(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004368
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電源制御装置および電源制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20240109BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240109BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240109BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240109BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240109BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240109BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20240109BHJP
B60L 58/16 20190101ALI20240109BHJP
【FI】
H02J7/34 G
H02J9/06 110
H02J7/04 H
B60L1/00 L
B60L3/00 N
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/13
B60L58/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104001
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【テーマコード(参考)】
5G015
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G015GB06
5G015HA02
5G015JA52
5G015KA12
5G503AA07
5G503BA01
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA08
5G503CB09
5G503DA05
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC13
5H125BC25
5H125BC29
5H125CA11
5H125EE26
5H125EE27
5H125EE29
5H125EE51
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】車両の状況または車両の周辺状況に応じたバックアップ電源の蓄電量を確保できる電源制御装置および電源制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る電源制御装置は、自動運転走行機能を有する車両に搭載される。電源制御装置は、コントローラを備える。コントローラは、メイン電源が失陥した場合に、バックアップ電源によりバックアップ制御を行わせると共に、バックアップ電源の蓄電量が充電開始閾値以下に減少すると、バックアップ電源の充電を開始させ、目標蓄電量に達すると充電を終了させる。コントローラは、車両の状況または車両の周辺状況が、バックアップ電源によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況である場合に、バックアップ電源の蓄電量を増大させる促進制御を実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転走行機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合に、バックアップ電源によりバックアップ制御を行わせると共に、前記バックアップ電源の蓄電量が充電開始閾値以下に減少すると、前記バックアップ電源の充電を開始させ、目標蓄電量に達すると充電を終了させるコントローラを備えた電源制御装置であって、
前記コントローラは、
前記車両の状況または前記車両の周辺状況が、前記バックアップ電源によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況である場合に、前記バックアップ電源の蓄電量を増大させる促進制御を実行する、
電源制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記車両の進行方向の所定距離以内に渋滞情報がある場合、前記促進制御を実行する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記車両を安全に停止させる場所が所定範囲以内にない場合、前記促進制御を実行する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記車両の進行方向にある渋滞情報および/または前記車両を安全に停止させる場所までの距離に基づき、バックアップ制御が完了するまでの時間を予想し、前記予想した時間が所定時間を超える場合、前記促進制御を実行する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記車両の自動運転用のアクチュエータの劣化度合に応じて前記促進制御を実行する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記バックアップ電源の劣化度合に応じて前記促進制御を実行する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記車両の運転者の運転習熟度に応じて前記促進制御を実行する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記車両の進行方向の第2の所定距離以内に自動運転が許可されている自動運転可能エリアがある場合に前記促進制御を実行する、
