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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043705
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両電源システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20240326BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60W50/00
B60R16/033 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148848
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 壱規
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA26
3D241BA63
3D241BB71
3D241CC19
3D241DA69Z
(57)【要約】
【課題】自動運転など交通の安全性確保のために機能する機能部を搭載した車両において、電源供給に起因する機能部の利用機会の減少を抑制する。
【解決手段】車両電源システムは、少なくとも部分的に自律運転可能な車両に搭載され、主電源系統と、バックアップ電源系統と、高圧電源と、を備え、バックアップ電源制御装置は、バックアップ低圧電源から供給可能な供給可能電力を推定する推定処理を実行可能であり、車両が自律運転モードで自律運転しているとき、供給可能電力が第2閾値未満である場合には、車両が自律運転モードで自律運転することを禁止することを示す信号を出力し、供給可能電力が第3閾値以下である場合には、車両が自律運転モードを継続し、かつ、高圧電源が発生する電力によりバックアップ低圧電源を充電することを許可することを示す信号を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも運転者による操舵操作の免除を許可して実行する自律運転モードで、少なくとも部分的に自律運転可能な車両に搭載され、メイン低圧電源及び通常負荷を有する主電源系統と、バックアップ低圧電源及び緊急時重要負荷を有し、前記主電源系統と接続されているバックアップ電源系統と、前記バックアップ電源系統の定格電圧よりも高い電圧を出力可能な高圧電源部と、を備える車両電源システムであって、
前記バックアップ電源系統は、
前記バックアップ低圧電源の状態を監視し、前記バックアップ低圧電源からの電力の入出力を制御するバックアップ電源制御装置を有し、
前記バックアップ電源制御装置は、前記バックアップ低圧電源から前記緊急時重要負荷に供給可能な電力量または電力を示す供給可能電力を推定する推定処理を実行可能であり、
前記車両が前記自律運転モードで自律運転していないとき、前記バックアップ電源制御装置は、
前記推定処理を実行し、
前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第1閾値以上である場合には、前記車両が前記自律運転モードで自律運転することを許可することを示す信号を出力し、
前記車両が前記自律運転モードで自律運転しているとき、前記バックアップ電源制御装置は、
前記推定処理を実行し、
前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第2閾値未満である場合には、前記車両が前記自律運転モードで自律運転することを禁止することを示す信号を出力し、
前記車両が前記自律運転モードで自律運転しているとき、前記バックアップ電源制御装置は、
前記推定処理を実行し、
前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第3閾値以下である場合には、前記車両が前記自律運転モードを継続することを許可し、かつ、前記高圧電源部が発生する電力により前記バックアップ低圧電源を充電することを許可することを示す信号を出力し、
前記第1閾値は、前記車両が前記自律運転モードで自律運転する場合に前記緊急時重要負荷を動作させるために必要な電力量に基づき定められた電力量または電力に関する閾値である、車両電源システム。
【請求項2】
前記第3閾値は、前記第1閾値以下の電力量または電力を示す値であり、前記第2閾値より大きい電力量または電力を示す値である、請求項1に記載の車両電源システム。
【請求項3】
前記高圧電源部は、前記バックアップ電源系統の定格電圧よりも高電圧の電力を出力する高電圧モード、及び、前記高電圧モードよりも低電圧の電力を出力する通常電圧モードと、を実行可能であり、
前記バックアップ電源制御装置は、前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第3閾値以下である場合には、前記高圧電源部が前記高電圧モードで発生する電力により前記バックアップ低圧電源を充電することを許可することを示す信号を出力する、請求項1または請求項2に記載の車両電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて予防安全に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。また、予防安全に貢献する技術の一つとして、自動運転に関する研究開発への注力が行われている。
【0003】
自動運転など交通の安全性確保のために機能する機能部を搭載した車両においては、この種の機能部に対する電源供給を安定させることが求められる。例えば、特許文献1には、自動運転のために機能する負荷に対して、車両の電源である第1の電源及び第3の電源から電力を供給可能であり、さらに、充放電が可能な第2の電源から電力を供給可能なシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-142810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたシステムは、負荷への電力供給を冗長化することによって、安全性確保のために機能する負荷を確実に動作させることを可能としている。このようなシステムにおいて、仮に第2の電源から負荷への電力供給ができない場合には、高い安全性を保証するために負荷を動作させないことが考えられる。このため、安全性確保のための機能部を利用する機会が減る可能性があり、課題となっていた。
本願は上記課題の解決のため、自動運転など交通の安全性確保のために機能する機能部を搭載した車両において、電源供給に起因する機能部の利用機会の減少を抑制することを目的とする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための一態様は、少なくとも運転者による操舵操作の免除を許可して実行する自律運転モードで、少なくとも部分的に自律運転可能な車両に搭載され、メイン低圧電源及び通常負荷を有する主電源系統と、バックアップ低圧電源及び緊急時重要負荷を有し、前記主電源系統と接続されているバックアップ電源系統と、前記バックアップ電源系統の定格電圧よりも高い電圧を出力可能な高圧電源部と、を備える車両電源システムであって、前記バックアップ電源系統は、前記バックアップ低圧電源の状態を監視し、前記バックアップ低圧電源からの電力の入出力を制御するバックアップ電源制御装置を有し、前記バックアップ電源制御装置は、前記バックアップ低圧電源から前記緊急時重要負荷に供給可能な電力量または電力を示す供給可能電力を推定する推定処理を実行可能であり、前記車両が前記自律運転モードで自律運転していないとき、前記バックアップ電源制御装置は、前記推定処理を実行し、前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第1閾値以上である場合には、前記車両が前記自律運転モードで自律運転することを許可することを示す信号を出力し、前記車両が前記自律運転モードで自律運転しているとき、前記バックアップ電源制御装置は、前記推定処理を実行し、前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第2閾値未満である場合には、前記車両が前記自律運転モードで自律運転することを禁止することを示す信号を出力し、前記車両が前記自律運転モードで自律運転しているとき、前記バックアップ電源制御装置は、前記推定処理を実行し、前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第3閾値以下である場合には、前記車両が前記自律運転モードを継続することを許可し、かつ、前記高圧電源部が発生する電力により前記バックアップ低圧電源を充電することを許可することを示す信号を出力し、前記第1閾値は、前記車両が前記自律運転モードで自律運転する場合に前記緊急時重要負荷を動作させるために必要な電力量に基づき定められた電力量または電力に関する閾値である、車両電源システムである。