(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043663
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ボールねじ装置及びアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20240326BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20240326BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F16H25/22 A
F16H25/24 A
F16H25/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148778
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 孝之
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA16
3J062CD05
3J062CD23
3J062CD45
(57)【要約】
【課題】ナットの締結によりねじ軸とシャフトとの連結を可能とし、かつ循環部品の破損を回避できるボールねじ装置を提供する。
【解決手段】ボールねじ装置は、雌ねじ溝を有するナットと、雄ねじ溝と、ナットの軸と平行な軸方向に延びる戻り通路と、を有するねじ軸と、雌ねじ溝と雄ねじ溝とから成る転動路に配置される複数のボールと、転動路と戻り通路とを繋げる複数の循環部品と、を備え、ねじ軸は、ねじ軸の両端面の中心部を貫通させて成るシャフト取付孔と、ねじ軸の両端面の一部を窪ませて成り、かつシャフト取付孔よりも径方向外側に位置する第1収容溝及び第2収容溝と、を有し、戻り通路は、第1収容溝の底面と第2収容溝の底面との間にあるねじ軸の壁部の一部を貫通させて成り、複数の循環部品は、第1収容溝及び第2収容溝に収容される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ溝を有するナットと、
雄ねじ溝と、前記ナットの軸と平行な軸方向に延びる戻り通路と、を有するねじ軸と、
前記雌ねじ溝と前記雄ねじ溝とから成る転動路に配置される複数のボールと、
前記転動路と戻り通路とを繋げる複数の循環部品と、
を備え、
前記ねじ軸は、
前記ねじ軸の両端面の中心部を貫通させて成るシャフト取付孔と、
前記ねじ軸の両端面の一部を窪ませて成り、かつ前記シャフト取付孔よりも径方向外側に位置する第1収容溝及び第2収容溝と、
を有し、
前記戻り通路は、前記第1収容溝の底面と前記第2収容溝の底面との間にある前記ねじ軸の壁部の一部を貫通させて成り、
複数の前記循環部品は、前記第1収容溝及び前記第2収容溝に収容される
ボールねじ装置。
【請求項2】
前記ナット及び前記ねじ軸は、複数の前記雌ねじ溝及び複数の前記雄ねじ溝を有する多条ねじ構造であり、
前記ねじ軸は、
互いに周方向に離隔して配置される複数の前記第1収容溝と、
互いに周方向に離隔して配置される複数の前記第2収容溝と、
互いに周方向に離隔して配置される複数の前記戻り通路と、
を有する
請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のボールねじ装置と、
一部が前記シャフト取付孔に挿入されるシャフトと、
前記シャフトを締結するシャフト取付用ナットと、
出力軸を有するモータと、
シール部材と、
を備え、
前記ナットは、一端側に前記ねじ軸を組み込むための開口部を有する有底筒状を成し、
前記シール部材は、前記開口部を閉塞し、
前記シャフトは、前記シール部材を貫通して前記ナットの外部に延在し、
前記ナット及び前記シャフトの一方は、前記出力軸と連結して前記出力軸の駆動により回転し、
前記ナット及び前記シャフトの他方は、前記出力軸の駆動により前記軸方向に移動し、
前記ねじ軸は、前記両端面を貫通する通気孔を有する
アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置及びアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじ装置は、回転運動を直動に変換する装置であり、ナットと、ねじ軸と、ナットとねじ軸との間に配置された複数のボールと、を備える。また、ボールねじ装置は、ボールを循環させるための機構を備える。例えば、下記特許文献1のねじ軸は、軸方向から視て端面の中心部を貫通して成る戻り通路を有している。そして、ねじ軸は、外周面から径方向内側に削って成る溝を有し、その溝に循環部品を収容している。そのほか、下記特許文献2及び特許文献3の循環部品は、ねじ軸の両端面に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-8718号公報
【特許文献2】特開2013-72523号公報
【特許文献3】特開2003-222220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ねじ軸にシャフトを連結し、ボールねじ装置をアクチュエータに利用することが検討されている。シャフトをねじ軸に連結する方法として、シャフトの一部をねじ軸に貫通させ、貫通した部分をナットで締結する方法が考えられる。しかしながら、特許文献1のねじ軸は、ねじ軸の中心部が戻り通路となっている。よって、ねじ軸の中心部にシャフトの一部を貫通させるための取付孔を設けることができない。また、特許文献2及び特許文献3のねじ軸は、両端面に循環部品が配置されているため、シャフトとナットとで締め付けると、循環部品が破損してしまう。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ナットの締結によりねじ軸とシャフトとの連結を可能とし、かつ循環部品の破損を回避できるボールねじ装置及びアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るボールねじ装置は、雌ねじ溝を有するナットと、雄ねじ溝と、前記ナットの軸と平行な軸方向に延びる戻り通路と、を有するねじ軸と、前記雌ねじ溝と前記雄ねじ溝とから成る転動路に配置される複数のボールと、前記転動路と戻り通路とを繋げる複数の循環部品と、を備える。前記ねじ軸は、前記ねじ軸の両端面の中心部を貫通させて成るシャフト取付孔と、前記ねじ軸の両端面の一部を窪ませて成り、かつ前記シャフト取付孔よりも径方向外側に位置する第1収容溝及び第2収容溝と、を有する。前記戻り通路は、前記第1収容溝の底面と前記第2収容溝の底面との間にある前記ねじ軸の壁部の一部を貫通させて成る。複数の前記循環部品は、前記第1収容溝及び前記第2収容溝に収容される。
【0007】
戻り通路は、ねじ軸の中心部から径方向外側に位置しており、ねじ軸の中心部にシャフト取付孔を設けることができる。また、循環部品は、第1収容溝及び第2収容溝に収容される。よって、シャフトの一部をシャフト取付孔に挿入し、ナットで締結してシャフトをねじ軸に連結した場合、シャフト及びナットは、ねじ軸の両端面を締め付けるようになる。よって、循環部品が破損しない。また、シャフトとねじ軸との間に、循環部品が介在していないため、ねじ軸に対するシャフトの固定強度が高くなる。
【0008】
上記のボールねじ装置の一態様として、前記ナット及び前記ねじ軸は、複数の前記雌ねじ溝及び複数の前記雄ねじ溝を有する多条ねじ構造である。前記ねじ軸は、互いに周方向に離隔して配置される複数の前記第1収容溝と、互いに周方向に離隔して配置される複数の前記第2収容溝と、互いに周方向に離隔して配置される複数の前記戻り通路と、を有する。
【0009】
条数が増えてボールの充填数が増え、ボールねじ装置の負荷容量が大きくなる。
【0010】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るアクチュエータは、上記したボールねじ装置と、一部が前記シャフト取付孔に挿入される前記シャフトと、前記シャフトを締結するシャフト取付用ナットと、出力軸を有するモータと、シール部材と、を備える。前記ナットは、一端側に前記ねじ軸を組み込むための開口部を有する有底筒状を成している。前記シール部材は、前記開口部を閉塞している。前記シャフトは、前記シール部材を貫通して前記ナットの外部に延在している。前記ナット及び前記シャフトの一方は、前記出力軸と連結して前記出力軸の駆動により回転し、前記ナット及び前記シャフトの他方は、前記出力軸の駆動により前記軸方向に移動する。前記ねじ軸は、前記両端面を貫通する通気孔を有する。