請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記充電開始閾値を増大させて前記促進制御を実行する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記充電開始閾値を所定の許可閾値以上に設定し、前記バックアップ電源の蓄電量が前記許可閾値以上の場合に、自動運転走行を許可する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記目標蓄電量を増大させて前記促進制御を実行する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項12】
前記コントローラは、
前記バックアップ電源によるバックアップ制御の完了に支障をきたす度合いに応じて前記充電開始閾値を増大する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項13】
前記コントローラは、
前記車両の状況または前記車両の周辺状況に応じて、前記充電開始閾値および前記目標蓄電量の少なくともいずれか一方を増大する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項14】
自動運転走行機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合に、バックアップ電源によりバックアップ制御を行わせると共に、前記バックアップ電源の蓄電量が充電開始閾値以下に減少すると、前記バックアップ電源の充電を開始させ、目標蓄電量に達すると充電を終了させる電源制御装置のコントローラが、
前記車両の状況または前記車両の周辺状況が、前記バックアップ電源によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況である場合に、前記バックアップ電源の蓄電量を増大させる促進制御を実行する
電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電源制御装置および電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バックアップ電源を備えた自動運転車両の電源制御装置は、自動運転走行中に、メイン電源が失陥するとバックアップ電源によってFOP(フェイルオペレーション)制御を行う。このとき、バックアップ電源の蓄電量が少ない場合は、FOP制御を最後まで完了できないため、バックアップ電源の蓄電量が低下すると充電を行う必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、電源制御装置は、バックアップ電源の充電を頻繁に行うとバックアップ電源の劣化が早まる。そのため、電源制御装置は、バックアップ電源の充電開始閾値はできるだけ低く設定し、バックアップ電源が充電開始閾値を下回ると充電目標閾値まで充電することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電源制御装置は、例えば、渋滞や最寄の停車場所が遠いなど、車両の周辺状況によっては、FOP制御が完了するまでの時間が長くかかる場合があり、FOP開始時点のバックアップ電源の蓄電量ではFOP制御を完了できないおそれがある。このため、電源制御装置は、車両の周辺状況に応じたバックアップ電源の蓄電量を確保しておくことが望ましい。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、車両の状況または車両の周辺状況に応じたバックアップ電源の蓄電量を確保できる電源制御装置および電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る電源制御装置は、自動運転走行機能を有する車両に搭載される。電源制御装置は、コントローラを備える。コントローラは、メイン電源が失陥した場合に、バックアップ電源によりバックアップ制御を行わせると共に、前記バックアップ電源の蓄電量が充電開始閾値以下に減少すると、前記バックアップ電源の充電を開始させ、目標蓄電量に達すると充電を終了させる。前記コントローラは、前記車両の状況または前記車両の周辺状況が、前記バックアップ電源によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況である場合に、前記バックアップ電源の蓄電量を増大させる促進制御を実行する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様に係る電源制御装置および電源制御方法は、車両の周辺状況に応じたバックアップ電源の蓄電量を確保できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、対比例に係る電源制御装置のFOP制御を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る電源制御装置のFOP制御を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る電源制御装置の主コントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る電源制御装置の主コントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態に係る電源制御装置の主コントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、電源制御装置および電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施形態に係る電源制御装置は、電気自動車、ハイブリット自動車、または、内燃機関によって走行するエンジン自動車に搭載される。なお、実施形態に係る電源制御装置は、メイン電源とバックアップ電源とを備え、メイン電源に電源失陥が発生した場合に、バックアップ電源によってメイン電源をバックアップしてFOP(フェイルオペレーション)を実施する任意の装置に搭載されてもよい。
【0012】
