(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043727
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】積層体、袋状体及び培養バッグ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240326BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240326BHJP
C08J 7/052 20200101ALI20240326BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/36
C08J7/052 CFD
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148882
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503116693
【氏名又は名称】株式会社ちとせ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100214639
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】石塚 亮太
(72)【発明者】
【氏名】三輪 和哉
(72)【発明者】
【氏名】星野 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 裕之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 智大
(72)【発明者】
【氏名】平野 さやか
【テーマコード(参考)】
4B029
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB04
4B029CC01
4B029GA08
4B029GB09
4F006AA35
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4F006CA06
4F006CA09
4F100AK01A
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4F100EJ42
4F100GB16
4F100JK01
4F100JK02B
4F100JK03
4F100JK08
4F100JK08B
4F100JN01
4F100JN18B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】培養バッグ、特に微細藻類を培養するための培養バッグ、の基材に適した新たな積層体を提供する。
【解決手段】本発明の積層体10は、延伸フィルム1と、延伸フィルム1を保護する保護層2と、を備える。積層体10は、下記試験により測定される引裂強度が10.5N以上である。
試験:積層体10から、長辺150mm×短辺100mmの矩形の試験片を2つ切り出す。延伸フィルム1同士が接触するように2つの試験片を互いに重ね合わせ、2つの試験片のそれぞれの短辺部に囲まれた開口部が形成されるように3方をヒートシールし、3方袋を作製する。開口部を囲んでいる短辺部を引張試験機にセットする。荷重速度5N/minの条件で、2つの試験片を互いに引き離す方向に引張試験を行い、3方袋が裂けたときの荷重を引裂強度として特定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸フィルムと、
前記延伸フィルムを保護する保護層と、
を備え、
下記試験により測定される引裂強度が10.5N以上である、積層体。
試験:前記積層体から、長辺150mm×短辺100mmの矩形の試験片を2つ切り出す。前記延伸フィルム同士が接触するように2つの前記試験片を互いに重ね合わせ、2つの前記試験片のそれぞれの短辺部に囲まれた開口部が形成されるように3方をヒートシールし、3方袋を作製する。前記開口部を囲んでいる前記短辺部を引張試験機にセットする。荷重速度5N/minの条件で、2つの前記試験片を互いに引き離す方向に引張試験を行い、前記3方袋が裂けたときの荷重を引裂強度として特定する。
【請求項2】
前記保護層は、下記試験により測定される破断強度(MPa)と破断伸度(%)との積が2500MPa・%以上である、請求項1に記載の積層体。
試験:前記保護層の材料で構成され、かつ、縦100mm×横100mm×厚さ2mmのサイズを有する平板を打ち抜き、ダンベル状3号形の試験片を作製する。前記試験片を引張試験機にセットし、初期のチャック間距離70mm、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、前記試験片が破断したときの強度(破断強度)及び伸度(破断伸度)を測定する。
【請求項3】
前記破断強度が30MPa以上であり、かつ前記破断伸度が300%以上である、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記保護層は、ポリエステルウレタン樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記保護層の厚さが1μm以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記保護層の厚さが30μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記保護層の屈折率が1より大きく、かつ1.6未満である、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
430~460nmの波長域における平均透過率が80%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
