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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043738
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】エンジンの吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/19 20160101AFI20240326BHJP
   F02M 26/22 20160101ALI20240326BHJP
   F02M 26/35 20160101ALI20240326BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F02M26/19 331
F02M26/22
F02M26/35 B
F02M35/10 311E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148896
(22)【出願日】2022-09-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトの掲載日:令和4年6月29日 (2)ウェブサイトのアドレス:https://www.mazda.co.jp/cars/cx-60/grade/
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】小園 智哉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 高史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 保秀
(72)【発明者】
【氏名】神本 雅章
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062AA01
3G062ED04
3G062ED08
3G062ED09
3G062ED15
(57)【要約】
【課題】吸気通路に煤等のデポジットが堆積するのを抑制できるエンジンの吸気装置を提供する。
【解決手段】吸気通路は、上流側通路(110)と、下流側通路(31Y)と、上流側通路(110)の下流端110と下流側通路(31Y)の上流端とを屈曲しつつ接続する屈曲部31Xとを備える。下流側通路(31Y)は、所定の第1方向に沿って直線状に延びる形状を有する。EGR通路(51)の吸気側接続部152は、前記第1方向に沿って延びる形状を有し、そのEGRガスの流れ方向の下流端152bが下流側通路31Yにおける吸気の流れ方向の下流側に向かって開口する姿勢で屈曲部31Xに接続されている。前記第1方向に沿って見たときに、吸気側接続部152の下流端152bの開口部152aは下流側通路(31Y)の内側に位置している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒が形成されたエンジン本体と、前記エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、前記エンジン本体から導出された排気ガスが流通する排気通路とを備えるエンジンの吸気装置において、
前記吸気通路に接続される吸気側接続部を含み、前記吸気通路と前記排気通路とを連通して排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気通路に還流するEGR通路を備え、
前記吸気通路は、上流側通路と、当該上流側通路よりも吸気の流れ方向の下流側に配置された下流側通路と、前記上流側通路の下流端と前記下流側通路の上流端とを屈曲しつつ接続する屈曲部とを備え、
前記下流側通路は、所定の第1方向に沿って直線状に延びる形状を有し、
前記吸気側接続部は、前記第1方向に沿って延びる形状を有し、そのEGRガスの流れ方向の下流端が前記下流側通路における吸気の流れ方向の下流側に向かって開口する姿勢で前記屈曲部に接続されており、
前記第1方向に沿って見たときに、前記吸気側接続部の前記下流端の開口部は前記下流側通路の内側に位置している、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの吸気装置において、
前記第1方向に沿って見たときに、前記下流側通路の中心軸は前記吸気側接続部の前記下流端の開口部の内側に位置している、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエンジンの吸気装置において、
前記吸気側接続部は、前記下流端を含んで前記屈曲部の内側空間に突出する突出部を有する、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジンの吸気装置において、
前記突出部は、その外周面が全周にわたって前記屈曲部の内周面から離間する位置に配設されている、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエンジンの吸気装置において、
前記屈曲部は、前記第1方向の一方側に膨出するように湾曲するU字状を呈する、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項6】
請求項1に記載のエンジンの吸気装置において、
前記吸気通路は、吸気を過給する過給機と、当該過給機の吸気の流れ方向の下流側に配置されて吸気を冷却するインタークーラとを備え、
前記屈曲部は、前記インタークーラよりも吸気の流れ方向の下流側に設けられている、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項7】
請求項1に記載のエンジンの吸気装置において、
前記排気通路には、排気ガスに含まれる微粒子を捕集するフィルタが設けられており、
前記EGR通路は、前記排気通路のうち前記フィルタよりも排気ガスの流れ方向の上流側の部分に接続されている、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項8】