[1.電源制御装置の構成]
図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す説明図である。
図1に示すように、実施形態に係る電源制御装置1は、メイン電源10と、外部装置100とに接続される。
【0013】
さらに、電源制御装置1は、第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105に接続される。また、電源制御装置1は、第1系統110と、第2系統120とを備える。
【0014】
第1系統110は、メイン電源10の電力を第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105に供給する。第2系統120は、後述するバックアップ電源20の電力を第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、および第3FOP負荷104に供給する。
【0015】
第1一般負荷101および第2一般負荷105は、例えば、ディスプレイ、エアコン、オーディオ、ビデオ、各種ライト、ドライブレコーダ、セキュリティ装置、通信装置、および各種センサなどを含む。
【0016】
第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、および第3FOP負荷104は、自動運転用の装置である。例えば、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、および第3FOP負荷104は、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダなどを含む。第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105は、電源制御装置1から供給される電力によって動作する。
【0017】
外部装置100は、例えば、自動運転制御装置である。外部装置100は、GPS(Global Positioning System)を備え、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、および第3FOP負荷104を動作させて、車両を自動運転走行制御する装置である。なお、外部装置100を自動運転制御装置とした場合、GPSの自車位置情報は図示せぬナビゲーション装置から入手してもよい。
【0018】
メイン電源10は、電源制御装置1がエンジン自動車に搭載される場合、発電機12と、鉛バッテリ(以下、「PbB11」と記載する)とを含む。なお、メイン電源10の電池は、PbB11以外の任意の2次電池であってもよい。
【0019】
発電機12は、例えば、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。発電機12は、発電した電力によるPbB11および後述するバックアップ電源20の充電を行う。また、発電機12は、第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105への電力供給を行う。
【0020】
メイン電源10は、電源制御装置1が電気自動車またはハイブリッド自動車に搭載される場合、DC/DCコンバータ(以下、「DCDC」と記載する)と、PbB11とを含む。この場合、DCDCは、発電機と、PbB11よりも電圧が高い高圧バッテリとに接続され、発電機および高圧バッテリの電圧を降圧して第1系統110に出力する。発電機は、例えば、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。高圧バッテリは、例えば、電気自動車やハイブリット自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0021】
また、電源制御装置1は、バックアップ電源20と、コントローラ3と、第1一般負荷101、第1FOP負荷102、第2FOP負荷103、第3FOP負荷104、および第2一般負荷105に電力を供給する複数の接続部と、DCDC22とを備える。
【0022】
具体的には、電源制御装置1は、第1接続部41、第2接続部42、第3接続部43、第4接続部44、第5接続部45、第6接続部46、第7接続部47、第8接続部48、第9接続部49、および第10接続部50を備える。
【0023】
第1接続部41は、第1系統110と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。なお、第1接続部41は、DCDCであってもよい。この場合、DCDCは、動作することによって第1系統110と第2系統120とを接続し、動作を停止することによって第1系統110と第2系統120との接続を切断する。
【0024】
第2接続部42は、第2系統120と第1FOP負荷102とを接続および切断可能なスイッチである。第3接続部43は、第2系統120と第2FOP負荷103とを接続および切断可能なスイッチである。第4接続部44は、第2系統120と第3FOP負荷104とを接続および切断可能なスイッチである。
【0025】
第5接続部45は、バックアップ電源20と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。DCDC22は、第5接続部45に対して並列接続となるように第2系統120に接続される。第6接続部46は、第1系統110と第1一般負荷101とを接続および切断可能なスイッチである。第7接続部47は、第1系統110と第1FOP負荷102とを接続および切断可能なスイッチである。第8接続部48は、第1系統110と第2FOP負荷103とを接続および切断可能なスイッチである。第9接続部49は、第1系統110と第2一般負荷105とを接続および切断可能なスイッチである。第10接続部50は、第1系統110と第3FOP負荷104とを接続および切断可能なスイッチである。
【0026】
