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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043686
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H02J3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148819
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 彗
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G066KA06
(57)【要約】
【課題】システム全体としての電力制御を行いつつ、各電力制御装置の電力制御をより柔軟に行うことが可能な電力システムを提供する。
【解決手段】電力システムS1は、各々が接続される制御対象の出力電力を制御する複数の電力制御装置B1と、複数の電力制御装置B1に対して制御指令値を算出する算出部11と、算出部11が算出した制御指令値を変更後制御指令値に変更する変更部61と、を備える。算出部11が算出した制御指令値は、調整対象電力を目標電力にする第1目標を達成させるための値である。複数の電力制御装置B1は、少なくとも1つ以上の特定装置B2と、特定装置B2以外の通常装置B3を含む。変更後制御指令値は、第2目標を達成させるための値である。通常装置B3は、算出部11が算出した制御指令値に基づいて、出力電力を制御し、特定装置B2は、変更後制御指令値に基づいて、出力電力を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が接続される制御対象の出力電力を制御する複数の電力制御装置と、
前記複数の電力制御装置に対して制御指令値を算出する算出部と、
前記算出部が算出した制御指令値を変更後制御指令値に変更する変更部と、
を備え、
前記算出部が算出した制御指令値は、調整対象電力を目標電力にする第1目標を達成させるための値であり、
前記複数の電力制御装置は、前記第1目標と異なる第2目標を達成させるように制御される少なくとも1つ以上の特定装置と、当該特定装置以外の通常装置を含み、
前記変更後制御指令値は、前記第2目標を達成させるための値であり、
前記通常装置は、前記算出部が算出した制御指令値に基づいて、出力電力を制御し、
前記特定装置は、前記変更後制御指令値に基づいて、出力電力を制御する、電力システム。
【請求項2】
前記制御指令値は、前記複数の電力制御装置のうちの2つ以上に共通する誘導指令値であり、
前記算出部は、前記第1目標を達成させるための前記誘導指令値を算出し、
前記変更部は、前記算出部が算出した誘導指令値を変更後誘導指令値に変更する、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記複数の電力制御装置は、第1グループに属する複数の第1電力制御装置および第2グループに属する複数の第2電力制御装置を含み、
前記算出部が算出する誘導指令値は、前記複数の第1電力制御装置に対する共通の第1誘導指令値および前記複数の第2電力制御装置に対する共通の第2誘導指令値を含み、
前記変更部は、前記第1グループに前記特定装置が含まれる場合、前記第1誘導指令値を変更後第1誘導指令値に変更し、
前記第1グループの特定装置は、前記変更後第1誘導指令値に基づいて、出力電力を制御する、請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記変更部は、前記算出部が算出した第1誘導指令値を、前記第2目標を達成させるための補正アルゴリズムに従って補正することで、前記変更後第1誘導指令値に変更する、請求項3に記載の電力システム。
【請求項5】
前記変更部は、前記算出部が算出した第1誘導指令値の代わりに、前記算出部が算出した第2誘導指令値を、前記変更後第1誘導指令値として出力する、請求項3に記載の電力システム。
【請求項6】
前記複数の電力制御装置は、前記制御対象としての太陽電池の出力電力を制御する太陽光発電制御装置を含み、
前記変更部は、前記太陽光発電制御装置が前記特定装置である場合、前記太陽光発電制御装置の出力を前記太陽電池の発電量と一致させることを前記第2目標として、前記制御指令値を前記変更後制御指令値に変更する、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続された複数の電力装置を管理して、電力系統からの受電を制御する電力システムが普及しつつある。例えば、特許文献1および特許文献2には、複数の電力装置と処理装置(集中管理装置)とを備えた電力システムの一例が開示されている。処理装置は、所定の調整対象電力を目標電力に制御するための指標(誘導指令値)を算出する。各電力装置は、処理装置が算出した誘導指令値を用いて、分散的に出力電力を制御している。このとき、各電力装置は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力の目標値を算出する。そして、出力電力が当該目標値となるように、出力電力を制御する。このようにして、電力システムのエネルギー管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-170901号公報
【特許文献2】特開2020-150690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分散型電源が多様化しており、例えば特許文献2に記載の電力システムにおいては、太陽光パワーコンディショナ、蓄電池パワーコンディショナ、電気自動車の充電スタンド、および、発電機制御装置などの電力制御装置を備えている。これらの電力制御装置は、接続される分散型電源の種類に応じて出力特性が異なり、求められる電力制御も異なる。例えば、太陽光パワーコンディショナにおいては、太陽電池が発電した電力をできるだけ抑制することなく出力させるような電力制御を、求められることがある。また、電気自動車の充電スタンドにおいては、電気自動車をできるだけ放電させるような電力制御、あるいは電気自動車をできるだけ充電させるような電力制御を、求められることがある。つまり、システム全体として電力制御を行いつつ、各電力制御装置のより柔軟な電力制御が求められる。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、システム全体としての電力制御を行いつつ、各電力制御装置の電力制御をより柔軟に行うことが可能な電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供される電力システムは、各々が接続される制御対象の出力電力を制御する複数の電力制御装置と、前記複数の電力制御装置に対して制御指令値を算出する算出部と、前記算出部が算出した制御指令値を変更後制御指令値に変更する変更部と、を備え、前記算出部が算出した制御指令値は、調整対象電力を目標電力にする第1目標を達成させるための値であり、前記複数の電力制御装置は、前記第1目標と異なる第2目標を達成させるように制御される少なくとも1つ以上の特定装置と、当該特定装置以外の通常装置を含み、前記変更後制御指令値は、前記第2目標を達成させるための値であり、前記通常装置は、前記算出部が算出した制御指令値に基づいて、出力電力を制御し、前記特定装置は、前記変更後制御指令値に基づいて、出力電力を制御する。
