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特開2024-43685ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043685
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7084 20060101AFI20240326BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240326BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K31/7084
A61P27/02
A61K9/08
A61J1/05 313H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148817
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】桃川 雄介
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047BB13
4C047CC04
4C047CC24
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD26
4C076DD51
4C076EE16
4C076FF14
4C076FF17
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA10
4C086EA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA03
4C086ZA33
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた製剤安定性を有するジクアホソル点眼剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法であって、前記眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌された点眼容器に収容することを含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法であって、前記眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌された点眼容器に収容することを含む、方法。
【請求項2】
点眼容器がマルチドーズ点眼容器である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マルチドーズ点眼容器が2ピース点眼容器または3ピース点眼容器である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
マルチドーズ点眼容器がPreservative Free MultiDose点眼容器である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
点眼容器が樹脂製である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
点眼容器がポリエチレン製である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ジクアホソルまたはその塩の濃度が、1~5%(w/v)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ジクアホソルまたはその塩の濃度が、3%(w/v)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
眼科用組成物の添加剤として緩衝剤、粘稠化剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤およびpH調節剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物であって、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されている、眼科用組成物。
【請求項11】
ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物が、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されている、眼科用医薬製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジクアホソルはP1,P4-ジ(ウリジン-5’)四リン酸またはUp4Uとも呼ばれるプリン受容体アゴニストであり、特許第3652707号公報(特許文献1)に開示されているように、涙液分泌促進作用を有することが知られている。また、Cornea,23(8),784-792(2004)(非特許文献1)には、ジクアホソル四ナトリウム塩を含有する点眼液を点眼投与することにより、ドライアイ患者の角膜上皮障害が改善したことが記載されている。実際、我が国においては、3%(w/v)の濃度のジクアホソル四ナトリウム塩を含有する点眼液がドライアイ治療薬として使用されている(製品名:ジクアス(登録商標)点眼液3%)。
【0003】
