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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043732
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/10 20060101AFI20240326BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65D35/10 A ZAB
B65D65/40 D
B32B27/00 H
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148887
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名取 智基
【テーマコード(参考)】
3E065
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA16
3E065BA18
3E065BA26
3E065BA35
3E065BB03
3E065CA02
3E065EA04
3E065FA02
3E065HA01
3E065HA06
3E086AA22
3E086AB03
3E086AD03
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA33
3E086BB15
3E086BB21
3E086BB51
3E086BB58
3E086BB62
3E086BB67
3E086BB71
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA40
3E086DA08
4F100AH02B
4F100AH03B
4F100AK03E
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41D
4F100AK51B
4F100AK53B
4F100AL05A
4F100AT00E
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100CA02B
4F100DA02
4F100DA11
4F100EJ37A
4F100EJ37D
4F100EJ38D
4F100EJ91E
4F100GB16
4F100HB31C
4F100JA03E
4F100JB01
4F100JB07
4F100JK06
4F100JL11
4F100JL11B
(57)【要約】
【課題】リサイクル性の優れたチューブ容器を提供する。
【解決手段】本開示に基づくチューブ容器1において、筒状体10は、一枚のシートSを湾曲または屈曲させて、シートSの面方向DPにおける第1の側端部SE1と、該第1の側端部SE1の反対に位置するシートSの第2の側端部SE2とを、シートSの厚さ方向に互いに重ね合わせて溶着させることで形成された帯状の溶着部12を有している。注出部20は、ポリエステル系樹脂を主成分として含む樹脂組成物からなる。上記シートSは、第1基材層SL1と、印刷層PLと、接合層ACとを含んでいる。第1基材層SL1は、ポリエステル系樹脂を主成分として含む。上記シートSは、アルカリ性溶液および温水の少なくとも一方の液体に浸漬されることで、印刷層PLが第1基材層SL1から分離するように、接合層ACが液体に溶解可能に構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のシートを湾曲または屈曲させて、前記シートの面方向における第1の側端部と、該第1の側端部の反対に位置する前記シートの第2の側端部とを、前記シートの厚さ方向に互いに重ね合わせて溶着させることで形成された帯状の溶着部を有する、筒状体と、
前記筒状体の軸方向における一方端部に接合され、ポリエステル系樹脂を主成分として含む樹脂組成物からなる注出部とを備え、
前記シートは、
前記筒状体の径方向において最も中心側に位置し、ポリエステル系樹脂を主成分として含む第1基材層と、
前記第1基材層から見て前記径方向の外側に配置された印刷層と、
前記印刷層の前記中心側の面上に設けられた接合層とを含み、
前記シートは、アルカリ性溶液および温水の少なくとも一方の液体に浸漬されることで、前記印刷層が前記第1基材層から分離するように、前記接合層が前記液体に溶解可能に構成されている、チューブ容器。
【請求項2】
前記第1基材層は、無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにより構成されている、請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記筒状体は、前記シートの前記面方向において前記第1の側端部と前記第2の側端部との間に位置するシート基部をさらに有し、
前記シート基部は、前記シートにおいて前記第2の側端部と連続している部分である、第1基端部を有し、
前記溶着部は、前記筒状体の周方向における前記第1の側端部の先端縁であって、前記第1基端部と接合している、第1先端縁を有し、
前記第1先端縁は、前記周方向に沿う方向から見て、前記第1基端部の厚み内に位置している、請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記接合層は、バインダー樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物からなり、
前記バインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂であり、
前記硬化剤は、カルボジイミド系硬化剤、アジリジン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、およびエポキシ系硬化剤からなる群より選択された少なくとも1つを含む、請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記シートは、前記第1基材層の前記径方向外側、かつ、前記印刷層より前記中心側に位置する、第2基材層をさらに含み、
前記第2基材層は、ポリエステル系樹脂を主成分として含み、
前記第2基材層は、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、または、二軸延伸フィルムにより構成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチューブ容器。
【請求項6】
前記第2基材層は、二軸延伸フィルムにより構成されている、請求項5に記載のチューブ容器。
【請求項7】
前記第1基材層は、無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにより構成され、
前記第2基材層は、二軸延伸フィルムにより構成されている、請求項5に記載のチューブ容器。
【請求項8】
前記シートは、前記径方向の最も外側に位置する透明保護層をさらに含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチューブ容器。
【請求項9】
前記透明保護層は、熱収縮性樹脂フィルムからなる、請求項8に記載のチューブ容器。
【請求項10】
前記熱収縮性樹脂フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む、請求項9に記載のチューブ容器。
【請求項11】
前記透明保護層は、ワニスからなる、請求項8に記載のチューブ容器。
【請求項12】
前記シートは、前記筒状体の前記溶着部において互いに重なり合う複数の前記シートのうち前記中心側に位置する部分において、前記印刷層を含んでいない、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチューブ容器が、特許第6976032号公報(特許文献1)、特開2021-138458号公報(特許文献2)および特開2020-117232号公報(特許文献3)に開示されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示されたチューブ容器は、内容物を注出する注出ユニットと、注出ユニットに溶着され、内容物を収容するための胴部とから構成されている。胴部は、多層構造のフィルムによって形成された筒体によって形成されている。フィルムは、内層、中間層及び外層からなる3層構造となっている。内層及び外層を構成する非吸着性樹脂としては、ポリエステル系樹脂や環状ポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。胴部は、背面シール部を備えている。背面シール部は、矩形状のフィルムの両側の側縁が重ね合わされ、重ね合わされた側縁が溶着された部位である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6976032号公報
【特許文献2】特開2021-138458号公報
【特許文献3】特開2020-117232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、プラスチック容器の再利用が強く求められている。チューブ容器についても、リサイクル性をより向上させることが検討されており、具体的には、基材層をポリエステル系樹脂から構成することが検討されている。
【0006】
ここで、内容物入りチューブ容器が製品として流通する際には、チューブ容器の胴部(筒状体)を構成するシートが、印刷層を含んでいる。ポリエステル系樹脂から構成された基材層がリサイクル工程に供されるためには、印刷層を基材層から分離する必要がある。
【0007】
しかしながら、チューブ容器は、ユーザによって胴部(筒状体)が押しつぶされることによって、チューブ容器に収容された内容物が注出されるように構成される。このため、チューブ容器において、印刷層は、上記シート中に強固に固定されている。このようなシート中から印刷層を分離することは困難であった。
【0008】
本開示は上記の課題に鑑みてなされたものであり、印刷層と、ポリエステル系樹脂を主成分として含む樹脂組成物からなる基材層との分離を容易に行うことができる、リサイクル性の優れたチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に基づくチューブ容器は、筒状体と、注出部とを備えている。筒状体は、一枚のシートを湾曲または屈曲させて、シートの面方向における第1の側端部と、該第1の側端部の反対に位置するシートの第2の側端部とを、シートの厚さ方向に互いに重ね合わせて溶着させることで形成された帯状の溶着部を有している。注出部は、筒状体の軸方向における一方端部に接合され、ポリエステル系樹脂を主成分として含む樹脂組成物からなる。上記シートは、第1基材層と、印刷層と、接合層とを含んでいる。第1基材層は、筒状体の径方向において最も中心側に位置し、ポリエステル系樹脂を主成分として含む。印刷層は、第1基材層から見て径方向の外側に配置されている。接合層は、印刷層の、上記径方向における中心側の面上に設けられている。上記シートは、アルカリ性溶液および温水の少なくとも一方の液体に浸漬されることで、印刷層が第1基材層から分離するように、接合層が液体に溶解可能に構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、印刷層と、ポリエステル系樹脂を主成分として含む樹脂組成物からなる第1基材層との分離を容易に行うことができる。このため、本開示に基づくチューブ容器はリサイクル性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係るチューブ容器を示す正面図である。
図2】本開示の一実施形態に係るチューブ容器を示す側面図である。
図3図1の筒状体をIII-III線矢印方向から見た断面図である。
図4】本開示の一実施形態に係るチューブ容器の分解斜視図である。
図5】本開示の一実施形態に係る筒状体を構成するシートの部分断面図である。
図6】本開示の一実施形態に係る筒状体を構成するシートにおいて、透明保護層が樹脂フィルムである場合のシートの構成を示す部分断面図である。
図7】本開示の一実施形態に係る筒状体を構成するシートが、第3基材層をさらに含む場合のシートの構成を示す部分断面図である。
図8図1の筒状体をVIII-VIII線矢印方向から見た部分断面図である。
図9図8の領域IXを拡大して示す部分断面図である。
図10図8の領域Xを拡大して示す部分断面図である。
図11】本開示の一実施形態の第1変形例に係る筒状体の部分断面図である。
図12図1のチューブ容器をXII-XII線矢印方向から見たときの、部分断面図である。
図13】本開示の一実施形態に係るチューブ容器の製造方法を示すフロー図である。
図14】重ね合わせ工程および超音波溶着工程におけるシートを示す模式的な図である。
図15】本開示の一実施形態に係るチューブ容器の製造方法に使用される超音波ホーンを、アンビルとの対向方向から見た平面図である。
図16図15の超音波ホーンをXVI-XVI線矢印方向から見た断面図である。
図17】注出部接合工程において、インサート成形により注出部を筒状体に接合するときの金型および筒状体を示す模式的な断面図である。
図18】圧縮成形による注出部接合工程を示すフロー図である。
図19】圧縮成形により注出部を筒状体に接合するときの金型、成型材料および筒状体を示す模式的な断面図である。
図20】超音波溶着による注出部接合工程を示すフロー図である。
図21】超音波溶着により注出部を筒状体に接合するときに用いる装置を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態に係るチューブ容器について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
