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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043687
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20240326BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240326BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240326BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J7/35 K
H02J7/35 B
H02J3/32
H02J3/38 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148820
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 彗
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G066KA06
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB05
5G503DA04
5G503GB03
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】システム全体としての電力制御を行いつつ、再生可能エネルギーによる発電電力を有効に活用することが可能な電力システムを提供する。
【解決手段】電力システムS1は、第1蓄電池BT1と、第1蓄電池BT1の充放電を行う第1電力装置B1と、太陽光発電ユニットPVU1と、第2蓄電池BT2と、太陽光発電ユニットPVU1および第2蓄電池BT2が接続され、第2蓄電池BT2の充放電を行う第2電力装置B2と、システム目標を達成させるための制御指令値を算出する第1処理部11と、運用目標を達成させるように第1処理部11が算出した制御指令値を変更する第2処理部12とを備える。第1電力装置B1および第2電力装置B2のうちの一方は、第2処理部12によって変更される前の制御指令値に基づいて自装置の出力電力を制御し、他方は、第2処理部12によって変更された後の制御指令値に基づいて自装置の出力電力を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統との接続点における接続点電力を制御する電力システムであって、
第1蓄電池と、
前記第1蓄電池が接続され、前記第1蓄電池の充放電を行う第1電力装置と、
各々が再生可能エネルギーによる発電を行う少なくとも1つの発電ユニットと、
第2蓄電池と、
前記少なくとも1つの発電ユニットおよび前記第2蓄電池が共通の直流線路を介して接続され、且つ前記第2蓄電池の充放電を行う第2電力装置と、
前記接続点電力を目標電力にするシステム目標を達成させるための制御指令値を算出する第1処理部と、
前記システム目標と異なる運用目標を達成させるように前記第1処理部が算出した制御指令値を変更し、変更前の制御指令値および変更後の制御指令値を用いて前記第1電力装置および前記第2電力装置のそれぞれに送信する送信制御指令値を生成する第2処理部と、
を備え、
前記第1電力装置および前記第2電力装置のうちの一方は、前記送信制御指令値として前記変更前の制御指令値を受信して、当該変更前の制御指令値に基づいて自装置の出力電力を制御し、
前記第1電力装置および前記第2電力装置のうちの他方は、前記送信制御指令値として前記変更後の制御指令値を受信して、当該変更後の制御指令値に基づいて自装置の出力電力を制御する、電力システム。
【請求項2】
前記制御指令値は、前記第2電力装置に対する誘導指令値を含み、
前記第2処理部は、前記第1処理部が算出した誘導指令値が当該誘導指令値に対して設定された上限値を超えた場合、前記第1処理部が算出した誘導指令値を変更後の誘導指令値として当該上限値に制限した値に変更し、
前記上限値は、前記第2処理部により、前記少なくとも1つの発電ユニットの発電電力の合計値に応じて、変化する、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記第2処理部は、前記第1処理部から前記制御指令値を正常に受信できない第1異常が発生したとき、前記第1異常が発生する直前に送信した前記送信制御指令値を継続して送信するか、あるいは、前記第1異常に対する設定値を前記送信制御指令値として送信する、請求項1に記載の電力システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの発電ユニットは、第1発電ユニットと1つ以上の第2発電ユニットとを含み、
前記第2処理部が前記送信制御指令値を生成するための情報を取得できない第2異常が発生したとき、前記第1発電ユニットによる発電を継続し、前記1つ以上の第2発電ユニットによる発電を停止させる、請求項1または請求項2に記載の電力システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの発電ユニットは、複数の発電ユニットを含み、
前記第2電力装置が出力制御を行えない第3異常が発生したとき、前記複数の発電ユニットによる発電すべてを停止させる、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電力システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの発電ユニットはそれぞれ、太陽光エネルギーによる発電を行う太陽光発電ユニットであり、
前記第1蓄電池は、電気自動車に搭載される、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統に接続され、電力系統からの受電を制御する電力システムが普及しつつある。例えば、特許文献1および特許文献2には、複数の電力装置と処理装置(集中管理装置)とを備えた電力システムの一例が開示されている。処理装置は、所定の調整対象電力を目標電力に制御するための指標(誘導指令値)を算出する。各電力装置は、処理装置が算出した誘導指令値を用いて、分散的に出力電力を制御している。このとき、各電力装置は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力の目標値を算出する。そして、出力電力が当該目標値となるように、出力電力を制御する。このようにして、電力システムのエネルギー管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-170901号公報