640~670nmの波長域における平均透過率が80%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
培養バッグに用いられる、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体を備えた、袋状体。
【請求項13】
前記積層体において、前記保護層は、前記延伸フィルムよりも外側に位置する、請求項12に記載の袋状体。
【請求項14】
2つの前記積層体を備え、
2つの前記積層体は、互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように接合されている、請求項12に記載の袋状体。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体を備えた、培養バッグ。
【請求項16】
気体を内部に供給するための開口部を有する、請求項15に記載の培養バッグ。
【請求項17】
微細藻類を培養するために用いられる、請求項15に記載の培養バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、袋状体及び培養バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は、食料や燃料などに利用することができ、その利用価値が高い。微細藻類は、容易に培養できるだけでなく、その培養過程で二酸化炭素を大量に吸収できる利点もある。
【0003】
微細藻類の培養方法としては、屋外に開放された培養槽を利用する開放系での培養方式や、タンクなどの密閉容器を利用する閉鎖系での培養方式が挙げられる。開放系での培養方式は、コンタミネーションリスクが高いことや微細藻類のバイオマス生産性が限定的となるなどのデメリットがある。閉鎖系の培養方式は、外部からの物質混入や生物侵入で培養液が汚染されるコンタミネーションのリスクを低減できる利点がある。
【0004】
閉鎖系の培養方式では、密閉容器として、樹脂製のフィルムを含む培養バッグ、ガラス管やガラスプレートで構成された培養容器などが利用される。培養バッグとしては、例えば、2つの包装材(基材)が互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように接合された袋状体が用いられる。この袋状体では、通常、2つの包装材がヒートシールにより接合されている。
【0005】
上記の袋状体を用いた培養方式によれば、その厚さ方向が水平方向と一致するように袋状体を配置することによって、袋状体の設置面積を抑制しつつ、微細藻類を効率的に培養することができる。一例として、特許文献1は、梁などに吊るされた袋状体を備えた培養装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国実用新案第207483706号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
培養バッグ、特に微細藻類を培養するための培養バッグ、の基材に適した新たな積層体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、透光性や耐久性の観点から、延伸フィルムが微細藻類を培養するための培養バッグの基材に適していることを新たに見出した。しかし、本発明者らの検討によると、延伸フィルムを基材とした培養バッグに培地を入れるために開口する際などに、ヒートシール部近傍の未ヒートシール部が裂けるおそれがある。本発明者らは、これらの知見に基づいて検討を進め、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、
延伸フィルムと、
前記延伸フィルムを保護する保護層と、
を備え、
下記試験により測定される引裂強度が10.5N以上である、積層体を提供する。
試験:前記積層体から、長辺150mm×短辺100mmの矩形の試験片を2つ切り出
す。前記延伸フィルム同士が接触するように2つの前記試験片を互いに重ね合わせ、2つの前記試験片のそれぞれの短辺部に囲まれた開口部が形成されるように3方をヒートシールし、3方袋を作製する。前記開口部を囲んでいる前記短辺部を引張試験機にセットする。荷重速度5N/minの条件で、2つの前記試験片を互いに引き離す方向に引張試験を行い、前記3方袋が裂けたときの荷重を引裂強度として特定する。
【0010】
さらに本発明は、
上記の積層体を備えた、袋状体を提供する。
【0011】
さらに本発明は、
上記の積層体を備えた、培養バッグを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、培養バッグ、特に微細藻類を培養するための培養バッグ、の基材に適した新たな積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる積層体を模式的に示す断面図である。
【
図2A】引裂強度の測定試験に用いられる3方袋を構成する試験片の平面図である。
【
図2B】引裂強度の測定試験に用いられる3方袋の斜視図である。
【
図2C】引裂強度の測定試験を説明するための図である。
【
図3】本発明の袋状体(培養バッグ)を模式的に示す断面図である。
【
図4A】実施例1で作製した3方袋について、ヒートシールを行った部分の近傍の顕微鏡画像である。
【
図4B】比較例1で作製した3方袋について、ヒートシールを行った部分の近傍の顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1態様にかかる積層体は、
延伸フィルムと、
前記延伸フィルムを保護する保護層と、
を備え、
下記試験により測定される引裂強度が10.5N以上である。
