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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043728
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】培養バッグ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240326BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240326BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 1/12 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
C12M1/00 D
B32B27/36
C12M1/00 E
C12M1/04
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148883
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503116693
【氏名又は名称】株式会社ちとせ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100214639
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】石塚 亮太
(72)【発明者】
【氏名】三輪 和哉
(72)【発明者】
【氏名】星野 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 裕之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 智大
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4F100
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB01
4B029DB19
4B029DG10
4B029GB09
4B065AA83X
4B065AC14
4B065BC05
4B065CA02
4B065CA41
4F100AK41C
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CB00C
4F100EH762
4F100EH76C
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JK03
4F100JL11C
4F100JN08
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】微細藻類を培養することに適した新たな培養バッグを提供する。
【解決手段】本発明の培養バッグ100は、基材10を備える。基材10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを含む延伸フィルムAを有する。基材10は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂Bを含む延伸フィルムBをさらに有する。延伸フィルムAの融点m1と、延伸フィルムBの融点m2との差は、例えば0.5℃以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を備え、
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを含む延伸フィルムAを有する、培養バッグ。
【請求項2】
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Bを含む延伸フィルムBをさらに有し、
前記延伸フィルムAの融点m1と、前記延伸フィルムBの融点m2との差が0.5℃以上である、請求項1に記載の培養バッグ。
【請求項3】
前記融点m1は150℃より大きい、請求項2に記載の培養バッグ。
【請求項4】
前記融点m2は150℃以下である、請求項2に記載の培養バッグ。
【請求項5】
前記基材は、前記延伸フィルムAと前記延伸フィルムBとの間に配置された接着層をさらに有する、請求項2に記載の培養バッグ。
【請求項6】
前記接着層は、ポリエステル系接着剤を含む、請求項5に記載の培養バッグ。
【請求項7】
前記基材において、前記延伸フィルムAは、前記延伸フィルムBよりも外側に位置する、請求項2に記載の培養バッグ。
【請求項8】
前記延伸フィルムAの厚さが25μm以上である、請求項1に記載の培養バッグ。
【請求項9】
前記基材の430~460nmの波長域における平均透過率が80%以上である、請求項1に記載の培養バッグ。
【請求項10】
前記基材の640~670nmの波長域における平均透過率が80%以上である、請求項1に記載の培養バッグ。
【請求項11】
2つの前記基材を備え、
