(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043710
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】湿泥状態の管理システム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/24 20060101AFI20240326BHJP
G01N 21/17 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
G01N33/24 B
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148856
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059AA05
2G059BB04
2G059CC20
2G059DD12
2G059EE01
2G059FF01
2G059KK04
(57)【要約】
【課題】水中の湿泥から発生する気泡の状態から湿泥の状態を判定する。
【解決手段】湿泥状態の管理システム10は、干潟槽20の水中の湿泥22から発生する気泡24を含む気泡含有水を回収する回収手段30と、回収手段30により回収された気泡含有水に含まれる気泡24の状態を計測する計測手段40と、計測手段40により計測された気泡24の状態に基づいて湿泥22の状態を判定する判定手段64と、を備える。さらに、判定手段64の判定結果に基づいて湿泥22の状態を調整する調整手段50を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の湿泥から発生する気泡を含む気泡含有水を回収する回収手段と、
前記回収手段により回収された前記気泡含有水に含まれる気泡の状態を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された前記気泡の状態に基づいて前記湿泥の状態を判定する判定手段と、
を備える、湿泥状態の管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の湿泥状態の管理システムであって、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記湿泥の状態を調整する調整手段を備える、湿泥状態の管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の湿泥状態の管理システムであって、
前記回収手段は、長手方向に延びる頂部を有するフード状に形成されかつ水面付近で前記気泡含有水を捕集する捕集容器と、前記捕集容器の頂部に沿って延在しかつ該捕集容器の内部空間の前記気泡含有水をベンチュリ効果を利用して吸引する捕集配管と、を備える、湿泥状態の管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の湿泥状態の管理システムであって、
前記捕集配管の上部内壁面は平滑面とされている、湿泥状態の管理システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の湿泥状態の管理システムであって、
前記計測手段は、前記回収手段により回収されて移送配管を流れる前記気泡含有水の画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得した画像から前記気泡の状態を計測する状態計測手段と、を備える、湿泥状態の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は湿泥状態の管理システムに関する。詳しくは、干潟、水田等の湿泥状態の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、湿泥中の有機物を微生物(バクテリア)が分解することで発電する微生物燃料電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、湿泥の状態を判定する手段を備えていないため、湿泥の状態の可否を判定することができない。
【0005】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、水中の湿泥から発生する気泡の状態から湿泥の状態を判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、水中の湿泥から発生する気泡を含む気泡含有水を回収する回収手段と、前記回収手段により回収された前記気泡含有水に含まれる気泡の状態を計測する計測手段と、前記計測手段により計測された前記気泡の状態に基づいて前記湿泥の状態を判定する判定手段と、を備える、湿泥状態の管理システムである。