試験:前記積層体から、長辺150mm×短辺100mmの矩形の試験片を2つ切り出す。前記延伸フィルム同士が接触するように2つの前記試験片を互いに重ね合わせ、2つの前記試験片のそれぞれの短辺部に囲まれた開口部が形成されるように3方をヒートシールし、3方袋を作製する。前記開口部を囲んでいる前記短辺部を引張試験機にセットする。荷重速度5N/minの条件で、2つの前記試験片を互いに引き離す方向に引張試験を行い、前記3方袋が裂けたときの荷重を引裂強度として特定する。
【0015】
本発明の第2態様において、例えば、第1態様にかかる積層体では、前記保護層は、下記試験により測定される破断強度(MPa)と破断伸度(%)との積が2500MPa・%以上である。
試験:前記保護層の材料で構成され、かつ、縦100mm×横100mm×厚さ2mmのサイズを有する平板を打ち抜き、ダンベル状3号形の試験片を作製する。前記試験片を引張試験機にセットし、初期のチャック間距離70mm、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、前記試験片が破断したときの強度(破断強度)及び伸度(破断伸度)を測定する。
【0016】
本発明の第3態様において、例えば、第2態様にかかる積層体では、前記破断強度が30MPa以上であり、かつ前記破断伸度が300%以上である。
【0017】
本発明の第4態様において、例えば、第1~第3態様のいずれか1つにかかる積層体では、前記延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む。
【0018】
本発明の第5態様において、例えば、第1~第4態様のいずれか1つにかかる積層体では、前記保護層は、ポリエステルウレタン樹脂を含む。
【0019】
本発明の第6態様において、例えば、第1~第5態様のいずれか1つにかかる積層体では、前記保護層の厚さが1μm以上である。
【0020】
本発明の第7態様において、例えば、第1~第6態様のいずれか1つにかかる積層体では、前記保護層の厚さが30μm以下である。
【0021】
本発明の第8態様において、例えば、第1~第7態様のいずれか1つにかかる積層体では、前記保護層の屈折率が1より大きく、かつ1.6未満である。
【0022】
本発明の第9態様において、例えば、第1~第8態様のいずれか1つにかかる積層体は、430~460nmの波長域における平均透過率が80%以上である。
【0023】
本発明の第10態様において、例えば、第1~第9態様のいずれか1つにかかる積層体は、640~670nmの波長域における平均透過率が80%以上である。
【0024】
本発明の第11態様において、例えば、第1~第10態様のいずれか1つにかかる積層体は、培養バッグに用いられる。
【0025】
本発明の第12態様にかかる袋状体は、
第1~第11態様のいずれか1つにかかる積層体を備える。
【0026】
本発明の第13態様において、例えば、第12態様にかかる袋状体では、前記積層体において、前記保護層は、前記延伸フィルムよりも外側に位置する。
【0027】
本発明の第14態様において、例えば、第12又は第13態様にかかる袋状体は、2つの前記積層体を備え、2つの前記積層体は、互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように接合されている。
【0028】
本発明の第15態様にかかる培養バッグは、
第1~第11態様のいずれか1つにかかる積層体を備える。
【0029】
本発明の第16態様において、例えば、第15態様にかかる培養バッグは、気体を内部に供給するための開口部を有する。
【0030】
本発明の第17態様において、例えば、第15又は第16態様にかかる培養バッグは、微細藻類を培養するために用いられる。
【0031】
以下、本発明の詳細を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
【0032】
<積層体の実施形態>
図1に示すように、本実施形態の積層体10は、延伸フィルム1及び保護層2を備えている。延伸フィルム1は、ヒートシールにより他の部材と接合することができる表面(ヒートシール面)1aと、表面1aに対向する表面1bとを有する。表面1aは、積層体10の外部に露出している。表面1a及び1bは、延伸フィルム1の主面(最も大きい面積を有する面)である。
【0033】
保護層2は、延伸フィルム1の表面1bを被覆することにより、延伸フィルム1を保護している。保護層2は、延伸フィルム1の表面1b全体を被覆していてもよく、延伸フィルム1の表面1bを部分的に被覆していてもよい。特に、保護層2は、延伸フィルム1の表面1bのうち、ヒートシールが施される部分(例えば、表面1bの周縁部)を被覆していることが好ましい。保護層2は、例えば、延伸フィルム1の表面1bと直接接している。
【0034】
積層体10は、下記試験1により測定される引裂強度が10.5N以上である。
試験1:積層体10から、長辺150mm×短辺100mmの矩形の試験片を2つ切り出す。延伸フィルム1同士が接触するように2つの試験片を互いに重ね合わせ、2つの試験片のそれぞれの短辺部に囲まれた開口部が形成されるように3方をヒートシールし、3方袋を作製する。開口部を囲んでいる短辺部を引張試験機にセットする。荷重速度(荷重の増加速度)5N/minの条件で、2つの試験片を互いに引き離す方向に引張試験を行い、3方袋が裂けたときの荷重を引裂強度として特定する。
【0035】
以下では、試験1の詳細について説明する。試験1では、まず、積層体10から、
図2Aに示す試験片25及び26を切り出す。各試験片は、長辺150mm×短辺100mmの矩形である。試験片25が短辺部25aを有し、試験片26が短辺部26aを有する。一例として、試験片25及び26のそれぞれについて、短辺方向が延伸フィルム1のMD方向(原フィルムの溶融成形方向)と一致し、長辺方向が延伸フィルム1のTD方向(原フィルムの面内における溶融成形方向に垂直な方向)と一致している。
【0036】