[チューブ容器]
図1は、本開示の一実施形態に係るチューブ容器を示す正面図である。図2は、本開示の一実施形態に係るチューブ容器を示す側面図である。図1および図2に示すように、チューブ容器1は、筒状体10と、注出部20とを備えている。
【0014】
[筒状体]
図3は、図1の筒状体をIII-III線矢印方向から見た断面図である。図1から図3に示すように、筒状体10は、シート基部11と、溶着部12と、一方端部13と、他方端部14と、を備えている。
【0015】
図4は、本開示の一実施形態に係るチューブ容器の分解斜視図である。図3および図4に示すように、シート基部11は、一枚のシートSの面方向DPにおける第1の側端部SE1と、該第1の側端部SE1の反対に位置する上記シートSの第2の側端部SE2との間に位置している。溶着部12は、上記シートSを湾曲または屈曲させて、第1の側端部SE1と第2の側端部SE2とを上記シートSの厚さ方向に互いに重ね合わせて溶着させることで形成されている。上記厚さ方向とは、シートSの面方向DPに直交する方向である。
【0016】
このように、本実施形態において、筒状体10は一枚のシートSからなる。まず、シートSの詳細について説明する。
【0017】
第1の側端部SE1と第2の側端部SE2とを互いに溶着させる前の状態のシートSは、シートSの厚さ方向から見て、矩形状の外形を有している。ただし、シートSは、湾曲または屈曲させることで筒状体10を形成できるものであれば、厚さ方向から見たときの形状は限定されない。
【0018】
図5は、本開示の一実施形態に係る筒状体を構成するシートの部分断面図である。図5に示すように、シートSは、第1基材層SL1と、印刷層PLと、接合層ACとを少なくとも含んでいる。
【0019】
第1基材層SL1は、筒状体10の径方向において、筒状体10の中心側に位置している。すなわち、第1基材層SL1は、筒状体10の最内層である。印刷層PLは、第1基材層SL1から見て筒状体10の径方向の外側に配置されている。接合層ACは、印刷層PLの、筒状体10における中心側(すなわち第1基材層側)の面上に設けられている。すなわち、接合層ACは印刷層PLと隣接している。
【0020】
第1基材層SL1は、ポリエステル系樹脂を主成分として含んでいる。ポリエステル系樹脂としては、チューブ容器1の筒状体10として使用できるものであれば、特に限定されない。ポリエステル系樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG、グリコール成分の一部がシクロヘキサンジメタノール(CHDM)またはネオペンチルグリコール等で変性されたポリエチレンテレフタレート)、ポリ乳酸等が挙げられる。第1基材層SL1は、樹脂成分としてポリエステル系樹脂のみを含んでいることが好ましい。
【0021】
筒状体10のリサイクル性の観点からは、第1基材層SL1におけるポリエステル系樹脂は、ホモポリエチレンテレフタレート、もしくは、エチレングリコールとテレフタル酸と第3成分とを共重合させてなる共重合ポリエチレンテレフタレートなどのポリエチレンテレフタレート、または、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートが好ましく、ホモポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。また、第1基材層SL1におけるポリエステル系樹脂は、溶着部12におけるシートS同士を比較的低いエネルギーで互いに溶着させる観点、および、超音波振動を効率良く伝達させる観点から、非晶性のポリエステル系樹脂(非晶性のポリエチレンテレフタレート、および、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートなど)であることが好ましい。よって、第1基材層SL1は、筒状体10のリサイクル性および溶着部12におけるシートSの接着性の両観点から、非晶性のホモポリエチレンテレフタレートであることが最も好ましい。環境負荷低減の観点からは、第1基材層SL1におけるポリエステル系樹脂が、リサイクル原料またはバイオマス原料からなることが好ましいが、筒状体10の内側に内容物を収容させる場合には、第1基材層SL1におけるポリエステル系樹脂は、バージン原料からなることが好ましい。
【0022】
また、第1基材層SL1は、単層フィルムでもよいし、または、積層フィルムの一部であってもよい。そして、筒状体10におけるシートS同士の接着性および筒状体10と注出部20との接合強度を向上させる観点から、第1基材層SL1を構成するフィルム(単層フィルムまたは積層フィルム)は、無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムであることが好ましく、無延伸フィルムで構成されていることがより好ましい。
【0023】
印刷層PLは、たとえば、意匠性向上のため、および、目視可能な商品表示等を示すために設けられる。印刷層PLは、たとえばインキを塗工することで設けられる。印刷層PLを構成するインキは、特に制限されず、たとえば油性インキ、水性インキまたはUV硬化型インキ等を例示することができる。特に、環境適合性の観点から、印刷層PLを構成するインキは、水性インキ、または、UV硬化型インキであることが好ましく、UV硬化型インキであることがより好ましい。UV硬化型インキは、有機溶剤を含まないことに加え、速乾性を有するためである。また、UV硬化型インキは、高い加飾性をも有する。当該インキの塗工方法は特に限定されないが、たとえばグラビア印刷であってもよいし、フレキソ印刷であってもよいし、凸版輪転印刷であってもよい。印刷層PLは、互いに種類の異なる複数のインキが塗り重ねられることで形成されていてもよい。
【0024】
印刷層PLは、シートSの面方向全体に拡がるように形成されていてもよいし、シートSの面方向における一部に拡がるように形成されていてもよい。図3~5に示すように、シートSは、筒状体10の溶着部12において互いに重なり合う複数のシートSのうち中心側に位置する部分(本実施形態においては第1の側端部SE1)において、印刷層PLを含んでいないことも好ましい。これにより、筒状体10の外表面に顕れない部分においてはシートSが印刷層PLを含まないことで、印刷層PLを形成するためのインクの消費量を低減できる。また、溶着部12の他方端部14(詳細は後述する)においても、シートSが印刷層PLを含んでいなくてもよい。
【0025】
接合層ACは、いわゆるアンカーコート層であり、印刷層PLと他の層との接着性を高める。接合層ACは、たとえば、バインダー樹脂を少なくとも含む樹脂組成物からなる。より具体的には、接合層ACは、バインダー樹脂を少なくとも含む樹脂組成物が乾燥処理等を経て固形層となることにより、自身に接する他の層を固着させる層である。バインダー樹脂は、たとえばポリエステル系樹脂である。これにより、接合層ACのリサイクル性が向上する。さらに、本実施形態においては、チューブ容器1のリサイクルのため、印刷層PLと他の層とを互いに分離可能とするため、接合層ACが、温水およびアルカリ溶液の少なくとも一方に可溶な材料から構成される。
【0026】
接合層ACを構成する樹脂組成物は、バインダー樹脂の他、硬化剤をさらに含んでいることが好ましい。硬化剤は、カルボジイミド系硬化剤、アジリジン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、およびエポキシ系硬化剤からなる群より選択された少なくとも1つを含んでいることが好ましい。
【0027】
硬化剤は、バインダー樹脂の種類に応じて適宜選択される。バインダー樹脂がカルボキシル基を有する樹脂である場合、硬化剤は、カルボジイミド系硬化剤またはエポキシ系硬化剤であることがより好ましい。また、バインダー樹脂がカルボキシル基を有する樹脂である場合、硬化剤は、エポキシ系硬化剤であることがさらに好ましい。硬化剤がエポキシ系硬化剤であることで、バインダー樹脂に対して比較的小さい添加量でも、印刷層を他の層により良好に密着させることができる。また、硬化剤がエポキシ系硬化剤であることで、印刷層の耐水性が向上する。なお、バインダー樹脂がスルホン酸基を有する樹脂である場合、硬化剤はイソシアネート系硬化剤であることが好ましい。
【0028】
接合層AC用の樹脂組成物における硬化物の含有量は、カルボキシル基を有するバインダー樹脂の固形分100質量部に対してたとえば0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。硬化剤がカルボジイミド系硬化剤である場合、硬化剤の含有量は4質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが特に好ましい。硬化剤がエポキシ系硬化剤である場合、接合層AC用の樹脂組成物における硬化剤の含有量は、カルボキシル基を有するバインダー樹脂の固形分100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。エポキシ系硬化剤の含有量が5質量部以下であれば、印刷層を構成するインキを接合層AC上に塗工する際、ブロッキングの発生を抑制できる。
【0029】
接合層AC用の樹脂組成物は、必要に応じて、溶媒、添加剤等をさらに含むことができる。
【0030】
シートSは、アルカリ性溶液および温水の少なくとも一方の液体に浸漬されることで、印刷層PLが第1基材層SL1から分離するように、接合層ACが当該液体に溶解可能に構成されている。具体的には、シートSから切り出された積層構造体(縦×横:1cm×1cm)を85℃の水中に浸漬させて15分間攪拌させた際に、印刷層PLと第1基材層SL1が互いに分離される状態となった場合、当該接合層ACは温水に可溶するとみなされる。同様に、シートSから切り出された積層構造体(縦×横:1cm×1cm)を85℃の加温アルカリ性溶液(1.5重量%のNaOH水溶液)中に浸漬させて15分間攪拌させた際に、印刷層PLと第1基材層SL1とが互いに分離される状態となった場合、当該接合層はアルカリ性溶液に可溶するとみなされる。上記液体の攪拌速度は、攪拌容積にもよるが、たとえば1000rpm程度である。
【0031】
接合層ACが可溶する場合としては、接合層ACが温水およびアルカリ性溶液の少なくともいずれか一方に溶解して、接合層AC自身が有する、隣接する他の層への接合性が減少(消失)する場合、接合層ACと隣接する他の層との界面に水分が浸透(浸入)することにより、接合層ACと他の層とが剥離する場合、接合層ACが膨潤することにより、接合層自身の接合性が減少(消失)する場合などが考えられる。
【0032】
印刷層PLを第1基材層SL1から分離させるという観点からも、第1基材層SL1は、無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにより構成されていることが好ましい。第1基材層SL1が無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにより構成されていることで、シートSから切り出された積層構造体を温水または加温アルカリ性溶液に浸漬させたときに、第1基材層SL1が熱によって比較的大きくひずむ(歪む)。これにより、上記積層構造体の歪みが比較的大きくなり、温水または加温アルカリ性溶液が積層構造体の接合層ACに浸透しやすくなる。ひいては、チューブ容器1のリサイクル性がより向上する。
【0033】
図5に示すように、本実施形態において、シートSは、第2基材層SL2をさらに含んでいてもよい。第2基材層SL2は、第1基材層SL1に積層されている。第2基材層SL2は、第1基材層SL1から見て筒状体10の径方向外側に位置している。第2基材層SL2は、印刷層PLおよび接合層ACより筒状体10の径方向における中心側に位置している。本実施形態において、接合層ACは第2基材層SL2に隣接している。なお、シートSは、第2基材層SL2を含んでいなくてもよい。シートSが第2基材層SL2を含んでいない場合、接合層ACは、たとえば第1基材層SL1に隣接する。
【0034】
本実施形態において、第2基材層SL2は、樹脂成分を主成分として含んでおり、たとえば、ポリエステル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂を主成分として含んでいる。リサイクル性を向上させる観点からは、第2基材層SL2は、第1基材層SL1と同様に、ポリエステル系樹脂を主成分として含んでいることが好ましい。
【0035】
第2基材層SL2がポリオレフィン系樹脂を主成分として含む場合、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー等が挙げられる。
【0036】
第2基材層SL2のポリエステル系樹脂としては、第1基材層SL1のポリエステル系樹脂と同様のものを用いることができる。第2基材層SL2は、樹脂成分としてポリエステル系樹脂のみを含んでいることが好ましい。筒状体10およびチューブ容器1のリサイクル性の観点からは、第2基材層SL2のポリエステル系樹脂は、ホモポリエチレンテレフタレート、もしくは、エチレングリコールとテレフタル酸と第3成分とを共重合させてなる共重合ポリエチレンテレフタレートなどのポリエチレンテレフタレート、または、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートが好ましく、ホモポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。環境負荷低減の観点からは、第2基材層SL2におけるポリエステル系樹脂が、リサイクル原料またはバイオマス原料からなることが好ましいが、筒状体10の製造費用低減の観点からは、第2基材層SL2におけるポリエステル系樹脂は、バージン原料からなることも好ましい。