【0011】
上記したアクチュエータによれば、モータの出力軸の駆動により、ナット又はシャフトが軸方向に移動し、対象物を移動させることができる。また、ナットの開口部は、シール部材に閉塞され、ナットの内部が密封されている。よって、ナットの内部に異物が侵入し難く、雄ねじ溝や雌ねじ溝に異物が付着し難い。また、ねじ軸がシール部材から離隔するように移動した場合、ねじ軸とシール部材との間にある空間が拡張し、減圧される。そして、ねじ軸に対してシール部材と反対側にある空間の空気は、空気孔を介して、ねじ軸とシール部材との間の空間に流れこむ。以上から、ねじ軸とシール部材との間の空間が減圧されてシール部材の隙間から異物が吸い込まれる、ということが回避される。
【発明の効果】
【0012】
本開示のボールねじ装置及びアクチュエータによれば、ナットの締結によりねじ軸にシャフトを連結することができる。また、循環部品が破損することがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1のアクチュエータの側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1のねじ軸とその近傍を抽出し拡大した拡大図である。
【
図5】
図5は、ボールねじから潤滑部品を取り外した状態における
図1のIII-III矢視断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の循環部品を軸方向から見た図である。
【
図7】
図7は、実施形態1の循環部品を径方向外側から見た図である。
【
図8】
図8は、比較例のボールねじ装置のこまを内周側から見た図である。
【
図9】
図9は、比較例のボールねじ装置の全体図を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態2のアクチュエータの側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態2のねじ軸とその近傍を抽出し拡大した拡大図である。
【
図12】
図12は、ねじ軸の第2端面をモータ側から見た図である。
【
図13】
図13は、実施形態3のアクチュエータの側面図である。
【
図14】
図14は、実施形態3のねじ軸を蓋部側から見た図である。
【
図15】
図15は、実施形態3のねじ軸をシール部材側から見た図である。
【
図16】
図16は、実施形態4のアクチュエータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
図1は、実施形態1のアクチュエータの側面図である。
図2は、実施形態1のねじ軸とその近傍を抽出し拡大した拡大図である。
図3は、
図1のIII-III矢視断面図である。
図4は、
図1のIV-IV矢視断面図である。
図5は、ボールねじから潤滑部品を取り外した状態における
図1のIII-III矢視断面図である。
図6は、実施形態1の循環部品を軸方向から見た図である。
図7は、実施形態1の循環部品を径方向外側から見た図である。
図8は、比較例のボールねじ装置のこまを内周側から見た図である。
図9は、比較例のボールねじ装置の全体図を示す図である。
【0016】
(実施形態1)
図1に示すように、アクチュエータ100は、モータ101と、ボールねじ装置1と、シャフト110と、シャフト取付用ナット120と、を備える。モータ101は、軸Xを中心に回転する出力軸101aを有する。モータ101は、台102に設置されている。モータ101の出力軸101aは、台102の面102aと平行になっている。以下、軸Xと平行な方向を軸X方向という。また、軸X方向のうち、出力軸101aが指す方向を第1方向X1と言い、出力軸101aが指す方向と反対方向を第2方向X2という。
【0017】
ボールねじ装置1は、ナット10と、ねじ軸20と、ナット10とねじ軸20との間に配置される複数のボール30と、2つの循環部品40、40(
図2参照)を備える。ナット10は、軸Xを中心に円筒状を成す円筒部11と、円筒部11の第2方向X2の端部を閉塞する蓋部12と、蓋部12から第2方向X2の方に延びる軸部13と、を有している。
