(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043627
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電子ドナー性化合物、および該化合物を用いた光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20240326BHJP
C07D 495/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L31/04 152B
H01L31/04 152G
H01L31/04 152H
C07D495/04 101
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148715
(22)【出願日】2022-09-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】716004877
【氏名又は名称】株式会社奥本研究所
(72)【発明者】
【氏名】奥本 健二
【テーマコード(参考)】
4C071
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071AA08
4C071BB01
4C071BB05
4C071CC22
4C071EE13
4C071FF23
4C071GG02
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4C071HH08
4C071JJ01
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4C071LL05
5F151AA11
5F151CB13
5F151DA03
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5F151FA04
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5F151GA03
5F251AA11
5F251CB13
5F251DA03
5F251DA07
5F251FA04
5F251FA06
5F251GA03
5F251XA33
5F251XA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】波長400~500nmの範囲で効率的に光を吸収する電子ドナー性化合物及び太陽電池を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示される化合物。(1)式中、R
1~R
34は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、チオ基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。化合物を活性層に適用し太陽電池を得る。
一般式(1)
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物。
【化1】
(1)式中、R
1~R
34は、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシカルボニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、
または置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表す。
ただし、R
17、R
22、R
27、R
32がすべてメトキシ基である化合物は除く。
【請求項2】
2つの電極とその間に有機化合物を含有してなる光電変換素子であって、
請求項1に記載の化合物を2つの電極の間に含有する光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ドナー性化合物、および該化合物を用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機太陽電池とは、有機材料を光電変換材料に用いる太陽電池である。有機太陽電池はプラスチック基板上に印刷法を用いて形成できるため、軽くて薄く、低コストで製造できるといった利点を有しており、研究開発が進められている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
有機太陽電池は軽くて薄いため、スマートフォンなどの携帯端末に搭載しやすく、携帯端末の充電源として活用できる。携帯端末は、室内で保管あるいは使用することが多いため、携帯端末用の太陽電池は室内光として一般に用いられている蛍光灯やLED電灯に対して発電効率が高いことが求められる。なお、太陽電池という用語は、光源として太陽光を前提とした用語であるが、この明細書中では、光源の種類に関わらず、光エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスを太陽電池あるいは光電変換素子と呼ぶ。
【0004】
ところで、有機太陽電池の構造は、一般に、2つの電極(透明電極と対電極)の間に光電変換層と電荷輸送層を挟んだ構造をしており、例えば
図1のような積層構造をしている。光電変換層として、電子を放出しやすい電子ドナー性材料と電子を受け取りやすい電子アクセプター性材料を混合した組成が一般的に用いられている(例えば、非特許文献2)。入射光の吸収を決定するのは、この電子ドナー性材料と電子アクセプター性材料の光吸収性能である。
【0005】
有機太陽電池において、高いエネルギー変換効率を示す電子アクセプター性材料として、化1で表されるフラーレン誘導体PCBM、化2で表される縮合環芳香族化合物であるY6、あるいはそれらの誘導体が用いられている。これらの材料は、蛍光灯やLED電灯の青色成分である400~500nmの波長領域の光の吸収能力が低い(非特許文献2、非特許文献3)。