【0037】
第2基材層SL2は、単層フィルムであってもよいし、積層フィルムの一部であってもよい。第2基材層SL2を構成する単層フィルムまたは積層フィルムは、無延伸、一軸延伸、または、二軸延伸フィルムであってもよい。筒状体10を強靭に保ちつつ径方向厚さをより薄くする観点から、第2基材層SL2を構成するフィルムは、二軸延伸フィルムであることが好ましい。また、シートSが後述するバリア層BLを含む場合には、第2基材層SL2を構成するフィルムが二軸延伸フィルムであることにより、バリア層BLの割れなどを抑制できる。第2基材層SL2が積層フィルムの一部である場合、第2基材層SL2は、第1基材層SL1とともに積層フィルムの一層として構成されていてもよく、接着剤層などを介することなく直接第1基材層SL1に積層されていてもよい。
【0038】
さらに、第1基材層SL1が無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにより構成されるとともに、第2基材層SL2が二軸延伸フィルムにより構成されていることが特に好ましい。これにより、シートSから切り出された積層構造体を温水または加温アルカリ性溶液に浸漬させたときに、第2基材層SL2と比較して第1基材層SL1が熱によってより大きくひずむ。これにより、上記積層構造体に生じる歪みがより一層大きくなり、温水または加温アルカリ性溶液が積層構造体の接合層ACにより浸透しやすくなる。ひいては、チューブ容器1のリサイクル性がより一層向上する。
【0039】
本実施形態において、シートSは、バリア層BLをさらに含んでいる。バリア層BLは、第2基材層SL2から見て第1基材層SL1側に位置しているが、第2基材層SL2から見て第1基材層SL1とは反対側に位置していてもよい。バリア層BLが第2基材層SL2から見て第1基材層SL1とは反対側に位置する場合、バリア層BLが接合層ACと隣接してもよい。なお、シートSは、バリア層BLを含んでいなくてもよい。
【0040】
バリア層BLを構成する材料は特に限定されない。バリア層BLとしては、シリカバリア層もしくはアルミナバリア層などのセラミックバリア層、または、アルミバリア層などの金属バリア層などが挙げられる。本実施形態において、バリア層BLは、第2基材層SL2(具体的には第2基材層SL2を構成するフィルム)に蒸着により積層されている。
【0041】
本実施形態において、シートSは、接着剤層ALをさらに含んでいてもよい。接着剤層ALは、第1基材層SL1と第2基材層SL2との間に位置している。より具体的には、接着剤層ALは、第1基材層SL1とバリア層BLとの間に位置し、これらを互いに接合する。バリア層BLが第1基材層SL1と第2基材層SL2との間に位置していない場合には、接着剤層ALは、第1基材層SL1と第2基材層SL2とを互いに接合する。接着剤層ALを構成する接着剤は特に限定されないが、ドライラミネート用接着剤を用いることが好ましい。ドライラミネート用接着剤としては、従来公知のものを使用することができる。リサイクル性の観点から、接着剤層ALは、ポリエステル系樹脂を主成分として含むことが好ましい。
【0042】
図5に示すように、本実施形態において、シートSは、透明保護層TLをさらに含んでいてもよい。シートSが透明保護層TLを含む場合、透明保護層TLは径方向の最も外側に位置している。透明保護層により、チューブ容器の外部の他の物体との接触による印刷層の損傷を抑制できる。透明保護層としては、たとえばワニスまたは樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0043】
透明保護層TLがワニスからなる場合、印刷層PLのためのインクの塗工に続いてワニスを塗工することで、比較的簡便な方法で透明保護層TLを形成できる。ワニスは特に限定されないが、たとえば着色剤を含まないインキ(いわゆるメジウムインキ)が挙げられる。上記インキとしてはUV硬化型インキ(UV硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂)などが挙げられる。
【0044】
図6は、本開示の一実施形態に係る筒状体を構成するシートにおいて、透明保護層が樹脂フィルムである場合のシートの構成を示す部分断面図である。図6に示すように、透明保護層TLが樹脂フィルムである場合、シートSは、第2の接着剤層AL2をさらに含んでいてもよい。第2の接着剤層AL2は、透明保護層TLと印刷層PLとを互いに接着する。第2の接着剤層AL2を構成する接着剤は特に限定されないが、UV硬化型接着剤を用いることが好ましい。UV硬化型接着剤としては、従来公知のものを使用することができる。第2の接着剤層AL2を構成する接着剤は、ドライラミネート用接着剤であってもよい。リサイクル性の観点から、第2の接着剤層AL2は、ポリエステル系樹脂を主成分として含むことが好ましい。
【0045】
透明保護層TLが樹脂フィルムである場合、当該樹脂フィルムは熱収縮性樹脂フィルムからなることが好ましい。これにより、温水または加温アルカリ溶液にシートSを浸漬させたときに、熱収縮樹脂フィルムである透明保護層TLが収縮することにより、透明保護層TLに歪みが生じる。透明保護層TLに歪みが生じることにより、透明保護層TLと印刷層PLとの間に隙間が生じる。この隙間によって、印刷層PLが、透明保護層TL側とは反対側にて接着している層(本実施形態においては第2基材層SL2)から剥がれやすくなる。よって、樹脂フィルムからなる透明保護層TLにより印刷層PLの損傷をより抑制できるとともに、透明保護層TLが樹脂フィルムであっても、上記液体への浸漬持における印刷層PLの分離性の低下を抑制できる。ひいては、チューブ容器1のリサイクルが阻害されることなく可能となる。
【0046】
透明保護層TLが樹脂フィルムである場合、当該樹脂フィルムは、たとえば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、または、ポリオレフィン系樹脂のいずれであってもよいが、当該樹脂フィルムはポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなることが好ましい。
【0047】
なお、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂は、ポリエステル系樹脂より、比較的比重が小さい。このため、透明保護層TLがポリオレフィン系樹脂からなる場合、シートSを上記液体へ浸漬させたとき、印刷層PLの分離に伴い透明保護層TLは上記液体に浮かぶ。一方、印刷層から分離したポリエステル系樹脂を主成分とする第1基材層SL1および第2基材層SL2などは、上記液体の底に沈む。これにより、透明保護層TLがポリオレフィン系樹脂からなるチューブ容器1は、比重選別により容易に透明保護層TLと、第1基材層SL1および第2基材層SL2とに分離される。このため、透明保護層TLがポリエステル系樹脂とは異なる樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる樹脂フィルムであっても、当該樹脂組成物が主成分としてポリオレフィン系樹脂を含むことで、チューブ容器1のリサイクルが阻害されることなく可能となる。
【0048】
透明保護層TLの樹脂フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー等が挙げられる。汎用性、耐摩耗性の観点から、ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレンであることが好ましい。よって、透明保護層TLが樹脂フィルムからなる場合、透明保護層TLは熱収縮性ポリプロピレンフィルムであることが最も好ましい。
【0049】
シートSは、さらに他の層を含んでいてもよい。図7は、本開示の一実施形態に係る筒状体を構成するシートが、第3基材層をさらに含む場合のシートの構成を示す部分断面図である。図7に示すように、たとえば、シートSは、樹脂成分を主成分として含む第3基材層SL3をさらに含んでいてもよい。シートSが第3基材層SL3をさらに含んでいる場合、第3基材層SL3は、図7に示すように第2基材層SL2から見て第1基材層SL1の反対側に積層されてもよいし、第1基材層SL1と第2基材層SL2との間に位置していてもよい。また、第3基材層SL3は、印刷層PLおよび接合層ACより筒状体10の径方向における中心側に位置している。第3基材層SL3が第2基材層SL2から見て第1基材層SL1の反対側に積層される場合、接合層ACは第3基材層SL3に隣接している。
【0050】
第3基材層SL3は、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂を主成分として含んでいてもよい。第3基材層SL3の樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、または、第1基材層SL1および第2基材層SL2の主成分として採用可能なポリエステル系樹脂と同様のものが使用可能である。第3基材層SL3が、第2基材層SL2から見て第1基材層SL1の反対側に積層されている場合、溶着部12におけるシートS同士の接着性の観点から、第3基材層SL3は、第1基材層SL1の主成分であるポリエステル系樹脂と同種のポリエステル系樹脂を主成分として含むことが好ましい。これにより、溶着部12において、第1基材層SL1と第3基材層SL3とが互いに溶着し、溶着部12においてシートS同士の接合強度をより向上させることができる。
【0051】
第3基材層SL3の主成分として採用可能なポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、ホモポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。環境負荷低減の観点からは、第3基材層におけるポリエステル系樹脂が、リサイクル原料またはバイオマス原料からなることが好ましいが、筒状体10の製造費用低減の観点からは、第3基材層SL3におけるポリエステル系樹脂は、バージン原料からなることも好ましい。
【0052】
第3基材層SL3は、単層フィルムでもよいし、または、積層フィルムの一部であってもよい。第3基材層SL3を構成するフィルム(単層フィルムまたは積層フィルム)は、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、または、二軸延伸フィルムのいずれから構成されていてもよい。筒状体10におけるシートS同士の接着性(すなわち、溶着部12における第1基材層SL1と第3基材層SL3との溶着の容易さ)の観点から、第3基材層SL3は、無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムで構成されていることが好ましく、無延伸フィルムで構成されていることがより好ましい。
【0053】
シートSが第3基材層SL3を含む場合、シートSは、第3の接着剤層AL3をさらに含んでいる。図7に示す例においては、第3の接着剤層AL3が、第2基材層SL2と第3基材層SL3との間に位置しており、これらを互いに接合する。第3の接着剤層AL3を構成する接着剤は特に限定されないが、ドライラミネート用接着剤を用いることが好ましい。ドライラミネート用接着剤としては、従来公知のものを使用することができる。リサイクル性の観点から、第3の接着剤層AL3は、ポリエステル系樹脂を主成分として含むことが好ましい。
【0054】
シートSの合計厚さは、シートSを筒状に形成する観点およびチューブ容器1の取扱性の観点から、たとえば12μm以上400μm以下であることが好ましい。これにより、筒状体10を容器の一部として用いる場合には、容器に収容された内容物を押し出すようにして注出可能なスクイズ性を、筒状体10に付与できる。ひいては、シートSが、ポリエステル系樹脂を主成分として含む第1基材層SL1を少なくとも含んでいるため、シートSの合計厚さが12μm以上400μm以下であることにより、筒状体10に折罫線を容易に形成することができる。これにより、筒状体10に良好なスクイズ性を付与できる。シートSの合計厚さは、チューブ容器1のシール性の観点から、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。また、シートSの合計厚さは、筒状体10へのスクイズ性付与の観点から、200μm以下であることがより好ましい。
【0055】
また、第1基材層SL1の厚さは、たとえば10μm以上300μm以下であることが好ましい。第2基材層SL2の厚さは、たとえば5μm以上200μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることがより好ましい。シートSが、互いに積層された複数の層を含む場合、第1基材層SL1は、筒状体10の最内層であって溶着の際に必ず他の層と接着することになる観点から、第2基材層SL2より厚いことが好ましい。これにより、溶着部12における溶着の際に、第2基材層SL2に含まれる樹脂成分がシートS同士の溶着の強度に与える影響を小さくできる。具体的には、第2基材層SL2が比較的薄いことで、溶着の際に第2基材層SL2が第1基材層SL1に混ざり合うため、第2基材層SL2に含まれる樹脂成分による上記の影響が小さくなるものと考えられる。当該影響をより小さくする観点から、第1基材層SL1の厚さは、第2基材層SL2の厚さの1.5倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましい。第1基材層SL1は、シートSにおいて最も厚い層であってもよい。なお、本明細書において、シートSおよびこれらを構成する層の厚さとは、筒状体10を形成する前の状態のシートSおよびこれら構成する厚さをいい、シート基部11における、延在部113(詳細は後述)を構成する層の、筒状体10の径方向厚さに相当する。