2つの前記基材は、互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように接合されている、請求項1に記載の培養バッグ。
【請求項12】
気体を内部に供給するための開口部を有する、請求項1に記載の培養バッグ。
【請求項13】
微細藻類を培養するために用いられる、請求項1に記載の培養バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は、食料や燃料などに利用することができ、その利用価値が高い。微細藻類は、容易に培養できるだけでなく、その培養過程で二酸化炭素を大量に吸収できる利点もある。
【0003】
微細藻類の培養方法としては、屋外に開放された培養槽を利用する開放系での培養方式や、タンクなどの密閉容器を利用する閉鎖系での培養方式が挙げられる。開放系での培養方式は、コンタミネーションリスクが高いことや微細藻類のバイオマス生産性が限定的となるなどのデメリットがある。閉鎖系の培養方式は、外部からの物質混入や生物侵入で培養液が汚染されるコンタミネーションのリスクを低減できる利点がある。
【0004】
閉鎖系の培養方式では、密閉容器として、樹脂製のフィルムを含む培養バッグ、ガラス管やガラスプレートで構成された培養容器などが利用される。培養バッグとしては、例えば、2つの包装材(基材)が互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように接合された袋状体が用いられる。この袋状体では、通常、2つの包装材がヒートシールにより接合されている。
【0005】
上記の袋状体を用いた培養方式によれば、その厚さ方向が水平方向と一致するように袋状体を配置することによって、袋状体の設置面積を抑制しつつ、微細藻類を効率的に培養することができる。一例として、特許文献1は、梁などに吊るされた袋状体を備えた培養装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国実用新案第207483706号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微細藻類を培養することに適した新たな培養バッグが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
基材を備え、
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを含む延伸フィルムAを有する、培養バッグを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微細藻類を培養することに適した新たな培養バッグを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかる培養バッグを模式的に示す断面図である。
図2】培養バッグが備える基材を模式的に示す断面図である。
図3A】引裂強度の測定試験に用いられる3方袋を構成する試験片の平面図である。
図3B】引裂強度の測定試験に用いられる3方袋の斜視図である。
図3C】引裂強度の測定試験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1態様にかかる培養バッグは、
基材を備え、
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを含む延伸フィルムAを有する。
【0012】
本発明の第2態様において、例えば、第1態様にかかる培養バッグでは、前記基材は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Bを含む延伸フィルムBをさらに有し、前記延伸フィルムAの融点m1と、前記延伸フィルムBの融点m2との差が0.5℃以上である。
【0013】
本発明の第3態様において、例えば、第2態様にかかる培養バッグでは、前記融点m1は150℃より大きい。
【0014】
本発明の第4態様において、例えば、第2又は第3態様にかかる培養バッグでは、前記融点m2は150℃以下である。
【0015】
本発明の第5態様において、例えば、第2~第4態様のいずれか1つにかかる培養バッグでは、前記基材は、前記延伸フィルムAと前記延伸フィルムBとの間に配置された接着層をさらに有する。
【0016】
本発明の第6態様において、例えば、第5態様にかかる培養バッグでは、前記接着層は、ポリエステル系接着剤を含む。
【0017】
本発明の第7態様において、例えば、第2~第6態様のいずれか1つにかかる培養バッグでは、前記基材において、前記延伸フィルムAは、前記延伸フィルムBよりも外側に位置する。
【0018】
本発明の第8態様において、例えば、第1~第7態様のいずれか1つにかかる培養バッグでは、前記延伸フィルムAの厚さが25μm以上である。
【0019】
本発明の第9態様において、例えば、第1~第8態様のいずれか1つにかかる培養バッグでは、前記基材の430~460nmの波長域における平均透過率が80%以上である。
【0020】
