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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043648
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両ドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240326BHJP
   E05B 79/02 20140101ALI20240326BHJP
   E05B 85/08 20140101ALI20240326BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60J5/00 M
E05B79/02
E05B85/08
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148750
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 俊典
【テーマコード(参考)】
2E250
3D023
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ43
2E250LL01
2E250PP14
3D023BB08
3D023BD03
3D023BE35
(57)【要約】
【課題】ドアロックノブとロックノブホルダとの組付け作業を容易に行うことが可能な車両ドア構造を提供する。
【解決手段】ロック装置70を有する車両ドア構造1であって、ロック装置70は、ドアトリム11の室内面から立ち上がるアンロック位置と、アンロック位置から立ち下がる方向に後退したロック位置との間で移動可能な棒状のドアロックノ71ブと、ドアトリム11の室外面側においてドアロックノブ71を挿通させて進退可能に保持する筒状のロックノブホルダ80と、を備え、ドアトリム11は、ドアロックノブ71を貫通可能な貫通孔24を有しており、ロックノブホルダ71の2つの開口のうちドアトリム11の貫通孔24の反対側に配された挿入側開口86に隣接して、挿入側開口86から離れる方に向けてテーパ状に広がる案内面62を有する挿入ガイド部61が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対しロック及びロック解除可能なロック装置を有する車両ドア構造であって、
前記ロック装置は、
車両ドアの室内面を構成するドアトリムの前記室内面から立ち上がるアンロック位置と、前記アンロック位置から立ち下がる方向に後退したロック位置との間で移動可能な棒状のドアロックノブと、
前記ドアトリムの室外面側において前記ドアロックノブを挿通させて進退可能に保持する筒状のロックノブホルダと、を備え、
前記ドアトリムは、前記ドアロックノブを貫通可能な貫通孔を有しており、
前記ロックノブホルダの2つの開口のうち前記ドアトリムの前記貫通孔の反対側に配された挿入側開口に隣接して、前記挿入側開口から離れる方に向けてテーパ状に広がる案内面を有する挿入ガイド部が設けられている車両ドア構造。
【請求項2】
前記ドアトリムは前記車両ドアの窓と隣り合って配されるアッパーボードを備え、前記アッパーボードは、前記車両ドアの室内側面を構成する側壁と、前記側壁の上端から室外側に向けて延びる上壁とを備え、前記貫通孔は前記上壁に設けられており、
前記ロックノブホルダは、前記側壁から離隔した状態で前記側壁に沿う方向に配置されており、
前記挿入ガイド部の前記案内面は、前記ロックノブホルダの前記挿入側開口よりも前記側壁に近い位置に配置されている請求項1に記載の車両ドア構造。
【請求項3】
前記挿入ガイド部の前記案内面は、円錐台をその軸方向に沿って分割した曲面状の曲面案内部と、前記挿入側開口に近接した位置に配され、前記曲面案内部に連なるとともに前記挿入側開口に向けて広がる平坦な平坦案内部とを備えている請求項2に記載の車両ドア構造。
【請求項4】
前記車両ドアは、室内外方向における前記窓と前記アッパーボードとの間に防水用のウェザーストリップを備え、前記アッパーボードは当該アッパーボードの室外面に設けられた介在部材を介して前記ウェザーストリップに係止されており、