一方、点眼剤(点眼液)の製剤設計においては、優れた製剤安定性が求められる。例えば、保存時における経時的なpH変化は、製剤の品質低下につながるおそれもあることから問題となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3652707号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cornea,23(8),784-792(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた製剤安定性を有するジクアホソル点眼剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物を、ガンマ線滅菌を施した容器に充填すると、pHが経時的に大きく低下するという課題を見出した。上記課題を解決するために鋭意研究した結果、意外にも、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物を、エチレンオキサイドガス滅菌容器に収容すると、pHの低下を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。具体的に、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1)ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法であって、前記眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌された点眼容器に収容することを含む、方法。
(2)点眼容器がマルチドーズ点眼容器である、(1)に記載の方法。
(3)マルチドーズ点眼容器が2ピース点眼容器または3ピース点眼容器である、(2)に記載の方法。
(4)マルチドーズ点眼容器がPreservative Free MultiDose点眼容器である、(2)または(3)に記載の方法。
(5)点眼容器が樹脂製である、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)点眼容器がポリエチレン製である、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)ジクアホソルまたはその塩の濃度が、1~5%(w/v)である、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)ジクアホソルまたはその塩の濃度が、3%(w/v)である、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9)眼科用組成物の添加剤として緩衝剤、粘稠化剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤およびpH調節剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、(1)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10)ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物であって、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されている、眼科用組成物。
(11)ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物が、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されている、眼科用医薬製品。
【0009】
本発明は、更に以下にも関する。
【0010】
(12)ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法であって、前記眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌点眼容器本体に収容する工程を含む、方法。
(13)眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法であって、前記眼科用組成物がジクアホソルまたはその塩を含有し、かつ、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されることを特徴とする、方法。
(14)ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌容器に収容することを含む、眼科用医薬製品の製造方法。
【0011】
なお、前記(1)から(14)の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制することができる。このため、優れた製剤安定性を有するジクアホソル点眼剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに特に限定されない。
【0014】
[pH低下抑制方法]
本発明の方法は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法であり、本方法は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌された点眼容器に収容することを含む。本発明の方法は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌された点眼容器に収容することを特徴とし、その他の工程、条件等は特に制限されない。
【0015】
<眼科用組成物>
本発明において、眼科用組成物は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物である。
【0016】
ジクアホソルは、下記化学構造式で示される化合物である。
【化1】
【0017】
「ジクアホソルの塩」としては、医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などとの金属塩;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩;酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2-エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩;臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩;臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩;アンモニアとの塩;トリエチレンジアミン、2-アミノエタノール、2,2-イミノビス(エタノール)、1-デオキシ-1-(メチルアミノ)-2-D-ソルビトール、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、プロカイン、N,N-ビス(フェニルメチル)-1,2-エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0018】