【0007】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記制御指令値は、前記複数の電力制御装置のうちの2つ以上に共通する誘導指令値であり、前記算出部は、前記第1目標を達成させるための前記誘導指令値を算出し、前記変更部は、前記算出部が算出した誘導指令値を変更後誘導指令値に変更する。
【0008】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記複数の電力制御装置は、第1グループに属する複数の第1電力制御装置および第2グループに属する複数の第2電力制御装置を含み、前記算出部が算出する誘導指令値は、前記複数の第1電力制御装置に対する共通の第1誘導指令値および前記複数の第2電力制御装置に対する共通の第2誘導指令値を含み、前記変更部は、前記第1グループに前記特定装置が含まれる場合、前記第1誘導指令値を変更後第1誘導指令値に変更し、前記第1グループの特定装置は、前記変更後第1誘導指令値に基づいて、出力電力を制御する。
【0009】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記変更部は、前記算出部が算出した第1誘導指令値を、前記第2目標を達成させるための補正アルゴリズムに従って補正することで、前記変更後第1誘導指令値に変更する。
【0010】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記変更部は、前記算出部が算出した第1誘導指令値の代わりに、前記算出部が算出した第2誘導指令値を、前記変更後第1誘導指令値として出力する。
【0011】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記複数の電力制御装置は、前記制御対象としての太陽電池の出力電力を制御する太陽光発電制御装置を含み、前記変更部は、前記太陽光発電制御装置が前記特定装置である場合、前記太陽光発電制御装置の出力を前記太陽電池の発電量と一致させることを前記第2目標として、前記制御指令値を前記変更後制御指令値に変更する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の電力システムでは、算出部は、第1目標を達成させるための制御指令値を算出し、変更部は、算出部が算出した制御指令値を、第2目標を達成させるための変更後制御指令値に変更する。そして、通常装置は、算出部が算出した制御指令値に基づいて、出力電力を制御し、特定装置は、変更部が変更した変更後制御指令値に基づいて、出力電力を制御する。これにより、特定装置による出力電力の制御によって、第2目標が達成され、通常装置による出力電力の制御によって、第1目標が達成される。従って、本開示の電力システムによれば、システム全体としての電力制御を行いつつ、各電力制御装置の電力制御をより柔軟に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る電力システムの全体構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る電力システムの中継装置の動作例を示す模式図である。
図3】第2実施形態に係る電力システムの全体構成を示す図である。
図4】第2実施形態に係る電力システムの中継装置の動作例を示す模式図である。
図5】第2実施形態に係る電力システムの中継装置の他の動作例を示す模式図である。
図6】第3実施形態に係る電力システムの全体構成を示す図である。
図7】第3実施形態に係る電力システムの中継装置の動作例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の電力システムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下の説明において、同一あるいは類似の構成要素には、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。また、以下で説明する各実施形態および各変形例における各部の構成は、技術的な矛盾が生じない範囲において相互に組み合わせ可能である。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る電力システムS1の全体構成を示している。図1に示すように、電力システムS1は、処理装置A1、複数の電力制御装置B1、中継装置C1、検出装置D1および変圧器91を備える。なお、図1においては、電力ネットワークを太線で示し、通信ネットワークを破線で示している。本実施形態では、複数の電力制御装置B1は、複数の太陽光発電制御装置20および複数のEV用充放電制御装置30を含む。なお、図1に示す例とは異なり、太陽光発電制御装置20の数は1つでもよいし、EV用充放電制御装置30の数は1つでもよい。EVは、Electric Vehicleの略称である。複数の太陽光発電制御装置20の各々には、制御対象としての太陽電池29が接続されている。複数のEV用充放電制御装置30の各々には、制御対象としての電気自動車39が接続可能である。本開示において、電気自動車39とは、電動機を動力源として走行可能な自動車をいい、燃料電池車または内燃機関が併設された自動車(例えばプラグインハイブリッド車)などを含む。電動機は、電気自動車39に備えられた蓄電池に蓄積された電力によって動作する。
【0016】
電力システムS1は、接続点Tに接続され、電力系統Kに連系されている。電力システムS1は、電力系統Kから受電可能である。本実施形態では、電力システムS1は、電力系統Kに送電不可能(すなわち逆潮流できない)であるが、電力系統Kに送電可能(すなわち逆潮流できる)であってもよい。本開示において、電力系統Kから電力システムS1に電力が出力されているとき、接続点電力が負の値となるものとする。接続点電力とは、電力システムS1と電力系統Kとの接続点Tにおける電力のことである。電力システムS1は、電力系統Kから供給される電力、および、各電力制御装置B1に接続された制御対象から供給される電力を、接続点Tに接続された電力負荷Lに供給可能である。なお、電力システムS1に、電力負荷Lが接続されていなくてもよい。