【0006】
【0007】
【0008】
電子ドナー性材料としては、化3で表されるポリチオフェン誘導体P3HT、化4で表されるベンゾジチオフェン構造を含む高分子PM6、あるいはそれらの誘導体が用いられている。これらの材料も、蛍光灯やLED電灯の青色領域である400~500nmの波長領域の光の吸収能力は高くない(非特許文献2、非特許文献3)。
【0009】
【0010】
【0011】
特許文献1には、化5に示される化合物が開示されているが、ペロブスカイト太陽電池の正孔輸送層の材料として開示されている。また、その吸収スペクトルや酸化電位については記載がなく、太陽電池における光電変換層の電子ドナー性の材料として用いたときの特性についても記載がない。
【0012】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】中国特許 公開番号111909169 (2020年)
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Advanced Energy Materials、2021年、11巻、20003570
【非特許文献2】Applied Physics Letters、2002年、81巻、p3885
【非特許文献3】Joule、2019年、3巻、p1140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、蛍光灯やLED電灯の青色成分である400~500nmの波長範囲の光を効率的に吸収する電子ドナー性化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化6】
(1)式中、R
1~R
34は、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシカルボニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、
または置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表す。
ただし、R
17、R
22、R
27、R
32がいずれもメトキシ基である化合物は除く。
【0017】
また、本発明の光電変換素子は、2つの電極とその間に有機化合物を含有してなる光電変換素子であって、一般式(1)で表される化合物を2つの電極の間に含有する光電変換素子である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化合物は、400~500nmの波長の光を効率的に吸収する電子ドナー性材料として機能し、電子アクセプター性材料と組み合わせて太陽電池を構成することにより、室内光を効率よく吸収して電気エネルギーに高効率で変換できる有機太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】本発明の光電変換素子の構成を表す概略断面図である。
【
図3】本発明の光電変換素子の構成および実施例と比較例の光電変換素子の構成を表す概略断面図である。
【
図4】本発明の化合物A-1の質量分析の結果得られたマススペクトルである。
【
図5】本発明の化合物A-1、A-2、A-4、A-5の電子吸収スペクトルの測定結果である。
【
図6】本発明の化合物A-2の質量分析の結果得られたマススペクトルである。
【
図7】本発明の化合物A-2、A-4、A-5のサイクリックボルタンメトリー測定の結果である。
【
図8】本発明の化合物A-4の核磁気共鳴分光の結果得られた1H-NMRスペクトルである。
【
図9】本発明の化合物A-4の質量分析の結果得られたマススペクトルである。
【
図10】本発明の化合物A-5の核磁気共鳴分光の結果得られた1H-NMRスペクトルである。
【
図11】本発明の化合物A-5の質量分析の結果得られたマススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の一般式(1)で表される化合物、当該化合物を用いた光電変換層は、光電変換素子に用いられる。
【0021】
〈光電変換素子〉
本発明の光電変換素子は、典型的な例としては、
図2の概略断面図に示すように、支持基板7、透明電極8、 正孔輸送層9、光電変換層10、電子輸送層11、対電極12 をこの順に有する。あるいは、
図3の概略断面図に示すように、支持基板7、透明電極8、電子輸送層11、光電変換層10、正孔輸送層9、対電極12 をこの順に有する。
【0022】
以下に、前記一般式( 1 ) で表される化合物について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
一般式(1)式中、R1~R34は、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシカルボニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、
または置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表す。
ただし、R17、R22、R27、R32がすべてメトキシ基である化合物は除く。
【0024】
一般式( 1 ) において、R1~R34で表される「ハロゲン原子」として、具体的に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素があげられる。
【0025】