本発明の第10態様において、例えば、第1~第9態様のいずれか1つにかかる培養バッグでは、前記基材の640~670nmの波長域における平均透過率が80%以上である。
【0021】
本発明の第11態様において、例えば、第1~第10態様のいずれか1つにかかる培養バッグは、2つの前記基材を備え、2つの前記基材は、互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように接合されている。
【0022】
本発明の第12態様において、例えば、第1~第11態様のいずれか1つにかかる培養バッグは、気体を内部に供給するための開口部を有する。
【0023】
本発明の第13態様において、例えば、第1~第12態様のいずれか1つにかかる培養バッグは、微細藻類を培養するために用いられる。
【0024】
以下、本発明の詳細を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
【0025】
<培養バッグの実施形態>
図1に示すとおり、本実施形態の培養バッグ100は、基材10を備えている。基材10は、培養バッグ100の内部と外部とを隔てる隔壁として機能する。基材10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを含む延伸フィルムAを有する。後述するとおり、基材10は、延伸フィルムAとともに、延伸フィルムB及び接着層5をさらに備えていてもよい。基材10において、延伸フィルムAは、例えば、延伸フィルムBよりも外側に位置する。延伸フィルムAは、培養バッグ100の外部に露出していてもよい。なお、基材10は、延伸フィルムAを単独で有していてもよい。
【0026】
培養バッグ100は、典型的には、2つの基材10A及び10Bを備えている。基材10Aと基材10Bは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。培養バッグ100において、2つの基材10A及び10Bが互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように接合されている。これにより、培養バッグ100には、基材10A及び10Bに囲まれた収容部50が形成されている。基材10A及び10Bは、所望の内部容量の収容部50が形成されるように、撓んだ形状で互いに接合されていてもよい。一例として、培養バッグ100では、収容部50の周囲において、基材10Aの延伸フィルムBと、基材10Bの延伸フィルムBとが互いに接合されている。2つの基材10A及び10Bは、ヒートシールにより接合されていることが好ましい。ただし、2つの基材10A及び10Bは、接着剤を介して接合されていてもよい。
【0027】
培養バッグ100は、収容部50に収容された内容物55をさらに備えていてもよい。内容物55は、培養バッグ100の用途によって適宜選択することができる。一例として、培養バッグ100が微細藻類を培養するために用いられる場合、内容物55は、例えば、微細藻類及び培養液を含んでいる。ただし、内容物55は、微細藻類以外の他の微生物や、各種の細胞を含んでいてもよい。
【0028】
微細藻類としては、特に限定されず、例えば、緑色植物門、不等毛植物門などに属するものが挙げられる。緑色植物門に属する藻類としては、緑藻綱、トレボキシア藻綱、プラシノ藻綱、アオサ藻綱、車軸藻綱などに属する藻類が挙げられる。
【0029】
緑藻綱に属する藻類としては、ネオクロリス・オレオアバンダンス等のネオクロリス属藻類、ナノクロリス・エスピー等のナノクロリス属藻類、クラミドモナス・レインハルディ等のクラミドモナス属藻類、セネデスムス属藻類、デスモデスムス属藻類などが挙げられる。トレボキシア藻綱に属する藻類としては、例えば、クロレラ・ケッサレリ等のクロレラ属藻類などが挙げられる。
【0030】
不等毛植物門に属する藻類としては、黄金色藻綱、ディクチオカ藻綱、ペラゴ藻綱、ラフィド藻綱、珪藻綱、褐藻綱、黄緑藻綱、真正眼点藻綱などに属する藻類が挙げられる。珪藻綱に属する藻類としては、例えば、タラシオシラ・スードナナ等のタラシオシラ属藻類などが挙げられる。
【0031】
培養液としては、公知のものを利用することができる。培養液は、例えば、水とともに、炭素源、窒素源、リン源などの培地成分をさらに含む。
【0032】
培養バッグ100は、例えば、気体を内部に供給するための開口部(気体供給口)をさらに有する。開口部を通じて、培養に必要な気体を培養バッグ100の内部に送ることができる。培養に必要な気体は、典型的には二酸化炭素である。この気体は、酸素や窒素な
どをさらに含んでいてもよい。この気体は、空気であってもよい。
【0033】
培養バッグ100は、内容物55を内部に供給するための開口部(図示せず)をさらに有していてもよい。培養バッグ100では、気体を内部に供給するための開口部を通じて、内容物55が内部に送られてもよい。
【0034】
培養バッグ100の容積は、培養バッグ100の用途に応じて適宜選択できる。一例として、培養バッグ100が微細藻類を培養するために用いられる場合、培養バッグ100の容積は、0.000001~100m3であってもよく、1~100m3であってもよい。
