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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043671
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20240326BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20240326BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/68
B60R21/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148791
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】野上 光男
(72)【発明者】
【氏名】松井 宏樹
【テーマコード(参考)】
3B087
3D054
【Fターム(参考)】
3B087CD05
3B087DB02
3B087DB04
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054BB30
3D054DD13
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】1種類のシートフレーム及びブラケットにより、エアバッグモジュールをシート外側及びシート中心側の何れにも配置することが可能な車両用シートを実現する。
【解決手段】ブラケット20は、インフレータの少なくとも一部が収納可能となるように凹状に形成された収納部23と、サイドフレーム10への取付けを行うときの取付け部となるプレート部21とを備えている。サイドフレーム10は、収納部23が挿入される開口部13と、サイドフレーム10のシート外側にプレート部21を取付け可能な第1接合面11と、サイドフレーム10のシート中心側にプレート部21を取付け可能な第2接合面12とを備えている。ブラケット20の収納部23をサイドフレーム10の開口部13に挿入して取り付ける際に、挿入方向を反転させるだけで、エアバッグモジュールをシート外側及びシート中心側の何れにも配置することができる。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドフレームを備え、エアバッグクッションと前記エアバッグクッションを膨張展開させるガスを噴射するインフレータとを有するエアバッグモジュールが、ブラケットを介して前記サイドフレームに取付けられる車両用シートであって、
前記ブラケットは、前記インフレータの少なくとも一部が収納可能となるように凹状に形成された収納部と、前記サイドフレームへの取付けを行うときの取付け部となるプレート部とを備え、
前記サイドフレームは、前記収納部が挿入される開口部と、前記サイドフレームのシート外側に前記プレート部を取付け可能な第1接合面と、前記サイドフレームのシート中心側に前記プレート部を取付け可能な第2接合面とを備え、
前記ブラケットの形状は、前記収納部が、前記開口部に対して、シート外側方向及びシート中心側方向の何れにも挿入可能となるように形成されている、車両用シート。
【請求項2】
前記サイドフレームは、前記第1接合面と前記第2接合面との間を貫通する貫通孔を備えており、前記ブラケットは、前記プレート部に形成された第1取付孔と前記貫通孔を挿通する締結具によって、前記サイドフレームに取付けられている、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記収納部に第2取付孔が形成されており、前記エアバッグモジュールは、前記第2取付孔に挿通する締結具によって、前記収納部に取付けられている、請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記第1接合面に前記ブラケットが取付けられ、前記エアバッグモジュールの主要部分が前記サイドフレームのシート外側に位置するように取付けられている、請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記第2接合面に前記ブラケットが取付けられ、前記エアバッグモジュールの主要部分が前記サイドフレームのシート中心側に位置するように取付けられている、請求項1又は2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグモジュールが取付けられるサイドフレームを備えた車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時に乗員の側部を拘束するサイドエアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグモジュール30は、図6Aに示すように、インフレータ32と、インフレータ32から噴射される膨張ガスにより膨張展開するエアバッグクッション31とを備え、車両用シート1の背もたれ部2のサイドサポート部40の内部に収納されている。