本発明において、「ジクアホソルまたはその塩」には、ジクアホソル(フリー体)またはその塩の水和物および有機溶媒和物も含まれる。
【0019】
ジクアホソルまたはその塩に、結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体および結晶多形群(結晶多形システム)も本発明の範囲に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それらの結晶の製造、晶出、保存などの条件および状態により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形およびその過程全体を意味する。
【0020】
本発明の「ジクアホソルまたはその塩」として好ましいのはジクアホソルのナトリウム塩であり、下記化学構造式で示されるジクアホソル四ナトリウム塩(以下、単に「ジクアホソルナトリウム」ともいう)が特に好ましい。
【化2】
【0021】
ジクアホソルまたはその塩については、特表2001-510484号公報に開示された方法などにより製造することができる。
【0022】
本発明において、眼科用組成物は、ジクアホソルまたはその塩以外の有効成分を含有することもできるが、好ましくは、ジクアホソルまたはその塩を唯一の有効成分として含有する。
【0023】
眼科用組成物のジクアホソルまたはその塩の濃度は、例えば、0.1~10%(w/v)であり、1~10%(w/v)であることが好ましく、1~5%(w/v)であることがより好ましく、3%(w/v)であることが特に好ましい。
【0024】
本発明における眼科用組成物は、必要に応じて添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、粘稠化剤、pH調節剤等が挙げられる。これらは、それぞれ1種単独または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
眼科用組成物には、医薬品の添加物として使用可能な緩衝剤を配合することができる。緩衝剤の例としては、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、炭酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモール等、或いはそれらの水和物が挙げられる。
【0026】
リン酸塩の例としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、無水リン酸一水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物(リン酸水素二ナトリウム十二水和物)、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、ホウ酸の塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられ、クエン酸塩の例としては、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等が挙げられ、酢酸塩の例としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、炭酸塩の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、酒石酸塩の例としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。
【0027】
添加物として使用可能な緩衝剤としては、中でも、リン酸水素ナトリウム水和物が特に好ましい。
【0028】
本発明の医薬組成物に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類等により適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.1~2%(w/v)がさらに好ましく、0.2~1%(w/v)が特に好ましい。
【0029】
眼科用組成物には、医薬品の添加物として使用可能な等張化剤を適宜配合することができる。等張化剤の例としては、イオン性等張化剤や非イオン性等張化剤等が挙げられる。イオン性等張化剤の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、塩化ナトリウムが好ましい。非イオン性等張化剤の例としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられ、マンニトールが好ましい。中でも、塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0030】
眼科用組成物に等張化剤を配合する場合の等張化剤の含有量は、等張化剤の種類等により適宜調整することができるが、0.01~10%(w/v)が好ましく、0.05~8%(w/v)がより好ましく、0.1~5%(w/v)がさらに好ましく、0.2~1%(w/v)が特に好ましい。
【0031】
眼科用組成物には、医薬品の添加物として使用可能な安定化剤を適宜配合することができる。安定化剤の例としては、エデト酸又はその塩、クエン酸又はその塩が挙げられる。安定化剤の例としては、エデト酸、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム(以下、エデト酸ナトリウムともいう)、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。中でも、エデト酸二ナトリウムが好ましく、エデト酸二ナトリウム二水和物(以下、エデト酸ナトリウム水和物ともいう)が特に好ましい。
【0032】