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、少なくとも部分的に自律運転可能な車両において、バックアップ低圧電源の供給可能電力が低下した場合であっても自律運転を継続できる。これにより、自律運転に関する負荷への電力供給に起因して、自律運転を利用できる機会が減少することを抑制できる。従って、車両が自律運転を実行可能な機会や時間が増大するので、商品性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の車両電源システムの概略構成図。
図2】緊急時重要負荷の構成例を示す図。
図3】車両電源システムの動作を示すフローチャート。
図4】車両電源システムの動作を示すフローチャート。
図5】車両電源システムの動作を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車両電源システムの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0010】
[1.車両電源システムの構成]
[1-1.車両電源システムの全体構成]
図1は、車両電源システム1の概略構成図である。図1において実線は電力線を示し、破線は信号線を示す。
【0011】
本実施形態における車両Vの車両電源システム1は、主電源系統10と、主電源系統10と接続するバックアップ電源系統20と、高圧電源系統30と、降圧装置40と、を備える。高圧電源系統30は、降圧装置40を介して主電源系統10及びバックアップ電源系統20と接続している。降圧装置40は、高圧電源系統30を流れる電力を降圧して、主電源系統10及び/またはバックアップ電源系統20に出力する。降圧装置40は、例えば、DC/DCコンバータである。
【0012】
本実施形態では、一例として、車両Vが、走行用の動力源として回転電機MGを備える電動車両である場合を説明する。回転電機MGは、例えば3相モータであり、不図示のインバータユニットにより供給される電力により駆動力を発生し、車両Vを走行させる。車両Vは、後述する回転電機MGを備える駆動ユニット321を備える。車両Vは、駆動ユニット321に駆動用の電力を供給する高圧電源31を搭載する。駆動ユニット321は、高圧電源31が出力する高圧の電力の供給を受ける負荷であり、後述する高圧負荷32に含まれる。
【0013】
なお、車両Vは、内燃機関を搭載する車両であってもよい。内燃機関は、車両Vを駆動する動力源として機能してもよい。或いは、内燃機関は、不図示の発電機を駆動する動力源として機能し、後述する高圧電源31を充電してもよい。すなわち、車両Vは、内燃機関を備えていない電動車両であってもよいし、内燃機関と車両駆動用の回転電機MGとを備えるハイブリッド車両であってもよいし、内燃機関により駆動される車両であってもよい。車両Vは、例えば、自律運転、或いは、自動運転が可能な車両である。車両Vが、内燃機関を搭載する場合、高圧電源31から電力の供給を受ける高圧負荷32は、例えばスターターモータを含む。
【0014】
[1-2.主電源系統の構成]
主電源系統10は、メイン低圧電源11と、通常負荷12と、を有する。
【0015】
メイン低圧電源11は、高圧電源31よりも低電圧の電源である。メイン低圧電源11は、例えば12[V]の直流電流を出力する。メイン低圧電源11は、例えば、充電および放電が可能な二次電池である。具体的には、メイン低圧電源11としては、鉛バッテリ、リチウムイオンバッテリ、リチウムポリマーバッテリ、リン酸鉄リチウムバッテリ、金属水素化物バッテリ、或いはその他のバッテリが挙げられる。
【0016】
メイン低圧電源11は、接続線L11に設けられている。接続線L11は、一端部が接続線L10に形成された接点C11に接続され、他端部が車両電源システム1の基準電位を有するグランドラインに接続されている。メイン低圧電源11は、正極側が接続線L11の接点C11側に接続しており、負極側が接続線L11のグランドライン側に接続される。
【0017】
接続線L10の一端部には、通常負荷12が接続される。通常負荷12(図中、EL)は、車両Vが搭載する電力負荷である。通常負荷12は単一の機器であってもよいし、複数の機器を含んでもよい。本実施形態において、通常負荷12は、車両Vの走行に関する機能を担う機能部である。通常負荷12は、例えば、車両Vの走行操作、停車操作、又は、運転制御に関する機能を担う負荷を含む。通常負荷12は、高圧負荷32よりも低い電圧により動作するので、高圧負荷32との対比により低圧負荷と呼ぶことができる。また、通常負荷12は、車両Vにおいて、いわゆる補機と呼ばれる機器を含んでもよい。
【0018】
具体的には、通常負荷12は、車両Vの運転制御を実行可能なECU50(Electronic Control Unit)を含む。図1に示すECU50は、一つのECUで構成されてもよいし、複数のECUを含んでもよい。例えば、通常負荷12は、車両Vが備える複数のECUの一部を含んでもよい。また、通常負荷12は、車両Vが搭載する制御ユニットであって、ECU50とは異なる不図示の制御ユニットを含んでもよい。
【0019】
また、通常負荷12は、自動ブレーキ装置等の車両Vの制動に用いられる補機負荷を含んでもよい。通常負荷12は、自動ステアリング装置等の車両Vの操舵に用いられる補機負荷を含んでもよい。通常負荷12は、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の車両Vの外界情報の取得に用いられる補機負荷を含んでもよい。通常負荷12は、ワイパー装置、パワーウインドウ装置、メーターパネル等の計器類を含んでもよい。
【0020】
[1-3.バックアップ電源系統の構成]
バックアップ電源系統20は、バックアップ電源ユニット21と、緊急時重要負荷22と、を有する。
【0021】
バックアップ電源ユニット21は、バックアップ低圧電源23と、切替装置24と、切替装置24を制御するバックアップ電源制御装置25と、を備える。
【0022】
バックアップ電源ユニット21は、第1外部接続端子T211、第2外部接続端子T212、及びグランド端子T213を備える。第1外部接続端子T211には、接続線L10の他端部が接続される。グランド端子T213は、グランドラインに接続される。
【0023】
緊急時重要負荷22(図中、EL)は、車両Vが搭載する電力負荷である。緊急時重要負荷22は、単一の機器であってもよいし、複数の機器を含んでもよい。緊急時重要負荷22は、高圧負荷32よりも低い電圧により動作するので、高圧負荷32との対比により低圧負荷と呼ぶことができる。
【0024】
緊急時重要負荷22は、接続線L21によって、バックアップ電源ユニット21の第2外部接続端子T212に接続される。
【0025】
切替装置24は、第1端子T241、第2端子T242、及び第3端子T243を備える。第1端子T241は、接続線L211によって、バックアップ電源ユニット21の第1外部接続端子T211に接続されている。第2端子T242は、接続線L212によって、バックアップ電源ユニット21の第2外部接続端子T212に接続されている。