【0018】
円筒部11の内周面には、1条の雌ねじ溝14が設けられている。円筒部11の第1方向X1の端部には、開口部15が設けられている。ねじ軸20は、開口部15を介して、円筒部11の内部に組付けられる。円筒部11の開口部15には、シール部材16が設けられている。これにより、円筒部11の内部が密封される。
【0019】
軸部13は、台102に設置された軸受装置2により支持されている。軸受装置2は、2列の軸受3、3と、2列の軸受3、3を支持する固定部4と、を備える。2列の軸受3、3は、背面組み合わせとなるように配置されている。軸部13の第2方向X2の端面には、連結孔13aが設けられている。連結孔13aには出力軸101aが嵌合し、ナット10と出力軸101aとが一体になっている。軸部13の外周側には、軸受装置用ナット13bが螺合している。そして、2列の軸受3、3の内輪は、ナット10の蓋部12と軸受装置用ナット13bとに締め付けられている。これにより、与圧が2列の軸受3、3の内輪に与えられている。また、ナット10は、軸X方向に移動しないように軸受装置2に固定される。また、モータ101が起動して出力軸101aが回転すると、ナット10も軸Xを中心に回転する。
【0020】
ねじ軸20は、ナット10の円筒部11よりも軸X方向の長さが短い円柱状の部品である。ねじ軸20は、第1方向X1を向く第1端面21と、第2方向X2を向く第2端面22と、を有している。ねじ軸20の外周面には、雌ねじ溝14に対応する1条の雄ねじ溝23が設けられている。雌ねじ溝14と雄ねじ溝23とからなる転動路24に複数のボール30が配置されている。以上から、ナット10が回転すると、ボール30が転動する。そして、ねじ軸20は、円筒部11の内部を第1方向X1に、又は第2方向X2に移動する。
【0021】
図2に示すように、ねじ軸20は、第1端面21及び第2端面22を貫通するシャフト取付孔25と、第1端面21の一部を窪ませて成る第1収容溝26と、第2端面22の一部を窪ませて成る第2収容溝27と、軸X方向に貫通する戻り通路28と、を備える。
【0022】
シャフト取付孔25は、軸Xを中心とする円形状の孔である。このため、
図3に示すように、シャフト取付孔25は、第2端面22の中心部に位置している。同様に、
図4に示すように、シャフト取付孔25は、第1端面21の中心部に位置している。
【0023】
第1収容溝26と第2収容溝27は、共通する循環部品40を収容するための溝であり、共通する構成を有している。よって、共通する構成については、第2収容溝27を代表例として説明する。そして、第1収容溝26については、第2収容溝27との相違点のみを挙げて説明する。
【0024】
図2に示すように、第2収容溝27の深さ、言い換えると、第2端面22から第2収容溝27の底面27aまでの長さは、L1となっている。
図5に示すように、第2収容溝27は、シャフト取付孔25よりも径方向外側に位置している。第2収容溝27は、軸X方向から見て円弧状を成し、循環部品40と同形状となっている。第2収容溝27の底面27a上には、雌ねじ孔26bと、戻り通路28と、嵌合部29と、が設けられている。雌ねじ孔26bは、循環部品40を固定するためのねじ32が螺合する孔である。
【0025】
戻り通路28は、第1収容溝26の底面26aと第2収容溝27の底面27aとを貫通している。
図5に示すように、戻り通路28は、第2収容溝27の底面27a上において、モータ101の方から見て左回り方向(矢印A方向)の端寄りに設けられている。また、雌ねじ孔26bは、モータ101の方から見て、第2収容溝27の底面27a上において右回り方向(矢印B方向)の端寄りに設けられている。以下、左回り方向と右回り方向については、モータ101の方から見た場合を基準とする。嵌合部29は、戻り通路28と同心円状に配置され、戻り通路28よりも大径に形成された円形の窪みである。
【0026】
図4に示すように、第1収容溝26は、第2収容溝27に対して凡そ90度、左回り方向(矢印A方向)にずれて設けられている。よって、戻り通路28は、第1収容溝26の底面26aにおいて、右回り方向(矢印B方向)の端寄りに位置している。また、ねじ32が螺合する雌ねじ孔(
図4において不図示)は、第1収容溝26の底面26aにおいて、左回り方向(矢印A方向)の端寄りに位置している。