一般式( 1 ) において、R1~R34で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1 ~ 1 8 の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1 ~ 1 8 の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては具体的に、メチル基、エチル基、n - プロピル基、イソプロピル基、n - ブチル基、イソブチル基、s - ブチル基、t - ブチル基、n- ペンチル基、イソペンチル基、n - ヘキシル基、2 - エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などをあげることができる。また、置換基を有するアルキル基としては具体例に、アルキルリン酸基、アルキルカルボン酸基、アルキルカルボニル基などがあげられるが、これらに限定されない。
【0026】
一般式( 1 ) において、R1~R34で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては具体的に、ビニル基、1 - プロペニル基、アリル基、1 - ブテニル基、2 - ブテニル基、1 - ペンテニル基、1 - ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基などをあげることができる。
【0027】
一般式( 1 ) において、R1~R34で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基」における「炭素原子数2 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基」としては具体的に、エチニル基、1 - プロピニル基、2 - プロピニル基、1 - ブチニル基、2 - ブチニル基、1 - メチル- 2 - プロピニル基、1 - ペンチニル基、2 - ペンチニル基、1 - メチル- n - ブチニル基、2 - メチル-n - ブチニル基、3 - メチル- n - ブチニル基、1 - ヘキシニル基などをあげることができる。
【0028】
一般式( 1 ) において、R1~R34で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3 ~ 1 0 のシクロアルキル基」における「炭素原子数3 ~ 1 0 のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などをあげることができる。
【0029】
一般式( 1 ) において、R1~R34で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」における「炭素原子数1 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」としては、具体的に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n - ブトキシ基、n - ペンチルオキシ基、n - ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s - ブトキシ基、t - ブトキシ基、イソオクチルオキシ基、t - オクチルオキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基などをあげることができる。
【0030】
一般式( 1 ) において、R1~R34 で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3 ~ 1 0 の直鎖状もしくは分岐状のシクロアルコキシ基」における「炭素原子数3 ~1 0 の直鎖状もしくは分岐状のシクロアルコキシ基」としては、具体的に、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4 - メチルシクロヘキシルオキシ基などをあげることができる。
【0031】
一般式( 1 ) において、R1~R34 で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1 ~ 1 8 の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシカルボニル基」における「炭素原子数1 ~ 1 8 の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシカルボニル基」としては、具体的に、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などをあげることができる。
【0032】
一般式( 1 ) において、R1~R34 で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1 ~ 1 8 のチオ基」における、「炭素原子数1 ~ 1 8 のチオ基」は、(-S - R35 )で表される置換基を示し、R35 としては、本願明細書に示した置換基を有していてもよい炭素原子数1 ~ 1 8 の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基( チオアルキル基) 、または置換基を有していてもよい炭素原子数6 ~ 3 6 の芳香族炭化水素基などがあげられ、チオアルキル基の場合、末端が不飽和結合となっているものを含む。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基などをあげることができる。
【0033】
一般式( 1 ) において、R1~R34で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6 ~ 3 6 の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6 ~ 3 6 の芳香族炭化水素基」としては具体的に、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基( アントリル基) 、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などをあげることができる。なお、本発明において芳香族炭化水素基には、「縮合多環芳香族基」が含まれるものとする。