バックアップ電源20は、メイン電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。バックアップ電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。なお、バックアップ電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0027】
また、電源制御装置1は、第1電圧センサ51と第2電圧センサ52とを備える。第1電圧センサ51は、第1系統110に設けられ、第1系統110の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。第2電圧センサ52は、第2系統120に設けられ、第2系統120の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。
【0028】
コントローラ3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記載する)や各種の回路を含む。なお、コントローラ3は、その一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0029】
コントローラ3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、第1~第10接続部41~50およびDCDC22の動作を制御する。
【0030】
[2.電源制御装置の動作例]
次に、
図2~
図4を参照して、電源制御装置の動作例について説明する。
図2~
図4は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【0031】
[2.1.通常時動作]
コントローラ3は、IGがオンされた状態で第1系統110および第2系統120に地絡が発生していない通常時の停車中、手動運転中、または自動運転中には、
図2に示すように、複数の接続部を制御する。
【0032】
具体的には、コントローラ3は、第1~第4,第6~第10接続部41~44,46~50をオンし、第5接続部45をオフする。これにより、電源制御装置1は、メイン電源10から第1~第2一般負荷101,105および第1~第3FOP負荷102~104に電力を供給できる。
【0033】
[2.2.電源制御装置の地絡発生時動作]
例えば、
図3に示すように、電源制御装置1では、第1系統110で地絡200が発生すると、地絡点に向けて過電流が流れるため、第1電圧センサ51によって検出される電圧が地絡閾値以下になる。
【0034】
このため、コントローラ3は、第1電圧センサ51によって検出される電圧が所定時間継続して地絡閾値以下になった場合に、第1系統110の地絡200を検知して第1接続部41をオフし、第5接続部45をオンし、第6~第10接続部46~50をオフする。
【0035】
これにより、電源制御装置1は、第1系統110で地絡200が発生しても、バックアップ電源から第1~第3FOP負荷102~104に電力を供給するFOP制御を行うことができる。
【0036】
その後、コントローラ3は、第1系統110で地絡200が発生し、FOP制御へ移行したことを外部装置100に通知する。これにより、外部装置100は、バックアップ電源20から供給される電力によって第1~第3FOP負荷102~104を動作させて、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0037】
[2.3.充電時動作]
コントローラ3は、LiB21の蓄電量が低下した場合に、バックアップ電源20を充電する。
図4に示すように、コントローラ3は、例えば、バックアップ電源20からSOC(State Of Charge)取得ライン23を介して、定期的にLiB21のSOCを取得し、LiB21のSOCが65%以下まで低下すると、DCDC22を降圧動作させる。そして、コントローラ3は、メイン電源10から第1接続部41およびDCDC22を介してバックアップ電源20に電力を供給してバックアップ電源20を充電する。
【0038】
[3.充電制御]
電源制御装置1は、自動運転走行中に、メイン電源10が失陥するとバックアップ電源20によってFOP制御を行うが、このとき、バックアップ電源20の蓄電量が少ない場合、FOP制御を最後まで完了できない。このため、コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が低下すると充電を行う。
【0039】
ただし、コントローラ3は、バックアップ電源20の充電を頻繁に行うとLiB21の劣化が早まる。そのため、コントローラ3は、バックアップ電源20の充電開始閾値はできるだけ低く設定し、バックアップ電源20が充電開始閾値を下回ると充電目標閾値まで充電することが望ましい。
【0040】
しかしながら、コントローラ3は、例えば、渋滞や最寄の停車場所が遠いなど、車両の周辺状況によっては、FOP制御が完了するまでの時間が想定した時間より長くかかる場合があり、FOP開始時点のバックアップ電源20の蓄電量ではFOP制御を完了できないおそれがある。FOP制御の完了とは、例えば、車両を安全に停止させる場所で停止させることである。
【0041】
ここで、
図5を参照して、対比例に係る電源制御装置のFOP制御の一例について説明する。
図5は、対比例に係る電源制御装置のFOP制御を示す説明図である。対比例に係るFOP制御では、バックアップ電源20のSOC(以下、単に「SOC」と記載する)65%が充電開始閾値、SOC80%が目標蓄電量(充電終了閾値)、SOC60%が自動運転許可閾値であるものとして説明する。
【0042】
対比例に係る電源制御装置は、SOCが65%まで低下すると、バックアップ電源20の充電を開始する。対比例に係る電源制御装置は、SOCが80%まで回復すると、充電を終了する。外部装置100は、SOCが60%以上であれば自動運転を許可する。外部装置100は、SOCが自動運転許可閾値以上ある状態で自動運転開始ボタンが操作されると、自動運転を開始する。
【0043】
図5に示すように、バックアップ電源20のSOCは、メイン電源10が失陥していない時刻t11より以前でも、例えば、自然放電などによって徐々に低下する。ここで、時刻t11において、例えば、メイン電源10の失陥による車両異常が発生することがある。