【0017】
電力システムS1は、第1目標を達成させるように電力制御を行う。第1目標は、調整対象電力を目標電力にすることである。本実施形態では、調整対象電力として接続点電力を対象にする。つまり、電力システムS1は、調整対象電力としての接続点電力が目標電力となるように電力制御を行う。目標電力とは、調整対象電力の目標値(調整目標値)であり、本実施形態では、接続点電力の目標値である。さらに、電力システムS1は、少なくとも1つ以上の電力制御装置B1を対象に、第2目標を達成させるように電力制御を行う。以下では、第2目標を達成させるように制御される電力制御装置B1を「特定装置B2」といい、特定装置B2以外の電力制御装置B1を「通常装置B3」という。第2目標としては、例えば、複数の太陽光発電制御装置20の出力電力の合計値と複数の太陽電池29の発電量の合計値と一致させる制御目標がある。この場合、各太陽光発電制御装置20を特定装置B2として制御し、各EV用充放電制御装置30を通常装置B3として制御する。この例とは異なり、複数の太陽光発電制御装置20のうちのいずれかを特定装置B2として、当該太陽光発電制御装置20の出力電力と当該太陽光発電制御装置20が接続された太陽電池29の発電量とを一致させるようにしてもよい。第2目標の他の例としては、各電気自動車39をできるだけ放電させないあるいはできるだけ充電させない制御目標がある。この場合、各EV用充放電制御装置30を特定装置B2として制御し、各太陽光発電制御装置20を通常装置B3として制御する。この例とは異なり、複数のEV用充放電制御装置30のうちのいずれかを特定装置B2として、当該EV用充放電制御装置30に接続された電気自動車39をできるだけ放電させないあるいはできるだけ充電させないようにしてもよい。
【0018】
電力システムS1の電力制御において、処理装置A1は、接続点電力(調整対象電力)を目標電力(調整目標値)に制御するための制御指令値を算出する。本実施形態において、処理装置A1が算出する制御指令値は、複数の電力制御装置B1で共通する誘導指令値である。処理装置A1は、算出した誘導指令値(制御指令値)を中継装置C1に送信する。中継装置C1は、処理装置A1から誘導指令値(制御指令値)を受信し、受信した誘導指令値(制御指令値)を変更後誘導指令値(変更後制御指令値)に変更する。そして、特定装置B2に変更後誘導指令値(変更後制御指令値)を送信し、通常装置B3に変更前の誘導指令値(変更前の制御指令値)を送信する。特定装置B2は、中継装置C1から変更後誘導指令値(変更後制御指令値)を受信し、受信した変更後誘導指令値(変更後制御指令値)に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。通常装置B3は、中継装置C1から変更前の誘導指令値を受信し、受信した変更前の誘導指令値(変更前の制御指令値)に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。以上の処理によって、電力システムS1は、接続点電力を目標電力に制御しながら、第2目標を達成させるために特定装置B2を制御する。従って、電力システムS1は、複数の電力制御装置B1が分散的に出力電力の制御を行うことで、第1目標を達成するための電力制御と、第2目標を達成するための電力制御とを、並行して行う。なお、上記した例と異なる例において、中継装置C1は、特定装置B2および通常装置B3を区別することなく、各電力制御装置B1に変更前の誘導指令値(変更前の制御指令値)と変更後誘導指令値(変更後制御指令値)とを一括送信してもよい。この場合、特定装置B2は、変更前の誘導指令値(変更前の制御指令値)を受信しない、あるいは受信しても変更前の誘導指令値(変更前の制御指令値)を用いない。通常装置B3は、変更後誘導指令値(変更後制御指令値)を受信しない、あるいは受信しても変更後誘導指令値(変更後制御指令値)を用いない。また、上記した例と異なる例において、処理装置A1は、算出した誘導指令値を、中継装置C1に送信するとともに、各電力制御装置B1にも一括送信するようにしてもよい。この場合、通常装置B3は、中継装置C1から受信する変更前の誘導指令値(変更前の制御指令値)ではなく、処理装置A1から直接受信する変更前の(処理装置A1が算出した)誘導指令値(制御指令値)に基づいて、制御対象の出力電力を制御してもよい。
【0019】
変圧器91は、例えば三相の三巻線変圧器で構成される。変圧器91は、第1巻線911、第2巻線912および第3巻線913を有する。第1巻線911は、接続点Tに接続されている。第2巻線912には、各太陽光発電制御装置20が接続されている。第3巻線913には、各EV用充放電制御装置30が接続されている。第1巻線911、第2巻線912および第3巻線913にはそれぞれ、所定の各巻線容量が設定されている。第1巻線911、第2巻線912および第3巻線913の各巻線容量は、何ら限定されない。変圧器91は、三巻線変圧器ではなく、接続点Tと各太陽光発電制御装置20との間に接続される二巻線変圧器、および、接続点Tと各EV用充放電制御装置30との間に接続される二巻線変圧器の2つの二巻線変圧器で構成されていてもよい。ただし、三巻線変圧器を用いることで、2つの二巻線変圧器を用いる場合よりも、省スペース化および軽量化を図ることができる。
【0020】
検出装置D1は、接続点電力を検出する。検出装置D1は、検出部71および通信処理部72を含む。検出部71は、電力システムS1と電力系統Kとの接続点Tに接続され、接続点電力を検出する。検出部71は、例えば電力トランスデューサである。検出部71は、通信処理部72と通信可能であり、接続点電力の検出値を通信処理部72に出力する。通信処理部72は、検出部71から入力される接続点電力の検出値(アナログ値)をデジタル値に変換するAD変換器を含み、変換後の接続点電力の検出値(デジタル値)を、処理装置A1に送信する。検出装置D1には、必要に応じて、電力システムS1を電力系統Kに連系するための各種保護装置(例えば、過電流継電器、過電圧継電器、不足電力継電器および逆電力継電器など)がさらに設置される。
【0021】
処理装置A1は、算出部11および通信処理部12を含む。算出部11と通信処理部12とは、双方向通信を行う。算出部11と通信処理部12とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されてもよい。