【0034】
一般式( 1 ) において、R1~R34で表される「置換基を有していてもよい環形成原子数5 ~ 3 6 の複素環基」における「環形成原子数5 ~ 3 6 の複素環基」としては具体的に、ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基( フラニル基) 、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチルジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボニリル基などをあげることができる。
【0035】
一般式( 1 ) において、R1~R34で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1 ~ 1 8 の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3 ~ 1 0 のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1 ~ 2 0 の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3 ~ 1 0 の直鎖状もしくは分岐状のシクロアルコキシ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1 ~ 1 8 の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシカルボニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1 ~ 1 8 のチオ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数6 ~ 3 6 の芳香族炭化水素基」、または「置換基を有していてもよい環形成原子数5~ 3 6 の複素環基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子; シアノ基; 水酸基; ニトロ基; ニトロソ基; カルボキシル基; リン酸基;メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;メチル基、エチル基、n - プロピル基、イソプロピル基、n - ブチル基、イソブチル基、s - ブチル基、t - ブチル基、n - ペンチル基、イソペンチル基、n - ヘキシル基、2 -エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1 ~ 1 8 の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;ビニル基、1 - プロペニル基、アリル基、1 - ブテニル基、2 - ブテニル基、1 - ペンテニル基、1 - ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基など炭素原子数2 ~ 20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t - ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1 ~ 20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などの炭素原子数6 ~ 3 6 の芳香族炭化水素基;ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基( フラニル基)、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチルジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボニリル基などの環形成原子数5 ~ 3 6 の複素環基;無置換アミノ基(- N H 2 ) 、エチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基などの一置換アミノ基、またはジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アセチルフェニルアミノ基などの二置換アミノ基である炭素原子数1 ~ 1 8 のアミノ基;無置換チオ基( チオール基: - S H ) 、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基などの炭素原子数1 ~ 1 8 のチオ基;などをあげることができる。これらの「置換基」は、1 つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに前記例示した置換基を有していてもよい。
【0036】
本発明の前記一般式( 1 ) で表される化合物の具体例としてA-1~A-5を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
本発明の前記一般式( 1 ) で表される化合物は、臭素化反応、ボロン酸置換反応やスズキカップリング反応等の公知の方法を組み合わせることによって合成することができる。
【0043】
本発明の前記一般式( 1 ) で表される化合物の精製方法としては、カラムクロマトグラフィーによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析等がある。あるいはこれらの方法を併用して、純度を高めた化合物を得ることができる。また、これらの化合物の同定は、核磁気共鳴分析( 以下、N M Rと表記することがある ) や質量分析により行うことができる。
【0044】