【0056】
シートSが第3基材層SL3をさらに含む場合、第3基材層SL3の厚さは、たとえば10μm以上300μm以下であることが好ましい。第3基材層SL3の厚さは、第1基材層SL1と同じであってもよい。これにより、第1基材層SL1を構成するフィルムと同じフィルムにて第3基材層SL3を構成することが可能となる。なお、第3基材層SL3の厚さは第1基材層SL1の厚さと異なっていてもよい。第3基材層SL3の厚さは、第1基材層SL1より厚いことも好ましい。第3基材層SL3の厚さが第1基材層SL1より厚いことで、シートSが第1基材層SL1側において凹状にカールしやすくなり、シートSの筒状化がより容易となる。第3基材層SL3は、シートSにおいて最も厚い層であってもよい。第3基材層SL3は、第2基材層SL2より厚いことが好ましい。
【0057】
次に、シート基部11および溶着部12の詳細について説明する。図8は、図1の筒状体をVIII-VIII線矢印方向から見た部分断面図である。図9は、図8の領域IXを拡大して示す部分断面図である。図10は、図8の領域Xを拡大して示す部分断面図である。
【0058】
図1図3および図8から図10に示すように、シート基部11は、第1基端部111と、第2基端部112と、延在部113とを有している。
【0059】
第1基端部111は、シートSにおいて第2の側端部SE2と連続している部分である。第2基端部112は、シートSにおいて第1の側端部SE1と連続している部分である。第1基端部111および第2基端部112は、それぞれ溶着部12に沿って、筒状体10の一方端部13から他方端部14にかけて延びている(図1参照)。
【0060】
第1基端部111および第2基端部112の径方向厚さは、筒状体10を形成する前の状態のシートSの厚さ(延在部113の径方向厚さ)と異なっている。図8に示す断面視においては、第1基端部111の径方向厚さは、筒状体10を形成する前の状態のシートSの厚さ(延在部113の径方向厚さ)より厚いが、薄くなっていてもよい。また、第2基端部112の径方向厚さは、筒状体10を形成する前の状態のシートSの厚さ(延在部113の径方向厚さ)よりわずかに薄いが、厚くなっていてもよい。
【0061】
延在部113は、シートSの面方向DP(筒状体10の周方向DC)において第1基端部111と第2基端部112との間に位置している部分である。延在部113は、筒状体10の軸方向から見て、略C字状の外形を有している。筒状体10の径方向における延在部113の厚さは、筒状体10形成前のシートSの厚さと等しい。
【0062】
帯状の溶着部12は、上記シートSを湾曲または屈曲させて、第1の側端部SE1と第2の側端部SE2とを上記シートSの厚さ方向に互いに重ね合わせて溶着させることで形成されている。本実施形態においては、第1の側端部SE1の外周面と、第2の側端部SE2の内周面とが、互いに溶着されている。溶着部12は、筒状体10の軸方向に沿って延びている。溶着部12は、一方端部13から他方端部14まで連続的に延びている。
【0063】
上述したように、溶着部12は、第1先端縁121と、第2先端縁122と、溶着部外周面123と、溶着部内周面124とを有している。
【0064】
図8および図9に示すように、第1先端縁121は、筒状体10の周方向DCにおける第1の側端部SE1の先端縁である。第1先端縁121は、第1基端部111と接合している。これにより、筒状体10の軸方向から見たときの溶着部12の溶着長さが比較的長くなる。ひいては、溶着部12に剥離の応力がかかったときに、この応力が分散される。さらに、第1先端縁121は、上記周方向DCに沿う方向から見て、第1基端部111の厚み内に位置している。これにより、第1先端縁121が外部に接触する機会を低減できる。特に、本実施形態においては、第1の側端部SE1の外周面と、第2の側端部SE2の内周面とが、互いに溶着されている。したがって、第1先端縁121が、上記周方向DCに沿う方向から見て、第1基端部111の厚み内に位置していることにより、筒状体10が容器の一部として構成されている際に、容器の内容物が第1先端縁121と接触する機会を低減できる。このとき、第1先端縁121の少なくとも一部が、周方向DCに沿う方向から見て、第1基端部111の厚み内に位置していればよい。第1先端縁121のうち、周方向DCから見て第1基端部111の厚み内に位置している部分の厚さは、シートSの厚さ(延在部113の径方向厚さ)の1/10以上であればよく、好ましくは1/4以上、より好ましくは1/3以上である。そして、図8および図9に示すように、第1先端縁121の全部が、周方向DCに沿う方向から見て、第1基端部111の厚み内に位置していることが最も好ましい。また、第1の側端部SE1における第1基材層SL1と第2基材層SL2との境界部SBは、周方向DCに沿う方向から見て、第1基端部111の厚み内にて第1基端部111と接している。これにより、筒状体10が容器の一部として構成されている際に、容器の内容物が第1の側端部SE1における境界部SBに接触しにくくなる。ひいては、内容物が境界部SBに接触することによる第1基材層SL1と第2基材層SL2との層間剥離の発生を抑制できる。なお、第1先端縁121は、筒状体10の軸方向における一方端部13から他方端部14まで延びている(図1参照)。
【0065】
図8および図10に示すように、第2先端縁122は、第2の側端部SE2の周方向DCにおける先端縁である。第2先端縁122は、第2基端部112と接合している。第2先端縁122は、周方向DCに沿う方向から見て、第2基端部112の厚み内に位置している。このとき、第2先端縁122の少なくとも一部が、周方向DCに沿う方向から見て、第2基端部112の厚み内に位置していればよい。そして、図8および図10に示すように、第2先端縁122の全部が、周方向DCに沿う方向から見て、第2基端部112の厚み内に位置していることが好ましい。また、第2の側端部SE2における第1基材層SL1と第2基材層SL2との境界部SBは、周方向DCに沿う方向から見て、第2基端部112の厚み内にて第2基端部112と接している。なお、第2先端縁122は、筒状体10の軸方向における一方端部13から他方端部14まで延びている(図1参照)。
【0066】
第1の側端部SE1と第2の側端部SE2との境界面Bにおいては、第1先端縁121から第2先端縁122に至るまで筒状体10の内周側と外周側とが連通しないように、第1の側端部SE1と第2の側端部SE2とが互いに気密に溶着されている。
【0067】
図8に示すように、溶着部外周面123は、筒状体10の径方向外側を向いている。溶着部外周面123は、第2の側端部SE2で構成されている。溶着部外周面123には、凹凸が形成されている。すなわち、第2の側端部SE2には、径方向外側において凹凸が形成されている。
【0068】
溶着部12においては、前記筒状体10の一方端部13から他方端部14にかけて、前記溶着部外周面123の前記周方向DCの全体に凹凸が形成されている(図1参照)。そして、溶着部12において、第1の側端部SE1と第2の側端部SE2との境界面Bは、溶着部外周面123の凹凸の形状に沿うように延びている。
【0069】
本実施形態において、溶着部外周面123に形成された凹凸における凸部123Aは、筒状体10の径方向から見て、格子状に形成されている。ただし、筒状体10の径方向から見たときの凸部123Aの形状は特に限定されない。溶着部外周面123には、凹部が格子状に形成されていてもよい。溶着部外周面123に形成された凹凸における凸部123Aまたは凹部が、格子状に形成されていることにより、筒状体10の周方向DCおよび軸方向に沿う方向のいずれにおいても、境界面Bの面積を引き延ばすことができる。凸部123Aまたは凹部は、筒状体10の径方向から見て、複数のドット状に形成されていてもよいし、互いに平行な複数の線状に形成されていてもよい。また、溶着部外周面123に形成された凹凸における凸部123Aの高さ寸法は、筒状体10形成前のシートSの厚さ(113の厚さ)の寸法より大きくなっている。そして、溶着部外周面123に形成された凹凸における凸部123Aの高さ寸法は、筒状体10形成前のシートSの厚さ(延在部113の厚さ)の寸法の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.5倍以上がさらに好ましい。凸部123Aの高さ寸法が大きくなるほど、凹凸の形状に沿うように延びている境界面Bの面積が大きくなり、溶着部12にかかる剥離応力が分散され、溶着部12の強度が向上する。
【0070】
なお、シートSは、図8図10には図示していないが、実際には上述のように印刷層PLおよび接合層ACを含んでいる。また、シートSは透明保護層TLおよび第2の接着剤層AL2を有している場合もある。これらの層は、部分的に溶融した第1の側端部SE1の第2基材層SL2または第2の側端部SE2の第1基材層SL1と混ざり合う。このように、溶着部12においては、シートSが径方向における最も最外層にシーラント層を有していなくても、超音波溶着により第1基材層SL1と第2基材層SL2とを互いに溶着させることができる(シートSが第2基材層SL2を含んでいない場合は第1基材層SL1同士を互いに溶着させることができる)。結果として、シーラント層が不要となるぶん、筒状体10の径方向厚さを薄くすることができる。
【0071】
しかしながら、シート基部11においてシートSが印刷層PLを含みつつ、上述したように、溶着部12で径方向内側に位置する第1の側端部SE1においてはシートSが印刷層PLを含んでいないことが好ましい。これにより、超音波溶着などで第1の側端部SE1と第2の側端部SE2とを互いに溶着させる際に、印刷層PLを介することなく第1基材層SL1と第2基材層SL2とを溶着させることができる。ひいては、溶着部12における溶着力の低下を抑制できる。特に、シートSが透明保護層TLを有していない場合には、溶着部12で径方向内側に位置する第1の側端部SE1において、シートSが印刷層PLを含んでいないことが好ましい。これにより、溶着部12にて印刷層PLが直接溶着面となることを防ぎ、溶着部12における溶着力の低下を抑制できる。
【0072】
さらに、シート基部11においてシートSが印刷層PLを含みつつ、溶着部12で径方向外側に位置する第2の側端部SE2においてはシートSが印刷層PLを含んでいないことも好ましい。これにより、溶着部12での超音波溶着の際に超音波ホーン(詳細は後述する)が第2の側端部SE2の表面(溶着部外周面123)に接する際に、当該表面近傍に位置する印刷層PLの溶融による印刷くずれを防止し、チューブ容器1の意匠性の低下を抑制できる。また、超音波溶着の際に、表面近傍に位置する印刷層PLを構成するインキが超音波ホーンの振動によって飛散することを抑制できる。ひいては、飛散したインキによる、チューブ容器1の内容物への影響(汚染)を小さくできる。
【0073】
一方、溶着部内周面124は、筒状体10の径方向内側を向いている。溶着部内周面124は、周方向DCに沿うように滑らかである。上記のような溶着部外周面123および溶着部内周面124を有するため、溶着部12は、径方向厚さが比較的厚い部分(凸部123Aが位置している部分)と、径方向厚さが比較的薄い部分とを有している。溶着部12において、径方向厚さが最も厚い部分の径方向厚さ寸法は、たとえば、シート基部11の延在部113の径方向厚さ寸法(すなわち、第1の側端部SE1と第2の側端部SE2とを互いに溶着させる前の状態のシートSの厚さ寸法)の、2倍超かつ3倍以下である。溶着部12において、径方向厚さが最も薄い部分の径方向厚さ寸法は、たとえば、シート基部11の延在部113の径方向厚さ寸法(すなわち、第1の側端部SE1と第2の側端部SE2とを互いに溶着させる前の状態のシートSの厚さ寸法)の0.5倍以上1.5倍以下である。
【0074】
筒状体10は、筒状体10の軸方向における一方端部13において、注出部20と接合している。一方端部13は、注出部20と接合されることで、可撓性を有さず、その外形形状を維持可能に構成されていてもよい。一方端部13は、筒状体10の軸方向から見て、円環状の外形を有している。一方端部13は、筒状体10の軸方向から見て、多角形環状の外形を有していてもよい。
【0075】
筒状体10の軸方向における一方端部13は、当該軸方向におけるシート基部11の一方端部と、溶着部12の一方端部とからなる。一方端部13においても、第1先端縁121は、上記周方向DCに沿う方向から見て、第1基端部111の厚み内に位置することが好ましい。これにより、一方端部13の第1先端縁121近傍において筒状体10の表面(本実施形態においては内表面)が比較的滑らかになり、筒状体10と他の部品(具体的には注出部20)との接合が容易となる。また、一方端部13においても、第2先端縁122は、周方向DCに沿う方向から見て、第2基端部112の厚み内に位置してもよい。また、本実施形態においては、一方端部13においても、溶着部外周面123に凹凸が形成されており、溶着部内周面124が周方向DCに沿うように滑らかである。このため、一方端部13において筒状体10の内周面と注出部20との接合が容易になる。
【0076】