【特許文献2】特開2020-150690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載の電力システムは、各電力装置が分散的に出力制御を行うことで、システム全体として調整対象電力が目標電力となるように電力制御する。また、特許文献1および特許文献2に記載の電力システムは、太陽光発電装置を備える。太陽光発電などの再生可能エネルギーを用いた発電は、石油、石炭または天然ガスといった有限な資源を消費しないので、できるだけ抑制することなく有効に活用することが求められる。つまり、システム全体としての電力制御を行いつつ、再生可能エネルギーによって発電可能な電力を有効に活用することが求められる。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、システム全体としての電力制御を行いつつ、再生可能エネルギーによる発電電力を有効に活用することが可能な電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供される電力システムは、電力系統との接続点における接続点電力を制御する電力システムであって、第1蓄電池と、前記第1蓄電池が接続され、前記第1蓄電池の充放電を行う第1電力装置と、各々が再生可能エネルギーによる発電を行う少なくとも1つの発電ユニットと、第2蓄電池と、前記少なくとも1つの発電ユニットおよび前記第2蓄電池が共通の直流線路を介して接続され、且つ前記第2蓄電池の充放電を行う第2電力装置と、前記接続点電力を目標電力にするシステム目標を達成させるための制御指令値を算出する第1処理部と、前記システム目標と異なる運用目標を達成させるように前記第1処理部が算出した制御指令値を変更し、変更前の制御指令値および変更後の制御指令値を用いて前記第1電力装置および前記第2電力装置のそれぞれに送信する送信制御指令値を生成する第2処理部と、を備え、前記第1電力装置および前記第2電力装置のうちの一方は、前記送信制御指令値として前記変更前の制御指令値を受信して、当該変更前の制御指令値に基づいて自装置の出力電力を制御し、前記第1電力装置および前記第2電力装置のうちの他方は、前記送信制御指令値として前記変更後の制御指令値を受信して、当該変更後の制御指令値に基づいて自装置の出力電力を制御する。
【0007】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記制御指令値は、前記第2電力装置に対する誘導指令値を含み、前記第2処理部は、前記第1処理部が算出した誘導指令値が当該誘導指令値に対して設定された上限値を超えた場合、前記第1処理部が算出した誘導指令値を変更後の誘導指令値として当該上限値に制限した値に変更し、前記上限値は、前記第2処理部により、前記少なくとも1つの発電ユニットの発電電力の合計値に応じて、変化する。
【0008】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記第2処理部は、前記第1処理部から前記制御指令値を正常に受信できない第1異常が発生したとき、前記第1異常が発生する直前に送信した前記送信制御指令値を継続して送信するか、あるいは、前記第1異常に対する設定値を前記送信制御指令値として送信する。
【0009】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記少なくとも1つの発電ユニットは、第1発電ユニットと1つ以上の第2発電ユニットとを含み、前記第2処理部が前記送信制御指令値を生成するための情報を取得できない第2異常が発生したとき、前記第1発電ユニットによる発電を継続し、前記1つ以上の第2発電ユニットによる発電を停止させる。
【0010】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記少なくとも1つの発電ユニットは、複数の発電ユニットを含み、前記第2電力装置が出力制御を行えない第3異常が発生したとき、前記複数の発電ユニットによる発電すべてを停止させる。
【0011】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記少なくとも1つの発電ユニットはそれぞれ、太陽光エネルギーによる発電を行う太陽光発電ユニットであり、前記第1蓄電池は、電気自動車に搭載される。
【発明の効果】
【0012】
本開示の電力システムでは、第1処理部がシステム目標を達成させるための制御指令値を算出し、第2処理部が、運用目標を達成させるために第1処理部が算出した制御指令値を変更する。そして、第1電力装置および第2電力装置のうちのいずれかが、第2処理部によって変更される前の制御指令値(変更前の制御指令値)に基づいて出力電力を制御する。これにより、電力システムは、上記システム目標を達成させることが可能となる。また、第1電力装置および第2電力装置のうちのその他が、第2処理部によって変更された後の制御指令値(変更後の制御指令値)に基づいて出力電力を制御する。これにより、電力システムは、上記運用目標を達成させることが可能となる。つまり、本開示の電力システムによれば、システム全体に設定されるシステム目標を達成しつつ、システム目標と異なる運用目標を達成するように電力制御を行うことが可能となる。従って、電力システムは、システム目標として、システム全体としての電力制御を行いつつ、運用目標として、再生可能エネルギーによる発電電力を有効に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1実施形態に係る電力システムを示す全体構成例である。
図2図1の電力システムにおける処理装置の動作例を示す模式図である。
図3図1の電力システムにおいて第1異常が生じた状態を示す図である。
図4図1の電力システムにおいて第2異常が生じた状態を示す図である。
図5図1の電力システムにおいて第3異常が生じた状態を示す図である。
図6】本開示の第2実施形態に係る電力システムを示す全体構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の電力システムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る電力システムS1の全体構成を示している。電力システムS1は、処理装置A1、複数の第1電力装置B1、第2電力装置B2、蓄電装置C1、複数の第1蓄電池BT1、検出装置D1、複数の配線用遮断器CB1~CB3、複数の電磁接触器MC1~MC3、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3、過電流検出基板54、交流線路91および直流線路92を備える。また、蓄電装置C1は、第2蓄電池BT2を備える。図1において、太線は電力ネットワークによる接続を示し、破線は通信ネットワークによる接続を示す。
【0016】
電力システムS1は、接続点Tに接続され、電力系統Kに連系されている。電力システムS1は、電力系統Kから受電可能である。本実施形態では、電力システムS1は、電力系統Kに送電不可能(すなわち逆潮流できない)であるが、電力系統Kに送電可能(すなわち逆潮流できる)であってもよい。本開示において、電力系統Kから電力システムS1に電力が出力されているとき、接続点電力が負の値となるものとする。接続点電力とは、電力システムS1と電力系統Kとの接続点Tにおける電力のことである。電力システムS1は、電力系統Kから供給される電力、および、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2から出力される電力を、接続点Tに接続された負荷Lに供給する。また、電力システムS1は、電力系統Kから解列されたとき、自立運転が可能である。自立運転中は、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2から出力される電力を、負荷Lに供給可能である。
【0017】