【0026】
切替装置24は、第1端子T241と第2端子T242とを接する接続線L241を備える。接続線L241には、第1スイッチSW1が設けられている。本実施形態では、第1スイッチSW1は、ノーマリーオープン型(N.O.型)の接点を有するスイッチである。すなわち、第1スイッチSW1は、第1スイッチSW1に操作信号が加わっていない場合にオフ状態に維持され、接続線L241を遮断状態に維持する接点である。第1スイッチSW1は、操作信号が印加されることによりオン状態に切り替わって、第1端子T241と第2端子T242とを接続する。
【0027】
例えば、第1スイッチSW1が、電磁力により開閉する電磁スイッチで構成される場合、第1スイッチSW1は、操作電流による電磁力が発生していない場合にオフ状態に維持され、接続線L241を遮断状態に維持する。
第1スイッチSW1は、電磁接触器、電磁開閉器、リレー等の電磁スイッチであってもよいし、半導体スイッチ素子であってもよいし、スイッチ機能を有するDC/DCコンバータ等の回路であってもよい。
【0028】
切替装置24は、接続線L241と第3端子T243とを接続する接続線L242を備える。接続線L242は、接続線L241の第1スイッチSW1と第2端子T242との間に形成された接点C241で一端部が接続線L241に接続し、他端部が第3端子T243に接続する。
【0029】
接続線L242には、第2スイッチSW2が設けられている。第2スイッチSW2は、オン状態において接続線L242を接続し、オフ状態において接続線L242を遮断する。
【0030】
第2スイッチSW2は、電磁接触器、電磁開閉器、リレー等の電磁スイッチであってもよいし、半導体スイッチ素子であってもよいし、スイッチ機能を有するDC/DCコンバータ等の回路であってもよい。本実施形態において、第2スイッチSW2は、DC/DCコンバータである。このため、後述するように、第2スイッチSW2は、オン状態において接続線L242から接点C241に出力される電圧を昇降圧可能となっている。つまり、本実施形態の第2スイッチSW2は、接続線L242を接続および遮断する機能と、接続線L242から接点C241に出力する電圧を変換する機能とを有する。
【0031】
切替装置24は、接続線L241と並列に接続する接続線L243を備える。接続線L243の一端部は、接続線L241の第1端子T241と第1スイッチSW1との間に形成された接点C242に接続する。接続線L243の他端部は、接続線L241の接点C241と第2端子T242との間に形成された接点C243に接続する。接続線L243には、第3スイッチSW3が設けられる。
【0032】
本実施形態では、第3スイッチSW3は、ノーマリークローズ型(N.C.型)の接点を有するスイッチである。すなわち、第3スイッチSW3は、第3スイッチSW3に操作信号が加わっていない場合にオン状態に維持される接点である。第3スイッチSW3は、操作信号が印加されることによりオフ状態に切り替わって、接続線L243を接続状態にする。
【0033】
例えば、第3スイッチSW3が、電磁力により開閉する電磁スイッチで構成される場合、第3スイッチSW3は、操作電流による電磁力が発生していない場合にオン状態に維持され、接続線L243を接続状態に維持する。
第3スイッチSW3は、電磁接触器、電磁開閉器、リレー等の電磁スイッチであってもよいし、半導体スイッチ素子であってもよいし、スイッチ機能を有するDC/DCコンバータ等の回路であってもよい。
【0034】
本実施形態では、第1スイッチSW1と第3スイッチSW3とは、スイッチモジュール241としてモジュール化されている。スイッチモジュール241の具体的な構成は制限されず、例えば、スイッチモジュール241は、1つの半導体デバイスであってもよいし、複数のデバイスを含む回路であってもよい。
【0035】
切替装置24は、接続線L241とグランドラインとを接続する接続線L244を備える。接続線L244の一端部は接続線L241の第1スイッチSW1と接点C241との間に形成された接点C244に接続する。接続線L244の他端部はグランドラインに接続する。接続線L244には、キャパシタCPが設けられている。
【0036】
バックアップ低圧電源23は、高圧電源31よりも低電圧の電源である。バックアップ低圧電源23は、例えば12[V]の直流電流を出力する。バックアップ低圧電源23は、例えば、充電および放電が可能な二次電池である。具体的には、バックアップ低圧電源23としては、鉛バッテリ、リチウムイオンバッテリ、リチウムポリマーバッテリ、リン酸鉄リチウムバッテリ、金属水素化物バッテリ、或いはその他のバッテリが挙げられる。
【0037】
バックアップ低圧電源23は、接続線L213に設けられている。接続線L213の一端部は切替装置24の第3端子T243に接続される。接続線L213の他端部はグランドラインに接続されている。バックアップ低圧電源23は、正極側が切替装置24の第3端子T243側、負極側がグランドライン側となるように接続線L213に設けられている。
【0038】
第2スイッチSW2がオン状態のとき、バックアップ低圧電源23は、接続線L213から切替装置24の接続線L242を通ってバックアップ電源系統20に電力を供給する。バックアップ低圧電源23から出力される電力は、第2スイッチSW2で所望の電圧に昇圧または降圧されて、バックアップ電源系統20に供給される。第2スイッチSW2がオフ状態のとき、切替装置24の接続線L242が遮断状態となるので、バックアップ低圧電源23からバックアップ電源系統20に電力は供給されない。
【0039】
上述のように、バックアップ電源系統20には、第1端子T241と第2端子T242との間に、ノーマリーオープン型の接点を有する第1スイッチSW1と、ノーマリークローズ型の接点を有する第3スイッチSW3とが、並列に接続されている。
【0040】
第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3の少なくとも一方がオン状態である場合、バックアップ電源系統20は主電源系統10と接続される。この状態では、第1外部接続端子T211を通じて、バックアップ低圧電源23から主電源系統10に電力を供給することが可能となり、メイン低圧電源11から緊急時重要負荷22に電力を供給することもできる。
【0041】
一方、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3の双方がオフ状態である場合、バックアップ電源系統20と主電源系統10との接続が遮断される。
【0042】
バックアップ電源制御装置25(図中、BMS)は、バックアップ電源制御装置25は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第3スイッチSW3と信号線で接続されている。バックアップ電源制御装置25は、ECU50の制御に従って、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び、第3スイッチSW3の切り替えを制御する。バックアップ電源制御装置25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備え、プロセッサによってプログラムを実行することにより、ソフトウェアとハードウェアとの協働によりバックアップ電源系統20を制御する。この場合、バックアップ電源制御装置25は、プログラムやデータを記憶する記憶部を備えてもよく、記憶部は、例えばROM(Read Only Memory)である。バックアップ電源制御装置25は、プログラムされたハードウェアにより構成されてもよい。
【0043】
バックアップ電源制御装置25は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第3スイッチSW3のそれぞれに対し、信号線を通じて操作信号を出力する。バックアップ電源制御装置25は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第3スイッチSW3のそれぞれに対し、操作信号を出力する状態と操作信号を出力しない状態とを切り替えることができる。