【0027】
循環部品40は、樹脂製の部品である。第1収容溝26と第2収容溝27とには、同じ循環部品40が収容されている。
図6、
図7に示すように、循環部品40は、第1収容溝26又は第2収容溝27に収容される円弧状の本体部41と、本体部41の外周面41aから径方向外側に膨出する膨出部42と、を備える。
【0028】
本体部41は、外周面41aの一部を窪ませて成り、ねじ軸20の雄ねじ溝23に連続する凹面43と、凹面43からボール30を径方向内側に案内する径方向通路44と、径方向通路44と連続し、ボール30を軸X方向に案内する軸方向通路45と、を有している。径方向通路44は、直線状の通路である。径方向通路44は、凹面43から軸方向通路45に向かうにつれて、次第に径方向内側に位置している。
【0029】
本体部41には、軸X方向に貫通する孔47が設けられている。そして、
図3、
図4に示すように、本体部41は、孔47に挿入されて雌ねじ孔26bに螺合するねじ32に締め付けられて固定している。
【0030】
図7に示すように、本体部41は、第1収容溝26の底面26a(
図2参照)又は第2収容溝27の底面27a(
図2参照)と当接する当接面41bを有している。本体部41は、当接面41bから突出する突起48を有している。突起48は、嵌合部29(
図5参照)に挿入され、突起48が嵌合部29に嵌合している。なお、軸方向通路45は、突起48の内部を貫通している。
【0031】
膨出部42は、
図7に示すように、軸X方向に切った断面が円弧状を成している。膨出部42は、凹面43の径方向外側に位置し、凹面43と対向する救い上げ部46を有している。
図3、
図4に示すように、膨出部42は、ナット10の雌ねじ溝14に入り込んでいる。そして、救い上げ部46は、転動路24上のボール30を、内周面46aで径方向内側に救い上げるようになっている。
図2に示すように、循環部品40の本体部41の軸X方向の厚みL2は、第2収容溝27の深さL1よりも小さい。このため、循環部品40は、第2端面22よりも第2方向X2に突出していない。同様に、循環部品40は、第1端面21よりも第1方向X1に突出していない。
【0032】
図1に示すように、シャフト110は、円柱状の中実部品である。シャフト110は、第1方向を向く第1端面111と、第2方向を向く第2端面112と、を有している。第1端面111には、第1方向X1に突出する連結部113を有している。連結部113は、動力を伝達する部品と連結するための部位である。連結部113には、対象物を締め付けるためのナット(不図示)が螺合するための雄ねじ部113aが設けられている。
【0033】
図2に示すように、第2端面112は、第2方向X2に突出する円柱状の固定部114を有している。固定部114は、第2方向X2の端部に雄ねじ部115が設けられている。固定部114は、ねじ軸20のシャフト取付孔25に挿入されている。そして、雄ねじ部115は、ねじ軸20の第2端面22よりも第2方向X2に突出している。雄ねじ部115にはシャフト取付用ナット120が螺合している。よって、ねじ軸20は、シャフト取付用ナット120とシャフト110の第2端面112とに締め付けられ、シャフト110が連結している。
【0034】
ここで、循環部品40、40は、第1端面21及び第2端面22よりも軸X方向の内側に位置していることから、シャフト取付用ナット120とシャフト110の第2端面112から締め付け荷重を受けないようになっている。よって、循環部品40、40の破損が回避されている。また、本実施形態によれば、ねじ軸20とシャフト110との間、またはねじ軸20とシャフト取付用ナットとの間に、樹脂製の循環部品40が介在しないため、ねじ軸20に対するシャフト110の固定強度が高い。
【0035】
次に、比較例を挙げて、実施形態1の効果を説明する。
図8、
図9に示すように、比較例は、こま210を採用した循環方式のボールねじ装置201であり、1リードでボール240を循環させる方式である。こま210の内周面は、隣の転動路225にボール240を戻すための戻り通路211と、戻り通路211を挟む一対の壁部212、212と、を有している。
【0036】