次に、延伸フィルム1同士が接触するように2つの試験片25及び26を互いに重ね合わせ、3方をヒートシールし、
図2Bに示す3方袋20を作製する。3方袋20は、2つの試験片25及び26のそれぞれの短辺部25a及び26aに囲まれた開口部21が形成されるように作製する。ヒートシールの条件は、後述する引張試験において、ヒートシールを行った部分での剥がれが生じず、さらに、発泡や焦げが生じない限り特に限定されない。一例として、ヒートシールは、延伸フィルム1の融点以上の温度で0.7秒以上行うことが好ましい。延伸フィルム1の融点は、後述する方法によって特定することができる。ヒートシールの冷却時間は、例えば、1.4秒以上である。シール幅は、例えば5mmである。ヒートシールは、市販のヒートシーラー(例えば、富士インパルス社製のインパルスシーラー P-300-5)を用いて行うことができる。
【0037】
次に、
図2Cに示す引張試験機30に3方袋20をセットする。引張試験機30としては、例えば、島津製作所製の引張圧縮試験機AGS-50NXを用いることができる。例えば、引張試験機30の下部チャック31に、試験片26の短辺部26aの中央部分を固定する。上部チャック32に、試験片25の短辺部25aの中央部分を固定する。これにより、3方袋20について、開口部21を囲んでいる短辺部25a及び26aを引張試験機30にセットすることができる。
【0038】
次に、上部チャック32を上方に移動させることによって、3方袋20に対して、2つの試験片25及び26を互いに引き離す方向に引張試験を行う。引張試験を行うと、通常、ヒートシールを行った部分の近傍で3方袋20が裂ける。3方袋20が裂けたときの荷重(引張荷重)を引裂強度として特定することができる。引張試験の測定条件の詳細は、
以下のとおりである。
・測定条件
試験モード:シングル
試験種類:引張
荷重速度:5N/min
【0039】
従来、延伸フィルムは、ヒートシールを行ったときの引裂強度が低い傾向がある。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む延伸フィルムに対して試験1を行うと、引裂強度が10.5Nを下回る傾向がある(比較例1)。これに対して、試験1の引裂強度が10.5N以上、特に18N以上である積層体10は、ヒートシールを行ったときの引裂強度が改善されていると言える。引裂強度は、好ましくは12N以上であり、15N以上、16N以上、17N以上、18N以上、20N以上、30N以上、さらには40N以上であってもよい。引裂強度の上限値は、特に限定されず、例えば50Nである。
【0040】
[延伸フィルム]
延伸フィルム1は、樹脂組成物を溶融成形することにより得られた原フィルムについて、延伸を行うことによって作製されたフィルムであり、1軸延伸フィルムであってもよく、2軸延伸フィルムであってもよい。延伸フィルム1は、光の透過性が優れる観点から、2軸延伸フィルムであることが好ましい。延伸には、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法などの公知の延伸法を利用することができる。延伸方向は、典型的には、原フィルムのMD方向(溶融成形方向)及び/又はTD方向(原フィルムの面内における溶融成形方向に垂直な方向)である。2軸延伸においては、逐次2軸延伸であってもよく、同時2軸延伸であってもよい。
【0041】
延伸フィルム1の延伸倍率は、特に限定されず、延伸方向(MD方向及び/又はTD方向)について、例えば1.1倍以上であり、好ましくは2.0倍以上であり、5.0倍以上であってもよい。
【0042】
延伸フィルム1に含まれる樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂などが挙げられる。延伸フィルム1は、ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート樹脂、を含むことが好ましい。
【0043】
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるポリマーP1は、典型的には、エチレングリコールに由来する構成単位U1と、テレフタル酸に由来する構成単位U2とを有する。ポリマーP1において、構成単位U1の含有率と構成単位U2の含有率との合計値は、例えば50モル%以上であり、70モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、さらには99モル%以上であってもよい。ポリマーP1は、実質的に構成単位U1及びU2のみから構成されていてもよい。ただし、ポリマーP1は、構成単位U1及びU2以外の他の構成単位を含んでいてもよい。
【0044】
延伸フィルム1は、例えば、上述した樹脂を主成分として含む。「主成分」とは、延伸フィルム1に重量比で最も多く含まれた成分を意味する。延伸フィルム1は、実質的に樹脂のみから構成されていてもよい。ただし、延伸フィルム1は、樹脂以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などが挙げられる。
【0045】
延伸フィルム1の厚さは、強度の観点から、例えば1μm以上であり、10μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、さらには40μm以上であってもよい。延伸フィルム1の厚さは、透光性の観点から、例えば1000μm以下であり、500μm
以下、300μm以下、さらには100μm以下であってもよい。
【0046】
延伸フィルム1の融点は、特に限定されず、例えば150℃~300℃である。本明細書において、フィルムの融点は、次の方法によって測定することができる。まず、フィルムの一部を切り出し、試験片とする。試験片について、示差走査熱量測定(DSC)を行う。DSCでは、一定の昇温速度、例えば10℃/分、で試験片を昇温する。結晶融解に基づく吸熱ピークのピーク温度を測定し、フィルムの融点として特定する。