本発明の前記一般式( 1 ) で表される化合物は、光電変換素子用の光電変換層として使用することが好ましい。この場合、本発明の前記一般式( 1 ) で表される化合物は、電子ドナー性材料として機能する。本発明の前記一般式( 1 ) で表される化合物を含む光電変換層には、別の構成要素として電子アクセプター性材料を含有してもよい。
【0045】
また、一般式( 1 ) で表される化合物を用いた有機半導体薄膜は、有機半導体デバイス、特に、有機薄膜トランジスタおよび有機発光素子において、半導体層を構成する有機半導体薄膜としても利用可能である。
【0046】
一般式(1)で表される化合物は、電子を放出しやすいトリフェニルアミン部位を有しており、電子ドナー性の機能を有している。また、中央に電子アクセプター性のベンゾジチオフェンジオキシド部位を有しており、この部位と前述のトリフェニルアミン部位がチオフェン環を通して共役しているため、吸収波長は長波長へシフトし、400~500nmの波長を効率的に吸収できる。以上から、本発明の化合物は、400~500nmの波長を効率的に吸収する電子ドナー性材料として機能し、電子アクセプター性材料と組み合わせて有機太陽電池を構成することにより、室内光を効率よく吸収して電気エネルギーに高効率で変換できる有機太陽電池を得ることができる。また、アルキル基を分子内に備えることができるため、溶解性に優れており、湿式法による光電変換層の形成能力に優れている。
【0047】
以下、本発明の光電変換素子の好ましい態様について説明する。
【0048】
本発明の光電変換素子は、
図2 に示す通り、支持基板7、透明電極8、正孔輸送層9、光電変換層10、電子輸送層11 、および対電極12 をこの順に備えることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明の光電変換素子の別の態様としては、
図3 に示す通り、支持基板7、透明電極8、電子輸送層11、光電変換層10、正孔輸送層9 、および対電極12 をこの順に備えることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0050】
〈支持基板〉
本発明の光電変換素子において、
図2あるいは
図3に示す支持基板7としては、ガラスやプラスチックフィルム、金属フィルムなどを用いることができる。ガラスとしては、アルカリガラスや無アルカリガラスなどを用いることができる。プラスチックの材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホネート、ポリイミド、ポリアミドなどを用いることができる。金属フィルムの材質としては、銅、アルミ、銀、SUSなどを用いることができる。
【0051】
〈透明電極〉
本発明の光電変換素子において、
図2や
図3 に示す透明電極8は、光電変換に寄与する光を透過することができるよう、透光性を有する必要がある。透明電極の材質の具体例としては、スズドープ酸化インジウム( I T O ) 、亜鉛をドープしたインジウム酸化物( I Z O ) 、タングステンをドープしたインジウム酸化物( I W O ) 、亜鉛とアルミニウムとの酸化物( A Z O ) 、フッ素ドープの酸化スズ( F T O ) 、酸化インジウム( I n
2 O
3 ) 、インジウム- スズ複合酸化物などの導電性透明酸化物半導体などをあげることができる。
【0052】
本発明の光電変換素子の光電変換層を、塗布液を用いて被覆する方法としては任意の塗布方法を用いることができる。
【0053】
本発明において、製膜の際、光電変換層塗布液に使用される溶媒は、トルエン、キシレン、メシチレン、 クロロベンゼン 、o - ジクロロベンゼン、m - ジクロロベンゼ
ン、p - ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系有機溶媒; ジクロロメタン、クロロホルム、1 , 2 - ジクロロエタン、1 , 1 , 2 - トリクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系有機溶媒; ベンゾニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒; テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、c - ペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒; 酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒; メタノール、イソプロパノール、n - ブタノール、プロピレングリコール、1 , 3 - ブタンジオール、1 , 4 - ブタンジオール、2 , 3 - ブタンジオール、シクロヘキサノール、2 - n - ブトキシエタノール等のアルコール系溶媒等があげられるが、これらに限定されない。また、上記溶媒は、1 種または2 種以上を混合して使用してもよく、構造により使用する溶媒を選択することができる。特に、芳香族系有機溶媒およびハロゲン化アルキル系有機溶媒を使用することが好ましい。
【0054】
本発明の光電変換素子の光電変換層を形成する際、本発明の電子ドナー性の化合物と共に別の材料を混ぜてもよい。特に電子アクセプター性の化合物を混ぜることで光電変換効率を向上することができる。電子アクセプター性の化合物としては、化1で表されるフラーレン誘導体PCBMあるいはそれらの誘導体を好適に用いることができる、あるいは、化2で表される縮合環芳香族化合物であるY6、あるいはそれらの誘導体を好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明において、光電変換層を塗布した後に、溶媒を含んだ光電変換層の乾燥を行う条件としては、特に制限はないが、溶媒を除去できる温度と時間条件で行うことが望ましく、加熱により行う場合はホットプレート等により5 0 ~ 1 2 0 ℃ 程度で加熱することが好ましく、加熱時間は、概ね1 ~ 60 分程度であることが好ましい。