前記ロックノブホルダは、前記介在部材から室外側に向けて立ち上がるホルダ支持部により前記アッパーボード側から支持されて前記側壁から離隔した位置に配置されているとともに、前記挿入ガイド部は前記介在部材と一体に設けられている請求項2または請求項3に記載の車両ドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、車両ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車等の車両ドアには、ドアのロックおよびロック解除を行うためのロック装置が設けられている。このようなロック装置は、ロック操作を行うためのドアロックノブを、車室内側に備えている。例えば特許文献1には、ドアトリムの穴から突出する棒状のドアロックノブが開示されている。このドアロックノブは、ドアトリムの室外面側に設けられた筒状のホルダ内に保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-48964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した棒状のドアロックノブを筒状のホルダに組付ける際には、ドアロックノブの先端をホルダの開口に近づけ、ホルダの内部に挿入する。この時、ホルダの開口径はドアロックノブの径と大きく違わないため、位置合わせが容易でなく、何度も位置合わせをやり直さなければならない場合があった。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記事情に鑑みてなされたものであって、ドアロックノブとロックノブホルダとの組付け作業を容易に行うことが可能な車両ドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、車体に対しロック及びロック解除可能なロック装置を有する車両ドア構造であって、前記ロック装置は、車両ドアの室内面を構成するドアトリムの前記室内面から立ち上がるアンロック位置と、前記アンロック位置から立ち下がる方向に後退したロック位置との間で移動可能な棒状のドアロックノブと、前記ドアトリムの室外面側において前記ドアロックノブを挿通させて進退可能に保持する筒状のロックノブホルダと、を備え、前記ドアトリムは、前記ドアロックノブを貫通可能な貫通孔を有しており、前記ロックノブホルダの2つの開口のうち前記ドアトリムの前記貫通孔の反対側に配された挿入側開口に隣接して、前記挿入側開口から離れる方に向けてテーパ状に広がる案内面を有する挿入ガイド部が設けられている。
【0007】
上記構成によれば、棒状のドアロックノブを筒状のロックノブホルダに挿通させる組付け作業の際に、ドアロックノブの先端を挿入ガイド部によりロックノブホルダの挿入側開口に向けて案内することができるから、組付け作業が容易になる。
【0008】
前記ドアトリムは前記車両ドアの窓と隣り合って配されるアッパーボードを備え、前記アッパーボードは、前記車両ドアの室内側面を構成する側壁と、前記側壁の上端から室外側に向けて延びる上壁とを備え、前記貫通孔は前記上壁に設けられており、前記ロックノブホルダは、前記側壁から離隔した状態で前記側壁に沿う方向に配置されており、前記挿入ガイド部の前記案内面は、前記ロックノブホルダの前記挿入側開口よりも前記側壁に近い位置に配置されていてもよい。
【0009】
棒状のドアロックノブは、筒状のロックノブホルダに対して、外側に張り出して対向する一対の係止部をロックノブホルダに設けられた一対の係止孔に係止する構成とされる場合がある。このように、ドアロックノブに外側に張り出した部分が設けられる場合には、組付け作業の際に、張り出した部分と挿入ガイド部の案内面とが干渉することが考えられる。上記構成によれば、そのような場合でも、ドアロックノブの張り出した部分を案内面以外の部分に配置することにより、張り出した部分と案内面とが干渉して組付け作業の妨げになることを回避することができる。
【0010】
前記挿入ガイド部の前記案内面は、円錐台をその軸方向に沿って分割した曲面状の曲面案内部と、前記挿入側開口に近接した位置に配され、前記曲面案内部に連なるとともに前記挿入側開口に向けて広がる平坦な平坦案内部とを備えていてもよい。
【0011】
ドアロックノブをロックノブホルダに組付ける際に、ドアロックノブの先端は案内面により案内されつつロックノブホルダの挿入側開口に近づく。上述したように、挿入ガイド部の案内面を挿入側開口よりも側壁に近い位置に配置した場合、案内面と挿入側開口との間には段差が生じるため、ドアロックノブが挿入側開口に挿入される直前に、その段差によりドアロックノブの先端が挿入側開口に引っ掛かり、挿入がスムーズにいかないことが考えられる。