【0047】
延伸フィルム1の屈折率は、特に限定されず、例えば1.4~3.0である。一例として、延伸フィルム1がポリエチレンテレフタレート樹脂から構成されている場合、延伸フィルム1の屈折率は1.6程度である。本明細書において、「屈折率」は、温度25℃で波長550nmの光を用いて、JIS K0062:1992の規定に準拠して測定された値を意味する。
【0048】
[保護層]
保護層2は、例えば樹脂を含む。保護層2に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂、UV硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが挙げられる。樹脂の具体例としては、ポリエステルウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂などが挙げられる。保護層2は、ポリエステルウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0049】
ポリエステルウレタン樹脂に含まれるポリマーP2は、典型的には、ポリエステルポリオールに由来する構成単位U3と、イソシアネート化合物に由来する構成単位U4とを有する。
【0050】
ポリエステルポリオールは、末端に水酸基を有するポリエステルであり、例えば、カルボン酸当量に対してアルコール当量が過剰である条件下で、多塩基酸又はその誘導体と、多価アルコールとを反応させることにより合成することができる。多塩基酸は、二塩基酸であることが好ましく、多価アルコールは、ジオールであることが好ましい。
【0051】
二塩基酸及びその誘導体としては、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;これらのジカルボン酸の酸無水物、低級アルコールエステル等が挙げられる。
【0052】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等が挙げられる。
【0053】
イソシアネート化合物は、2つのイソシアネート基を有するジイソシアネートであることが好ましい。ジイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートであってもよく、脂肪族ジイソシアネートであってもよい。芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、テトラメチルジフェニルメタンジイソシ
アネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2-クロロ-1,4-フェニルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルスルホキシドジイソシアネート、4,4’-ジフェニルスルホンジイソシアネート、4,4’-ビフェニルジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
他のイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネートの多量体(2量体、3量体、5量体など)、ポリメリックMDI、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたウレタン変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体等が挙げられる。
【0055】
ポリマーP2において、構成単位U3の含有率と構成単位U4の含有率との合計値は、例えば50モル%以上であり、70モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、さらには99モル%以上であってもよい。ポリマーP2は、実質的に構成単位U3及びU4のみから構成されていてもよい。ただし、ポリマーP2は、構成単位U3及びU4以外の他の構成単位を含んでいてもよい。
【0056】
保護層2は、例えば、上述した樹脂を主成分として含む。保護層2は、実質的に樹脂のみから構成されていてもよい。ただし、保護層2は、樹脂以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、延伸フィルム1について上述したものが挙げられる。
【0057】
保護層2の厚さは、ヒートシールを行ったときの引裂強度を改善する観点から、例えば0.1μm以上であり、0.5μm以上、1μm以上、3μm以上、さらには5μm以上であってもよい。保護層2の厚さは、透光性の観点から、例えば30μm以下であり、20μm以下、さらには10μm以下であってもよい。
【0058】
保護層2の屈折率は、1より大きく、かつ延伸フィルム1の屈折率よりも小さいことが好ましい。この場合、積層体10の保護層2側の表面から入射した入射光の散乱が抑制され、積層体10の透光性が向上する傾向がある。保護層2の屈折率は、1より大きく、かつ1.6未満であることが特に好ましい。この保護層2は、ポリエチレンテレフタレート樹脂から構成された延伸フィルム1との組み合わせにより、積層体10の透光性を向上させることに適している。
【0059】
保護層2は、下記試験2により測定される破断強度(MPa)と破断伸度(%)との積が2500MPa・%以上であることが好ましい。この保護層2は、ヒートシールによる延伸フィルム1の劣化を抑制することに適している。延伸フィルム1の劣化を抑制することによって、ヒートシールを行ったときの積層体10の引裂強度を改善できる傾向がある。
試験2:保護層2の材料で構成され、かつ、縦100mm×横100mm×厚さ2mmのサイズを有する平板を打ち抜き、ダンベル状3号形の試験片を作製する。試験片を引張試験機にセットし、初期のチャック間距離70mm、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、試験片が破断したときの強度(破断強度)及び伸度(破断伸度)を測定する。