【0056】
本発明の光電変換素子において、光電変換層の膜厚は、光電変換効率をより向上させる観点から、5 ~5 0 0 n m であることが好ましく、1 0 n m ~ 2 5 0 n m であることがより好ましい。
【0057】
本発明の光電変換素子において、光電変換層の製膜時の雰囲気は、水分および酸素の混入を防ぐことにより再現よく光電変換素子を製造できる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。また、水分および酸素含有量が100ppm以下の脱水・脱酸素された溶媒を用いることが好ましい。
【0058】
本発明の光電変換素子において、光電変換層の製膜時に添加剤を混ぜてもよい。具体的に、1,8-ジヨードオクタン、1-クロロナフタレンなどを混ぜてもよいが、これらに限定されるものではない。混合する量は、質量パーセントで0.1~3%の範囲が好ましい。
【0059】
本発明の光電変換素子において、正孔輸送層の材料としては、具体的にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホナート)の混合物、酸化モリブデン、4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トルイル)アミノ]トリフェニルアミンなどを好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明の光電変換素子において、正孔輸送層は蒸着あるいは塗布法いずれで形成してもよい。
【0061】
本発明の光電変換素子において正孔輸送層を用いる場合は、その膜厚は、良好な導電性を得るために5 ~200n mであることが好ましく、10~100nmであることがより好ましい。
【0062】
本発明の光電変換素子において、電子輸送層の材料としては、具体的にバトフェナントロリン、2,9-ジナフタレン-2-イル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、フラーレンC60、フッ化リチウム、酸化亜鉛、カルシウムなどを好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの電子輸送層を積層して用いてもよい。
【0063】
本発明の光電変換素子において、電子輸送層は蒸着あるいは塗布法いずれで形成してもよい。
【0064】
本発明の光電変換素子において電子輸送層を用いる場合は、その膜厚は、良好な導電性を得るために3 ~200n mであることが好ましく、5~100nmであることがより好ましい。
【0065】
本発明の光電変換素子において、対電極に用いる材質としては、具体的に白金、チタン、ステンレス、アルミニウム、金、銀、ニッケル、マグネシウム、クロム、コバルト、銅などの金属又はこれらの合金があげられる。これらのなかでも、薄膜においても高い電気伝導性を示す点でアルミニウム、銀または銀の合金を用いることが好ましい。なお、銀の合金としては、硫化又は塩素化の影響を受けにくく薄膜としての安定性を向上させるために、銀と金の合金、銀と銅の合金、銀とパラジウムの合金、銀と銅とパラジウムの合金、銀と白金の合金などがあげられる。
【0066】
本発明の光電変換素子において対極は、蒸着等の方法で形成できる材料が好ましい。
【0067】
本発明の光電変換素子において対電極として金属電極を用いる場合は、その膜厚は、良好な導電性を得るために1 0 n m以上であることが好ましく、5 0 n m 以上であることがより好ましい。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
[合成実施例1] 化7で表される本発明の化合物A-1の合成
湯浴、アルゴン置換系、マグネチックスターラー、冷却管を備えた 200mLの3つ口フラスコを準備した。次に、化12で表されるジブロモ化物0.5g、化13で表されるボロン酸誘導体1.0g、テトラヒドロフラン30mLを投入し、続いてトリフェニルフォスフィンパラジウム 0.3gを投入し、その後、炭酸カリウム2.76gを10mL蒸留水に加えた2mol/L水溶液を投入した。その後、テトラヒドロフラン還流温度で8時間攪拌し、室温に戻した。その後、反応溶液から水相を分液漏斗で取り除き、有機層をロータリーエバポレーターで留去した。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液はトルエンとヘプタン混合溶媒)を2回繰り返すことで行った。精製後、ロータリーポンプで真空引きをしながら80℃で加熱することで乾燥した。
【0070】
【0071】
【0072】
合成と精製を行った化合物A-1の化学同定は、プロトン核磁気共鳴法(1H-NMR)と質量分析によって行った。1H-NMRは、日本電子株式会社製JNM-ECX400Pという装置を用いた。他の化合物A-2~A-5の1H-NMRも同じ装置を用いた。質量分析は、日本電子株式会社製JMS-S3000という装置を用い、マトリックス支援レーザーイオン化Spiral飛行時間型質量分析法により、ポジティブ極性イオンを観測することにより行った。他の化合物A-2~A-5の質量分析も同じ装置を用いた。1H-NMR (400MHz、CD
2Cl
2、δppm) 7.64(s、2H)、7.36(d、4H)、7.26(t、8H)、7.00~7.15(multi、16H)、3.28(multi、4H)、2.63(d、4H)、1.75(multi、2H)、1.60(multi、2H)、1.14~1.42(multi、32H)、0.74~0.93(multi、24H)。質量分析 m/z = 1318.7(M+)。質量分析の結果を
図4に示す。
【0073】
合成と精製を行った化合物A-1に対し、吸収スペクトルと酸化電位の測定を行った。