眼科用組成物に安定化剤を配合する場合の安定化剤の含有量は、安定化剤の種類等により適宜調整することができるが、0.0001~3%(w/v)が好ましく、0.0005~0.5%(w/v)がより好ましく、0.001~0.2%(w/v)がさらに好ましく、0.01~0.05%(w/v)が特に好ましい。
【0033】
眼科用組成物には、医薬品の添加物として使用可能な防腐剤を適宜配合することができる。防腐剤の例としては、硝酸銀などの銀塩、ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)、ベンザルコニウム臭化物(臭化ベンザルコニウム)、ベンゼトニウム塩化物(塩化ベンゼトニウム)、クロルヘキシジングルコン酸塩、ホウ酸、ホウ砂、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、塩化ポリドロニウム、塩酸ポリヘキサニド等が挙げられる。
【0034】
眼科用組成物に防腐剤を配合する場合の防腐剤の含有量は、防腐剤の種類等により適宜調整することができるが、0.0001~3%(w/v)が好ましく、0.0005~1%(w/v)がより好ましく、0.0007~1%(w/v)がさらに好ましく、0.001~0.1%(w/v)が特に好ましい。
【0035】
眼科用組成物には、医薬品の添加物として使用可能な粘稠化剤を適宜配合することができる。粘稠化剤の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。中でも、ポリビニルピロリドン(PVP)が特に好ましい。
【0036】
眼科用組成物に粘稠化剤を配合する場合の粘稠化剤の含有量は、粘稠化剤の種類等により適宜調整することができるが、0.005~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.1~3%(w/v)がさらに好ましく、0.3~2%(w/v)が特に好ましい。
【0037】
眼科用組成物には、医薬品の添加物として使用可能なpH調節剤を適宜配合することができる。pH調節剤の例としては、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、塩酸、水酸化ナトリウム、クエン酸が好ましい。中でも、塩酸および水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0038】
本発明における眼科用組成物は、製造時、目的のpHに適宜調整される。このpHは、眼科用製剤に許容される範囲内であればよく、通常pH4.0~9.5の範囲内が好ましく、pH5.0~8.5がより好ましく、pH6.0~8.0がさらに好ましく、pH7.5が特に好ましい。眼科用組成物のpHの調整は、適宜、上記のpH調節剤を添加することで調整できる。
【0039】
本発明において、「眼科用組成物」とは、眼疾患などの予防および/または治療に使用するための組成物のことをいう。その剤型としては、例えば点眼剤などが挙げられる。ここで点眼剤とは点眼液または点眼薬と同義であり、コンタクトレンズ用点眼剤も点眼剤の定義に含まれる。
【0040】
本組成物は、水を溶媒(基剤)とする水性の眼科用組成物であることが好ましく、水性点眼剤であることがより好ましい。
【0041】
本発明における眼科用組成物は、ジクアホソルまたはその塩を有効成分として含有していることから、「ドライアイの予防および/または治療」に使用することができる。
【0042】
ドライアイは「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視覚異常を伴う疾患」と定義づけられ、乾性角結膜炎(KCS)はドライアイに含まれる。また、本発明においては、ソフトコンタクトレンズ装用を原因とするドライアイ症状の発生もドライアイに含まれるものとする。
【0043】
ドライアイ症状には、眼乾燥感、眼不快感、眼疲労感、鈍重感、羞明感、眼痛、霧視(かすみ目)などの自覚症状の他、充血、角結膜上皮障害などの他覚所見も含まれる。
【0044】
ドライアイの病因については不明点も多いが、シェーグレン症候群;先天性無涙腺症;サルコイドーシス;骨髄移植による移植片対宿主病(GVHD:Graft Versus Host Disease);眼類天疱瘡;スティーブンス・ジョンソン症候群;トラコーマなどを原因とする涙器閉塞;糖尿病;角膜屈折矯正手術(LASIK:Laser(-assisted) in Situ Keratomileusis)などを原因とする反射性分泌の低下;meibom腺機能不全;眼瞼炎などを原因とする油層減少;眼球突出、兎眼などを原因とする瞬目不全または閉瞼不全;胚細胞からのムチン分泌低下;VDT作業などがその原因であると報告されている。
【0045】
本発明において、「ドライアイの予防および/または治療」とは、ドライアイに伴う病的症状および/または所見を予防および/または治療もしくは改善することと定義づけられ、ドライアイに伴う眼乾燥感、眼不快感、眼疲労感、鈍重感、羞明感、眼痛、霧視(かすみ目)などの自覚症状の予防および/または治療もしくは改善を意味するだけでなく、ドライアイに伴う充血、角結膜上皮障害などの予防および/または治療もしくは改善も含まれる。また、「ドライアイの予防および/または治療」には、ソフトコンタクトレンズ装用眼における涙液層の安定性の向上によってドライアイ症状を予防および/または治療もしくは改善せしめることも含まれる。なお、ドライアイ症状の予防および/または治療もしくは改善には、ドライアイ患者がソフトコンタクトレンズ装用することで悪化するに至ったドライアイ症状の予防および/または治療もしくは改善、ソフトコンタクトレンズ装用そのものにより発生するに至ったドライアイ症状の予防および/または治療もしくは改善をも意味する。
【0046】
本発明における眼科用組成物の用法は、剤形、投与すべき患者の症状の軽重、年令、体重、医師の判断などに応じて適宜変えることができるが、例えば、剤形として点眼剤を選択した場合には、1日1~10回、好ましくは1日2~8回、より好ましくは1日3~6回に分けて眼局所に投与することができる。
【0047】