【0022】
通信処理部12は、複数の電力制御装置B1、中継装置C1および検出装置D1のそれぞれと通信する。通信処理部12は、各電力制御装置B1から当該電力制御装置B1の出力電力の検出値を受信する。通信処理部12は、中継装置C1に、算出した誘導指令値を送信する。通信処理部12は、検出装置D1から接続点電力の検出値を受信する。
【0023】
算出部11は、上記第1目標を達成するための誘導指令値を算出する。本実施形態においては、算出部11は、接続点電力を監視し、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御するための誘導指令値を算出する。上述の通り、算出部11が算出する誘導指令値は、複数の電力制御装置B1において共通する。接続点電力は、検出装置D1が検出した検出値を用いてもよいし、各電力制御装置B1から通信によって取得した各出力電力の値から算出される推算値であってもよい。目標電力は、図示しない管理コンピュータに設定された値であってもよいし、所定の制御モードに応じて予め設定された値であってもよい。所定の制御モードは、例えば上記特許文献1に記載されたものと同様である。例えば、算出部11によって算出される誘導指令値は、接続点電力が目標電力よりも大きければ、正の値となり、接続点電力が目標電力よりも小さければ、負の値となる。算出部11は、所定の状態方程式(連立微分方程式)を解くことで、誘導指令値を算出する。この所定の状態方程式は、例えば特許文献2に記載されたものと同じである。つまり、算出部11における誘導指令値の算出方法は、特許文献2に記載された算出方法と同じである。算出部11は、算出した誘導指令値を、通信処理部12を介して、中継装置C1に送信する。
【0024】
中継装置C1は、変更部61および通信処理部62を有する。変更部61と通信処理部62とは、双方向通信を行う。変更部61と通信処理部62とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されてもよい。
【0025】
通信処理部62は、処理装置A1および複数の電力制御装置B1の各々と、変更部61との通信を中継する。通信処理部62は、処理装置A1から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値を、変更部61に入力する。また、通信処理部62は、変更部61から入力される変更後誘導指令値を特定装置B2に送信し、変更部61から入力される変更前の誘導指令値(算出部11が算出した誘導指令値)を通常装置B3に送信する。
【0026】
変更部61は、通信処理部62から入力される(算出部11が算出した)誘導指令値を、第2目標を達成させるための変更後誘導指令値に変更する。本実施形態では、変更部61は、算出部11が算出した誘導指令値を所定の補正アルゴリズムに従って補正することで、算出部11が算出した誘導指令値を、変更後誘導指令値に変更する。当該補正アルゴリズムは、上記第2目標に従って、例えば、複数の太陽光PCS21の出力電力の合計値(以下「PCS総出力」という)を複数の太陽電池29の発電量の合計値(以下「総発電量」という)に一致させるように補正する。例えば、PCS総出力が総発電量よりも大きければ、変更部61によって変更された誘導指令値は、算出部11で算出された誘導指令値よりも大きくなり、PCS総出力電力が総発電量よりも小さければ、変更部61によって変更された誘導指令値は、算出部11で算出された誘導指令値よりも小さくなる。
【0027】
複数の電力制御装置B1はそれぞれ、上述の通り、各々が制御対象としての太陽電池29が接続された複数の太陽光発電制御装置20、および、各々が制御対象としての電気自動車39が接続可能な複数のEV用充放電制御装置30を含む。
【0028】
複数の太陽光発電制御装置20はそれぞれ、太陽電池29による発電を制御する。複数の太陽光発電制御装置20はそれぞれ、太陽光パワーコンディショナ21および通信処理部22を含む。本開示では、パワーコンディショナを「PCS」と記載する。以下で説明する太陽光PCS21および通信処理部22は、特段の断りがない限り、各太陽光発電制御装置20で共通する。太陽光PCS21と通信処理部22とは、双方向通信を行う。太陽光PCS21と通信処理部22とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されてもよい。
【0029】
通信処理部22は、処理装置A1および中継装置C1の各々と、太陽光PCS21との通信を中継する。通信処理部22は、当該通信処理部22を含む太陽光発電制御装置20が特定装置B2である場合、中継装置C1から変更後誘導指令値を受信し、受信した変更後誘導指令値に基づいて、太陽光PCS21の出力目標値を算出する。通信処理部22は、当該通信処理部22を含む太陽光発電制御装置20が通常装置B3である場合、中継装置C1から変更前の誘導指令値を受信し、受信した変更前の誘導指令値に基づいて、太陽光PCS21の出力目標値を算出する。通信処理部22は、受信した(変更前または変更後の)誘導指令値を用いて、所定の演算式および制約条件によって、出力目標値を算出する。この演算式および制約条件は、例えば特許文献2に記載されたものと同じである。つまり、通信処理部22が行う太陽光PCS21の出力目標値の算出方法は、特許文献2に記載された算出方法と同じである。通信処理部22は、算出した出力目標値を太陽光PCS21に送信する。
【0030】
太陽光PCS21は、太陽電池29が接続され、太陽電池29が発電した電力(例えば直流電力)を系統連系に適した電力(例えば交流電力)に変換して出力する。図1では、太陽光PCS21に1つの太陽電池29が接続されているが、複数の太陽電池29が接続されていてもよい。太陽光PCS21は、変圧器91の第2巻線912に接続される。各太陽光PCS21の定格出力は、第2巻線912に接続される太陽光PCS21の各定格出力の合計値が第2巻線912の巻線容量以下となるように設定される。太陽光PCS21は、太陽電池29が発電した電力を変圧器91に出力する。太陽光PCS21は、通信処理部22から受信する出力目標値に基づいて、太陽電池29の発電量を制御することで、制御対象(太陽電池29)の出力電力の制御を行う。具体的には、太陽光PCS21は、太陽電池29の出力電力が、出力目標値となるように、電力制御を行う。
【0031】