【0044】
対比例に係る電源制御装置は、例えば、自動運転中に時刻t11で第1系統110に地絡などの車両異常が発生した場合、FOP制御の開始によりバックアップ電源20の電力が消費され、時刻t13でバックアップ電源20のSOCが0%になるまでFOPが継続可能である。すなわち、
図5に示す例では、時刻t11~t13がFOP可能時間になる。
【0045】
なお、バックアップ電源20の電力をSOCが0%になるまで使い切ると、バックアップ電源20の劣化が進む場合ある。バックアップ電源20の劣化を防止する場合、電源制御装置は、電力供給可能な下限値を例えば20%に定め、20%以下になるとバックアップ電源20の電力を停止させる。このように、バックアップ電源20の電力供給可能な下限値を定めると、下限値以下の電力を利用できないため、その分FOP可能時間は短くなるが、ここでは、バックアップ電源20のSOCが0%になるまで使い切ることとして説明を続ける。
【0046】
一般に、電源制御装置は、バックアップ電源20のSOCが自動運転開始閾値以上であれば、地絡が発生した場合にFOP想定時間(例えば20秒)を確保するように設計されている。よって、時刻t11~t13は、20秒以上である。
【0047】
そのため、対比例に係る電源制御装置は、通常時であれば、時刻t11で地絡が発生した場合、FOP想定時間経過時の時刻t12でもSOCは残っており、FOPを完了させることができる。
【0048】
しかしながら、例えば、道路の渋滞など、周囲状況によってFOP完了が時刻t11~t14まで長引く場合、時刻t13でSOCが0%になるため、対比例に係る電源制御装置は、時刻t13~t14までFOPができなくなってしまう。
【0049】
そこで、コントローラ3は、メイン電源10が失陥した場合に、バックアップ電源20によりバックアップ制御を行わせると共に、バックアップ電源20の蓄電量が充電開始閾値以下に減少すると、バックアップ電源20の充電を開始させ、目標蓄電量に達すると充電を終了させる。
【0050】
そして、コントローラ3は、車両の状況または車両の周辺状況が、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況である場合に、バックアップ電源20の蓄電量を増大させる促進制御を実行する。これにより、電源制御装置1は、車両の周辺状況に応じたバックアップ電源20の蓄電量を確保できる。
【0051】
例えば、コントローラ3は、車両の周辺状況として、外部装置100から道路の渋滞情報、および、地図情報を取得する。そして、コントローラ3は、外部装置100から取得する情報に基づいて、道路が渋滞している状況、または、車両を安全に停止させる場所(以下、退避場所という)が比較的近くにない状況など、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況か否かを判定する。
【0052】
具体的には、自車両の進行方向前方の所定距離以内(例えば5Km以内)で渋滞が発生している場合や、退避場所が所定範囲(例えば進行方向1Km)以内にない場合は、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況であると判定し促進制御を実行する。
【0053】
バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況とは、言い換えると、バックアップ電源20によるFOP完了までの時間が予め想定した時間(例えば20秒)を超える状況である。
【0054】
そのため、コントローラ3は、道路が渋滞している状況、および退避場所までの距離の少なくとも1つ以上の情報を基にFOP完了までの時間を予想し、その予想時間が予め想定した時間(例えば20秒)を超える場合にバックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況であると判断し、促進制御を実行してもよい。
【0055】
その場合、コントローラ3は、現在のバックアップ電源20のSOCを基にFOP可能時間を推定する。このFOP可能時間は、交通量の少ない道路でFOPを行った場合の時間として実験等により予め定められた時間である。コントローラ3は、渋滞場所までの距離や退避場所までの距離に応じて補正係数(1.0以上)を算出する。コントローラ3は、推定したFOP可能時間に補正係数をかけてFOP完了までの時間(以下、FOP完了予想時間という場合がある)を予想する。補正係数は、例えば、初期値を1.0とされる。コントローラ3は、自車両の進行方向前方の所定距離以内(例えば5Km以内)で渋滞が発生している場合は、補正係数に例えば0.2を加算し、退避場所が所定範囲(例えば進行方向1Km)以内にない場合は、補正係数に例えば0.2を加算することで、最終の補正係数を算出する。
【0056】
このように、車両の周辺状況として、道路が渋滞している場合、または、退避場所が比較的近くにない場合は、バックアップ電源20の蓄電量を予め確保でき、メイン電源10が失陥した場合でも、確実にFOPを完了させることができる。
【0057】
また、コントローラ3は、車両の状況として、自動運転用のアクチュエータの劣化度合、バックアップ電源20の劣化度合、および車両の運転者の運転習熟度を取得する。そして、コントローラ3は、それらの情報に基づいて、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況か否かを判定する。
【0058】
具体的には、自動運転用のアクチュエータの劣化度合が大きい場合は、アクチュエータの駆動に、劣化度合が小さい場合に比べより多くの電力を必要とする。よって、自動運転用のアクチュエータの劣化度合が大きい場合は、FOP可能時間が短くなる。そのため、コントローラ3は、自動運転用のアクチュエータの劣化度合に応じて促進制御を実行する。より具体的には、コントローラ3は、自動運転用のアクチュエータの劣化度合を外部装置100から取得し、劣化度合いが所定値以上の場合(劣化度大)は、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況であると判断し、促進制御を実行する。これにより、自動運転用のアクチュエータの劣化度合が大きい場合は、予めバックアップ電源20の蓄電量を増加させることができるため、メイン電源10が失陥した場合に確実にFOPを完了させることができる。
