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特開2024-4375スポット型火災感知器および火災感知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004375
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】スポット型火災感知器および火災感知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/107 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
G08B17/107 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104010
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 芽衣
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AB01
5C085BA33
5C085CA07
5C085CA08
5C085CA13
5C085CA18
(57)【要約】
【課題】スポット型火災感知器を用いた火災感知において、衝撃や地震の揺れ等による誤作動等の可能性をさらに低下させることが好ましい。加えて、振動の原因により種々の動作を行うことが好ましい。
【解決手段】火災を検知する火災検知手段と、前記火災検知手段の振動を検知する振動検知手段と、振動原因に対応する振動パターンが記憶される記憶手段と、前記振動検知手段により得られた振動信号を判定する判定手段と、を備え、前記判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記振動パターンによって前記振動原因を判定し、判定の結果に応じて前記火災検知手段の感度を確認または調整することを特徴とするスポット型火災感知器を提供する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災を検知する火災検知手段と、
前記火災検知手段の振動を検知する振動検知手段と、
振動原因に対応する振動パターンが記憶される記憶手段と、
前記振動検知手段により得られた振動信号を判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記振動パターンによって前記振動原因を判定し、判定の結果に応じて前記火災検知手段の感度を確認または調整することを特徴とするスポット型火災感知器。
【請求項2】
前記判定手段が前記振動原因を衝突による衝撃と判定した場合に、前記火災検知手段の感度の確認を行う感度確認手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載されたスポット型火災感知器。
【請求項3】
前記判定手段が前記振動原因を地震と判定した場合に、前記火災検知手段の感度を引き上げる感度変更手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載されたスポット型火災感知器。
【請求項4】
前記火災検知手段を備えた前記火災感知器は少なくとも2以上設けられ、
前記感度変更手段は、他の火災感知器の感度を引き上げるための感度引き上げ信号を送信することを特徴とする請求項3に記載されたスポット型火災感知器。
【請求項5】
スポット型火災感知器に設けられて火災を検知する火災検知手段と、
前記火災検知手段の振動を検知する振動検知手段と、
前記振動検知手段により得られた振動信号から振動原因を判定する判定手段と、を備え、
前記判定の結果に応じて前記火災検知手段の感度を確認または引き上げることを特徴とする火災感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサを設けたスポット型火災感知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、送光部と受光部が離れて設置された光電式感知器が記載されている。光電式分離型感知器は、送光部と受光部を正しく対向させるために、設置の際に光軸調整を行うと共に、受光レベル調整を行う。そして、特許文献1では、光電式感知器に衝撃や振動等が与えられた場合に、光軸や受光レベルの調整が狂うため、衝撃等を検知して自己診断や調整を行う。
【0003】
スポット型火災感知器は一体的に構成されているため、光電式分離型感知器よりも光軸のずれ等は生じにくい。また、スポット型火災感知器の開発過程や製造過程においては、品質保証のために振動試験が行われる。この試験は、試験中や試験の後に非火災報や感度変化などの異常がないことを確認するものである。そのため、火災感知器を設置した後の使用中に衝撃や地震などにより感度異常等が発生する可能性は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-115077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スポット型火災感知器を用いた火災感知においても、衝撃や地震の揺れ等による誤作動等の可能性をさらに低下させることが好ましい。