(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043662
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】モデルガンの可動式前撃針
(51)【国際特許分類】
F42B 8/06 20060101AFI20240326BHJP
A63H 33/18 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F42B8/06
A63H33/18 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148776
(22)【出願日】2022-09-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】594159087
【氏名又は名称】株式会社タナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】森 大樹
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150CA13
2C150DF01
2C150DF39
2C150DH05
2C150EB11
(57)【要約】
【課題】発火初期の衝撃力が銃身に伝わるのを、弾性材を設置することで間接的にし、時間を遅らせることで、銃身に加わる負担を軽減し、銃身の破損等を防止するモデルガンの可動式前撃針を提供する。
【解決手段】銃身に固定する前撃針ホルダー3を設ける。この前撃針ホルダー3の内部に前撃針2をスライド自在に装着する。前撃針2の鍔部2Aと前撃針ホルダー3の端部との間にOリング5を配置する。火薬発火時に前撃針2に加わる衝撃が弾性材を介して銃身1に伝わるように構成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モデルガンの銃身に装着される前撃針において、銃身に固定する前撃針ホルダーを設け、この前撃針ホルダーの内部に前撃針をスライド自在に装着すると共に、前撃針の外周面に設けた鍔部と前撃針ホルダーの長手端部との間に弾性材を配置し、火薬発火時に前撃針に加わる衝撃が弾性材を介して銃身に伝わるように構成したことを特徴とするモデルガンの可動式前撃針。
【請求項2】
前記前撃針は、一端部側を前記前撃針ホルダー内に収納し、他端部でカートリッジ内の玩具火薬を発火させるように設け、カートリッジ装填時に、前記前撃針の他端部がカートリッジ内のピストンを玩具火薬と接触しないようにし、カートリッジの先端部が前記鍔部と接触してカートリッジを停止するように構成した請求項1記載のモデルガンの可動式前撃針。
【請求項3】
前記前撃針ホルダーの側面から内部の前記前撃針を貫通する前撃針ピンを設けると共に、この前撃針ピンが前記前撃針を貫通する貫通孔を前記前撃針の長手方向に沿った長円状に形成し、前撃針ピンが前撃針のスライドを妨げないように構成した請求項1記載のモデルガンの可動式前撃針。
【請求項4】
前記弾性材は、Oリング又はスプリングとする請求項1記載のモデルガンの可動式前撃針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデルガンにおいてカートリッジ内の火薬を発火させた後、火薬圧力を受けるモデルガンの可動式前撃針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動拳銃型モデルガンの銃身内に設けられ、カートリッジ内の火薬を発火させたり火薬圧力を受けたりする部品を「前撃針」という。実銃の撃針はカートリッジの後ろに設置されるが、モデルガンの場合は前に設置するので「前撃針」と称する。
【0003】
この種のモデルガンは、トリガーを引くとハンマーなど撃発装置に押されたファイアリングピンがカートリッジの後端部を叩き、カートリッジの中の火薬が前方の前撃針と後方のファイアリングピンに押しつぶされて発火する構造である。その際、玩具火薬の性質上において、銃本体、特に銃身に大きな負担がかり、銃身が破損するおそれがあった。
【0004】
銃身内に設けられる前撃針は、カートリッジ内に装填された火薬を発火させるものである。そして、発火時に生じる圧力が銃本体とカートリッジに伝わることで、実銃を模倣したアクションや衝撃が生じる。前撃針は、銃本体に衝撃を伝えるために銃身と一体に製造され、あるいは、ネジ等で銃身に固定されるものであった。
【0005】