【0035】
培養バッグ100は、微細藻類などの微生物や、各種の細胞などを培養するために用いられ、特に、微細藻類を培養するために用いられることが好ましい。培養バッグ100には、微細藻類の培養を促進させるために、太陽光や、他の光源からの光が照射されてもよい。培養バッグ100は、その設置面積を抑制しつつ、微細藻類を効率的に培養するために、培養バッグ100の厚さ方向が水平方向と一致するように配置されてもよい。
【0036】
[基材]
図2に示すように、基材10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを含む延伸フィルムAを備えている。基材10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Bを含む延伸フィルムBと、接着層5とをさらに備えていてもよい。延伸フィルムBは、ヒートシールにより他の部材と接合することができる表面(ヒートシール面)b1と、表面b1に対向する表面b2とを有する。表面b1は、基材10の外部に露出している。表面b1及びb2は、延伸フィルムBの主面(最も大きい面積を有する面)である。接着層5は、延伸フィルムA及び延伸フィルムBの間に配置され、延伸フィルムA及び延伸フィルムBのそれぞれと直接接している。
【0037】
[延伸フィルムA]
延伸フィルムAは、樹脂組成物を溶融成形することにより得られた原フィルムについて、延伸を行うことによって作製されたフィルムであり、1軸延伸フィルムであってもよく、2軸延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムAは、光の透過性が優れる観点から、2軸延伸フィルムであることが好ましい。延伸には、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法などの公知の延伸法を利用することができる。延伸方向は、典型的には、原フィルムのMD方向(溶融成形方向)及び/又はTD方向(原フィルムの面内における溶融成形方向に垂直な方向)である。2軸延伸においては、逐次2軸延伸であってもよく、同時2軸延伸であってもよい。
【0038】
延伸フィルムAの延伸倍率は、特に限定されず、延伸方向(MD方向及び/又はTD方向)について、例えば1.1倍以上であり、好ましくは2.0倍以上であり、5.0倍以上であってもよい。
【0039】
上述のとおり、延伸フィルムAは、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを含む。ポリエチレンテレフタレート樹脂Aに含まれるポリマーP1は、典型的には、エチレングリコールに由来する構成単位U1と、テレフタル酸に由来する構成単位U2とを有する。ポリマーP1において、構成単位U1の含有率と構成単位U2の含有率との合計値は、例えば50モル%以上であり、70モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、さらには99モル%以上であってもよい。ポリマーP1は、実質的に構成単位U1及びU2のみから構成されていてもよい。ただし、ポリマーP1は、構成単位U1及びU2以外の他の構成単位を含んでいてもよい。
【0040】
延伸フィルムAは、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを主成分として含む。「主成分」とは、延伸フィルムAに重量比で最も多く含まれた成分を意味する。延伸フィルムAは、実質的にポリエチレンテレフタレート樹脂Aのみから構成されていてもよい。ただし、延伸フィルムAは、ポリエチレンテレフタレート樹脂A以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などが挙げられる。
【0041】
延伸フィルムAの厚さは、強度の観点から、例えば1μm以上であり、10μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、さらには40μm以上であってもよい。延伸フィルムAの厚さは、透光性の観点から、例えば1000μm以下であり、500μm以下、300μm以下、さらには100μm以下であってもよい。
【0042】
延伸フィルムAの融点m1は、例えば、150℃より大きく、180℃以上であってもよく、200℃以上であってもよく、220℃以上であってもよい。延伸フィルムAの融点m1の上限値は、特に限定されず、例えば300℃である。本明細書において、フィルムの融点は、次の方法によって測定することができる。まず、フィルムの一部を切り出し、試験片とする。試験片について、示差走査熱量測定(DSC)を行う。DSCでは、一定の昇温速度、例えば10℃/分、で試験片を昇温する。結晶融解に基づく吸熱ピークのピーク温度を測定し、フィルムの融点として特定する。
【0043】
