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特開2024-43626超音波接合装置の制御方法及び超音波接合装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043626
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】超音波接合装置の制御方法及び超音波接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20240326BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 21/607 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B23K20/10
B29C65/08
H01L21/607 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148714
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】一松 暁登
【テーマコード(参考)】
4E167
4F211
【Fターム(参考)】
4E167BE07
4E167DA04
4E167DC05
4F211TA01
4F211TJ13
4F211TN22
(57)【要約】
【課題】簡単かつ安価な構成によりアンビルからのワークの取り出しを容易にした超音波接合装置の制御方法及び超音波接合装置を提供する。
【解決手段】アンビル21上に形成されたコの字状の複数の溝21a、21b内にワーク33a、33bを収納し、複数の溝21a、21bに嵌合する複数の凸部41a、41bを有する超音波ホーン40からワーク33a、33bに加重を与えるとともに溝21a、21bの方向に沿った超音波振動を印加して超音波振動を印加してワーク33a、33bを接合する超音波接合装置であって、複数の溝21a、21b内に収容されたワーク33a、33bが接合された後に超音波ホーン40を上昇させ、その後超音波ホーン40を下降させてシート状体34を介してアンビル21に対して超音波を再印加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンビル上に形成された断面がコの字状の複数の溝内にワークを収納し、前記複数の溝に嵌合する複数の凸部を有する超音波ホーンから前記ワークに加重を与えるとともに、前記溝の方向に沿った超音波振動を印加して前記ワークを接合する超音波接合装置の制御方法であって、
前記複数の溝内に収容された前記ワークが接合された後に前記超音波ホーンを上昇させ、その後前記超音波ホーンを下降させて前記アンビルに対してシート状体を介して超音波を再印加することを特徴とする超音波接合装置の制御方法。
【請求項2】
前記シート状体は、前記アンビルに対する前記超音波の再印加に対して前記アンビル及び前記超音波ホーンの摩耗を防止する軟質材料が用いられることを特徴とする請求項1に記載の超音波接合装置の制御方法。
【請求項3】
前記軟質材料は、銅系材料が用いられることを特徴とする請求項2に記載の超音波接合装置の制御方法。
【請求項4】
前記超音波ホーンを上昇させた後に、前記アンビルと前記超音波ホーンとの間に、前記シート状体を挿入するステップ
を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波接合装置の制御方法。
【請求項5】
前記アンビル上に形成された前記複数の溝の頂面には、前記シート状体が取付けられ、
前記超音波ホーンを上昇させた後に、該超音波ホーンを前記溝を横断する方向に変位させ、
その後前記超音波ホーンを下降させて前記超音波ホーンの複数の凸部から前記アンビルに対して前記シート状体を介して超音波を再印加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波接合装置の制御方法。
【請求項6】
アンビル上に形成された断面がコの字状の複数の溝内にワークを収納し、前記複数の溝に嵌合する複数の凸部を有する超音波ホーンから前記ワークに加重を与えるとともに、前記溝の方向に沿った超音波振動を印加して前記ワークを接合する超音波接合装置であって、
前記複数の溝内に収容された前記ワークが接合された後に上昇制御された前記超音波ホーンと前記アンビルとの間に挿入されるシート状体と、
前記シート状体が挿入された後に、前記超音波ホーンを下降制御して前記シート状体を介して前記アンビルに超音波を再印加する制御手段と、
を具備することを特徴とする超音波接合装置。
【請求項7】
アンビル上に形成された断面がコの字状の複数の溝内にワークを収納し、前記複数の溝に嵌合する複数の凸部を有する超音波ホーンから前記ワークに加重を与えるとともに、前記溝の方向に沿った超音波振動を印加して前記ワークを接合する超音波接合装置であって、
前記複数の溝の頂面に取付けられたシート状体と、
前記複数の溝内に収容された前記ワークが接合され、前記超音波ホーンが上昇された後に前記超音波ホーンを前記溝を横断する方向に変位させ、その後前記超音波ホーンを下降させて前記超音波ホーンの前記複数の凸部から前記アンビルに対して前記シート状体を介して超音波を再印加する制御手段と、
を具備することを特徴とする超音波接合装置。
【請求項8】
前記シート状体は、前記アンビルに対する前記超音波の再印加に対して前記アンビル及び前記超音波ホーンの摩耗を防止する軟質材料から形成されることを特徴とする請求項6又は7に記載の超音波接合装置。
【請求項9】
