(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043703
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】倒壊防止鋼管柱
(51)【国際特許分類】
E04H 12/00 20060101AFI20240326BHJP
E04H 12/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E04H12/00 A
E04H12/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148846
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 英幸
(57)【要約】
【課題】犬の尿などによる倒壊を確実に防止可能な倒壊防止鋼管柱を提供する。
【解決手段】鋼管で構成され、下部2aが地中Gに埋設される鋼管柱本体2と、棒状で鋼管柱本体2内に配設され、下部3aが地中Gに固定されて鋼管柱本体2の倒壊を防止する倒壊防止体3と、倒壊防止体3の上部に設けられ、鋼管柱本体2が傾く際の衝撃を緩和する衝撃緩和体4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管で構成され、下部が地中に埋設される鋼管柱本体と、
棒状で前記鋼管柱本体内に配設され、下部が地中に固定されて前記鋼管柱本体の倒壊を防止する倒壊防止体と、
前記倒壊防止体の上部に設けられ、前記鋼管柱本体が傾く際の衝撃を緩和する衝撃緩和体と、
を備えることを特徴とする倒壊防止鋼管柱。
【請求項2】
前記倒壊防止体の下部が、前記鋼管柱本体の下端よりも延びて地中に埋設されることで、地中に固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の倒壊防止鋼管柱。
【請求項3】
前記倒壊防止体の下部が、前記鋼管柱本体の下部に連結されることで、地中に固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の倒壊防止鋼管柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒壊防止機能を備えた鉄鋼柱である倒壊防止鋼管柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、引込用鋼管柱を建柱して引込線を敷設し、電気を供給する場合があり、引込用鋼管柱は、鋼管を2本つなぎ合わせて設置される。このような引込用鋼管柱には、根元から所定の範囲に環境配慮型の防食塗料が塗布されているが、歩道等に設置されている場合、犬の尿などによって根元が腐食し、さらには、倒壊(転倒)するおそれがある。
【0003】
このような背景の下、鋼管柱を補強して倒壊を防止する補強構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この補強構造は、鋼管柱本体の下部の外側に外管を嵌着して鋼管柱本体を補強し、外管の下側のベースプレートをボルトで地中に固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の補強構造では、外管のベースプレートがボルトで地中に固定されているため、犬の尿などによってボルトが腐食したり、ベースプレートと地中との隙間から尿などが鋼管柱本体に接触したりする。そして、この結果、外管が地中から外れるとともに鋼管柱本体の根元が腐食し、さらには、鋼管柱本体が倒壊(転倒)するおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、犬の尿などによる倒壊を確実に防止可能な倒壊防止鋼管柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、鋼管で構成され、下部が地中に埋設される鋼管柱本体と、棒状で前記鋼管柱本体内に配設され、下部が地中に固定されて前記鋼管柱本体の倒壊を防止する倒壊防止体と、前記倒壊防止体の上部に設けられ、前記鋼管柱本体が傾く際の衝撃を緩和する衝撃緩和体と、を備えることを特徴とする倒壊防止鋼管柱である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の倒壊防止鋼管柱において、前記倒壊防止体の下部が、前記鋼管柱本体の下端よりも延びて地中に埋設されることで、地中に固定される、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の倒壊防止鋼管柱において、前記倒壊防止体の下部が、前記鋼管柱本体の下部に連結されることで、地中に固定される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、倒壊防止体が鋼管柱本体内に配設されているため、犬の尿などによって倒壊防止体が腐食、損傷することがない。このため、たとえ鋼管柱本体が犬の尿などで腐食して損傷・折損したとしても、鋼管柱本体が倒壊するのを倒壊防止体によって確実に防止することが可能となる。しかも、鋼管柱本体が傾く際の衝撃が衝撃緩和体によって緩和されるため、鋼管柱本体が傾く際の衝撃によって鋼管柱本体に配設された機器や配電線などが損傷や脱落するのを防止することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、倒壊防止体の下部が地中に埋設されて固定されるため、強固に固定することが可能で、鋼管柱本体が倒壊するのを倒壊防止体によってより確実に防止することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、倒壊防止体が鋼管柱本体に連結されて地中に固定されるため、鋼管柱本体を地中に埋設すれば、倒壊防止体を地中に固定することが可能で、倒壊防止体を地中に埋設するために地中を深く掘る必要もない。このため、設置に要する時間と労力、費用を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る倒壊防止鋼管柱を示す概略断面図である。
【
図2】
図1の倒壊防止鋼管柱の鋼管柱本体の根元が折損した状態を示す概略断面図である。
【
図3】この発明の実施の形態2に係る倒壊防止鋼管柱を示す概略断面図である。
