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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043625
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】流体密封容器
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/08 20060101AFI20240326BHJP
   A61F 7/10 20060101ALI20240326BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20240326BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20240326BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61F7/08 311Z
A61F7/10 330P
A61F7/10 300Z
A41D13/005 103
A41D13/005 101
A41D13/05 112
A41D13/05 118
B65D85/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148713
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅仁
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
3E068
4C099
【Fターム(参考)】
3B011AA00
3B011AC01
3B011AC09
3B011AC13
3B011AC21
3B211AA00
3B211AC01
3B211AC09
3B211AC13
3B211AC21
3E068AA40
3E068AC02
3E068BB01
3E068CC04
3E068CE03
3E068DD30
3E068DE01
3E068EE13
3E068EE15
3E068EE25
4C099AA01
4C099AA02
4C099CA20
4C099EA01
4C099EA05
4C099GA02
4C099GA17
4C099LA01
4C099LA07
4C099LA21
4C099NA02
(57)【要約】
【課題】使用者の首に掛けて用いられる、外部から衝撃が加わっても破袋がし難い可撓性の流体密封容器を提供する。
【解決手段】可撓性のフィルムにより形成された筒本体部と、筒本体部に接続された、開閉可能に構成されて筒本体部を密閉可能な注入口部と、を備える、使用者の首に掛けて用いられる流体密封容器であって、このフィルムは、熱可塑性樹脂により構成され且つ非透水性であり、筒本体部は、筒本体部の周縁においてフィルムの端部どうしを接合している周縁シール部と、筒本体部の内部においてフィルムの内面どうしの一部を接合している内シール部と、を有し、内シール部のシール強度が周縁シール部のシール強度よりも小さく、且つ、内シール部を挟んだ筒本体部の内部の領域が互いに連通している流体密封容器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のフィルムにより形成された筒本体部と、前記筒本体部に接続された、開閉可能に構成されて前記筒本体部を密閉可能な注入口部と、を備える、使用者の首に掛けて用いられる流体密封容器であって、
前記フィルムは、熱可塑性樹脂により構成され且つ非透水性であり、
前記筒本体部は、前記筒本体部の周縁において前記フィルムの端部どうしを接合している周縁シール部と、前記筒本体部の内部において前記フィルムの内面どうしの一部を接合している内シール部と、を有し、
前記内シール部のシール強度が前記周縁シール部のシール強度よりも小さく、且つ、前記内シール部を挟んだ前記筒本体部の内部の領域が互いに連通している、
流体密封容器。
【請求項2】
前記内シール部が、前記筒本体部の長手方向に沿うように形成されている、請求項1に記載の流体密封容器。
【請求項3】
前記内シール部のシール強度が前記周縁シール部のシール強度の3分の1以下である、請求項1または2に記載の流体密封容器。
【請求項4】
前記内シール部のシール強度が3N/5mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の流体密封容器。
【請求項5】
前記筒本体部を平面状としたときに、前記内シール部の長手方向における前記筒本体部の端部側の末端と、前記筒本体部の周縁と、の距離が、前記筒本体部を平面状としたときの最大の幅である本体最大幅の10%以上となるように前記内シール部が形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の流体密封容器。
【請求項6】
前記フィルムがポリオレフィン系樹脂により構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の流体密封容器。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂が4-メチル-1-ペンテンαオレフィンコポリマーを含む、請求項6に記載の流体密封容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の首に掛けて用いられる流体密封容器に関する。
【背景技術】
【0002】
首付近などの保温、血行促進や冷却等を目的として、温水、炭酸ガス、炭酸ガス含有温水、冷水などのような流体を容器に密封して使用者の首に掛けて使用する場合がある。例えば、温水等を密封した可撓性の容器を使用者が首に掛けて用いることによって温感作用を得ることができ、血行促進などを図ることができる。
【0003】