【0012】
上記構成によれば、案内面のうち曲面案内部により挿入側開口に近づいたドアロックノブの先端は、挿入側開口に挿入される直前に、平坦案内部によって側壁からより離れる方向に押し上げられる。これにより、段差が縮小または解消されて、ドアロックノブの先端をスムーズに挿入側開口に挿入させることが可能となる。このように、平坦案内部を、所謂、ジャンプ台のように機能させて、挿入作業をより改善することができる。
【0013】
前記車両ドアは、室内外方向における前記窓と前記アッパーボードとの間に防水用のウェザーストリップを備え、前記アッパーボードは当該アッパーボードの室外面に設けられた介在部材を介して前記ウェザーストリップに係止されており、前記ロックノブホルダは、前記介在部材から室外側に向けて立ち上がるホルダ支持部により前記アッパーボード側から支持されて前記側壁から離隔した位置に配置されているとともに、前記挿入ガイド部は前記介在部材と一体に設けられていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、アッパーボードをウェザーストリップに係止するための介在部材を利用して、ロックノブホルダを側壁から離隔した位置に配置したり、挿入ガイド部を設けることができる。したがって、個々の部分を別部材で構成する場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示される技術によれば、ドアロックノブとロックノブホルダとの組付け作業を容易に行うことが可能な車両ドア構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の車両ドア構造を備える車両ドアの斜視図
図2】車両ドアのうちアッパーカバーとウェザーストリップ周辺の断面構成を示す一部拡大縦断面図
図3】ドアトリムを室外側から視た場合におけるロック装置の構成を拡大して示す一部拡大斜視図
図4】アッパーカバーの一部拡大斜視図
図5】ロックノブホルダを取り付けた状態のアッパーカバーの一部拡大正面図
図6】ロックノブホルダを取り付けた状態のアッパーカバーの一部拡大底面図
図7図5のI-I断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態を図1から図7によって説明する。本実施形態では、車両ドア10の室内面を構成するドアトリム11の室外面に設けられたロックノブホルダ80に対してドアロックノブ71を組み付けるための車両ドア構造1について例示する。
【0018】
ドアトリム11は、車両ドア10のサイドウインドウ(窓の一例)12の下方に配置され、ドアインナパネル18に対して車室内側から取り付けられている。ドアトリム11は、図1に示すように、トリムボード13を主体として構成され、そのトリムボード13に加えて、トリムボード13上に設けられたインサイドハンドル14、アームレスト15、スピーカーグリル16、スイッチ装置17、およびロック装置70等の各種機能部品を含んで構成されている。以下、各図において、車両前方および車両後方をFRおよびRRの矢印でそれぞれ示し、車両上方および車両下方をUPおよびDWの矢印でそれぞれ示し、車室内側(乗物室内側)および車室外側(乗物室外側)をINおよびOUTの矢印でそれぞれ示す。
【0019】
トリムボード13は複数のボード部材が互いに組み付けられたものであり、その上方部分であって、サイドウインドウ12に連なる部分は、アッパーボード20により構成されている。このアッパーボード20は、図2に示すように、車両ドア10の前後方向の全体にわたって車両ドア10の室内側面の一部を構成する側壁21と、側壁21の上端から湾曲部22により湾曲して室外側に向けて延びて車両ドア10の上面の一部を構成する上壁23とを備えている。湾曲部22は、側壁21と上壁23との間の角度が直角よりもやや小さい角度(鋭角)となるように湾曲している。側壁21のうち前後方向の中央部から後方部分は、下方に向けて延び出している(図1参照)。
【0020】
このアッパーボード20の後端寄りには、ロック装置70が設けられている。ロック装置70は、車両ドア10を車体に対してロックおよびロック解除するものである。
【0021】