太陽光PCS21は、出力電力の値を検出し、これを通信処理部22に送信する。通信処理部22は、太陽光PCS21から出力電力の検出値を受信し、これを処理装置A1および中継装置C1に送信する。また、太陽光PCS21は、太陽電池29の発電量の情報を、太陽電池29から取得し、これを通信処理部22に送信する。通信処理部22は、太陽光PCS21から太陽電池29の発電量の情報を受信し、これを中継装置C1に送信する。なお、太陽電池29の発電量の情報は、太陽光発電制御装置20を介さず、太陽電池29から中継装置C1に直接送信されてもよい。
【0032】
複数のEV用充放電制御装置30はそれぞれ、電気自動車39の充放電を制御する。複数のEV用充放電制御装置30はそれぞれ、EVスタンド31および通信処理部32を含む。以下で説明するEVスタンド31および通信処理部32は、特段の断りがない限り、各EV用充放電制御装置30で共通する。EVスタンド31と通信処理部32とは、双方向通信を行う。EVスタンド31と通信処理部32とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されてもよい。
【0033】
通信処理部32は、処理装置A1および中継装置C1の各々と、EVスタンド31との通信を中継する。通信処理部32は、当該通信処理部32を含むEV用充放電制御装置30が特定装置B2である場合、中継装置C1から変更後誘導指令値を受信し、受信した変更後誘導指令値に基づいて、EVスタンド31の出力目標値を算出する。通信処理部32は、当該通信処理部32を含むEV用充放電制御装置30が通常装置B3である場合、中継装置C1から変更前の誘導指令値を受信し、受信した変更前の誘導指令値に基づいて、EVスタンド31の出力目標値を算出する。通信処理部32は、受信した(変更前または変更後の)誘導指令値を用いて、所定の演算式および制約条件によって、出力目標値を算出する。この演算式および制約条件は、例えば特許文献2に記載されたものと同じである。なお、特許文献2に記載されるように、通信処理部22と通信処理部32とに設定される各演算式は、互いに同じであるが、これらに設定される制約条件は異なる。つまり、通信処理部32が行うEVスタンド31の出力目標値の算出方法は、特許文献2に記載された算出方法と同じである。通信処理部32は、算出した出力目標値をEVスタンド31に送信する。
【0034】
EVスタンド31は、電気自動車39が接続され、電気自動車39の充放電(詳細には電気自動車39に備えられた蓄電池の充放電)を行う。図1では、1つのEVスタンド31に、1台の電気自動車39が接続されているが、複数台の電気自動車39が接続されてもよい。EVスタンド31は、変圧器91の第3巻線913に接続される。各EVスタンド31の定格出力は、第3巻線913に接続されるEVスタンド31の各定格出力の合計値が第3巻線913の巻線容量以下となるように設定される。EVスタンド31は、変圧器91から入力される電力を電気自動車39にそれぞれ供給することで、電気自動車39の充電を行う。また、EVスタンド31は、電気自動車39にそれぞれ蓄積された電力を変圧器91に出力することで、電気自動車39の放電を行う。EVスタンド31は、通信処理部32から受信する出力目標値に基づいて、電気自動車39の充電量および電気自動車39の放電量を制御する。これにより、EVスタンド31は、制御対象(電気自動車39)の出力電力を制御する。具体的には、EVスタンド31は、電気自動車39の出力電力が、出力目標値となるように、電力制御を行う。EVスタンド31は、受信した出力目標値が正の値のとき、電気自動車39の放電を行う。一方、受信した出力目標値が負の値のとき、電気自動車39の充電を行う。
【0035】
EVスタンド31は、電気自動車39への出力電力の値を検出し、これを通信処理部32に送信する。通信処理部32は、EVスタンド31から出力電力の検出値を受信し、これを処理装置A1および中継装置C1に送信する。また、EVスタンド31は、接続される電気自動車39から、当該電気自動車39の充電率(SoC)を取得する。EVスタンド31は、電気自動車39の充電率を通信処理部32に送信する。電気自動車39の充電率の情報は、通信処理部32において、出力目標値の算出に用いられる。
【0036】
図2は、電力システムS1における中継装置C1の動作例を示す模式図である。図2においては、2つの電力制御装置B1のうち、一方が特定装置B2であり、他方が通常装置B3である。
【0037】
図2に示す動作例では、処理装置A1から中継装置C1に、算出部11が算出した誘導指令値Pr1が送信される。中継装置C1は、受信した誘導指令値Pr1を、第2目標を達成させるための補正アルゴリズムXに従って、変更後誘導指令値Pr2に変更する。そして、中継装置C1は、特定装置B2に変更後誘導指令値Pr2を送信し、通常装置B3に変更前の誘導指令値Pr1を送信する。特定装置B2は、変更後誘導指令値Pr2を受信し、受信した変更後誘導指令値Pr2に基づいて、自装置に接続された制御対象の出力電力を制御する。これにより、電力システムS1は、特定装置B2による出力電力制御によって、第2目標が達成される。また、通常装置B3は、変更前の誘導指令値Pr1を受信し、受信した変更前の誘導指令値Pr1に基づいて、自装置に接続された制御対象の出力電力を制御する。これにより、電力システムS1は、通常装置B3による出力電力制御によって、第1目標が達成される(接続点電力が目標電力となる)。
【0038】
以上のように構成された電力システムS1によれば、通常装置B3が、算出部11が算出した誘導指令値に基づいて出力電力を制御するので、通常装置B3による出力電力の制御によって、接続点電力を目標電力にする第1目標が達成される。また、特定装置B2が、変更部61が変更した誘導指令値(変更後誘導指令値)に基づいて出力電力を制御するので、特定装置B2による出力電力の制御によって、第2目標が達成される。つまり、電力システムS1は、システム全体に設定される第1目標を達成しつつ、少なくとも1つ以上の電力制御装置B1に設定される第2目標を達成するように電力制御が行われる。従って、電力システムS1は、システム全体としての電力制御を行いつつ、各電力制御装置B1の電力制御をより柔軟に行うことが可能となる。また、第2目標を達成させることが可能となるので、例えば、第2目標として、複数の太陽光発電制御装置20の各出力電力の合計値と複数の太陽電池29の各発電量の合計値と一致させることを設定すれば、複数の太陽電池29での発電電力を最大限活用することが可能となる。
【0039】