また、特許文献1には、人の首の後部及び両側部を覆うようにして人の首に掛けることができる弾性変形可能な本体部と、布を固定するための固定部と、を備え、布が固定部で固定された状態で、本体部が布を介して人の首に掛けられることで、布が、本体部と、人の首の後部及び両側部と、の間に保持される布保持具が開示され、この本体部の収容部に液体(水等)を収容することにより、液体でタオルを冷却でき、タオルを介して首回りを冷却することが可能となることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-048480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような流体を密封して使用される可撓性の容器は、通常、首付近への適用のし易さ(柔軟性など)が重視されているため、外部からの衝撃に対して耐性が十分ではなく、落下、踏みつけなどの外部からの衝撃が加わったときに破袋し易い傾向がある。液体を含む流体を密封した容器の場合、このような破袋によって使用者の身体が汚れてしまう可能性もあるため、特に好ましくない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、使用者の首に掛けて用いられる、外部から衝撃が加わっても破袋がし難い可撓性の流体密封容器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、可撓性のフィルムにより形成された筒本体部と、筒本体部に接続された、開閉可能に構成されて筒本体部を密閉可能な注入口部と、を備える、使用者の首に掛けて用いられる流体密封容器であって、フィルムは、熱可塑性樹脂により構成され且つ非透水性であり、筒本体部は、筒本体部の周縁においてフィルムの端部どうしを接合している周縁シール部と、筒本体部の内部においてフィルムの内面どうしの一部を接合している内シール部と、を有し、内シール部のシール強度が周縁シール部のシール強度よりも小さく、且つ、内シール部を挟んだ筒本体部の内部の領域が互いに連通している流体密封容器に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者の首に掛けて用いられる、外部から衝撃が加わっても破袋がし難い可撓性の流体密封容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る流体密封容器の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】本実施形態に係る流体密封容器の流体を封入する前の正面図である。
図4】本実施形態に係る流体密封容器を首に掛けて使用した例の模式図である。
図5】本実施形態に係る流体密封容器の変形例の斜視図である。
図6】本実施形態に係る流体密封容器の別の変形例の斜視図である。
図7】本実施形態に係る流体密封容器のさらに別の変形例の斜視図である。
図8図1のVIII-VIII線に沿った断面図(a)、ならびにこの断面図の端部に外部から衝撃が加わった後の状態を示す断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、一部の図面については、便宜上、符号を付していない(省略している)箇所がある。さらに、図面に示された各部材等の寸法比率は、発明の理解を容易にするために、実際の寸法比率とは異なる場合がある。
【0011】
<全体構成>
図1から図8を用いて本実施形態に係る流体密封容器100の全体構成について説明する。なお、図1および図5から図7は、筒本体部31の内部領域41に流体が密封された状態の本実施形態に係る流体密封容器100を示す全体図であり、図3は、筒本体部31の内部領域41に流体を注入する前の状態(平面状)の本実施形態に係る流体密封容器100を示す全体図である。また、図4は、筒本体部31の内部領域41に流体が密封された本実施形態に係る流体密封容器100を首に掛けて用いた例を示す模式図である。さらに、図2および図8は、本実施形態に係る流体密封容器100の筒本体部31の断面図である。
【0012】
本実施形態に係る流体密封容器100は、例えば図4に示すように使用者の首に掛けて用いられるものであり、図1図5から図7に例示されるような、可撓性のフィルム25により形成された筒本体部31と、筒本体部31に接続された、開閉可能に構成されて筒本体部31を密閉可能な注入口部11と、を備える。そして、この注入口部11から流体が筒本体部31に注入され密封されて(内封されて)用いられる。さらに、この流体密封容器100に密封された流体は、注入口部11から交換して用いることができ、つまりこの流体密封容器100に内封される流体を交換して繰り返し使用することが可能である。なお、この内封される流体には、液体、気体、気体が溶解した液体、気体が分散混合した液体、気体を内包する泡状物を含む液体、気体と液体とが分離した状態の気液混合体などが包含される。
そして、筒本体部31を形成している可撓性のフィルム25は、熱可塑性樹脂により構成され且つ非透水性である。さらに、筒本体部31は、筒本体部31の周縁においてフィルム25の端部どうしを接合している周縁シール部33と、筒本体部31の内部においてフィルム25の内面どうしの一部を接合している内シール部35と、を有し、内シール部35のシール強度が周縁シール部33のシール強度よりも小さい。また、内シール部35を挟んだ筒本体部31の内部の領域が互いに連通している。つまり、内シール部35は、筒本体部31の内部領域41を部分的に隔てているのみであり、内シール部35を挟んだ筒本体部31の内部の領域を完全に隔てるものではない。これにより、落下などによって外部から一定程度の衝撃が筒本体部31に加わった際に、内部領域41の流体の内圧などによって内シール部35が周縁シール部33よりも先に剥離するため、筒本体部31の内部容積(言い換えれば内シール部35が形成されている領域の断面積)が増加して、その破袋がし難くなっている。これによって、筒本体部31に内封された流体が外部に漏れるのを防ぎ易くなっている。また、この剥離前においては内シール部35の形成により筒本体部31の内部容積をやや低減させていることとなり、本実施形態に係る流体密封容器100に流体(特に液体)を内封した状態での重量を過度に重くし難い。
ここで、この「使用者の首に掛けて用いられる」とは、流体が内封された流体密封容器100が、使用者の首を跨いで両側に掛けて用いられることであり、例えば、首から肩、胸元に沿って掛けて用いられる態様なども包含される。したがって、この流体密封容器100を首に掛けて用いたときには、流体密封容器100が首以外の領域(例えば肩や胸元など)にも接触する場合がある。以下においても同様である。
【0013】
<筒本体部>
まず、図1から図8を用いて、本実施形態に係る流体密封容器100の筒本体部31ならびに筒本体部31に備わる周縁シール部33および内シール部35の構成について詳細に説明する。
【0014】
筒本体部31は、流体を密封することができる内部領域41(内部空間)を有する筒形状の部材であり、流体密封容器100の本体となる部材である。そして、この筒本体部31は、可撓性のフィルム25により形成されている。つまり、可撓性のフィルム25が内部空間を有する筒形状となるように成形および接合されて形成されたものである。したがって、この筒本体部31も可撓性となっている。
【0015】