請求項1に記載のエンジンの吸気装置において、
前記エンジン本体は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に設けられるエンジンでは、排気ガスが流通する排気通路と吸気が流通する吸気通路とをEGR通路により連通して排気ガスの一部であるEGRガスを吸気通路に還流するEGRが行われることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、EGR通路を有するエンジンであって、吸気通路の途中部にベンチュリ部とこれを囲む環状チャンバとが設けられ、環状チャンバとベンチュリ部の内部とを連通するスリットがベンチュリ部に形成されるとともに、環状チャンバの外周面にベンチュリ部を向く姿勢でEGR通路の下流端部が接続されたエンジンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-83209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成では、環状チャンバの外周面にEGR通路の下流端部がベンチュリ部を向く姿勢つまり環状チャンバおよびベンチュリ部の中心軸を向く姿勢で接続されている。そのため、EGR通路から環状チャンバの内側に流入したEGRガスがベンチュリ部の外周面および環状チャンバの内周面に衝突する。ここで、EGRガスには煤や未燃燃料等が含まれている。従って、特許文献1の構成では、煤等のデポジットがベンチュリ部の外周面および環状チャンバの内周面に付着および堆積して、EGRガスおよび吸気の流れを阻害するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、吸気通路に煤等のデポジットが堆積するのを抑制できるエンジンの吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、気筒が形成されたエンジン本体と、前記エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、前記エンジン本体から導出された排気ガスが流通する排気通路とを備えるエンジンの吸気装置において、前記吸気通路に接続される吸気側接続部を含み、前記吸気通路と前記排気通路とを連通して排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気通路に還流するEGR通路を備え、前記吸気通路は、上流側通路と、当該上流側通路よりも吸気の流れ方向の下流側に配置された下流側通路と、前記上流側通路の下流端と前記下流側通路の上流端とを屈曲しつつ接続する屈曲部とを備え、前記下流側通路は、所定の第1方向に沿って直線状に延びる形状を有し、前記吸気側接続部は、前記第1方向に沿って延びる形状を有し、そのEGRガスの流れ方向の下流端が前記下流側通路における吸気の流れ方向の下流側に向かって開口する姿勢で前記屈曲部に接続されており、前記第1方向に沿って見たときに、前記吸気側接続部の前記下流端の開口部は前記下流側通路の内側に位置している、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、吸気通路における上流側通路と下流側通路との間に屈曲部が設けられるともに、当該屈曲部にEGR通路の下流端部が接続される。詳しくは、吸気通路の下流側通路が第1方向に沿って直線状に延びるように形成されるとともに、EGR通路の下流端部を構成する吸気側接続部が、同じく第1方向に沿って延びる形状とされ、且つ、下流側通路における吸気の流れ方向の下流側に向かって開口する姿勢で屈曲部に接続される。そのため、屈曲部を通過した後、下流側通路を第1方向に沿って直線的に進む吸気に対して、EGRガスをこの吸気の流れに沿うように導入することができる。そのため、吸気側接続部から吸気通路に導入された直後のEGRガスであってデポジットの要因となる煤等の濃度が高いEGRガスが吸気側接続部の開口部付近で滞留するのを抑制できる。しかも、本発明では、第1方向に沿って見たとき吸気側接続部の開口部が下流側通路の内側に位置しているので、下流側通路に導入された煤等の濃度が高いEGRガスが下流側通路の内周面に衝突するのを抑制できる。従って、本発明によれば、EGRガスに含まれる煤等のデポジットが吸気通路の内周面に付着・堆積するのを抑制できる。
【0009】
前記構成において、好ましくは、前記第1方向に沿って見たときに、前記下流側通路の中心軸は前記吸気側接続部の前記下流端の開口部の内側に位置している(請求項2)。
【0010】
この構成によれば、EGRガスを確実に吸気の流れに沿わせることができ、吸気側接続部の開口部付近において煤等の濃度が高いEGRガスが滞留するのを確実に抑制できる。
【0011】
前記構成において、好ましくは、前記吸気側接続部は、前記下流端を含んで前記屈曲部の内側空間に突出する突出部を有する(請求項3)。
【0012】
この構成によれば、EGR通路の吸気側接続部の下流端と屈曲部の内周面とを離間させることができ、煤等の濃度が高いEGRガスが屈曲部の内周面に付着するのを確実に抑制できる。
【0013】
前記構成において、好ましくは、前記突出部は、その外周面が全周にわたって前記屈曲部の内周面から離間する位置に配設されている(請求項4)。
【0014】
この構成によれば、煤等の濃度が高いEGRガスが吸気通路の内周面に付着するのをより確実に抑制できる。
【0015】
前記構成において、好ましくは、前記屈曲部は、前記第1方向の一方側に膨出するように湾曲するU字状を呈する(請求項5)。
【0016】
この構成によれば、吸気通路の上流側通路と下流側通路とを第1方向と直交する方向に近接させることができ、当該方向について吸気通路をコンパクトに構成することができる。
【0017】
前記吸気通路は、吸気を過給する過給機と、当該過給機の吸気の流れ方向の下流側に配置されて吸気を冷却するインタークーラとを備え、前記屈曲部は、前記インタークーラよりも吸気の流れ方向の下流側に設けられていてもよい(請求項6)。
【0018】