【0003】
車両用シート1は、エアバッグモジュール30が取り付けられるサイドフレーム101を備えている。サイドフレーム101には、インフレータ32のスタッドボルト33を挿通する貫通孔110が設けられている。エアバッグモジュール30はサイドフレーム101のシート外側に配置されている。
【0004】
車両用シート1は、種々の形状のものがあるが、将来的にはサイドサポート部40の車幅方向の厚みを薄くした薄型シートがトレンドの1つになると考えられる。薄型シートでは、サイドフレーム101のシート外側部分において、エアバッグモジュール30を配置する空間が狭くなる。図6B及び図6C中、想像線で示した形状が薄型シートにおけるサイドサポート部40の形状である。従来、薄型シートへの対応としては、以下の2通りの構成が提案されている。
【0005】
1つ目の構成は、図6Bに示すように、サイドフレーム102の形状を変更し、サイドフレーム102のシート後方部分に、シート中心側方向に膨らんだ凹部103を設けるものである。この場合、インフレータ32はシート外側からサイドフレーム102に取付ける。インフレータ32の部分を凹部102に入れ込むことができるので、その分だけサイドサポート部40のシート外側部分の厚みを削減できる。
【0006】
2つ目の構成は、図6Cに示すように、サイドフレーム101は図6Aと同じ形状のものを用いるが、エアバッグモジュール30はサイドフレーム101のシート外側に配置するものである(例えば、特許文献2参照)。この場合、インフレータ32はシート中心側からサイドフレーム101に取付ける。エアバッグモジュール30がサイドフレーム101のシート外側に配置されるので、サイドサポート部40のシート外側部分の厚みを削減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-101297号公報
【特許文献2】特開2018-58433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した2つの構成は、性能等を考慮の上、随時使い分けたいという要望がある。しかし、これらの構成は、サイドフレーム101とサイドフレーム102の形状が異なるために、1つのサイドフレームで両方の構成を実現することは不可能である。従来の方式は、2種類のサイドフレームを準備して組み替える必要があるため、製造コストや作業効率の点で課題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、サイドサポート部の厚みが薄い場合でも対応可能で、かつ、2種類のサイドフレームを用いる必要がなく、シート外側及びシート中心側のいずれにもエアバッグモジュールを配置することが可能な車両用シートを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明の車両用シートは、サイドフレームを備え、エアバッグクッションとエアバッグクッションを膨張展開させるガスを噴射するインフレータとを有するエアバッグモジュールが、ブラケットを介してサイドフレームに取付けられる車両用シートであって、ブラケットは、インフレータの少なくとも一部が収納可能となるように凹状に形成された収納部と、サイドフレームへの取付けを行うときの取付け部となるプレート部とを備え、サイドフレームは、収納部が挿入される開口部と、サイドフレームのシート外側にプレート部を取付け可能な第1接合面と、サイドフレームのシート中心側にプレート部を取付け可能な第2接合面とを備え、ブラケットの形状は、収納部が、開口部に対して、シート外側方向及びシート中心側方向の何れにも挿入可能となるように形成されている。
【0011】
本発明では、サイドフレームは、第1接合面と第2接合面との間を貫通する貫通孔を備えており、ブラケットは、プレート部に形成された第1取付孔と貫通孔を挿通する締結具によってサイドフレームに取付けられている構成を採用してもよい。
【0012】
本発明では、収納部に第2取付孔が形成されており、エアバッグモジュールは第2取付孔に挿通する締結具によって収納部に取付けられている構成を採用してもよい。
【0013】
本発明では、第1接合面にブラケットが取付けられ、エアバッグモジュールの主要部分が、サイドフレームのシート外側に位置するように取付けられている構成を採用してもよい。
【0014】
本発明では、第2接合面にブラケットが取付けられ、エアバッグモジュールの主要部分が、サイドフレームのシート中心側に位置するように取付けられている構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用シートでは、ブラケットは、インフレータの少なくとも一部が収納可能となるように凹状に形成された収納部と、サイドフレームへの取付けを行うときの取付け部となるプレート部とを備えている。