具体的には、可撓性のフィルム25を筒形状とし、その周縁において、注入口部11を接続する領域を除き、フィルム25の端部どうしを接合して周縁シール部33を形成して、流体を注入可能な内部空間を有する筒形状の筒本体部31とする。この周縁シール部33は、例えば図2に示すように、筒本体部31としたときに内側(内部領域41側)に突出するように形成されても良く、あるいは、筒本体部31としたときに外側(容器外部側)に突出するように形成されても良い。さらには、内側および外側のいずれにも突出しないように形成されていても良く、これらから選ばれる2以上が組み合わせられて形成されていても良い。なお、図2に示すような周縁シール部33が内側に突出して形成された実施形態の場合、筒本体部31を肌へ直接当接させたときの感触がより好ましくなるだけでなく、外部から衝撃が加わった際に、筒本体部31に内封された流体の内圧が内側に突出した周縁シール部33を両面から押し付ける方向に作用するため、この周縁シール部33からの破袋をより防ぎ易い。一方、周縁シール部33が外側に突出して形成された実施形態は、この周縁シール部33の形成がよりし易い。
さらに、この筒本体部31には、その筒形状の内部においてフィルム25の内面どうしが接合されて、周縁シール部33よりもシール強度が小さい内シール部35が形成されている。例えば、図1および図2に示すような、筒本体部31の内部領域41の一部を2以上の筒形状に分割するように形成された、筒本体部31におけるフィルム25の内面どうしの一部を接合している(内面どうしが重なるように接合されている)内シール部35が例示される。なお、この内シール部35と上記した周縁シール部33とが離間している(接触していない)構成であるのがより好ましい。
【0016】
また、この内シール部35を挟んだ筒本体部31の内部の領域(内部領域41の一部)は、互いに連通している。つまり、内シール部35によって筒本体部31の内部領域41が部分的に隔てられているとも言え、この内シール部35を挟んだ筒本体部31の内部の領域は、例えば内シール部35の長手方向における筒本体部31の端部38側の末端35aやその反対側(筒本体部31の長手方向における全長の略中央側)の末端35bなどの領域において内封された流体が互いに行き来することができるようになっている。これによって、1箇所の注入口部11から筒本体部31の全体に流体を注入することができ、さらに繰り返しの使用(筒本体部31への流体の入れ替え)も容易となっている。また、これによって、本実施形態に係る流体密封容器100に外部から衝撃が加わった際に流体の内圧などによってシール強度が小さい内シール部35に力が伝わり易くもなっている。特に、この内シール部35を挟んだ筒本体部31の内部の領域は、2箇所以上で互いに連通しているのがより好適である。
【0017】
そして、この内シール部35は、筒本体部31の長手方向に沿うように形成されているとより好ましい。本実施形態に係る流体密封容器100(特に筒本体部31の端部38)に外部から衝撃が加わったときに内シール部35がより剥離し易い構成となるからである。なお、内シール部35が筒本体部31の長手方向に沿うとは、内シール部35の延在方向が筒本体部31の長手方向と完全に平行である実施形態のほか、内シール部35の延在方向が筒本体部31の長手方向と実質的に平行である実施形態を含む。この内シール部35の延在方向が筒本体部31の長手方向と実質的に平行であるとは、内シール部35の延在方向と筒本体部31の長手方向との為す角が45度未満であって、内シール部35の延在方向が筒本体部31の短手方向成分よりも長手方向成分を多く含むことをいう。
例えば、図1図5から図7などに示すように、内シール部35が細長形状であり、その長手方向が筒本体部31の長手方向に沿っている実施形態であると好適である。なお、この内シール部35は、連続した細長形状(略直線状)であっても良く、あるいは、一部が内シール部35のシール幅(短手方向の長さ)未満の間隔で分離した細長形状(略点線状)であっても良いが、剥離のし易さなどの観点から連続した細長形状であるのが好ましい。また、この細長形状である内シール部35の1つ(1本)当たりの長手方向の長さは、筒本体部31の本体最大幅Dの長さの半分以上、例えば50mm以上であるのが好ましい。ここで、この「筒本体部31の本体最大幅D」とは、内部領域41に流体が密封されていない状態の筒本体部31を平面状としたときの最大の幅である(図3のD、以下においても同様)。また、略点線状である内シール部35の1つ当たりの長さは、その1つの略点線状である内シール部35の全体としての長さ(略点線状に含まれる非接合部分を含めた長さ)である。さらに、図5に示される実施形態のように内シール部35が平行または実質的に平行で複数形成されている場合には、これらの合計の長さではなく、これらのうち長手方向の長さが最も長い内シール部35の1つの長さが上記した長さであれば良い。
【0018】
さらに、前述したように、この内シール部35のシール強度は、周縁シール部33のシール強度よりも小さくなっている。ここで、この「シール強度」とは、シール部で接合されているフィルムどうしの接合力の強さであり、言い換えれば、シール部で接合されているフィルムどうしを剥離させるのに必要な力の強さ(剥離強度)である。したがって、内シール部35のシール強度とは、内シール部35で接合されているフィルム25の内面どうしを剥離させるのに必要な力の強さであり、周縁シール部33のシール強度とは、周縁シール部33で接合されているフィルム25の端部どうしを剥離させるのに必要な力の強さである。
【0019】
特に、本実施形態に係る流体密封容器100に外部から衝撃が加わったときに内シール部35がより剥離し易くなることから、内シール部35のシール強度が周縁シール部33のシール強度の3分の1以下であるとより好ましい。なお、このシール強度は、周縁シール部33および内シール部35のいずれについても、シール部を横断する方向に引き剥がして測定されるシール強度である。他においても同様である。例えば図3に示すように、筒本体部31のシール部を含んだ領域(例えば点線で囲まれた部分の表裏全体)を試験片として用い、シール部を横断する方向(矢印方向)に引き剥がして測定されるシール強度である。なお、この測定においては、試験片が小さい場合には、布テープやラピーテープなどの非伸縮性テープで試験片を延長して挟みやすくしてから測定しても良い。また、図5に示す実施形態のように内シール部35が平行または実質的に平行で複数形成されている場合は、これらのうちシール強度が最も強いもののシール強度を周縁シール部33のシール強度と比較して評価する。
具体的な数値としては、内シール部35のシール強度が3N/5mm以下であるのがより好ましい。下限は限定されないが、注入口部11から流体を注入する際や流体密封容器100の通常の使用時において剥離し難いシール強度であれば良く、特に、本実施形態に係る流体密封容器100を繰り返し使用しても剥離が発生し難いシール強度(例えば1N/5mm以上など)であるのが好ましい。また、この場合における周縁シール部33のシール強度は6N/5mm以上であるのが好ましく、さらに内シール部35のシール強度の3倍以上であるのがより好ましい。