【0008】
第1の手段によると、回収手段により水中の湿泥から発生する気泡を含む気泡含有水を回収し、その気泡含有水に含まれる気泡の状態を計測手段により計測し、その計測された気泡の状態に基づいて判定手段が湿泥の状態を判定する。これにより、水中の湿泥から発生する気泡の状態から湿泥の状態を判定することができる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段の湿泥状態の管理システムであって、前記判定手段の判定結果に基づいて前記湿泥の状態を調整する調整手段を備える、湿泥状態の管理システムである。
【0010】
第2の手段によると、判定手段の判定結果に基づいて調整手段が湿泥の状態を調整する。これにより、湿泥の状態を適正化することができる。
【0011】
第3の手段は、第1又は2の手段の湿泥状態の管理システムであって、前記回収手段は、長手方向に延びる頂部を有するフード状に形成されかつ水面付近で前記気泡含有水を捕集する捕集容器と、前記捕集容器の頂部に沿って延在しかつ該捕集容器の内部空間の前記気泡含有水をベンチュリ効果を利用して吸引する捕集配管と、を備える、湿泥状態の管理システムである。
【0012】
第3の手段によると、長手方向に延びる頂部を有するフード状に形成された捕集容器により、水面付近で気泡含有水が捕集される。捕集容器により捕集された気泡含有水は、捕集容器の頂部に沿って延在する捕集配管によりベンチュリ効果を利用して吸引される。よって、気泡含有水を効率良く回収することができる。
【0013】
第4の手段は、第3の手段の湿泥状態の管理システムであって、前記捕集配管の上部内壁面は平滑面とされている、湿泥状態の管理システムである。
【0014】
第4の手段によると、捕集配管の上部内壁面が平滑面つまり絞り部のない平滑面とされていることにより、捕集配管の上部内壁面における絞り部による気泡の滞留を抑制し、気泡含有水の流動性を向上することができる。
【0015】
第5の手段は、第1又は2の手段の湿泥状態の管理システムであって、前記計測手段は、前記回収手段により回収されて移送配管を流れる前記気泡含有水の画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得した画像から前記気泡の状態を計測する状態計測手段と、を備える、湿泥状態の管理システムである。
【0016】
第5の手段によると、計測手段の画像取得手段により移送配管を流れる気泡含有水の画像を取得し、その画像から状態計測手段が気泡の状態を計測する。これにより、気泡含有水を水と気泡とに分離することなく、速やかに気泡の状態を計測することができる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に開示の技術によると、水中の湿泥から発生する気泡の状態から湿泥の状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1にかかる湿泥状態の管理システムを示す模式図である。
【
図8】実施形態2にかかる捕集装置の位置調整装置を示す模式図である。
【
図9】実施形態3にかかるメタン捕集装置を示す模式図である。
【
図10】メタン捕集装置の制御動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態1]
本実施形態に係る湿泥状態の管理システムは、水槽内に干潟を再現した干潟槽の湿泥状態を管理するシステムである。
図1は湿泥状態の管理システムを示す模式図である。
【0020】
(湿泥状態の管理システム10)
図1に示すように、湿泥状態の管理システム10は、大別すると、干潟槽20と回収手段30と計測手段40と調整手段50と制御装置60とを備える。制御装置60は、プロセッサ、メモリ、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたマイクロコンピュータを含む構成のECU(Electronic Control Unit)からなる。制御装置60は、管理システム10の電気機器及び電子機器等を制御する。制御装置60は本明細書でいう「制御手段」に相当する。なお、
図1では、制御装置60と電気機器及び電子機器等との電気的な接続の一部が省略されている。
【0021】
(干潟槽20)
干潟槽20は、例えば特有な底生生物を飼育するための干潟を再現する設備である。干潟槽20は、水槽21と、水槽21内に貯留された湿泥22及び水23と、を有する。干潟槽20で飼育される底生生物にはシャコ等の甲殻類やアサリ等の貝類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