延伸フィルムAの屈折率は、特に限定されず、例えば1.4~3.0である。延伸フィルムAの屈折率は、典型的には1.6程度である。本明細書において、「屈折率」は、温度25℃で波長550nmの光を用いて、JIS K0062:1992の規定に準拠して測定された値を意味する。
【0044】
なお、延伸フィルムAの組成や物性は、上述したものに限定されない。一例として、基材10が延伸フィルムAを単独で有する場合、延伸フィルムAの組成や物性は、延伸フィルムBについて後述するものと同じであってもよい。
【0045】
[延伸フィルムB]
延伸フィルムBは、延伸フィルムAと同様に、樹脂組成物を溶融成形することにより得られた原フィルムについて、延伸を行うことによって作製されたフィルムである。延伸フィルムBについて、延伸の方法、延伸方向及び延伸倍率としては、延伸フィルムAについて上述したものが挙げられる。
【0046】
上述のとおり、延伸フィルムBは、ポリエチレンテレフタレート樹脂Bを含む。ポリエチレンテレフタレート樹脂Bは、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aとは異なることが好ましい。詳細には、ポリエチレンテレフタレート樹脂Bに含まれるポリマーP2の組成が、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aに含まれるポリマーP1の組成と異なることが好ましい。
【0047】
ポリエチレンテレフタレート樹脂Bに含まれるポリマーP2は、典型的には、エチレングリコールに由来する構成単位U1と、テレフタル酸に由来する構成単位U2とを有する。ポリマーP2において、構成単位U1の含有率と構成単位U2の含有率との合計値は、例えば50モル%~85モル%である。ポリマーP2は、構成単位U1及びU2以外の他の構成単位をさらに含んでいてもよい。他の構成単位としては、例えば、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1つに由来する構成単位U3が挙げられる。ポリマーP2における構成単位U3の含有率は、例えば12モル%~30モル%である。
【0048】
延伸フィルムBは、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂Bを主成分として含み、実質的にポリエチレンテレフタレート樹脂Bのみから構成されていてもよい。ただし、延伸フィルムBは、ポリエチレンテレフタレート樹脂B以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、延伸フィルムAについて上述したものが挙げられる。
【0049】
延伸フィルムBの厚さは、強度の観点から、例えば1μm以上であり、5μm以上、10μm以上、15μm以上、さらには20μm以上であってもよい。延伸フィルムBの厚さは、透光性の観点から、例えば1000μm以下であり、500μm以下、300μm以下、100μm以下、さらには50μm以下であってもよい。
【0050】
延伸フィルムBの融点m2は、典型的には、延伸フィルムAの融点m1より小さい。融点m2が融点m1より小さいことによって、延伸フィルムBは、延伸フィルムAと比べて、良好なヒートシール性を有する傾向がある。融点m1と融点m2との差は、例えば0.5℃以上であり、5℃以上、10℃以上、30℃以上、50℃以上、80℃以上、100℃以上、さらには110℃以上であってもよい。融点m1と融点m2との差の上限値は、特に限定されず、例えば150℃である。融点m2は、例えば、150℃以下であり、130℃以下であってもよい。延伸フィルムBの融点m2の下限値は、特に限定されず、例えば60℃である。
【0051】
延伸フィルムBの屈折率は、特に限定されず、例えば1.4~3.0である。延伸フィルムBの屈折率は、典型的には1.6程度である。
【0052】
なお、延伸フィルムBの組成や物性は、上述したものに限定されない。一例として、延伸フィルムBの組成や物性は、延伸フィルムAについて上述したものと同じであってもよい。
【0053】
[接着層]
接着層5は、例えば、接着剤を含む層であり、接着層5を介して、延伸フィルムA及びBを接合することができる。接着層5に含まれる接着剤としては、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、イソシアネート系接着剤などが挙げられる。延伸フィルムA及びBとの接着性の観点から、接着層5は、ポリエステル系接着剤を含むことが好ましい。
【0054】
接着層5に含まれる接着剤は、ドライラミネート用接着剤であることが好ましい。ドライラミネート用接着剤としては、二液硬化型接着剤、二液溶剤型接着剤、一液無溶剤型接着剤などが挙げられる。
【0055】
接着層5は、例えば、接着剤を主成分として含み、実質的に接着剤のみから構成されていてもよい。ただし、接着層5は、接着剤以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、延伸フィルムAについて上述したものが挙げられる。
【0056】