前記軟質材料は、銅系材料が用いられることを特徴とする請求項8に記載の超音波接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波接合装置に関し、詳しくは、アンビルからのワークの取り出しを容易にした超音波接合装置の制御方法及び超音波接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波接合装置は、接合対象部位に超音波振動と加重を与えることにより接合対象部位の接合を行うものである。
【0003】
従来、この種の超音波接合装置においては、超音波振動方向に沿ってアンビル上に形成された複数のコの字状の溝内にワークを収納し、この複数の溝にそれぞれ嵌合する凸部を有する超音波ホーン(以下、単に「ホーン」という)からワークに加重を与えるとともに超音波振動を印加してワークを接合又はコンパクティングする超音波接合装置が知られている。
【0004】
このような超音波接合装置においては、ワークの接合後に、接合したワークがコの字状の溝内に凝着し、コの字状の溝から取り出すのが困難になるという問題があった。この問題を解決するために、コの字状の溝の一側面を移動可能に構成した超音波接合装置も提案されている。
【0005】
図10は、この種の超音波接合装置の一例を示すもので、この超音波接合装置において、超音波振動方向に沿ってアンビル21に形成された複数のコの字状の溝21a、21bは、図10(C)に示すように、一側面22a、22bが矢印Y方向に移動可能に構成されている。
【0006】
この超音波接合装置は、2本のリード線31a、31bにサーミスタの2本の端子32a、32bをそれぞれ接合するもので、まず、図10(A)に示すように、2本のリード線31a、31bに2本のサーミスタの端子32a、32bをそれぞれ重ねてワーク33a,33bとしてコの字状の溝21a、21b内に収容する。
【0007】
この状態で、ホーン41を矢印Z方向に下降制御して、図10(B)に示すように、ホーン41の凸部41a、41bがワーク33a,33bに接触すると、ホーン41の超音波発振を開始して、ワーク33a,33bの接合加工を行う。
【0008】
ワーク33a,33bの接合加工が終了すると、図10(C)に示すように、コの字状の溝21a、21bの一側面22a、22bを矢印Y方向に移動し、ホーン41を矢印Z方向に上昇制御する。
【0009】
このような構成によると、ワーク33a,33bがアンビル21のコの字状の溝21a、21bの側壁に凝着していても、ワーク33a,33bをアンビル21のコの字状の溝21a、21bから容易に取り出すことができる。
【0010】
しかし、上記構成の超音波接合装置においては、アンビル21のコの字状の溝21a、21bの一側面22a、22bを移動可能にするための特別の機構の追加が必要になるので、これがコストとスペースの増加に繋がり、また、上記構成においては、アンビル21のコの字状の溝の数を3以上にすることはできないので、3以上のワークの同時の接合を行うことはできないという問題があった。
【0011】
また、従来の超音波接合装置には、特許文献1に記載されているように、ワークの取り出しを容易にするためにワークの接合後にホーンに超音波振動を再印加するように構成されたものがある。しかし、この特許文献1に記載された超音波接合装置は、ワークとホーンとの凝着を分離するもので、本発明のようにワークの接合後にアンビルに超音波を印加して、アンビルとワークとの凝着を分離するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008-068261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、簡単かつ安価な構成によりアンビルからのワークの取り出しを容易にした超音波接合装置の制御方法及び超音波接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、アンビル上に形成された断面がコの字状の複数の溝内にワークを収納し、前記複数の溝に嵌合する複数の凸部を有する超音波ホーンから前記ワークに加重を与えるとともに、前記溝の方向に沿った超音波振動を印加して前記ワークを接合する超音波接合装置の制御方法であって、前記複数の溝内に収容された前記ワークが接合された後に前記超音波ホーンを上昇させ、その後前記超音波ホーンを下降させて前記アンビルに対してシート状体を介して超音波を再印加することを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記シート状体は、前記アンビルに対する前記超音波の再印加に対して前記アンビル及び前記超音波ホーンの摩耗を防止する軟質材料が用いられることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、前記軟質材料は、銅系材料が用いられることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記超音波ホーンを上昇させた後に、前記アンビルと前記超音波ホーンとの間に、前記シート状体を挿入するステップ