水槽21内には、湿泥22が層状に堆積されている。
図1では満潮時の水位で表されている。すなわち、湿泥22上に水23が層状に貯留されている。湿泥22中には、天然の干潟由来の微生物が生息している。水23は海水と同程度の塩分を含むことが好ましいが、干潟槽20で飼育する底生生物の種類によっては淡水でもよい。なお、説明の都合上、
図1を基に水槽21の上下左右の方位を定める。また、水槽21の底部には、図示しない砂、礫岩等が含まれている。
【0023】
本明細書における「湿泥」は、微生物にとって栄養分となる有機物を含むものを意味する。本明細書における「有機物」とは微生物が分解可能な状態のものを意味する。そのため、生物の死骸を構成する有機物は本明細書の「有機物」に含まれるが、生体を構成する有機物は除外される。また、干潟槽20には、必要に応じて日照用ライト、酸素濃度計、塩分濃度計、ヒータ等の干潟槽20内の環境状態を測定および調整するための装置を設置することができる。また、干潟槽20内で飼育する生物に餌を供給するための給餌装置を設置してもよい。
【0024】
(回収手段30)
回収手段30は、干潟槽20の水中の湿泥22から発生する気泡(ガス)24を含む気泡含有水を回収するものである。回収手段30は、大別すると、水槽21の上部に設置された捕集装置31と、気泡含有水を移送する移送配管36と、気泡含有水を吸引しかつ圧送する移送用ポンプ37と、気泡含有水を気液に分離する気液分離器38と、を備えている。
図1に気泡含有水の流れが矢印Yで示されている。
【0025】
捕集装置31は、水槽21の水面付近で気泡含有水を捕集する長尺状の捕集容器32と、捕集容器32の内部空間の気泡含有水をベンチュリ効果を利用して吸引する捕集配管33と、を備えている。
図2は捕集装置を示す正断面図、
図3は同じく捕集装置を一部破断して示す平面図、
図4は同じく下面図、
図5は同じく左側面図、
図6は
図3のVI-VI線矢視断面図である。
【0026】
図2及び
図4に示すように、捕集容器32は、長手方向(
図2及び
図4において左右方向)に延びる頂部32aを有するフード状に形成されている(
図5及び
図6参照)。本実施形態の捕集容器32は、下面を開口しかつ両端面を閉鎖する半円筒状に形成されている。
【0027】
捕集容器32は、干潟槽20の満潮時において下面開口部が水23で閉塞される(
図1参照)。これにより、捕集容器32の内部空間には、湿泥22から発生する気泡24を含む気泡含有水が浸入する。また、捕集容器32が頂部32aを有するフード状に形成されていることにより、捕集容器32の内部空間における気泡含有水中の全ての気泡24が頂部32aに向けて誘導される(
図6参照)。
【0028】
図2、
図3及び
図6に示すように、捕集配管33は丸型パイプ材からなる。捕集配管33は、捕集容器32の頂部32a上に沿って直線状に設置されている。捕集容器32と捕集配管33との接合部の両側(
図5及び
図6において左右両側)の生じる隙間は、封止部材34によって封止されている。捕集配管33の一端部(
図2において左端部)は閉鎖されている。捕集配管33の他端部(
図2において右端部)の端末部33a(
図1参照)は上方へ向けて折り曲げられている。
【0029】
図2に示すように、捕集配管33の直線状部分(端末部33aを除いた部分)の下部内壁面には、山形形状の複数の絞り部33bが形成されている。絞り部33bは、捕集配管33の長手方向に所定の間隔を隔てて複数配置されている。絞り部33bは、平面視で捕集配管33の長手方向を長くする長円形状に形成されている(
図3参照)。また、捕集配管33の直線状部分(端末部33aを除いた部分)の上部内壁面33cは、絞り部33bのない平滑面とされている(
図2及び
図6参照)。
【0030】
捕集装置31には、捕集容器32の頂部32a、捕集配管33の下端部、及び、絞り部33bの中心部(頂部)を上下方向に貫通する通気孔35が形成されている(
図6参照)。通気孔35は、例えば円形孔である。捕集配管33は、捕集容器32の内部空間の気泡含有水を、絞り部33bにより発生するベンチュリ効果を利用して通気孔35から吸引する。捕集装置31は、全体的に透明なアクリル樹脂等の樹脂材料により形成することにより、光を遮らないように構成することができる。
【0031】
図1に示すように、捕集配管33の端末部33aには、計測用配管41を介して移送配管36の一端部(上流側端部)36aが接続されている。移送配管36の他端部(下流側端部)36bは、水槽21の左端部において水槽21内に向けられている。計測用配管41は移送配管36の一部とみなすことができる。
【0032】