【0044】
第1スイッチSW1は、ノーマリーオープン型のスイッチである。バックアップ電源制御装置25は、第1スイッチSW1に操作信号を出力することによって第1スイッチSW1をオフ状態からオン状態に切り替えさせる。第3スイッチSW3は、ノーマリークローズ型のスイッチである。バックアップ電源制御装置25は、第3スイッチSW3に操作信号を出力することにより、第3スイッチSW3をオン状態からオフ状態に切り替えさせる。
【0045】
バックアップ電源制御装置25は、第2スイッチSW2に操作信号を出力することによって、第2スイッチSW2にオン状態とオフ状態とを切り替えさせる。また、バックアップ電源制御装置25は、第2スイッチSW2に操作信号を出力することによって、第2スイッチSW2における昇圧または降圧を制御する。すなわち、バックアップ電源制御装置25は第2スイッチSW2の出力電圧を制御する。
【0046】
バックアップ電源制御装置25は、例えば、高圧電源部36またはバックアップ低圧電源23から電力の供給を受けて動作する。
【0047】
バックアップ電源制御装置25は、バックアップ低圧電源23の充電状態を検出する機能を有する。バックアップ低圧電源23の充電状態とは、例えば、SOC(State Of Charge)である。バックアップ電源制御装置25は、例えば、バックアップ低圧電源23の両端電圧を検出することによって、バックアップ低圧電源23の電池残量を検出する。また、バックアップ電源制御装置25は、バックアップ低圧電源23に入出力する電流をカウントすることによって、バックアップ低圧電源23の電池残量を検出してもよい。バックアップ電源制御装置25は、例えば、バックアップ低圧電源23の満充電容量(FCC:Full Charge Capacity)と、実際の残容量を示すRM(Remaining Capacity)とに基づいて、SOCを算出してもよい。これらの機能により、バックアップ電源制御装置25は、バックアップ低圧電源23が出力可能な電力量(例えば、ワット時[Wh]を単位とする)あるいは電力(例えば、ワット[W]を単位とする)である、供給可能電力を推定する、推定処理を実行する。推定処理は、バックアップ低圧電源23が緊急時重要負荷22に供給可能な電力量または電力を示す供給可能電力を推定する処理であり、供給可能電力推定処理と言い換えることができる。
【0048】
本実施形態において、緊急時重要負荷22は、車両Vの走行に関する機能を担う機能部であり、例えば、車両Vの走行操作、停車操作、又は、運転制御に関する機能を担う負荷を含む。緊急時重要負荷22は、車両Vの走行中において緊急時に対応するための機能を担う負荷を含む。具体的には、緊急時重要負荷22は、車両Vの走行に関するミニマル・リスク・マヌーバー(MRM:Minimal Risk Maneuver)の実行に関する機能を担う負荷を含む。例えば、MRMは、駆動源の駆動力が喪失した場合でも車両Vを安全に道路の路肩に移動させて停車させるための必要最低限の走行操作、停車操作、運転制御の少なくともいずれかに該当する操作または制御を含む。
【0049】
緊急時重要負荷22は、車両Vの運転制御を実行可能な前述のECU50の一部または全部を含んでもよい。緊急時重要負荷22は、車両Vが搭載する制御ユニットであって、ECU50とは異なる不図示の制御ユニットを含んでもよい。
【0050】
緊急時重要負荷22に含まれる負荷の一部は、主電源系統10の通常負荷12に含まれる負荷と重複していてもよい。すなわち、通常負荷12の一部が緊急時重要負荷22にもなっていてもよく、この負荷は主電源系統10及びバックアップ電源系統20の両方に属することになる。この構成によれば、緊急時重要負荷22を冗長化することができる。換言すると、主電源系統10の通常負荷12と重複する緊急時重要負荷22は、主電源系統10に供給される電力によって動作可能であり、バックアップ電源系統20に供給される電力によっても動作可能である。このため、主電源系統10の通常負荷12と重複する緊急時重要負荷22は、主電源系統10の異常が発生しても動作可能であり、バックアップ電源系統20に異常が発生しても動作を実行できる。
【0051】
[1-4.高圧電源系統の構成]
高圧電源系統30は、高圧電源31と、高圧負荷32と、を有する。
【0052】
高圧電源31は、メイン低圧電源11及びバックアップ低圧電源23よりも高電圧の電力を供給する電源である。高圧電源31は、接続線L31に接続している。接続線L31の一端部はグランドラインに接続しており、高圧電源31は、負極側が接続線L31のグランドライン側に接続される。
【0053】
高圧負荷32は、通常負荷12及び緊急時重要負荷22よりも高い電圧で動作する電力負荷であり、高圧電源31から供給される電力により動作する。本実施形態では、高圧負荷32は、車両Vを駆動する駆動ユニット321と、車両Vの車室内の空気調和を行う空調装置322(図中、A/C)と、を含む。
【0054】
駆動ユニット321は、回転電機MGと、回転電機MGを制御するパワー制御ユニットPCUと、を備える。パワー制御ユニットPCUは、不図示のDC/DCコンバータ、及び、不図示のインバータ等を備える。
【0055】
駆動ユニット321は、接続線L31の他端部に接続されている。駆動ユニット321は、高圧電源31から供給される直流の電力を、パワー制御ユニットPCUによって三相交流の電力に変換して、回転電機MGに供給する。これにより、回転電機MGは、高圧電源31の電力によって車両Vを駆動する動力を発生させる。
【0056】
空調装置322は、接続線L31の高圧電源31と駆動ユニット321との間に形成された接点C31で接続線L31に接続する接続線L32に接続されている。空調装置322は、高圧電源31の電力によって動作する。
【0057】
降圧装置40は、接続線L40に設けられている。接続線L40の一端部は接点C32に接続し、他端部が接点C12に接続している。接点C32は、接続線L31の高圧電源31と接点C31との間に形成された接点である。接点C12は、接続線L10の接点C11と、接続線L10の他端部との間に形成された接点である。ここで、接続線L10の他端部とは、バックアップ電源系統20の第1外部接続端子T211に相当する。
【0058】
このように、高圧電源系統30は、降圧装置40を介して、主電源系統10及びバックアップ電源系統20と接続している。
【0059】
降圧装置40は、高圧電源系統30を流れる電力を降圧する。降圧装置40は、例えば、DC/DCコンバータである。降圧装置40は、高圧電源系統30が出力する電圧を降圧させて、主電源系統10及びバックアップ電源系統20に供給する。
【0060】
降圧装置40は、接続状態と遮断状態とを切り替え可能である。降圧装置40が接続状態のとき、高圧電源系統30は、接続線L40及び降圧装置40を介して、主電源系統10及びバックアップ電源系統20に接続される。降圧装置40が遮断状態のとき、高圧電源系統30は、主電源系統10及びバックアップ電源系統20と遮断される。
【0061】
高圧電源31は、車両Vが搭載する発電装置であってもよいし、車両Vが搭載する電池であってもよい。電池としては、例えば、充電および放電が可能な二次電池が挙げられる。具体的には、リチウムイオンバッテリ、リチウムポリマーバッテリ、リン酸鉄リチウムバッテリ、金属水素化物バッテリ、或いはその他のバッテリを高圧電源31として用いることができる。この場合、高圧電源31は、例えば、200[V]の直流電流を出力する。
【0062】
