧縮空気供給管23bを通して供給される圧縮空気Aにより、ピストン部21bが押圧されることにより、材料容器部21aの先端(下端)に設けられた吐出口21dから紫外線硬化材料Mを吐出する。材料容器部21a及びピストン部21bは紫外線遮蔽性の合成樹脂材料により形成されている。
【0031】
図1及び図2に示すように、ステージ30は、水平移動機構52を介して基部61に支持されている。水平移動機構52は、ステージ30を左右方向(矢印Xで示す方向)及び前後方向(矢印Yで示す方向)に移動させる。
【0032】
移動機構部50は、昇降機構51及び水平移動機構52により構成される。すなわち、移動機構部50は、昇降機構51及び水平移動機構52により、材料射出装置20とステージ30とを互いに直交する3軸方向(上下、左右及び前後)に移動させ得る。そして、水平移動機構52により、紫外線照射装置40に対して、ステージ30を左右方向及び前後方向に移動させ得る。
【0033】
紫外線照射装置40は、光源としてUVランプ又はUV-LEDを備える。紫外線照射装置40は、ステージ30の上面に対向する平面視方形状の紫外線出射面40aを有し、ステージ30の中央部を含むワーク製造領域に積層された紫外線硬化材料Mに対し、紫外線出射面40aから紫外線を出射して、面的に、かつ照射範囲を全体として均一に照射し得るように構成されている。
この実施形態の立体造形物製造方法では、一層分の紫外線硬化材料Mがステージ30に吐出される毎に、ステージ30のワーク製造領域が紫外線照射装置40の紫外線照射範囲に入るようにステージ30がY方向に沿って移動され、ステージ30上の紫外線硬化材料Mに紫外線UVが照射される。
【0034】
3Dプリンタ10は図示しない制御装置を備える。制御装置は、製造すべき製品の3Dデータに基づいて、圧縮空気供給部23、移動機構部50及び紫外線照射装置40を制御する。
【0035】
図3に示すように、材料カートリッジ21は、収容している紫外線硬化材料Mの種類が異なる複数種類の材料カートリッジ21A、21B、21C、・・・が用意されている。紫外線硬化材料Mは、予め一又は複数種類の硬化材料成分を含有させた溶液である。未使用の材料カートリッジ21の圧縮空気入口21c及び吐出口21dは、図示しない閉塞部材で塞がれている。閉塞部材は紫外線遮蔽性の合成樹脂材料により形成されている。
【0036】
上記のように構成された3Dプリンタ10は、カートリッジ保持部22とステージ30とを互いに直交する3軸方向(上下、左右及び前後)に相対的に移動させつつ、紫外線硬化材料Mを材料カートリッジ21からステージ30に射出するとともに、ステージ30上の紫外線硬化材料Mに紫外線を照射することにより、紫外線硬化材料Mを硬化させて造形物を製造する。
【0037】
紫外線硬化材料Mは、材料カートリッジ21のシリンジ状の材料容器部21aに予め収容されており、圧縮空気供給部23が材料カートリッジ21のピストン部21bを駆動することによりステージ30に射出される。材料カートリッジ21は紫外線遮蔽材により形成されているので、材料カートリッジ21内の紫外線硬化材料Mは劣化することなく高品質に保たれる。
【0038】
そして、この3Dプリンタ10は、材料カートリッジ21が交換可能であることにより、材料カートリッジ21を別の材料を収容している材料カートリッジ21に交換するだけで、使用する紫外線硬化材料Mを別の紫外線硬化材料Mに変えることができるので、従来のようなディスペンサ部の洗浄作業が不要である。
【0039】
よって、この3Dプリンタ10によれば、製品を高品質且つ高効率に製造可能である。また、この3Dプリンタ10は、ディスペンサ部として、合成樹脂製の材料カートリッジ21を使用するので、金属製のディスペンサ部を備える3Dプリンタと比較して安価に製造可能である。
【0040】
また、この3Dプリンタ10は、材料カートリッジ21として、収容している紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類の材料カートリッジ21A、21B、21C、・・・が用意されているので、材料カートリッジ21を交換するだけで、紫外線硬化材料Mの種類が異なる複数種類の製品を高品質且つ高効率に製造可能である。
【0041】
また、この3Dプリンタ10は、ピストン駆動機構として、圧縮空気によりピストン部21bを駆動する圧縮空気供給部23を採用したことにより、比較的簡単な構成でピストン駆動機構を実現できるので、3Dプリンタ10の製造コスト及びメンテナンスコストを低減できる。
【0042】
また、この3Dプリンタ10は、外部からの紫外線の入射を紫外線遮蔽体である筐体70により防止して、紫外線硬化材料Mからなる造形物を高品質に製造することができる。そして、材料カートリッジ21の材料容器部21a及びピストン部21bが紫外線遮蔽材料により形成されているので、筐体70と材料容器部21a及びピストン部21bとによる二重の紫外線遮蔽効果により、材料カートリッジ21に収容された紫外線硬化材料Mを外部の紫外線から強力に保護しつつ、紫外線照射により高品質の製品を製造することができる。
【0043】
また、この3Dプリンタ10は、紫外線出射面40aから造形物の上面全域に均一に紫外線UVを確実に照射することが可能であることから、例えば、一層分の硬化層を硬化形成した後、当該硬化層の上面に別の一層分の硬化層を形成するというような造形物の形成工程を、より確実に実行することが可能となる。その結果、多層硬化による造形物の製造を迅速、確実且つ高品質に行うことが可能となる。
【0044】
また、この3Dプリンタ10の材料カートリッジ21は、紫外線遮蔽材により形成されているので、材料カートリッジ21内の紫外線硬化材料Mは劣化することなく高品質に保たれる。そして、この材料カートリッジ21は、予め紫外線硬化材料Mを収容しており、3Dプリンタ10のカートリッジ保持部22に交換可能に装着されるので、3Dプリンタ10の材料射出装置20の洗浄作業を不要にする。よって、この材料カートリッジ21を使用可能な3Dプリンタ10によれば、製品を高品質且つ高効率に製造可能である。
【0045】
[立体造形物製造方法]
つぎに、一実施形態の立体造形物製造方法について、図4乃至図9を参照して説明する。
【0046】
[第1実施形態]