電力システムS1は、後に詳述する構成から理解されるように、システム目標を達成させつつ、システム目標と異なる運用目標を達成するように電力制御を行う。本実施形態のシステム目標は、接続点電力を目標電力にすることである。目標電力とは、接続点電力の目標値である。本実施形態の運用目標は、例えば、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電電力を有効活用することである。なお、システム目標および運用目標は、上記した例に限定されない。
【0018】
電力システムS1の電力制御において、処理装置A1(後述の第1処理部11)は、システム目標を達成するための(つまり接続点電力を目標電力にするための)制御指令値を算出する。また、処理装置A1(後述の第2処理部12)は、運用目標を達成するために、算出した制御指令値を変更する。そして、複数の第1電力装置B1と第2電力装置B2とのうちのいずれかが、変更前の制御指令値に基づいて出力制御を行うことでシステム目標を達成させる。また、複数の第1電力装置B1と第2電力装置B2とのうちのその他が、変更後の制御指令値に基づいて出力制御を行うことで運用目標を達成させる。
【0019】
検出装置D1は、電力システムS1と電力系統Kとの接続点Tに接続され、接続点電力を検出する。検出装置D1は、通信機能を有し、処理装置A1と通信可能である。検出装置D1は、接続点電力の検出値を処理装置A1に送信する。検出装置D1は、例えば、検出センサ、AD変換器および通信部を含む。検出装置D1は、例えば電力トランスデューサなどの検出センサによって、接続点電力を検出して、AD変換器によって、接続点電力の検出値(アナログ値)をデジタル値に変換する。そして、通信部によって、接続点電力の検出値(デジタル値)を処理装置A1に送信する。検出装置D1には、必要に応じて、電力システムS1を電力系統Kに連系するための各種保護装置(例えば、過電流継電器、過電圧継電器、不足電力継電器および逆電力継電器など)がさらに設置される。
【0020】
処理装置A1は、システム目標を達成しつつ運用目標を達成するために、上記制御指令値(変更前の制御指令値および変更後の制御指令値)を、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2の各々に送信する。処理装置A1は、第1処理部11および第2処理部12を含む。
【0021】
第1処理部11は、上記システム目標を達成するための制御指令値(つまり接続点電力を目標電力にするための制御指令値)を算出する。第1処理部11は、通信機能を有し、検出装置D1、第2処理部12、複数の第1電力装置B1、および、第2電力装置B2と、それぞれ通信可能である。第1処理部11は、制御指令値の算出において、接続点電力および目標電力を用いる。接続点電力は、検出装置D1が検出した検出値を用いてもよいし、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2のそれぞれから通信によって取得した各出力電力の値から算出される推算値であってもよい。目標電力は、図示しない管理コンピュータに設定された値であってもよいし、所定の制御モードに応じて予め設定された値であってもよい。所定の制御モードは、例えば上記特許文献1に記載されたものと同様である。
【0022】
本実施形態では、第1処理部11は、制御指令値として、複数の第1電力装置B1の電力制御を行うための第1誘導指令値と、第2電力装置B2の電力制御を行うための第2誘導指令値とを算出する。第1誘導指令値と第2誘導指令値とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。なお、第1誘導指令値は、複数の第1電力装置B1で共通する。第1処理部11は、所定の状態方程式(連立微分方程式)を解くことで、第1誘導指令値および第2誘導指令値を算出する。この所定の状態方程式は、特許文献2に記載されたものと同じである。第1処理部11は、算出した制御指令値(第1誘導指令値および第2誘導指令値)を、第2処理部12に送信する。この構成とは異なり、電力システムS1は、複数の第1電力装置B1と第2電力装置B2とで共通の誘導指令値を算出してもよい。第1処理部11は、制御指令値の算出および制御指令値の送信を所定の処理周期ごとに定期的に行う。
【0023】
例えば、第1処理部11は、次のように、第1誘導指令値および第2誘導指令値を算出する。それは、システム目標として接続点電力を目標電力P0[kW]にする場合を想定する。この想定において、第1処理部11は、複数の第1電力装置B1を含むグループの出力電力を目標電力P1[kW](P1<P0)にするために、複数の第1電力装置B1を含むグループの出力電力と、目標電力P1とを用いて、所定の状態方程式を解くことで、第1誘導指令値を算出する。また、第1処理部11は、第2電力装置B2を含むグループの出力電力を目標電力P2[kW](P2=P0-P1)にするために、第2電力装置B2を含むグループの出力電力と、目標電力P2とを用いて、所定の状態方程式を解くことで、第2誘導指令値を算出する。この場合、2つの目標電力P1,P2が同じであれば(P1=P2=P0/2)、第1誘導指令値と第2誘導指令値とが同じとなり、2つの目標電力P1,P2が異なれば(P1≠P2)、第1誘導指令値と第2誘導指令値とが異なる。ただし、この算出方法では、上記運用目標を達成するために第2処理部12が制御指令値を変更した際、各グループでの目標電力P1,P2を達成できなくなる可能性がある。この場合には、各グループに他の電力装置を含めるとよい。この他の電力装置は、第2処理部12によって第1誘導指令値または第2誘導指令値が変更されても、変更前の第1誘導指令値または変更前の第2誘導指令値に基づいて出力制御を行うものである。あるいは、上記想定において、第1処理部11は、接続点電力を目標電力P0にするために、検出装置D1が検出した接続点電力と目標電力P0とを用いて、所定の状態方程式を解くことで、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2で共通の誘導指令値を算出する。そして、この共通の誘導指令値を第1誘導指令値および第2誘導指令値のそれぞれに設定する。
【0024】
第2処理部12は、上記運用目標を達成させるために、第1処理部11が算出した制御指令値を変更する。第2処理部12は、通信機能を有し、第1処理部11、複数の第1電力装置B1、第2電力装置B2、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3、複数の電磁接触器MC1~MC3、複数の配線用遮断器CB1~CB3、および、過電流検出基板54と、それぞれ通信可能である。
【0025】
第2処理部12は、第1処理部11から制御指令値を受信する。なお、第2処理部12が第1処理部11から受信する制御指令値(第1誘導指令値および第2誘導指令値)を「受信制御指令値(受信第1誘導指令値および受信第2誘導指令値)」という。第2処理部12は、受信した受信制御指令値(受信第1誘導指令値および受信第2誘導指令値)を変更する。なお、第1処理部11が算出した制御指令値によって運用目標が達成される場合には、第2処理部12は、受信制御指令値を特に変更しなくてもよい。説明の便宜上、第2処理部12が変更せず、第1処理部11から受信したままの受信制御指令値を「変更前制御指令値」といい、変更した受信制御指令値を「変更後制御指令値」という。第2処理部12は、変更後制御指令値への変更において、複数の第1電力装置B1、第2電力装置B2、および、過電流検出基板54などのそれぞれからの情報を適宜用いる。そして、第2処理部12は、変更前制御指令値(変更前第1誘導指令値および変更前第2誘導指令値)および変更後制御指令値(変更後第1誘導指令値および変更後第2誘導指令値)を用いて、送信制御指令値(送信第1誘導指令値および送信第2誘導指令値)を生成する。例えば、送信制御指令値は、変更前制御指令値および変更後制御指令値のいずれか一方を含む。送信制御指令値に、変更前制御指令値および変更後制御指令値のいずれを含ませるかは、運用目標に応じて適宜変更される。この構成と異なり、送信制御指令値は、変更前制御指令値および変更後制御指令値の両方を含むものであってもよい。第2処理部12は、生成した送信制御指令値を、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2のそれぞれに送信する。第2処理部12が行う制御指令値(第1誘導指令値および第2誘導指令値)の変更処理については、後述する。