高圧電源31が二次電池を備える場合、高圧電源31は、二次電池に電力を供給する発電装置を含んでもよい。また、高圧電源31が発電装置のみにより構成されてもよい。発電装置としては、例えば、回転電機MGを用いてもよい。例えば、車両Vの制動時に回転電機MGを回生ブレーキとして機能させ、回転電機MGで発電される回生電力を高圧電源31として利用できる。また、車両Vが内燃機関を有する車両である場合、車両Vは、内燃機関の動力により駆動されるジェネレータを備える。このジェネレータを高圧電源31として利用してもよい。ジェネレータは、発電した交流電流を不図示の昇圧回路や整流回路を介して出力する。また、ジェネレータが出力する交流電流が、直接または不図示の昇圧回路や整流回路を介して、降圧装置40に供給される構成であってもよい。
【0063】
高圧電源31及び降圧装置40は、高圧電源部36を構成する。高圧電源部36は、バックアップ電源系統20の定格電圧よりも高い電圧を出力可能である。また、高圧電源部36は、メイン低圧電源11の定格電圧よりも高い電圧を出力可能であってもよい。
高圧電源部36は、例えば、二次電池で構成される高圧電源31と降圧装置40により構成される。高圧電源31が内燃機関により駆動されるジェネレータで構成される場合、ジェネレータに接続される不図示の昇圧回路や整流回路を、降圧装置40を代替する構成部としてもよい。すなわち、高圧電源部36が、ジェネレータ及びその周辺回路で構成されてもよい。
【0064】
高圧電源部36は、少なくとも、通常動作モード、及び、高電圧モードを実行可能であり、例えば、ECU50の制御に従って通常動作モードと高電圧モードとを切り替える。通常動作モードは、通常負荷12及び緊急時重要負荷22への電力供給を目的とする動作モードである。通常動作モードにおける高圧電源部36の出力電圧は、通常負荷12及び緊急時重要負荷22の定格入力電圧の範囲に含まれる電圧である。例えば、メイン低圧電源11及びバックアップ低圧電源23の定格出力電圧が12[V]である車両Vにおいて、高圧電源部36は、通常動作モードにおいて12[V]~15[V]の範囲の電圧を出力する。
【0065】
高電圧モードは、高圧電源部36が供給する電力によりバックアップ低圧電源23を充電することを目的とする動作モードである。高電圧モードにおける高圧電源部36の出力電圧は、バックアップ低圧電源23に対する充電が可能であり、好ましくは、バックアップ低圧電源23の高圧充電が可能な電圧である。
【0066】
通常動作モードにおいても、高圧電源部36の出力電圧がバックアップ低圧電源23の出力電圧よりも高い場合、高圧電源部36の電力によりバックアップ低圧電源23が充電される。高圧充電とは、通常動作モードにおいてバックアップ低圧電源23が充電される場合に比べて短時間で、バックアップ低圧電源23の充電状態を上昇させる動作をいう。つまり、高圧充電は高圧電源部36が高電圧モードで動作することにより、バックアップ低圧電源23を速やかに充電する動作をいう。高電圧モードで、高圧電源部36は、例えば、通常動作モードの2倍、3倍、或いはそれを超える電圧を出力する。
また、高圧電源部36が出力する電力によってバックアップ低圧電源23が充電される場合、同時にメイン低圧電源11が充電されてもよい。
【0067】
車両電源システム1は、ECU50を備える。ECU50は、上述したように複数のECUを含んでもよいし、単一のデバイスであってもよい。ECU50は、車両制御装置の一例に対応する。
【0068】
ECU50は、通常負荷12、緊急時重要負荷22、バックアップ電源制御装置25、及び、高圧負荷32に信号線により接続される。ECU50が接続される機器は上記の各部に制限されない。ECU50は、車両Vが搭載する各機器のうち図1に示されていない機器に接続されてもよい。
【0069】
ECU50は、例えば、CPU等のプロセッサを備え、プロセッサによってプログラムを実行することにより、ソフトウェアとハードウェアとの協働により車両電源システム1の各部を制御する。この場合、ECU50は、プログラムやデータを記憶する記憶部を備えてもよく、記憶部は、例えばROMである。また、ECU50は、プログラムされたハードウェアにより構成されてもよい。
【0070】
ECU50には、操作部55が接続される。操作部55は、車両Vのユーザにより操作されるスイッチ等を含む。例えば、操作部55は、ユーザが車両Vの起動および停止を指示するために操作するSSSW(Start Stop SWitch)56を含む。また、操作部55は、ユーザが車両Vの自律運転の実行を指示するスイッチ等を含む。操作部55は、不図示のリモコン装置と無線接続し、リモコン装置による操作を検出する無線通信装置であってもよい。ここで、車両Vのユーザとは、例えば車両Vの運転者であるが、運転者以外の人であって車両Vを使用する人を含んでもよい。
【0071】
車両Vの停止状態において、車両電源システム1はオフ状態となる。車両電源システム1のオフ状態では、高圧電源31から供給される電力によって、ECU50が動作可能な状態を維持する。この状態は、いわゆるスリープ状態あるいは低消費電力状態と呼ばれる状態であってもよい。スリープ状態あるいは低消費電力状態で、ECU50は、例えば、ECU50の一部のコンポーネントへの電力供給が停止した状態であってもよい。また、スリープ状態あるいは低消費電力状態において、ECU50の動作クロック数や、ECU50が操作部55の状態あるいは各種センサーの状態を検出するサンプリング周波数が、車両Vの動作中よりも長い周期に設定されてもよい。
【0072】
車両電源システム1のオフ状態では、通常負荷12及び緊急時重要負荷22に、電力が供給される。これは、車両電源システム1のオフ状態で緊急時重要負荷22や通常負荷12を動作させるためである。例えば、緊急時重要負荷22に含まれるセンサー、或いは、緊急時重要負荷22に接続されるセンサーの検出値を、ECU50により監視する場合が挙げられる。また、例えば、緊急時重要負荷22に含まれるカメラによって駐車中の車両Vの周囲を監視する機能を実行する場合が挙げられる。このような場合、緊急時重要負荷22を動作させるため、高圧電源部36から緊急時重要負荷22に電力が供給される。通常負荷12にも同様に、高圧電源部36から電力が供給される。これらの電力は、いわゆる暗電流と呼ばれる。上述のように第3スイッチSW3はノーマリークローズ型であるため、バックアップ電源制御装置25が停止している状態であっても、第3スイッチSW3を介して、緊急時重要負荷22へ主電源系統10から電力を供給できる。
【0073】
車両電源システム1において、車両Vの起動状態では、高圧電源31から主電源系統10の各部へ電力が供給される。さらに、主電源系統10及び緊急時重要負荷22に対して、高圧電源部36から電力が供給される。車両Vの停止状態では、上述のように高圧電源部36から暗電流が緊急時重要負荷22へ流れる。
【0074】
ところで、主電源系統10において短絡や地絡が発生した場合、車両電源システム1の保護のため、高圧電源部36から緊急時重要負荷22への電力供給が停止することがある。例えば、車両電源システム1を構成する回路には複数の箇所に不図示のヒューズが設けられる。地絡や短絡が発生すると、接続線L31、L32、L40等に設けられるヒューズが切れ、高圧電源部36から緊急時重要負荷22への電力供給が停止する。また、保護機能により降圧装置40が出力を遮断されることもあり得る。
【0075】
このような場合であっても緊急時重要負荷22に対する電力供給が途絶しないように、車両電源システム1は、バックアップ低圧電源23から緊急時重要負荷22への電力供給を行うことができる。この機能は、車両Vの自律運転を実行中におけるミニマル・リスク・マヌーバーを実現する。具体的には、第2スイッチSW2がオンに切り替わることにより、バックアップ低圧電源23が接続線L212に接続され、バックアップ低圧電源23から緊急時重要負荷22への電力供給が開始される。或いは、車両Vの起動中に緊急時重要負荷22が動作している間は、バックアップ電源制御装置25によって第2スイッチSW2が状態になっており、降圧装置40からバックアップ電源系統20への電力供給が途絶する事態に備える構成であってもよい。この場合、第2スイッチSW2から降圧装置40に向かう方向に電流が流れないように、降圧装置40の出力電圧に対応して第2スイッチSW2の出力電圧が調整されていればよい。
【0076】