を具備することを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記アンビル上に形成された前記複数の溝の頂面には、前記シート状体が取付けられ、前記超音波ホーンを上昇させた後に、該超音波ホーンを前記溝を横断する方向に変位させ、その後前記超音波ホーンを下降させて前記超音波ホーンの複数の凸部から前記アンビルに対して前記シート状体を介して超音波を再印加することを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は、アンビル上に形成された断面がコの字状の複数の溝内にワークを収納し、前記複数の溝に嵌合する複数の凸部を有する超音波ホーンから前記ワークに加重を与えるとともに、前記溝の方向に沿った超音波振動を印加して前記ワークを接合する超音波接合装置であって、前記複数の溝内に収容された前記ワークが接合された後に上昇制御された前記超音波ホーンと前記アンビルとの間に挿入されるシート状体と、前記シート状体が挿入された後に、前記超音波ホーンを下降制御して前記シート状体を介して前記アンビルに超音波を再印加する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明は、アンビル上に形成された断面がコの字状の複数の溝内にワークを収納し、前記複数の溝に嵌合する複数の凸部を有する超音波ホーンから前記ワークに加重を与えるとともに、前記溝の方向に沿った超音波振動を印加して前記ワークを接合する超音波接合装置であって、前記複数の溝の頂面に取付けられたシート状体と、前記複数の溝内に収容された前記ワークが接合され、前記超音波ホーンが上昇された後に前記超音波ホーンを前記溝を横断する方向に変位させ、その後前記超音波ホーンを下降させて前記超音波ホーンの前記複数の凸部から前記アンビルに対して前記シート状体を介して超音波を再印加する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0021】
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載の発明において、前記シート状体は、前記アンビルに対する前記超音波の再印加に対して前記アンビル及び前記超音波ホーンの摩耗を防止する軟質材料から形成されることを特徴とする。
【0022】
請求項9の発明は、請求項8に記載の発明において、前記軟質材料は、銅系材料が用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アンビル上に形成された断面がコの字状の複数の溝内にワークを収納し、前記複数の溝に嵌合する複数の凸部を有する超音波ホーンから前記ワークに加重を与えるとともに、前記溝の方向に沿った超音波振動を印加して前記ワークを接合する超音波接合装置の制御方法であって、前記複数の溝内に収容された前記ワークが接合された後に前記超音波ホーンを上昇させ、その後前記超音波ホーンを下降させて前記アンビルに対してシート状体を介して超音波を再印加するように構成したので、簡単かつ安価な構成によりアンビルとワークとの凝着を分離してアンビルからワークを容易に取り出すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係る超音波接合装置の実施例1の概略を示す側面図である。
図2図2は、図1に示した実施例1の超音波接合装置の要部を正面から見た一部断面図である。
図3図3は、図1に示した実施例1の超音波接合装置の動作を説明する要部断面図である。
図4図4は、図1に示した実施例1の超音波接合装置の動作を説明する要部断面図である。
図5図5は、図1に示した実施例1の超音波接合装置の接合加工動作を説明するフローチャートである。
図6図6は、本発明に係る実施例2の超音波接合装置の要部を正面から見た一部断面図である。
図7図7は、図6に示した実施例2の超音波接合装置の動作を説明する要部断面図である。
図8図8は、図6に示した実施例2の超音波接合装置の動作を説明する要部断面図である。
図9図9は、図6に示した実施例2の超音波接合装置の接合加工動作を説明するフローチャートである。
図10図10は、従来の超音波接合装置の動作を説明する要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための実施例について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0026】
図1は、本発明に係る超音波接合装置の実施例1の概略を示す図であり、図1に示した実施例1の超音波接合装置の要部の要部を正面から見た一部断面図である。
【0027】
この実施例1の超音波接合装置100においては、2本のリード線31a、31bにサーミスタの2本の端子32a、32bを重ねて、それぞれワーク33a,33bとして接合加工する構成を示したが、リード線とサーミスタの端子との接合だけでなく種々のワークの接合にも適用でき、また、複数の細線を接道するコンパクティング接合加工等にも適用可能である。
【0028】
図1及び図2において、本発明に係る実施例1の超音波接合装置100は、台座10に固定されたアンビル本体20上のアンビル21には、複数のコの字状の溝21a、21bが形成され、この複数のコの字状の溝21a、21bに対応するホーン40のヘッド部41には、上記複数のコの字状の溝21a、21bにそれぞれ嵌合する凸部41a、41bが形成されている。
【0029】
なお、上記実施例1では、アンビル21上に形成されるコの字状の溝21a、21bの数を2とし、これに対応してホーン40のヘッド部41に形成される凸部41a、41bの数を2としたが、これらの数を3以上にしても同様に構成することができる。
【0030】
アンビル21上に形成されるコの字状の溝21a、21b内には、接合対象である2本のリード線31a、31b及びサーミスタの2本の端子32a、32bが重ねてそれぞれワーク33a、33bとして収容される。そして、これらのワーク33a、33bには、加圧装置70からホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bを介して加重が与えられるとともに、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bから超音波振動が印加され、これによりワーク33a、33bの接合加工がおこなわれる。
【0031】