【0026】
複数の第1電力装置B1はそれぞれ、第1蓄電池BT1が接続され、第1蓄電池BT1の充放電を制御する。第1蓄電池BT1は、例えば、電気自動車に搭載されたものである。この例では、複数の第1電力装置B1はそれぞれ、電気自動車を接続可能であり、当該電気自動車に搭載された第1蓄電池BT1の充放電を制御するEV用充放電器である。この例と異なり、第1蓄電池BT1は電気自動車に搭載されたものでなくてもよい。図示された例では、各第1電力装置B1には、それぞれ1つの第1蓄電池BT1(1台の電気自動車)が接続されているが、この例とは異なり、各第1電力装置B1には、複数の第1蓄電池BT1(複数台の電気自動車)を接続してもよい。複数の第1電力装置B1はそれぞれ、通信処理部21および充放電制御部22を含む。以下で説明する通信処理部21および充放電制御部22は、特段の断りがない限り、各第1電力装置B1で共通する。
【0027】
通信処理部21は、処理装置A1(第1処理部11および第2処理部12)と、充放電制御部22との通信を中継する。通信処理部21は、第1蓄電池BT1の充電率および充放電制御部22の出力電力(充電電力および放電電力)の情報を、処理装置A1(第1処理部11)に送信する。通信処理部21は、処理装置A1(第2処理部12)から送信第1誘導指令値(変更前第1誘導指令値または変更後第1誘導指令値)を受信する。通信処理部21は、受信した送信第1誘導指令値を用いて、所定の演算式および制約条件によって、充放電制御部22の出力目標値(以下「第1出力目標値」という)を算出する。この演算式および制約条件は、例えば特許文献2に記載されたものと同じである。つまり、通信処理部21が行う充放電制御部22の第1出力目標値の算出方法は、特許文献2に記載された算出方法と同じである。第1出力目標値は、第1誘導指令値を用いて算出されており、第1誘導指令値が増加すれば、第1出力目標値は、第1蓄電池BT1の充電電力が小さく、または、第1蓄電池BT1の放電電力が大きくなるように変化する。通信処理部21は、算出した第1出力目標値を充放電制御部22に出力する。
【0028】
充放電制御部22は、通信処理部21から第1出力目標値が入力され、第1電力装置B1の出力電力が第1出力目標値となるように出力制御を行う。第1出力目標値が正の値のとき、第1電力装置B1は、第1蓄電池BT1(電気自動車)を放電する。一方、第1出力目標値が負の値のとき、第1電力装置B1は、第1蓄電池BT1(電気自動車)を充電する。充放電制御部22は、第1蓄電池BT1(電気自動車)の充電率を取得する。充放電制御部22は、第1蓄電池BT1の充電率および第1電力装置B1の出力電力の各情報を、通信処理部21を介して、第1処理部11に送信する。充放電制御部22は、これらの情報を、所定の周期(第1出力電力送信周期)ごとに送信する。
【0029】
複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3はそれぞれ、太陽光エネルギーによる発電を行う。複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3はそれぞれ、太陽光パネルおよびDC/DCコンバータを含む。各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3において、当該DC/DCコンバータは、複数あってもよい。各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3において、太陽光パネルで発電された電力(発電電力)は、DC/DCコンバータによって所定の電圧値に変換され、出力される。以下の説明において、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力の合計を「発電ユニット総出力」という。図示された例では、3つの太陽光発電ユニットPVU1~PVU3が設けられているが、1つ以上の太陽光発電ユニットが設けられていればよい。電力システムS1において、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の代わりに、太陽光エネルギー以外の再生可能エネルギーによる発電を行う発電ユニットを設けてもよい。このような発電には、例えば水力発電、風力発電、地熱発電および太陽熱発電などがある。
【0030】
また、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3は、通信機能を有し、処理装置A1(第2処理部12)と通信可能である。各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3は、発電電力の情報を第2処理部12に送信する。各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3は、発電電力の情報を、所定の周期(発電電力送信周期)ごとに送信する。
【0031】
複数の電磁接触器MC1~MC3は、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3にそれぞれ接続される。各電磁接触器MC1~MC3は、通信機能を有し、処理装置A1(第2処理部12)と通信可能である。複数の電磁接触器MC1~MC3はそれぞれ、通常時は閉路されており、処理装置A1(第2処理部12)から開放信号を受信した場合に開放される。例えば、各電磁接触器MC1~MC3は、通常時、処理装置A1(第2処理部12)から図示しない補助接点に電源供給され、閉路状態となる。一方で、各電磁接触器MC1~MC3は、処理装置A1(第2処理部12)から先述の補助接点への電源供給が停止すると、開放状態となる。この場合、電源供給の停止が、開放信号の受信とみなされる。複数の電磁接触器MC1~MC3のいずれかが開放されると、開放された電磁接触器MC1~MC3に接続される太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力は、電磁接触器MC1~MC3よりも第2電力装置B2側に出力されない。
【0032】
複数の配線用遮断器CB1~CB3は、複数の電磁接触器MC1~MC3にそれぞれ接続される。複数の配線用遮断器CB1~CB3はそれぞれ、通常時は導通しており、定格容量より多い所定量の電流が流れると遮断する。各配線用遮断器CB1~CB3は、通信機能を有し、処理装置A1(第2処理部12)と通信可能である。各配線用遮断器CB1~CB3は、自機器の状態(導通または遮断)を示す情報を、処理装置A1(第2処理部12)に送信する。
【0033】