ロック装置70は、図3および図7に示すように、円柱の棒状のドアロックノブ71と、ドアトリム11(アッパーボード20)の車室外側においてドアロックノブ71を挿通させて進退可能に保持する円筒状のロックノブホルダ80とを含んで構成される。アッパーボード20の上壁23の後端寄りには、ドアロックノブ71を貫通させるための円形のボード側貫通孔24が形成されている。車両ドア10は、ドアロックノブ71を、ボード側貫通孔24を貫通させた状態で上方側に位置させることでロック解除状態とされ、下方側に位置させることでロック状態とされる。
【0022】
上述したボード側貫通孔24には、ロックノブベゼル40が取り付けられている。ロックノブベゼル40は、図3および図7に示すように、ボード側貫通孔24を囲む丸枠状をなし、アッパーボード20の上壁23の上面(意匠面側)に配されるベゼル部41と、ベゼル部41から延出され、ボード側貫通孔24に挿通される円筒状をなす挿通部42とを有する。挿通部42の軸方向における中央部の外周面には、外側に向けて突出する係止爪43が設けられており、ボード側貫通孔24の室外面側の周囲に設けられた台座状の台座部25に係止爪43が係止することで、ロックノブベゼル40がアッパーボード20に対して固定されている。また、挿通部42の先端側(ベゼル部41の反対側の端部)には、後述するロックノブホルダ80と嵌合する嵌合爪(図示せず)が設けられている。
【0023】
ロックノブホルダ80は、後述するアッパーカバー(介在部材の一例)50を介してアッパーボード20側に取り付けられている。ロックノブホルダ80に先立ってアッパーカバー50について説明する。
【0024】
アッパーカバー50は、アッパーボード20の室外面側に取り付けられるものであって、アッパーボード20の上壁23の室外側の端縁部と、アッパーボード20の側壁21とを架け渡すように延在して前後方向に延びる板状のカバー本体51を主体として構成されている(図2参照)。アッパーボード20には、湾曲部22の延び方向(前後方向)における複数箇所において当該湾曲部22の室外面から上壁23と側壁21とを架け渡すように立ち上がる略矩形の板状の立壁27が設けられており(図3参照)、立壁27のうち湾曲部22の対角線上に位置する角部には、室外側に向けて突出する位置決め突部28が設けられている。一方、アッパーカバー50のカバー本体51のうちアッパーボード20の位置決め突部28に対応する位置には位置決め孔52が設けられており(図4参照)、位置決め孔52に位置決め突部28を嵌め込むことにより、アッパーボード20に対してカバー本体51が位置決めされている。
【0025】
またアッパーボード20には、湾曲部22の下方に位置して側壁21の室外面から立ち上がる複数の円筒状の締結部29が設けられている。これら締結部29の基端側には、締結部29から放射状に延びる略矩形の板状の補強リブ30が設けられている(図3参照)。
【0026】
一方、図4に示すように、アッパーカバー50のうちアッパーボード20の締結部29に対応する位置には、取付座53が設けられている。取付座53は、各締結部29に設けられた補強リブ30の室外側の端面に沿って延在する座面部54を有し、これらの座面部54に、締結部29を貫通させるための締結部貫通孔55が設けられている。つまり、座面部54は、補強リブ30の室外側の端面により室内側から支持されている。これらの座面部54の締結部貫通孔55に締結部29を貫通させて熱かしめすることにより、アッパーカバー50がアッパーボード20に対して固定されている。
【0027】
またアッパーカバー50のカバー本体51には、当該カバー本体51の延び方向(前後方向)における複数箇所から下方に向けて立ち下がるとともにL字形状に屈曲して室外側に向けて延びる片状の係止片67が設けられており、これら係止片67の先端には、下方に向けて突出する爪部68が設けられている。車両ドア10は、室内外方向におけるサイドウインドウ12とアッパーボード20との間に、防水用のウェザーストリップ19を備えており(図2参照)、アッパーボード20は、上述した係止片67の爪部68がウェザーストリップ19に対して係止されることで、サイドウインドウ12との間の防水が図られている。
【0028】
本実施形態において、上述したロックノブホルダ80は、このアッパーカバー50を介してアッパーボード20に取り付けられている。ロックノブホルダ80は、図3および図5に示すように、円筒状のホルダ本体81と、ホルダ本体81の一端側(図3および図5の上方)において当該ホルダ本体81の軸方向と交差する方向に突出するとともに軸方向に沿う板面を有する片状の被締結部82とを有している。被締結部82には、ホルダ本体81の軸方向(上下方向)に直交する方向(車室内外方向)に貫通するホルダ貫通孔(図示せず)が形成されている。またホルダ本体81の他端寄り(図3および図5の下方寄り)には、当該ホルダ本体81の軸を挟んで互いに対向する一対の係止孔84が設けられている。一対の係止孔84のうちの一方は、ホルダ本体81の軸に対し、被締結部82が設けられた方向と同方向(図5の左側)に配置されている。