【0016】
サイドフレームは、収納部が挿入される開口部と、サイドフレームのシート外側にプレート部を取付け可能な第1接合面と、サイドフレームのシート中心側にプレート部を取付け可能な第2接合面とを備えている。そして、ブラケットの形状は、収納部が、サイドフレームの開口部に対して、シート外側方向にもシート中心側方向にも挿入可能となるように、収納部及びプレート部の形状が決められている。
【0017】
本発明では、エアバッグモジュールは、サイドフレームのシート外側に配置することができる。シート外側配置を行う場合、ブラケットの収納部は、サイドフレームの開口部に対し、シート中心側方向へ挿入し、ブラケットのプレート部は、サイドフレームの第1接合面に取り付ける。第1接合面への取付けは、プレート部に形成された第1取付孔と、サイドフレームの貫通孔を挿通する締結具によって行う。そして、エアバッグモジュールのインフレータの部分を収納部に突き当てた状態で、インフレータのスタットボルトを収納部に形成された第2取付孔に挿通し、ナットにより締結固定することで、エアバッグモジュールを収納部に取り付ける。これにより、エアバッグモジュールの主要部分が、サイドフレームのシート外側に配置されるようにして、エアバッグモジュールを取付けることができる。
【0018】
本発明では、エアバッグモジュールは、サイドフレームのシート中心側に配置することもできる。シート中心側配置を行う場合、ブラケットの収納部は、サイドフレームの開口部に対し、シート外側方向へ挿入し、ブラケットのプレート部は、サイドフレームの第2接合面に取り付ける。第2接合面への取付けは、プレート部に形成された第1取付孔と、サイドフレームの貫通孔を挿通する締結具によって行う。そして、エアバッグモジュールのインフレータの部分を収納部に突き当てた状態で、インフレータのスタットボルトを収納部に形成された第2取付孔に挿通し、ナットにより締結固定することで、エアバッグモジュールを収納部に取り付ける。これにより、エアバッグモジュールの主要部分が、サイドフレームのシート中心側に配置されるようにして、エアバッグモジュールを取付けることができる。
【0019】
本発明によれば、上述した2通りのエアバッグモジュールの取付けが、1種類のサイドフレーム及びブラケットで実現できる。本発明は、サイドサポート部の車幅方向の厚みが薄いシートの場合でも、エアバッグモジュールをサイドフレームのシート外側、シート中心側の何れにも取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係る車両用シートを側方から見た側面図である。
図2図2は、実施形態に係る車両用シートについて、ブラケットを取付ける前の状態のシートフレームを斜め方向から見た斜視図である。
図3A図3Aは、エアバッグモジュールを組み付ける前の状態で、図1のA-A線に沿って切断したシート幅方向端部の断面を示す拡大断面図である。
図3B図3Bは、図3Aと同様の拡大断面図で、ブラケットの挿入方向を反転させた図である。
図4A図4Aは、図3Aのサイドフレーム及びブラケットを拡大し、貫通孔、第1取付孔、第2取付孔が現れる位置で切断した断面図である。図4A(a)は、ブラケットを取付ける前の状態を、図4A(b)はブラケットを取付けた状態を示している。
図4B図4Bは、図3Bのサイドフレーム及びブラケットを拡大し、貫通孔、第1取付孔、第2取付孔が現れる位置で切断した断面図である。図4B(a)は、ブラケットを取付ける前の状態を、図4B(b)はブラケットを取付けた状態を示している。
図5A図5Aは、実施形態に係る車両用シートについて、エアバッグモジュールをシート外側に配置し、インフレータをブラケットに取付けた状態で、シート幅方向端部の断面を示す拡大断面図である。
図5B図5Bは、実施形態に係る車両用シートについて、エアバッグモジュールをシート中心側に配置し、インフレータをブラケットに取付けた状態で、シート幅方向端部の断面を示す拡大断面図である。
図6A図6Aは、従来の車両用シートの一例を示す図である。
図6B図6Bは、従来の車両用シートにおいて、エアバッグモジュールをシートフレームのシート外側に配置する例を示す図である。
図6C図6Cは、従来の車両用シートにおいて、エアバッグモジュールをシートフレームのシート中心側に配置する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
本発明において「乗員」とは、一例を示せば、前面衝突試験用のダミー(Hybrid III AM50/ NHTSA [National Highway Traffic Safety Administration:米国高速道路交通安全協会]の規格[49CFR Part572 Subpart E 及びO] にて決められた前面衝突試験用人体ダミー)に準拠した、米国における平均的な男性に相当する体格を有するものをいい、概略サイズは、身長175cm、座高88cm、体重78kgである。但し、本発明はその他の人体ダミーに対しても適用可能である。