過給機およびインタークーラを有するエンジンであってEGRガスがインタークーラよりも下流側の吸気通路に導入されるエンジンでは、インタークーラで吸気が冷却されることに伴ってインタークーラよりも下流側の吸気通路の温度が低くなることで、当該吸気通路でEGRガスに含まれる煤が凝縮水やブローバイガス中に含まれるオイル等と混ざることでデポジットとして堆積しやすくなる。本構成によれば、このようなエンジンにおいて懸念される吸気通路の内周面へのデポジットの付着・堆積を抑制することができる。
【0019】
前記排気通路には、排気ガスに含まれる微粒子を捕集するフィルタが設けられ、前記EGR通路は、前記排気通路のうち前記フィルタよりも排気ガスの流れ方向の上流側の部分に接続されていてもよい(請求項7)。
【0020】
微粒子を捕集するフィルタよりも上流側の排気通路にEGR通路が接続されるエンジンでは、当該EGR通路を通過して吸気通路に還流されるEGRガスに比較的多くの煤等が含まれることになる。本構成によれば、このようなエンジンにおいて懸念される吸気通路内のデポジットの付着・堆積を抑制することができる。
【0021】
前記エンジン本体は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであってもよい(請求項8)。
【0022】
ディーゼルエンジンでは、排気ガスおよびEGRガスの煤等の含有量が比較的多い。本構成によれば、このようなディーゼルエンジンにおいて懸念される吸気通路内のデポジットの付着・堆積を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明のエンジンの吸気装置によれば、吸気通路に煤等のデポジットが堆積するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの概略構成を示したシステム図である。
図2図1に示すエンジンの一部を示した概略平面図である。
図3図1に示すエンジンの一部を示した概略側面図である。
図4図3のIV-IV線における断面の一部を示した概略断面図である。
図5図4のV-V線における吸気系装置の一部を示した断面図である。
図6図5のVI-VI線における断面図である。
図7図6のVII-VII線における断面の一部を示した断面図である。
図8図7のVIII-VIII線における断面の一部を示した断面図である。
図9】吸気通路内でのEGRガスの分布を示した模式図であって、(a)は図6のA-A線断面における図、(b)は図6のB-B線断面における図、(c)は図6のC-C線断面における図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(エンジンの全体構成)
以下、図面に基づいて、本発明に係る吸気装置の一実施形態について図面を用いて説明する。まず、本発明に係る吸気装置が適用されたエンジンEの一実施形態について、その全体構成を図1に基づいて説明する。図1に示すエンジンEは4サイクルエンジンである。エンジンEは、例えば走行用の駆動源として車両に搭載される。エンジンEは、気筒が形成されたエンジン本体1と、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路30と、エンジン本体1から排出される排気ガスが流通する排気通路40と、排気通路40を流通する排気ガスの一部であるEGRガスをそれぞれ吸気通路30に還流させるHP-EGR装置50HおよびLP-EGR装置50Lとを備える。エンジン本体1は、軽油を主成分とする燃料により駆動されるディーゼルエンジンである。また、エンジンEは、ターボ過給エンジンであり、吸気通路30に配置されたコンプレッサ61と排気通路40に配置されたタービン62とを含むターボ過給機60を備える。
【0026】
エンジン本体1は、直列多気筒エンジンである。具体的に、エンジン本体1は、直列6気筒エンジンであって、図1の紙面に垂直な方向に並ぶ6つの気筒2(図1ではそのうちの一つのみを示す)を有する。エンジン本体1は、気筒2が形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に取り付けられるシリンダヘッド4とを有する。気筒2には、ピストン5が上下方向に往復摺動可能に収容されており、コネクティングロッド8を介してクランク軸7と連結されている。ピストン5の往復運動に応じて、クランク軸7はその中心軸回りに回転する。ピストン5の上方には燃焼室6が区画されている。なお、ここでは、シリンダブロック3とシリンダヘッド4の並び方向およびピストン5の往復動方向を上下方向といい、シリンダブロック3に対するシリンダヘッド4側を上側、反対側を下側という。
【0027】
シリンダヘッド4には、各燃焼室6とそれぞれ連通する吸気ポート9および排気ポート10が形成されているとともに、各吸気ポート9をそれぞれ開閉する吸気弁11および各排気ポート10をそれぞれ開閉する排気弁12が組み付けられている。吸気弁11および排気弁12は、シリンダヘッド4に設けられた動弁機構13、14によって開閉駆動される。シリンダヘッド4には、先端部から燃焼室6内に燃料を噴射するインジェクタ15が、各気筒2につき1つずつ取り付けられている。インジェクタ15は、図略の燃料供給管を通して供給された燃料を燃焼室6に噴射する。インジェクタ15から噴射された燃料は燃焼室6で空気と混合する。燃料と空気の混合気は燃焼室6で燃焼し、ピストン5は混合気の燃焼による膨張力で押し下げられて上下方向に往復運動する。
【0028】
吸気通路30は、各吸気ポート9と連通するようにエンジン本体1の一側面に接続されている。吸気通路30には、上流側から順に、エアクリーナ31、コンプレッサ61、スロットルバルブ32、インタークーラ33、サージタンク34およびインテークマニホールド35が配置されている。
【0029】