【0060】
試験2において、保護層2の材料で構成された平板の作製方法は特に限定されない。一例として、保護層2に含まれる樹脂が熱可塑性樹脂である場合、次の方法によって平板を作製できる。まず、保護層2を形成するための樹脂組成物を準備する。樹脂組成物について、必要に応じて、減圧雰囲気下で乾燥処理を行う。乾燥処理は、100℃以上の温度で8時間以上行ってもよい。樹脂組成物に対して射出成形を行うことによって平板を得ることができる。射出成形は、市販の射出成形機(例えば、山城精機社製のmodel-SAV)を用いて、例えば、シリンダー温度を樹脂の融解温度Tm+20℃に設定し、金型温度を30℃に設定して行うことができる。
【0061】
保護層2に含まれる樹脂がUV硬化型樹脂である場合、例えば、次の方法によって平板を作製できる。まず、保護層2の材料を含む塗布液を準備する。アプリケーターなどを用いて、塗布液を基材(例えばガラス板)に塗布する。大気下で、得られた塗布膜に紫外線を照射して、塗布膜を硬化させることによって平板を得ることができる。紫外線の光源としては、例えば、3.5kWのメタルハライドランプ(例えば、オーク社製のSMX-3500/F-OS)を用いることができる。紫外線の積算光量は、例えば、1J/cm2
以上である。
【0062】
試験2において、試験片の形状(ダンベル状3号形)は、例えば、JIS K6251:2017に定められている。引張試験機としては、試験1について上述したものを用いることができる。
【0063】
本発明は、その別の側面から、
延伸フィルム1と、
延伸フィルム1を保護する保護層2と、
を備え、
保護層2は、上記の試験2により測定される破断強度(MPa)と破断伸度(%)との積が2500MPa・%以上である、積層体を提供する。
【0064】
保護層2において、破断強度(MPa)と破断伸度(%)との積は、好ましくは3000MPa・%以上であり、5000MPa・%以上、8000MPa・%以上、10000MPa・%以上、13000MPa・%以上、15000MPa・%以上、さらには18000MPa・%以上であってもよい。破断強度(MPa)と破断伸度(%)との積の上限値は、特に限定されず、例えば100000MPa・%である。
【0065】
保護層2の破断強度は、例えば10MPa以上であり、20MPa以上、30MPa以上、さらには40MPa以上であってもよい。保護層2の破断強度が大きければ大きいほど、保護層2の強度が大きく、積層体10が裂けにくい傾向がある。保護層2の破断強度の上限値は、特に限定されず、例えば100MPaである。
【0066】
保護層2の破断伸度は、例えば50%以上であり、100%以上、200%以上、300%以上、400%以上、さらには500%以上である。保護層2の破断伸度が高ければ高いほど、保護層2の柔軟性が高く、積層体10が裂けにくい傾向がある。保護層2の破断伸度の上限値は、特に限定されず、例えば1000%である。保護層2は、破断強度が30MPa以上であり、かつ破断伸度が300%以上であることが好ましい。
【0067】
[積層体の製造方法]
積層体10は、延伸フィルム1の上に保護層2を形成することによって作製することができる。保護層2は、例えば、次の方法によって作製できる。まず、保護層2の材料を含む塗布液を準備する。塗布液の溶媒は、典型的には、有機溶媒である。次に、延伸フィルム1の上に塗布液を塗布し、塗布膜を作製する。塗布液の塗布方法は、特に限定されず、
ワイヤーバーコート法、スピンコート法などを利用できる。次に、塗布膜を乾燥させることによって、保護層2を形成することができる。塗布膜の乾燥は、例えば、加熱条件下で行うことができる。塗布膜の加熱温度は、特に限定されず、例えば、塗布液の溶媒の沸点以上である。塗布膜の加熱時間は、特に限定されず、例えば1分以上である。保護層2に含まれる樹脂がUV硬化型樹脂である場合、塗布膜に対して紫外線を照射することにより、塗布膜を硬化させてもよい。
【0068】
[積層体の特性]
本実施形態の積層体10は、延伸フィルム1を備えることによって、透光性及び耐久性に優れている傾向がある。積層体10について、430~460nmの波長域における平均透過率T1は、例えば80%以上であり、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、さらには85%以上であってもよい。平均透過率T1が高ければ高いほど、積層体10を備えた袋状体は、微細藻類の光合成を促進できる傾向がある。平均透過率T1の上限値は、特に限定されず、例えば99%である。
【0069】
さらに、積層体10について、640~670nmの波長域における平均透過率T2は、例えば80%以上であり、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、さらには88%以上であってもよい。平均透過率T2が高ければ高いほど、積層体10を備えた袋状体は、微細藻類の光合成を促進できる傾向がある。平均透過率T2の上限値は、特に限定されず、例えば99%である。
【0070】
平均透過率T1及びT2は、次の方法によって特定することができる。まず、積層体10から、縦5cm×横5cmのサイズを有する試験片を切り出す。この試験片を市販の分光光度計にセットし、測定波長250nm~1000nmにて透過率を測定する。分光光度計としては、例えば、日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視近赤外分光光度計UH4150を用いることができる。透過率の測定は、積層体10の保護層2側の表面から入射光を入射させ、入射角度0°、積分球角度180°、及び偏光子角度45°の条件で行う。得られた測定結果に基づいて、430~460nmの波長域における平均透過率T1と、640~670nmの波長域における平均透過率T2とをそれぞれ算出することができる。