蓄電装置C1は、1つ以上の第2蓄電池BT2を備える。図1に示す例では、蓄電装置C1は、1つの第2蓄電池BT2を備えるが、複数の第2蓄電池BT2を備えていてもよい。第2蓄電池BT2は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などの二次電池である。第2蓄電池BT2は、二次電池ではなく、電気二重層コンデンサなどのコンデンサであってもよい。第2蓄電池BT2は、発電ユニット総出力が第2電力装置B2の出力電力よりも大きい時、この余剰分の電力が入力される。これにより、第2蓄電池BT2が充電される。一方、第2蓄電池BT2は、発電ユニット総出力が第2電力装置B2の出力電力よりも小さい時、この不足分の電力を出力する。これにより、第2蓄電池BT2が放電される。
【0034】
蓄電装置C1は、通信機能を有し、第2電力装置B2と通信可能である。蓄電装置C1は、第2蓄電池BT2の蓄電池情報を第2電力装置B2に送信する。蓄電池情報には、充電電力、放電電力、および充電率(SOC:State Of Charge)などが含まれる。充電電力は、第2蓄電池BT2が充電されているときの電力である。充電電力には、充電Cレートの許容範囲に応じて算出される上限値(許容充電電力)が設定されている。放電電力は、第2蓄電池BT2が放電されているときの電力である。放電電力には、放電Cレートの上限値に基づいて算出された上限値(許容放電電力)が設定されている。充電Cレートおよび放電Cレートは、第2蓄電池BT2の全容量に対する充電時および放電時の電流の相対的な比率であり、第2蓄電池BT2の全容量を1時間で充電および放電する場合をそれぞれ1Cとしたものである。第2蓄電池BT2には、充電時のCレートの上限値(例えば2C)および放電時のCレートの上限値(例えば2C)が設定されている。充電率は、第2蓄電池BT2の充電状態を示す指標であって、満充電時の容量に対する充電残量の割合を百分率で示したものである。蓄電装置C1は、第2蓄電池BT2の蓄電池情報を、所定の周期(蓄電池情報送信周期)ごとに送信する。
【0035】
過電流検出基板54は、直流線路92において、第2電力装置B2と第2蓄電池BT2(蓄電装置C1)との間に配置され、且つ、第2蓄電池BT2と各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3との接続点よりも、第2蓄電池BT2側に配置される。過電流検出基板54は、第2蓄電池BT2の出力電流(充電電流および放電電流)の過電流を検出する。過電流検出基板54は、通信機能を有し、処理装置A1(第2処理部12)と通信可能である。過電流検出基板54は、当該過電流を検出すると、この検出に応じたCレート超過接点の情報を第2処理部12に送信する。これにより、第2処理部12は、第2蓄電池BT2への過電流の発生を検出できる。
【0036】
第2電力装置B2は、パワーコンディショナである。第2電力装置B2は、入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。また、第2電力装置B2は、入力される交流電力を直流電力に変換して出力することもできる。第2電力装置B2は、交流線路91によって、負荷Lおよび電力系統Kに接続される。第2電力装置B2は、直流線路92によって、第2蓄電池BT2(蓄電装置C1)が接続されるとともに、複数の配線用遮断器CB1~CB3および複数の電磁接触器MC1~MC3を介して、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3が接続される。説明の便宜上、第2電力装置B2に対して交流線路91が接続される側を「系統側」といい、第2電力装置B2に対して直流線路92が接続される側を「分散電源側」という。第2電力装置B2は、通信処理部31および出力制御部32を含む。
【0037】
通信処理部31は、処理装置A1(第1処理部11および第2処理部12)および蓄電装置C1のそれぞれと、出力制御部32との通信を中継する。通信処理部31は、第2処理部12から第2誘導指令値を受信する。通信処理部31は、受信した第2誘導指令値を用いて、所定の演算式および制約条件によって、出力制御部32の出力目標値(以下「第2出力目標値」という)を算出する。この演算式および制約条件は、例えば特許文献2に記載されたものと同じである。つまり、通信処理部31が行う出力制御部32の第2出力目標値の算出方法は、特許文献2に記載された算出方法と同じである。なお、特許文献2に記載されるように、通信処理部21と通信処理部31とに設定される各演算式は、互いに同じであるが、これらに設定される制約条件は異なる。通信処理部31は、算出した第2出力目標値を、出力制御部32に出力する。
【0038】
出力制御部32は、通信処理部31から第2出力目標値が入力され、第2電力装置B2の出力電力が第2出力目標値となるように出力制御を行う。出力制御部32(第1電力装置B1)の出力電力を「PCS出力」ということがある。PCSは、パワーコンディショナの略称である。第2出力目標値が正の値のとき、第2電力装置B2は、分散電源側から系統側に電力を出力する。一方、第2出力目標値が負の値のとき、第2電力装置B2は、系統側から分散電源側に電力を出力する。出力制御部32は、PCS出力の情報を、通信処理部31を介して、処理装置A1に送信する。出力制御部32は、PCS出力の情報を、所定の周期(第2出力電力送信周期)ごとに送信する。電力システムS1は、第2電力装置B2(出力制御部32)による出力電力の制御によって、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力と第2蓄電池BT2の充電電力および放電電力とが制御される。
【0039】
次に、第2処理部12が行う受信制御指令値(受信第1誘導指令値および受信第2誘導指令値)の変更について、図2を参照して、説明する。電力システムS1の運用目標は、例えば再生可能エネルギーによる発電電力を有効活用することであり、本実施形態では、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力を有効活用することである。電力システムS1は、第1処理部11が算出した制御指令値(第1誘導指令値および第2誘導指令値)を用いて、各第1電力装置B1および第2電力装置B2がそれぞれ出力制御すると、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を抑制することがある。例えば、各第1電力装置B1が第1蓄電池BT1(電気自動車)を放電して負荷Lに電力を供給しつつ、第2電力装置B2も負荷Lに電力を供給する状況において、負荷Lの消費電力よりも負荷Lへの供給電力が大きいと、第2電力装置B2から負荷Lへの供給電力を小さくするために、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を抑制することがある。そこで、電力システムS1は、第2処理部12によって送信第1誘導指令値を受信第1誘導指令値と異なる値に変更し、第2電力装置B2の出力電力を増加させる。図2は、このような第2処理部12の制御指令値の変更動作を示す模式図である。図2に示す例では、受信第1誘導指令値と送信第1誘導指令値とが異なり、受信第2誘導指令値と送信第2誘導指令値とは同じである場合を示す。図2において、第1誘導指令値を「Pr1」、第2誘導指令値を「Pr2」と記載する。
【0040】