図4に示すように、第1実施形態の立体造形物製造方法は、未硬化造形物要素形成ステップS1と、硬化造形物要素形成ステップS2と、を有する。
【0047】
未硬化造形物要素形成ステップS1は、材料射出装置20によりステージ30に紫外線硬化材料Mを射出することにより、図6(a)及び図6(c)に例示するように、未硬化の紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Eaを形成するステップである。
未硬化造形物要素形成ステップS1が一回実行される毎に、一層分の未硬化の造形物要素Eaが形成される。紫外線硬化材料Mは、顔料が添加された紫外線硬化シリコーンゴムである。一層分の造形物要素Eaの厚さは、紫外線照射装置40による紫外線照射により紫外線UVが良好に透過し得る厚さである。
【0048】
硬化造形物要素形成ステップS2は、未硬化造形物要素形成ステップS1により形成された未硬化の紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Eaに、図6(b)及び図6(d)に示すように、紫外線照射装置40により紫外線UVを照射することにより、硬化した紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Ebを形成するステップである。
【0049】
図6(a)は、未硬化造形物要素形成ステップS1により、ステージ30上に未硬化の紫外線硬化材料Mからなる第1層目の造形物要素Eaが形成された状態を例示している。図6(c)に示す第2層目の未硬化の造形物要素Eaは、図6(a)に示す未硬化の第1層目の造形物要素Eaに対し、図6(b)に示すように硬化造形物要素形成ステップS2を実行して、第1層目の硬化した造形物要素Ebを形成した後、その造形物要素Ebの上に積層して形成される。
図6(c)に示す第2層目の未硬化の造形物要素Eaに対し、図6(d)に示すように硬化造形物要素形成ステップS2を実行することにより、第2層目の硬化した造形物要素Ebが形成される。このように、未硬化造形物要素形成ステップS1と硬化造形物要素形成ステップS2とを交互に必要回数実行することにより、図7に例示する所望の形状・寸法の立体造形物W1が製造される。
【0050】
このように、第1実施形態の立体造形物製造方法によれば、未硬化造形物要素形成ステップS1と硬化造形物要素形成ステップS2と、を交互に実行することにより、紫外線硬化材料Mからなる薄膜の造形物要素(硬化した造形物要素Eb)を複数層積層して所望の形状・寸法の立体造形物Wを製造することができる。
この場合、一層分の造形物要素(未硬化の造形物要素Ea)は薄く、紫外線UVが良好に透過するため、顔料が添加された紫外線硬化材料Mを使用した場合でも、一層分の造形物要素であれば紫外線照射により良好に硬化させることができる。
したがって、顔料が添加された紫外線硬化材料Mを使用した場合でも、造形物要素(未硬化の造形物要素Ea)毎に紫外線照射を実施して硬化させて、硬化した造形物要素Ebを形成し、これを複数層積層することにより、全体的に良好に硬化した立体造形物Wを製造することができる。
この方法によれば、一層分の造形物要素(未硬化の造形物要素Ea)毎に紫外線照射を実施して硬化させるため、図7に例示するようなアンダーカット部Maを有する立体造形物W1を含む各種の複雑な形状の立体造形物を製造し得る。
【0051】
また、図1乃至図3に示した3Dプリンタ10を使用して、第1実施形態の立体造形物製造方法により立体造形物を製造することにより、紫外線硬化材料Mの種類が異なる複数種類の立体造形物を高品質且つ高効率に製造することができる。
【0052】
[第2実施形態]
図5に示すように、第2実施形態の立体造形物製造方法は、未硬化造形物要素形成ステップS1及び硬化造形物要素形成ステップS2に加えて、紫外線不透過性部材配置ステップS3を有する。
【0053】
紫外線不透過性部材配置ステップS3は、硬化造形物要素形成ステップS2により形成された硬化した紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Ebの上に、図8(a)に示すように、紫外線不透過性部材Kを配置するステップである。紫外線硬化材料Mは、紫外線硬化シリコーンゴムである。
【0054】
紫外線不透過性部材配置ステップS3の後に、未硬化造形物要素形成ステップS1を実行することにより、図8(b)に示すように、紫外線不透過性部材Kを覆う未硬化の紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Eaを形成した後、図8(c)に示すように、硬化造形物要素形成ステップS2を実行する。これにより、硬化した紫外線硬化材料Mの中に紫外線不透過性部材Kが埋設された状態になる。
【0055】
その後、更に、未硬化造形物要素形成ステップS1と硬化造形物要素形成ステップS2とを交互に必要回数実行することにより、図9に例示するような、紫外線不透過性部材Kを包含した所望の形状・寸法の立体造形物W2が製造される。
【0056】
このように、第2実施形態の立体造形物製造方法によれば、硬化造形物要素形成ステップS2と未硬化造形物要素形成ステップS1との間に、紫外線不透過性部材配置ステップS3を実行することにより、紫外線不透過性部材Kを包含する立体造形物W2を製造することができる。
すなわち、紫外線照射方式による従来の立体造形物製造方法では、紫外線不透過性部材Kの影になる部分には紫外線UVを照射することができないため、紫外線不透過性部材Kを包含する立体造形物W2を製造することは極めて困難であったが、第2実施形態の立体造形物製造方法によれば、紫外線不透過性部材Kの影になる部分の紫外線硬化材料M(紫外線不透過性部材Kの下の造形物要素)を硬化させてから、その上に紫外線不透過性部材Kを配置するため、紫外線不透過性部材Kの影になる部分も良好に硬化させて、紫外線不透過性部材Kを包含する立体造形物W2を高品質に製造することができる。
【0057】