図5は化合物A-1の吸収スペクトルの測定結果を示している。化合物A-1は、400~500nmの波長領域に強い吸収をもつ。化合物A-1は、酸化電位が632mV vs Ag/Ag+と決定され、最高占有分子軌道(以下、HOMOと省略する)のエネルギー準位が5.58eVと見積もられ、電子ドナー材料として適切な準位にある。以上から、化合物A-1は、室内光に対して効率的に発電することができる有機太陽電池の電子ドナー材料として有効に機能することができる。
【0074】
[合成実施例2] 化8で表される本発明の化合物A-2の合成
湯浴、アルゴン置換系、マグネチックスターラー、冷却管を備えた 200mLの3つ口フラスコを準備した。次に、化12で表されるジブロモ化物0.5g、化14で表されるボロン酸誘導体1.0g、テトラヒドロフラン30mLを投入し、続いてトリフェニルフォスフィンパラジウム 0.3gを投入し、その後、炭酸カリウム2.76gを10mL蒸留水に加えた2mol/L水溶液を投入した。その後、テトラヒドロフラン還流温度で8時間攪拌し、室温に戻した。その後、反応溶液から水相を分液漏斗で取り除き、有機層をロータリーエバポレーターで留去した。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液はトルエンとヘプタン混合溶媒)を2回繰り返すことで行った。精製後、ロータリーポンプで真空引きをしながら80℃で加熱することで乾燥した。
【0075】
【0076】
合成と精製を行った化合物A-2の化学同定は、1H-NMRと質量分析によって行った。1H-NMR (400MHz、CD
2Cl
2、δppm) 7.76~6.90(multi、48H)、3.31(d、4H)、2.70(d、4H)、1.76(multi、2H)、1.62(multi、2H)、1.18~1.34(multi、36H)、0.74~0.95(multi、24H)。質量分析 m/e=1623.8(M+1)。質量分析の結果を
図6に示す。
【0077】
合成と精製を行った化合物A-2に対し、吸収スペクトルと酸化電位の測定を行った。
図5は化合物A-2の吸収スペクトルの測定結果を示している。
図7は化合物A-2のサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示している。化合物A-2は、400~500nmの波長領域に強い吸収をもつ。化合物A-2は、酸化電位が630mV vs Ag/Ag+と決定され、HOMOのエネルギー準位5.58eVと見積もられ、電子ドナー材料として適切な準位にある。以上から、化合物A-2は、室内光に対して効率的に発電することができる有機太陽電池の電子ドナー材料として機能することができる。
【0078】
[合成実施例3] 化9で表される本発明の化合物A-3の合成
水浴とアルゴン置換系とマグネチックスターラーを備えた200mLの三ツ口フラスコをアルゴン置換した。次に、三ツ口フラスコに化8の化合物0.38gとジクロロメタン50mlを投入し、攪拌して溶解させ、水浴に水を入れ、25℃程度に保った。その状態で、N-ブロモスクシンイミド0.23gを60秒程度かけて少しずつ三ツ口フラスコに投入した。水浴の温度を35~40℃に設定して、4時間反応させた後、亜硫酸ナトリウム0.2gを30mlの水に溶かし、投入して反応を止めた。その後、分液ロートに反応溶液を移し、油相を分離して溶媒をロータリーエバポレーターで留去した。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液はトルエンとヘプタン混合溶媒)を2回繰り返すことで行った。精製後、ロータリーポンプで真空引きをしながら80℃で加熱することで乾燥した。
【0079】
合成と精製を行った化合物A-3の化学同定は、1H-NMRと質量分析によって行った。1H-NMR (400MHz、CD2Cl2、δppm) 7.58(s、2H)、7.28~7.34(multi、12H)、7.04(d、4H)、6.94(d、8H)、3.22(multi、4H)、2.58(d、4H)、1.70(multi、2H)、1.54(multi、2H)、1.05~1.38(multi、32H)、0.74~0.95(multi、24H)。質量分析 m/z=1634.3(M+)。
【0080】
合成と精製を行った化合物A-3に対し、吸収スペクトルと酸化電位の測定を行った。化合物A-3は、400~500nmの波長領域に強い吸収をもつ。化合物A-3は、酸化電位が625mV vs Ag/Ag+と決定され、HOMOのエネルギー準位で5.57eVと見積もられ、電子ドナー材料として適切な準位にある。以上から、化合物A-3は、室内光に対して効率的に発電することができる有機太陽電池の電子ドナー材料として機能することができる。
【0081】
[合成実施例4] 化10で表される本発明の化合物A-4の合成
湯浴、アルゴン置換系、マグネチックスターラー、冷却管を備えた200mLの3つ口フラスコを準備した。次に、化9で表されるテトラブロモ化物0.3g、化15で表されるボロン酸誘導体1.0g、テトラヒドロフラン30mLを投入し、続いてトリフェニルフォスフィンパラジウム 0.2gを投入し、その後、炭酸カリウム2.76gを10mL蒸留水に加えた2mol/L水溶液を投入した。その後、テトラヒドロフラン還流温度で8時間攪拌し、室温に戻した。その後、反応溶液から水相を分液漏斗で取り除き、有機層をロータリーエバポレーターで留去した。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液はトルエンとヘプタン混合溶媒)を2回繰り返した後、トルエン/ヘプタン再沈殿によって行った。精製後、ロータリーポンプで真空引きをしながら80℃で加熱することで乾燥した。
【0082】
【0083】
合成と精製を行った化合物A-4の化学同定は、1H-NMRと質量分析によって行った。1H-NMR (400MHz、CD
2Cl