移送用ポンプ37は移送配管36の途中すなわち計測用配管41よりも下流側に配置されている。移送用ポンプ37は制御装置60によって制御される。移送用ポンプ37は、例えば干潟槽20の満潮時に運転される。移送用ポンプ37が運転されることにより、捕集容器32の内部空間の気泡含有水が捕集配管33を介して移送配管36に吸引されて圧送される。
【0033】
気液分離器38は、移送配管36の途中すなわち移送用ポンプ37よりも下流側に配置されている。気液分離器38は、気泡含有水を気体(ガス)と液体(水23)に分離する機能を有する。分離された水23は、移送配管36を介して干潟槽20の水槽21に戻される。
図1に水23の流れが矢印Y1で示されている。また、分離されたガス(メタン、硫化水素、窒素、二酸化炭素等)は、ガス移送配管39を介して次工程へ移送されて回収あるいは処理される。回収されたガスは、用途に応じて利用される。例えば、メタンは、吸着器により吸着し、その吸着器から脱離して利用することが可能である。
【0034】
ガス移送配管39の途中には、メタン検知器39a、硫化水素検知器39b等が接続されている。メタン検知器39a、硫化水素検知器39b等の検知信号は制御装置60に入力される。制御装置60は、メタン、硫化水素が検知された際に、計測手段40により気泡24の状態を計測する。
【0035】
(計測手段40)
計測手段40は、気泡含有水に含まれる気泡(ガス)24の状態を計測するものである。
図7は計測手段を示す模式図である。
図7に示すように、計測手段40は、大別すると、気泡含有水が流れる計測用配管41と、計測用配管41内を流れる気泡含有水を撮影するためのカメラ43と、カメラ43が撮影した画像から気泡含有水に含まれる気泡24の状態を計測する状態計測手段62と、を備えている。状態計測手段62は制御装置60に含まれる。
【0036】
計測用配管41は、略Z字状に形成されており、下縦管部41aと横管部41bと上縦管部41cとを有する。下縦管部41aには捕集配管33の端末部33aが接続されている。上縦管部41cには移送配管36の上流側端部36aが接続されている。横管部41b内の天井部には、下方を開口する断面円弧状の泡受け板42が配置されている。泡受け板42は、捕集配管33から下縦管部41aを流れてくる気泡24を受け止めることにより大型化を促進してから上縦管部41cへ逃がすものである。計測用配管41は、光を遮らない透明なアクリル樹脂等の樹脂材料により形成されている。
【0037】
カメラ43は、計測用配管41の上縦管部41c内を流れる気泡含有水を撮影する。カメラ43が撮影(取得)した画像は、制御装置60へ電子信号として送られる。カメラ43による画像の取得は、制御装置60によって制御される。制御装置60は、例えば、メタン検知器39a、硫化水素検知器39b等(
図1参照)によりメタンや硫化水素が検知された際に、カメラ43による画像の取得を行う。カメラ43は本明細書でいう「画像取得手段」に相当する。
【0038】
状態計測手段62は、カメラ43の中心軸線43Lを横切る気泡24の検知と、その気泡24の径φDと、次の気泡24を検知するまでの検知時間T(ms)と、に基づいて、気泡含有水に含まれる気泡24の状態すなわち気泡24の径φD、気泡24同士間の間隔(距離)、ガスの流量等を計測する。
【0039】
(調整手段50)
図1に示すように、調整手段50は、制御装置60の判定手段64の判定結果に基づいて干潟槽20の湿泥22の状態を調整するものである。調整手段50は、メタン菌が活性化する有機物を含む調整水を貯留する貯留槽51と、貯留槽51の有機物を干潟槽20の湿泥22の下部に供給する供給配管52と、供給配管52の途中に設けられた調整用ポンプ53と、を備えている。調整用ポンプ53は、制御装置60によって制御される。
【0040】
(判定手段)
図1に示すように、制御装置60は、計測手段40により計測された結果(気泡24の状態)に基づいて湿泥22の状態が適正か否かを判定する判定手段64を備えている。例えば、貧酸素や酸素がない嫌気状態では、主としてメタンや硫化水素が発生する。このため、判定手段64は、計測手段40により計測した気泡24の状態が、予め設定された湿泥22の適正な環境(例えば天然環境)における気泡24の適正状態から外れた場合に、湿泥22の状態が悪化したと判断する。例えば、計測による気泡24の径φD、気泡24同士間の間隔、ガスの流量等のいずれかが適正範囲外の場合に、湿泥22の状態が悪化したと判断する。この場合、制御装置60は、管理者(ユーザー)へ通知するとともに、調整手段50の調整用ポンプ53を駆動させる。
【0041】
制御装置60は、判定手段64が湿泥22の状態が悪化したと判断した際に、調整用ポンプ53を駆動させる。調整用ポンプ53の駆動によって、貯留槽51に貯留されていた有機物を含む調整水が湿泥22に供給される。これにより、湿泥22のメタン菌が活性化される。すなわち、湿泥22の状態が適正化されるように調整することができる。