加えて、振動の原因により種々の動作を行うことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態におけるスポット型火災感知器は、火災を検知する火災検知手段と、前記火災検知手段の振動を検知する振動検知手段と、振動原因に対応する振動パターンが記憶される記憶手段と、前記振動検知手段により得られた振動信号を判定する判定手段と、を備え、前記判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記振動パターンによって前記振動原因を判定し、判定の結果に応じて前記火災検知手段の感度を確認または調整することを特徴とする。また、本発明の一実施形態における火災感知システムは、スポット型火災感知器に設けられて火災を検知する火災検知手段と、前記火災検知手段の振動を検知する振動検知手段と、前記振動検知手段により得られた振動信号から振動原因を判定する判定手段と、を備え、前記判定の結果に応じて前記火災検知手段の感度を確認または引き上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、振動検知手段を設けることによって振動を検知して振動原因を判定することができる。さらに、振動原因により異なった対応を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1における煙感知器を設置した家屋の側面図。
図2】実施例1における煙感知器を設置した家屋の平面図。
図3】勾配天井の内側に設置された実施例1の煙感知器。
図4】実施例1の煙感知器の内部構造。
図5】実施例1の煙感知器の回路構成。
図6】実施例1の煙感知器におけるフロー図。
図7】実施例2における煙感知器を設置した建築物の側面図。
図8】実施例2の煙感知器の回路構成。
図9】実施例2の火災受信機におけるフロー図。
【発明を実施するための形態】
【実施例0009】
実施例1のスポット型火災感知器は、無線式の煙感知器である。図1に実施例の煙感知器1と通常の煙感知器4を設置した家屋3の側面図を、図2に平面図を示す。煙感知器1、4は電池を有しており、無線で他の煙感知器1と連動するため、家屋3内に自由に取り付けることができる。そして、何れか一つの煙感知器1、4が煙を感知すると、他の煙感知器1、4にも無線により火災情報が送信され、全ての煙感知器1、4が内部に備えたブザーを鳴動して火災を報知する。煙感知器1は振動を検知するが、煙感知器4は振動を検知しない。
【0010】
図1、2では、キッチン31やリビングルーム32等の天井板36に煙感知器4を設置し、屋根裏部屋33において、屋根に接して設けた勾配天井37の下に煙感知器1を設置している状況を示す。煙感知器1は斜めの天井や垂直な壁面にも取り付けることができる。更に、図2に示すようにクローゼット34や物置35にも煙感知器1が取り付けられている。図1、2に示すような屋根裏部屋33やクローゼット34、物置35では、煙感知器が低い位置に取り付けられることがある。そして、そのような場合には、人や物が煙感知器に衝突し、煙感知器に衝撃を与えてしまう可能性がある。振動を検知する煙感知器1は、人や物が煙感知器1に衝突する可能性がある場所に設置することが好ましい。また振動を検知しない煙感知器4は、キッチン31やリビングルーム32等の、人や物が煙感知器4に衝突する可能性がほとんどない場所に設置することが好ましい。
【0011】
図3に、屋根裏部屋33における勾配天井37の下に取り付けた煙感知器1の側面を示す。勾配天井37には取付ベース2が固定され、取付ベース2に煙感知器1を嵌め込むことにより、煙感知器1が勾配天井37に設置されている。固定された取付ベース2に嵌め込んで設置する点は、屋根裏部屋33以外の場所に設置する煙感知器1、4でも同様である。図3に示すように、煙感知器1の反取付面側には煙流入口171が設けられている。煙は煙流入口171から煙感知器1の内部に進入し、煙感知器1の取付面側の内側に設けた火災検知手段11により検知されて、煙感知器1は火災を検知する。
【0012】
実施例1における煙感知器1の内部には、振動検知手段15が設けられている。振動検知手段15は、下部を覆う下面カバー172の内面に取り付けられている。煙感知器1において、下面カバー172は取付面から最も突出した位置にある。振動検知手段15は下面カバー172の内面に取り付けられているため、人や物が煙感知器1に衝突した際に、高感度で振動を検出して衝突を検知することができる。
【0013】
図4に、火災検知手段11近傍の煙感知器1の内部構造を示す。図4は、側面を図3に示した煙感知器1の水平断面を反取付面側から見た図である。火災検知手段11では、発光ダイオード111と受光素子112が光軸を120°ずらして設置されている。発光ダイオード111と受光素子112の間には、直接光を遮光する遮光壁173が設けられている。また、発光ダイオード111の光軸方向には可変反射パネル16が設けられている。発光ダイオード111からは、黒点線で示した赤外線Lを間欠的に発する。点線円で示した検出領域Rに煙流入口171から入った煙がある場合、散乱が生じて、白矢印で示す散乱光Dが受光素子112に入光する。これにより、煙感知器1では煙を感知して火災を検知する。検出領域Rに煙が無い場合には、赤外線Lは直進する。実施例1では、赤外線Lは光吸収状態の可変反射パネル16で吸収され、受光素子112に光は入らない。