図3は、第2実施形態に係る電力システムS2の全体構成を示している。図3に示すように、電力システムS2は、複数の電力制御装置B1を複数のグループに分けて管理する。図3に示す例では、電力システムS2は、第1グループG1に属する複数の第1電力制御装置B11および第2グループG2に属する複数の第2電力制御装置B12を含む。複数の第1電力制御装置B11は、第1変圧器91Aに接続され、複数の第2電力制御装置B12は、第2変圧器91Bに接続される。第1変圧器91Aおよび第2変圧器91Bはそれぞれ、変圧器91と同様に構成される。電力システムS2は、システム全体としての第1目標を達成しつつ、複数のグループごとに第2目標を達成するように電力制御を行うことが可能である。
【0040】
電力システムS2は、例えば、複数の第1電力制御装置B11は、太陽光発電制御装置20およびEV用充放電制御装置30を含み、複数の第2電力制御装置B12は、太陽光発電制御装置20およびEV用充放電制御装置30を含む。なお、図3においては、第1グループG1および第2グループG2のそれぞれにおいて、複数の太陽光発電制御装置20のうちの1つと、複数のEV用充放電制御装置30のうちの1つとを図示する。この例と異なる構成において、複数の第1電力制御装置B11のすべてが太陽光発電制御装置20であり、複数の第2電力制御装置B12のすべてがEV用充放電制御装置30であってもよい。
【0041】
電力システムS2では、処理装置A1(算出部11)は、接続点電力が目標電力となるように、複数の第1電力制御装置B11(第1グループG1)に対する第1誘導指令値、および、複数の第2電力制御装置B12(第2グループG2)に対する第2誘導指令値を算出する。第1誘導指令値は、複数の第1電力制御装置B11に共通する値であり、第2誘導指令値は、複数の第2電力制御装置B12に共通する値である。第1誘導指令値と第2誘導指令値とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。例えば、第1目標としての接続点電力が目標電力P0[W]となるように、第1グループG1に属する各第1電力制御装置B11の総出力を目標電力P1[W](P1<P0)に電力制御し、且つ、第2グループG2に属する各第2電力制御装置B12の総出力を目標電力P2[W](P2=P0-P1)に電力制御する場合を想定する。この場合、2つの目標電力P1,P2が同じであれば(P1=P2=P0/2)、第1誘導指令値と第2誘導指令値とが同じとなり、2つの目標電力P1,P2が異なれば(P1≠P2)、第1誘導指令値と第2誘導指令値とが異なる。なお、第1誘導指令値と第2誘導指令値とが異なる例は、上記した例に限定されない。
【0042】
電力システムS2の中継装置C1は、処理装置A1から第1誘導指令値および第2誘導指令値を受信する。中継装置C1は、第1誘導指令値を受信すると、第1グループG1に特定装置B2が含まれる場合、受信した第1誘導指令値を変更後第1誘導指令値に変更する。そして、中継装置C1は、第1グループG1の特定装置B2に、変更後第1誘導指令値を送信し、第1グループG1の通常装置B3に、変更前の第1誘導指令値を送信する。中継装置C1は、第1グループG1に特定装置B2が含まれない場合、処理装置A1から受信した第1誘導指令値を変更することなく、各第1電力制御装置B11に送信する。なお、第1グループG1の複数の第1電力制御装置B11のうち、どれが特定装置B2でありどれが通常装置B3であるかは、第1グループG1に設定される第2目標に応じて適宜選定される。また、中継装置C1は、第2誘導指令値を受信すると、第2グループG2に特定装置B2が含まれる場合、受信した第2誘導指令値を変更後第2誘導指令値に変更する。そして、中継装置C1は、第2グループG2の特定装置B2に、変更後第2誘導指令値を送信し、第2グループG2の通常装置B3に変更前の第2誘導指令値を送信する。中継装置C1は、第2グループG2に特定装置B2が含まれない場合、処理装置A1から受信した第2誘導指令値を変更することなく、各第2電力制御装置B12に送信する。なお、第2グループG2の複数の第2電力制御装置B12のうち、どれが特定装置B2でありどれが通常装置B3であるかは、第2グループG2に設定される第2目標に応じて適宜選定される。
【0043】
複数の第1電力制御装置B11のうち、特定装置B2であるものは、中継装置C1から変更後第1誘導指令値を受信し、当該変更後第1誘導指令値に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。一方、通常装置B3であるものは、中継装置C1から変更前の第1誘導指令値を受信し、当該変更前の第1誘導指令値に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。同様に、複数の第2電力制御装置B12のうち、特定装置B2であるものは、中継装置C1から変更後第2誘導指令値を受信し、当該変更後第2誘導指令値に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。一方、通常装置B3であるものは、中継装置C1から変更前の第2誘導指令値を受信し、当該変更前の第2誘導指令値に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。
【0044】
図4は、電力システムS2における中継装置C1の動作例を示す模式図である。図4においては、電力システムS2は、第1グループG1に属する2つの第1電力制御装置B11のうち、一方が特定装置B2であり、他方が通常装置B3である。また、第2グループG2に属する2つの第2電力制御装置B12のうち、一方が特定装置B2であり、他方が通常装置B3である。
【0045】
図4に示す動作例では、処理装置A1から中継装置C1に、算出部11が算出した第1誘導指令値Pr11および第2誘導指令値Pr21が送信される。中継装置C1は、受信した第1誘導指令値Pr11を、第1グループG1における第2目標を達成させるための補正アルゴリズムXに従って、変更後第1誘導指令値Pr12に変更する。そして、中継装置C1は、第1グループG1の特定装置B2に変更後第1誘導指令値Pr12を送信し、第1グループG1の通常装置B3に変更前の第1誘導指令値Pr11を送信する。これにより、第1グループG1において、特定装置B2によって、第1グループG1の第2目標を達成するように出力制御が行われ、通常装置B3によって、第1目標を達成するように出力制御が行われる。同様に、中継装置C1は、受信した第2誘導指令値Pr21を、第2グループG2における第2目標を達成させるための補正アルゴリズムYに従って、変更後第2誘導指令値Pr22に変更する。当該補正アルゴリズムYは、上記補正アルゴリズムXと同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、中継装置C1は、第2グループG2の特定装置B2に変更後第2誘導指令値Pr22を送信し、第2グループG2の通常装置B3に変更前の第2誘導指令値Pr21を送信する。これにより、第2グループG2において、特定装置B2によって、第2グループG2の第2目標を達成するように出力制御が行われ、通常装置B3によって、第1目標を達成するように出力制御が行われる。
