(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000437
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】海藻を用いた温室効果ガス削減方法
(51)【国際特許分類】
A23K 10/30 20160101AFI20231225BHJP
A23L 17/60 20160101ALN20231225BHJP
【FI】
A23K10/30
A23L17/60 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099204
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】504198326
【氏名又は名称】山本 允之
(74)【代理人】
【識別番号】100067758
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 綾雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 允之
【テーマコード(参考)】
2B150
4B019
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB20
2B150AE01
2B150AE02
2B150AE41
2B150BA01
4B019LE04
(57)【要約】
【課題】
家畜の排出する二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を削減し、地球温暖化の防止に寄与する。
【解決手段】
養殖又は採取により生産した、海藻コットニー及び/又はスピノサムをパウダー化する。家畜用の飲み水に所定の配合率で海藻コットニー及び/又はスピノサムのパウダーを溶かし、飲み水とこれに混入したコットニー及び/又はスピノサムのパウダーから成る家畜用の付加飼料を作成し、該付加飼料を家畜用の飼料に配合して該飼料を家畜に与える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜用の飲み水に所定の配合率で海藻コットニー及び/又はスピノサムのパウダーを溶かし、飲み水とこれに混入したコットニー及び/又はスピノサムのパウダーから成る家畜用の付加飼料を作成する水・パウダー配合工程と、該付加飼料を家畜用の飼料に配合して該飼料を家畜に与える家畜給餌工程とを備えたことを特徴とする海藻を用いた温室効果ガス削減方法。
【請求項2】
前記海藻コットニー及び/又はスピノサムのパウダーを、養殖により生産した海藻コットニー及び/又はスピノサムから製造したことを特徴とする請求項1に記載の海藻を用いた温室効果ガス削減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻コットニー及び/又はスピノサムを用いた温室効果ガス削減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球の平均気温は14度C前後であるが、もし大気中に水蒸気、二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスがなければ、マイナス19度Cくらいになるといわれている。太陽から地球に降り注ぐ光は、地球の大気を素通りして地面を暖め、その地表から放射される熱を温室効果ガスが吸収し大気を暖めているからである。
近年、産業活動が活発になり、二酸化炭素、メタン、さらにはフロン類などの温室効果ガスが大量に排出されて大気中の濃度が高まり熱の吸収が増えた結果、気温が上昇し始めている。これが地球温暖化である。家畜生産、特に反芻動物は、温室効果ガスの世界的な排出に寄与している。これら家畜により排出される二酸化炭素は、世界の人為起源温室効果ガス排出量の約14,5%を占めている。
近年、反芻動物に少量の紅藻を含む餌を与えると、メタンの腸内排出量が99%も減少することが実証されている。また、海藻をパウダー化し、家畜の飼料とすることが従来知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
海藻をパウダー化し、海藻パウダーを家畜の飼料として与えることで温室効果ガスの減少を図ることが可能であるが、飼料が高価となるという問題点がある。
本発明は、上記問題点を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、家畜用の飲み水に所定の配合率で海藻コットニー及び/又はスピノサムのパウダーを溶かし、飲み水とこれに混入したコットニー及び/又はスピノサムのパウダーから成る家畜用の付加飼料を作成する水・パウダー配合工程と、該付加飼料を家畜用の飼料に配合して該飼料を家畜に与える家畜給餌工程とを備えたことを特徴とする。
