(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043737
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】蓄電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240326BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240326BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240326BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240326BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
H01M10/0585
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148895
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】597170704
【氏名又は名称】坂本 義範
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義範
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029HJ15
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050GA03
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】単位体積当たりの放電容量を極めて大きくすることができる蓄電池の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の蓄電池の製造方法は、蓄電池の材料(正極層2、電解質層3または負極層4のいずれか、正極層2、電解質層3および負極層4を含むセル1、或いは正極層2、電解質層3および負極層4を含むセル1の積層体5)を超高圧にて圧縮する工程を有している。これにより、単位体積当たりの放電容量が極めて大きい蓄電池を作製することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池の材料を超高圧にて圧縮する工程を有することを特徴とする蓄電池の製造方法。
【請求項2】
超高圧にて圧縮される前記蓄電池の材料は、正極層、電解質層または負極層のいずれか、前記正極層、前記電解質層および前記負極層を含むセル、或いは前記正極層、前記電解質層および前記負極層を含むセルの積層体である請求項1に記載の蓄電池の製造方法。
【請求項3】
前記超高圧は2GPa以上である請求項1または2に記載の蓄電池の製造方法。
【請求項4】
前記蓄電池の材料を超高圧にて圧縮する工程は、前記蓄電池の材料を、厚さ方向、幅方向、厚さ方向および幅方向、或いは全方位方向より超高圧にて圧縮するものである請求項1に記載の蓄電池の製造方法。
【請求項5】
前記蓄電池は全固体電池であり、前記電解質層は固体電解質層である請求項1に記載の蓄電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の動力源、家庭用蓄電池または各種機器のバッテリーなどに様々な蓄電池が多用されている。これら蓄電池は放電容量が大きい程、長時間使用できるため、放電容量を大きくする技術が種々提案されている。特に単位体積当たりの放電容量を大きくすることができれば蓄電池をコンパクト化できるため、そのような蓄電池の製造方法が嘱望されている。
【0003】
例えば、そのような蓄電池の製造方法として、特開2020-64710号公報の全固体電池の製造方法がある。この全固体電池の製造方法は、正極層、固体電解質層および負極層からなる複数のセルとこの複数のセルが直列に積層され積層方向の両端部に置かれる集電板とからなる積層体が型開き状態の金型に投入される段階と、金型を閉じて前記積層体を加圧する段階と、積層体の加圧状態で樹脂注入口から樹脂を圧入し樹脂を固化することにより電池ユニットを作成する段階を有する製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、さらに単位体積当たりの放電容量を大きくすることができる蓄電池の製造方法を想起し本発明をなしたものであり、すなわち、本発明の課題は、単位体積当たりの放電容量を極めて大きくすることができる蓄電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するものは、蓄電池の材料を超高圧にて圧縮する工程を有することを特徴とする蓄電池の製造方法である(請求項1)。
【0007】
超高圧にて圧縮される前記蓄電池の材料は、正極層、電解質層または負極層のいずれか、前記正極層、前記電解質層および前記負極層を含むセル、或いは前記正極層、前記電解質層および前記負極層を含むセルの積層体であることが好ましい(請求項2)。前記超高圧は2GPa以上であることが好ましい(請求項3)。前記蓄電池の材料を超高圧にて圧縮する工程は、前記蓄電池の材料を、厚さ方向、幅方向、厚さ方向および幅方向、或いは全方位方向より超高圧にて圧縮するものであることが好ましい(請求項4)。前記蓄電池は全固体電池であり、前記電解質層は固体電解質層であることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した蓄電池の製造方法によれば、単位体積当たりの放電容量が極めて大きい蓄電池を作製することができる。
請求項2に記載した蓄電池の製造方法によれば、蓄電池の種類に応じて、単位体積当たりの放電容量が極めて大きい蓄電池をより作製することができる。
請求項3に記載した蓄電池の製造方法によれば、単位体積当たりの放電容量が極めて大きい蓄電池をより作製することができる。
請求項4に記載した蓄電池の製造方法によれば、蓄電池の種類に応じて、単位体積当たりの放電容量が極めて大きい蓄電池をより作製することができる。