本発明における眼科用組成物は、ソフトコンタクトレンズ用として、ソフトコンタクトレンズ装着時にも使用することができる。ソフトコンタクトレンズとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートを主成分とするコンタクトレンズまたはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズなどが挙げられる。
【0048】
本発明における眼科用組成物の適用対象となるソフトコンタクトレンズの種類については特に制限されるものでなく、また、イオン性または非イオン性、含水性または非含水性の別を問わない。例えば、繰り返し使用されるレンズの他、1日使い捨て用レンズ、1週間使い捨て用レンズ、2週間使い捨て用レンズなどの現在市販されているまたは将来市販されるすべてのソフトコンタクトレンズに適用可能である。
【0049】
<点眼容器>
本発明において、眼科用組成物は、エチレンオキサイドガス滅菌された点眼容器に収容される。点眼容器は、容器本体に眼科用組成物が充填された後、通常の方法で封をすることができる。点眼容器本体の上部にある首部の開口部には、例えば、中栓、キャップ等が装着される。
【0050】
本発明において、点眼容器は、エチレンオキサイドガスを用いて滅菌された点眼容器であれば、特に制限なく使用できる。例えば、マルチドーズ点眼容器を使用できる。
【0051】
「マルチドーズ点眼容器」とは、容器本体と当該容器本体に装着可能なキャップを備えた点眼容器であって、キャップの開栓、閉栓を自由に行うことができる点眼容器をいう。導出孔に逆流防止弁を有することで防腐効果を発揮する容器やフィルター付きのデラミボトルとすることで防腐効果を発揮する容器など、物理的な構造によって防腐剤を含まずとも防腐効果を発揮するPFMD(Preservative Free Multi Dose)点眼容器も、本発明におけるマルチドーズ点眼容器の例として挙げられる。当該マルチドーズ点眼容器には、通常一定期間使用するために複数回分の点眼液が収容されており、収容された点眼液を繰り返し複数回点眼することができる。
【0052】
マルチドーズ点眼容器は、一般に複数の部材から形成され、部材の数に特に制限はないが、好ましくは2部材(容器本体およびキャップ)からなる2ピース点眼容器または3部材(容器本体、中栓およびキャップ)からなる3ピース点眼容器である。なお、PFMD点眼容器の中には、初回開栓時まで、中栓(ノズル)およびキャップが一体化して1部材になっており、開栓後、中栓(ノズル)とキャップとが分離して2部材となる点眼容器があるが、本発明においては、このようなPFMD点眼容器は、容器本体、ノズル付きキャップの2部材からなる2ピース点眼容器(2ピースPFMD点眼容器)であるという。
【0053】
なお、本発明においては、点眼容器が複数の部材から形成される場合、容器本体がエチレンオキサイドガス滅菌されていれば、エチレンオキサイドガス滅菌された点眼容器であるという。本発明では、少なくとも容器本体が、エチレンオキサイドガス滅菌されていれば、その効果を得ることができる。中栓、キャップなどの容器本体以外の部材の滅菌方法に、特に制限はなく、通常の滅菌方法(ガンマ線滅菌、電子線滅菌、EOG滅菌、過酸化水素水滅菌、高圧蒸気滅菌など)を適用することができる。
【0054】
本発明において、点眼容器の素材には特に制限はなく、樹脂を使用することができ、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン-ポリエチレンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレンなどを使用することができる。またポリエチレンは、その密度によって分類される場合があり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。本発明の点眼容器の素材の好ましい例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレンコポリマー、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられ、より好ましい例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレンコポリマーなどが挙げられ、特に好ましい例として、ポリエチレンが挙げられる。ここで、プロピレン-エチレンコポリマーとは、エチレン成分を含有するプロピレン重合体であれば特に制限されないが、好ましくは、エチレン成分を10モル%以下含有するプロピレン重合体である。なお、点眼容器が複数の部材から形成される場合には、同一の素材による部材で形成されてもよく、異なる素材による部材で形成されてもよい。さらに、素材が部材の一部又は全部を構成し、またはコーティングしている場合であってもよい。点眼容器は、市販されているか、又は公知の方法で製造されるものを使用できる。点眼容器は、ブロー成形、インジェクション成形、インジェクションブロー成形などの一般的な製法により製造でき、その製法については特に限定されない。
【0055】
なお、本発明において、点眼容器の素材に言及し、「樹脂製」点眼容器、「ポリエチレン製」点眼容器などというとき、それは、少なくとも点眼容器本体の一部または全部が、その素材(樹脂、ポリエチレンなど)により形成されていることを意味する。
【0056】
本発明において、点眼容器は、エチレンオキサイドガスを用いて滅菌された点眼容器を使用するが、エチレンオキサイドガス滅菌は、通常のエチレンオキサイドガスを用いる点眼容器の滅菌方法で行うことができて、特に制限されるものではない。例えば、所定の温度、所定の相対湿度の下、所定の時間、点眼容器をエチレンオキサイドガスに曝すことによって、滅菌することができ、その後、必要に応じてエチレンオキサイドガスを除去するためにエアレーションを行うことができる。また、市販されている一般的なエチレンオキサイドガス滅菌された点眼容器を使用することができる。
【0057】
本発明において、エチレンオキサイドガス滅菌で使用されるガスは、エチレンオキサイドガスのみであっても、二酸化炭素などとの混合ガスであっても良い。混合ガスを用いる場合のエチレンオキサイドガスとそのほかのガスの割合は、体積比で、例えば、5:95~50:50であり、10:90~40:60が好ましく、15:85~30:70がより好ましく、20:80が特に好ましい。