エアクリーナ31は、吸気中の異物を除去して吸気を清浄化する。スロットルバルブ32は、吸気通路30を開閉して吸気通路30における吸気の流量を調整する。コンプレッサ61は、吸気を圧縮しつつ吸気通路30の下流側へ当該吸気を送り出す。インタークーラ33は、コンプレッサ61により圧縮された吸気を冷却する。インテークマニホールド35は、各気筒2の吸気ポート9とそれぞれ連通する複数の通路を有し、当該通路を介して各気筒2に吸気を分配する。サージタンク34は、インテークマニホールド35の直上流に配置され、各気筒2に吸気を均等に配分するための空間を提供するタンクである。
【0030】
本実施形態では、排気通路40の一部は、シリンダヘッド4の内側に形成されており、排気通路40は、各気筒2の排気ポート10と連通するようにシリンダヘッド4の内側に形成されたシリンダヘッド内通路41と、シリンダヘッド内通路41と連通する状態でシリンダヘッド4の他側面に接続された主排気通路42とを備える。後述する図4に示すように、本実施形態では、3つの気筒2の排気ポート10とそれぞれ連通する2本のシリンダヘッド内通路41がシリンダヘッド4の内側に形成されている。主排気通路42は、これら2本のシリンダヘッド内通路41とそれぞれ連通してこれらシリンダヘッド内通路41から導出された排気ガスを集合させる部分と、この集合部分から延びて1本の流路を区画する部分とを含む。排気通路40(主排気通路42)には、上流側から順に、タービン62、DOC(ディーゼル酸化触媒)43、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)44および排気シャッターバルブ45が配置されている。DPF44は、請求項の「フィルタ」に相当する。
【0031】
タービン62は、コンプレッサ61と一体回転可能に連結されている。タービン62は、排気通路40を流れる排気ガスのエネルギーを受けて回転し、コンプレッサ61を回転駆動する。DOC43は、排気ガス中に含まれる有害成分(COおよびHC)を酸化して無害化する触媒装置である。DPF44は、排気ガスに含まれる煤等の微粒子を捕集するフィルタである。排気シャッターバルブ45は、排気通路40を開閉して排気ガスの流量を調整する。
【0032】
排気通路40(主排気通路42)には、タービン62をバイパスするバイパス通路63と、ウエストゲートバルブ64とが設けられている。ウエストゲートバルブ64はバイパス通路63を開閉してバイパス通路63を通過する排気ガスつまりタービン62を通らずにDOC41に向かう排気ガスの流量を調整する。なお、上記の排気シャッターバルブ45、バイパス通路63およびウエストゲートバルブ64は省略してもよい。
【0033】
HP-EGR装置50Hは、排気通路40と吸気通路30とを接続するHP-EGR通路51と、HP-EGR通路51に設けられたHP-EGRバルブ52とを備える。HP-EGR通路51は、排気通路40におけるタービン62よりも上流側の部分と、吸気通路30におけるインタークーラ33とサージタンク34との間の部分とを接続している。HP-EGRバルブ52は、HP-EGR通路51を開閉することにより、HP-EGR通路51を通って吸気通路30に還流するEGRガスの量を調整する。以下では、適宜、HP-EGR通路51を通って吸気通路30に還流するEGRガスをHP-EGRガスという。上記のHP-EGR通路51は、請求項の「EGR通路」に相当する。
【0034】
LP-EGR装置50Lは、排気通路40と吸気通路30とを接続するLP-EGR通路55と、LP-EGR通路55に設けられたEGRクーラ56およびLP-EGRバルブ57とを備える。LP-EGR通路55は、排気通路40におけるDPF44よりも下流側の部分と、吸気通路30におけるエアクリーナ31とコンプレッサ61との間の部分とを接続している。LP-EGRバルブ57は、LP-EGR通路55を開閉することにより、LP-EGR通路55を通って吸気通路30に還流するEGRガスの量を調整する。EGRクーラ56は、LP-EGR通路55を流通するEGRガスを熱交換により冷却する熱交換器である。
【0035】
上記のように、LP-EGR通路55の上流端は排気通路40におけるタービン62およびDPF44よりも下流側の部分に接続されている。一方、HP-EGR通路51の上流端は排気通路40におけるタービン62およびDPF44よりも上流側の部分に接続されている。これより、吸気通路30には、タービン62およびDPF44を通過する前の高温高圧の排気ガスがHP-EGR通路51を通じて還流されるとともに、タービン62およびDPF44を通過した後の低温低圧の排気ガスがLP-EGR通路55を通じて還流される。
【0036】
(吸気通路およびHP-EGR通路の構成)
次に、吸気通路30の要部およびHP-EGR通路51について説明する。図2は、エンジンEの一部を示した概略平面図である。図3は、エンジンEの一部を示した概略側面図である。図4は、図3のIV-IV線における断面の一部を示した概略断面図である。以下では、気筒2の配列方向である図2の左右方向を前後方向といい、図2の左を前、反対を後として説明を行う。また、上下方向および前後方向と直交する方向を左右方向とする。この場合の左および右は、前方を向いた状態での左および右である。図4に示すように、吸気ポート9は、シリンダヘッド4の左側面に開口しており、排気ポート10は、シリンダヘッド4の右側面に開口している。つまり、以下では、吸気ポート9が設けられる吸気側を左側、排気ポート10が設けられる排気側を右側として説明を行う。
【0037】
ターボ過給機60は、エンジン本体1の右側面に沿うように配設されている。ターボ過給機60は、タービン62とコンプレッサ61とがこの順で前後方向に並ぶ姿勢で、エンジン本体1の右側面の前後方向の略中央に固定されている。
【0038】
スロットルバルブ32を含むスロットルバルブボディ32Bは、エンジン本体1の後部の左方に配設されている。スロットルバルブボディ32Bは、スロットルバルブ32とこれを囲む通路とスロットルバルブ32を開閉駆動する装置とを含む。
【0039】
インタークーラ33は、エンジン本体1の左方且つスロットルバルブボディ32Bの前方に配設されている。インタークーラ33は略直方体の外形を有し、エンジン本体1の前後方向の略中央部分の左方に前後方向に延びる姿勢で配設されている。
【0040】