【0023】
本明細書において、「上」、「上側」とは座席1の正規の位置に着座した乗員の頭部方向を、「下」、「下側」とは乗員の足元方向を意味する場合がある。ここで、「正規の位置」とは、座席1におけるシートクッション3の左右方向の中心位置で、背もたれ部2に乗員の背中が上下に亘って接する位置をいう。また、「前」、「前側」とは座席1の正規の位置に着座した乗員の正面方向を、「後」、「後ろ側」とは乗員の背面方向を意味する場合がある。また、「左」、「左側」とは座席1の正規の位置に着座した乗員の左手方向を、「右」、「右側」とは乗員の右手方向を意味する場合がある。
【0024】
また、本明細書では、車両用シート1を基準として方向を定義する場合がある。例えば車両用シート1のサイドサポート部40に収納されるエアバッグモジュール30の配置を説明する場合において、「シート中心側」とは車両用シート1の中心側の方向を、「シート外側」とは車両用シート1の外側の方向(但し、シート中心側とは反対側の外側の方向)を意味する。また、サイドフレーム10の形状を説明する場合において、「シート前方」とは車両用シート1の前側の方向を、「シート後方」とは車両用シート1の後ろ側の方向を意味する。
【0025】
[本実施形態の構成]
本実施形態は、自動車などの車両の運転席として用いられる車両用シート1である。車両用シート1は、図1に示すように、乗員の背部を支持する背もたれ部2と、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション3とを備えている。背もたれ部2は、シートクッション3の後端部に傾倒可能に取付けられている。背もたれ部2の上端部には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト4が一体的に形成されている。なお、ヘッドレスト4は、背もたれ部2の上端部に棒状の支持部材を介して取り付けられたものでもよい。
【0026】
図2に示すように、背もたれ部2の内部にはシートフレーム5が設けられており、シートクッション3の底側には着座フレーム6が配置されている。シートフレーム5と着座フレーム6とは、リクライニング機構7を介して連結されており、車両用シート1の骨格を形成している。
【0027】
シートフレーム5は、背もたれ部2内のシート幅方向右側及び左側の端部においてシート上下方向に延設された一対のサイドフレーム10と、一対のサイドフレーム10の上端部をシート幅方向に連結する上部フレーム5aと、一対のサイドフレーム10の下端部をシート幅方向に連結する下部フレーム5bとを備えている。シートフレーム5は、サイドフレーム10と上部フレーム5aと下部フレーム5bとにより枠状に構成されている。サイドフレーム10は、例えば金属または樹脂によって成形される。
【0028】
図3A及び図3Bでは、シートフレーム5のうち、サイドフレーム10の部分の断面形状と、サイドフレーム10に取り付けたブラケット20の断面形状が表れている。ブラケット20は、インフレータ32を収納する部分となる収納部23を備えている。ブラケット20は、サイドフレーム10の開口部13に収納部23を挿入して取り付けられる。本実施形態では、ブラケット20の収納部23は、開口部13に対し、シート中心側方向に挿入して取り付け可能であると共に(図3A参照)、ブラケット20の挿入方向を反転させれば、シート外側方向にも挿入して取り付け可能である(図3B参照)。本実施形態では、エアバッグクッション31とエアバッグクッション31を膨張展開させるガスを噴射するインフレータ32とを有するエアバッグモジュール30は、ブラケット20を介してサイドフレーム10に取り付けられる。
【0029】
ブラケット20は、図4A及び図4Bに拡大した図を示すように、インフレータ32の少なくとも一部が収納可能となるように凹状に形成された収納部23を備えている。収納部23は、内側の面は略円弧状に窪み、外側の面は略円弧状に湾曲して突出している。ブラケット20は、サイドフレーム10への取付けを行うときの取付け部となるプレート部21を備えている。プレート部21は、サイドフレーム10と接合される接合面21aを有する。
【0030】
サイドフレーム10は、収納部23が挿入される開口部13を備えている。開口部13は、収納部23が挿入可能となるように所要の幅を有している。サイドフレーム10は、サイドフレーム10のシート外側にプレート部21を取付け可能な第1接合面11と、サイドフレーム10のシート中心側にプレート部21を取付け可能な第2接合面12とを備えている。第1接合面11は、サイドフレーム10の一方の面に存在し、第2接合面12は、サイドフレーム10の他方の面に存在する。
【0031】