請求項5に記載した蓄電池の製造方法によれば、単位体積当たりの放電容量が極めて大きい全固体電池を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の蓄電池の製造方法の一実施例を説明するための説明図である。
【
図2】
図1に示した蓄電池の製造方法の効果を説明するための説明図である。
【
図3】本発明の蓄電池の製造方法の他の実施例を説明するための説明図である。
【
図4】
図3に示した蓄電池の製造方法の効果を説明するための説明図である。
【
図5】本発明の蓄電池の製造方法の他の実施例を説明するための説明図である。
【
図6】
図5に示した蓄電池の製造方法の効果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、蓄電池の材料(正極層2、電解質層3または負極層4のいずれか、正極層2、電解質層3および負極層4を含むセル1、或いは正極層2、電解質層3および負極層4を含むセル1の積層体5)を超高圧にて圧縮する工程を有することで、単位体積当たりの放電容量を極めて大きくすることができる蓄電池の製造方法を実現した。
【実施例0011】
本発明の蓄電池の製造方法を
図1または
図2に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の蓄電池の製造方法は、蓄電池の材料(正極層2、電解質層3または負極層4)をそれぞれ超高圧にて圧縮する工程を有している。以下、詳述する。
【0012】
この実施例で製造される蓄電池は、全固体リチウムイオン二次電池(全固体電池)である。ただし、本発明における蓄電池は全固体電池に限定されるものではなく、液体電解質層を有する蓄電池でもよい。また、全固体電池は、全固体リチウムイオン二次電池に限定されるものではなく、例えば、マグネシウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池等どのような全固体電池であってもよい。なお、この実施例で製造される蓄電池は全固体電池であるため、電解質層は固体電解質である。
【0013】
この実施例で製造される蓄電池は、例えば電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)またはプラグインハイブリッド自動車(PHV)等の動力源、家庭用蓄電池または各種機器のバッテリー(パソコンや携帯端末等のポータブル電源)等として広く使用される。
【0014】
正極層2は正極活物質を含む層であり、正極活物質としては例えばLiCoO2、LiNiO2等の複合酸化物、Li2NiMn3O8やLiMn2O4等の複合酸化物、LiFePO4等の複合化合物等が使用できるが、正極層2を形成できるものであればどのようなものでもよい。
【0015】
電解質層3は固体電解質層を含む層であり、固体電解質としては例えば硫化物系固体電解質および酸化物系固体電解質が使用できるが、電解質層3を形成できるものであればどのようなものでもよい。
【0016】
負極層4は負極活物質を含む層であり、負極活物質としては例えばグラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンブラック等の炭素系の負極活物質やケイ素(Si)またはスズ(Sn)を構成元素とする負極活物質が使用できるが、負極層4を形成できるものであればどのようなものでもよい。
【0017】
なお、蓄電池の材料としては、正極層2、電解質層3または負極層4の他、正極集電体(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、金、白金、チタン、亜鉛、ステンレス鋼等の金属材)、負極集電体(例えば銅箔、銅合金、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、亜鉛)やセパレータなどの他の構成要素が含まれるものであってもよい。
【0018】
蓄電池の材料(正極層2、電解質層3または負極層4)をそれぞれ超高圧にて圧縮する装置としては、例えば、ピストンシリンダー型圧力装置、複数のアンビルにより圧縮する立方体型圧力装置等、蓄電池の形態に応じてどうような装置であってもよく、超高圧プレスの方法としては、例えば一軸プレス、冷間静水等方圧プレス、機械式プレス、ガス加圧式プレス等どのような方法によってもよい。
【0019】
なお、本願で言う「超高圧」とは、少なくとも2GPa以上であり、例えば2~1000GPaであり、1000GP以上であってもよい。このような超高圧プレスが実行されることで、
図2に示すように蓄電池の各材料がそれぞれ圧縮され単位体積当たりの放電容量を極めて大きくすることができる。このように、本願発明者は、電気は極めて微小な原子の世界の存在であり、超高圧で潰された蓄電池の材料は電気に比して極めて大きな物質の世界の存在であるため、蓄電池の材料を超高圧で圧縮した方が多くの電力を蓄電池に蓄えることができると考え本発明を想起したものである。また、本願で言う「超高圧で圧縮する」とは最初から超高圧の圧力で圧縮する方法の他、段階的に圧力を増加して超高圧に達する方法も含まれる概念である。
【0020】
また、蓄電池の材料を超高圧にて圧縮する工程は、蓄電池の材料を、厚さ方向、幅方向、厚さ方向および幅方向、或いは全方位方向より超高圧にて圧縮するものが含まれる。
【0021】
この実施例の蓄電池の製造方法は、
図1に示すように、蓄電池の材料(正極層2、電解質層3または負極層4)をそれぞれ個別に超高圧で圧縮するものであるが、厚さ方向および幅方向から圧縮して
図2に示したように、蓄電池の材料(正極層2、電解質層3または負極層4)をそれぞれ圧縮し、単位体積当たりの放電容量を大きくしたものである。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、厚さ方向のみ、幅方向のみ、或いは全方位方向より圧縮する方法も発明の範疇に包含される。また、厚さ方向、幅方向、或いは全方位方向からの圧縮は同時に行われる方法の他、別々に行われる方法も本発明の範疇に包含される。