また、本発明は、前記海藻コットニー及び/又はスピノサムのパウダーを、養殖により生産した海藻コットニー及び/又はスピノサムから製造したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、安価な海藻であるコットニー及び/又はスピノサムをパウダー化し、この海藻パウダーを、家畜用の飲み水に溶かし、海藻パウダーを溶かした飲み水を家畜の飼料に付加する付加飼料とすることで家畜による温室効果ガスの発生を安価に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
本発明で使用される海藻は、コットニーとスピノサムである。コットニーはインドネシア産の海藻(紅藻類)で学名は(kappaphicus Cottonii)である。また、スピノサムはフィリピン産の海藻(紅藻類)で学名は(Eucheuma Spinosum)である。これらの海藻は他の海藻に比し、養殖に適し低いコストで大量生産することができる。
【0009】
本実施形態では第1段階としてコットニー及びスピノサムを南洋のパラオその他養殖に適した地で養殖により大量生産する(コットニー・スピノサム養殖生産工程S1)。コットニー・スピノサムの養殖段階では、苗の手入れが行われる。コットニー・スピノサムは太陽の光合成で成長するという大原則がある。その太陽の光合成を十分に取り入れるためには、毎日の苗の手入れが重要となる。太陽の光を十分に当て、ビニールなどのごみを除去し、掃除をして充分に手入れされたコットニー・スピノサムの苗は、病気になりにくいという特徴とカラギーナンが大量に入るという利点がある。
【0010】
上記養殖期間は、本実施形態では、30日~60日を設定している。上記養殖期間を経たコットニー・スピノサムの苗を収穫する(収穫工程S2)。収穫した苗は、粗塩を使い乾燥してコットニー乾燥品2、スピノサム乾燥品4とする。乾燥されたコットニー・スピノサムは、水道水の水に付け水戻しする。水戻しとは、乾燥させた状態から水分を含ませて元の状態に戻すことである(水戻し工程S3)。
【0011】
次に、浮き上がったゴミの除去と、下に落ちた塩や砂等の除去を水道水を取替えて複数回行い(水洗い工程S4)、更に水にさらして塩分を除去する(塩分処理工程S5)。尚、養殖期間を経たコットニー・スピノサムの収穫物を、乾燥工程を経ないでコットニー生製品6、スピノサム生製品8を、直接水洗い工程S4に移行させてもよい。
【0012】
次に、コットニー・スピノサムをビニールハウス内で過乾燥にならないように充分手を加えて乾燥させる(乾燥工程S6)。
次に、コットニーとスピノサムをそれぞれ機械を用いて粗切断する(粗切断工程S7)。
次に、この粗切断したコットニーとスピノサムをそれぞれ機械を用いて粗粉砕し(粗粉砕工程S8)、更に機械を用いて温度50度Cで200ミクロンにパウダー化する(乾燥粉砕工程S9)。
【0013】
次に、出来上がったパウダーを篩にかけパウダーの残さ処理を行う(残さ処理工程S10)。残さ処理の終わったコットニーパウダー10とスピノサムパウダー12を、所定量ビニール袋14に詰め(袋詰め工程S11)、パウダー製品として保管しておく。
次に、コットニー・スピノサム・パウダー製品を牛や豚などの家畜の飼料に付加するための温室効果ガス削減用付加飼料とする工程について説明する。
【0014】
まず、家畜飼育者は、コットニーとスピノサムのパウダーを所定の例えば5:5あるいは7:3などの比率で混合する(コットニー・スピノサム・パウダー混合工程S12)。
次に、飼育者は、容器16に入れた家畜の飲み水18に、混合パウダー20を溶かし、飲み水18に所定の配合率で混合パウダー20を配合して、付加飼料を作成する(水・パウダー配合工程S13)。飲み水に対するパウダーの配合率の一例を下記表(1)に示す。
【0015】
【0016】
家畜飼育者は、飼育する家畜の通常の餌に付加飼料を所定の割合で混合して、所定量の飼料を家畜に与える(家畜給餌工程)。
以上で本発明の全工程が完了する。
上記実施形態では、コットニーとスピノサムのパウダーを混合して混合パウダーとし、このパウダーを水に溶かして付加飼料を作成したが、コットニーのパウダーのみ又はスピノサムのパウダーのみで付加飼料を作成するようにしてもよい。また、本発明に使用されるコットニーとスピノサムは特に養殖されたものに限定されるものではない。
【0017】
[飲み水にパウダーを溶かして付加飼料とし、これを主飼料と一緒に家畜に食べさせる飼料とするコスト上のメリット]
家畜の1回に食べる飼料の量はほぼ決まっている。そのため、家畜の1回に食べる飼料に飲み水を含む低コストの付加飼料を加えると、家畜が1回に食べる付加飼料以外の飼料の量が減少し、1回に食べる飼料の全体のコストを低下させることができる。
【符号の説明】
【0018】
2 コットニー乾燥品
4 スピノサム乾燥品
6 コットニー生製品
8 スピノサム生製品
10 コットニーパウダー
12 スピノサムパウダー
14 ビニール袋
16 容器
18 飲み水
20 混合パウダー