ここで、このシール強度の数値は、JIS K 7127:1999に準拠した剥離試験により、シール部を含む領域を5mm幅で切り出すことにより得た試験片を用いて、25℃55%RHにて上記したJIS計測環境に置いて24時間放置した後、300mm/minの引張速度で引張試験を行って測定される値であり、例えば、テンシロンUCT-100W(オリエンテック社製)などを使用して測定することができる。なお、内シール部35が略点線状である場合には、内シール部35の接合部分が最大限含まれるように幅5mmの試験片を切り出してシール強度を測定する。
【0020】
さらに、この内シール部35自体についても、筒本体部31の長手方向に沿うように形成されている場合には、内シール部35の長手方向における筒本体部31の端部38側の末端35aを含む領域のシール強度がその反対側の末端35bを含む領域のシール強度よりも小さいとより好ましい。つまり、内シール部35が末端35a側と末端35b側とでシール強度が異なり、末端35a側のシール強度の方が小さい構成であるのが好ましい。筒本体部31の端部38に外部から衝撃が加わった際に内シール部35の末端35aから剥離し易いからである。
【0021】
このようなシール強度の異なる内シール部35および周縁シール部33は、熱および圧力によるヒートシール(熱融着)、誘電加熱による高周波溶着、超音波振動および圧力による超音波溶着などの接合方法を用いて、その条件(温度、圧力、電界(電圧等)、周波数、シール金型、シール基板距離など)を内シール部35と周縁シール部33とで変えることによって形成することができる。そして、フィルム25の構成材料などによってこれらを適宜選択することができる。また、内シール部35と周縁シール部33とで接合方法を変えることによって形成することもできる。なお、上記したシール強度の差とすることができる限りにおいて、イージーピール樹脂や、接着力および/または塗工量を適宜調整した接着剤の使用による接合も可能である。また、この接着剤と各種加圧シール(ヒートシールまたは高周波溶着)を併用することも可能である。
さらに、本実施形態に係る流体密封容器100は、首付近の肌に直接適用する身体装着具となり得るという観点から、肌への感触を損なう可能性があるシール部や端面が少なく、且つシール強度が高いことがより好ましい。この点から、これらのシール部のシール幅はできる限り狭い(例えば筒本体部31の本体最大幅Dの5%以下、あるいは5mm以下である)のが好適である。そして、内シール部35の末端35aからより剥離し易くなることから、内シール部35の長手方向における筒本体部31の端部38側の末端35aを含む領域のシール幅がその反対側の末端35bを含む領域のシール幅よりも小さいとより好ましい。なお、このシール部の形成は、接合およびカットを同じ工程で行うことができ且つシール部表面(接合面とは反対側の面)のミクロレベルでの変化を比較的少なくすることができる高周波溶着を用いた接合(溶断)により行うのがより好適である。
【0022】
なお、シール強度の異なる内シール部35および周縁シール部33を形成するためには、内シール部35と周縁シール部33とで、例えば拡大観察によって確認できるような、異なるシール状態を作り分けることが好ましい。
具体的には、キーエンス社製のマイクロスコープVHX-1000等により、各シール部の断面を100倍程度の倍率で拡大観察した時に、周縁シール部33ではフィルムどうしの融着面(界面)が溶融して一体化している状態であるのに対し、内シール部35ではフィルム界面が残存した状態で接合されているようなものとすることが好適である。
また、内シール部35は、筒本体部31の内部においてフィルムの内面どうしを接合しているシール部であるため、内シール部35を形成する際に、フィルム表面やシール部付近(末端35a、35bや、内シール部35側面)などにピンホールなどのダメージを与えず、フィルム界面(接合面)に選択的にシール作用を施すことが可能な方法を選択することが好ましい。フィルム表面などにダメージを与えない内シール部35の形成方法の例としては、例えば、接着力および塗工量を適宜調整した接着剤の塗工と、シール条件を弱めた(例えば低温条件)シールとの併用による処理、適切な条件を選択した高周波溶着の他、イージーピール性を有するようにするための技術として可塑剤や滑剤を添加したフィルム、および剥離処理したフィルムを用い、周縁シール部33ではフィルム界面を溶融一体化し、内シール部35では剥離処理面やフィルム界面を維持したシール条件を選択することなどが示される。そして、このような形成方法により、想定される力で滑らかな内シール部35の剥離を達成することが可能となる。
【0023】
また、この内シール部35は、筒本体部31を平面状(流体密封容器100に流体を充填せず、内シール部35が形成されている筒本体部31が平らに押しつぶされて2枚のフィルム25がいずれも平らに重なった、周縁以外に折り返しのない平面状をいう。他においても同様である。)としたときに、内シール部35の長手方向における筒本体部31の端部38側の末端35aと、平面状とした筒本体部31の周縁(例えば端部38の周縁)と、の距離が、この平面状である筒本体部31の本体最大幅Dの10%以上となるように形成されていると好ましい。例えば、図3の実施形態では、内シール部35が筒本体部31の長手方向に沿う略直線状に形成されており、内シール部35の長手方向の一端(図3では下端)にあたる末端35aは筒本体部31の端部38に近接している。そして、図3において、2股に分岐した一対の分岐筒部31aに正対して流体密封容器100を見たときに周縁シール部33は筒本体部31の周縁に位置している。すなわち、周縁シール部33が筒本体部31を平面状としたときの周縁と実質的に一致しており、内シール部35は筒本体部31を平面状としたときの周縁では非形成である。この平面状とした流体密封容器100において、内シール部35の長手方向における筒本体部31の端部38側の末端35aと、この端部38の周縁に位置している周縁シール部33と、の距離が、筒本体部31の本体最大幅Dの10%以上(例えば10mm以上など)となるような位置に内シール部35は形成されている。
通常、流体が内封された筒形状の容器の端部に外部から衝撃が加わると特に破袋し易い傾向があるが、このような構成であると、本実施形態に係る流体密封容器100に流体を内封した状態において筒本体部31の端部38に外部から衝撃が加わった場合でも、筒本体部31が破袋する前に内シール部35が剥離して筒本体部31の内容積が瞬時に拡大する。これにより、流体密封容器100の内圧が減少して破袋が防止される。
【0024】