【0029】
このロックノブホルダ80には、円柱の棒状のドアロックノブ71が、下方側から組み付けられる(図7参照)。図3に示すように、ドアロックノブ71の後端寄り(図3の下方寄り)には、ドアロックノブ71を進退可能に取り付ける取付部材72が設けられている。この取付部材72は、ドアロックノブ71の径方向の外側に張り出して先端側に向けて片持ち状に延びる、互いに対向して配された一対のアーム部73を備えている。アーム部73はその先端部に内側に向けて突出する係止爪74を備えており、これらの係止爪74がロックノブホルダ80に設けられた係止孔84に係止することにより、取付部材72がロックノブホルダ80に係止されるようになっている。つまり、ドアロックノブ71がロックノブホルダ80に進退可能に保持される。
【0030】
またロックノブホルダ80のホルダ本体81のうち、被締結部82が設けられた一端側の内周には、上述したロックノブベゼル40の嵌合爪に嵌合可能な嵌合凹部(図示せず)が設けられている。ロックノブホルダ80は、嵌合凹部内に嵌合爪が嵌合されることにより、ロックノブベゼル40と連結されている。
【0031】
一方、アッパーカバー50のカバー本体51のうちアッパーボード20のボード側貫通孔24を含む領域には、カバー本体51の縁部から下方に向けて延び出す延出部56が設けられている。延出部56は、アッパーボード20の側壁21と離隔した状態で、側壁21に沿って配されている(図7参照)。
【0032】
またアッパーカバー50には、アッパーボード20のボード側貫通孔24に挿通されたロックノブベゼルの40の挿通部42を挿通可能なカバー側貫通孔57が設けられている。カバー側貫通孔57は、カバー本体51と延出部56とを跨ぐように、換言すると、カバー本体51と延出部56との間の角部を切り欠くように設けられている。アッパーボード20に取り付けられたロックノブベゼル40の挿通部42は、カバー側貫通孔57によりアッパーカバー50の室外側に露出している。上述したロックノブホルダ80は、この室外側に露出した挿通部42に連結され、アッパーボード20の室外側に配置されている。
【0033】
延出部56には、カバー側貫通孔57に隣接して、ロックノブホルダ80を車室内側から支持する支持部58が設けられている。具体的には、支持部58は、ロックノブホルダ80の軸線方向(上下方向)に間隔をおいて設けられた円弧状の凹部を有する一対の支持台59によって構成されている。
【0034】
また延出部56には、支持台59に隣接して、室外側に向けて円筒状に突出するホルダ締結部60が形成されている(図4参照)。ロックノブホルダ80は、ホルダ本体81が一対の支持台59に載置されるとともに、被締結部82がホルダ締結部60に対して締結されることで、アッパーカバー50に対して固定される。このような構成により、ロックノブホルダ80は、アッパーカバー50の延出部56から離隔した状態、ひいては、アッパーボード20の側壁21から離隔した状態で側壁21に概ね沿う方向に配置されている。
【0035】
さて、本実施形態において、ロックノブホルダ80のうちアッパーボード20のボード側貫通孔24の反対側に配された挿入側開口86に隣接した位置には、挿入ガイド部61が設けられている。挿入ガイド部61は、ロックノブホルダ80の挿入側開口86から離れる方に向けて概ねテーパ状に広がる案内面62を有している(図3から図7参照)。
【0036】
より詳細には、挿入ガイド部61の案内面62は、円錐台をその軸方向に沿って分割した曲面状の曲面案内部63を有している。挿入ガイド部61は、ロックノブホルダ80の軸方向において、ロックノブホルダ80の挿入側開口86からやや離れた位置に配置されている(図5参照)。また挿入ガイド部61は、ロックノブホルダ80の径方向において、ロックノブホルダ80の挿入側開口86からやや離れた位置に配置されている(図6参照)。
【0037】