【0046】
以上のように構成された電力システムS2においても、電力システムS1と同様に、通常装置B3が、算出部11が算出した誘導指令値(第1誘導指令値または第2誘導指令値)に基づいて出力電力を制御し、特定装置B2が、変更部61が変更した誘導指令値(変更後第1誘導指令値または変更後第2誘導指令値)に基づいて出力電力を制御する。従って、電力システムS2においても、電力システムS1と同様に、システム全体としての電力制御を行いつつ、各電力制御装置B1(第1電力制御装置B11および第2電力制御装置B12)の電力制御をより柔軟に行うことが可能となる。さらに、電力システムS2では、複数のグループのそれぞれに対して、第2目標を設定することが可能であるので、各電力制御装置B1の電力制御をさらに柔軟に行うことが可能となる。
【0047】
第2実施形態において、中継装置C1の動作は、図4に示す例に限定されず、第2目標の設定に応じて例えば図5に示すようになることもある。図5に示す各変形例では、第1グループG1に属する2つの第1電力制御装置B11の両方が、特定装置B2であり、第2グループG2に属する2つの第2電力制御装置B12の両方が、通常装置B3である。
【0048】
図5(a)に示す動作例においては、中継装置C1は、各々が特定装置B2である2つの第1電力制御装置B11に対して、補正アルゴリズムX,Yによって、第1誘導指令値Pr11を変更後第1誘導指令値Pr12に変更(補正)する。そして、変更後第1誘導指令値Pr12を、各第1電力制御装置B11に送信する。一方で、中継装置C1は、各々が通常装置B3である2つの第2電力制御装置B12に対して、第2誘導指令値Pr21を変更せず、変更前の第2誘導指令値Pr21を送信する。なお、図5(a)に示す動作例は、図4に示す動作例と同様に、補正アルゴリズムX,Yによって、誘導指令値(第1誘導指令値および第2誘導指令値)を変更する例である。
【0049】
図5(b)に示す動作例においては、中継装置C1は、各々が特定装置B2である2つの第1電力制御装置B11に対して、処理装置A1が算出した第2誘導指令値Pr21を、変更後第1誘導指令値Pr12として、各第1電力制御装置B11に送信する。一方で、中継装置C1は、各々が通常装置B3である2つの第2電力制御装置B12に対して、第2誘導指令値Pr21を変更せず、変更前の第2誘導指令値Pr21を送信する。図5(b)に示す動作例では、補正アルゴリズムX,Yによって変更するのではなく、他のグループの誘導指令値に変更する例である。
【0050】
図5(c)に示す動作例においては、中継装置C1は、各々が特定装置B2である2つの第1電力制御装置B11に対して、処理装置A1が算出した第2誘導指令値Pr21を、補正アルゴリズムX,Yによって変更(補正)した後、変更後第1誘導指令値Pr12として、各第1電力制御装置B11に送信する。一方で、中継装置C1は、各々が通常装置B3である2つの第2電力制御装置B12に対して、第2誘導指令値Pr21を変更せず、変更前の第2誘導指令値Pr21を送信する。図5(c)に示す動作例では、他のグループの誘導指令値への変更と補正アルゴリズムX,Yによる変更との両方を合わせた動作例である。
【0051】
図6は、第3実施形態に係る電力システムS3の全体構成を示している。電力システムS3は、第1グループG1に属する複数の第1電力制御装置B11の設置場所と、第2グループG2に属する複数の第2電力制御装置B12の設置場所とが離れている。このため、第1グループG1および第2グループG2のそれぞれに、中継装置C1が設けられる。理解の便宜上、第1グループG1に対する中継装置C1を第1中継装置C11といい、第2グループG2に対する中継装置C1を第2中継装置C12という。なお、電力システムS3においても、電力システムS2と同様に、複数の第1電力制御装置B11および複数の第2電力制御装置B12のそれぞれが、複数の太陽光発電制御装置20および複数のEV用充放電制御装置30を含むが、図6においては、第1グループG1および第2グループG2のそれぞれにおいて、複数の太陽光発電制御装置20のうちの1つと、複数のEV用充放電制御装置30のうちの1つとを図示する。
【0052】
電力システムS3では、処理装置A1は、第1グループG1に対して設置された検出装置D1の検出値(接続点電力)と第2グループG2に対して設置された検出装置D1の検出値(接続点電力)との合計値が目標電力となるように、第1誘導指令値と第2誘導指令値とを算出する。そして、算出した第1誘導指令値を、第1中継装置C11に送信し、算出した第2誘導指令値を、第2中継装置C12に送信する。第1誘導指令値および第2誘導指令値は、電力システムS2で説明したものと同じである。
【0053】
第1中継装置C11は、第1グループG1、つまり複数の第1電力制御装置B11に特定装置B2が含まれる場合、第1誘導指令値を、変更後第1誘導指令値に変更する。そして、第1中継装置C11は、複数の第1電力制御装置B11のうちの特定装置B2に、変更後第1誘導指令値を送信し、複数の第1電力制御装置B11のうちの通常装置B3に、変更前の第1誘導指令値を送信する。第1中継装置C11は、第1グループG1に、つまり複数の第1電力制御装置B11に特定装置B2が含まれない場合、第1誘導指令値を変更することなく、各第1電力制御装置B11に、処理装置A1から受信した第1誘導指令値をそのまま送信する。
【0054】
同様に、第2中継装置C12は、第2グループG2、つまり複数の第2電力制御装置B12に特定装置B2が含まれる場合、第2誘導指令値を変更後第2誘導指令値に変更する。そして、第2中継装置C12は、複数の第2電力制御装置B12のうちの特定装置B2に、変更後第2誘導指令値を送信し、複数の第2電力制御装置B12のうちの通常装置B3に変更前の第2誘導指令値を送信する。第2中継装置C12は、第2グループG2に、つまり、複数の第2電力制御装置B12に特定装置B2が含まれない場合、第2誘導指令値を変更することなく、各第2電力制御装置B12に、処理装置A1から受信した第2誘導指令値をそのまま送信する。
【0055】
図7は、電力システムS3における中継装置C1(第1中継装置C11および第2中継装置C12)の動作例を示す模式図である。図7においては、電力システムS3は、第1グループG1に属する2つの第1電力制御装置B11のうち、一方が特定装置B2であり、他方が通常装置B3である。また、第2グループG2に属する2つの第2電力制御装置B12のうち、一方が特定装置B2であり、他方が通常装置B3である。