筒状体10において、筒状体10の軸方向における他方端部14は、閉止されている。本実施形態においては、他方端部14において筒状体10の軸方向に直交する方向に対向するシートS同士が、互いに溶着されることで、筒状体10が他方端部14において閉止されている。他方端部14は、筒状体10の軸方向に交差する方向に延びている。なお、筒状体10の他方端部14における閉止方法は、上記の態様に限定されない。シートSとは異なる部材で成形された底部などが、他方端部14に接合されることで、筒状体10の他方端部14が閉止されてもよい。
【0077】
なお、本実施形態において、溶着部外周面123に凹凸形状が形成されていたが、溶着部内周面124に凹凸形状が形成されていてもよい。図11は、本開示の一実施形態の第1変形例に係る筒状体の部分断面図である。図11においては、図8と同様の断面視にて、本実施形態の第1変形例に係る筒状体10aを示している。図11に示すように、本変形例においては、溶着部外周面123aが周方向DCに沿うように滑らかである。そして、溶着部内周面124aに、凹凸が形成されている。溶着部12において、第1の側端部SE1と第2の側端部SE2との境界面Bは、溶着部内周面124aの凹凸の形状に沿うように延びている。本変形例において、溶着部内周面124aにおける凹凸形状の凸部124Aおよび凹部は、本実施形態における凹凸形状の凸部123Aおよび凹部と同様の外形を有していてもよい。また、溶着部内周面124aに形成された凹凸における凸部124Aの高さ寸法は、筒状体10形成前のシートSの厚さ(延在部113の厚さ)の寸法より大きくなっている。そして、溶着部内周面124aに形成された凹凸における凸部124Aの高さ寸法は、筒状体10形成前のシートSの厚さ(延在部113の厚さ)の寸法の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.5倍以上がさらに好ましい。凸部124Aの高さ寸法が大きくなるほど、凹凸の形状に沿うように延びている境界面Bの面積が大きくなり、溶着部12にかかる剥離応力が分散され、溶着部12の強度が向上する。
【0078】
なお、本実施形態の第1変形例においては、溶着部外周面123aが、第1の側端部SE1で構成されており、溶着部内周面124aが、第2の側端部SE2で構成されている。本変形例においても、第1先端縁121は、上記周方向DCに沿う方向から見て、第1基端部111の厚み内に位置している。
【0079】
[注出部]
図12は、図1のチューブ容器をXII-XII線矢印方向から見たときの、部分断面図である。図1図4および図12に示すように、注出部20は、筒状体10の軸方向における一方端部13に接合されている。
【0080】
注出部20は、注出口部21と肩部22とを有している。注出口部21は、筒状である。注出口部21は、チューブ容器1の内部と外部とを互いに連通させている。注出口部21の外周面上には螺旋状に延びる雄ネジが形成されていてもよい。チューブ容器1は、注出口部21と嵌合して注出口部21を開閉可能なキャップをさらに備えていてもよい。
【0081】
肩部22は、注出口部21と筒状体10の一方端部13とを接続している。肩部22は略円錐台状の外形を有している。肩部22は、円盤状の外形を有していてもよい。また、肩部22を筒状体10の軸方向から見たときの外形は円形状であるが、楕円形状または多角形状であってもよい。
【0082】
肩部22は、注出口部21側とは反対側において筒状体10と接合する接合端部221を有している。接合端部221は、筒状体10の軸方向から見て環状であって、当該軸方向に沿って延びている。接合端部221は、筒状体10の一方端部13の径方向内側に位置している。すなわち、接合端部221は、筒状体10の一方端部13の内周面を構成する第1基材層SL1と接合している。当該箇所においては、注出部20を構成する樹脂組成物の一部分と、第1基材層SL1に主成分として含まれるポリエステル系樹脂の一部分とが互いに一体化されている。これにより、注出部20と筒状体10とが強固に接合される。なお、接合端部221は、筒状体10の一方端部13の径方向外側に位置していてもよい。接合端部221は、筒状体10の一方端部13の径方向内側および径方向外側の両方に位置していてもよい。
【0083】
本実施形態においては、注出部20の接合端部221は直接的に筒状体10と接合しているが、注出部20の接合端部221は、注出部20に被覆される他の層を介して筒状体10と接合していてもよい。たとえば、注出部20の外面上には、ガスバリア層が被覆されていてもよい。この場合、注出部20は、ガスバリア層を介して、接合端部221と接合してもよい。ガスバリア層は、注出部20の厚さ方向における中間に設けられていてもよい。
【0084】
肩部22の厚みは特に限定されないが、たとえば0.5mm以上2.0mm以下である。接合端部221の径方向厚さは、たとえば0.5mm以上2.0mm以下である。
【0085】
注出部20は、ポリエステル系樹脂を主成分として含む樹脂組成物からなる。注出部20におけるポリエステル系樹脂は、第1基材層SL1におけるポリエステル系樹脂と同様のものが使用可能である。チューブ容器1のリサイクル性の観点からは、注出部20のポリエステル系樹脂は、ホモポリエチレンテレフタレート、もしくは、エチレングリコールとテレフタル酸と第3成分とを共重合させてなる共重合ポリエチレンテレフタレートなどのポリエチレンテレフタレート、または、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートが好ましく、ホモポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。また、注出部20におけるポリエステル系樹脂は、注出部20の成形性の観点から、非晶性のポリエステル系樹脂(非晶性のポリエチレンテレフタレート、および、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートなど)であることが好ましい。なお、注出部20におけるポリエステル系樹脂は、結晶性のポリエステル系樹脂(たとえば、結晶性のポリエチレンテレフタレート)であってもよい。チューブ容器1のリサイクル性の観点から、注出部20を構成する樹脂組成物は、樹脂成分としてポリエステル系樹脂のみを含んでいることが好ましい。注出部20を構成する樹脂組成物は、従来公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。また、環境負荷低減の観点からは、当該樹脂組成物におけるポリエステル系樹脂が、リサイクル原料またはバイオマス由来の原料からなることが好ましいが、注出部20の製造費用低減の観点からは、当該樹脂組成物におけるポリエステル系樹脂は、バージン原料からなることも好ましい。
【0086】
注出部20を成形するために使用される、ポリエステル系樹脂材料の固有粘度(IV)の値は、JIS規格(K7390-1:2015)に準拠して測定したときに、たとえば0.60以上0.90以下であればよい。IV値が0.60以上0.90以下であれば、注出部20の成形が容易となる。
【0087】
[内容物入りチューブ容器]
チューブ容器1は、筒状体10と、注出部20とで形成された内部空間に内容物を収容可能である。内容物は特に限定されないが、従来公知のチューブ容器に収容されるものであってもよい。内容物としては、たとえば、化粧料、食品、医薬品、または、口腔用組成物などが挙げられる。当該内容物は、ポリオレフィン系樹脂に吸着可能な油溶性化合物、油性成分、揮発性油性成分、香料または甘味料のうち少なくとも1つ、または、界面活性剤を含有してもよい。本実施形態に係るチューブ容器1は、内容物と直接接触する樹脂がポリエステル系樹脂であるため、ポリオレフィン系樹脂に吸着可能な上記成分がチューブ容器1に吸着したり、チューブ容器1がこれらの成分を吸収して膨潤することを比較的抑制できる。また、溶着部12が強固に接合されているため、界面活性剤が溶着部12から外部へ漏出することを抑制できる。
【0088】
油溶性化合物としては、たとえば、DL-α-トコフェロール、D-δ-コフェロール、酢酸DL-α-トコフェロール、コハク酸DL-α-トコフェロール、ニコチン酸DL-α-トコフェロール、リノール酸DL-α-トコフェロール等のトコフェロール類;3-メチル-4-イソプロピルフェノール(別名イソプロピルメチルフェノール)等が挙げられる。油溶性化合物は、たとえば、上記内容物が医薬品、食品、化粧料である場合に、上記内容物に含まれる。上記トコフェロール類は、いわゆるビタミンEおよびその誘導体であり、老化防止作用、末梢血管拡張作用、血行促進作用等を期待して上記内容物に配合される。3-メチル-4-イソプロピルフェノールは、殺菌剤、防腐剤として、アクネ化粧料等の化粧料および医薬品等に配合される。
【0089】
油性成分としては、たとえば、ツバキ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ヒマシ油、サフラワー油、大豆油、茶実油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、カンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン、液状ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル等の天然油脂類;流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素系油脂類;流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素系油脂類;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル-2-エチルヘキサノエート、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル等の合成油性成分;および、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等の環状ポリシロキサン、3次元網目構造を形成することが可能なシリコーン樹脂、シリコーンゴム等の、シリコーン類が挙げられる。これらの油性成分は、たとえば、内容物が化粧料である場合に、上記内容物に含まれる。
【0090】
揮発性油性成分としては、比較的低分子量のシリコーン油、比較的低分子量の炭化水素油、エーテル油等が挙げられる。シリコーン油としては、直鎖状シリコーンまたは環状シリコーンが挙げられる。シリコーン油としては、具体的には、鎖状ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサンが挙げられる。鎖状ジメチルポリシロキサンとしては、直鎖、分岐鎖のいずれでもよく、直鎖のものとしては、ジメチルポリシロキサン(1.5cs)、ジメチルポリシロキサン(2cs)等が挙げられ、分岐鎖のもとしては、メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等が挙げられる。環状ジメチルポリシロキサンとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。炭化水素としては、イソドデカン、イソトリデカン、イソヘキサデカン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン等が挙げられ、エーテル油としては、エチルパーフルオロブチルエーテル等が挙げられる。これらの揮発性油性成分は、主に、内容物が日焼け止め水中油型乳化化粧料などの化粧料である場合に、上記内容物に含まれる。
【0091】
香料としては、たとえば、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ピメント油、ティーツリー油、タバナ油、スターアニス油、フェンネル油、珪藻油、バジル油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー、ナツメグ等の天然香料もしくはこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料;カンファー、メントール、カルボン、ベンジルサクシネート、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、メチルオイゲノール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート、オシメン、n-デシルアルコール、メチルアセタート、シトロネニルアセテート、エチルリナロール、ワニリン、ベンズアルデヒド、等の単品香料;および、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等が挙げられる。これらの香料は、たとえば、上記内容物が口腔用組成物である場合に、上記内容物に含まれる。また、香料は、わさび、からし、マスタード等の食品の香気成分として上記内容物に含まれるものであってもよい。
【0092】
甘味料としては、たとえば、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、メトキシシンナミックアルデヒド、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトールなどが挙げられる。これらの甘味料は、たとえば、上記内容物が口腔用組成物である場合に、上記内容物に含まれる。