【0059】
なお、自動運転用のアクチュエータとしてステアリングモータ等複数のアクチュエータがある場合は、コントローラ3は、最も劣化度合いの大きいアクチュエータの劣化度合いに基づき促進制御を実行することができる。あるいは、コントローラ3は、各アクチュエータの劣化度合いの合算値が所定値以上の場合に促進制御を実行してもよい。
【0060】
また、バックアップ電源20の劣化度合が大きい場合は、劣化度合が小さい場合に比べ、同じSOC値であっても供給できる電力量は少なくなる。よって、バックアップ電源20の劣化度合が大きい場合は、FOP可能時間が短くなる。そのため、コントローラ3は、バックアップ電源20の劣化度合に応じて促進制御を実行する。より具体的には、コントローラ3は、バックアップ電源20の内部抵抗を測定して劣化度合いを測定し、劣化度合いが所定値以上の場合(劣化度大)は、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況であると判断し、促進制御を実行する。これにより、バックアップ電源20の劣化度合が大きい場合は、予めバックアップ電源20の蓄電量を増加させることができるため、メイン電源10が失陥した場合に確実にFOPを完了させることができる。
【0061】
また、メイン電源10が失陥した場合、運転者が手動で退避場所まで運転して車両を停止させることでFOPを完了させる場合がある。このとき、車両の運転者の運転習熟度が低い場合は、運転習熟度が高い運転者に比べ、車線変更等に手間取りFOPの完了までに時間を要する。そのため、コントローラ3は、運転者の運転習熟度に応じて促進制御を実行する。より具体的には、コントローラ3は、運転者の運転習熟度を外部装置100から取得し、運転習熟度が所定値以下の場合(運転習熟度小)は、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況であると判断し、促進制御を実行する。これにより、運転者の運転習熟度が低い場合は、予めバックアップ電源20の蓄電量を増加させることができるため、メイン電源10が失陥した場合に確実にFOPを完了させることができる。
【0062】
なお、自動運転が許可されている自動運転可能エリア(例えば、高速道路、自動車専用道路等)でのみ自動運転を行う場合は、自車両の周辺に自動運転可能エリアがなければ、促進制御を行うことでバックアップ電源20の劣化を早めてしまう恐れがある。そのため、コントローラ3は、車両の進行方向の第2の所定距離(例えば5Km)以内に自動運転可能エリアがある場合に、前述した促進制御を実行してもよい。これにより、バックアップ電源20の劣化を抑えつつ、メイン電源10が失陥した場合に確実にFOPを完了させることができる。
【0063】
コントローラ3は、バックアップ制御の完了に支障をきたす状況であると判定した場合、充電開始閾値を増大させて促進制御を実行する。例えば、コントローラ3は、
図6に示すように、充電開始閾値をSOC65%からSOC70%まで増大させる。なお、充電開始閾値の増大量は、任意に設定変更が可能である。
【0064】
これにより、電源制御装置1は、FOP開始時点において、少なくともSOC70%の蓄電量をバックアップ電源20に確保できるため、対比例に比べてFOP可能時間を延ばすことができる。また、電源制御装置1は、バックアップ電源の充電を早めつつ、不要な充電を防止することでバックアップ電源20の劣化を防止できる。
【0065】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす度合いに応じて充電開始閾値を増大するように構成されてもよい。バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす度合いとは、前述した渋滞位置までの距離、退避場所までの距離、FOP完了予想時間、自動運転用のアクチュエータの劣化度合、バックアップ電源20の劣化度合、および車両の運転者の運転習熟度である。コントローラ3は、渋滞位置までの距離および退避場所までの距離が短いほど、バックアップ制御の完了に支障をきたす度合いが大きいと判断し充電開始閾値を増大する。また、コントローラ3は、FOP完了予想時間が長いほどバックアップ制御の完了に支障をきたす度合いが大きいと判断し充電開始閾値を増大する。また、コントローラ3は、自動運転用のアクチュエータの劣化度合やバックアップ電源20の劣化度合が大きいほどバックアップ制御の完了に支障をきたす度合いが大きいと判断し充電開始閾値を増大する。また、コントローラ3は、車両の運転者の運転習熟度が低いほどバックアップ制御の完了に支障をきたす度合いが大きいと判断し充電開始閾値を増大する。
【0066】
したがって、電源制御装置1は、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす度合に応じて、きめ細かなバックアップ電源20の充電を制御できるため、バックアップ電源20の劣化を抑えつつ、メイン電源10が失陥した場合に確実にFOPを完了させることができる。
【0067】
また、コントローラ3は、バックアップ制御の完了に支障をきたす状況であると判定した場合、バックアップ電源20の目標蓄電量を増大させて促進制御を実行する。例えば、コントローラ3は、
図6に示すように、目標蓄電量をSOC80%からSOC90%まで増大させる。なお、コントローラ3は、バックアップ電源20によるバックアップ制御の完了に支障をきたす度合に応じて、目標蓄電量を増大させてもよい。
【0068】
なお、目標蓄電量の増大量は、任意に設定変更が可能である。これにより、電源制御装置1は、対比例に比べてバックアップ電源20の蓄電量を増大することによって、FOP可能時間をさらに延ばすことができる。
【0069】