【0056】
図7に示す動作例では、処理装置A1から第1中継装置C11に、第1誘導指令値Pr11が送信され、処理装置A1から第2中継装置C12に第2誘導指令値Pr21が送信される。第1中継装置C11は、受信した第1誘導指令値Pr11を、第1グループG1における第2目標を達成させるための補正アルゴリズムXに従って、変更後第1誘導指令値Pr12に変更する。そして、第1中継装置C11は、第1グループG1の特定装置B2に変更後第1誘導指令値Pr12を送信し、第1グループG1の通常装置B3に変更前の第1誘導指令値Pr11を送信する。これにより、第1グループG1において、特定装置B2によって、第1グループG1の第2目標を達成するように出力制御が行われ、通常装置B3によって、第1目標を達成するように出力制御が行われる。同様に、第2中継装置C12は、受信した第2誘導指令値Pr21を、第2グループG2における第2目標を達成させるための補正アルゴリズムYに従って、変更後第2誘導指令値Pr22に変更する。そして、第2中継装置C12は、第2グループG2の特定装置B2に変更後第2誘導指令値Pr22を送信し、第2グループG2の通常装置B3に変更前の第2誘導指令値Pr21を送信する。これにより、第2グループG2において、特定装置B2によって、第2グループG2の第2目標を達成するように出力制御が行われ、通常装置B3によって、第1目標を達成するように出力制御が行われる。
【0057】
以上のように構成された電力システムS3においても、電力システムS2と同様に、通常装置B3が、算出部11が算出した誘導指令値(第1誘導指令値または第2誘導指令値)に基づいて出力電力を制御し、特定装置B2が、変更部61が変更した誘導指令値(変更後第1誘導指令値または変更後第2誘導指令値)に基づいて出力電力を制御する。従って、電力システムS3においても、電力システムS2と同様に、システム全体としての電力制御を行いつつ、各電力制御装置B1(第1電力制御装置B11および第2電力制御装置B12)の電力制御をより柔軟に行うことが可能となる。さらに、電力システムS3では、電力システムS2と同様に、複数のグループのそれぞれに対して、第2目標を設定することが可能であるので、各電力制御装置B1の電力制御をさらに柔軟に行うことが可能となる。
【0058】
第2および第3実施形態において、第1グループG1に対する第2目標として、第1グループG1の複数の第1電力制御装置B11の各出力電力の合計値が、第1グループG1に対して設けられた第1変圧器91Aの容量を超えないように電力制御してもよい。例えば、各第1電力制御装置B11の出力電力の合計値が第1変圧器91Aの容量を超える場合には、中継装置C1(または第1中継装置C11)の変更部61は、算出部11が算出した第1誘導指令値を、各第1電力制御装置B11の出力電力の合計値が第1変圧器91Aの容量を超えない値に変更する。この場合、複数の第1電力制御装置B11のすべてが特定装置B2として制御される。同様に、第2グループG2に対する第2目標として、第2グループG2の複数の第2電力制御装置B12の各出力電力の合計値が、第2グループG2に対して設けられた第2変圧器91Bの容量を超えないように電力制御してもよい。例えば、各第2電力制御装置B12の出力電力の合計値が第2変圧器91Bの容量を超える場合には、中継装置C1(または第2中継装置C12)の変更部61は、算出部11が算出した第2誘導指令値を、各第2電力制御装置B12の出力電力の合計値が第2変圧器91Bの容量を超えない値に変更する。この場合、複数の第2電力制御装置B12のすべてが特定装置B2として制御される。
【0059】
第1ないし第3実施形態では、変更部61が中継装置C1に設けられた例を示したが、変更部61が処理装置A1に設けられていてもよい。この場合、中継装置C1がなく、誘導指令値の算出と誘導指令値の変更とが、1つの装置で行われる。
【0060】
第1ないし第3実施形態では、複数の電力制御装置B1、複数の第1電力制御装置B11および複数の第2電力制御装置B12のそれぞれにおいて、太陽光発電制御装置20およびEV用充放電制御装置30を含む例を示したが、これらに加えてまたは代えて、蓄電池用充放電制御装置および発電機制御装置のいずれか1つ以上を含ませてもよい。蓄電池用充放電制御装置は、制御対象としての蓄電池が接続され、当該蓄電池の充放電を制御する。蓄電池用充放電制御装置の制御方法は、EV用充放電制御装置30の制御方法と類似する。発電機制御装置は、制御対象としての発電機(例えばディーゼル発電機、水力発電機、風力発電機など)が接続され、当該発電機による発電を制御する。発電機制御装置の制御方法は、太陽光発電制御装置20の制御方法と類似する。
【0061】
第1ないし第3実施形態では、処理装置A1が、特許文献2に記載の電力システムと同様に、状態方程式を解くことで、制御指令値として誘導指令値(第1誘導指令値および第2誘導指令値)を算出し、各電力制御装置B1(各第1電力制御装置B11および各第2電力制御装置B12)が分散的に出力制御を行う例を示した。この構成とは異なり、処理装置A1(算出部11)が、システム目標を達成させるための各電力制御装置B1の出力目標値(第1出力目標値および第2出力目標値)を算出し、中継装置C1(変更部61)が、運用目標を達成させるために、各電力制御装置B1の出力目標値(第1出力目標値および第2出力目標値)を変更してもよい。つまり、本変形例における制御指令値は、複数の電力制御装置B1(複数の第1電力制御装置B11および複数の第2電力制御装置B12)が分散的に出力目標を算出するための指標ではなく、複数の電力制御装置B1の各出力目標値(複数の第1電力制御装置B11の各第1出力目標値および複数の第2電力制御装置B12の各第2出力目標値)であってもよい。この場合、各電力制御装置B1(各第1電力制御装置B11および各第2電力制御装置B12)は、自装置の出力電力が、処理装置A1または中継装置C1から受信する出力目標値(第1出力目標値および第2出力目標値)となるように電力制御する。
【0062】
本開示に係る電力システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0063】
S1~S3:電力システム、11:算出部、20:太陽光発電制御装置、29:太陽電池、30:EV用充放電制御装置、39:電気自動車、61:変更部、A1:処理装置、B1:電力制御装置、B11:第1電力制御装置、B12:第2電力制御装置、B2:特定装置、B3:通常装置、C1:中継装置、G1:第1グループ、G2:第2グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7