ECU50は、ミニマル・リスク・マヌーバーを実現するため、バックアップ低圧電源23による緊急時重要負荷22への電力供給が可能であることを、車両Vが自律運転を実行するための条件とする。
【0077】
車両Vが自律運転を実行している動作状態を、自律運転モードと呼ぶ。自律運転モードにおいて、車両Vは、自律運転モードにおいて、少なくとも運転者による操舵操作を免除して走行する。すなわち、自律運転モードでは、自律運転制御部220は、少なくとも車線維持制御部221及びステアリング制御部222を利用してユーザによる操舵を必要とせず車両Vを走行させる。自律運転モードにおいて、自律運転制御部220は、部分的な自律運転を実行する。部分的な自律運転とは、自律運転制御部220が有する自律運転に関する機能のうち一部を実行することであり、例えば、車線維持制御部221及びステアリング制御部222による操舵を行う一方、ブレーキ制御部223及び走行制御部224による自律運転機能を実行することを含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0078】
ECU50は、操作部55の操作、或いは、予め設定された車両Vの動作状態をトリガーとして、車両Vの自律運転を実行する。つまり、車両Vの自律運転モードを開始させる。この場合、ECU50は、自律運転制御部220を制御して、自律運転を開始させる。また、ECU50は、車両Vが自律運転を実行中に、操作部55の操作、或いは、予め設定された車両Vの動作状態をトリガーとして、車両Vの自律運転を停止する。この場合、ECU50は、自律運転制御部220を制御して、自律運転モードを終了して自律運転を停止させ、通常走行モードに移行する。通常走行モードは車両Vの走行のためにユーザによる操舵を必要とする動作モードである。
【0079】
ECU50は、バックアップ電源制御装置25により、バックアップ低圧電源23の供給可能電力を推定させる。この場合、バックアップ電源制御装置25は、供給可能電力を推定し、推定値の出力、または、推定値に基づく信号の出力を行う。
【0080】
バックアップ電源制御装置25が信号出力を行うとは、バックアップ電源制御装置25が、車両Vの自律運転を許可することを示す信号、車両Vの自律運転の継続を許可することを示す信号、及び、車両Vの自律運転を禁止することを示す信号を出力することをいう。これらの信号の出力は、ECU50または他の制御装置が推定値に基づいて実行してもよいが、本実施形態ではバックアップ電源制御装置25が実行する例を説明する。
【0081】
バックアップ電源制御装置25は、ECU50が車両Vの自律運転を開始する際に、推定処理を実行し、バックアップ低圧電源23の供給可能電力が、ミニマル・リスク・マヌーバーの実現のために十分であるか否かを判定する。この判定において、バックアップ電源制御装置25は、後述する各種の閾値を参照する。これらの閾値は、予めECU50またはバックアップ電源制御装置25が保持または記憶している。
【0082】
バックアップ電源制御装置25は、バックアップ低圧電源23の供給可能電力が十分でないと判定した場合に、車両Vの自律運転を禁止することを示す信号を出力する。この信号は、例えば、禁止信号と呼ぶことができる。ECU50は、バックアップ電源制御装置25から禁止信号が入力された場合、自律運転を開始しない。また、ECU50は、車両Vの自律運転を実行中にバックアップ電源制御装置25から禁止信号が入力された場合、自律運転を終了する。
【0083】
バックアップ電源制御装置25は、バックアップ低圧電源23の供給可能電力が十分であると判定した場合や、供給可能電力が十分ではないが充電により回復可能な場合に、車両Vの自律運転を許可することを示す信号、または、車両Vの自律運転の継続を許可することを示す信号を出力する。これらの信号は、例えば、許可信号と呼ぶことができる。
【0084】
ECU50は、車両Vの自律運転を開始する場合、バックアップ電源制御装置25から許可信号が入力されたことを条件として、車両Vの自律運転を開始する。また、ECU50は、車両Vの自律運転を実行中にバックアップ電源制御装置25から許可信号が入力された場合、自律運転を継続する。ECU50は、車両Vの自律運転を実行中に所定時間毎にバックアップ電源制御装置25から許可信号が入力されるか否かを判定し、許可信号が入力されない状態が所定時間以上継続した場合に、自律運転を終了する。
【0085】
[1-5.緊急時重要負荷の構成]
図2は、緊急時重要負荷22の構成例を示すブロック図である。
図2には、緊急時重要負荷22に含まれる機能部として、自律運転制御部220を例示する。自律運転制御部220は、例えば、車線維持制御部221、ステアリング制御部222、ブレーキ制御部223、及び、走行制御部224を含む。自律運転制御部220を構成する各機能部は、複数のECUにより構成されてもよいし、図2に示した複数の機能部が1つのECUで構成されてもよく、自律運転制御部220が1つのECUであってもよい。また、自律運転制御部220は、ECUとは異なる、制御機能を有するデバイスで構成されてもよく、コンピューターがソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。
【0086】
図2には、緊急時重要負荷22に含まれる機能部の例として、センシングユニット61、電動ステアリングユニット62、ブレーキ駆動装置63、及び、スロットル制御装置64を示す。これらの一部または全部は通常負荷12に含まれてもよい。また、緊急時重要負荷22は、図2に示していない機能部や駆動部を備えてもよい。
【0087】
センシングユニット61は、車両Vの外部の状況や車両Vの走行状態を検出する1または複数のセンサーを含む。センシングユニット61は、例えば、上述したLiDAR、カメラ、レーダー及び/またはレーザーにより構成される4Dセンサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、地磁気センサー、GNSS(Global Navigation Satellite System)ユニット等である。センシングユニット61は複数のセンサーを統合したユニットであってもよいし、センシングユニット61に含まれるセンサーが個別に自律運転制御部220に接続されてもよい。
【0088】
センシングユニット61は、車両Vが自律運転を実行している間、自律運転制御部220の制御に従って、車両Vの自律運転を実行するために必要な情報を自律運転制御部220に出力する。センシングユニット61は、車両Vが自律運転を実行していないときには、車両Vのカーナビゲーションシステムが車両Vの位置を表示するための情報等を、自律運転制御部220やECU50に出力する。
【0089】
電動ステアリングユニット62は、車両Vの操舵装置を制御する。例えば、電動ステアリングユニット62は、不図示のステアリングギヤボックスに連結されたモータを動作させることにより、車両Vの操舵を制御する。
【0090】
電動ステアリングユニット62は、車両Vが自律運転を実行している間、自律運転制御部220の制御に従って、車両Vの操舵装置を駆動する。これにより、ユーザーが操舵操作を行わずに車両Vを走行させることができる。電動ステアリングユニット62は、車両Vが自律運転を実行していないときには、操作部55や不図示のステアリングホイールによるユーザの操作に応じて車両Vの操舵装置を動作させる。
【0091】
ブレーキ駆動装置63は、車両Vの制動装置を制御する。例えば、ブレーキ駆動装置63は、車両Vのブレーキシステムをモータまたは油圧装置により動作させて、車両Vの減速、停止、停止状態の維持を実現する。
【0092】
ブレーキ駆動装置63は、車両Vが自律運転を実行している間、自律運転制御部220の制御に従って、制動装置を制御する。これにより、車両Vは、ユーザがブレーキ操作を行わなくても自動的に減速および停止をする自律運転を実行する。ブレーキ駆動装置63は、車両Vが自律運転を実行していないときには、操作部55や不図示のブレーキペダルによるユーザの操作に応じて車両Vの制動装置を動作させる。
【0093】