【0014】
図5に、煙感知器1の内部における回路構成を示す。煙感知器1は図4に示したように発光ダイオード111と受光素子112を備えている。火災検知手段11は、発光ダイオード111と受光素子112の他に、制御手段113と記憶手段114を備えている。発光ダイオード111は制御手段113により制御されて間欠的に発光する。また、受光素子112で検出した出力は、制御手段113に入力される。発光ダイオード111と制御手段113の間には、制御スイッチ(図示せず)が設けられている。また、受光素子112と制御手段113の間には、A/Dコンバータ(図示せず)が設けられている。制御手段113は記憶手段114に接続しており、制御手段113は、記憶手段114に記憶したプログラムにより動作する。また、記憶手段114には、振動原因に対応する振動パターンが記憶される。本実施例では、振動原因の「衝撃」を、加速度値A以上の加速が0.5秒以内で終了する振動パターンとして記憶し、振動原因の「地震」を、加速度値Aよりも小さい加速度値B以上の加速が1秒以上続く振動パターンとして記憶する。
【0015】
制御手段113はブザー12に制御スイッチ(図示せず)を介して接続している。火災検知手段11が火災を検知すると、制御手段113は火災報知状態となって、ブザー12に鳴動信号を送信する。鳴動信号を受信したブザー12は鳴動して火災報知を行う。
【0016】
また、制御手段113は無線送受信手段13に接続している。火災検知手段11が火災を検知すると、無線送受信手段13から電波により火災検知情報を送信する。また、無線送受信手段13で電波により火災検知情報を受信すると、制御手段113は火災報知状態となって、ブザー12に鳴動信号を送信し、ブザー12を鳴動させる。制御手段113と記憶手段114は、火災検知手段11以外の機能も担っている。
【0017】
本発明の実施例1において、制御手段113は、振動検知手段15に接続している。振動検知手段15は、加速度センサ(図示せず)を有し、加速度センサで得た加速度値をデジタル信号に変換して出力する。制御手段113と記憶手段114は、振動検知手段15により得られた振動信号を判定する判定手段や、火災検知手段11の感度を引き上げる感度変更手段としても機能する。
【0018】
また、制御手段113は制御スイッチ(図示せず)を介して可変反射パネル16に接続している。可変反射パネル16は、赤外線Lを反射する反射パネル161の入光側に液晶パネル162が設けられている。液晶パネル162は、電圧を印加していないときに赤外線Lを吸収し、電圧を印加しているときに赤外線Lを透過する。したがって、可変反射パネル16は、液晶パネル162の電極を短絡して電圧を印加しないと赤外線Lを吸収し、電圧を印加すると赤外線Lを反射する。
【0019】
煙感知器1において、発光ダイオード111、受光素子112、制御手段113、記憶手段114、ブザー12、無線送受信手段13、振動検知手段15、可変反射パネル16等の内部回路は、煙感知器1の内部に設けた電池14の電力により作動し、外部からは電力供給されていない。
【0020】
次に、煙感知器1が振動を受けた際の火災検知手段11の動作を、図6のフロー図により説明する。
【0021】
制御手段113は、振動検知手段15により閾値を超える振動があるか監視している。(ステップS11)。閾値を超える振動があると、振動信号を記憶しはじめる(ステップS12)。振動信号のパターンから振動原因を判定するためには一定時間以上の振動信号を記憶する必要があるため、所定時間以上の振動信号を記憶する(ステップS12、S13)。所定時間以上、振動信号を記憶すると振動原因を判定する。そして、記憶手段114に記憶する振動原因に対応する振動パターンにより、記憶した振動信号のパターンが、衝突を原因とするものであるか判定する(ステップS14)。衝突を原因とすると判定されると、煙感知器1の感度確認を行って終了する(ステップS15)。衝突を原因とすると判定されないと、記憶手段114に記憶する振動原因に対応する振動パターンにより、記憶した振動信号のパターンが、地震を原因とするものであるか判定される(ステップS16)。地震を原因とすると判定されると、火災検知手段11の感度を引き上げて終了する。(ステップS17)。地震を原因とすると判定されないと終了する。そして、再びステップS11から開始する。
【0022】
<感度の確認>
ステップS15では、振動信号により振動原因が衝突と判定されると感度の確認を行う。感度の確認の際には、制御手段113から図4に示した液晶パネル162に電圧を印加する。そうすると、可変反射パネル16は赤外線Lを反射して、図4に白点線矢印で示した反射光Tが発生する。そして、可変反射パネル16で反射した、反射光Tを受光素子112に入光させ、受光素子112の出力値を制御手段113で検査することにより感度確認を行う。制御手段113と記憶手段114は、火災検知手段11の感度の確認を行う感度確認手段をも構成する。
【0023】