例えば図8の(a)の断面図に示すように、この構成では、内シール部35の長手方向における筒本体部31の端部38側の末端35aと、筒本体部31の端部38の周縁(周縁シール部33)との間に流体が一定量内封される領域を有する。このため、筒本体部31の端部38に衝撃が加わった場合(端部38を下向きにして落下した場合など)に、図8の(b)の断面図に示すように、この流体が一定量内封されている領域が流体の内圧によって内シール部35と略垂直の方向に広がり、この領域からシール強度が小さい内シール部35を剥離させるような力が加わり易くなっている。
一方で、筒本体部31が概ね水平に落下した場合などでは、その衝撃によって流体の内圧が特定の箇所に集中しにくいため、その場合は周縁シール部33の破損などが生じにくく、また、内シール部35を剥離させるような力も加わりにくい。そのため、筒本体部31のいずれの部分にも破損が生じにくく、容器の繰り返し使用が可能となり易い。つまり、上記した内シール部35は、流体の内圧が特定の箇所に集中するような衝撃が加わった際に剥離し易い構成となっているとも言える。
【0025】
<注入口部>
次に、本実施形態に係る流体密封容器100の筒本体部31に接続された注入口部11の構成について詳細に説明する。
【0026】
注入口部11は、筒本体部31と接続され(筒本体部31を密封可能なように接続され)、ここから筒本体部31に流体を注入して密封することができ、且つこの内封された流体を排出できる構成である。つまり、注入口部11は、開閉可能に構成されており、且つ筒本体部31を密閉可能な構成である。したがって、このような構成を有する限り他は限定されないが、例えば図1図5から図7などに示すような、注入口部11が着脱可能なキャップ15およびキャップ装着部を備え、このキャップ15の内周およびキャップ装着部の外周に雄ネジ形状および雌ネジ形状(螺旋条部)が形成され、これらを螺合することにより着脱、密閉できる構成などが好適例(特に流体として液体を含む流体を使用する場合の好適例)として示される。つまり、この注入口部11は可撓性でなくても良い。さらに、このキャップ15は、流体密封容器100から完全に脱離できる構成でも良く、あるいは、ヒンジ部などによってキャップ装着部などと連結している構成であっても良い。また、キャップ状の部材をスライドさせることにより開口部分を開閉する方式(スライド式)などの、着脱しない構成であっても良い。
このような注入口部11を備えることにより、本実施形態に係る流体密封容器100は、筒本体部31に流体を内封して使用することができるだけでなく、例えば流体として温水(30℃以上60℃以下の水)を内封した場合などにおいて、この内封された温水の温度が低下したときには、これを注入口部11から排出して新たに温水を注入および密封し使用することができ、つまり筒本体部31の内部の流体を交換して繰り返し使用することができる。
【0027】
そして、本実施形態に係る流体密封容器100においては、この注入口部11は、限定されるものではないが、筒本体部31の端部38を除く領域に1つ(1箇所)接続されている構成であるとより好適である。筒本体部31に流体を注入する際に、筒本体部31の内部での流体の偏りがより発生し難くなるからである。なお、例えば図1図5および図6に示すように、筒本体部31が湾曲または屈曲している構成の場合には、注入口部11が、筒本体部31の湾曲または屈曲している長手方向の全長を3等分したときの中央部に接続されている(例えば筒本体部31の湾曲部分あるいは屈曲部分を含む領域に接続されている)と、上記したような偏りがさらに発生し難く特に好適である。
【0028】
また、この注入口部11の大きさは限定されないが、注入口部11の開口径については流体(特に液体を含む流体)を注入し易い大きさであるのが好ましい。さらに、この注入口部11は、本実施形態に係る流体密封容器100に流体を注入する際や本実施形態に係る流体密封容器100を使用する際に把持部としても機能する大きさおよび材質であるのが好ましい。したがって、このような注入口部11の材質としては、剛性を有する樹脂製や金属製などが好適例として示されるが、本実施形態に係る流体密封容器100の軽量化などの観点から、注入口部11は、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂やウレタン樹脂等の注型硬化樹脂などの樹脂素材により構成されたものであることがより好ましい。前述したキャップ15を備える場合も同様である。
【0029】
加えて、この把持部としても機能する注入口部11は、片手で容易に把持できる構成であることが好ましい。例えば図1の実施形態を例にすると、注入口部11のキャップ15およびキャップ装着部の好ましい径および長さ(注入口部11の開口径およびその垂直方向の長さ)は、いずれも20mm以上100mm以下であり、さらに好ましくは30mm以上60mm以下である。このような径および長さとすることで、流体が内封された本実施形態に係る流体密封容器100の片手での把持が容易となる。
さらに、本実施形態に係る流体密封容器100は、筒本体部31の一部と注入口部11とを含む部位が一体となって把持部として機能する構成であっても良い。
【0030】
また、この注入口部11は、筒本体部31における使用者の首付近と当接し得る領域を除く領域に接続されていると好ましい。流体が内封された本実施形態に係る流体密封容器100の使用時において、首などに注入口部11が接触しにくくなり、使用感などが低下し難いからである。
【0031】
<フィルム>
次に、本実施形態に係る流体密封容器100の筒本体部31を形成しているフィルム25の構成について詳細に説明する。
【0032】
本実施形態に係る流体密封容器100の筒本体部31を形成する可撓性のフィルム25は、熱可塑性樹脂により構成され且つフィルム全体として非透水性であれば他の構成は限定されない。なお、本発明において、「熱可塑性樹脂により構成される」とは、熱可塑性樹脂を主成分として含む樹脂により構成されることを意味する。これにより、使用者が本実施形態に係る流体密封容器100に流体を内封して首に掛けたときに、筒本体部31が適度な柔軟性を有するために首付近の肌などに追随し易く、且つ流体として液体を使用しても当接している肌などに直接液体が接しないため好ましい。なお、ここでいう非透水性とは、水などの液体を透過させないことを意味する。したがって、このフィルム25は、気体(炭酸ガスなど)の透過性は一定程度有していても良い。例えば、本実施形態に係る流体密封容器100に気体を内封したときに、少なくとも1時間以上はその気体が内封された状態の形状が実質的に維持される程度の気体透過性を有していても良い。ここで、「主成分として含む」とは、質量%として、全樹脂中当該熱可塑性樹脂を50%超含むことであり、70%以上含むのがより好ましく、90%以上含むのがさらに好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂としては、可撓性であり且つ非透水性のフィルム25を形成可能なものであれば限定されない。具体的には、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、メチルペンテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ゴム系樹脂などが挙げられ、例えばこれらからなる群から選ばれる1つにより構成された単層、これらからなる群から選ばれる2以上により構成された混合層(単層の混合層)、この単層または混合層が複数積層された多層などとしてフィルム25とすることができる。