図2(a)に示す動作例において、第2処理部12は、受信第2誘導指令値を、所定の補正アルゴリズムXに従って変更して、送信第1誘導指令値とする。つまり、図2(a)は、受信第1誘導指令値および受信第2誘導指令値の再割り当てと、補正アルゴリズムXによる補正とによって変更する例である。図2(b)に示す例において、第2処理部12は、受信第1誘導指令値を、所定の補正アルゴリズムXに従って変更して、送信第1誘導指令値とする。つまり、図2(b)は、補正アルゴリズムXによる補正によって変更する例である。図2(c)に示す例において、第2処理部12は、受信第2誘導指令値を変更することなくそのまま、送信第1誘導指令値とする。つまり、図2(c)は、受信第1誘導指令値および受信第2誘導指令値の再割り当てによって変更する例である。そして、図2(a)~(c)において、第2処理部12は、生成した送信第1誘導指令値を、各第1電力装置B1に送信する。一方で、図2(a)~(c)に示すように、第2処理部12は、受信第2誘導指令値を変更することなくそのまま送信第2誘導指令値とし、当該送信第2誘導指令値を第2電力装置B2に送信する。第2処理部12は、図2(a)~(c)のいずれかの処理を行うことで、送信第1誘導指令値(変更後第1誘導指令値)を、各第1蓄電池BT1を充電させる値、または、各第1蓄電池BT1の放電を抑制する値にする。これにより、各第1電力装置B1に第1蓄電池BT1の充電を行わせるか、各第1電力装置B1に第1蓄電池BT1の放電を抑制させる。このような第1蓄電池BT1の充電または放電抑制によって接続点電力が変化(低下)するので、当該変化(低下)に応じて、第1処理部11が算出する第2誘導指令値は、第2電力装置B2の出力電力を増加させる値に変化する。これにより、第2電力装置B2の出力電力が増加するので、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電を抑制しなくてもよい。従って、電力システムS1は、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力を有効活用するという運用目標を達成する。また、電力システムS1は、上記のように、接続点電力の変化によって、第2誘導指令値の算出値が変化するので、接続点電力を目標電力にするシステム目標をも達成する。
【0041】
また、電力システムS1は、上記運用目標を達成するために、第2処理部12によって第2電力装置B2に対する第2誘導指令値の上限を制限する。電力システムS1では、第2蓄電池BT2の充電率が低下した場合などにおいて、第2蓄電池BT2の充電を行う。このとき、第1処理部11が算出した制御指令値(第1誘導指令値および第2誘導指令値)を用いて、各第1電力装置B1および第2電力装置B2がそれぞれ出力制御すると、第2蓄電池BT2に設定される充電Cレートに応じた許容充電電力を超えて、第2蓄電池BT2に電力が供給されることがある。この場合、第2蓄電池BT2の過充電を発生させる虞がある。そこで、第2蓄電池BT2に供給される電力を、第2蓄電池BT2の充電Cレートに応じた許容充電電力以下にするために、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力を抑制することがある。そこで、電力システムS1では、上記の通り、第2誘導指令値の上限を制限し、第2電力装置B2から第2蓄電池BT2への電力供給量を調整する。
【0042】
第2処理部12は、第1処理部11からの受信第2誘導指令値が、所定の上限値を超える場合に、受信第2誘導指令値を当該上限値に制限して、変更後第2誘導指令値に変更する。このとき、第2処理部12は、発電ユニット総出力に応じて、第2誘導指令値に対する上限値を変化させる。例えば、発電ユニット総出力が大きければ、上限値を小さくして、第2電力装置B2から第2蓄電池BT2への出力電力を小さくする。一方、発電ユニット総出力が小さければ、上限値を大きくして、第2電力装置B2から第2蓄電池BT2への出力電力を大きくする。このように、第2処理部12は、発電ユニット総出力に応じて、上記上限値を変化させることで、第2電力装置B2の出力電力を調整する。なお、第2処理部12が行う第2誘導指令値の上限値の変更は、発電ユニット総出力を用いた所定の演算式によって線形的に変更してもよいし、発電ユニット総出力を所定の範囲毎に区切って段階的に変更してもよい。これにより、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を抑制することなく、第2蓄電池BT2への供給電力が、第2蓄電池BT2の充電Cレートに応じた許容充電電力を超えないようにできる。従って、電力システムS1は、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力を有効活用することができる。また、第2機能によって、第2蓄電池BT2への供給電力が、第2蓄電池BT2の充電Cレートに応じた充電電力を超えないようにできるので、第2蓄電池BT2の過充電を抑制できる。
【0043】
以上のように、電力システムS1は、第1処理部11がシステム目標を達成させるための制御指令値(第1誘導指令値および第2誘導指令値)を算出し、第2処理部12が、運用目標を達成させるために第1処理部11が算出した制御指令値を変更する。そして、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2のうちのいずれかが、第1処理部11が算出した制御指令値(変更前の制御指令値)に基づいて出力電力を制御するので、上記システム目標が達成される。また、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2のうちのその他が、第2処理部12が変更した制御指令値(変更後の制御指令値)に基づいて出力電力を制御するので、上記運用目標が達成される。つまり、電力システムS1は、システム全体に設定されるシステム目標を達成しつつ、システム目標と異なる運用目標を達成するように電力制御が行われる。また、電力システムS1は、上述の通り、発電ユニット総出力に応じて、第2電力装置B2の出力電力が調整されるので、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を抑制することなく、第2蓄電池BT2への供給電力が、第2蓄電池BT2の充電Cレートに応じた許容充電電力を超えないようにできる。これにより、電力システムS1は、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3が、発電した電力を極力出力することができるので、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力を有効活用することができる。以上のことから、電力システムS1は、システム全体としての電力制御を行いつつ、再生可能エネルギーによる発電電力を有効に活用することが可能となる。
【0044】
次に、電力システムS1に異常が発生した場合について、説明する。電力システムS1は、異常の発生箇所に応じて、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を選択的に継続あるいは停止させる。なお、電力システムS1は、当該異常発生時は、上記システム目標および上記運用目標の達成を、適宜中断させてもよい。本実施形態では、先述の異常として、以下に示す第1ないし第3異常が発生した場合について、順に説明する。
【0045】