また、図1乃至図3に示した3Dプリンタ10を使用して、第2実施形態の立体造形物製造方法により立体造形物を製造することにより、紫外線不透過性部材Kを包含し且つ紫外線硬化材料Mの種類が異なる複数種類の立体造形物を高品質且つ高効率に製造することができる。紫外線不透過性部材Kを包含した紫外線硬化シリコーンゴム製の立体造形物は、医療機器、電子機器、等の、厚さ寸法の大きな立体形状の造形物を作製することが可能である。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、紫外線硬化材料Mとして紫外線硬化シリコーンゴムを使用した例を示したが、紫外線硬化材料Mとして紫外線硬化エポキシ、紫外線硬化ウレタン、等を使用することも可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、材料カートリッジ21の材料容器部21a及びピストン部21bが紫外線遮蔽材料により形成されているが、材料カートリッジ21に収容された紫外線硬化材料Mを外部の紫外線から保護することが可能であれば、ピストン部21bは紫外線遮蔽材料で形成される必要はない。
【0060】
また、上記実施形態では、移動機構部50は、材料射出装置20をステージ30に対して上下に移動させる昇降機構51と、ステージ30を材料射出装置20に対して水平方向に移動させる水平移動機構52とを備えているが、昇降機構51を省略するとともに、水平移動機構52に代えて、ステージ30を材料射出装置20に対して3軸方向(上下、左右及び前後)に移動させる移動機構を採用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、紫外線照射装置40がプリンタ本体60に固定されているが、紫外線照射装置40は材料射出装置20に固定されてもよい。
なお、上記実施の形態にあっては、材料カートリッジ21を構成する材料容器21aの配置は、図1に示すように、材料射出装置20の中央において、圧縮空気供給部23を構成する圧縮空気供給管23bの先端部に配置されている場合を例に説明したが、本実施の形態の配置は、材料カートリッジ21の大きさが小型の場合であって、材料カートリッジがより大型の場合には、材料射出装置20の中央ではなく、側部又は後部に配置され、その位置において圧縮空気供給管23bを接合して供給される圧縮空気により紫外線硬化材料を送出するように構成してもよく、本実施の形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した立体造形物の製造及び紫外線不透過性部材を包含した立体造形物の製造に適用することができることから、広く産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0063】
10 3Dプリンタ
20 材料射出装置
21 材料カートリッジ
21A 材料カートリッジ
21B 材料カートリッジ
21C 材料カートリッジ
21a 材料容器部
21b ピストン部
21c 圧縮空気入口
21d 吐出口
22 カートリッジ保持部
23 圧縮空気供給部(材料射出手段)
23a 圧縮空気吐出機構
23b 圧縮空気供給管
30 ステージ
40 紫外線照射装置
40a 紫外線出射面
50 移動機構部
51 昇降機構
52 水平移動機構
60 プリンタ本体
61 基部
62 支持部
63 支持部
70 筐体(紫外線遮蔽体)
A 圧縮空気
M 紫外線硬化材料
UV 紫外線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化材料が積層されるステージと、前記ステージに前記紫外線硬化材料を射出する材料射出装置と、前記ステージに射出された前記紫外線硬化材料に紫外線を照射する紫外線照射装置と、を備え、紫外線硬化材料を積層しつつ紫外線により硬化させて立体造形物を製造する3Dプリンタ装置を使用して立体造形物を製造する立体造形物製造方法であって、
前記材料射出装置により前記ステージに前記紫外線硬化材料を射出して、未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する未硬化造形物要素形成ステップと、
前記未硬化造形物要素形成ステップにより形成された前記未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素に、前記紫外線照射装置により紫外線を照射することにより、硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する硬化造形物要素形成ステップとを交互に実行し、
前記材料射出装置は、
前記紫外線硬化材料を収容した材料カートリッジと、
前記材料カートリッジを交換可能に保持するカートリッジ保持部と、
前記カートリッジ保持部に保持された前記材料カートリッジから前記紫外線硬化材料を射出させる材料射出手段と、を備え、
前記材料カートリッジは、
紫外線遮蔽材料により形成されたシリンジ状の材料容器部と、
当該材料容器部に挿入されたピストン部と、を有し、
前記材料射出手段は、前記紫外線硬化材料を前記材料容器部から射出させるべく前記ピストン部を駆動する手段であり、
前記紫外線照射装置は、前記ステージの上面に対向する紫外線照射面を有し、該紫外線照射面は平面視方形状に形成され、
前記紫外線硬化材料は、顔料が添加された紫外線硬化シリコーンゴムであって、
一層分の造形物要素の厚さは、前記紫外線照射装置による紫外線照射により紫外線が良好に透過し得る厚さであることを特徴とする立体造形物製造方法。
【請求項2】
前記硬化造形物要素形成ステップにより形成された前記硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素の上に紫外線不透過性部材を配置する紫外線不透過性部材配置ステップを有し、
前記紫外線不透過性部材配置ステップの後に、前記未硬化造形物要素形成ステップを実行することにより、当該紫外線不透過性部材を覆う未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成した後、前記硬化造形物要素形成ステップを実行することを特徴とする請求項1記載の立体造形物製造方法。
【請求項3】
前記材料カートリッジは、収容している前記紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類のものが用意されていることを特徴とする請求項1記載の立体造形物製造方法。
【請求項4】
前記カートリッジ保持部及び前記紫外線照射装置に対して前記ステージを移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1記載の立体造形物製造方法。