スロットル制御装置64は、車両Vを走行させる駆動源を制御する。スロットル制御装置64は、内燃機関を搭載する車両Vにおいては内燃機関への燃料供給を制御し、駆動源としてモータを搭載する車両Vにおいては、モータの回転を制御する。
【0094】
スロットル制御装置64は、車両Vが自律運転を実行している間、自律運転制御部220の制御に従って駆動源を制御する。これにより、車両Vは、ユーザがスロットル操作等の加速のための操作を行わなくても自動的に車両Vを加速させる自律運転を実行する。スロットル制御装置64は、車両Vが自律運転を実行していないときには、操作部55や不図示のアクセルペダルによるユーザの操作に応じて車両Vの駆動源を動作させる。
【0095】
車線維持制御部221及びステアリング制御部222は、車両Vの自律運転機能に含まれる車線維持機能を実現する。例えば、車線維持制御部221は、センシングユニット61により検出された情報に基づいて、車両Vが車線に対して適切な位置で走行する状態を維持するように、車両Vの操舵量および操舵方向を算出する。ステアリング制御部222は、車線維持制御部221が算出した操舵量および操舵方向に基づいて、電動ステアリングユニット62を制御し、車両Vが車線に対して適切な位置で走行する状態を維持するように、車両Vの操舵を行わせる。
【0096】
ブレーキ制御部223は、ブレーキ駆動装置63を制御することによって、車両Vの自律運転機能に含まれるブレーキ制御機能を実現する。例えば、ブレーキ制御部223は、ブレーキ駆動装置63により、車両Vによる適切な走行速度を維持させる。また、例えば、ブレーキ制御部223は、ブレーキ駆動装置63により、車両Vの進行方向に位置する他の車両や障害物に対して適切な距離を維持させる。また、例えば、ブレーキ制御部223は、ブレーキ駆動装置63により、車両Vの進行方向または車両Vの周囲に存在する人や物体への衝突を回避するための制動を行わせる。また、例えば、ブレーキ制御部223は、ブレーキ駆動装置63により、車両Vの停車中に、車両Vの停止状態を維持させる。
【0097】
走行制御部224は、スロットル制御装置64を制御することによって、車両Vの自律運転機能に含まれる加速制御機能を実現する。例えば、走行制御部224は、スロットル制御装置64により、車両Vによる適切な走行速度を維持させる。
【0098】
このように、緊急時重要負荷22に含まれる自律運転制御部220は、車両Vの機能部を制御することによって、車両Vの自律運転を実行させる。車両Vの自律運転は、少なくとも、車線維持制御部221及びステアリング制御部222による車線維持の機能を含む。また、車両Vの自律運転は、いわゆる緊急時に、車両Vを、道路上において安全性が高い位置で停車させる制御を含んでもよい。
【0099】
[2.車両電源システムの動作]
車両電源システム1の動作について説明する。
図3及び図4は、車両電源システム1の動作を示すフローチャートである。図3は、車両Vが自律運転を開始する際の動作を示し、図4は車両Vが自律運転を実行中の動作を示す。本実施形態では、上述のようにバックアップ電源制御装置25が図3及び図4の動作を実行する例を説明するが、これらの動作をECU50や、他の制御装置が実行することも制限されない。
【0100】
バックアップ電源制御装置25は、ECU50が自律運転を開始することのトリガーを検知する(ステップS11)。ステップS11は、例えば、ECU50が自律運転を開始することを通知する信号を、バックアップ電源制御装置25に出力することである。
【0101】
バックアップ電源制御装置25は、推定処理を実行し、バックアップ低圧電源23が緊急時重要負荷22に供給可能な供給可能電力を推定する(ステップS12)。バックアップ電源制御装置25は、推定処理で得られた推定値を第1閾値と比較し、推定値が第1閾値以下であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0102】
推定値が第1閾値以下であると判定した場合(ステップS13;YES)、バックアップ電源制御装置25は、自律運転を禁止することを示す信号、すなわち禁止信号をECU50に出力し(ステップS14)、本処理を終了する。推定値が第1閾値以下でないと判定した場合(ステップS13;NO)、バックアップ電源制御装置25は、自律運転を許可することを示す信号、すなわち許可信号をECU50に出力し(ステップS15)、本処理を終了する。
【0103】
図3の動作により、バックアップ低圧電源23の供給可能電力が十分である場合に、ECU50は車両Vの自律運転を開始することができる。
なお、バックアップ電源制御装置25は、図3の動作は、車両Vが自律運転モードを実行していないときであって、自律運転モードの開始のトリガーが発生していない場合に、予め設定された周期で図3の動作を実行してもよい。
【0104】
図4において、バックアップ電源制御装置25は、車両Vが自律運転を実行中であるか否かを判定する(ステップS21)。車両Vが自律運転を実行中でない場合(ステップS21;NO)、バックアップ電源制御装置25は待機する。
【0105】
車両Vが自律運転を実行中である場合(ステップS21;YES)、バックアップ電源制御装置25は推定処理を実行する(ステップS22)。バックアップ電源制御装置25は、推定処理で得られた推定値を第2閾値と比較し、推定値が第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0106】
推定値が第2閾値未満であると判定した場合(ステップS23;YES)、バックアップ電源制御装置25は、自律運転を禁止することを示す信号、すなわち禁止信号をECU50に出力し(ステップS24)、本処理を終了する。ステップS24でバックアップ電源制御装置25が出力する禁止信号は、自律運転の継続を禁止することを示す信号とである。
【0107】
推定値が第2閾値未満でないと判定した場合(ステップS23;NO)、バックアップ電源制御装置25は、推定値が第3閾値以下であるか否かを判定する(ステップS25)。
【0108】
推定値が第3閾値以下であると判定した場合(ステップS23;YES)、バックアップ電源制御装置25は、高圧電源部36を高電圧モードで動作させてバックアップ低圧電源23を充電することを指示する信号を出力する(ステップS26)。これにより、ECU50は、高圧電源31及び/または降圧装置40を制御して、高電圧モードで高圧電源部36を動作させる。また、ECU50またはバックアップ電源制御装置25は、第2スイッチSW2をオンにすることによって、バックアップ低圧電源23に高圧電源部36を接続する。これにより、高圧電源部36が出力する高電圧の電力によってバックアップ低圧電源23への高圧充電が行われる。
【0109】
その後、バックアップ電源制御装置25は、車両Vの自律運転を許可することを示す信号をECU50に出力し(ステップS27)、本処理を終了する。ステップS27でバックアップ電源制御装置25が出力する禁止信号は、自律運転の継続を許可することを示す信号である。
【0110】
推定値が第3閾値以下でないと判定した場合(ステップS23;NO)、バックアップ電源制御装置25は、ステップS27に移行する。
【0111】
図5は、車両電源システム1の動作を示すタイミングチャートである。
図5(a)は車両Vの動作モードを示し、図5(b)は高圧電源部36の動作モードを示し、図5(c)はECU50による高圧電源部36の制御を示す。図5(d)はバックアップ電源系統20の状態を示す。図5(e)はバックアップ電源制御装置25が推定した供給可能電力を示すグラフであり、縦軸が供給可能電力または電力量であり、横軸は時間である。図5(e)には第1閾値TH1、第2閾値TH2、及び、第3閾値TH3を示す。
【0112】
本実施形態において、第3閾値TH3は第1閾値TH1と同じか、第1閾値TH1より低い値である。第2閾値TH2は、第3閾値TH3よりも低い値である。第1閾値TH1は、車両Vが自律運転モードで自律運転する場合に緊急時重要負荷22を動作させるために必要な電力量に基づき定められた電力量または電力に関する閾値である。