第1異常は、例えば、図3に示すように、第1処理部11の故障、第1処理部11と第2処理部12との通信異常、第1処理部11と検出装置D1との通信異常、第2処理部12が受信する受信制御指令値のデータ異常などである。これらの異常のいずれか(第1異常)が発生した場合、第2処理部12は、第1処理部11から受信制御指令値を正常に受信できない。そのため、第2処理部12は、適正な送信制御指令値を生成できなくなる。一方で、第1異常では、電力ネットワークに繋がる機器自体は正常である。そこで、第2処理部12は、第1異常が発生したとき、第1異常が発生する直前に送信した送信制御指令値を送信する。これにより、第1異常が発生する直前の状態を継続させ、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を継続させる。あるいは、第2処理部12は、第1異常が発生したとき、第1異常に対して予め設定された値(設定値)を送信制御指令値として送信する。これにより、最低限必要な負荷Lの消費電力分だけ、第2電力装置B2からの電力供給を継続させ、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を継続させる。以上のように、電力システムS1は、第1異常が発生しても、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力を活用することができる。なお、第2処理部12は、例えば、次の判断基準によって、第1異常の発生を検出する。それは、第2処理部12は、第1処理部11からの受信制御指令値を所定時間(例えば上記処理周期)以上受信しなかった場合、受信する受信制御指令値の誤り検出を行い、この誤り検出によって受信制御指令値にエラーが生じていると判断される場合、または、処理装置A1から異常信号(検出装置D1の異常を示す信号)を受信した場合に、第1異常が発生したことを検出する。誤り検出の方法は、周知の方法を採用すればよい。
【0046】
第2異常は、例えば、図4に示すように、第2処理部12と複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3のいずれかとの通信異常、過電流検出基板54の故障、過電流検出基板54と第2処理部12との通信異常などである。これらの異常のいずれか(第2異常)が発生した場合、第2処理部12は、送信制御指令値を生成するための情報(受信制御指令値を変更するための情報)を正常に取得できない。そのため、第2処理部12は、例えば、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の状態および過電流検出基板54からのCレート超過接点の情報を受信できないので、適正な送信制御指令値を生成できなくなる。一方で、第2異常では、各第1電力装置B1および第2電力装置B2は正常である。そこで、第2処理部12は、第2異常が発生したとき、図4に示すように、1つの太陽光発電ユニットPVU1による発電を継続し、他の太陽光発電ユニットPVU2,PVU3による発電を停止させる。このとき、発電を停止させる太陽光発電ユニットPVU2,PVU3が接続される電磁接触器MC2,MC3を開放させる。これにより、電力システムS1は、第2異常が発生しても、太陽光発電ユニットPVU1による発電が継続されるので、太陽光発電ユニットPVU1の発電電力を活用することができる。第2異常が発生した状態では、第1異常と同様に第2電力装置B2は正常に動作しているので、電力システムS1は、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力を出力させることが可能である。ただし、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力がすべて出力されると、第2蓄電池BT2への過充電が生じて、第2蓄電池BT2を故障させる虞がある。しかしながら、1つの太陽光発電ユニットPVU1による発電だけならば第2蓄電池BT2への過充電が発生する可能性が低いので、第2異常の発生時に1つの太陽光発電ユニットPVU1による発電のみを継続させることが可能である。なお、図4では、太陽光発電ユニットPVU1による発電を継続させる例を示すが、太陽光発電ユニットPVU1の代わりに、他の太陽光発電ユニットPVU2,PVU3のいずれかによる発電を継続させてもよい。なお、第2処理部12は、例えば、次の判断基準によって、第2異常の発生を検出する。それは、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3からの信号を所定時間(例えば上記発電電力送信周期)以上受信しない場合、または、第2蓄電池BT2の充電電流が充電Cレートに基づく電流を超過しているにも関わらず、過電流検出基板54からのCレート超過接点の情報信号を受信しない場合、第2異常が発生したことを検出する。第2処理部12は、第2蓄電池BT2の充電電流が充電Cレートに基づく電流を超過しているか否かを、上記PCS出力および複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の各発電電力から判断できる。
【0047】
第3異常は、例えば、図5に示すように、第2処理部12と第2電力装置B2との通信異常、第2電力装置B2と蓄電装置C1との通信異常、第2蓄電池BT2の故障、各配線用遮断器CB1~CB3のトリップ異常などである。なお、トリップ異常とは、各配線用遮断器CB1~CB3が遮断されるべき状況で遮断されない場合の異常である。これらの異常のいずれか(第3異常)が発生した場合、第2電力装置B2は、停止したり、第2処理部12からの送信制御指令値を受信できなかったりするので、出力電力の制御を適正に行うことができない。このような状態では、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を継続すると、さらなる故障が発生する虞がある。そこで、第2処理部12は、第3異常が発生したとき、図5に示すように、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電をすべて停止させる。このとき、複数の電磁接触器MC1~MC3をすべて開放させる。これにより、電力システムS1は、さらなる故障の発生を抑制することができるので、電力システムS1の損害を抑えることが可能となる。なお、第2処理部12は、例えば、次の判断基準によって、第3異常の発生を検出する。それは、第2処理部12は、第2電力装置B2からの信号を所定時間(例えば上記第2出力電力送信周期)以上受信しなかった場合、第2電力装置B2から異常信号(蓄電装置C1との通信異常または第2蓄電池BT2の異常を知らせる信号)を受信した場合、または、複数の配線用遮断器CB1~CB3のいずれかから異常信号(各配線用遮断器CB1~CB3の異常を知らせる信号)を受信した場合、第3異常が発生したことを検出する。
【0048】