【0071】
[積層体の用途]
本実施形態の積層体10は、培養バッグの用途、特に、微細藻類などの微生物を培養するための培養バッグの用途に適している。ただし、本実施形態の積層体10は、培養バッグ以外の用途、例えば食品などの包装容器の用途にも利用されうる。
【0072】
<袋状体の実施形態>
図3に示すとおり、本実施形態の袋状体100は、上述の積層体10を備えている。積層体10は、袋状体100の内部と外部とを隔てる隔壁として機能する。袋状体100において、積層体10に含まれる保護層2は、例えば、延伸フィルム1よりも外側に位置する。保護層2は、袋状体100の外部に露出していてもよい。
【0073】
袋状体100は、典型的には、2つの積層体10A及び10Bを備えている。積層体10Aと積層体10Bは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。袋状体100では、2つの積層体10A及び10Bが互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように接合されている。これにより、袋状体100には、積層体10A及び10Bに囲まれた収容部50が形成されている。積層体10A及び10Bは、所望の内部容量の収容部50が形成されるように、撓んだ形状で互いに接合されていてもよい。一例として、袋状体100では、収容部50の周囲において、積層体10Aの延伸フィルム1と、積層体10Bの延伸フィルム1とが互いに接合されている。2つの積層体10A及び10Bは、ヒートシ
ールにより接合されていることが好ましい。ただし、2つの積層体10A及び10Bは、接着剤を介して接合されていてもよい。
【0074】
袋状体100は、収容部50に収容された内容物55をさらに備えていてもよい。内容物55は、袋状体100の用途によって適宜選択することができる。一例として、袋状体100が微細藻類を培養するための培養バッグである場合、内容物55は、例えば、微細藻類及び培養液を含んでいる。ただし、内容物55は、微細藻類以外の他の微生物や、各種の細胞を含んでいてもよい。内容物55は、食品などを含んでいてもよい。
【0075】
微細藻類としては、特に限定されず、例えば、緑色植物門、不等毛植物門などに属するものが挙げられる。緑色植物門に属する藻類としては、緑藻綱、トレボキシア藻綱、プラシノ藻綱、アオサ藻綱、車軸藻綱などに属する藻類が挙げられる。
【0076】
緑藻綱に属する藻類としては、ネオクロリス・オレオアバンダンス等のネオクロリス属藻類、ナノクロリス・エスピー等のナノクロリス属藻類、クラミドモナス・レインハルディ等のクラミドモナス属藻類、セネデスムス属藻類、デスモデスムス属藻類などが挙げられる。トレボキシア藻綱に属する藻類としては、例えば、クロレラ・ケッサレリ等のクロレラ属藻類などが挙げられる。
【0077】
不等毛植物門に属する藻類としては、黄金色藻綱、ディクチオカ藻綱、ペラゴ藻綱、ラフィド藻綱、珪藻綱、褐藻綱、黄緑藻綱、真正眼点藻綱などに属する藻類が挙げられる。珪藻綱に属する藻類としては、例えば、タラシオシラ・スードナナ等のタラシオシラ属藻類などが挙げられる。
【0078】
培養液としては、公知のものを利用することができる。培養液は、例えば、水とともに、炭素源、窒素源、リン源などの培地成分をさらに含む。
【0079】
袋状体100は、例えば、気体を内部に供給するための開口部(気体供給口)をさらに有する。開口部を通じて、培養に必要な気体を袋状体100の内部に送ることができる。培養に必要な気体は、典型的には二酸化炭素である。この気体は、酸素や窒素などをさらに含んでいてもよい。この気体は、空気であってもよい。
【0080】
袋状体100は、内容物55を内部に供給するための開口部(図示せず)をさらに有していてもよい。袋状体100では、気体を内部に供給するための開口部を通じて、内容物55が内部に送られてもよい。
【0081】
袋状体100の容積は、袋状体100の用途に応じて適宜選択できる。一例として、袋状体100が微細藻類を培養するための培養バッグである場合、袋状体100の容積は、0.000001~100m3であってもよく、1~100m3であってもよい。
【0082】
袋状体100は、典型的には、培養バッグである。言い換えると、培養バッグとしての袋状体100が上記の積層体10を備えている。培養バッグとしての袋状体100は、微細藻類などの微生物や、各種の細胞などを培養するために用いられ、特に、微細藻類を培養するために用いられることが好ましい。培養バッグとしての袋状体100には、微細藻類の培養を促進させるために、太陽光や、他の光源からの光が照射されてもよい。袋状体100は、その設置面積を抑制しつつ、微細藻類を効率的に培養するために、袋状体100の厚さ方向が水平方向と一致するように配置されてもよい。
【0083】
なお、袋状体100は、培養バッグ以外の用途、例えば食品などの包装容器の用途にも利用されうる。
【実施例0084】
以下に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
[積層体の作製]
まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む2軸延伸フィルム(東レ社製のリサイクルPETフィルム QZ55、厚さ50μm)を準備した。2軸延伸フィルムは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。次に、ポリエステルウレタン樹脂を含む塗布液(東洋紡社製のバイロンUR8300)を2軸延伸フィルムの上に塗布した。塗布液の塗布は、ワイヤーバーコート法により行った。得られた塗布膜について、オーブンを用いて130℃で1分加熱することによって保護層(厚さ5μm)を作製した。保護層の厚さは、ダイヤルゲージで測定した。以上の操作により、実施例1の積層体を得た。