ここでメチルペンテン樹脂とは、例えば特開2016-121322号公報に開示されるような、4-メチル-1-ペンテンとこれ以外のαオレフィン(プロピレン、エチレン等)との共重合体(4-メチル-1-ペンテンαオレフィンコポリマー)が例示される。
また、ゴム系樹脂とは、例えばSBS、SEBS、SIS等のブロックコポリマー樹脂を言う。またこれらのゴム系樹脂は常温(10℃以上35℃以下)で高タック性のため、このゴム系樹脂により構成された層を多層であるフィルム25の中間層(流体密封容器100の最も容器外部側となる最外層および流体密封容器100の最も容器内部側となる最内層に挟まれて積層されている中間層)として採用して感触や脆性を改善する目的で用いることが可能である。
【0034】
特に、柔軟性を高め易く、且つシール強度が異なる内シール部35および周縁シール部33を形成し易い(特に高周波溶着により形成し易い)ことから、フィルム25がポリオレフィン系樹脂により構成されているのがより好適である。
さらに、フィルム25の製法としてブロー成形を選択する場合は、好ましい樹脂として上記した樹脂(特にポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂)の他に、ポリアミド(ナイロン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)などを上記した単層、混合層、多層として用いることもできる。
【0035】
さらに、このフィルム25は、少なくとも一部が、JIS K7126-1に準じて23℃および相対湿度0%の条件で測定される炭酸ガス透過度が10L/(m2・day・atm)以上であるのが好ましい。つまり、筒本体部31を形成しているフィルム25の少なくとも一部の領域が、上記のような炭酸ガス透過度であるのが好ましい。そして、筒本体部31を形成しているフィルム25の全体(全領域)が上記のような炭酸ガス透過度であっても良い。このような構成によって、筒本体部31に炭酸ガス含有温水や炭酸ガスなどを内封した状態で、この筒本体部31を首回りの肌や肩の鎖骨周辺の肌などに当接させたときに、内封された炭酸ガスがフィルム25を通じて肌へ移行し易く、炭酸ガスによる血行促進効果などを得易くなっている。
【0036】
そして、このフィルム25のJIS K7126-1に準じて23℃および相対湿度0%の条件で測定される炭酸ガス透過度は、炭酸ガス透過度と耐久性とを両立させるという観点から、下限は10L/(m2・day・atm)以上であるのが好ましいが、13L/(m2・day・atm)以上であるのがより好ましく、15L/(m2・day・atm)以上であるのがさらに好ましく、16L/(m2・day・atm)以上であるのがさらに好ましい。そして上限は、100L/(m2・day・atm)以下であるのが好ましく、50L/(m2・day・atm)以下であるのがより好ましく、25L/(m2・day・atm)以下であるのがさらに好ましく、20L/(m2・day・atm)以下であるのがさらに好ましい。これにより上記した効果が発揮され且つ繰り返し使用可能な強度も高く維持される。
【0037】
特に、このフィルム25がポリオレフィン系樹脂により構成されたものであり、さらにこのポリオレフィン系樹脂が4-メチル-1-ペンテンαオレフィンコポリマーを含むとより好適である。この4-メチル-1-ペンテンαオレフィンコポリマーを含むポリオレフィン系樹脂により構成されたフィルム25は、非透水性であり、且つ炭酸ガスとの親和性が高いため上記した炭酸ガス透過度を有するものとし易く、さらにこのフィルム25は30℃以上60℃以下程度、さらには35℃以上50℃以下程度の流体を内封した場合にその温度によって柔軟性がより高まり首付近の肌への追随性が特に高まるため、本実施形態に係る流体密封容器100に例えば炭酸ガス含有温水などを内封して使用した場合において、血行促進効果などをより得易いからである。そして、4-メチル-1-ペンテンαオレフィンコポリマーを含むポリオレフィン系樹脂により構成されたフィルム25は、他の熱可塑性樹脂により構成されているフィルム25と比較して、外部からの衝撃により周縁シール部33などからの破袋が発生し易い傾向があるが、前述したシール強度が異なる内シール部35および周縁シール部33を有することにより、このようなフィルム25であっても破袋をし難くすることができる。なお、この4-メチル-1-ペンテンαオレフィンコポリマーを含むポリオレフィン系樹脂により構成されたフィルム25においてシール強度が異なる内シール部35および周縁シール部33を形成する場合には、その形成のし易さなどの観点から、高周波溶着によりこれらの形成を行うのがより好ましい。
【0038】
そして、このフィルム25の総厚さは、可撓性や非透水性が保たれる限り限定されるものではないが、首付近への適用のし易さや強度などの観点から、200μm以上800μm以下であるのがより好ましく、300μm以上700μm以下であるのがさらに好ましく、400μm以上650μm以下であるのがさらに好ましい。このような総厚さであるフィルム25は、熱伝導率が0.1W/(m・K)以上、さらには0.15W/(m・K)以上となり易いため、温水等を内封した場合の温感作用、および冷水等を内封した場合の冷感作用や(熱中症予防などの)冷却作用の十分な発揮という点においても好ましい。
【0039】
ここで、図1および図4から図7を用いて、本実施形態に係る流体密封容器100の実施形態の具体例についてさらに詳しく説明する。
【0040】
<第1実施形態>
本実施形態に係る流体密封容器100は、以下のような実施形態(第1実施形態)であると好ましい。具体的には、この第1実施形態は、上記した可撓性のフィルム25により形成された筒本体部31と、筒本体部31に接続された注入口部11と、を備え、筒本体部31は上記したシール強度が異なる周縁シール部33と内シール部35とを有し、さらにこの筒本体部31は、注入口部11の両側に向かって2股に分岐した2つの分岐筒部31aを備え、湾曲または屈曲しており、この2つの分岐筒部31aにはいずれも内シール部35が形成されている。そして、この内シール部35を挟んだ筒本体部31の内部の領域が互いに連通している。
【0041】