一対の壁部212、212は、ボール240を案内するための強度を確保する必要性があり、戻り通路211に対して直交する方向、言い換えると凡そ軸X方向に厚みがあるように設計される。そして、ボールねじ装置201にこま210を組付けた場合、
図9に示すように、こま210の一部は、隣りの転動路225の方にはみ出してしまう。このため、
図9に示すように、ボール240が充填できない転動路225が生じ、ボール240の充填数が少なくなる。
【0037】
以上から、こま210を採用した場合、ボールの充填数を少なく、負荷容量が小さくなる。一方で、実施形態1のボールねじ装置1は、ボール240が充填できない転動路225が発生しないようになっている。よって、ボール240の充填数は多く、負荷容量が大きいという効果を有している。
【0038】
以上、実施形態1のボールねじ装置1は、雌ねじ溝14を有するナット10と、雄ねじ溝23と、ナット10の軸Xと平行な方向に延びる戻り通路28と、を有するねじ軸20と、雌ねじ溝14と雄ねじ溝23とから成る転動路24に配置される複数のボール30と、転動路24と戻り通路とを繋げる複数の循環部品40、40と、を備える。ねじ軸20は、ねじ軸20の両端面の中心部を貫通させて成るシャフト取付孔25と、ねじ軸20の両端面の一部を窪ませて成り、かつシャフト取付孔25よりも径方向外側に位置する第1収容溝26及び第2収容溝27と、を有する。戻り通路28は、第1収容溝26の底面26aと第2収容溝27の底面27aとの間にあるねじ軸20の壁部の一部を貫通させて成る。複数の循環部品40、40は、第1収容溝26及び第2収容溝27に収容される。
【0039】
循環部品40、40は、第1収容溝26及び第2収容溝27に収容され、シャフト取付用ナット120及びシャフト110の締め付け荷重が作用しない。よって、循環部品40、40は破損しない。シャフト110とねじ軸20との間に、循環部品40、40が介在しないため、ねじ軸20に対するシャフト110の固定強度が高い。
【0040】
以上、実施形態1について説明したが、本発明は、実施形態で説明した例に限定されない。例えば、循環部品40の軸X方向の厚みL2は、第1収容溝26や第2収容溝27の深さL1と同じであってもよい。このような例であれば、循環部品40は、第1端面21及び第2端面22から軸X方向の外側に突出しておらず、ナット及びシャフトの締め付け荷重を受けない。よって、循環部品40は破損しない。
【0041】
(実施形態2)
図10は、実施形態2のアクチュエータの側面図である。
図11は、実施形態2のねじ軸とその近傍を抽出し拡大した拡大図である。
図12は、ねじ軸の第2端面をモータ側から見た図である。
図10に示すように、実施形態2のアクチュエータ100Aは、ねじ軸20に変えてねじ軸20Aを備えている点で、実施形態1のアクチュエータ100と異なる。以下、相違点に絞って説明する。
【0042】
図11に示すように、ねじ軸20Aは、軸X方向に貫通する通気孔35を有している。通気孔35は、3つ設けられている。通気孔35は、ねじ軸20Aを両端面に貫通している。
図12に示すように、第2端面22上において、通気孔35は、第2収容溝27に対し、周方向にずれて設けられている。なお、特に図示しないが、第1端面21上においても、通気孔35は、第1収容溝26に対し、周方向にずれて設けられている。通気孔35は、シャフト取付用ナット120及びシャフト110(
図11参照)よりも径方向外側に位置している。よって、シャフト取付用ナット120やシャフト110により閉塞されていない。
【0043】
以上から、実施形態2のアクチュエータ100Aは、ボールねじ装置1Aと、一部がシャフト取付孔25に挿入されるシャフト110と、シャフト110を締結するシャフト取付用ナット120と、出力軸101aを有するモータ101と、シール部材16と、を備える。シャフト取付用ナット120は、一端側にねじ軸20Aを組み込むための開口部15を有する有底筒状を成している。シール部材16は、開口部15を閉塞している。シャフト110は、シール部材16を貫通してナット10の外部に延在している。ナット10及びシャフト110の一方は、出力軸101aと連結して出力軸101aの駆動により回転する。ナット10及びシャフト110の他方は、出力軸101aの駆動により軸X方向に移動する。ねじ軸20Aは、両端面を貫通する通気孔35を有する。