【請求項5】
前記材料カートリッジ、前記カートリッジ保持部、前記材料射出装置、前記ステージ、前記移動手段及び前記紫外線照射装置を覆う紫外線遮蔽体を有することを特徴とする請求項1記載の立体造形物製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化材料を積層しつつ紫外線により硬化させて立体造形物を製造する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化材料を用いて立体造形物を製造する3Dプリンタ装置が知られている(例えば、特許文献1-4参照)。この種の3Dプリンタは、紫外線硬化材料からなる未硬化の造形物を形成した後、当該未硬化の造形物に紫外線を照射することにより、未硬化の造形物を硬化させて目的の立体造形物を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-209494号公報
【特許文献2】特開2018-111246号公報
【特許文献3】特開2015-202689号公報
【特許文献4】特開2005-205670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の立体造形物製造方法では、顔料が添加された紫外線硬化材料を使用して、造形物を良好に硬化させることは困難であった。顔料が添加された紫外線硬化材料は、顔料が添加されていない紫外線硬化材料と比較して紫外線透過率が低いためである。
【0005】
このため従来、顔料が添加された紫外線硬化材料を用いた造形物として得られる製品は、医療分野において血液等の検査に使用されるマイクロ流路、ナノインプリント用ソフトモールド、転写印刷用ブランケット、等、厚さ寸法が比較的薄く全体的に透明な製品に限られていた。
【0006】
また、従来の立体造形物製造方法では、金属部材等、紫外線を透過させない部材(以下、「紫外線不透過性部材」と称す。)が混在する造形物を製造することは困難であった。紫外線不透過性部材の影になる部分に紫外線を照射することができないからである。
【0007】
そこで、本発明は、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した場合や、紫外線不透過性部材が混在した場合であっても、紫外線硬化方式により立体造形物を製造することができる立体造形物製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の立体造形物製造方法は、紫外線硬化材料が積層されるステージと、前記ステージに前記紫外線硬化材料を射出する材料射出装置と、前記ステージに射出された前記紫外線硬化材料に紫外線を照射する紫外線照射装置と、を備え、紫外線硬化材料を積層しつつ紫外線により硬化させて立体造形物を製造する3Dプリンタ装置を使用して立体造形物を製造する立体造形物製造方法であって、前記材料射出装置により前記ステージに前記紫外線硬化材料を射出して、未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する未硬化造形物要素形成ステップと、前記未硬化造形物要素形成ステップにより形成された前記未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素に、前記紫外線照射装置により紫外線を照射することにより、硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成する硬化造形物要素形成ステップとを交互に実行し、前記材料射出装置は、前記紫外線硬化材料を収容した材料カートリッジと、前記材料カートリッジを交換可能に保持するカートリッジ保持部と、前記カートリッジ保持部に保持された前記材料カートリッジから前記紫外線硬化材料を射出させる材料射出手段と、を備え、前記材料カートリッジは、紫外線遮蔽材料により形成されたシリンジ状の材料容器部と、当該材料容器部に挿入されたピストン部と、を有し、前記材料射出手段は、前記紫外線硬化材料を前記材料容器部から射出させるべく前記ピストン部を駆動する手段であり、前記紫外線照射装置は、前記ステージの上面に対向する紫外線照射面を有し、該紫外線照射面は平面視方形状に形成され、前記紫外線硬化材料は、顔料が添加された紫外線硬化シリコーンゴムであって、一層分の造形物要素の厚さは、前記紫外線照射装置による紫外線照射により紫外線が良好に透過し得る厚さであることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の立体造形物製造方法によれば、未硬化造形物要素形成ステップと硬化造形物要素形成ステップと、を交互に繰り返すことにより、紫外線硬化材料からなる薄膜の造形物要素を複数層積層して所望の厚さ寸法の立体造形物を製造することができる。
【0010】
この場合、一層分の造形物要素は薄く、一層分の造形物要素の厚さは、前記紫外線照射装置による紫外線照射により紫外線が良好に透過し得る厚さに形成され、紫外線が良好に透過するため、顔料が添加された紫外線硬化材料など、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した場合でも、一層分の造形物要素であれば紫外線照射により良好に硬化させることができる。
【0011】
したがって、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した場合でも、各層を形成する造形物要素毎に紫外線照射を実施してその都度、硬化させ、これを複数層積層することにより、全体的に良好に硬化した立体造形物を製造することができる。この方法によれば、一層分の造形物要素毎に紫外線照射を実施して硬化させるため、例えば、従来は製作が困難であってアンダーカット部を有する立体造形物も製造し得る。
【0012】
その結果、請求項1記載の立体造形物製造方法によれば、顔料が添加された紫外線硬化シリコーンゴムを紫外線硬化材料に使用して、紫外線照射法により立体造形物を製造することができる。
【0013】
また、請求項1記載の発明にあっては、紫外線硬化材料は、材料カートリッジのシリンジ状の材料容器部に予め収容されており、材料射出手段が材料カートリッジのピストン部を駆動することによりステージ部に射出される。材料容器部は紫外線遮蔽材料により形成されているので、材料カートリッジ内の紫外線硬化材料は劣化することなく高品質に保たれる。