サージタンク34は、エンジン本体1の左方且つインタークーラ33の下方に配設されている。サージタンク34は、前後方向に延びる形状を有し、シリンダヘッド4の左側面の前後方向の略全体にわたって延びる姿勢でシリンダヘッド4の左方に配設されている。また、サージタンク34は、上方から見て、その前後方向の略中央部分の左側部分とインタークーラ33の一部とが重複する位置に配設されている。
【0041】
インテークマニホールド35は、サージタンク34とシリンダヘッド4の左側面との間に配設されている。詳細には、インテークマニホールド35は、前後方向に延びる形状を有し、サージタンク34と同様に、シリンダヘッド4の左側面の前後方向の略全体にわたって延びる姿勢でシリンダヘッド4の左側面に固定されている。本実施形態では、インテークマニホールド35とサージタンク34とは樹脂製であり互いに一体に成形されている。
【0042】
HP-EGRバルブ52を含むHP-EGRバルブボディ52Bは、エンジン本体1の前端部の左方に配設されている。HP-EGRバルブボディ52Bは、HP-EGRバルブ52とこれを囲む通路とHP-EGRバルブ52を開閉駆動する装置とを含む。
【0043】
吸気通路30は、コンプレッサ61とスロットルバルブボディ32Bとをつなぐ第1吸気通路31Aと、スロットルバルブボディ32Bとインタークーラ33とをつなぐ第2吸気通路31Bと、インタークーラ33とサージタンク34とをつなぐ第3吸気通路31Cとを備える。
【0044】
第1吸気通路31Aは、エンジン本体1の上方においてコンプレッサ61とスロットルバルブボディ32Bとにわたって左右方向に延びるように配設されている。第1吸気通路31Aは、後方に膨出するように湾曲しており、スロットルバルブボディ32Bの後面に接続されている。
【0045】
第2吸気通路31Bは、スロットルバルブボディ32Bの前面から前方に延びてインタークーラ33の後面に接続されている。
【0046】
第3吸気通路31Cは、左右方向に沿って見たとき全体として前方に膨出する略U字状を呈しており、インタークーラ33の前面から前方に延びる部分と、この部分から前方に膨出するように湾曲する部分と、この部分から後方に延びる部分とを有する。第3吸気通路31Cにおける湾曲部から後方に延びる部分は、その後端がサージタンク34に接続されている。第3吸気通路31Cの詳細構造については後述する。
【0047】
HP-EGR通路51は、第3吸気通路31Cに接続されてこれと連通している。本実施形態では、HP-EGR通路51の一部は、シリンダヘッド4の内側に形成されており、HP-EGR通路51は、シリンダヘッド4の内側に形成された第1HP-EGR通路51Aと、第1HP-EGR通路51AとHP-EGRバルブボディ52Bとをつなぐ第2HP-EGR通路51Bと、HP-EGRバルブ52と第3吸気通路31Cとをつなぐ第3HP-EGR通路51Cとを備える。
【0048】
第1HP-EGR通路51Aは、シリンダヘッド4の内部において、前側に位置するシリンダヘッド内通路41に接続されている。第1HP-EGR通路51Aは、前側に位置するシリンダヘッド内通路41から前方に延びた後、シリンダヘッド4の前端部分において左方に延びて、シリンダヘッド4の左側面の前端部に開口している。HP-EGRバルブボディ52Bは、第1HP-EGR通路51Aの開口部分の左方に配設されている。第2HP-EGR通路51Bは、第1HP-EGR通路51Aの開口部分から左方に延びてHP-EGRバルブボディ52Bに接続されている。第3吸気通路31Cは、HP-EGRバルブボディ52Bの左斜め後方に位置している。第3HP-EGR通路51Cは、全体としてHP-EGRバルブボディ52Bから左斜め後方に向かって湾曲する形状を呈し、第3吸気通路31Cに前端面に接続されている。
【0049】
(詳細構成)
次に、本発明の特徴的な構成である吸気通路30(第3吸気通路31C)とHP-EGR通路51(第3HP-EGR通路51C)との接続部分およびその周囲の構成について詳細に説明する。図5は、図4のV-V線における吸気系装置の一部を示した断面図である。図6は、図5のVI-VI線における断面図である。図7は、図6のVII-VII線における断面の一部を示した断面図である。図8は、図7のVIII-VIII線における断面の一部を示した断面図である。
【0050】
第3吸気通路31Cは、複数の吸気管により構成されている。本実施形態では、第3吸気通路31Cは、第1吸気管110、第2吸気管120、第3吸気管130および第4吸気管140からなる4つの吸気管により構成されている。以下、各吸気管(110、120、130、140)の詳細について説明するが、その説明において、各吸気管における上流、下流とは、それぞれの吸気管を流れる吸気の流れ方向の上流、下流を意味する。
【0051】
第1吸気管110は、円筒状を呈している。第1吸気管110は、インタークーラ33の前端部33Eから前方に延びており、その前端が、前方に開口する第1吸気管110の下流端111を構成している。
【0052】
第2吸気管120は、略L字状の管状部材であり、左右方向に沿って見たときに第2吸気管120の中心軸X1(図5)は略1/4円弧状を呈している。第2吸気管120は、第1吸気管110の下流端(前端)111から前斜め下方に向かって湾曲しており、第2吸気管120の下流端122は下方に開口している。つまり、第2吸気管120は、その後端が、後方に開口して第1吸気管110の下流端111と連通する上流端121を構成し、その下端が、下方に開口する下流端122を構成している。第2吸気管120の各断面(中心軸X1と直交する断面)は略円形であり、その面積はほぼ一定である。第2吸気管120の上流端121の開口形状と第1吸気管110の下流端111の開口形状とはほぼ同じであり、第1吸気管110と第2吸気管120とはその内周面が段差なく連続するように接続されている。
【0053】
第3吸気管130は、その中心軸X2が直線Lに沿って延びる中空部材である。直線Lは略水平に且つ前後方向に延びている。つまり、第3吸気管130は、その中心軸X2が略水平に且つ前後方向に延びる姿勢で配設されている。詳細には、中心軸X2は、前後方向にまっすぐに延びる直線に対して後ろ斜め左方にわずかに傾斜している。これより、第3吸気管130の後側の方が前側よりもエンジン本体1からの左右方向の離間距離が長くなっている。