【0042】
(本実施形態の利点)
本実施形態の湿泥状態の管理システム10によると、回収手段30により水中の湿泥22から発生する気泡24を含む気泡含有水を回収し、その気泡含有水に含まれる気泡24の状態を計測手段40により計測し、その計測された気泡24の状態に基づいて判定手段64が湿泥22の状態を判定する。これにより、水中の湿泥22から発生する気泡24の状態から湿泥22の状態を判定することができる。
【0043】
したがって、本管理システム10を、例えば、水田、干潟等の湿泥22の状態の適正化に用いることで、イネや生物の育成環境を長期に亘って良好に保持することができる。また、湿泥22に微生物燃料電池を備える場合には、微生物燃料電池の発電量低下を未然に防止することができる。
【0044】
また、判定手段64の判定結果に基づいて調整手段50が湿泥22の状態を調整する。これにより、湿泥22の状態を適正化することができる。
【0045】
回収手段30の長手方向に延びる頂部32aを有するフード状に形成された捕集容器32により、水面付近で気泡含有水が捕集される。その捕集容器32により捕集された気泡含有水は、捕集容器32の頂部32aに沿って延在する捕集配管33によりベンチュリ効果を利用して吸引される。よって、気泡含有水を効率良く回収することができる。
【0046】
また、捕集配管33の上部内壁面33cが平滑面つまり絞り部33bのない平滑面とされていることにより、捕集配管33の上部内壁面33cにおける絞り部33bによる気泡24の滞留を抑制し、気泡含有水の流動性を向上することができる。
【0047】
また、計測手段40のカメラ43により移送配管36の計測用配管41を流れる気泡含有水の画像を取得し、その画像から状態計測手段62が気泡24の状態を計測する。これにより、気泡含有水を水と気泡24とに分離することなく、速やかに気泡24の状態を計測することができる。
【0048】
(実施形態2)
本実施形態は、実施形態1の捕集装置31を水平状態を保持したまま昇降させる位置調整装置を例示するものであるから、その変更部分について説明し、実施形態1と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図8は捕集装置の位置調整装置を示す模式図である。
図8に示すように、位置調整装置70は、一対のモータ72と、一対のシャフト73と、を備えている。
【0049】
両モータ72は、干潟槽20の上方に配置された固定部材71に設置されている。両モータ72は、捕集装置31の長手方向(
図8において左右方向)の両端部の上方に配置されている。モータ72の出力軸72aは下方に向けられている。両モータ72は、制御装置60によって制御される。
【0050】
両モータ72の出力軸72aには、ネジ軸を有するシャフト73の基端部(上端部)がそれぞれ同軸状に結合されている。シャフト73は、捕集装置31の捕集容器32の両端部に螺合されている。両シャフト73は、捕集容器32の内部空間を貫通しないように配置されている。
【0051】
干潟槽20の水槽21の一側壁(
図8において左側壁)には、水23の液面を検出する液面検出装置としてのセンダゲージ75が設置されている。センダゲージ75の検出信号は制御装置60に入力される。
【0052】
制御装置60は、捕集容器32の下面開口部が水23で閉塞されるように、両モータ72を駆動させる。すなわち、両モータ72の駆動によりシャフト73が回転されることで、捕集装置31が水平状態を保持したまま昇降される。また、捕集装置31の昇降に移送配管36(
図1参照)が追従できるように、移送配管36の一部にはフレキシブル配管が用いられるものとする。
【0053】
(実施形態2の利点)
本実施形態によると、干潟槽20の水23の液面に応じて捕集装置31が昇降することにより、気泡含有水の吸引不足あるいは吸引不能を抑制することができる。また、制御装置60は、センダゲージ75に代え、干潟槽20の水面を撮影するカメラ43の画像に基づいて両モータ72の駆動を制御してもよい。
【0054】
(実施形態3)
本実施形態は、実施形態1で捕集されたガス(例えば、メタン)を捕集するメタン捕集装置を例示するものであるから、その変更部分について説明し、実施形態1と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図9はメタン捕集装置を示す模式図である。
【0055】
図9に示すように、メタン捕集装置MCは、気液分離器38(