ところで、上述したように、棒状のドアロックノブ71は、筒状のロックノブホルダ80に対して、当該ドアロックノブ71の外側に張り出して対向する一対のアーム部73の係止爪74をロックノブホルダ80に設けられた一対の係止孔84に外側から係止する構成とされている。そこで本実施形態では、組付け作業の際に、ドアロックノブ71の外側に張り出したアーム部73が、挿入ガイド部61の案内面62と干渉することを避けるべく、案内面62を、ロックノブホルダ80の挿入側開口86よりも側壁21に近い位置に配置する構成としている(図6参照)。このような構成とすることにより、案内面62は、一対のアーム部73との干渉を回避しつつ、ドアロックノブ71の先端をロックノブホルダ80の挿入側開口86に案内することができる(図7参照)。
【0038】
一方、上述したように、挿入ガイド部61の案内面62をロックノブホルダ80の挿入側開口86よりも側壁21に近い位置に配置した場合、案内面62と挿入側開口86との間には側壁21からの高さ方向に段差Gが生じる。このため、ドアロックノブ71の先端がロックノブホルダ80の挿入側開口86に挿入される直前に、その段差Gによりドアロックノブ71の先端が挿入側開口86に引っ掛かり、挿入作業がスムーズにいかないことが考えられる。
【0039】
そこで本実施形態では、案内面62のうち挿入側開口86に近接した位置であって、かつ、最も側壁21に近接した位置(案内面62の幅方向における中央部分)に、曲面案内部63に連なるとともに挿入側開口86の開口縁部に向けて広がる平坦な平坦案内部64を設ける構成とされている。この平坦案内部64(板面)を延長した仮想的な平面は、ロックノブホルダ80の挿入側開口86の接線と一致あるいは近接するように、平坦案内部64のロックノブホルダ80に対する角度が設定されている。
【0040】
このような構成によれば、案内面62のうち曲面案内部63により挿入側開口86側に案内されたドアロックノブ71の先端は、挿入側開口86に挿入される直前に、平坦案内部64によって、そのまま曲面案内部63に案内される場合よりも側壁21からより離れる方向に押し上げられる。つまり、平坦案内部64が、所謂、ジャンプ台のように機能し、段差Gが低減される。しかも、平坦案内部64を延長した仮想的な平面は、ロックノブホルダ80の挿入側開口86の接線と一致あるいは近接するように設定されているから、平坦案内部64から離れたドアロックノブ71の先端を、ロックノブホルダ80の挿入側開口86にスムーズに挿入させることが可能となる。
【0041】
この挿入ガイド部61は、延出部56から延び出す形で、延出部56と一体に設けられている。具体的には、挿入ガイド部61の車両前後方向における両端部には、側壁21に沿って延在する一対の平坦部65が設けられており、これらの平坦部65の両端部が、延出部56から延びる連結部66により延出部56と一体とされている。
【0042】
次に、作用効果について説明する。本実施形態の車両ドア構造1は、車体に対しロック及びロック解除可能なロック装置70を有し、ロック装置70は、車両ドア10の室内面を構成するドアトリム11(アッパーボード20)の室内面から立ち上がるアンロック位置と、アンロック位置から立ち下がる方向に後退したロック位置との間で移動可能な円柱の棒状のドアロックノブ71と、ドアトリム11の室外面側においてドアロックノブ71を挿通させて進退可能に保持する円筒状のロックノブホルダ80と、を備え、ドアトリム11(アッパーボード20)は、ドアロックノブ71を貫通可能なボード側貫通孔24を有しており、ロックノブホルダ80の2つの開口のうちボード側貫通孔24の反対側に配された挿入側開口86に隣接して、挿入側開口86から離れる方に向けてテーパ状に広がる案内面62を有する挿入ガイド部61が設けられている。
【0043】
上記構成によれば、円柱の棒状のドアロックノブ71を円筒状のロックノブホルダ80に挿通させる組付け作業の際に、ドアロックノブ71の先端を挿入ガイド部61によりロックノブホルダ80の挿入側開口86に向けて案内することができるから、組付け作業が容易になる。
【0044】
またアッパーボード20は、車両ドア10の室内側面を構成する側壁21と、側壁21の上端から室外側に向けて延びる上壁23とを備え、ボード側貫通孔24は上壁23に設けられており、ロックノブホルダ80は、側壁21から離隔した状態で側壁21に沿う方向に配置されており、挿入ガイド部61の案内面62は、ロックノブホルダ80の挿入側開口86よりも側壁21に近い位置に配置されている。
【0045】