【0014】
そして、この立体造形物製造方法に使用する3Dプリンタは、材料カートリッジが交換可能であることにより、材料カートリッジを別の材料を収容している材料カートリッジに交換するだけで、使用する材料を別の材料に変えることができるので、従来のようなディスペンサ部の洗浄作業が不要である。よって、この立体造形物製造方法によれば、立体造形物を高品質且つ高効率に製造可能である。
【0015】
また、前記紫外線照射装置は、前記ステージ部の上面に対向する紫外線照射面を有し、該紫外線照射面は平面視方形状に形成されていることから、薄厚の各造形物要素を形成する未硬化造形物要素に対して、面的に、かつ均一に紫外線を照射させることができ、各造形物要素の効果的な硬化が可能となる。
【0016】
請求項2記載の立体造形物製造方法は、請求項1記載の立体造形物製造方法において、前記硬化造形物要素形成ステップにより形成された前記硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素の上に紫外線不透過性部材を配置する紫外線不透過性部材配置ステップを有し、前記紫外線不透過性部材配置ステップの後に、前記未硬化造形物要素形成ステップを実行することにより、当該紫外線不透過性部材を覆う未硬化の紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素を形成した後、前記硬化造形物要素形成ステップを実行することを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の立体造形物製造方法によれば、硬化造形物要素形成ステップと未硬化造形物要素形成ステップとの間に、紫外線不透過性部材配置ステップを実行することにより、紫外線不透過性部材を包含する立体造形物を製造することができる。
すなわち、紫外線照射方式による従来の立体造形物製造方法では、紫外線不透過性部材の影になる部分には紫外線を照射することができないため、紫外線不透過性部材包含する立体造形物を製造することは極めて困難であったが、請求項2記載の立体造形物製造方法によれば、紫外線不透過性部材の影になる部分の紫外線硬化材料を硬化させてから、その上に紫外線不透過性部材を配置するため、紫外線不透過性部材の影になる部分も良好に硬化させて、紫外線不透過性部材を包含する立体造形物を高品質に製造することができる。
【0018】
請求項3記載の立体造形物製造方法は、前記材料カートリッジは、収容している前記紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類のものが用意されていることを特徴とする。このように、収容している紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類の材料カートリッジが用意されていることにより、材料カートリッジを交換するだけで、紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類の製品を高品質且つ高効率に製造可能である。また部分ごとに、異なる数種の材料で、1つの造形物を作成することも可能となる。
【0019】
請求項4記載の立体造形物製造方法は、請求項5記載の立体造形物製造方法において、前記カートリッジ保持部及び前記紫外線照射装置に対して前記ステージを移動させる移動手段を備えることを特徴とする。
請求項4記載の立体造形物製造方法によれば、カートリッジ保持部とステージとを相対移動させつつ、紫外線硬化材料を材料カートリッジからステージに射出するとともに、ステージ上の紫外線硬化材料に紫外線を照射することにより、紫外線硬化材料を硬化させて、効率良く立体造形物を製造することができる。
【0020】
請求項5の立体造形物製造方法は、前記材料カートリッジ、前記カートリッジ保持部、前記材料射出装置、前記ステージ、前記移動手段及び前記紫外線照射装置を覆う紫外線遮蔽体を有することを特徴とする。
【0021】
請求項5の立体造形物製造方法によれば、外部からの紫外線の入射を紫外線遮蔽体により防止して、紫外線硬化材料からなる造形物を高品質に製造することができる。そして、材料容器部が紫外線遮蔽材料により形成されているので、紫外線遮蔽体と材料容器部とによる二重の紫外線遮蔽効果により、材料カートリッジに収容された紫外線硬化材料を外部からの紫外線から強力に保護することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の立体造形物製造方法によれば、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した場合や、紫外線不透過性部材が混在している場合であっても、紫外線硬化方式により立体造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態の立体造形物製造方法に使用する3Dプリンタの全体の構造の概念図である。
図2図1に示す3Dプリンタの要部の構造の概念図である。
図3図1に示す3Dプリンタの材料カートリッジの概念図である。
図4】第1実施形態の立体造形物製造方法を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態の立体造形物製造方法を示すフローチャートである。
図6図6(a)は、未硬化造形物要素形成ステップにより、未硬化の第1層目の造形物要素が形成された状態を示す概念図である。図6(b)は、第1層目の造形物要素に対し、硬化造形物要素形成ステップを実行している状態を示す概念図である。図6(c)は、未硬化造形物要素形成ステップにより、未硬化の第2層目の造形物要素が形成された状態を示す概念図である。図6(d)は、第2層目の造形物要素に対し、硬化造形物要素形成ステップを実行している状態を示す概念図である。
図7】第1実施形態の立体造形物製造方法により製造された立体造形物を例示する概念図である。