一方、モデルガンに使用する玩具火薬は、発火すると圧力頂点が早い時期に到達してしまう。しかしながら、耐衝撃性が低い玩具銃としては圧力をそのまま受けない方が望ましい(表1参照)。つまり、この圧力を直接早い時間で受けると、瞬間的な衝撃が銃本体に掛かるので、カートリッジが移動する前に最大圧力が直接銃本体へ過大な負荷を与えるからである。望ましくは、銃本体へ与える負荷をカートリッジの移動が始まった後で最大圧力に達すれば、発火初期の圧力が銃本体とカートリッジに分散する。その結果、銃本体への過大な負荷が減少する。
【0006】
前撃針を備えたモデルガンは、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている。特許文献1に記載のモデルガンは、銃身2内に拡張型のデトネーター4(前撃針)を設けることで、薬莢3の内面と前撃針との間を気密状態にすることで玩具火薬7の爆発効果の増大を図るものである。
【0007】
一方、特許文献2に記載のモデルガンは、火薬の暴発と不発を減少させるデトネーター(前撃針)を提供するもので、デトネーター18(前撃針)に、カートリッジコントロールスプリング29(以下、スプリングと称する)を設けたものである。
【0008】
すなわち、前撃針と薬莢31との間にスプリングを設け、給弾時においてスプリングが薬莢31の頭部に当接することで、給弾時における火薬の暴発を抑制するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3150763号公報
【特許文献2】実用新案登録第3168445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1、2に記載の前撃針は、いずれも銃身に固定したものなのでカートリッジ内で火薬が発火した際の初期の衝撃力によって、前撃針や銃身に瞬間的な負荷が掛かる構造は変わらない。
【0011】
特許文献1は、拡張型デトネーター4(前撃針)の先端に火薬ガスの圧力を受けて拡張可能な性質を持つ頭部5を設け、火薬が発火した時に、この頭部5が薬莢3の内面との間隙53に密着し、発火ガスは漏れる事無く薬莢3を薬莢室後方に押し出すというものであるが、この拡張型デトネーター4(前撃針)は銃身に固定されている。したがって、発火初期の衝撃力によって、前撃針や銃身に瞬間的な負荷が掛かるものである。
【0012】
また、特許文献2は、デトネーター18(前撃針)にスプリングを設けることで、給弾時における薬莢31の勢いを緩衝させて火薬の暴発を抑制する構造であるが、デトネーター18(前撃針)は、銃身に固定されている。このため、発火初期の衝撃力によって前撃針や銃身に瞬間的な負荷が掛かる。
【0013】
このように、従来のモデルガンの前撃針は、いずれも銃身に固定されるものなので発火初期の衝撃力により前撃針や銃身に瞬間的な負荷が掛かる構成である。そのため玩具火薬を何度も発火させると銃身が破損するおそれがあった。
【0014】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、モデルガンの前撃針において、発火初期時に前撃針から銃身に伝わる圧力頂点を一旦弾性材で受け時間を遅らせることで、発火初期の衝撃力による銃身に掛かる負担を軽減し、銃身の破損を防止するモデルガンの可動式前撃針の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、モデルガンの銃身1に装着される前撃針2において、銃身に固定する前撃針ホルダー3を設け、この前撃針ホルダー3の内部に前撃針2をスライド自在に装着すると共に、前撃針2の外周面に設けた鍔部2Aと前撃針ホルダー3の長手端部との間に弾性材を配置し、発火初期時に銃身1に加わる衝撃を前撃針2と弾性材とで一時吸収して伝えるように構成したものである。
【0016】
第2の手段の前記前撃針2は、一端部側を前記前撃針ホルダー3内に収納し、他端部でカートリッジ10内の玩具火薬11を後方からの衝撃で発火させるように設け、カートリッジ10装填時に、前記前撃針2の他端部がカートリッジ10内のピストン10Aと接触するが玩具火薬11を撃発しないようにカートリッジ10の先端部を前記鍔部2Aに接触してカートリッジ10が停止するように構成したものである。
【0017】
第3の手段は、前記前撃針ホルダー3の側面から内部の前記前撃針2を貫通する前撃針ピン4を設ける。と共に、この前撃針ピン4は前記前撃針2を貫通する貫通孔2Bを前記前撃針2が稼動するために長手方向に沿った長円状に形成し、前撃針2と前撃針ホルダー3が分離しないようにしたものである。
【0018】