【0044】
実施形態2によれば、出力軸101aの駆動によりナット10が回転し、ねじ軸20Aが第2方向X2に移動した場合、ねじ軸20Aと蓋部12との間にある空気は、ねじ軸20に圧縮される。よって、圧縮された空気は、通気孔35を通過し、ねじ軸20Aとシール部材36との間の空間の方に移動する。言い換えると、ねじ軸20Aが第2方向X2に移動しても、ねじ軸20Aとシール部材36との間の空間が拡張し、空気圧が減少しない。この結果、シール部材16とシャフト110との隙間から異物が吸い込まれる、ということが回避される。
【0045】
一方で、ねじ軸20Aが第1方向X1に移動した場合、ねじ軸20Aとシール部材36との間にある空気が圧縮される。よって、圧縮された空気は、通気孔35を通過し、ねじ軸20Aと蓋部12との間の空間の方に移動する。このため、ねじ軸20Aとシール部材36との間における空気圧が増加しない。この結果、ねじ軸20Aとシール部材36との間の空気圧が増加してシール部材16が第1方向X1に外れる、ということが回避される。
【0046】
(実施形態3)
図13は、実施形態3のアクチュエータの側面図である。
図14は、実施形態3のねじ軸を蓋部側から見た図である。
図15は、実施形態3のねじ軸をシール部材側から見た図である。実施形態3のアクチュエータ100Bは、ボールねじ装置1Bが多条ねじ構造となっている点で、実施形態1のアクチュエータ100と異なる。以下、相違点に絞って説明する。
【0047】
図13に示すように、ナット10Bの円筒部11Bの内周面には、2条の雌ねじ溝14A、14Bが設けられている。ねじ軸20Bの外周面には、雌ねじ溝14A、14Bに対応する2条の雄ねじ溝23A、23Bが設けられている。雌ねじ溝14Aと雄ねじ溝23Aとからなる転動路24Aには、ボール30Aが配置されている。雌ねじ溝14Bと雄ねじ溝23Bとからなる転動路24Bには、ボール30Bが配置されている。以上から、実施形態3のボールねじ装置1Bは、2条ねじ構造となっている。
【0048】
図14に示すように、ねじ軸20Bは、2つの戻り通路28A、28Bを有している。また、ねじ軸20Bは、第2端面22を窪ませて成る2つの第2収容溝27A、27Bを有している。第2収容溝27Aと第2収容溝27Bとは、軸Xを中心に180度、周方向に位置ずれして配置されている。第2収容溝27Aには、転動路24Aを転動するボール30Aを戻り通路28Aに送る循環装置40Aが収容されている。第2収容溝27Bには、転動路24Bを転動するボール30Bを戻り通路28Bに送る循環装置40Bが収容されている。戻り通路28A、28Bは、互いに、軸Xを中心に180度、周方向に位置ずれして配置されている。そして、戻り通路28Aは、第2収容溝27Aの底面を貫通している。戻り通路28Bは、第2収容溝27Bの底面を貫通している。
【0049】
図15に示すように、ねじ軸20Bは、第1端面21を窪ませて成る2つの第1収容溝26A、26Bを有している。第1収容溝26Aは、第2収容溝27Aに対して凡そ90度、左回り方向(矢印A方向)にずれて設けられている。第1収容溝26Bは、第2収容溝27Bに対して凡そ90度、左回り方向(矢印A方向)にずれて設けられている。第1収容溝26Aには、転動路24Aを転動するボール30Aを戻り通路28Aに送る循環装置40Aが収容されている。第1収容溝26Bには、転動路24Bを転動するボール30Bを戻り通路28Bに送る循環装置40Bが収容されている。戻り通路28Aは、第1収容溝26Aの底面を貫通している。戻り通路28Bは、第1収容溝26Bの底面を貫通している。
【0050】
以上、実施形態3のボールねじ装置1Bは、ナット10B及びねじ軸20Bは、複数の雌ねじ溝14A、14B及び複数の雄ねじ溝23A、23Bを有する多条ねじ構造である。ねじ軸20Bは、互いに周方向に離隔して配置される複数の第1収容溝26A、26Bと、互いに周方向に離隔して配置される複数の第2収容溝27A、27Bと、互いに周方向に離隔して配置される複数の戻り通路28A、28Bと、を有する。
【0051】
上記構成によれば、実施形態1のボールねじ装置1よりも条数が増えているため、ボールねじ装置1Bの負荷容量が大きい。なお、実施形態3は、多条ねじ構造の例として2条の場合を示したが、本発明は、3条以上のねじ構造であってもよく、特に限定されない。