図8図8(a)は、硬化した紫外線硬化材料からなる薄厚の造形物要素の上に、紫外線不透過性部材配置ステップにより、紫外線不透過性部材を配置した状態を示す概念図である。図8(b)は、紫外線不透過性部材を覆う未硬化の造形物要素を、未硬化造形物要素形成ステップにより形成した状態を示す概念図である。図8(c)は、紫外線不透過性部材を覆う未硬化の造形物要素に対し、硬化造形物要素形成ステップを実行している状態を示す概念図である。図8(d)は、硬化した造形物要素の上に配置された紫外線不透過性部材を覆う硬化した造形物要素が形成された状態を示す概念図である。
図9】第2実施形態の立体造形物製造方法により製造された立体造形物を例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、一実施形態の立体造形物製造方法について、図面を参照しながら説明する。
[3Dプリンタ]
まず、一実施形態の立体造形物製造方法に使用する3Dプリンタについて、図1乃至図3を参照して説明する。
【0025】
図1及び図2に示す3Dプリンタ10は、紫外線硬化材料Mを射出する材料射出装置(ディスペンサ)20と、材料射出装置20から射出された紫外線硬化材料Mが積層されるステージ30と、ステージ30に射出された紫外線硬化材料Mに紫外線UVを照射する紫外線照射装置40と、材料射出装置20及び紫外線照射装置40に対してステージ30を移動させる移動機構部50と、プリンタ本体60と、これら全てを覆う筐体70と、を有する。筐体70は装置20の外部から内部から浸入する紫外線を遮蔽するように構成されている。
【0026】
プリンタ本体60は、3Dプリンタ10の底部を構成する基部61と、基部61から上方に延びる二つの支持部62、63とを有する。材料射出装置20は一方の支持部62に支持されており、紫外線照射装置40は他方の支持部63に支持されている。ステージ30は、基部61上に設けられている。
【0027】
材料射出装置20は、紫外線硬化材料Mを収容した材料カートリッジ21と、材料カートリッジ21を交換可能に保持するカートリッジ保持部22と、カートリッジ保持部22に保持(装着)された材料カートリッジ21から紫外線硬化材料Mを射出させる圧縮空気供給部(材料射出手段)23と、を有する。
【0028】
カートリッジ保持部22は、昇降機構51を介して支持部62に支持されている。昇降機構51は、カートリッジ保持部22を上下方向(矢印Zで示す方向)に移動させる。
【0029】
圧縮空気供給部23は、支持部62に固定して設けられている。圧縮空気供給部23は、圧縮空気を吐出する圧縮空気吐出機構23aと、圧縮空気吐出機構23aから吐出された圧縮空気を、カートリッジ保持部22に装着された材料カートリッジ21に供給するための圧縮空気供給管23bと、を有している。
【0030】
図2に示すように、材料カートリッジ21は、シリンジ状の材料容器部21aと、材料容器部21aに挿入されたピストン部21bと、を有する。
材料容器部21aの基端(上端)には、圧縮空気供給管23bが接続される圧縮空気入口21cが設けられている。材料カートリッジ21は、圧縮空気吐出機構23aから圧縮空気供給管23bを通して供給される圧縮空気Aにより、ピストン部21bが押圧されることにより、材料容器部21aの先端(下端)に設けられた吐出口21dから紫外線硬化材料Mを吐出する。材料容器部21a及びピストン部21bは紫外線遮蔽性の合成樹脂材料により形成されている。
【0031】
図1及び図2に示すように、ステージ30は、水平移動機構52を介して基部61に支持されている。水平移動機構52は、ステージ30を左右方向(矢印Xで示す方向)及び前後方向(矢印Yで示す方向)に移動させる。
【0032】
移動機構部50は、昇降機構51及び水平移動機構52により構成される。すなわち、移動機構部50は、昇降機構51及び水平移動機構52により、材料射出装置20とステージ30とを互いに直交する3軸方向(上下、左右及び前後)に移動させ得る。そして、水平移動機構52により、紫外線照射装置40に対して、ステージ30を左右方向及び前後方向に移動させ得る。
【0033】
紫外線照射装置40は、光源としてUVランプ又はUV-LEDを備える。紫外線照射装置40は、ステージ30の上面に対向する平面視方形状の紫外線出射面40aを有し、ステージ30の中央部を含むワーク製造領域に積層された紫外線硬化材料Mに対し、紫外線出射面40aから紫外線を出射して、面的に、かつ照射範囲を全体として均一に照射し得るように構成されている。
この実施形態の立体造形物製造方法では、一層分の紫外線硬化材料Mがステージ30に吐出される毎に、ステージ30のワーク製造領域が紫外線照射装置40の紫外線照射範囲に入るようにステージ30がY方向に沿って移動され、ステージ30上の紫外線硬化材料Mに紫外線UVが照射される。
【0034】
3Dプリンタ10は図示しない制御装置を備える。制御装置は、製造すべき製品の3Dデータに基づいて、圧縮空気供給部23、移動機構部50及び紫外線照射装置40を制御する。
【0035】
図3に示すように、材料カートリッジ21は、収容している紫外線硬化材料Mの種類が異なる複数種類の材料カートリッジ21A、21B、21C、・・・が用意されている。紫外線硬化材料Mは、予め一又は複数種類の硬化材料成分を含有させた溶液である。未使用の材料カートリッジ21の圧縮空気入口21c及び吐出口21dは、図示しない閉塞部材で塞がれている。閉塞部材は紫外線遮蔽性の合成樹脂材料により形成されている。
【0036】
上記のように構成された3Dプリンタ10は、カートリッジ保持部22とステージ30とを互いに直交する3軸方向(上下、左右及び前後)に相対的に移動させつつ、紫外線硬化材料Mを材料カートリッジ21からステージ30に射出するとともに、ステージ30上の紫外線硬化材料Mに紫外線を照射することにより、紫外線硬化材料Mを硬化させて造形物を製造する。
【0037】
紫外線硬化材料Mは、材料カートリッジ21のシリンジ状の材料容器部21aに予め収容されており、圧縮空気供給部23が材料カートリッジ21のピストン部21bを駆動することによりステージ30に射出される。材料カートリッジ21は紫外線遮蔽材により形成されているので、材料カートリッジ21内の紫外線硬化材料Mは劣化することなく高品質に保たれる。
【0038】
そして、この3Dプリンタ10は、材料カートリッジ21が交換可能であることにより、材料カートリッジ21を別の材料を収容している材料カートリッジ21に交換するだけで、使用する紫外線硬化材料Mを別の紫外線硬化材料Mに変えることができるので、従来のようなディスペンサ部の洗浄作業が不要である。