図1参照)に接続されたガス移送配管39の途中に設けられている。ガス移送配管39の下流端は大気口39cとされている。ガス移送配管39の途中には、第1配管80と第2配管90が並列的に接続されている。第1配管80には、第1配管80を開閉する第1開閉弁81と、捕集ガス(例えば、メタン)を吸着可能な吸着材が充填された第1吸着器82と、が直列的に接続されている。第2配管90には、第2配管90を開閉する第2開閉弁91と、捕集ガス(例えば、メタン)を吸着可能な吸着材が充填された第2吸着器92と、が直列的に接続されている。両配管80,90、両開閉弁81,91及び両吸着器82,92は同一構成である。
【0056】
第1配管80と第2配管90との合流部には三方弁100が設けられている。三方弁100は、第1配管80を大気口39cに連通しかつ第2配管90を遮断するオフ状態(第1状態)と、第2配管90を大気口39cに連通しかつ第1配管80を遮断するオン状態(第2状態)と、に切替える。第1開閉弁81、第2開閉弁91及び三方弁100は、制御装置60によって切替えタイミングが制御される電磁弁である。
【0057】
ガス移送配管39の三方弁100と大気口39cとの間には、捕集ガス(メタン)の吸着後のガスの濃度(メタン濃度)を検知する捕集ガス検知センサ102が設けられている。捕集ガス検知センサ102の検知信号は、制御装置60に入力される。制御装置60は、捕集ガス検知センサ102の検知信号に基づいて、第1吸着器82又は第1吸着器82がメタンの吸着限界いわゆる破過に至る直前にあると判定した際に、第1開閉弁81、第2開閉弁91及び三方弁100を制御する。
【0058】
(メタン捕集装置MCの制御)
図10はメタン捕集装置の制御動作を示すタイムチャートである。いま、第1開閉弁81及び第2開閉弁91がオフ状態(閉弁状態)にあるものとする。
図10に示すように、湿泥状態の管理システム10の移送用ポンプ37(
図1参照)の運転開始と同時(時刻t0参照)に、第1開閉弁81がオン(開弁)されるとともに三方弁100はオフ状態(第1状態)とされる。これにより、第1吸着器82にメタンが吸着されていく(
図10の特性線L1参照)。
【0059】
そして、捕集ガス検知センサ102により測定されたガス濃度(特性線L3参照)が規定値α(%)に達する(時刻t1参照)。規定値α(%)は、第1吸着器82がメタンの吸着限界(いわゆる破過)に至る直前のガス濃度である。つまり、時刻t1を経過すると、第1吸着器82がメタンの吸着限界に達し、破過する(時刻t2参照)。このため、第1吸着器82が破過する直前(時刻t1参照)において、第1開閉弁81がオフ(閉弁)され、第2開閉弁91がオン(開弁)されるとともに、三方弁100がオン状態(第2状態)に切替えられる。これにより、第1吸着器82に代えて第2吸着器92にメタンが吸着されていく(
図10の特性線L2参照)。第2吸着器92にメタンが吸着されている間に、第1吸着器82からメタンを脱離する処理が行われる。
【0060】
以降、同様に、捕集ガス検知センサ102により測定されたガス濃度が規定値α(%)に達すると、第2開閉弁91がオフ(閉弁)され、第1開閉弁81がオン(開弁)されるとともに三方弁100がオフ状態(第1状態)に切替えられる。これにともない、第2吸着器92に代えて第1吸着器82にメタンが吸着されていく。第1吸着器82にメタンが吸着されている間に、第2吸着器92からメタンを脱離する処理が行われる。
【0061】
(実施形態3の利点)
本実施形態によると、第1吸着器82と第2吸着器92とを交互に切替えることによって、メタンを継続的に吸着することができる。また、第1吸着器82と第2吸着器92との一方の吸着器が破過に至る直前に他方の吸着器に切り替えることにより、第1吸着器82及び第2吸着器92の破過を抑制することができる。なお、両吸着器82,92による吸着開始から終了までの時間を湿泥22の状態の判定に使用することもできる。
【0062】
(他の実施形態)
本明細書に開示の技術は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施可能である。例えば、管理者(ユーザー)が、判定手段64からの湿泥22の環境悪化の通知を受けた際、管理者によって湿泥22の改善(調整)の手を加えてもよい。また、調整手段50は、有機物の他、海水の温度、塩分濃度等の環境を調整するものでもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 湿泥状態の管理システム
20 干潟槽
22 湿泥
24 気泡
30 回収手段
32 捕集容器
32a 頂部
33 捕集配管
33b 絞り部
33c 上部内壁面
36 移送配管
40 計測手段
43 カメラ(画像取得手段)
50 調整手段
60 制御装置(制御手段)
62 状態計測手段
64 判定手段