ホーン40は、コーン50を介して超音波振動子(以下、単に振動子という)60に接続され、振動子60は、図示しない超音波発振制御部によりその超音波振動が制御される。ここで、接合対象であるワーク33a、33bに対してホーン40から印加される超音波振動は、溝21a、21bに沿った、接合対象に対して平行な横方向Xの振動である。
【0032】
ホーン40、コーン50、振動子60を含む部分は、コーン50に取り付けられた超音波振動子ホルダ61により保持され、加重装置70からワーク30への加重は、この超音波振動子ホルダ61を介して行われる。
【0033】
図3図4は、図1に示した実施例1の超音波接合装置100の動作を説明する要部断面図である。
【0034】
この超音波接合装置100の接合対象である2本のリード線31a、31b及び2本のサーミスタの端子32a、32bからなるワーク33a、33bは図2に示すように、アンビル21のコの字状の溝21a、21b内に収容される。
【0035】
ここで、ホーン40が矢印Z方向に下降制御され、図3(A)に示すように、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがワーク33a、33bに接触すると、加圧装置70からこのワーク33a、33bに加重が与えられるとともに、ホーン40から超音波振動が印加され、これによりワーク33a、33bの接合加工が行われる。
【0036】
ワーク33a、33b接合加工が終了すると、図3(B)に示すようにホーン40は矢印Z方向に上昇する。
【0037】
この状態で、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bとアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面との間に、シート状体34が矢印Y方向から挿入される。
【0038】
ここで、シート状体34は、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bからアンビル20のコの字状の溝21a、21bに対する超音波振動の伝播を効率よく行うことができ、しかも、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41b及びアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面の摩耗を防止することができる軟質材料を用いて構成される。この軟質材料としては、上記条件を満足すれば、樹脂、金属等の軟質材料を用いて構成することができ、この軟質材料の一例としては、クロム銅、黄銅などの銅合金を用いることができ、本実施例では純銅材を用いている。
【0039】
ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bとアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面との間に、シート状体34が挿入され、図4(D)に示すように、再びホーン40を矢印Z方向に下降させて、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bをシート状体34に接触させると、ホーン40からヘッド部41の凸部41a、41b、シート状体34を介してアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面に超音波振動を印加することができる。
【0040】
これにより、アンビル20のコの字状の溝21a、21bに凝着していたワーク33a、33bは、溝21a、21bから剥離される。
【0041】
ここで、ホーン40からアンビル21に印加する超音波振動は、ワーク33a、33bの接合加工に用いた超音波振動と振幅、発振時間、周波数が同じでものでもよいが、溝21a、21bからのワーク33a、33bの剥離を容易にするために選択された最適な振幅、発振時間、周波数の接合加工に用いた超音波振動とは異なる超音波振動を用いてもよい。
【0042】
また、シート状体34の厚さ、材質は、溝21a、21bからのワーク33a、33bの剥離を容易にするために種々の変更が可能である。
【0043】
ホーン40からのアンビル21の溝21a、21bの頂面に対する超音波振動の再印加が行われた後、図4(E)に示すように、ホーン40を矢印Z方向に上昇制御し、シート状体34を矢印Y方向から取り出し、図4(F)に示す状態で、アンビル20のコの字状の溝21a、21bからワーク33a、33bの取り出しが行われる。
【0044】
ここで、図4(D)状態で、ホーン40の超音波振動を、ヘッド部41の凸部41a、41b、シート状体34を介してアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面に伝搬して、溝21a、21bとワーク33a、33bとの凝着を剥離しているので、アンビル21の溝21a、21bからのワーク33a、33bの取り出しを容易に行うことができる。
【0045】
図5は、図1に示した実施例1の超音波接合装置の接合加工動作を説明するフローチャートである。
【0046】
この接合加工処理が開始されると、まず、ホーン40を下降制御する(ステップ501)。
【0047】
次に、ホーン40の下降制御により、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがワーク33a、33bに接触したかを調べる(ステップ502)。ここで、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがワーク33a、33bに接触していないと(ステップ502でNO)、ステップ501に戻り、ホーン40の下降制御を続ける。
【0048】