【0113】
時刻T1において、車両Vは通常走行モードで走行している。このとき、バックアップ低圧電源23の供給可能電力は第1閾値TH1よりも低い。このため、バックアップ電源制御装置25は、バックアップ低圧電源23によるバックアップ給電が可能とは判断せず、状態監視を行っている。ECU50は、高圧電源部36に対して高圧充電を指示しており、高圧電源部36は高電圧モードで電力を供給している。
【0114】
高圧充電が行われるとバックアップ低圧電源23の供給可能電力が回復する。図5の例では時刻T2で供給可能電力が第1閾値TH1を超える。この場合、バックアップ電源制御装置25は、時刻T2においてバックアップ給電が可能と判定する。ECU50は、高圧電源部36に対し低圧充電を指示する。低圧充電とは高圧電源部36が通常動作モードで出力する電力によってバックアップ低圧電源23を充電することである。この指示に従って、高圧電源部36は通常動作モードで電力を供給する。
【0115】
時刻T3で、車両Vの自律運転を開始するトリガーが発生したと仮定する。ここで、バックアップ電源制御装置25は、時刻T3における供給可能電力が第1閾値TH1よりも高いので、自律運転を許可することを示す信号を出力する。ECU50は、バックアップ電源制御装置25が出力する信号に従って、車両Vの自律運転モードを開始する。
【0116】
図5の例では、何らかの要因により時刻T3の後にバックアップ低圧電源23の供給可能電力が低下する。この例では、時刻T4において、供給可能電力の推定値が第3閾値TH3より低くなるが、第2閾値TH2よりは高い値となる。この場合、バックアップ電源制御装置25は、時刻T4で、ステップS26の動作により、高電圧モードで充電することを指示する信号を出力する。この信号を受けて、ECU50は、高圧電源部36に対し高圧充電を指示する。この指示のタイミングは、例えば時刻T5である。ECU50の指示に従って高圧電源部36は、高電圧モードを実行する。これにより、バックアップ低圧電源23に対する高圧充電が開始され、車両Vは自律運転モードを継続することができる。
【0117】
[3.他の実施形態]
上記実施形態は本発明を適用した一具体例を示すものであり、発明が適用される形態を限定するものではない。
【0118】
例えば、バックアップ電源制御装置25がバックアップ低圧電源23の供給可能電力を推定する方法は、上述した方法に制限されない。例えば、バックアップ低圧電源23に、バックアップ低圧電源23への充放電を管理および制御する電源制御装置が取り付けられている場合、電源制御装置によって供給可能電力を常時、或いは所定時間毎に推定してもよい。この場合、バックアップ電源制御装置25は、バックアップ低圧電源23の電源制御装置から供給可能電力の推定値を取得してもよい。
【0119】
図1の構成は一例であり、例えば、降圧装置40が高圧電源31と一体に構成され、降圧装置40により昇圧または高圧された電力が高圧負荷32に供給される構成であってよい。また、図5に示したタイミングチャートは一動作例に過ぎず、車両電源システム1の動作は適宜に変更可能である。
【0120】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0121】
(構成1)少なくとも運転者による操舵操作の免除を許可して実行する自律運転モードで、少なくとも部分的に自律運転可能な車両に搭載され、メイン低圧電源及び通常負荷を有する主電源系統と、バックアップ低圧電源及び緊急時重要負荷を有し、前記主電源系統と接続されているバックアップ電源系統と、前記バックアップ電源系統の定格電圧よりも高い電圧を出力可能な高圧電源部と、を備える車両電源システムであって、前記バックアップ電源系統は、前記バックアップ低圧電源の状態を監視し、前記バックアップ低圧電源からの電力の入出力を制御するバックアップ電源制御装置を有し、前記バックアップ電源制御装置は、前記バックアップ低圧電源から前記緊急時重要負荷に供給可能な電力量または電力を示す供給可能電力を推定する推定処理を実行可能であり、前記車両が前記自律運転モードで自律運転していないとき、前記バックアップ電源制御装置は、前記推定処理を実行し、前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第1閾値以上である場合には、前記車両が前記自律運転モードで自律運転することを許可することを示す信号を出力し、前記車両が前記自律運転モードで自律運転しているとき、前記バックアップ電源制御装置は、前記推定処理を実行し、前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第2閾値未満である場合には、前記車両が前記自律運転モードで自律運転することを禁止することを示す信号を出力し、前記車両が前記自律運転モードで自律運転しているとき、前記バックアップ電源制御装置は、前記推定処理を実行し、前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第3閾値以下である場合には、前記車両が前記自律運転モードを継続することを許可し、かつ、前記高圧電源部が発生する電力により前記バックアップ低圧電源を充電することを許可することを示す信号を出力し、前記第1閾値は、前記車両が前記自律運転モードで自律運転する場合に前記緊急時重要負荷を動作させるために必要な電力量に基づき定められた電力量または電力に関する閾値である、車両電源システム。
構成1によれば、バックアップ低圧電源の供給可能電力が低い場合に自律運転モードの実行を回避するとともに、自律運転モードの実行中は、バックアップ低圧電源の供給可能電力が低下した場合であっても充電を行うことで自律運転モードの継続を可能とする。これにより、少なくとも部分的に自律運転可能な車両において、バックアップ低圧電源の供給可能電力が低下した場合であっても自律運転を継続できる。従って、自律運転に関する負荷への電力供給に起因して、自律運転を利用できる機会が減少することを抑制できる。そのため、車両が自律運転を実行可能な機会や時間が増大するので、商品性の向上を図ることができる。
【0122】
(構成2)前記第3閾値は、前記第1閾値以下の電力量または電力を示す値であり、前記第2閾値より大きい電力量または電力を示す値である、構成1に記載の車両電源システム。
構成2によれば、自律運転モードの実行中にバックアップ低圧電源から緊急時重要負荷への電力供給が可能な最低限の状態を維持し、かつ、自律運転に関する負荷への電力供給に起因して自律運転を利用できる機会が減少することを抑制できる。
【0123】
(構成3)前記高圧電源部は、前記バックアップ電源系統の定格電圧よりも高電圧の電力を出力する高電圧モード、及び、前記高電圧モードよりも低電圧の電力を出力する通常電圧モードと、を実行可能であり、前記バックアップ電源制御装置は、前記推定処理で推定された前記供給可能電力が第3閾値以下である場合には、前記高圧電源部が前記高電圧モードで発生する電力により前記バックアップ低圧電源を充電することを許可することを示す信号を出力する、構成1または構成2に記載の車両電源システム。
構成3によれば、自律運転モードの実行中にバックアップ低圧電源の供給可能電力が低下した場合に、より短時間で供給可能電力を回復させることができる。
【符号の説明】
【0124】
1…車両電源システム、10…電源系統、11…メイン低圧電源、12…通常負荷、20…バックアップ電源系統、21…バックアップ電源ユニット、22…緊急時重要負荷、23…バックアップ低圧電源、24…切替装置、25…バックアップ電源制御装置、30…高圧電源系統、31…高圧電源、32…高圧負荷、36…高圧電源部、40…降圧装置、50…ECU、55…操作部、56…SSSW、241…スイッチモジュール、321…駆動ユニット、322…空調装置、CP…キャパシタ、MG…回転電機、PCU…パワー制御ユニット、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、SW3…第3スイッチ、V…車両。
図1
図2
図3
図4
図5