なお、コントローラ3は、車両の状況または車両の周辺状況に応じて、充電開始閾値および目標蓄電量の少なくともいずれか一方を増大する。例えば、コントローラ3は、道路が渋滞している状況、且つ、退避場所が比較的近くにない状況では、充電開始閾値および目標蓄電量の両方を増大させる。
【0070】
例えば、コントローラ3は、道路が渋滞している状況、または、車両を安全に停止させる場所が比較的近くにない状況では、充電開始閾値および目標蓄電量の一方を増大させる。これにより、電源制御装置1は、不要な充電を防止することでバックアップ電源20の劣化を防止しつつ、FOP可能時間を延ばすことができる。
【0071】
また、コントローラ3は、充電開始閾値を所定の許可閾値以上に設定し、バックアップ電源20の蓄電量が許可閾値以上の場合に、外部装置100による自動運転走行を許可する。これにより、電源制御装置1は、自動運転をいつでも開始できる範囲で充電制御を行うことができる。
【0072】
上記した充電制御を行うことによって、
図6に示すように、コントローラ3は、時刻t1で周辺状況によりFOPが想定時間より長引くと予想した場合、充電開始閾値を65%から70%に引き上げる。これにより、従来であればまだ充電開始に至らなかったものが、電源制御装置1によれば、時刻t1から充電が開始され、より長いFOP時間を確保できる。同時に、電源制御装置1は、充電終了閾値も80%から90%に引き上げ、時刻t2まで充電を継続するので、一層長いFOP時間を確保できる。
【0073】
これにより、電源制御装置1は、時刻t3で地絡が発生した場合、SOCが0%になる時刻t5までの時刻t3~t5の時間がFOP可能時間となり、時刻t3~t4までのFOP必要時間(混雑時など)以上の時間を確保できる。
【0074】
したがって、電源制御装置1は、例えば、道路が渋滞している状況、または、車両を安全に停止させる場所が比較的近くにない状況によって、対比例に係る電源制御装置では、バックアップ制御の完了に支障をきたす状況であっても、FOP制御を完了できる。
【0075】
[4.コントローラが実行する処理]
次に、
図7~
図9を参照して、電源制御装置1のコントローラ3が実行する処理について説明する。
図7~
図9は、実施形態に係る電源制御装置のコントローラ3が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0076】
なお、通常時動作、地絡発生時動作、および充電時動作にコントローラ3が実行する制御処理について、
図2~
図4を参照して既に説明したため、ここでは処理の説明を省略し、バックアップ電源20の充電に関する処理の詳細について説明する。
【0077】
コントローラ3は、車両のIGがオンされている期間に
図7に示す処理を繰り返し実行する。
図7に示すように、コントローラ3は、IGがオンされると、まず、メイン電源10が失陥したか否かを判定する(ステップS101)。例えば、コントローラ3は、第1系統110の地絡200を検知した場合に、メイン電源10が失陥したと判定する。
【0078】
コントローラ3は、メイン電源10が失陥したと判定した場合(ステップS101,Yes)、バックアップ電源20によりFOPを行い(ステップS109)、今回の処理を終了する。コントローラ3は、メイン電源10が失陥していないと判定した場合(ステップS101,No)、充電開始閾値を許可閾値以上の値に設定する(ステップS102)。
【0079】
続いて、コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が許可閾値以上か否かを判定する(ステップS103)。コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が許可閾値以上でないと判定した場合(ステップS103,No)、処理をステップS105へ移す。
【0080】
コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が許可閾値以上であると判定した場合(ステップS103,Yes)、自動運転走行を許可し外部装置100である自動運転制御装置に許可通知を出力する(ステップS104)。換言すれば、ステップS104の許可通知が出力されない限り自動運転制御装置は自動運転制御を開始できない。コントローラ3は、次いでバックアップ電源20の蓄電量が充電開始閾値以下か否かを判定する(ステップS105)。
【0081】
コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が充電開始閾値以下でないと判定した場合(ステップS105,No)、今回の処理を終了する。コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が充電開始閾値以下であると判定した場合(ステップS105,Yes)、バックアップ電源20の充電を開始する(ステップS106)。
【0082】
続いて、コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が目標蓄電量に達したか否かを判定する(ステップS107)。コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が目標蓄電量に達していないと判定した場合(ステップS107,No)、バックアップ電源20の蓄電量が目標蓄電量に達するまで、ステップS107の判定処理を繰り返す。
【0083】
そして、コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が目標蓄電量に達したと判定した場合(ステップS107,Yes)、バックアップ電源20の充電を終了し(ステップS108)、今回の処理を終了する。
【0084】
また、コントローラ3は、
図7に示す処理と並行して、
図8に示す処理を繰り返し実行する。
図8に示すように、コントローラ3は、車両の状況、または、車両周辺の状況がFOPの完了に支障をきたすか否かを判定する(ステップS201)。
【0085】
コントローラ3は、車両の状況、または、車両周辺の状況がFOPの完了に支障をきたすと判定した場合(ステップS201,Yes)、促進制御処理を実行して(ステップS202)、今回の処理を終了する。促進制御処理の一例については、