接着層5の厚さは、特に限定されず、例えば0.1μm以上であり、0.5μm以上、さらには1μm以上であってもよい。接着層5の厚さは、例えば100μm以下であり、50μm以下、20μm以下、10μm以下、さらには5μm以下であってもよい。
【0057】
[基材の製造方法]
延伸フィルムA及びBを備える基材10は、例えば、次の方法によって作製することができる。まず、接着層5の材料(接着剤)を含む塗布液を延伸フィルムAの上に塗布し、塗布膜を作製する。塗布液の塗布方法は、特に限定されず、ワイヤーバーコート法、スピ
ンコート法などを利用できる。次に、塗布膜を乾燥させ、接着層5を形成する。接着層5を介して、延伸フィルムAと延伸フィルムBとを貼り合わせることによって、基材10を作製することができる。基材10の作製は、例えば、市販のドライラミネーション機を利用することができる。
【0058】
[基材の特性]
本実施形態の基材10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを含む延伸フィルムAを備えることによって、透光性及び耐久性に優れている傾向がある。特に、透光性が優れる基材10を備えた培養バッグ100は、微細藻類を培養することに適している。
【0059】
基材10について、430~460nmの波長域における平均透過率T1は、例えば75%以上であり、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、さらには82%以上であってもよい。平均透過率T1が高ければ高いほど、基材10を備えた培養バッグ100は、微細藻類の光合成を促進できる傾向がある。平均透過率T1の上限値は、特に限定されず、例えば99%である。
【0060】
さらに、基材10について、640~670nmの波長域における平均透過率T2は、例えば75%以上であり、78%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、さらには85%以上であってもよい。平均透過率T2が高ければ高いほど、基材10を備えた培養バッグ100は、微細藻類の光合成を促進できる傾向がある。平均透過率T2の上限値は、特に限定されず、例えば99%である。
【0061】
平均透過率T1及びT2は、次の方法によって特定することができる。まず、基材10から、縦5cm×横5cmのサイズを有する試験片を切り出す。この試験片を市販の分光光度計にセットし、測定波長250nm~1000nmにて透過率を測定する。分光光度計としては、例えば、日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視近赤外分光光度計UH4150を用いることができる。透過率の測定は、基材10の延伸フィルムA側の表面から入射光を入射させ、入射角度0°、積分球角度180°、及び偏光子角度45°の条件で行う。得られた測定結果に基づいて、430~460nmの波長域における平均透過率T1と、640~670nmの波長域における平均透過率T2とをそれぞれ算出することができる。
【0062】
基材10は、ヒートシールを行ったときの引裂強度が高いことが好ましい。基材10について、ヒートシールを行ったときの引裂強度は、下記試験1により測定される引裂強度によって評価することができる。
試験1:基材10から、長辺150mm×短辺100mmの矩形の試験片を2つ切り出す。2つの試験片を互いに重ね合わせ、2つの試験片のそれぞれの短辺部に囲まれた開口部が形成されるように3方をヒートシールし、3方袋を作製する。開口部を囲んでいる短辺部を引張試験機にセットする。荷重速度(荷重の増加速度)5N/minの条件で、2つの試験片を互いに引き離す方向に引張試験を行い、3方袋が裂けたときの荷重を引裂強度として特定する。
【0063】
以下では、試験1の詳細について説明する。試験1では、まず、基材10から、図3Aに示す試験片25及び26を切り出す。各試験片は、長辺150mm×短辺100mmの矩形である。試験片25が短辺部25aを有し、試験片26が短辺部26aを有する。一例として、試験片25及び26のそれぞれについて、短辺方向が延伸フィルムAのMD方向(原フィルムの溶融成形方向)と一致し、長辺方向が延伸フィルムAのTD方向(原フィルムの面内における溶融成形方向に垂直な方向)と一致している。
【0064】
次に、延伸フィルムB同士が接触するように2つの試験片25及び26を互いに重ね合
わせ、3方をヒートシールし、図3Bに示す3方袋20を作製する。なお、基材10が延伸フィルムBを有さない場合は、延伸フィルムA同士が接触するように2つの試験片25及び26を互いに重ね合わせてヒートシールを行ってもよい。3方袋20は、2つの試験片25及び26のそれぞれの短辺部25a及び26aに囲まれた開口部21が形成されるように作製する。ヒートシールの条件は、後述する引張試験において、ヒートシールを行った部分での剥がれが生じず、さらに、発泡や焦げが生じない限り特に限定されない。一例として、ヒートシールは、延伸フィルムBの融点以上の温度で0.7秒以上行うことが好ましい。ヒートシールの冷却時間は、例えば、1.4秒以上である。シール幅は、例えば5mmである。ヒートシールは、市販のヒートシーラー(例えば、富士インパルス社製のインパルスシーラー P-300-5)を用いて行うことができる。