【0052】
(実施形態4)
図16は、実施形態4のアクチュエータの側面図である。実施形態1から実施形態3では、ナット10、10Bがモータ101の出力軸101aと連結する例を挙げたが、本発明のボールねじ装置はこれに限定されない。実施形態4では、シャフト110Cがモータ101の出力軸101aと連結するアクチュエータ100Cについて説明する。
【0053】
実施形態4のアクチュエータ100Cは、モータ101と、ボールねじ装置1Cと、シャフト110Cと、シャフト取付用ナット120と、を備える。
【0054】
ボールねじ装置1Cは、ナット10に変えてナット10Cを備える点が、実施形態1のボールねじ装置1が異なる。よって、ボールねじ装置1Cにおいて、ねじ軸20と、ナット10とねじ軸20との間に配置される複数のボール30と、ねじ軸20の第1端面21及び第2端面22に設けられる2つの循環部品(不図示)と、については、実施形態1のボールねじ装置1と同じであるため、説明を省略する。
【0055】
ナット10Cは、軸Xを中心に円筒状を成す円筒部11Cと、円筒部11の第1方向X1の端部を閉塞する蓋部12Cと、を有する有底筒状の部品である。円筒部11の内周面には、1条の雌ねじ溝14が設けられている。円筒部11の第2方向X2の端部には、開口部15Cが設けられている。円筒部11Cの開口部15Cには、シール部材16Cが設けられている。蓋部12Cには、ねじ孔17が設けられている。ねじ孔17には、動力を伝達する部品と連結するためのアイボルト18が螺合している。
【0056】
シャフト110Cは、第1端面111から第1方向X1に突出し、ねじ軸20のシャフト取付孔25に挿入される固定部114を有している。固定部114の第1方向X1の端部は、ねじ軸20の第1端面21よりも第1方向X1に突出し、シャフト取付用ナット120が螺合している。そして、シャフト110Cの第1端面111とシャフト取付用ナット120とでねじ軸20を締め付け、シャフト110Cとねじ軸20とが一体になっている。
【0057】
また、シャフト110Cは、シール部材16Cを貫通し、シャフト110Cの第2端面112は、ナット10の円筒部11Cの外部に配置されている。シャフト110Cは、第2端面112から第2方向X2に突出し、軸受装置2に支持される軸部117を有している。軸部117には、軸受装置用ナット13bが螺合している。そして、2列の軸受3、3の内輪は、軸受装置用ナット13bと第2端面112とにより締め付けられている。これにより、与圧が2列の軸受3、3の内輪に与えられている。軸部117の端面には、連結孔117aが設けられている。連結孔117aには出力軸101aが嵌合し、シャフト110Cと出力軸101aとが一体になっている。
【0058】
以上、実施形態4のアクチュエータ100Cによれば、モータ101が起動し、出力軸101aが駆動すると、シャフト110Cが軸Xを中心に回転する。そして、ボール30が転動し、ナット10Cが第1方向X1又は第2方向X2に移動する。この結果、アイボルト18に連結する対象物を移動させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1、1B、1C ボールねじ装置
2 軸受装置
10、10B ナット
11、11C 円筒部
12、12C 蓋部
13 軸部
14、14A、14B 雌ねじ溝
15、15C 開口部
16、16C シール部材
18 アイボルト
20、20A ねじ軸
21 第1端面
22 第2端面
23、23A、23B 雄ねじ溝
24、24A、24B 転動路
25 シャフト取付孔
26、26A、26B 第1収容溝
26a 底面
27、27A、27B 第2収容溝
27a 底面
28、28A、28B 戻り通路
30 ボール
32 ねじ
35 通気孔
40 循環部品
41 本体部
42 膨出部
43 凹面
44 径方向通路
45 軸方向通路
46 救い上げ部
100、100A、100B、100C アクチュエータ
101 モータ
110、110C シャフト
111 第1端面
112 第2端面
120 シャフト取付用ナット
201 ボールねじ装置
210 こま
211 戻り通路
212 壁部