以上のように電力システムS1は、電力システムS1に異常が発生した場合、当該異常の発生箇所に応じて、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を選択的に継続あるいは停止させる。本実施形態における異常は、上記第1異常および上記第2異常を含み、第1異常および第2異常のそれぞれにおいて、次の処理が行われる。それは、電力システムS1は、第1異常が発生したとき、第1異常が発生する直前に送信した送信制御指令値を継続して送信するか、あるいは、第1異常に対する設定値を送信制御指令値として送信する。これにより、第1異常発生時の状態を維持するか、最低限必要な負荷Lの消費電力分だけ第2電力装置B2から電力供給することで、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電が継続される。従って、電力システムS1は、第1異常が発生しても、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力を活用することができる。また、電力システムS1は、第2異常が発生したとき、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3のうち、いずれか1つによる発電を継続し、他のものによる発電を停止する。これにより、電力システムS1は、第2異常が発生しても、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3のうちの1つによる発電を活用することができる。以上のことから、電力システムS1は、電力システムS1に異常が発生した場合であっても、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力をできる限り活用することが可能である。
【0049】
また、本実施形態における異常は、上記第3異常をさらに含み、第3異常において、電力システムS1は、複数の太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電のすべてを停止する。これにより、電力システムS1は、第3異常が発生した状態で各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3による発電を継続した場合に生じうる故障の発生を抑制できる。従って、電力システムS1は、第3異常時に発生しうる電力システムS1のさらなる損害を抑えることが可能となる。つまり、電力システムS1は、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3の発電電力をできる限り活用しつつ、さらなる損害を抑えることが可能である。
【0050】
上記実施形態では、処理装置A1に第1処理部11および第2処理部12が設けられた例を示したが、第1処理部11と第2処理部12とが異なる装置にそれぞれ設けられていてもよい。この構成では、例えば、第1処理部11を備える装置と、第2処理部12を備える装置とが個別に設けられる。
【0051】
上記実施形態では、電力システムS1が1つの第2電力装置B2を備えていたが、交流線路91に対して互いに並列に接続された複数の第2電力装置B2を備えていてもよい。複数の第2電力装置B2はそれぞれ、共通の第1誘導指令値によって、電力制御を行う。この場合、複数の第2電力装置B2の各々に対して、1つ以上の太陽光発電ユニット、1つ以上の電磁接触器、1つ以上の配線用遮断器、1つ以上の蓄電装置がそれぞれ設けられる。そして、各第2電力装置B2は、処理装置A1からの制御指令値(第2誘導指令値)を受信し、当該第2誘導指令値に基づいて電力制御を行う。
【0052】
上記実施形態では、処理装置A1が、特許文献2に記載の電力システムと同様に、状態方程式を解くことで、制御指令値(第1誘導指令値および第2誘導指令値)を算出し、各第1電力装置B1および第2電力装置B2が分散的に出力制御を行う例を示した。この構成とは異なり、第1処理部11が、システム目標を達成させるための各第1出力目標値および第2出力目標値を算出し、第2処理部12が、運用目標を達成させるために、第1出力目標値および第2出力目標値を変更してもよい。つまり、第1処理部11によって算出される制御指令値は、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2が分散的に出力目標を算出するための指標ではなく、複数の第1電力装置B1の各第1出力目標値および第2電力装置B2の第2出力目標値であってもよい。このような構成を第2実施形態として、図6を参照して、以下に説明する。
【0053】
図6は、第2実施形態に係る電力システムS2を示している。図6に示すように、電力システムS2は、電力システムS1と同じ構成要素を備えるが、通信ネットワークの接続が異なる。
【0054】
電力システムS2において、第1処理部11は、各第1電力装置B1から、出力電力、定格出力および第1蓄電池BT1の蓄電池情報(充電率、定格容量、充電Cレートおよび放電Cレート)などを受信する。第1処理部11は、第2電力装置B2から、出力電力、定格出力および第2蓄電池BT2の蓄電池情報(充電率、定格容量、充電Cレートおよび放電Cレート)などを受信する。第1処理部11は、検出装置D1から接続点電力を受信する。第1処理部11は、各太陽光発電ユニットPVU1~PVU3から、発電電力および定格出力などの情報を取得する。第1処理部11は、各配線用遮断器CB1~CB3から、その状態を示す情報などを受信する。第1処理部11は、過電流検出基板54からCレート超過接点の情報などを受信する。そして、第1処理部11は、これらの受信した情報と上記目標電力とによって、複数の第1電力装置B1のそれぞれの第1出力目標値および第2電力装置B2の第2出力目標値を算出する。よって、第1処理部11は、システム目標を達成するための複数の第1電力装置B1の各第1出力目標値および第2電力装置B2の第2出力目標値を算出する。第1処理部11は、算出した複数の第1出力目標値および第2出力目標値を第2処理部12に送信する。
【0055】
第2処理部12は、受信した複数の第1出力目標値および第2出力目標値を、上記運用目標を達成するために変更する。そして、第2処理部12は、複数の第1出力目標値および第2出力目標値のうち、変更したものは変更後の値を、変更しないものは変更前の値を、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2にそれぞれ送信する。
【0056】
複数の第1電力装置B1はそれぞれ、第2処理部12から受信する変更前または変更後の第1出力目標値によって、出力制御を行い、第2電力装置B2は、第2処理部12から受信する変更前または変更後の第2出力目標値によって、出力制御を行う。従って、電力システムS2では、複数の第1電力装置B1および第2電力装置B2は、複数の第1出力目標値および第2出力目標値をそれぞれ算出しない。
【0057】
以上のように構成された電力システムS2においても、電力システムS1と同様に、第1処理部11がシステム目標を達成させるための制御指令値(第1出力目標値および第2出力目標値)を算出し、第2処理部12が、運用目標を達成させるために第1処理部11が算出した制御指令値を変更する。従って、電力システムS2は、電力システムS1と同様に、システム目標および運用目標の両方を達成させることができるので、システム全体としての電力制御を行いつつ、再生可能エネルギーによる発電電力を有効に活用することが可能となる。
【0058】
本開示に係る電力システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0059】
S1,S2:電力システム、A1:処理装置、11:第1処理部、12:第2処理部、B1:第1電力装置、B2:第2電力装置、91:交流線路、92:直流線路、BT1:第1蓄電池、BT2:第2蓄電池、PVU1~PVU3:太陽光発電ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6