ステップ502で、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがワーク33a、33bに接触したと判断されると(ステップ502でYES)、ホーン40の超音波発振を開始し(ステップ503)、次に、ワーク33a、33bの接合加工に必要な時間T1経過したかを調べる(ステップ504)。
【0049】
ステップ504で、時間T1を経過していないと判断されると(ステップ504でNO)、ステップ504に戻り、時間T1の経過を待つが、時間T1を経過したと判断されると(ステップ504でYES)、ワーク33a、33bの接合加工は終了したと判断し、ホーン40の超音波発振を停止して(ステップ505)、ホーン40を上昇制御する(ステップ506)。
【0050】
次に、ホーン40がシート状体の挿入位置に達したかを調べ(ステップ507)、ホーン40がシート状体の挿入位置に達していないと判断されると(ステップ507でNO)、ステップ506に戻り、ホーン40を上昇制御を続ける。
【0051】
ステップ507で、ホーン40がシート状体の挿入位置に達したと判断されると(ステップ507でYES)、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bとアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面との間に、シート状体34を挿入する(ステップ508)。
【0052】
次に、ホーン40を下降制御し(ステップ509)、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがシート状体34に接触したかを調べ(ステップ510)、ここで、シート状体34に接触していない場合は(ステップ510でNO)、ステップ509に戻り、ホーン40の下降制御を続けるが、シート状体34に接触したと判断されると(ステップ510でYES)、ホーン40の超音波発振を開始する(ステップ511)。
【0053】
次に、アンビル21のコの字状の溝21a、21bからワーク33a、33bを剥離させるのに十分な時間T2を経過したかを調べ(ステップ512)、時間T2を経過していない場合はステップ512に戻るが、時間T2を経過した場合は(ステップ512でYES)、ホーン40の超音波発振を停止する(ステップ513)。
【0054】
その後、ホーン40を上昇制御し(ステップ514)、実施例1の超音波接合装置100のワーク33a、33bの接合加工制御を終了する。
【実施例0055】
図6は、本発明に係る実施例2の超音波接合装置200の要部を正面から見た一部断面図である。
【0056】
図1乃至図5に示した実施例1の超音波接合装置100においては、ワーク33a、33bの接合加工終了後、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bとアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面との間に、シート状体34を挿入し、シート状体34の上から超音波振動を再印加して、アンビル21のコの字状の溝21a、21bに凝着していたワーク33a、33bを剥離するように構成したが、以下に説明する実施例2の超音波接合装置200では、アンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面にシート状体35a、35b、35cを貼付し、ワーク33a、33bの接合加工終了後、ホーン40を溝21a、21bの方向と直交する方向に移動制御し、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bからシート状体35a、35b、35cを介してアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面に超音波振動を再印加することにより、アンビル21のコの字状の溝21a、21bに凝着していたワーク33a、33bを、溝21a、21bから剥離するように構成している。その他の構成は実施例1の超音波接合装置100と同様である。
【0057】
図6において、アンビル21上に形成されるコの字状の溝21a、21bの頂面には、シート状体35a、35b、35cが貼付される。ここで、シート状体35a、35b、35cは、実施例1のシート状体34と同様に、樹脂、金属等の軟質材料、クロム銅、黄銅などの銅合金を用いることができ、本実施例では純銅材を用いている。
【0058】
2本のリード線31a、31b及び2本のサーミスタの端子32a、32bからなる接合対象のワーク33a、33bは図6に示すように、アンビル21のコの字状の溝21a、21b内に収容される。
【0059】
ここで、ホーン40が矢印Z方向に下降制御され、図7(A)に示すように、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがワーク33a、33bに接触すると、加圧装置70からこのワーク33a、33bに加重が与えられるとともに、ホーン40から超音波振動が印加され、これによりワーク33a、33bの接合加工が行われる。
【0060】
ワーク33a、33b接合加工が終了すると、図7(B)に示すようにホーン40は矢印Z方向に上昇する。
【0061】
この状態で、ホーン40を、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがアンビル20のコの字状の溝21a、21bの頂面の対向するように矢印Y方向に移動させる。
【0062】