【0093】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、脂肪酸セッケン、高級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N-アシルサルコシン酸、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、リン酸エステル塩、スルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、N-アシルグルタミン酸塩、硫酸化油、POE-アルキルエーテルカルボン酸、POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン、および、カゼインナトリウム等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム)、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POE -アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、および、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。両性界面活性剤としては、イミダゾリン系両性界面活性剤およびベタイン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルキロールアミド、および、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0094】
[チューブ容器の製造方法]
次に、本開示の一実施形態に係るチューブ容器1の製造方法について説明する。図13は、本開示の一実施形態に係るチューブ容器の製造方法を示すフロー図である。図13に示すように、本実施形態に係るチューブ容器1の製造方法は、シート準備工程S1と、重ね合わせ工程S2と、超音波溶着工程S3と、注出部接合工程S4と、端部接合工程S5とを備えている。
【0095】
シート準備工程S1においては、複数の層を互いに積層することで、シートSを準備する。たとえば、単層フィルムからなる第1基材層SL1と、バリア層BLが蒸着された単層フィルムからなる第2基材層SL2とを、ドライラミネートにより接着剤層ALで接合することで、シートSを準備してもよい。第1基材層SL1および第2基材層SL2を含む市販の積層フィルムを準備してもよい。
【0096】
そして、シート準備工程S1においては、第1基材層SL1に積層された第2基材層SL2上(または第1基材層SL1上)に、接合層用材料としての樹脂組成物を印刷する。当該樹脂組成物は、バインダー樹脂、または、硬化剤を混合したバインダー樹脂である。当該樹脂組成物を乾燥させて接合層ACを形成した後、接合層AC上にインキを印刷し、これを硬化させることで印刷層PLを形成する。さらに透明保護層TLとしてワニスからなる層を設ける場合は、印刷層PL上にワニスを印刷し、これを硬化させることで透明保護層TLを形成してもよい。透明保護層TLとして樹脂フィルムを設ける場合は、印刷層PLと透明保護層TLとの間に設けたUV硬化型接着剤を、UV照射で硬化させて第2の接着剤層AL2を形成することで、第2の接着剤層AL2により印刷層PLと透明保護層TLとを接合してもよい。または、ドライラミネートにより第2の接着剤層AL2で印刷層PLと透明保護層TLとを接合してもよい。これにより、シートSが準備される。
【0097】
図14は、重ね合わせ工程および超音波溶着工程におけるシートを示す模式的な図である。図14に示すように、重ね合わせ工程S2においては、準備されたシートSが、筒状に形成されつつ、第1の側端部SE1と第2の側端部SE2とが互いに重ね合わされる。
【0098】
超音波溶着工程S3においては、筒状に形成されたシートSの径方向内側および径方向外側のうち一方側に位置させた超音波ホーン5と、径方向内側および径方向外側のうち他方側に位置させたアンビル6とにより、第1の側端部SE1および第2の側端部SE2を挟み込むことでこれらを互いに超音波溶着させる。このとき、第1の側端部SE1および第2の側端部SE2は、超音波ホーン5からの超音波により振動されつつ、超音波ホーン5およびアンビル6によりシートSの厚さ方向に加圧される。本実施形態においては、超音波ホーン5がシートSの径方向外側に位置し、アンビル6がシートSの径方向内側に位置している。なお、超音波ホーン5がシートSの径方向内側に位置し、アンビル6がシートSの径方向外側に位置してもよい。
【0099】
超音波ホーン5およびアンビル6の少なくとも一方は、シートSを挟み込む際にシートSに押し付けるための凹凸形状51を有している。本実施形態においては、超音波ホーン5のみが凹凸形状51を有している。なお、超音波ホーン5およびアンビル6の両方が当該凹凸形状を有していてもよいし、アンビル6のみが凹凸形状を有していてもよい。
【0100】
本実施形態においては、凹凸形状51を有する超音波ホーン5が、筒状に形成されたシートSの径方向外側に位置し、アンビル6が、筒状形成されたシートSの径方向内側に位置する。このため、溶着部外周面123に、超音波ホーン5の凹凸形状51に沿うように凹凸が形成される。また、凹凸形状51を有する超音波ホーン5が、シートSの径方向内側に位置し、アンビル6が、シートSの径方向外側に位置してもよい。この場合、本実施形態の第1変形例のように、溶着部内周面124に、凹凸形状51に沿うように凹凸が形成される(図11参照)。また、本実施形態においては、この凹凸形状51の凸部511により、第2の側端部SE2が、複数の箇所において局所的に第1の側端部SE1に押し込まれる。これにより、溶着時において互いの樹脂成分が部分的に入り交じる。ひいては、第1の側端部SE1と第2の側端部SE2とが互いに強固に溶着される。
【0101】
凹凸形状51は、筒状に形成されたシートSの径方向から見て第1の側端部SE1および第2の側端部SE2の全体と重なるように位置する。これにより、本実施形態においては、溶着部12において、周方向DCの全体に凹凸が形成される。また、筒状に形成されたシートSの径方向から見て、筒状に形成されたシートSの周方向における凹凸形状51の幅寸法は、シートSにおいて第1の側端部SE1および第2の側端部SE2が互いに重なっている領域の幅寸法より大きいことが好ましい。これにより、第1の側端部SE1および第2の側端部SE2が互いに重なっている領域の幅寸法の長さが設計寸法から変化したり、超音波ホーン5およびアンビル6の位置ずれが生じた場合においても、第1の側端部SE1および第2の側端部SE2をより確実に互いに溶着させることができる。
【0102】
図15は、本開示の一実施形態に係るチューブ容器の製造方法に使用される超音波ホーンを、アンビルとの対向方向から見た平面図である。図16は、図15の超音波ホーンをXVI-XVI線矢印方向から見た断面図である。
【0103】
図15および図16に示すように、凹凸形状51の凸部511の高さ寸法DHは、シートSの厚さの寸法より大きいことが好ましい。高さ寸法DHは、シートSの厚さの寸法の1.1倍以上でことがより好ましく、1.2倍以上であることがさらに好ましく、1.5倍以上であることが最も好ましい。凸部511にて第1の側端部SE1および第2の側端部SE2の重ね合わせた部分を局所的に加圧することで、第1の側端部SE1および第2の側端部SE2との重ね合わせ面に、超音波による摩擦熱がかかりやすくなる。そして、高さ寸法DHがシートSの厚さの寸法より大きければ、溶融した第1の側端部SE1および第2の側端部SE2の両方が凸部511間に流れ込みやすくなる。ひいては、第1の側端部SE1および第2の側端部SE2の境界面Bが、凹凸形状51に沿うように容易に変形する。これにより、上記境界面Bの面積が大きくなり、溶着部12にかかる剥離応力がより分散され、溶着部12の強度がより向上する。当該高さ寸法DHは、シートSの厚さの寸法の3倍以下であることが好ましい。高さ寸法DHが3倍以下であれば、凸部511がシートSを貫通することを抑制できる。高さ寸法DHは、たとえば300μm程度である。
【0104】
複数の凸部511の各々の形状は特に限定されないが、たとえば、略四角錐状であることが好ましい。また、複数の凸部511は、超音波ホーン5とアンビル6との対向方向から見て、一方向およびこれに直交する方向に沿って並ぶように位置している。これにより、溶着部12の凸部123Aが、格子状に形成される。
【0105】
複数の凸部511の頂点同士の離隔距離の寸法DWは、0.4mm以上2.0mm以下であることが好ましい。離隔距離の寸法DWが0.4mm以上であれば、シートSの樹脂成分がより流れこみやすくなる。離隔距離の寸法DWが2.0mm以下であれば、凸部511同士の間に流れ込んだ樹脂成分が凹凸形状51から漏出することを抑制できる。
【0106】
注出部接合工程S4においては、筒状体10に注出部20が接合される。本実施形態において、注出部20は、いわゆるインサート成形により筒状体10に接合される。図13に示すように、注出部接合工程S4は、筒状体配置工程S41と、射出成形工程S42とを有している。
【0107】
図17は、注出部接合工程において、インサート成形により注出部を筒状体に接合するときの金型および筒状体を示す模式的な断面図である。図17に示すように、筒状体配置工程S41においては、金型7の内部に筒状体10が配置される。具体的には、筒状体10の一方端部13が少なくとも金型7の内部に配置される。射出成形工程S42においては、内部に筒状体10の一方端部13が配置された状態で金型7内において筒状体10(の一方端部13)上に溶融した樹脂組成物を充填することで、筒状体10上に注出部20を射出成形する。
【0108】
なお、注出部接合工程S4においては、上記のインサート成形に代えて、いわゆる圧縮成型により注出部20が筒状体10に接合されてもよい。図18は、圧縮成形による注出部接合工程を示すフロー図である。図19は、圧縮成形により注出部を筒状体に接合するときの金型、成型材料および筒状体を示す模式的な断面図である。
【0109】
図18および図19に示すように、圧縮成形による注出部接合工程S4は、筒状体配置工程S41a、成形材料配置工程S42aおよび圧縮成形工程S43aを有する。筒状体配置工程S41aにおいては、第1の金型71a上に筒状体10が配置される。成形材料配置工程S42aにおいては、第1の金型71a上に樹脂組成物からなる成形材料Mが配置される。圧縮成形工程S43aにおいては、第1の金型71aと、成形材料Mを介して第1の金型71aと対向するように配置された第2の金型72aとにより成形材料Mを圧縮加工することで、筒状体10(の一方端部13)上に注出部20が圧縮成形される。
【0110】
さらに、注出部接合工程S4においては、上記のインサート成形および圧縮成形に代えて、超音波溶着により注出部20が筒状体に接合されてもよい。図20は、超音波溶着による注出部接合工程を示すフロー図である。図20に示すように、注出部20を接合する工程S4は、成形された注出部20を準備する工程S41bと、準備された注出部20を、筒状体10と超音波により溶着させる工程S42bとを有する。注出部20の成形方法、は、射出成形または圧縮成形など、従来公知の方法を採用できる。
【0111】
図21は、超音波溶着により注出部を筒状体に接合するときに用いる装置を示す模式的な断面図である。図21に示すように、注出部超音波溶着工程S42bにおいては、注出部用アンビル81を筒状体10の内部に配置し、かつ、注出部用アンビル81の上部に注出部20を載置する。注出部用アンビル81の上部は、注出口部21の内面および肩部22の内面に沿う外形を有している。このため、注出部用アンビル81上の注出部20は容易に位置決めされる。また、筒状体10の一方端部13の径方向内側に、肩部22の接合端部221が少なくとも位置するように、注出部用アンビル81が配置される。筒状体10の径方向から見て、一方端部13は接合端部221より上方に突出している。
【0112】
そして、筒状体10の一方端部13側から、筒状体10の軸方向に沿って、一方端部13に注出部用超音波ホーン82を押し当てる。このとき、一方端部13は、筒状体10の径方向内側に向かって折り曲がる。折り曲がった一方端部13は、接合端部221を含む肩部22の一部に沿うように位置する。肩部22および肩部22の一部に沿って位置した一方端部13は、上述のように配置された注出部用アンビル81と、一方端部13を折り曲げた注出部用超音波ホーン82とによって挟み込まれる。この状態で、注出部20の肩部22と一方端部13とが注出部用超音波ホーン82により互いに超音波溶着される。
【0113】
端部接合工程S5においては、筒状体10の軸方向に直交する方向において互いに対向する一対のシートS同士を、他方端部14にて溶着させる。このとき、一対のシートSは、互いに超音波溶着させることが好ましい。このようにして、本実施形態に係るチューブ容器1が製造される。なお、内容物入りチューブ容器を製造する場合は、たとえば、注出部接合工程S4の後、端部接合工程S5の前に、筒状体10の内部に他方端部14側から内容物を充填すればよい。
【0114】
本開示の一実施形態に係るチューブ容器1は、リサイクル性に優れる。よって、本開示の一実施形態に係るチューブ容器1は、SDGs(持続可能な開発目標)が求める持続循環経済に沿うものであり、プラスチックごみの削減に大きく貢献することができる。
【実施例0115】
以下、本開示の一実施形態に係る筒状体10を構成するシートSについて、印刷層または透明保護層の密着性、耐水性、およびリサイクル性について評価した各実験例とその比較例を説明する。これにより、本開示をさらに詳述する。なお、本開示のチューブ容器は、下記の実験例に係るシートから構成された筒状体を有するチューブ容器に限定されるものではない。
【0116】
<シートおよびそのサンプルの作製>
[実験例1]