本実施形態では、ブラケット20の形状は、収納部23が、開口部13に対して、シート外側方向にもシート中心側方向にも挿入可能となるように、収納部23及びプレート部21の形状が決められている。具体的に、収納部23は、円筒状のインフレータ32の外側面の形状に沿うように、インフレータ32に臨む内側面が円弧状の湾曲面となるように凹状に形成されている。
【0032】
プレート部21は、収納部23の縁部と連続している板状の構成部である。プレート部21は、収納部23と一体に形成されている。プレート部21は、サイドフレーム10の第1接合面11もしくは第2接合面12と締結される接合面21aが平坦な面となるように形成されている。プレート部21には2つの面が存在するが、このうち、収納部23が突出している側の面が接合面21aとなる(図4A(a)、図4B(a)参照。)
【0033】
サイドフレーム10は、第1接合面11と第2接合面12との間を貫通する貫通孔14を備えている。ブラケット20は、図4A(b)、図4B(b)に示すように、プレート部21に形成された第1取付孔22と貫通孔14を挿通するボルト25及びナット26によってサイドフレーム10に取付けられる。ボルト25及びナット26は、締結具に相当する。
【0034】
図5A及び図5Bでは、エアバッグモジュールを組み付けた状態における各構成部の断面が表れている。背もたれ部2の内部には、例えばウレタンフォーム材からなるシートパッド52が配設されている。背もたれ部2は、車幅方向の側部においてシート前方に膨出したサイドサポート部40を備える。このサイドサポート部40の内部において、シートパッド52が配置されていない隙間にエアバッグモジュール30が収納される。シートパッド52は表皮材51によって被覆されている。表皮材51は伸縮性を有する布帛や皮革からなる。
【0035】
車両用シート1は、サイドサポート部40の内部に、エアバッグクッション31とエアバッグクッション31を膨張展開させるガスを噴射するインフレータ32とを有するエアバッグモジュール30が収納されている。
【0036】
エアバッグクッション31は、所要の形状の基布を必要数あらかじめ準備し、これらの基布の外周部など所定の箇所を縫製することにより構成された布製の袋体である。エアバッグクッション31は、平置き状態においてロール状に巻く、又は、蛇腹状に折り畳むことにより、車両用シート1に収納される時の収納形態となる。折り畳まれた収縮状態のエアバッグクッション31の周囲は、被覆部材34で被覆されている。
【0037】
エアバッグクッション31の内部に、筒型状のインフレータ32が配置されている。インフレータ32は、側面衝突、斜め衝突、オフセット衝突などの発生時、センサからの信号を受信し、その外側面に設けた噴出孔からエアバッグクッション31の内部にガスを噴出し、エアバッグクッション31を膨張展開させる。側面衝突などの時、膨張展開したエアバッグクッションは、衝撃によって移動する乗員の肩部、胸部、上腕部等を拘束し、乗員の移動を抑制する。
【0038】
インフレータ32の外側面には、その長手方向に適宜の間隔をあけて突出状にスタッドボルト33が取付けられている。スタッドボルト33によりインフレータ32がブラケット20に固定される。この固定は、収納部23の第2取付孔24にスタッドボルト33を挿通することにより行う。インフレータ32を収納している部分がブラケット20を介してサイドフレーム10に固定されることにより、エアバッグモジュール30がサイドフレーム10に固定される。
【0039】
背もたれ部2の表皮材51の継ぎ目は、内側に織り込まれて縫製によって連結されている。サイドサポート部40の前方の継ぎ目は、エアバッグクッション31が膨張展開した時に開裂する開裂部53となる。開裂部53は、エアバッグクッション31が膨張展開した時にサイドサポート部が開裂する起点となる。これにより、側面衝突などの時、センサからの信号を受信すると、サイドサポート部40のシート中心側部分41とシート外側部分42の間からエアバッグクッション31が一気に膨張し、乗員の側方に速やかに展開することが可能となる。
【0040】
[本実施形態の効果等]
本実施形態では、エアバッグモジュール30の配置及びサイドフレーム10への取付けに関し、以下に説明する2通りの方法の中から最適な方法を選択できる。
【0041】
第1の構成は、図5Aに示すように、第1接合面11にブラケット20が取付けられ、エアバッグモジュール30の主要部分がサイドフレーム10のシート外側に位置するように取付けられる構成である。ここで、エアバッグモジュール30の主要部分とは、エアバッグモジュール30のうちインフレータ32の一部及びスタッドボルト33を除き、主としてエアバッグクッション31が占める部分を意味する。
【0042】
エアバッグモジュール30をシート外側に配置する場合、ブラケット20の収納部23は、図4A(a)及び図4A(b)に示すように、サイドフレーム10の開口部13に対し、シート中心側方向へ挿入し、ブラケット20のプレート部21は、サイドフレーム10の第1接合面11に取り付ける。