【0054】
第3吸気管130は、全体として扁平な断面を有して直線Lに沿って延びる本体部131と、本体部131から直線Lに沿って前方に突出する略円筒状のEGR取付部132とを有する。本体部131とEGR取付部132は同軸である。これより、以下では、これら本体部131とEGR取付部132の中心軸をいずれも中心軸X2として説明する。EGR取付部132の外径および内径は本体部131の外径および内径よりも小さく、第3吸気管130の前端部は前方に向かって縮径している。
【0055】
本体部131の各断面は、水平方向の寸法の方が上下方向の寸法よりも長い略楕円形を呈している。本体部131の前端部の上面には、上方に開口する第1開口部131aが形成されており、本体部131の後端には、後方(後斜め左方)に開口する第2開口部131dが形成されている。詳細には、本体部131の前端部には、上方にわずかに突出する円筒状の突部131bが形成されており、突部131bの上端面における円形の開口が第1開口部131aを構成している。
【0056】
第3吸気管130は、第2吸気管120から第1開口部131aに向けて吸気が導入されるように第2吸気管120に接続されている。つまり、第1開口部131aが形成された突部131bの上端が第3吸気管130の上流端131cを構成している。そして、第2開口部131dが形成された第3吸気管130の後端が第3吸気管130の下流端131eを構成している。第1開口部131aの形状つまり第3吸気管130の上流端131cの開口形状と、第2吸気管120の下流端122の開口形状とはほぼ同じであり、第2吸気管120と第3吸気管130とはその内周面が段差なく連続するように接続されている。
【0057】
第3吸気管130の前後方向の寸法は、第2吸気管120の前端から第1吸気管110の後端までの前後方向の合計寸法よりも長い。これより、第3吸気管130は、インタークーラ33の下方を通って、前後方向について第2吸気管120の前端位置からインタークーラ33の前端よりも後方の位置まで延びている。図4に示すように、本実施形態では、第3吸気管130の本体部131の前後方向の寸法は、エンジン本体1の前端位置から、前から2番目の気筒2と3番目の気筒2の中間位置までの寸法と同程度に設定されている。
【0058】
第4吸気管140は、略L字状の管状部材であり、上下方向に沿って見たとき、第4吸気管140の中心軸X3(図6)は1/4円弧状を呈している。第4吸気管140は、第3吸気管130の下流端(後端)131eから後ろ斜め右方に向かって湾曲しており、第4吸気管140の下流端142は右方に開口している。つまり、第4吸気管140は、その前端が、前方に開口して第3吸気管130の下流端131eと連通する上流端141を構成し、その右端が、右方に開口する下流端142を構成している。第4吸気管140の各断面は、第3吸気管130の本体部131の断面形状とほぼ同じであり、第3吸気管130と第4吸気管140とはその内周面が段差なく連続するように接続されている。
【0059】
サージタンク34の前後方向の略中央には左方に開口する開口部34aが形成されている。第4吸気管140は、その下流端142がこのサージタンク34の開口部34aと連通する状態でサージタンク34に接続されている。なお、第4吸気管140は、インタークーラ33の下方に配設されている。
【0060】
上記の構成から明らかなように、第3吸気通路31Cの前部は大きく屈曲している。すなわち、第3吸気通路31C(吸気通路30)は、第2吸気管120と第3吸気管130の前部から構成される屈曲部31Xを有している。この屈曲部31Xは、左右方向に沿って見たとき、前方、つまり、直線Lに沿う方向の一方側に凸となるU字状を呈している。なお、ここでいうU字状を呈するとは、厳密なU字の形を呈する場合に限らず、U字からずれてはいるが全体として概ねU字の形を呈する場合も含む。
【0061】
屈曲部31Xから吸気の流れ方向の下流側に向かって延びる第3吸気管130の後部31Yは、直線Lに沿って直線状に延びている。また、屈曲部31Xの上流側に位置する第1吸気管110は、第3吸気管130の後部31Yと略平行に延びている。言い換えると、屈曲部31Xは、第1吸気管110の下流端111と第3吸気管130の後部31Yの上流端とを略180°屈曲しつつ接続している。この場合において、第1吸気管110は、請求項の「上流側通路」に相当し、第3吸気管130の後部31Yは、請求項の「下流側通路」に相当する。また、直線Lに沿う方向は、請求項の「第1方向」に相当する。すなわち、本実施形態では、水平且つ後斜め左方に傾斜する直線Lに沿う方向が第1方向に相当する。
【0062】
屈曲部31Xには、HP-EGR通路51(第3HP-EGR通路51C)の下流端部が接続されている。以下、この接続構造の詳細について説明するが、その説明において、第3HP-EGR通路51Cの上流、下流とは、当該第3HP-EGR通路51Cを流れるHP-EGRガスの流れ方向の上流、下流を意味する。
【0063】
第3HP-EGR通路51Cは、その下流端部に、第3吸気管130のEGR取付部132に接続される吸気側接続部152を有している。EGR取付部132は、第3吸気管130の前端部に位置しており、屈曲部31Xに含まれる。言い換えると、第3HP-EGR通路51Cの吸気側接続部152は、第3吸気通路31Cの屈曲部31Xに接続されている。
【0064】
上記のように、第3HP-EGR通路51Cは、全体としてHP-EGRバルブボディ52Bから左斜め後方に向かって湾曲する形状を呈している。ただし、吸気側接続部152は直線Lに沿って延びる円管状を呈しており、吸気側接続部152は、第3吸気管130と平行に延びる姿勢でEGR取付部132に接続されている。吸気側接続部152の後端は、第3HP-EGR通路51Cの下流端152bを構成しており、この下流端(後端)152bは、後方に開口する開口部152aを有している。