この第1実施形態では、流体密封容器100に流体を密封して使用者の首に掛けたときに、図4に示すように筒本体部31の2つの分岐筒部31aが首を跨ぐようにして容易に首の両側に掛けて安定して使用することができ、流体密封容器100を首から肩、胸元にかけて安定して密着させることが可能となる。さらに、筒本体部31(分岐筒部31a)の内シール部35が形成されている領域が両側の鎖骨付近に安定して配置され易い。また、この内シール部35が形成されている領域は、鎖骨付近の肌などに広い範囲で当接し易い。特に、この2股に分岐した2つの分岐筒部31aの端部38の末端から注入口部11までの長さが実質的に同一であると、安定性などの観点からより好適である。
【0042】
例えば、図1図5に示すような、筒本体部31が略U字形状に湾曲している構成や、図6に示すような、筒本体部31が略V字形状あるいは略Y字形状に屈曲している構成などがより具体的な例として示される。また、この筒本体部31は、その端部38どうしが接触するように湾曲または屈曲して閉環している実施形態であっても良く、あるいはその端部38どうしが離間している実施形態であっても良い。そして、これらの実施形態は、筒本体部31に流体が内封され、且つ平置きされた状態においてだけでなく、筒本体部31に流体が内封されていない2次元的な状態(平面状の状態)においてもこのような形状となる実施形態であるのが好ましい。
ここで、上記した筒本体部31の端部38どうしが接触するように湾曲または屈曲して閉環している実施形態には、筒本体部31の内部領域41が周回状に連通している実施形態は包含されない。首に掛けて用いることが難しくなるからである。
【0043】
このような第1実施形態の流体密封容器100について、その筒本体部31の端部38が身体の前面側に位置するように首に掛けて用いると、図4に示すように、流体密封容器100の重心が首または肩の中心軸より前側(身体の前面側)に位置することとなり、流体密封容器100が安定して首から肩、胸元にかけて密着されて保持される。これにより、使用者が流体密封容器100を手で押さえて保持する必要がなく、流体密封容器100の使用時に両手を空けることができるため、非常に好適である。また、流体密封容器100の重心が首または肩の中心軸より前側に位置することにより、特に鎖骨周辺に流体密封容器100の重みが掛かり易く、さらに前述したように内シール部35が形成されている領域は広い範囲で当接し易いため、流体として温水や炭酸ガス含有温水、冷水等を内封した場合において、この鎖骨周辺などにおいて温感作用や血行促進作用、冷感作用、冷却作用などが十分に発揮され易い。
【0044】
なお、上記した筒本体部31が略U字形状に湾曲している構成などの場合には、少なくとも筒本体部31に流体が内封された状態において、2つの分岐筒部31aがその端部38に向かって互いに近づくように形成されていると好適である。また、その端部38どうしが接触するように形成されていても良い。首に掛けた流体密封容器100をより安定させ易いからである。なお、これは、本実施形態に係る流体密封容器100に流体が内封され、且つ平置きされた状態での形状を意味しており、筒本体部31に流体が内封されていない平面状ではこの構成を満たしていなくても良い。
【0045】
そして、この第1実施形態においては、上記した2つの分岐筒部31aに形成されている内シール部35は、注入口部11と隣接する筒本体部31の領域を挟んで分離して形成されているのがより好ましい。本実施形態に係る流体密封容器100に流体を内封して使用者の首に掛けたときに、首の後ろ側などでは筒本体部31の内シール部35が形成されていない領域が密着して、流体を内封したときの効果がより発揮され易いからである。また、筒本体部31への流体の注入もよりし易くなっている。
【0046】
例えば、図1図5および図6などに示すような、筒本体部31における注入口部11との接続部から分岐筒部31aの端部38までの領域をそれぞれ2等分したときに、それぞれ、端部38に近い側の領域内にはいずれも内シール部35が形成されており、注入口部11に近い側の領域内にはいずれも内シール部35が形成されていない(端部38に近い側の領域内にそれぞれ形成されている内シール部35が、注入口部11と隣接する筒本体部31の領域を挟んで分離して形成されている)実施形態であると好適である。
【0047】
そして、この内シール部35は、図5に示すように、2つの分岐筒部31aにおいてその長手方向に沿うようにそれぞれ複数形成されていても良い。図5の実施形態では、2つの分岐筒部31aにおいていずれも、細長形状の内シール部35がその長手方向に沿うように2つ形成され、且つこの2つの内シール部35も平行となるように形成されている。このような構成であると、流体密封容器100を首に掛けて使用したときに、内シール部35が複数形成されている分岐筒部31aが鎖骨付近の肌などにさらに広い範囲で当接し易い。ここで、この「長手方向に沿うように」とは前述と同じ意味であり、また、この「平行」も前述した実質的に平行であると同様の意味である。
さらに、この変形例として、2つの分岐筒部31aのうち一方の分岐筒部31aに内シール部35が1以上形成され、もう一方の分岐筒部31aには内シール部35が形成されていない実施形態であっても構わない。例えば、2つの分岐筒部31aの端部38の末端から注入口部11までの長さが互いに異なる場合に、長さが長い方の分岐筒部31a(落下がし易い分岐筒部31a)だけに内シール部35が1以上形成されている構成などであっても構わない。しかしながら、落下などによる破袋をよりし難くするという観点からは、この2つの分岐筒部31aにはいずれも内シール部35が1以上形成されているのが好適である。
【0048】
なお、この内シール部35は、筒本体部31において適切な長さのものを形成することによって、筒本体部31の内部領域41の容積を調整することができ、首に掛けて用いる際の流体入り容器重量を適切に低減することが可能である。また、筒本体部31の内部領域41の容積が低減することによって温熱持続効果や冷却持続効果が短くなってしまう可能性があるが、この場合、マフラー、ストール、タオル、専用の布状長尺物などを断熱材として筒本体部31にオーバーラップさせることにより、身体側への効果を損なうことなく温熱効果や冷却効果などの持続性を高めることが可能である。これは他の実施形態においても同様である。
【0049】
ここで、この第1実施形態では、注入口部11の先で筒本体部31が180度の2股に分岐している実施形態は包含されない。つまり、注入口部11と接続している筒本体部31が、注入口部11の両側に向かって2股に分岐しているが、この筒本体部31が全体として略直筒状である(全体として湾曲または屈曲していない)実施形態は包含されない。注入口部11が略直筒状である筒本体部31の端部に接続されていないため、使用者が首に掛けて使用し難くなる可能性があるからである。
【0050】