【0058】
エチレンオキサイドガス滅菌の温度は、例えば、20~80℃が例示でき、好ましくは30~60℃である。
【0059】
エチレンオキサイドガス滅菌の相対湿度は、例えば、20~90%が例示でき、好ましくは30~80%である。
【0060】
エチレンオキサイドガス滅菌の時間は、例えば、1~10時間が例示でき、好ましくは2~5時間である。
【0061】
本発明において、エチレンオキサイドガス滅菌後、エアレーションは必ずしも実施する必要はないが、エアレーションを実施する場合は、例えば、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素を使用することができ、エアレーション時間は、好ましくは8時間以上、より好ましくは12時間以上、最も好ましくは24時間以上である。
【0062】
本発明において、点眼容器における残留エチレンオキサイド濃度は、例えば、0~10ppmであり、0~5ppmが好ましく、0~1ppmがより好ましく、0~0.5ppm以下がさらに好ましく、検出されないのが特に好ましい。残留エチレンオキサイド濃度は、日本医療用プラスチック協会「医療用具の残留エチレンオキサイドの定量法」に従って測定することができる。
【0063】
本発明において、点眼容器の容量は、通常、点眼容器として用いられる範囲にあれば特に制限されないが、0.2~32mLが好ましく、1~17mLがより好ましく、5~12mLがさらに好ましい。
【0064】
本発明において、点眼容器に収容される眼科用組成物の総量は、通常、点眼容器に収容される範囲にあれば特に制限されないが、0.2~30mLが好ましく、1~15mLがより好ましく、5~10mLがさらに好ましい。
【0065】
本発明において、「pHの低下を抑制」とは、一定期間の保存によって本発明の眼科用組成物のpHの低下が少ない又は無いことを意味する。例えば、40℃で1ヵ月保存したときにpHの低下率が2.3%未満、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.7%以下、さらに好ましくは1.4%以下、特に好ましくは1.1%以下である場合が挙げられる。
【0066】
また、本発明の一態様は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法であって、前記眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌点眼容器本体に収容する工程を含む、方法である。
【0067】
また、本発明の一態様は、眼科用組成物のpHの低下を抑制する方法であって、前記眼科用組成物がジクアホソルまたはその塩を含有し、かつ、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されることを特徴とする、方法である。
【0068】
[眼科用組成物]
本発明の眼科用組成物は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物であって、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されている、眼科用組成物である。このような眼科用組成物は、優れた製剤安定性を有する。なお、前述のpH低下抑制方法の説明が、本態様にも援用される。
【0069】
[眼科用医薬製品]
本発明の眼科用医薬製品は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物が、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されている、眼科用医薬製品である。このような眼科用医薬製品において、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物は、優れた製剤安定性を有する。なお、前述のpH低下抑制方法の説明が、本態様にも援用される。
【0070】
[眼科用医薬製品の製造方法]
本発明の眼科用医薬製品の製造方法は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌容器に収容することを含む、眼科用医薬製品の製造方法である。本発明の製造方法は、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物をエチレンオキサイドガス滅菌容器に収容することを特徴とし、それ以外の工程は特に制限されない。このような製造方法により製造された眼科用医薬製品において、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物は、優れた製剤安定性を有する。なお、前述のpH低下抑制方法の説明が、本態様にも援用される。
【実施例0071】
以下に、試験例(安定性試験)および製剤例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0072】
<安定性試験1>
容器の滅菌法の違いが、ジクアホソル含有点眼液のpHの安定性に与える影響について評価した。
【0073】
1.薬液の調製
注射用水に、ポリビニルピロリドン(PVP)、リン酸水素ナトリウム水和物、エデト酸ナトリウム水和物、塩化ナトリウムおよびジクアホソルナトリウムを下記表1に示す製剤処方の濃度となるように加え、撹拌して溶解させた後、水酸化ナトリウム試液または希塩酸を用いてpHを7.5に調整することで、薬液Aを調製した。なお、下記表1において各成分の配合量「%」は「%(w/v)」を意味する。
【0074】
【表1】
【0075】
2.点眼容器入りジクアホソル点眼液の調製
(実施例1)
薬液A(5mL)をエチレンオキサイドガス(EOG)滅菌されたポリエチレン(PE)製の点眼容器(2ピースPFMD点眼容器)本体に充填し、ノズル付キャップ(ガンマ線滅菌)を取り付けて密閉することで、実施例1の点眼容器入りジクアホソル点眼液を調製した。なお、点眼容器は、市販の滅菌済み点眼容器を使用した(以下、同様)。