【0039】
よって、この3Dプリンタ10によれば、製品を高品質且つ高効率に製造可能である。また、この3Dプリンタ10は、ディスペンサ部として、合成樹脂製の材料カートリッジ21を使用するので、金属製のディスペンサ部を備える3Dプリンタと比較して安価に製造可能である。
【0040】
また、この3Dプリンタ10は、材料カートリッジ21として、収容している紫外線硬化材料の種類が異なる複数種類の材料カートリッジ21A、21B、21C、・・・が用意されているので、材料カートリッジ21を交換するだけで、紫外線硬化材料Mの種類が異なる複数種類の製品を高品質且つ高効率に製造可能である。
【0041】
また、この3Dプリンタ10は、ピストン駆動機構として、圧縮空気によりピストン部21bを駆動する圧縮空気供給部23を採用したことにより、比較的簡単な構成でピストン駆動機構を実現できるので、3Dプリンタ10の製造コスト及びメンテナンスコストを低減できる。
【0042】
また、この3Dプリンタ10は、外部からの紫外線の入射を紫外線遮蔽体である筐体70により防止して、紫外線硬化材料Mからなる造形物を高品質に製造することができる。そして、材料カートリッジ21の材料容器部21a及びピストン部21bが紫外線遮蔽材料により形成されているので、筐体70と材料容器部21a及びピストン部21bとによる二重の紫外線遮蔽効果により、材料カートリッジ21に収容された紫外線硬化材料Mを外部の紫外線から強力に保護しつつ、紫外線照射により高品質の製品を製造することができる。
【0043】
また、この3Dプリンタ10は、紫外線出射面40aから造形物の上面全域に均一に紫外線UVを確実に照射することが可能であることから、例えば、一層分の硬化層を硬化形成した後、当該硬化層の上面に別の一層分の硬化層を形成するというような造形物の形成工程を、より確実に実行することが可能となる。その結果、多層硬化による造形物の製造を迅速、確実且つ高品質に行うことが可能となる。
【0044】
また、この3Dプリンタ10の材料カートリッジ21は、紫外線遮蔽材により形成されているので、材料カートリッジ21内の紫外線硬化材料Mは劣化することなく高品質に保たれる。そして、この材料カートリッジ21は、予め紫外線硬化材料Mを収容しており、3Dプリンタ10のカートリッジ保持部22に交換可能に装着されるので、3Dプリンタ10の材料射出装置20の洗浄作業を不要にする。よって、この材料カートリッジ21を使用可能な3Dプリンタ10によれば、製品を高品質且つ高効率に製造可能である。
【0045】
[立体造形物製造方法]
つぎに、一実施形態の立体造形物製造方法について、図4乃至図9を参照して説明する。
【0046】
[第1実施形態]
図4に示すように、第1実施形態の立体造形物製造方法は、未硬化造形物要素形成ステップS1と、硬化造形物要素形成ステップS2と、を有する。
【0047】
未硬化造形物要素形成ステップS1は、材料射出装置20によりステージ30に紫外線硬化材料Mを射出することにより、図6(a)及び図6(c)に例示するように、未硬化の紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Eaを形成するステップである。
未硬化造形物要素形成ステップS1が一回実行される毎に、一層分の未硬化の造形物要素Eaが形成される。紫外線硬化材料Mは、顔料が添加された紫外線硬化シリコーンゴムである。一層分の造形物要素Eaの厚さは、紫外線照射装置40による紫外線照射により紫外線UVが良好に透過し得る厚さである。
【0048】
硬化造形物要素形成ステップS2は、未硬化造形物要素形成ステップS1により形成された未硬化の紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Eaに、図6(b)及び図6(d)に示すように、紫外線照射装置40により紫外線UVを照射することにより、硬化した紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Ebを形成するステップである。
【0049】
図6(a)は、未硬化造形物要素形成ステップS1により、ステージ30上に未硬化の紫外線硬化材料Mからなる第1層目の造形物要素Eaが形成された状態を例示している。図6(c)に示す第2層目の未硬化の造形物要素Eaは、図6(a)に示す未硬化の第1層目の造形物要素Eaに対し、図6(b)に示すように硬化造形物要素形成ステップS2を実行して、第1層目の硬化した造形物要素Ebを形成した後、その造形物要素Ebの上に積層して形成される。
図6(c)に示す第2層目の未硬化の造形物要素Eaに対し、図6(d)に示すように硬化造形物要素形成ステップS2を実行することにより、第2層目の硬化した造形物要素Ebが形成される。このように、未硬化造形物要素形成ステップS1と硬化造形物要素形成ステップS2とを交互に必要回数実行することにより、図7に例示する所望の形状・寸法の立体造形物W1が製造される。
【0050】
このように、第1実施形態の立体造形物製造方法によれば、未硬化造形物要素形成ステップS1と硬化造形物要素形成ステップS2と、を交互に実行することにより、紫外線硬化材料Mからなる薄膜の造形物要素(硬化した造形物要素Eb)を複数層積層して所望の形状・寸法の立体造形物Wを製造することができる。
この場合、一層分の造形物要素(未硬化の造形物要素Ea)は薄く、紫外線UVが良好に透過するため、顔料が添加された紫外線硬化材料Mを使用した場合でも、一層分の造形物要素であれば紫外線照射により良好に硬化させることができる。
したがって、顔料が添加された紫外線硬化材料Mを使用した場合でも、造形物要素(未硬化の造形物要素Ea)毎に紫外線照射を実施して硬化させて、硬化した造形物要素Ebを形成し、これを複数層積層することにより、全体的に良好に硬化した立体造形物Wを製造することができる。
この方法によれば、一層分の造形物要素(未硬化の造形物要素Ea)毎に紫外線照射を実施して硬化させるため、図7に例示するようなアンダーカット部Maを有する立体造形物W1を含む各種の複雑な形状の立体造形物を製造し得る。
【0051】