2、δppm) 7.68~7.60(multi、10H)、7.57(d、8H)、7.47(d、4H)、7.38(t、8H),7.32~7.24(multi、12H)、7.18(t、12H)、3.29(multi、4H),2.67(d、4H)、1.77(multi、2H)、1.62(multi、2H)、1.43~1.18(multi、32H)、0.93~0.78(multi、24H)。1H-NMRの結果を
図8に示す。質量分析 m/z=1951.9(M+)。質量分析の結果を
図9に示す。
【0084】
合成と精製を行った化合物A-4に対し、吸収スペクトルと酸化電位の測定を行った。
図5は化合物A-4の吸収スペクトルの測定結果を示している。
図7は化合物A-4のサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示している。化合物A-4は、400~500nmの波長領域に強い吸収をもつ。化合物A-4は、酸化電位が563mV vs Ag/Ag+と決定され、HOMOのエネルギー準位で5.51eVと見積もられ、電子ドナー材料として適切な準位にある。以上から、化合物A-4は、室内光に対して効率的に発電することができる有機太陽電池の電子ドナー材料として機能することができる。
【0085】
[合成実施例5] 化11で表される本発明の化合物A-5の合成
湯浴、アルゴン置換系、マグネチックスターラー、冷却管を備えた200mLの3つ口フラスコを準備した。次に、化16で表されるジブロモ化物0.15g、化14で表されるボロン酸誘導体0.40g、テトラヒドロフラン30mLを投入し、続いてトリフェニルフォスフィンパラジウム 0.3gを投入し、その後、炭酸カリウム2.76gを10mL蒸留水に加えた2mol/L水溶液を投入した。その後、テトラヒドロフラン還流温度で8時間攪拌し、室温に戻した。その後、反応溶液から水相を分液漏斗で取り除き、有機層をロータリーエバポレーターで留去した。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液はトルエンとヘプタン混合溶媒)を2回繰り返すことで行った後、トルエン/ヘプタン再沈殿によって行った。精製後、ロータリーポンプで真空引きをしながら80℃で加熱することで乾燥した。
【0086】
【0087】
合成と精製を行った化合物A-5の化学同定は、1H-NMRと質量分析によって行った。1H-NMR (400MHz、CD
2Cl
2、δppm) 7.77(d、2H)、7.63~7.52(multi、20H)、7.42(t、8H)、7.34~7.26(multi、6H)、7.22(d、8H)、7.17(d、4H)、3.31(d、4H)、1.77(multi、2H)、0.91(t、6H)、0.85(t、6H)。
図10に化合物A-5の1H-NMRの測定結果を示す。質量分析 m/z=1399.6(M+)。
図11に化合物A-5の質量分析の結果を示す。
【0088】
合成と精製を行った化合物A-5に対し、吸収スペクトルと酸化電位の測定を行った。
図5は化合物A-5の吸収スペクトルの測定結果を示している。
図7は化合物A-5のサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示している。化合物A-5は、400~500nmの波長領域に強い吸収をもつ。化合物A-5は、酸化電位が477mV vs Ag/Ag+と決定され、HOMOのエネルギー準位で5.42eVと見積もられ、電子ドナー材料として適切な準位にある。以上から、化合物A-5は、室内光に対して効率的に発電することができる有機太陽電池の電子ドナー材料として機能することができる。
【0089】
[光電変換素子の実施例1] 光電変換素子の作製および光電変換特性評価
パターニング処理されている、インジウム酸化スズ(ITO)薄膜をコートしたガラス基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄後、UVオゾン処理した。
【0090】
この基板上に酸化亜鉛 (メルク社 製品番号808253)をスピンコートにより回転数2000rpmで塗布した。その後、ホットプレートを用いて100℃で10分加熱することで膜厚が約50nmの電子輸送層を形成した。
【0091】
窒素気流下のグローブボックスにて、電子アクセプター性化合物の化1で表される化合物PCBM(20mg)と、本発明の電子ドナー性の化合物A-2(20mg)を混合して、0.6mlのクロロベンゼンに溶解させ、光電変換層用の塗布液を調整した。窒素気流下のグローブボックスにて、この光電変換層用の塗布液をスピンコートにより回転数1000rpmで塗布した、その後、ホットプレートを用いて120℃で5分加熱することで膜厚が約90nmの光電変換層を形成した。
【0092】
真空度4×10-4Paにおいて、真空蒸着法にて、光電変換層の上に正孔輸送層として酸化モリブデンを10ナノメートル、続いて銀を80nm製膜することで電極を形成し、光電変換素子を作製した。
【0093】
前記光電変換素子のITO電極側から、白色LED光源(LEDLENSER社製 P6R Core)からの光を照射し、ソースメータ(エーディーシー社製、6241A)を用いて電流-電圧特性を測定した。光の強度は100W/m2とした。得られた電流-電圧特性と初期光電変換効率を表1に示す。
【0094】
[比較例1]
化3で表されるP3HT(東京化成工業社製)をドナー性材料として用いたこと以外、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。得られた電流-電圧特性と初期光電変換効率を表1に示す。
【0095】
【0096】
表1の結果から、本発明の電子ドナー性化合物(A-2)を光電変換層に用いた光電変換素子が、標準的な電子ドナー性材料P3HTを用いた光電変換素子と比較して高い光電変換効率を示すことがわかる。
本発明の電子ドナー性化合物は、有機太陽電池の光電変換材料に用いることができる。また、有機太陽電池以外の太陽電池、たとえば、ペロブスカイト太陽電池などに用いることもできる。太陽電池のほかにも、光照射によって電気を発生する光センサーの材料としても用いることができる。