【0065】
吸気側接続部152は、EGR取付部132の前端面に前方から後方に向かって差し込まれた状態でEGR取付部132に固定されており、吸気側接続部152の後部はEGR取付部132および第3吸気管130の内側に突出している。つまり、吸気側接続部152の後部は、第3吸気管130の内側に突出する突出部152fを構成している。突出部152fは、第3HP-EGR通路51C(吸気側接続部152)の下流端152bを含む。
【0066】
図6等に示すように、吸気側接続部152は、第3吸気管130の本体部131の前端よりも後方の位置まで差し込まれている。言い換えると、吸気側接続部152の下流端152bは、本体部131の前端よりも後方に位置している。本実施形態では、吸気側接続部152の下流端152bの前後方向の位置は、第3吸気管130の本体部131に設けられた第1開口部131aの前端よりもわずかに後方で且つ第1開口部131aの前後方向の中央よりも前側の位置となっている。
【0067】
図8に示すように、直線Lに沿って見たとき、吸気側接続部152の下流端152bの開口部152aは、第3吸気管130の内側に位置している。詳細には、直線Lに沿って見たとき、吸気側接続部152の下流端152bの開口部152aは、第3吸気管130のEGR取付部132および本体部131の双方の内側に位置している。本実施形態では、直線Lが吸気側接続部152の下流端152bの開口部152aの内側を通っており、直線Lに沿って見たとき第3吸気管130の中心軸X2(図4図7)が、吸気側接続部152の下流端152bの開口部152aの内側に位置している。
【0068】
また、吸気側接続部152の下流端152bを含む突出部152fは、その外周面が全周にわたって第3吸気管130(EGR取付部132および本体部131)の内周面から径方向内側に離間した位置に配設されており、吸気側接続部152の外周面と第3吸気管130の内周面との間には全周にわたって隙間が形成されている。
【0069】
(作用等)
以上のように、上記実施形態では、吸気通路30における第2吸気管120と第3吸気管130の前部とによってU字状に屈曲した屈曲部31Xが形成され、この屈曲部31Xから吸気の流れ方向の下流側に延びる第3吸気管130の後部31Yが直線Lに沿って直線状に延びている。そして、HP-EGR通路51のうち吸気通路30に接続される吸気側接続部152が、直線Lに沿って延びる形状とされるとともに、後方すなわち第3吸気管130の下流側に向かって開口する姿勢で屈曲部31Xに接続されている。
【0070】
これより、図7の矢印Y1に示すように流れる吸気であって、屈曲部31Xを通過した後に第3吸気管130を直線Lに沿って直線的に進む吸気に対して、HP-EGR通路51を通って吸気通路30に還流するHP-EGRガスを図7の矢印Y2に示すように吸気の流れに沿うように吸気側接続部152から吸気通路30内に導入できる。そのため、吸気側接続部152から吸気通路30に導入された直後のHP-EGRガスを、吸気とともに吸気通路30の下流側に流すことができ、当該導入直後のHP-EGRガス、つまりデポジットの要因となる煤等の濃度が高いEGRガスが吸気側接続部152の下流端152b付近で滞留するのを抑制できる。また、直線Lに沿って見たとき吸気側接続部152の下流端152bの開口部152aが第3吸気管130の内側に位置している。そのため、吸気側接続部152から第3吸気管130に導出された煤等の濃度の高いHP―EGRガスが第3吸気管130の内周面に衝突するのを抑制できる。従って、上記実施形態によれば、HP-EGRガスに含まれる煤等のデポジットが第3吸気管130吸気通路の内周面に付着して堆積するのを抑制できる。
【0071】
特に、上記実施形態では、直線Lに沿って見たときに、第3吸気管130の中心軸X2が吸気側接続部152の下流端152bの開口部152aの内側に位置している。そのため、第3吸気管130の中心軸X2付近を流れる流速の大きい吸気の主流に対して吸気側接続部152からHP-EGRガスを導出でき、煤等の濃度の高いHP-EGRガスが吸気側接続部152の下流端152b付近に滞留するのを確実に抑制できる。
【0072】
また、上記実施形態では、吸気側接続部152の下流端152bを含む突出部152fが第3吸気管130の内側に差し込まれており、吸気側接続部152の下流端152bが第3吸気管130の前端部の内周面つまり屈曲部31Xの内周面から離間している。そのため、吸気側接続部152の下流端152bから第3吸気管130に導出された煤等の濃度の高いHP-EGRガスが第3吸気管130の前端部の内周面に衝突するのをより確実に抑制できる。
【0073】
さらに、上記実施形態では、突出部152fが、その外周面が全周にわたって第3吸気管130(EGR取付部132および本体部131)の内周面から離間するように配設されて、突出部152fの外周面と第3吸気管130の内周面との間に、全周にわたって隙間が区画されている。
【0074】
そのため、突出部152fの後端つまり吸気側接続部152の下流端152bから第3吸気管130に導出された煤等の濃度の高いHP-EGRガスが第3吸気管130の内周面に衝突するのを確実に抑制できる。詳細には、図8の矢印Y10に示すように第2吸気管120から第3吸気管130に向かう吸気の一部が、矢印Y11に示すように突出部152fにおいて左右方向に分岐して突出部152fの外周面と第3吸気管130の内周面との隙間に入り込む。言い換えると、吸気側接続部152(突出部152f)の下流端152bから第3吸気管130に導出されたHP-EGRガスがその全周にわたって吸気に囲まれる。これより、拡散前の煤等の濃度の高いHP-EGRガスが第3吸気管130の内周面に接触して煤等のデポジットが当該内周面に付着するのが抑制される。
【0075】
図9は、第3吸気管130内でのHP-EGRガスの分布をシミュレーションした結果を模式的に示した図である。図9では、HP-EGRガスの濃度(第3吸気管130を流れるガスのうちHP-EGRガスによって導入された成分の濃度)が高いポイントつまりデポジットの要因となる煤等の濃度が高いポイントほど色が濃くなるように示している。また、図9の(a)は図6のA-A線断面でのHP-EGRガスの分布を示した図、(b)は図6のB-B線断面でのHP-EGRガスの分布を示した図、(c)は図6のC-C線断面でのHP-EGRガスの分布を示した図である。