次に、図8(D)に示すように、ホーン40を矢印Z方向に下降させ、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bをシート状体35a、35bに接触させ、ホーン40から超音波振動を、ヘッド部41の凸部41a、41b、シート状体35a、35bを介してアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面に印加する。
【0063】
これにより、アンビル21のコの字状の溝21a、21bに凝着していたワーク33a、33bは、溝21a、21bから剥離される。
【0064】
ここで、ホーン40からアンビル21に印加する超音波振動は、ワーク33a、33bの接合加工に用いた超音波振動と周波数及び強度が同じでものでもよいが、溝21a、21bからのワーク33a、33bの剥離を容易にするために選択された接合加工に用いられたものとは異なる最適な振幅、発振時間、周波数の超音波振動を用いてもよい。
【0065】
また、シート状体35a、35b、35cの厚さ、材質は、溝21a、21bからのワーク33a、33bの剥離を容易にするために種々の変更が可能である。
【0066】
ホーン40からのアンビル21の溝21a、21bの頂面に対する超音波振動の印加が行われた後、図8(E)に示すように、ホーン40を矢印Z方向に上昇制御し、図8(F)に示す状態で、アンビル21のコの字状の溝21a、21bからワーク33a、33bの取り出しが行われる。
【0067】
ここで、図8(D)状態で、ホーン40の超音波振動を、ヘッド部41の凸部41a、41b、シート状体35a、35bを介してアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面に伝搬して、溝21a、21bからワーク33a、33bを剥離しているので、アンビル21のコの字状の溝21a、21bからのワーク33a、33bの取り出しを容易に行うことができる。
【0068】
図9は、図6に示した実施例2の超音波接合装置200の接合加工動作を説明するフローチャートである。
【0069】
この接合加工処理が開始されると、まず、ホーン40を下降制御する(ステップ901)。
【0070】
次に、ホーン40の下降制御により、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがワーク33a、33bに接触したかを調べる(ステップ902)。ここで、接触していないと(ステップ902でNO)、ステップ901に戻り、ホーン40の下降制御を続ける。
【0071】
ステップ902で、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがワーク33a、33bに接触したと判断されると(ステップ902でYES)、ホーン40の超音波発振を開始し(ステップ903)、次に、ワーク33a、33bの接合加工に必要な時間T1経過したかを調べる(ステップ904)。
【0072】
ステップ904で、時間T1を経過していないと判断されると(ステップ904でNO)、ステップ904に戻り、時間T1の経過を待つが、時間T1を経過したと判断されると(ステップ904でYES)、ワーク33a、33bの接合加工は終了したと判断し、ホーン40の超音波発振を停止して(ステップ905)、ホーン40を上昇制御する(ステップ906)。
【0073】
次に、ホーン40が移動位置に達したかを調べ(ステップ907)、ホーン40が移動位置に達していないと判断されると(ステップ907でNO)、ステップ906に戻り、ホーン40の上昇制御を続ける。
【0074】
ステップ907で、ホーン40がホーン40の移動位置に達したと判断されると(ステップ907でYES)、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがアンビル21のコの字状の溝21a、21bの頂面と対向するようにホーン40を移動制御する(ステップ908)。
【0075】
この状態で、ホーン40を下降制御し(ステップ909)、次に、ホーン40のヘッド部41の凸部41a、41bがシート状体34に接触したかを調べ(ステップ910)、ここで、シート状体34に接触していない場合は(ステップ910でNO)、ステップ909に戻り、ホーン40の下降制御を続けるが、シート状体34に接触したと判断されると(ステップ910でYES)、ホーン40の超音波発振を開始する(ステップ911)。
【0076】
次に、アンビル21のコの字状の溝21a、21bからワーク33a、33bを剥離させるのに十分な時間T2を経過したかを調べ(ステップ912)、時間T2を経過していない場合はステップ912に戻るが、時間T2を経過した場合は(ステップ912でYES)、ホーン40の超音波発振を停止する(ステップ913)。
【0077】
その後、ホーン40を元の位置に復帰制御し(ステップ914)、ホーン40を上昇制御して(ステップ914)、実施例2の超音波接合装置100のワーク33a、33bの接合加工制御を終了する。
【0078】
以上、本願発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内であれば、当業者の通常の創作能力によって多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10…台座
20…アンビル本体
21…アンビル
21a、21b…コの字状の溝
30…ワーク
33a、33b…ワーク
34…シート状体
35a、35b、35c…シート状体
31a、31b…リード線
32a、32b…端子
40…ホーン
41…ヘッド
41a、41b…凸部
50…コーン
60…振動子
61…振動子ホルダ
70…加圧装置
100…超音波接合装置
200…超音波接合装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10