【0065】
次に、図3Cに示す引張試験機30に3方袋20をセットする。引張試験機30としては、例えば、島津製作所製の引張圧縮試験機AGS-50NXを用いることができる。例えば、引張試験機30の下部チャック31に、試験片26の短辺部26aの中央部分を固定する。上部チャック32に、試験片25の短辺部25aの中央部分を固定する。これにより、3方袋20について、開口部21を囲んでいる短辺部25a及び26aを引張試験機30にセットすることができる。
【0066】
次に、上部チャック32を上方に移動させることによって、3方袋20に対して、2つの試験片25及び26を互いに引き離す方向に引張試験を行う。引張試験を行うと、通常、ヒートシールを行った部分の近傍で3方袋20が裂ける。3方袋20が裂けたときの荷重(引張荷重)を引裂強度として特定することができる。引張試験の測定条件の詳細は、以下のとおりである。
・測定条件
試験モード:シングル
試験種類:引張
荷重速度:5N/min
【0067】
一例として、基材10は、上記の試験1により測定される引裂強度が10N以上であり、12N以上、14N以上、15N以上、17N以上、19N以上、20N以上、30N以上、さらには40N以上であってもよい。試験1の引裂強度が大きければ大きいほど、基材10について、ヒートシールを行ったときの引裂強度が改善されていると言える。例えば、基材10を備えた培養バッグ100に培地を入れるために開口する際などに、ヒートシール部近傍の未ヒートシール部が裂けることを抑制できる。なお、延伸フィルムAよりも融点が低い延伸フィルムBを備える基材10は、延伸フィルムAのみを備える基材に比べて、ヒートシールを行ったときの引裂強度が改善される傾向がある。引裂強度の上限値は、特に限定されず、例えば50Nである。
【実施例0068】
以下に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
[基材の作製]
まず、延伸フィルムAとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む2軸延伸フィルム(東レ社製のリサイクルPETフィルム QZ55、厚さ50μm)を準備した。延伸フィルムAは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。次に、ポリエステル系ドライラミネート用接着剤(DICグラフィックス社製のディックドライLX500)を延伸フィルムAの上に塗布し、塗布膜を作製した。次に、塗布膜を乾燥させ、厚さ2~3μmの接着層を形成した。接着層の厚さは、ダイヤルゲージで測定した。
【0070】
次に、延伸フィルムBとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む2軸延伸フィルム(東洋紡社製のオリエステルDE046、厚さ20μm)を準備した。延伸フィルムBは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。接着層を介して、延伸フィルムAと延伸フィルムBとを貼り合わせることによって、実施例1の基材を作製した。実施例1において、基材の作製は、市販のドライラミネーション機を利用して行った。
【0071】
[融点の測定]
延伸フィルムA及びBのそれぞれについて、次の方法によって融点を測定した。まず、フィルムの一部を切り出し、試験片とした。TAインスツルメント社製SDT650を用いて、試験片について、示差走査熱量測定(DSC)を行った。DSCでは、10℃/分の昇温速度で試験片を昇温した。結晶融解に基づく吸熱ピークのピーク温度を測定し、フィルムの融点として特定した。
【0072】
[試験1]
実施例1の基材について、上述の試験1を行うことによって引裂強度を測定した。なお、3方袋を作製するためのヒートシールは、富士インパルス社製のインパルスシーラー P-300-5を用いて、150℃、0.7秒の条件で行った。このとき、ヒートシールの冷却時間を1.4秒に設定し、シール幅を5mmに調整した。
【0073】
[平均透過率の測定]
実施例1の基材について、上述した方法によって、430~460nmの波長域における平均透過率T1と、640~670nmの波長域における平均透過率T2を測定した。透過率の測定は、日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視近赤外分光光度計UH4150を利用した。
【0074】
(実施例2)
[基材の作製]
まず、延伸フィルムAとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む2軸延伸フィルム(東レ社製のリサイクルPETフィルム QZ55、厚さ50μm)を準備した。延伸フィルムAは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。次に、ポリエステル系ドライラミネート用接着剤(DICグラフィックス社製のディックドライLX500)を延伸フィルムAの上に塗布し、塗布膜を作製した。次に、塗布膜を乾燥させ、厚さ2~3μmの接着層を形成した。接着層の厚さは、ダイヤルゲージで測定した。