また、図1乃至図3に示した3Dプリンタ10を使用して、第1実施形態の立体造形物製造方法により立体造形物を製造することにより、紫外線硬化材料Mの種類が異なる複数種類の立体造形物を高品質且つ高効率に製造することができる。
【0052】
[第2実施形態]
図5に示すように、第2実施形態の立体造形物製造方法は、未硬化造形物要素形成ステップS1及び硬化造形物要素形成ステップS2に加えて、紫外線不透過性部材配置ステップS3を有する。
【0053】
紫外線不透過性部材配置ステップS3は、硬化造形物要素形成ステップS2により形成された硬化した紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Ebの上に、図8(a)に示すように、紫外線不透過性部材Kを配置するステップである。紫外線硬化材料Mは、紫外線硬化シリコーンゴムである。
【0054】
紫外線不透過性部材配置ステップS3の後に、未硬化造形物要素形成ステップS1を実行することにより、図8(b)に示すように、紫外線不透過性部材Kを覆う未硬化の紫外線硬化材料Mからなる薄厚の造形物要素Eaを形成した後、図8(c)に示すように、硬化造形物要素形成ステップS2を実行する。これにより、硬化した紫外線硬化材料Mの中に紫外線不透過性部材Kが埋設された状態になる。
【0055】
その後、更に、未硬化造形物要素形成ステップS1と硬化造形物要素形成ステップS2とを交互に必要回数実行することにより、図9に例示するような、紫外線不透過性部材Kを包含した所望の形状・寸法の立体造形物W2が製造される。
【0056】
このように、第2実施形態の立体造形物製造方法によれば、硬化造形物要素形成ステップS2と未硬化造形物要素形成ステップS1との間に、紫外線不透過性部材配置ステップS3を実行することにより、紫外線不透過性部材Kを包含する立体造形物W2を製造することができる。
すなわち、紫外線照射方式による従来の立体造形物製造方法では、紫外線不透過性部材Kの影になる部分には紫外線UVを照射することができないため、紫外線不透過性部材Kを包含する立体造形物W2を製造することは極めて困難であったが、第2実施形態の立体造形物製造方法によれば、紫外線不透過性部材Kの影になる部分の紫外線硬化材料M(紫外線不透過性部材Kの下の造形物要素)を硬化させてから、その上に紫外線不透過性部材Kを配置するため、紫外線不透過性部材Kの影になる部分も良好に硬化させて、紫外線不透過性部材Kを包含する立体造形物W2を高品質に製造することができる。
【0057】
また、図1乃至図3に示した3Dプリンタ10を使用して、第2実施形態の立体造形物製造方法により立体造形物を製造することにより、紫外線不透過性部材Kを包含し且つ紫外線硬化材料Mの種類が異なる複数種類の立体造形物を高品質且つ高効率に製造することができる。紫外線不透過性部材Kを包含した紫外線硬化シリコーンゴム製の立体造形物は、医療機器、電子機器、等の、厚さ寸法の大きな立体形状の造形物を作製することが可能である。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、紫外線硬化材料Mとして紫外線硬化シリコーンゴムを使用した例を示したが、紫外線硬化材料Mとして紫外線硬化エポキシ、紫外線硬化ウレタン、等を使用することも可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、材料カートリッジ21の材料容器部21a及びピストン部21bが紫外線遮蔽材料により形成されているが、材料カートリッジ21に収容された紫外線硬化材料Mを外部の紫外線から保護することが可能であれば、ピストン部21bは紫外線遮蔽材料で形成される必要はない。
【0060】
また、上記実施形態では、移動機構部50は、材料射出装置20をステージ30に対して上下に移動させる昇降機構51と、ステージ30を材料射出装置20に対して水平方向に移動させる水平移動機構52とを備えているが、昇降機構51を省略するとともに、水平移動機構52に代えて、ステージ30を材料射出装置20に対して3軸方向(上下、左右及び前後)に移動させる移動機構を採用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、紫外線照射装置40がプリンタ本体60に固定されているが、紫外線照射装置40は材料射出装置20に固定されてもよい。
なお、上記実施の形態にあっては、材料カートリッジ21を構成する材料容器21aの配置は、図1に示すように、材料射出装置20の中央において、圧縮空気供給部23を構成する圧縮空気供給管23bの先端部に配置されている場合を例に説明したが、本実施の形態の配置は、材料カートリッジ21の大きさが小型の場合であって、材料カートリッジがより大型の場合には、材料射出装置20の中央ではなく、側部又は後部に配置され、その位置において圧縮空気供給管23bを接合して供給される圧縮空気により紫外線硬化材料を送出するように構成してもよく、本実施の形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、紫外線透過率の低い紫外線硬化材料を使用した立体造形物の製造及び紫外線不透過性部材を包含した立体造形物の製造に適用することができることから、広く産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0063】
10 3Dプリンタ
20 材料射出装置
21 材料カートリッジ
21A 材料カートリッジ
21B 材料カートリッジ
21C 材料カートリッジ
21a 材料容器部
21b ピストン部
21c 圧縮空気入口
21d 吐出口
22 カートリッジ保持部
23 圧縮空気供給部(材料射出手段)
23a 圧縮空気吐出機構
23b 圧縮空気供給管
30 ステージ
40 紫外線照射装置
40a 紫外線出射面
50 移動機構部
51 昇降機構
52 水平移動機構
60 プリンタ本体
61 基部
62 支持部
63 支持部
70 筐体(紫外線遮蔽体)
A 圧縮空気
M 紫外線硬化材料
UV 紫外線
【手続補正書】
【提出日】2023-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
前記材料カートリッジ、前記カートリッジ保持部、前記材料射出装置、前記ステージ、前記移動手段及び前記紫外線照射装置を覆う紫外線遮蔽体を有することを特徴とする請求項4記載の立体造形物製造方法。