【0086】
[試験1]
実施例1の積層体について、上述の試験1を行うことによって引裂強度を測定した。なお、3方袋を作製するためのヒートシールは、富士インパルス社製のインパルスシーラー
P-300-5を用いて、250℃、1.1秒の条件で行った。このとき、ヒートシールの冷却時間を2.2秒に設定し、シール幅を5mmに調整した。
【0087】
さらに、実施例1では、試験1を行うための3方袋を顕微鏡で観察した。結果を
図4Aに示す。
図4Aの画像は、積層体について、ヒートシールを行った部分10a、ヒートシールを行っていない部分10b、及び、部分10aと部分10bとの境界部分10cを示している。
図4Aからわかるとおり、境界部分10cにおいて、積層体の劣化は観察されなかった。
【0088】
[試験2]
実施例1の積層体の保護層について、上述の試験2を行うことによって、破断強度及び破断伸度を測定した。実施例1では、保護層の破断強度が40MPaであり、破断伸度が500%であり、その積が20000MPa・%であった。
【0089】
[平均透過率の測定]
実施例1の積層体について、上述した方法によって、430~460nmの波長域における平均透過率T1と、640~670nmの波長域における平均透過率T2を測定した。透過率の測定は、日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視近赤外分光光度計UH4150を利用した。
【0090】
(比較例1)
比較例1では、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む2軸延伸フィルム(東レ社製のリサイクルPETフィルム QZ55、厚さ50μm)を準備した。2軸延伸フィルムは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。
【0091】
[試験1]
準備した2軸延伸フィルムについて、実施例1と同じ方法によって試験1を行い、引裂強度を測定した。さらに、比較例1では、試験1を行うための3方袋を顕微鏡で観察した。結果を
図4Bに示す。
図4Bの画像は、2軸延伸フィルムについて、ヒートシールを行った部分201a、ヒートシールを行っていない部分201b、及び、部分201aと部分201bとの境界部分201cを示している。
図4Bからは、境界部分201cにおいて、2軸延伸フィルムが劣化していることがわかる。
【0092】
[平均透過率の測定]
準備した2軸延伸フィルムについて、実施例1と同じ方法によって、平均透過率T1及びT2を測定した。
【0093】
(比較例2)
比較例2では、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む未延伸フィルム(日生化学社製のヒートシーラブルリサイクルPETフィルム HSR-PET、厚さ40μm)を準備した。未延伸フィルムは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。
【0094】
[試験1]
準備した未延伸フィルムについて、上述の試験1を行うことによって引裂強度を測定した。なお、3方袋を作製するためのヒートシールは、富士インパルス社製のインパルスシーラー P-300-5を用いて、150℃、0.7秒の条件で行った。このとき、ヒートシールの冷却時間を1.4秒に設定し、シール幅を5mmに調整した。
【0095】
[平均透過率の測定]
準備した未延伸フィルムについて、実施例1と同じ方法によって、平均透過率T1及びT2を測定した。
【0096】
(比較例3)
低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を含む未延伸フィルム(TRUSCO社製のU-3040、厚さ150μm)を用いたことを除き、比較例2と同じ方法によって、試験1と、平均透過率T1及びT2の測定とを行った。
【0097】
(比較例4)
[積層体の作製]
まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む2軸延伸フィルム(東レ社製のリサイクルPETフィルム QZ55、厚さ50μm)を準備した。2軸延伸フィルムは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。次に、多官能アクリレート(大阪有機化学工業製、ビスコート#300)及び光重合開始剤を含む塗布液を2軸延伸フィルムの上に塗布した。塗布液の塗布は、ワイヤーバーコート法により行った。得られた塗布膜に紫外線を照射し、塗布膜を硬化させた。これにより、2軸延伸フィルムを被覆する被覆層(厚さ5μm)を作製した。被覆層の厚さは、ダイヤルゲージで測定した。以上の操作により、比較例4の積層体を得た。
【0098】
[試験1]
比較例4の積層体について、実施例1と同じ方法によって試験1を行い、引裂強度を測定した。
【0099】
[試験2]
比較例4の積層体の被覆層について、上述の試験2を行うことによって、破断強度及び破断伸度を測定した。比較例4では、被覆層の破断強度が40MPa程度以下であり、破断伸度が2%程度以下であり、破断強度と破断伸度との積が80MPa・%程度以下であった。
【0100】
[平均透過率の測定]
比較例4の積層体について、実施例1と同じ方法によって、平均透過率T1及びT2を測定した。
【0101】
【0102】
試験1の引裂強度が10.5N以上である実施例1の積層体では、比較例1及び4と比べて、ヒートシールを行ったときの引裂強度が改善されていることが推定される。さらに、延伸フィルムを備えた実施例1の積層体は、平均透過率T1及びT2がいずれも80%以上であり、比較例2及び3と比べて透光性に優れていた。これらの結果から、実施例1の積層体は、比較例と比べて、培養バッグ、特に微細藻類を培養するための培養バッグ、の基材に適していると言える。