【0075】
次に、延伸フィルムBとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む2軸延伸フィルム(東レ社製のルミラーS10#25、厚さ25μm)を準備した。延伸フィルムBは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。接着層を介して、延伸フィルムAと延伸フィルムBとを貼り合わせることによって、実施例2の基材を作製した。実施例2において、基材の作製は、市販のドライラミネーション機を利用して行った。
【0076】
[融点の測定]
延伸フィルムA及びBのそれぞれについて、実施例1と同じ方法によって融点を測定した。
【0077】
[試験1]
実施例2の基材について、上述の試験1を行うことによって引裂強度を測定した。なお、3方袋を作製するためのヒートシールは、富士インパルス社製のインパルスシーラー P-300-5を用いて、250℃、1.1秒の条件で行った。このとき、ヒートシールの冷却時間を2.2秒に設定し、シール幅を5mmに調整した。
【0078】
[平均透過率の測定]
実施例2の基材について、実施例1と同じ方法によって、平均透過率T1及びT2を測定した。
【0079】
(実施例3)
延伸フィルムAとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む延伸フィルム(東レ社製のリサイクルPETフィルム QZ55、厚さ50μm)のみを有する実施例3の基材を準備した。延伸フィルムAは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。
【0080】
[融点の測定]
延伸フィルムAについて、実施例1と同じ方法によって融点を測定した。
【0081】
[試験1]
実施例3の基材について、実施例2と同じ方法によって試験1を行い、引裂強度を測定した。
【0082】
[平均透過率の測定]
実施例3の基材について、実施例1と同じ方法によって、平均透過率T1及びT2を測定した。
【0083】
(実施例4)
延伸フィルムAとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む2軸延伸フィルム(東洋紡社製のオリエステルDE046、厚さ20μm)のみを有する実施例4の基材を準備した。延伸フィルムAは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。
【0084】
[融点の測定]
延伸フィルムAについて、実施例1と同じ方法によって融点を測定した。
【0085】
[試験1]
実施例4の基材について、実施例1と同じ方法によって試験1を行い、引裂強度を測定した。
【0086】
[平均透過率の測定]
実施例4の基材について、実施例1と同じ方法によって、平均透過率T1及びT2を測定した。
【0087】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む未延伸フィルム(日生化学社製のヒートシーラブルリサイクルPETフィルム HSR-PET、厚さ40μm)のみを有する比較例1の基材を準備した。未延伸フィルムは、A4サイズ(縦297mm×横210mm)であった。
【0088】
[融点の測定]
比較例1の未延伸フィルムについて、実施例1と同じ方法によって融点を測定した。
【0089】
[試験1]
比較例1の基材について、実施例1と同じ方法によって試験1を行い、引裂強度を測定した。
【0090】
[平均透過率の測定]
比較例1の基材について、実施例1と同じ方法によって、平均透過率T1及びT2を測定した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1からわかるとおり、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む延伸フィルムを有する実施例1~4の基材は、平均透過率T1及びT2がいずれも80%以上であり、比較例1と比べて透光性に優れていた。そのため、実施例の基材を備えた培養バッグは、微細藻類を培養することに適していると言える。
【0093】
特に、延伸フィルムA及びBを備え、かつこれらの融点の差が100℃以上である実施例1の基材は、他の実施例2~4と比べて、試験1の引裂強度が大きかった。このことから、実施例1の基材では、ヒートシールを行ったときの引裂強度が改善されていることが推定される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本実施形態の培養バッグは、微細藻類を培養することに適している。
【符号の説明】
【0095】
5 接着層
10 基材
100 培養バッグ
A 延伸フィルムA
B 延伸フィルムB
図1
図2
図3A
図3B
図3C