図9を参照して後述する。
【0086】
コントローラ3は、車両の状況、または、車両周辺の状況がFOPの完了に支障をきたさないと判定した場合(ステップS201,No)、充電開始閾値を第1閾値(例えば65%)に設定する(ステップS203)。その後、コントローラ3は、目標蓄電量を第1蓄電量(例えば80%)に設定し(ステップS204)、今回の処理を終了する。
【0087】
また、
図9に示すように、コントローラ3は、促進制御処理を開始すると、充電開始閾値を第1閾値よりも大きな第2閾値(例えば70%)に設定し(ステップS301)、目標蓄電量を第1蓄電量よりも大きい第2蓄電量(例えば90%)に設定し(ステップS302)、今回の処理を終了する。なお、コントローラ3は、ステップS202,S203の処理のうち、いずれか一方を省略するように構成されてもよい。なお、ステップS301、ステップS302では、前述したとおり、FOPの完了に支障をきたす度合いに応じて複数の閾値の中から1つを選択してもよい。
【0088】
[5.付記]
付記として、本発明の特徴を以下の通り示す。
(1)
自動運転走行機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合に、バックアップ電源によりバックアップ制御を行わせると共に、前記バックアップ電源の蓄電量が充電開始閾値以下に減少すると、前記バックアップ電源の充電を開始させ、目標蓄電量に達すると充電を終了させるコントローラを備えた電源制御装置であって、
前記コントローラは、
前記車両の状況または前記車両の周辺状況が、前記バックアップ電源によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況である場合に、前記バックアップ電源の蓄電量を増大させる促進制御を実行する、
電源制御装置。
(2)
前記コントローラは、前記車両の進行方向の所定距離以内に渋滞情報がある場合、前記促進制御を実行する、
前記(1)に記載の電源制御装置。
(3)
前記コントローラは、前記車両を安全に停止させる場所が所定範囲以内にない場合、前記促進制御を実行する、
前記(1)に記載の電源制御装置。
(4)
前記コントローラは、前記車両の進行方向にある渋滞情報および/または前記車両を安全に停止させる場所までの距離に基づき、バックアップ制御が完了するまでの時間を予想し、前記予想した時間が所定時間を超える場合、前記促進制御を実行する、
前記(1)に記載の電源制御装置。
(5)
前記コントローラは、前記車両の自動運転用のアクチュエータの劣化度合に応じて前記促進制御を実行する、
前記(1)に記載の電源制御装置。
(6)
前記コントローラは、前記バックアップ電源の劣化度合に応じて前記促進制御を実行する、
前記(1)に記載の電源制御装置。
(7)
前記コントローラは、前記車両の運転者の運転習熟度に応じて前記促進制御を実行する、
前記(1)に記載の電源制御装置。
(8)
前記コントローラは、前記車両の進行方向の第2の所定距離以内に自動運転が許可されている自動運転可能エリアがある場合に前記促進制御を実行する、
前記(2)~(7)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(9)
前記コントローラは、
前記充電開始閾値を増大させて前記促進制御を実行する、
前記(1)~(8)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(10)
前記コントローラは、
前記充電開始閾値を所定の許可閾値以上に設定し、前記バックアップ電源の蓄電量が前記許可閾値以上の場合に、自動運転走行を許可する、
前記(1)~(9)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(11)
前記コントローラは、
前記目標蓄電量を増大させて前記促進制御を実行する、
前記(1)~(10)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(12)
前記コントローラは、
前記バックアップ電源によるバックアップ制御の完了に支障をきたす度合いに応じて前記充電開始閾値を増大する、
前記(2)~(7)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(13)
前記コントローラは、
前記車両の状況または前記車両の周辺状況に応じて、前記充電開始閾値および前記目標蓄電量の少なくともいずれか一方を増大する、
前記(1)~(12)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(14)
自動運転走行機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合に、バックアップ電源によりバックアップ制御を行わせると共に、前記バックアップ電源の蓄電量が充電開始閾値以下に減少すると、前記バックアップ電源の充電を開始させ、目標蓄電量に達すると充電を終了させる電源制御装置のコントローラが、
前記車両の状況または前記車両の周辺状況が、前記バックアップ電源によるバックアップ制御の完了に支障をきたす状況である場合に、前記バックアップ電源の蓄電量を増大させる促進制御を実行する
電源制御方法。
【0089】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 電源制御装置
10 メイン電源
11 PbB
12 発電機
20 バックアップ電源
21 LiB
3 コントローラ
41 第1接続部
42 第2接続部
43 第3接続部
44 第4接続部
45 第5接続部
46 第6接続部
47 第7接続部
48 第8接続部
49 第9接続部
50 第10接続部
51 第1電圧センサ
52 第2電圧センサ
100 外部装置
101 第1一般負荷
102 第1FOP負荷
103 第2FOP負荷
104 第3FOP負荷
105 第2一般負荷
110 第1系統
120 第2系統
200 地絡