【0043】
ブラケット20の第1接合面11への取付けは、プレート部21に形成された第1取付孔22と、サイドフレーム10の貫通孔14とを挿通する締結具(ボルト25及びナット26)によって行う。
【0044】
本実施形態では、収納部23に第2取付孔24が形成されている。そして、エアバッグモジュール30のインフレータ32の部分を収納部に突き当てた状態で、インフレータ32のスタットボルト33を収納部23の第2取付孔24に挿通し、ナット35により締結固定することで、エアバッグモジュール30を収納部23に取り付ける。スタットボルト33及びナット35は締結具に相当する。これにより、エアバッグモジュール30の主要部分が、サイドフレーム10のシート外側に配置されるようにして、エアバッグモジュール30を取付けることができる。
【0045】
第2の構成は、図5Bに示すように、第2接合面12にブラケット20が取付けられ、エアバッグモジュール30の主要部分がサイドフレーム10のシート中心側に位置するように取付けられる構成である。
【0046】
エアバッグモジュール30をシート中心側に配置する場合、ブラケット20の収納部23は、図4B(a)及び図4B(b)に示すように、サイドフレーム10の開口部13に対し、シート外側方向へ挿入し、ブラケット20のプレート部21は、サイドフレーム10の第2接合面12に取り付ける。
【0047】
ブラケット20の第2接合面12への取付けは、プレート部21に形成された第1取付孔22と、サイドフレーム10の貫通孔13を挿通する締結具(ボルト25及びナット26)によって行う。
【0048】
そして、エアバッグモジュール30のインフレータ32の部分を収納部13に突き当てた状態で、インフレータ32のスタットボルト33を収納部23に形成された第2取付孔24に挿通し、ナット35により締結固定することで、エアバッグモジュール30を収納部23に取り付ける。スタットボルト33及びナット35は締結具に相当する。これにより、エアバッグモジュール30の主要部分が、サイドフレーム10のシート中心側に配置されるようにして、エアバッグモジュール30を取付けることができる。
【0049】
本実施形態では、1種類のサイドフレーム10及びサイドフレーム20を使用し、ブラケット20の収納部23をサイドフレーム10の開口部13に挿入して取り付ける際に、挿入方向を反転させるだけで、エアバッグモジュール30をサイドフレーム10のシート外側、シート中心側の何れにも取付けできる。
【0050】
本実施形態は、エアバッグモジュール30をサイドフレーム10のシート外側に配置する場合でも、インフレータ32を収納部23の凹状の部分に入れ込むことができるので、その分だけサイドサポート部40のシート外側部分の厚みを削減できる。そのため、サイドサポート部40の車幅方向の厚みを薄くした薄型シートであっても、エアバッグモジュール30をサイドフレーム10のシート外側に配置できるし、必要な場合はシート中心側にも配置できる。
【0051】
[実施形態の変形例]
上述の実施形態において、車両用シート1は助手席として用いられるものでもよい。車両用シート1は、車両のフロントシートに限らず、リアシートでもよい。
【0052】
上述の実施形態において、サイドフレーム10及びブラケット20の形状等は、各図面に示した形状、大きさ、配置等に制約されるものではない。エアバッグモジュール30を構成するエアバッグクッションの31の収納状態の形状や、サイドサポート部40の形状も、各図面に示した例に限定されるものではない。
【0053】
上述の実施形態において、インフレータ32は、ディスク型のものを使用してもよい。この場合、インフレータ32の形状に応じて、ブラケット20の収納部23の形状を調整すればよい。
【0054】
上述の実施形態において、ブラケット20のプレート部21は、サイドフレーム10に対する取付強度等に問題がなければ、図4A(a)及び図4B(a)に示した接合面21aとは反対側の面を使用して、サイドフレーム10への取付けを行ってもよい。この場合においても、サイドフレーム10の第1接合面11に取り付けるか、第2接合面12に取り付けるかを選択することができ、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、エアバッグモジュールが搭載される車両用シート全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両用シート
10 サイドフレーム
11 第1接合面
12 第2接合面
13 開口部
14 貫通孔
20 ブラケット
21 プレート部
22 第1取付孔
23 収納部
24 第2取付孔
25 ボルト
26 ナット
30 エアバッグモジュール
31 エアバッグクッション
32 インフレータ
33 スタッドボルト
35 ナット


図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C