第4の手段の前記弾性材は、Oリング5又はスプリングとするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、前撃針ホルダーの内部に前撃針をスライド自在に装着すると共に前撃針の外周面に設けた鍔部と前撃針ホルダーの長手端部との間に弾性材を配置し、発火初期時に前撃針に加わる衝撃が弾性材を介して銃身に伝わるように構成したことで、玩具火薬の発火初期による最大圧力を緩衝させ銃身に伝わる時間も調整することが可能になり、銃本体への瞬間圧力が緩和される。この結果、銃身に掛かる負担を軽減し、銃身の破損等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】本発明の前撃針により玩具火薬が発火した状態を示す要部断面図である。
【
図5】従来の前撃針の固定状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、モデルガンにおいてカートリッジ10内の玩具火薬11を発火させる前撃針2の改良に関する。
【0022】
本発明の構成は、銃身1に固定する前撃針ホルダー3を設け、この前撃針ホルダー3の内部に前撃針2をスライド自在に収納したものである(
図1参照)。前撃針ホルダー3は、前撃針ネジ6等で銃身1に固定される(
図3参照)。図示例では前撃針ホルダー3の中央外周に凹設した固定用溝3Aに前撃針ネジ6を圧着して銃身1に固定する構成を示している。このとき、前撃針ホルダー3の形状や固定手段は任意に変更することができる。
【0023】
前撃針2は、前撃針ホルダー3の内部にスライド自在に装着される棒状部材である(
図2参照)。この前撃針2は、一端部側を前記前撃針ホルダー3内に収納し、他端部でカートリッジ10内の玩具火薬11を発火させる(
図3参照)。図示例では、前撃針2の前撃針ホルダー3内に収納する収納側を細く形成し、玩具火薬11を圧着して発火させる圧着側を太く形成しているが、前撃針2の形状や長さは任意の変更が可能である。
【0024】
更に前撃針2には、鍔部2Aと貫通孔2Bが設けられている(
図1参照)。鍔部2Aは、前撃針2の外周面に突設した部位である。図示の鍔部2Aは、前撃針2の収納側と圧着側との境界に形成している。さらに、この鍔部2Aと前撃針ホルダー3の端部との間に弾性材を配置する(
図2参照)。図示の弾性材はOリング5を使用しているがスプリングに変更するなど、任意の変更が可能である。
【0025】
そして、玩具火薬11の発火初期による最大圧力が生じると、前撃針2に加わる衝撃はOリング5を介して前撃針ホルダー3に伝わる(
図4参照)。この結果、前撃針2に加わる発火初期の衝撃力は、Oリング5に吸収された後、銃身1に伝わることになり、玩具火薬11の発火初期の最大圧力が銃身1に伝わる時間を遅らせることができる(表1参照)。
【0026】
【0027】
図示例では、前撃針ホルダー3の側面から内部の前撃針2を貫通する前撃針ピン4を設けている(
図2参照)。さらに、この前撃針ピン4が前撃針2を貫通する貫通孔2Bを前撃針2の長手方向に沿った長円状に形成している。前撃針ピン4は前撃針2の抜け止めである。
【0028】
本発明では、モデルガンにカートリッジ10が装填されると、カートリッジ10の先端部が鍔部2Aに接触するように構成している(
図3参照)。すなわち、前撃針2は、一端部を前撃針ホルダー3内に収納し、他端部でカートリッジ10内の玩具火薬11を発火させるように設けている。
【0029】
そのため、カートリッジ10装填時に、カートリッジ10の先端部が鍔部2Aに接触することで、前撃針2がカートリッジ10内の玩具火薬11を発火させる直前の距離を保つように設けたものである(
図3参照)。玩具火薬11を発火させる場合は、モデルガンのファイアリングピン(図示せず)がカートリッジの後端部を叩くと、カートリッジ10の中の玩具火薬11が前撃針2とピストン10Aとで後方のファイアリングピンに押しつぶされて発火する。
【0030】
このように、発火初期の衝撃力が緩衝された力と時間が遅れて銃身1に伝わることで、銃身1のダメージを軽減すると共に、Oリング5などの弾性材に加えられた圧力が反発する事でカートリッジ10を後方に移動させる圧力時間的配分もより効率的になる(
図4参照)。
【0031】
尚、本発明の各部の構成は、図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲であれば他の形状に変更することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 銃身
2 前撃針
2A 鍔部
2B 貫通孔
3 前撃針ホルダー
4 前撃針ピン
5 Oリング
6 前撃針ネジ
10 カートリッジ
10A ピストン
11 玩具火薬
20 従来の前撃針