【0076】
図9(a)に示すように、図6のA-A線断面では、つまり、第3吸気管130のうち吸気側接続部152の下流端152b付近では、HP-EGRガスは第3吸気管130のほぼ中央に偏在している。これにより、HP-EGR通路51から吸気通路30に導出された煤等の濃度の高いHP-EGRガスの第3吸気管130の内周面との接触が抑制される。
【0077】
また、図9(b)、(c)に示すように、HP-EGRガスは第3吸気管130の中央から外周側へと拡散していく。そのため、第3吸気管130の比較的下流側の位置においても、第3吸気管130の内周面付近のHP-EGRガスの濃度は薄く抑えられる。これより、第3吸気管130全体において煤等の付着は抑制される。このように、上記実施形態によれば、エンジン本体1に導入されるまでの間にHP-EGRガスを吸気中に拡散させつつ、HP-EGRガスに含まれる煤等のデポジットが第3吸気管130および吸気通路30内に付着するのを抑制できる。
【0078】
(変形例)
上記実施形態では、HP-EGR通路51の吸気側接続部152が突出部152fを有する場合、つまり吸気側接続部152の下流端152bを含む部分(突出部152f)が第3吸気管130の内側に突出する場合を説明したが、吸気側接続部152は第3吸気管130の内側に突出しない形態でこれに接続されてもよい。
【0079】
ただし、吸気側接続部152の下流端152bを含む部分を第3吸気管130の内側に突出させれば、上記のように、吸気側接続部152の下流端152bから第3吸気管130に導出された煤等の濃度の高いHP-EGRガスが第3吸気管130の前端部の内周面に衝突するのをより確実に抑制できる。
【0080】
また、突出部152fは、その外周面が全周にわたって第3吸気管130の内周面から離間する構成を有していなくてもよい。つまり、突出部152fの外周面の一部が第3吸気管130の内周面と連なるように構成されてもよい。
【0081】
ただし、突出部152fを、その外周面が全周にわたって第3吸気管130の内周面から離間するように構成すれば、上記のように、煤等の濃度の高いHP-EGRガスが第3吸気管130の内周面に衝突するのを確実に抑制できる。
【0082】
上記実施形態では、略180°屈曲するU字状の屈曲部31Xを用いたが、屈曲部31Xの具体的形状はこれに限られない。例えば、90°程度屈曲するL字状の屈曲部であってもよい。ただし、直線Lに沿う方向の一方側に凸となるU字状の屈曲部31Xを用いれば、直線Lと直交する方向に第1吸気管110と第3吸気管130とを近接させることができ、第3吸気通路31C(吸気通路30)をコンパクト化することができる。具体的に、上記実施形態では、第3吸気通路31Cを左右方向および上下方向についてコンパクトに構成することができる。
【0083】
上記実施形態では、屈曲部31Xに接続されるEGR通路がHP-EGR通路51である場合、つまり、インタークーラ33の吸気の流れ方向の下流側の吸気通路30とDPF44よりも排気ガスの流れ方向の上流側の排気通路40とを連通するHP-EGR通路51が屈曲部31Xに接続される場合を説明したが、屈曲部31Xに接続されるEGR通路はLP-EGR通路55であってもよい。
【0084】
ただし、HP-EGR通路51が接続されるインタークーラ33よりも下流側の吸気通路30は、インタークーラ33で吸気が冷却されることに伴って温度が低くなる。そのため、HP-EGR通路51の下流端152b付近ではHP-EGRガスに含まれる煤が凝縮水やブローバイガス中のオイル等と混ざることでデポジットとして堆積しやすくなる。従って、上記実施形態のように、屈曲部31Xに接続されるEGR通路をHP-EGR通路51とすれば、HP-EGR通路51の下流端152b付近で生じやすい煤等の堆積を効果的に抑制できる。
【0085】
また、HP-EGR通路51には、煤等の微粒子がDPF44によって捕集される前のEGRガスが導入される。そのため、HP-EGR通路51から吸気通路30には比較的多量の煤等が導入されてこれらが堆積しやすい。従って、上記実施形態のように、屈曲部31Xに接続されるEGR通路をHP-EGR通路51とすれば、HP-EGR通路51の下流端152b付近で生じやすい煤等の堆積を効果的に抑制できる。
【0086】
また、エンジンはディーゼルエンジンに限られない。ただし、ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて排気ガスおよびEGRガスの煤等の含有量が多いことで、吸気通路30に煤等が堆積しやすい。従って、上記実施形態のように、上記の吸気通路30およびHP-EGR通路51に係る構成をディーゼルエンジンに適用すれば、吸気通路30での煤等の堆積を効果的に抑制できる。
【0087】
また、その他のエンジンの具体的な構成も上記に限られない。例えば、エンジンの気筒数は上記に限られない。また、エンジンEに設けられる過給機は電動過給機であってもよい。また、エンジンEは、ターボ過給機60およびインタークーラ33を有しないエンジンであってもよい。また、エンジンEは、HP-EGR通路51およびLP-EGR通路55の一方のみを有するエンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 エンジン本体
30 吸気通路
31X 屈曲部
31Y (第3吸気管の)後部(下流側通路)
33 インタークーラ
40 排気通路
44 DPF(フィルタ)
51 HP-EGR通路(EGR通路)
60 過給機
61 コンプレッサ
62 タービン
110 第1吸気管(上流側通路)
152 吸気側接続部
152a 開口部
152b (吸気側接続部の)下流端
152f 突出部
E エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9