【
図4】
図3の倒壊防止鋼管柱の鋼管柱本体と倒壊防止体の連結構造を示す分解正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る倒壊防止鋼管柱1を示す概略断面図である。この倒壊防止鋼管柱1は、倒壊防止機能を備えた鉄鋼柱であり、主として、鋼管柱本体2と、倒壊防止体3と、衝撃緩和体4と、を備える。
【0016】
鋼管柱本体2は、従来の鋼管柱と同等の構成で、鋼管で構成され、下部2aが地中Gに埋設される。ここで、この実施の形態では、鋼管を2本つなぎ合わせて構成されるが、1本の鋼管で構成したり、3本以上の鋼管で構成したりしてもよい。また、鋼管柱本体2の下部2aが地中Gに埋設される第1の深さD1は、鋼管柱本体2が強固かつ安定して地中Gに設置されるように設定されている。
【0017】
倒壊防止体3は、棒状で鋼管柱本体2内に配設され、下部3aが地中Gに固定されて鋼管柱本体2の倒壊を防止するものであり、この実施の形態では、下部3aが、鋼管柱本体2の下端よりも延びて地中Gに埋設されることで、地中Gに固定される。
【0018】
具体的には、鋼管で構成され、下部3aが鋼管柱本体2の下端よりも第2の深さD2だけ延びて地中Gに埋設される。つまり、鋼管柱本体2とは別に、下部3aが地中Gに埋設されることで、倒壊防止体3が設置、固定される。この第2の深さD2は、倒壊防止体3が強固かつ安定して地中Gに設置され、かつ、鋼管柱本体2の倒壊を確実に防止できるように(鋼管柱本体2を強固に支えられるように)設定されている。ここで、鋼管柱本体2の根元が犬の尿などで腐食して損傷・折損した状態で、万一人などが倒壊防止鋼管柱1に登ったとしても、鋼管柱本体2が倒壊しないことも含めて、倒壊防止体3の材質、太さおよび第2の深さD2などが設定されている。
【0019】
また、鋼管柱本体2の倒壊を確実に防止できるように、倒壊防止体3の上端の高さが設定されている。例えば、鋼管柱本体2が地面から突出した高さの略中央部に、倒壊防止体3の上端が位置するように設定されている。換言すると、このような第2の深さD2および上端位置になるように、倒壊防止体3の全長が設定されている。
【0020】
衝撃緩和体4は、倒壊防止体3の上部に設けられ、鋼管柱本体2が傾く際の衝撃を緩和・吸収するためのショックアブソーバーである。すなわち、この実施の形態では、ゴム材で構成された円盤状で、倒壊防止体3の上端近くに配設されている。この倒壊防止体3の衝撃吸収性、形状および大きさは、鋼管柱本体2が外力によって傾く際に、その衝撃を緩和・吸収して、鋼管柱本体2に配設された機器や配電線などが損傷や脱落等しないように設定されている。また、衝撃緩和体4の大きさは、平常時に鋼管柱本体2の内壁に接しないように設定され、これにより、衝撃緩和体4が鋼管柱本体2に接することで、結露などによって鋼管柱本体2の内壁に錆などが発生、進行しないようになっている。
【0021】
以上のように、この倒壊防止鋼管柱1によれば、倒壊防止体3が鋼管柱本体2内に配設されているため、犬の尿などによって倒壊防止体3が腐食、損傷することがない。このため、
図2に示すように、たとえ鋼管柱本体2の根元が犬の尿などで腐食して損傷・折損したとしても(傾いたとしても)、鋼管柱本体2が倒壊するのを倒壊防止体3によって確実に防止することが可能となる。しかも、鋼管柱本体2が傾く際の衝撃が衝撃緩和体4によって緩和されるため、鋼管柱本体2が傾く際の衝撃によって鋼管柱本体2に配設された機器や配電線などが損傷や脱落したりするのを防止することが可能となる。
【0022】
また、倒壊防止体3の下部3aが地中Gに直接埋設されて固定されるため、倒壊防止体3を強固に固定することが可能で、鋼管柱本体2が倒壊するのを倒壊防止体3によってより確実に防止することが可能となる。
【0023】
(実施の形態2)
図3は、この実施の形態に係る倒壊防止鋼管柱10を示す概略断面図である。この実施の形態では、倒壊防止体3の下部3aが、鋼管柱本体2の下部2aに連結されることで、地中Gに固定される点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0024】
すなわち、地中Gに位置する倒壊防止体3の下部3aに、複数の連結盤(連結体)5が配設(溶接等)されている。この実施の形態では、下部3aの上側と下側にそれぞれ1つの連結盤5が配設されている。この連結盤5は、鉄鋼製の略円盤体で、その外径は、鋼管柱本体2の内径よりもやや小さく設定されている。また、
図4に示すように、連結盤5の側面には、ネジ穴5aが周方向に複数形成されている。
【0025】
一方、鋼管柱本体2の下部2aの側面には、ネジ挿入孔2bが周方向に複数形成されているとともに、連結盤5の数に応じて軸方向に複数形成されている。そして、倒壊防止体3の下部3aを鋼管柱本体2の下部2aに挿入し、連結ネジ6を各ネジ挿入孔2bに挿入して各ネジ穴5aに螺合することで、倒壊防止体3の下部3aが鋼管柱本体2の下部2aに連結されている。このような連結状態で、鋼管柱本体2の下部2aを地中Gに埋設すると、連結盤5を介して倒壊防止体3の下部3aが地中Gに間接的に埋設、固定されるものである。
【0026】
このように、この実施の形態によれば、倒壊防止体3が鋼管柱本体2に連結されて地中Gに固定されるため、鋼管柱本体2を地中Gに埋設すれば、倒壊防止体3を地中Gに埋設、固定することが可能で、倒壊防止体3を地中Gに埋設するために地中Gを深く(鋼管柱本体2の下部2aよりも深く)掘る必要もない。このため、設置に要する時間と労力、費用を軽減することが可能となる。
【0027】
また、連結ネジ6を締め付けたり取り外したりすることで、鋼管柱本体2と倒壊防止体3を連結したり分離したりできるため、運搬や保管などの取り扱いが容易となる。
【0028】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態1において、倒壊防止体3の下部3aに略水平に延びる腕材・腕金を取り付けて、この腕材とともに下部3aを地中Gに埋設することで、下部3aが強固に固定されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1、10 倒壊防止鋼管柱
2 鋼管柱本体
2a 下部
3 倒壊防止体
3a 下部
4 衝撃緩和体
5 連結盤(連結体)
6 連結ネジ
G 地中