第1基材層として、バージン原料から製造されたホモポリエチレンテレフタレートからなる、厚さ38μmの二軸延伸フィルム(東洋紡社製「東洋紡エステル(登録商標)フィルムE5100」)を準備した。接合層用材料として、バインダー樹脂と、硬化剤とを含む樹脂組成物を準備した。具体的には、バインダー樹脂としてカルボキシル基を有するポリエステル樹脂水分散液(三菱ケミカル社製、「ニチゴーポリエスター(登録商標)WR-961」)、硬化剤としてカルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル株式会社製、「カルボジライトE-03A」)を用いて、これらのバインダー樹脂と硬化剤とが固形分量比(重量比)で100:10となるように混合することで、上記樹脂組成物を準備した。そして、バーコータを用いて、上記樹脂組成物を第1基材層上にベタ状に印刷した後、100℃で20秒間乾燥させた。第1基材層上に形成された接合層の厚さは約1μmであった。
【0117】
次に、接合層上に印刷層を形成した。具体的には、UV硬化型インキ(T&K TOKA社製、「AF藍」)を、UVフレキソ印刷機を用いて接合層上にベタ状に印刷した後、UV照射により上記インキを硬化させることで、印刷層を形成した。接合層上に形成された印刷層の厚さは約1μmであった。
【0118】
以上のようにして、実験例1のシートを作製した。実験例1のシートを10mm×10mmに細断することで、複数のサンプルを作製した。
【0119】
[実験例2]
接合層用材料としての樹脂組成物を、バインダー樹脂と硬化剤とが固形分量比(重量比)で100:20となるように混合することで準備したこと以外は、実験例1と同様の方法により、実験例2のシートおよびそのサンプルを作製した。
【0120】
[実験例3]
接合層用材料としての樹脂組成物を、バインダー樹脂と硬化剤とが固形分量比(重量比)で100:30となるように混合することで準備したこと以外は、実験例1と同様の方法により、実験例3のシートおよびそのサンプルを作製した。
【0121】
[実験例4]
印刷層上にさらに透明保護層を形成したこと以外は、実験例2と同様の方法により、実験例4のシートおよびそのサンプルを作製した。具体的には、いわゆるメジウムインキ(着色剤を含まないインキ)である、UV硬化型樹脂からなるワニス(T&K TOKA社製、「FTVニス」)を、UVフレキソ印刷機を用いて印刷層上にさらにベタ状に印刷した後、UV照射により上記メジウムインキを硬化させることで、印刷層を形成した。
【0122】
[実験例5]
接合層用材料としての樹脂組成物を、バインダー樹脂と硬化剤とが固形分量比(重量比)で100:0となるように混合することで準備したこと以外は、実験例1と同様の方法により、実験例5のシートおよびそのサンプルを作製した。すなわち、実験例5においては、バインダー樹脂のみからなる樹脂組成物を、接合用材料とした。
【0123】
[実験例6]
接合層用材料としての樹脂組成物を、硬化剤として、エポキシ系硬化剤(大日精化工業社製、「ハイドリックEP硬化剤」)を用いたこと、および、バインダー樹脂と硬化剤とが固形分量比(重量比)で100:3となるように混合することで準備したこと以外は、実験例1と同様の方法により、実験例6のシートおよびそのサンプルを作製した。
【0124】
[実験例7]
接合層用材料としての樹脂組成物を、バインダー樹脂と硬化剤とが固形分量比(重量比)で100:5となるように混合することで準備したこと以外、実験例6と同様の方法により、実験例7のシートおよびそのサンプルを作製した。
【0125】
[実験例8]
印刷層上にさらに透明保護層を形成したこと以外は、実験例6と同様の方法により、実験例8のシートおよびそのサンプルを作製した。具体的には、いわゆるメジウムインキ(着色剤を含まないインキ)である、UV硬化型樹脂からなるワニス(T&K TOKA社製、「FTVニス」)を、UVフレキソ印刷機を用いて印刷層上にさらにベタ状に印刷した後、UV照射により上記メジウムインキを硬化させることで、透明保護層を形成した。
【0126】
[実験例9]
印刷層上にさらに第2の接着剤層および透明保護層を形成したこと以外は、実験例6と同様の方法により、実験例9のシートおよびそのサンプルを作製した。具体的には、接着剤層としてUV硬化型接着剤(T&K TOKA社製、「CF-Lo」)を、フレキソコータを用いて印刷層上にさらにベタ状に印刷した。そして、印刷層上に形成した上記接着剤上に、厚さ15μmの熱収縮ポリプロピレン樹脂フィルムを貼り合わせた後、UV照射により上記接着剤を硬化させることで、第2の接着剤層および透明保護層を形成した。
【0127】
[実験例10]
バインダー樹脂としてポリエステル樹脂水分散液(三菱ケミカル社製、「ニチゴ-ポリエスター(登録商標)WR-901S20WO」)を用いたこと以外は、実験例5と同様の方法により、実験例10のシートおよびそのサンプルを作製した。すなわち、実験例10においては、バインダー樹脂のみからなる樹脂組成物を、接合用材料とした。
【0128】
[実験例11]
バインダー樹脂としてポリエステル樹脂水分散液(三菱ケミカル社製、「ニチゴ-ポリエスター(登録商標)WR-905S20WO」)を用いたこと以外は、実験例5と同様の方法により、実験例10のシートおよびそのサンプルを作製した。すなわち、実験例11においては、バインダー樹脂のみからなる樹脂組成物を、接合用材料とした。
【0129】
[実験例12]
第1基材層として、バージン原料から製造されたホモポリエチレンテレフタレートからなる、厚さ100μmの二軸延伸フィルム(東洋紡社製「東洋紡エステル(登録商標)フィルムE5100」)を準備した。接合層用材料として、バインダー樹脂と、硬化剤とを含む樹脂組成物を準備した。具体的には、カルボキシル基を有するバインダー樹脂としてポリエステル樹脂水分散液(三菱ケミカル社製、「ニチゴ-ポリエスター(登録商標)WR-961」)、硬化剤としてエポキシ系硬化剤(大日精化工業社製、「ハイドリックEP硬化剤」)を用いて、これらのバインダー樹脂と硬化剤とが固形分量比(重量比)で100:3となるように混合することで、上記樹脂組成物を準備した。そして、水性グラビア印刷機を用いて、上記樹脂組成物を基材上にベタ状に印刷した後、当該樹脂組成物を乾燥させた。第1基材層上に形成された接合層の厚さは約1μmであった。
【0130】
次に、接合層上に印刷層を形成した。具体的には、UV硬化型インキ(T&K TOKA社製、「AF藍」)を、UVフレキソ印刷機を用いて接合層上にベタ状に印刷した後、UV照射により上記インキを硬化させることで、印刷層を形成した。接合層上に形成された印刷層の厚さは約1μmであった。
【0131】
次に、印刷層上にさらに透明保護層を形成した。具体的には、いわゆるメジウムインキ(着色剤を含まないインキ)である、UV硬化型樹脂からなるワニス(T&K TOKA社製、「FTVニス」)を、UVフレキソ印刷機を用いて印刷層上にさらにベタ状に印刷した後、UV照射により上記メジウムインキを硬化させることで、透明保護層を形成した。
【0132】
以上のようにして、実験例12のシートを作製した。また、実験例12のシートを10mm×10mmに細断することで、そのサンプルを作製した。
【0133】
[実験例13]
シートがバリア層および第2基材層をさらに含むこと以外は、実験例12と同様の方法により、実験例13のシートおよびそのサンプルを作製した。具体的には、第1基材層に相当する、バージン原料から製造されたホモポリエチレンテレフタレートからなる厚さ100μmの二軸延伸フィルム(東洋紡社製「東洋紡エステル(登録商標)フィルムE5100」)上に、バリア層および第2基材層に相当する、厚さ12μmのシリカ蒸着PETフィルムをドライラミネートにより積層(すなわち、接着剤層を介して積層)した。なお、上記シリカ蒸着PETは、バリア層側が第1基材層を向くように第1基材層に積層した。
【0134】
[実験例14]
バリア層および第2基材層に相当するフィルムとして、厚さ12μmのアルミニウム蒸着PETフィルムをドライラミネートしたこと以外は、実験例13と同様の方法により、実験例14のシートおよびそのサンプルを作製した。
【0135】
[実験例15]
印刷層上にさらに第2の接着剤層を形成し、第2の接着剤層の上に透明保護層を形成し、さらに、透明保護層として熱収縮ポリプロピレン樹脂フィルムを用いたこと以外は、実験例13と同様の方法により、実験例15のシートおよびそのサンプルを作製した。具体的には、UV硬化型接着剤(T&K TOKA社製、「CF-Lo」)を、UVフレキソ印刷機を用いて印刷層上にさらにベタ状に印刷した。そして、印刷層上に形成した上記接着剤上に、厚さ15μmの熱収縮ポリプロピレン樹脂フィルムを貼り合わせた後、UV照射により上記接着剤を硬化させることで、第2の接着剤層および透明保護層を形成した。
【0136】
[実験例16]
第1基材層に相当するフィルムとして、バージン原料から製造された非晶性のホモポリエチレンテレフタレートからなる、厚さ100μmの無延伸フィルムを用いたこと以外は、実験例13と同様の方法により、実験例16のシートおよびそのサンプルを作製した。
【0137】
[実験例17]
第1基材層に相当するフィルムとして、バージン原料から製造された非晶性のホモポリエチレンテレフタレートからなる、厚さ150μmの無延伸フィルムを用いたこと以外は、実験例13と同様の方法により、実験例17のシートおよびそのサンプルを作製した。
【0138】
[実験例18]
第1基材層に相当するフィルムとして、バージン原料から製造された非晶性のホモポリエチレンテレフタレートからなる、厚さ100μmの一軸延伸フィルムを用いたこと以外は、実験例13と同様の方法により、実験例18のシートおよびそのサンプルを作製した。
【0139】
[実験例19]
印刷層上にさらに第2の接着剤層を形成し、接着剤層の上に透明保護層を形成し、さらに、透明保護層として熱収縮ポリプロピレン樹脂フィルムを用いたこと以外は、実験例16と同様の方法により、実験例19のシートおよびそのサンプルを作製した。具体的には、UV硬化型接着剤(T&K TOKA社製、「CF-Lo」)を、UVフレキソ印刷機を用いて印刷層上にさらにベタ状に印刷した。そして、印刷層上に形成した上記接着剤上に、厚さ15μmの熱収縮ポリプロピレン樹脂フィルムを貼り合わせた後、UV照射により上記接着剤を硬化させることで、第2の接着剤層および透明保護層を形成した。
【0140】
[比較例1]
透明保護層が非熱収縮PPフィルムであること以外は、実験例9と同様の方法により、比較例1のシートおよびそのサンプルを作製した。具体的には、透明保護層として、接着剤層上に貼り合わせるフィルムとして、厚さ20μmの非熱収縮のポリプロプレン樹脂製のフィルムを用いた。
【0141】
<評価方法>
[印刷層の密着性評価]
実験例1~8、実験例10~14および16~18の各シートのサンプルの印刷層について、接合層による、第1基材層または第2基材層との密着性を評価した。具体的には、各サンプルについて、標準状態(23℃、1気圧、50%RH)で、最外層(印刷層またはワニスからなる透明保護層)の表面に、幅24mmの粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を強く貼り付けた。そして、貼り付けられた粘着テープの一方側の端縁を、他方側の端縁に向かって最外層の表面の面方向に沿う方向に引っ張ることで、粘着テープを引き剥がした。剥離後の粘着テープの表面を目視で観察するとともに、サンプルにおいて印刷層が剥離した箇所の総表面積を測定し、下記の基準で評価した。
【0142】
AA:粘着テープに印刷層由来の付着物が認められず、印刷層の剥離が認められなかった。
A: 粘着テープに印刷層由来の付着物が認められ、印刷層剥離面積率が3%未満であった。
B: 粘着テープに印刷層由来の付着物が認められ、印刷層剥離面積率が3%以上10%未満であった。
C: 粘着テープに印刷層由来の付着物が認められ、印刷層剥離面積率が10%以上であった。
なお、印刷層剥離面積率(%)は、(サンプルにおいて印刷層が剥離した箇所の総表面積/サンプルを積層方向から見たときのサンプルの面積)×100、の式で求められる。
【0143】
[印刷層の第1の耐水性評価]
実験例1~8、実験例10~14および16~18の各シートのサンプルの印刷層について、印刷層の耐水性を評価した。具体的には、まず、各サンプルを常温(約23℃)の水に24時間浸漬させた。その後、各サンプルを水中から取り出し、標準状態(23℃、1気圧、50%RH)で10分間静置した。さらにその後、印刷層の密着性評価と同様に、このサンプルに粘着テープを貼り付けて、粘着テープを引き剥がした。そして、印刷層の密着性評価と同様の観察および評価基準にて、各サンプルを評価した。
【0144】
[印刷層の第2の耐水性評価]
実験例1~8、実験例10~14および16~18の各シートのサンプルの印刷層について、耐水性を上記の第1の耐水性評価とは異なる手法で評価した。具体的には、各サンプルを水中から取り出した後の静置の時間を1分間に変更したこと以外は、印刷層の第1の耐水性評価と同様にして、各サンプルを評価した。
【0145】
[透明保護層の密着性評価]
実験例9、15、19および比較例1の各シートのサンプルの透明保護層について、第2の接着剤層による印刷層との密着性を評価した。具体的には、各サンプルについて、標準状態(23℃、1気圧、50%RH)で、透明保護層の表面に、幅24mmの粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を強く貼り付けた。そして、貼り付けられた粘着テープの一方側の端縁を、他方側の端縁に向かって透明保護層の表面の面方向に沿う方向に引っ張ることで、粘着テープを引き剥がした。剥離後、サンプルの表面を目視で観察するとともに、サンプルにおいて透明保護層が印刷層に対して浮き上がった箇所(透明保護層と印刷層との間に空気の介在が認められた箇所)の総表面積を測定し、下記の基準で評価した。