円柱の棒状のドアロックノブ71は、円筒状のロックノブホルダ80に対して、外側に張り出して対向する一対のアーム部73の係止爪74をロックノブホルダ80に設けられた一対の係止孔84に係止する構成とされている。このように、ドアロックノブ71に外側に張り出したアーム部73が設けられる場合には、組付け作業の際に、アーム部73と挿入ガイド部61の案内面62とが干渉することが考えられる。上記構成によれば、そのような場合でも、ドアロックノブ71のアーム部73を案内面62以外の部分に配置することにより、アーム部73と案内面62とが干渉して組付け作業の妨げになることを回避することができる。
【0046】
また挿入ガイド部61の案内面62は、円錐台をその軸方向に沿って分割した曲面状の曲面案内部63と、挿入側開口86に近接した位置に配され、曲面案内部63に連なるとともに挿入側開口86に向けて広がる平坦な平坦案内部64とを備えている。
【0047】
ドアロックノブ71をロックノブホルダ80に組付ける際に、ドアロックノブ71の先端は案内面62により案内されつつロックノブホルダ80の挿入側開口86に近づく。上述したように、挿入ガイド部61の案内面62を挿入側開口86よりも側壁21に近い位置に配置した場合、案内面62と挿入側開口86との間には段差Gが生じるため、ドアロックノブ71が挿入側開口86に挿入される直前に、その段差Gによりドアロックノブ71の先端が挿入側開口86に引っ掛かり、挿入がスムーズにいかないことが考えられる。
【0048】
上記構成によれば、案内面62のうち曲面案内部63により挿入側開口86に近づいたドアロックノブ71の先端は、挿入側開口86に挿入される直前に、平坦案内部64によって側壁21からより離れる方向に押し上げられる。これにより、段差Gが低減されて、ドアロックノブ71の先端をスムーズに挿入側開口86に挿入させることが可能となる。このように、平坦案内部64を、所謂、ジャンプ台のように機能させて、挿入作業をより改善することができる。
【0049】
また車両ドア10は、室内外方向におけるサイドウインドウ12とアッパーボード20との間に防水用のウェザーストリップ19を備え、アッパーボード20は当該アッパーボード20の室外面に設けられたアッパーカバー50を介してウェザーストリップ19に係止されており、ロックノブホルダ80は、アッパーカバー50から室外側に向けて立ち上がる支持部58によりアッパーボード20側から支持されて側壁21から離隔した位置に配置されているとともに、挿入ガイド部61はアッパーカバー50と一体に設けられている。
【0050】
上記構成によれば、アッパーボード20をウェザーストリップ19に係止するためのアッパーカバー50を利用して、ロックノブホルダ80を側壁21から離隔した位置に配置したり、挿入ガイド部61を一体に設けることができる。したがって、個々の部分を別部材で構成する場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0051】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0052】
(1)上記実施形態では、挿入ガイド部61を、アッパーボード20とウェザーストリップ19とを係止するためのアッパーカバー50に一体に設ける構成としたが、挿入ガイド部は単体の部材としてもよい。
【0053】
(2)また、挿入ガイド部を、例えば補強部材等、アッパーカバー以外の部材と一体に設ける構成としてもよい。
【0054】
(3)ドアロックノブが外側に張り出す部分を備えない場合には、挿入ガイド部の案内面をロックノブホルダの挿入側開口と面一に連なるように設定してもよい。
【0055】
(4)挿入ガイド部の案内面が平坦案内部を備えない形態も、技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1:車両ドア構造、10:車両ドア、11:ドアトリム、12:サイドウインドウ(窓)、19:ウェザーストリップ、20:アッパーボード、21:側壁、22:湾曲部、23:上壁、24:ボード側貫通孔(貫通孔)、50:アッパーカバー(介在部材)、58:支持部(ホルダ支持部)、59:支持台(ホルダ支持部)、61:挿入ガイド部、62:案内面、63:曲面案内部、64:平坦案内部、65:平坦部、66:連結部、70:ロック装置、71:ドアロックノブ、73:アーム部、80:ロックノブホルダ、86:挿入側開口、G:段差
図1
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図7