【0076】
(比較例1)
薬液A(5mL)をガンマ線滅菌されたPE製の点眼容器(2ピースPFMD点眼容器)本体に充填し、ノズル付キャップ(ガンマ線滅菌)を取り付けて密閉することで、比較例1の点眼容器入りジクアホソル点眼液を調製した。
【0077】
3.試験方法
実施例1および比較例1の点眼容器入りジクアホソル点眼液を、それぞれ、アルミパウチでピロー包装し、40℃または60℃で保管した。容器に薬液を充填した直後、および1か月の保管後に、それぞれの薬液のpHを測定した。なお、pHの測定は、第十七改正 日本薬局方 一般試験法「2.54 pH測定法」に準じてpHメーターを用いて測定を行った。
【0078】
4.試験結果
開始時(充填直後)、40℃1か月保管後、60℃1か月保管後における薬液のpHを表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
また、下記式を用いてpHの低下率を算出した。40℃1か月保管後、60℃1か月保管後のpHの低下率を表3に示す。
pHの低下率={(充填直後の測定値-保管後の測定値)/(充填直後の測定値)}×100%
【0081】
【表3】
【0082】
表2および表3に示されるように、60℃1か月の保管条件において、比較例1では、薬液のpHは7.49から6.99に低下し、その低下率は6.7%と大きかった。これに対し、実施例1では、薬液のpHは7.45から7.13と比較的穏やかに低下し、その低下率は4.3%と比較的小さかった。また、40℃1か月の保管条件において、比較例1では、薬液のpHは7.49から7.18に低下し、その低下率は4.1%と比較的大きかった。これに対し、実施例1では、薬液のpHは7.45から7.36とほとんど低下せず、その低下率は1.2%と非常に小さかった。これらのことから、ジクアホソル含有点眼液は、ガンマ線滅菌を施した容器に充填した場合には、保管時、薬液のpHが経時的に大きく低下してしまい、製剤の安定性が不十分であるのに対し、EOG滅菌容器に充填した場合には、薬液のpHの低下が抑制され、製剤の安定性は向上することが示された。
【0083】
<安定性試験2>
点眼容器の種類やジクアホソルの有無が、ジクアホソル点眼液のpH安定性に与える影響について評価した。
【0084】
1.薬液の調製
薬液Aと同様の方法により薬液Bを調製した。また、注射用水に、ポリビニルピロリドン(PVP)、リン酸水素ナトリウム水和物、エデト酸ナトリウム水和物および塩化ナトリウムを下記表4に示す製剤処方の濃度となるように加え、撹拌して溶解させた後、水酸化ナトリウム試液または希塩酸を用いてpHを7.5に調整することで、薬液Cを調製した。なお、下記表4において各成分の配合量「%」は「%(w/v)」を意味する。
【0085】
【表4】
【0086】
2.点眼容器入りジクアホソル点眼液の調製
(実施例2)
薬液B(5mL)をエチレンオキサイドガス(EOG)滅菌されたポリエチレン(PE)製の点眼容器(2ピースPFMD点眼容器)本体に充填し、ノズル付キャップ(ガンマ線滅菌)を取り付けて密閉することで、実施例2の点眼容器入りジクアホソル点眼液を調製した。
【0087】
(実施例3)
薬液B(5mL)をEOG滅菌されたPE製の点眼容器(3ピースマルチドーズ点眼容器)本体に充填し、中栓(EOG滅菌)およびキャップ(EOG滅菌)を取り付けて密閉することで、実施例3の点眼容器入りジクアホソル点眼液を調製した。
【0088】
(比較例2)
薬液C(5mL)をEOG滅菌されたPE製の点眼容器(2ピースPFMD点眼容器)本体に充填し、ノズル付キャップ(ガンマ線滅菌)を取り付けて密閉することで、比較例2の点眼容器入りジクアホソル点眼液(基剤のみ)を調製した。
【0089】
3.試験方法
実施例2、実施例3および比較例2の点眼容器入りジクアホソル点眼液を、それぞれ、アルミパウチでピロー包装し、40℃で保管した。容器に薬液を充填した直後、および1か月の保管後に、それぞれの薬液のpHを測定した。なお、pHの測定は、安定性試験1と同様の方法により行った。
【0090】
4.試験結果
開始時(充填直後)、40℃1か月保管後のpHを表5に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
また、安定性試験1と同様の方法にて、pHの低下率を算出した。40℃1か月保管後のpHの低下率を表6に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
表5および表6に示されるように、EOG滅菌された容器本体に薬液を充填した実施例2(2ピース容器)および実施例3(3ピース容器)は、40℃1か月の保管条件において、薬液のpHの低下率がそれぞれ0.7%、1.1%と非常に小さかった。つまり、2ピース容器であっても、3ピース容器であってもEOG滅菌容器を使用することで、薬液のpHの低下が抑制され、製剤の安定性は向上することが示された。他方、ジクアホソルを含有しない基剤のみの薬液をEOG滅菌容器に充填した比較例2では、薬液のpHは7.48から7.31に低下した。そのpH低下率も2.3%であり、実施例2および3と比較して大きかった。つまり、ジクアホソルが、EOG滅菌容器におけるpH低下の抑制効果に寄与していることが示された。
【0095】
<製剤例>
以下に本発明の代表的な製剤例を示す。なお、下記表において各成分の配合量「%」は「%(w/v)」を意味する。「EOG」はエチレンオキサイドガスを意味し、「EB」は電子線を意味する。
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物のpHの低下を抑制することができる。このため、優れた製剤安定性を有するジクアホソル点眼剤を提供することができて有用である。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物であって、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されている、眼科用組成物。
【請求項2】
ジクアホソルまたはその塩を含有する眼科用組成物が、エチレンオキサイドガス滅菌点眼容器に収容されている、眼科用医薬製品。