【0146】
AA:印刷層から透明保護層の浮き上がりが認められなかった。
A: 印刷層から透明保護層の浮き上がりが認められ、透明保護層浮上面積率が3%未満であった。
B: 印刷層から透明保護層の浮き上がりが認められ、透明保護層浮上面積率が3%以上であった。
なお、透明保護層浮上面積率(%)は、(サンプルにおいて透明保護層が印刷層から浮き上がった箇所の総表面積/サンプルを積層方向から見たときのサンプルの面積)×100、の式で求められる。
【0147】
[透明保護層の第1の耐水性評価]
実験例9、15、19および比較例1の各シートのサンプルの透明保護層について、透明保護層の耐水性を評価した。具体的には、まず、各サンプルを常温(約23℃)の水に24時間浸漬させた。その後、各サンプルを水中から取り出し、標準状態(23℃、1気圧、50%RH)で10分間静置した。さらにその後、透明保護層の密着性評価と同様に、このサンプルに粘着テープを貼り付けて、粘着テープを引き剥がした。そして、透明保護層の密着性評価と同様の観察および評価基準にて、各サンプルを評価した。
【0148】
[透明保護層の第2の耐水性評価]
実験例9、15、19および比較例1の各シートのサンプルの透明保護層について、耐水性を上記の第1の耐水性評価とは異なる手法で評価した。具体的には、各サンプルを水中から取り出した後の静置の時間を1分間に変更したこと以外は、透明保護層の第1の耐水性評価と同様にして、各サンプルを評価した。
【0149】
[アルカリ脱離性評価]
実験例1~9、12~19および比較例1の各シートのサンプルについて、印刷層のアルカリ脱離性を評価した。具体的には、各サンプルを85℃のNaOH水溶液(NaOH濃度が1.5重量%)に浸漬させて、ホットスターラーを用いて、600rpmで15分間攪拌させた。攪拌中においては、サンプルの表面に印刷層が認められるか否かを目視により観察した。その後、NaOH水溶液からサンプルを取り出し、標準状態で5分間静置させた後に、目視により再びサンプルを観察した。これらの観察結果を下記の基準で評価した。
【0150】
AA:攪拌開始からの経過時間が10分以内の時点で、サンプルの表面に印刷層が認められなかった。
A: 攪拌開始からの経過時間が10分超から15分未満の時点、または、サンプルをNaOH水溶液から取り出した後において、サンプルの表面に印刷層が認められなかった。
B: サンプルをNaOH水溶液から取り出した後においてサンプルの表面に印刷層が認められた。
【0151】
[温水脱離性評価]
実験例10および11の各シートのサンプルについて、印刷層の温水脱離性を評価した。具体的には、NaOH水溶液を温水に変更したこと以外は上記のアルカリ脱離性評価と同様にして、印刷層の脱離性を評価した。
【0152】
上述の各サンプルについて、各評価の結果を下記表1~5に示す。
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
上記表1~5に示すように、実験例1~19および比較例1に係るシートは、ポリエステル系樹脂を主成分として含む第1基材層と、積層方向において第1基材層の一方側に配置された印刷層と、印刷層の、第1基材層側の面上に設けられた接合層とを含んでいる。そしてさらに、実験例1~19に係るシートは、比較例1に係るシートとは異なり、アルカリ性溶液および温水の少なくとも一方の液体に浸漬されることで、印刷層が第1基材層から分離するように、接合層が上記液体に溶解可能に構成されている(アルカリ脱離性評価および温水脱離性評価を参照)。
【0158】
このため、実験例1~19に係るシートのいずれか一枚を、第1基材層を径方向において最も中心側に位置させつつ、湾曲または屈曲させて、シートの面方向における第1の側端部と、該第1の側端部の反対に位置するシートの第2の側端部とを、シートの厚さ方向に互いに重ね合わせて溶着させることで形成された帯状の溶着部を有する、筒状体と、筒状体の軸方向における一方端部に接合され、ポリエステル系樹脂を主成分として含む樹脂組成物からなる注出部とを備えるチューブ容器は、アルカリ性溶液または温水に浸漬させることで、印刷層と、ポリエステル系樹脂との分離を容易に行える。このため、上記のチューブ容器は、リサイクル性に優れる。
【0159】
上記表1~5に示すように、実験例16~19に係るシートは、第1基材層が、無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにより構成されている。これらのシートは、第1基材層が二軸延伸フィルムにより構成されている場合と比較して、上記液体に浸漬させたときの、印刷層の分離性がより向上している。これらのシートは、上記液体に浸漬させたときに、第1基材層が熱によって収縮したことによって生じる歪みが比較的大きくなり、上記液体が接合層に浸透しやすくなったものと考えられる。よって、実験例16~19に係るシートを用いて筒状体が形成されたチューブ容器は、リサイクル性がより一層向上する。
【0160】
さらに実験例16~19に係るシートは、第1基材層が、無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにより構成されるとともに、第2基材層が、二軸延伸フィルムにより構成されている。これらのシートは、上記液体に浸漬させたときに、第2基材層と比較して第1基材層が熱によってより大きく収縮するため、シートに生じる歪みがより一層大きくなり、上記液体が接合層に浸透しやすくなったものと考えられる。よって、実験例16~19に係るシートを用いて筒状体が形成されたチューブ容器は、リサイクル性がより一層向上する。
【0161】
実験例1~4、6~9および12~19に係るシートは、接合層が、ポリエステル系樹脂であるバインダー剤と、カルボジイミド系硬化剤、アジリジン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、およびエポキシ系硬化剤からなる群より選択された少なくとも1つを含む硬化剤とを、含む樹脂組成物からなる。これらのシートは、接合層に硬化剤が添加されていない場合と比較して、耐水性が向上している(印刷層の第2の耐水性評価または透明保護層の第2の耐水性評価を参照)。よって、実験例1~4、6~9および12~19に係るシートを用いて筒状体が形成されたチューブ容器は、耐水性がより向上する。
【0162】
実験例6~9および12~19に係るシートは、接合層が、エポキシ硬化剤を含む樹脂組成物からなる。これらのシートは、接合層が、硬化剤としてカルボジイミド系硬化剤、アジリジン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、または、オキサゾリン系硬化剤を含む樹脂組成物からなる場合と比較して、耐水性がより向上している(印刷層の第2の耐水性評価または透明保護層の第2の耐水性評価を参照)。よって、実験例6~9および12~19に係るシートを用いて筒状体が形成されたチューブ容器は、耐水性がより一層向上する。
【0163】
実験例9、15、19に係るシートは、透明保護層が、熱収縮性樹脂フィルムからなる。これらのシートは、透明保護層が樹脂フィルムからなる場合であっても、上記液体に浸漬させたときに、印刷層が第1基材層から分離するように接合層が上記液体に溶解可能に構成されている(アルカリ脱離性評価を参照)。透明保護層が熱収縮性樹脂であれば、上記シートを上記液体に浸漬させたときに、上記液体の熱により透明保護層が収縮して歪みが生じるため、透明保護層と印刷層との間に隙間が生じ、上記液体が当該隙間を介して印刷層および接合層に浸透しやすくなるものと考えられる。よって、実験例9,15,19に係るシートを用いて筒状体が形成されたチューブ容器は、良好なリサイクル性を維持しつつ、樹脂フィルムからなる透明保護層によって印刷層の損傷を効果的に抑制できる。
【0164】
なお、実験例16~19に係るシートは、バリア層を含んでいるが、上記液体への浸漬によりバリア層は第1基材層および第2基材層から分離して、印刷層と同様に上記液体中に拡散する。このため、実験例16~19に係るシートを用いて筒状体が形成されたチューブ容器において、バリア層の存在によるリサイクル性の低下は抑制される。
【0165】
[付記]
以上のように、本開示の実施形態は以下のような開示を含む。
【0166】
<構成1>
一枚のシートを湾曲または屈曲させて、前記シートの面方向における第1の側端部と、該第1の側端部の反対に位置する前記シートの第2の側端部とを、前記シートの厚さ方向に互いに重ね合わせて溶着させることで形成された帯状の溶着部を有する、筒状体と、
前記筒状体の軸方向における一方端部に接合され、ポリエステル系樹脂を主成分として含む樹脂組成物からなる注出部とを備え、
前記シートは、
前記筒状体の径方向において最も中心側に位置し、ポリエステル系樹脂を主成分として含む第1基材層と、
前記第1基材層から見て前記径方向の外側に配置された印刷層と、
前記印刷層の前記中心側の面上に設けられた接合層とを含み、
前記シートは、アルカリ性溶液および温水の少なくとも一方の液体に浸漬されることで、前記印刷層が前記第1基材層から分離するように、前記接合層が前記液体に溶解可能に構成されている、チューブ容器。
【0167】
<構成2>
前記第1基材層は、無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにより構成されている、構成1に記載のチューブ容器。
【0168】
<構成3>
前記筒状体は、前記シートの前記面方向において前記第1の側端部と前記第2の側端部との間に位置するシート基部をさらに有し、
前記シート基部は、前記シートにおいて前記第2の側端部と連続している部分である、第1基端部を有し、
前記溶着部は、前記筒状体の周方向における前記第1の側端部の先端縁であって、前記第1基端部と接合している、第1先端縁を有し、
前記第1先端縁は、前記周方向に沿う方向から見て、前記第1基端部の厚み内に位置している、構成1または構成2に記載のチューブ容器。
【0169】
<構成4>
前記接合層は、バインダー樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物からなり、
前記バインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂であり、
前記硬化剤は、カルボジイミド系硬化剤、アジリジン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、およびエポキシ系硬化剤からなる群より選択された少なくとも1つを含む、構成1から構成3のいずれか1つに記載のチューブ容器。
【0170】
<構成5>
前記シートは、前記第1基材層の前記径方向外側、かつ、前記印刷層より前記中心側に位置する、第2基材層をさらに含み、
前記第2基材層は、ポリエステル系樹脂を主成分として含み、
前記第2基材層は、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、または、二軸延伸フィルムにより構成されている、構成1から構成4のいずれか1つに記載のチューブ容器。
【0171】
<構成6>
前記第2基材層は、二軸延伸フィルムにより構成されている、構成5に記載のチューブ容器。
【0172】
<構成7>
前記第1基材層は、無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムにより構成され、
前記第2基材層は、二軸延伸フィルムにより構成されている、構成5に記載のチューブ容器。
【0173】
<構成8>
前記シートは、前記径方向の最も外側に位置する透明保護層をさらに含む、構成1から構成7のいずれか1つに記載のチューブ容器。
【0174】
<構成9>
前記透明保護層は、熱収縮性樹脂フィルムからなる、構成8に記載のチューブ容器。
【0175】
<構成10>
前記熱収縮性樹脂フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む、構成9に記載のチューブ容器。
【0176】
<構成11>
前記透明保護層は、ワニスからなる、構成8に記載のチューブ容器。
【0177】
<構成12>
前記シートは、前記筒状体の前記溶着部において互いに重なり合う複数の前記シートのうち前記中心側に位置する部分において、前記印刷層を含んでいない、構成1から構成11のいずれか1つに記載のチューブ容器。
【0178】
上記の実施形態においては、互いに組み合わせ可能な構成を適宜組み合わせてもよい。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0179】
1 チューブ容器、10,10a 筒状体、11 シート基部、111 第1基端部、112 第2基端部、113 延在部、12 溶着部、121 第1先端縁、122 第2先端縁、123,123a 溶着部外周面、123A 凸部、124,124a 溶着部内周面、124A 凸部、125 凹凸領域、13 一方端部、14 他方端部、20 注出部、21 注出口部、22 肩部、221 接合端部、AC 接合層、AL 接着剤層、AL2 第2の接着剤層、AL3 第3の接着剤層、B 境界面、BL バリア層、S シート、SB 境界部、SE1 第1の側端部、SE2 第2の側端部、PL 印刷層、SL1 第1基材層、SL2 第2基材層、SL3 第3基材層、TL 透明保護層、5 超音波ホーン、51 凹凸形状、511 凸部、6 アンビル、7 金型、71a 第1の金型、72a 第2の金型、81 注出部用アンビル、82 注出部用超音波ホーン、M 成形材料。
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