また、この第1実施形態における筒本体部31は、上記したように、2つの分岐筒部31aの端部38の末端から注入口部11までの長さが互いに異なる構成であっても良い。つまり、注入口部11の両側に向かって2股に分岐した2つの分岐筒部31aの長手方向(筒本体部31の湾曲または屈曲している長手方向)の長さが互いに異なる構成であっても良い。このような構成であると、注入口部11が、筒本体部31の湾曲または屈曲している長手方向の全長における中間点からオフセットされた位置に接続されていることとなり、首に掛けて使用した時に注入口部11が首の真後ろに位置しないため、流体密封容器100の使用時に椅子の背もたれなどに注入口部11が当たりにくくなる。
【0051】
しかしながら、この第1実施形態における筒本体部31は、前述したように、図1図5および図6に示すような2つの分岐筒部31aの端部38の末端から注入口部11までの長さが実質的に同じであるのが好ましい。つまり、注入口部11の両側に向かって2股に分岐した2つの分岐筒部31aの長手方向の長さが実質的に同じであるのが好ましい。このような構成であると、筒本体部31に流体(特に液体)を注入した際に、かたよりが極めて発生しにくく、流体密封容器100のバランスも高まり、使用時により安定して密着させ易い。そして、繰り返しの使用もし易くなる。
【0052】
<第2実施形態>
本実施形態に係る流体密封容器100は、以下のような実施形態(第2実施形態)であっても好ましい。具体的には、この第2実施形態は、上記した可撓性のフィルム25により形成された筒本体部31と、この筒本体部31の端部38に接続された注入口部11と、を備え、この筒本体部31は上記したシール強度が異なる周縁シール部33と内シール部35とを有し、さらにこの筒本体部31は直筒状である。そして、この第2実施形態においても、内シール部35を挟んだ筒本体部31の内部の領域が互いに連通している。ここで、この「直筒状」とは、筒本体部31に流体が内封され、且つ平置きされた状態において略直筒状(実質的に直筒状)である意味であり、概ね真っ直ぐな筒状の意味である(他においても同様である)。
【0053】
この第2実施形態では、注入口部11が直筒状である筒本体部31の端部38と接続されているため、この直筒状である筒本体部31を使用者の首付近の形に合わせて手の力で曲げて使用することができ、使用者の首のサイズや形などに関わらず密着させ易い。そして、注入口部11は筒本体部31の端部38と接続されているため、首に掛けて使用したときに注入口部11が首付近を避けやすい実施形態となっている。しかしながら、使用者の首に掛けて使用する際の安定性という観点からは、この第2実施形態よりも前述した第1実施形態の方が好ましい。
【0054】
なお、この第2実施形態において、図7に示すように、筒本体部31の長手方向において内シール部35が分離して複数の領域で形成されていると、この筒本体部31を首に掛けて曲げて使用した時に、筒本体部31の長手方向における内シール部35が形成されている複数の領域を鎖骨付近などにそれぞれ配置させ易いためより好ましい。しかしながら、この第2実施形態では、内シール部35が1つ(1箇所)形成されている実施形態であっても構わない。例えば、筒本体部31をその長手方向において2等分したときに、注入口部11が含まれない領域側に内シール部35が1つ形成されている実施形態であっても良い。
【0055】
そして、限定されるものではないが、このような第1実施形態や第2実施形態ではいずれも、炭酸ガス透過性や適用時(特に30℃以上60℃以下程度の流体を内封して直接適用したとき)の感触がより好ましくなることから、筒本体部31を形成しているフィルム25が、メチルペンテン樹脂を含むポリオレフィン系樹脂により構成されたフィルム層が最外層(流体密封容器100の最も容器外部側となる層)として配置されている構成であるのが好適である。さらに、筒本体部31の柔軟性と耐久性とが両立して優れたものとなり、且つ上記した炭酸ガス透過性や適用時の感触もより好ましくなることから、筒本体部31を形成しているフィルム25が、スチレン系エラストマー(例えばポリスチレン、ポリエチレン、およびポリブチレンの共重合体であるスチレン系エラストマー(SEBS)など)により構成された中間層が、いずれも4-メチル-1-ペンテンαオレフィンコポリマーを含むポリオレフィン系樹脂により構成された最外層および最内層に挟まれて形成された3層構造であると好適である。他の実施形態においても同様である。
【0056】
以上のような本実施形態に係る流体密封容器100は、筒本体部31の内部に周縁シール部33のシール強度よりも小さいシール強度である内シール部35を有し、且つ内シール部35を挟んだ筒本体部31の内部の領域が互いに連通していることにより、落下などによって外部から一定程度の衝撃が筒本体部31に加わった際に、内シール部35が先に剥離し易い構成となっている。そして、この内シール部35の剥離によって筒本体部31の内部容積が増加して内圧が減少し、周縁シール部33などへの負荷が軽減して破袋を防ぐことができる。
【0057】
そして、このような本実施形態に係る流体密封容器100は、浴室内において浴槽中の炭酸ガス含有温水(例えば入浴剤入りの温水)などを注入して使用することができるだけでなく、非透水性であり且つ破袋し難いことから、この流体密封容器100に温水などを内封して、オフィスなどにおいても安心して使用可能である。
【0058】
このような本実施形態に係る流体密封容器100は、例えば、上記した可撓性のフィルム25を筒形状として、あるいは所定の金型に重ねてセットして接合およびカットし、前述したような周縁シール部33および内シール部35を有する筒本体部31を形成し、さらにこの筒本体部31の所定の位置に前述した注入口部11を接続する方法によって製造することができる。また、フィルム25を接合およびカットするとともに、所定形状の金型に沿って膨張させるブロー成形等の方法も選択できる。このブロー成形は、筒本体部31が略直筒状である第2実施形態などの場合には、周縁シール部33をより少なくすることができる(使用時に周縁シール部33が肌等により接触しにくい容器とすることができる)ため好ましい方法である。
なお、内シール部35のシール強度と周縁シール部33のシール強度との差は、前述したようなシール条件などにより調整することができる。
【符号の説明】
【0059】
100 流体密封容器
11 注入口部
15 キャップ
25 フィルム
31 筒本体部
31a 分岐筒部
33 周縁シール部
35 内シール部
35a 内シール部の長手方向における筒本体部の端部側の末端
35b 内シール部の長手方向における35aとは反対側の末端
38 筒本体部の端部
41 筒本体部の内部領域
D 筒本体部の本体最大幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8