感度確認の結果、出力値が低すぎたり高すぎたりすると、感度異常が判定される。具体的な感度判定として、感度確認手段が、記憶手段114に記憶される工場出荷時の出力値と比較し、確認した感度の値が、所定以上、所定以下の出力である場合に感度異常として判定する。そして、制御手段113からブザー12に間欠発音信号が送信され、ブザー12が「ブ、ブ、ブ、ブ、ブ」と間欠的に発音する。これにより、ユーザは煙感知器1に異常が発生したことを認識し、煙感知器1の交換を行うことができる。また、衝撃により感度異常が発生した場合でも感度確認の動作に移行するため非火災報や誤報になりづらい。さらに、振動検知手段15は、図3に示すように下面カバー172の内側に設けられているため、人や物が衝突した際に振動を検出し易い。
【0024】
<感度の引き上げ>
また、ステップS16で振動信号により振動原因が地震と判定すると、ステップS17では、煙感知器1の感度の引き上げを行う。感度の引き上げは所定期間にわたって行われる。実施例1では30分間の感度引き上げが行われ、30分が経過すると感度はもとに戻る。そして、感度引き上げにより、火災と判定する散乱光Dの閾値を下げる。これにより、地震によって生じる火災を迅速に感知して、ブザー12により報知することができる。本実施例の煙感知器1は電池14を電源としている。そのため、大地震後の停電時に発生する火災に対しても、有効に機能することができる。
【0025】
さらに、地震と判定した煙感知器1では、制御手段113が無線送受信手段13を制御して、感度引き上げ信号を送信する。そうすると、感度引き上げ信号を受信した煙感知器1、4は、所定期間の感度引き上げを行う。実施例1では、受信した煙感知器1、4でも30分間にわたる感度引き上げが行われる。特にキッチン31に設置した煙感知器4の感度引き上げが行われることにより、地震後のキッチン31から生じる出火を迅速に報知することができる。制御手段113と記憶手段114は、煙感知器1における火災検知手段11の感度を引き上げたり、他の煙感知器1、4に感度引き上げ信号を送信したりする感度変更手段の機能も有するものである。以上のように、記憶手段114に記憶された振動パターンによって振動原因を判定し、判定の結果に応じて火災検知手段11の感度を確認または調整する。
【0026】
なお、振動を検知しない煙感知器4では、図5における振動検知手段15、可変反射パネル16がない。また、記憶手段114では振動検知等のプログラムを記憶していない。しかし、煙感知器4においても火災を検知すると、火災報知状態となって、ブザー12が鳴動して火災報知を行うと共に、電波により火災検知情報を送信して他の煙感知器1、4を鳴動させる。
【0027】
実施例1の煙感知器1を用いた煙感知システムでは、振動を検知する煙感知器1と振動を検知しない煙感知器4を使い分けて用いたが、全て振動を検知する煙感知器1とした煙感知システムを家屋3に設置してもよい。多くの煙感知器1が地震を検知して感度引き上げ信号を出せるようにすれば、地震による感度の引き上げが早く確実に行われる。
【0028】
振動原因の判定に用いる振動パターンとしては、上記のように加速度値の閾値と時間を用いてもよいが、振動周波数などを用いてもよい。
【実施例0029】
実施例2では、複数の煙感知器5を火災受信機6に接続した火災感知システムを示す。図7に示す実施例2のスポット型火災感知器は、有線式の煙感知器5である。建物9において、複数の煙感知器5が伝送線7を介して火災受信機6に接続している。また、複数のスピーカー8が配線を介して火災受信機6に接続している。火災受信機6は制御手段61と記憶手段62を備えている。制御手段61は、記憶手段62に記憶したプログラムにより動作する。
【0030】
図8に、煙感知器5の内部における回路構成を示す。煙感知器5は実施例1の煙感知器1のように、発光ダイオード511と受光素子512を備えている。火災検知手段51は、発光ダイオード511と受光素子512の他に、制御手段513と記憶手段514を備えている。発光ダイオード511は制御手段513により制御されて間欠的に発光する。また、受光素子512で検出した出力は、制御手段513に入力されて、散乱光Dの輝度データが得られる。なお、発光ダイオード511と制御手段513の間には、制御スイッチ(図示せず)が設けられている。また、受光素子512と制御手段513の間には、A/Dコンバータ(図示せず)が設けられている。制御手段513は記憶手段514に接続しており、制御手段513は、記憶手段514に記憶したプログラムにより動作する。
【0031】
また、制御手段513は有線送受信手段52に接続している。火災検知手段51は、有線送受信手段52から伝送線7を介して火災受信機6に散乱光Dの輝度データを送信する。輝度データにより火災受信機6の制御手段61で火災と判断すると、図7に示すスピーカー8に鳴動信号を送信し、スピーカー8を鳴動させて警報を報知する。
【0032】
次に、煙感知器5が振動を受けた際の動作を、図9のフロー図により説明する。図9は、火災受信機6における動作フローである。
【0033】
煙感知器5の制御手段513は、振動検知手段53で閾値を超える振動があるか監視している。実施例2においても実施例1と同様に、振動検知手段53は下面カバー(図示せず)の内側に設けられているため、人や物が衝突した際に振動を検出し易い。また、煙感知器5は受光素子512で感知した散乱光Dの輝度データを伝送線7に送出している。火災受信機6では、制御手段61が各煙感知器5の輝度データを監視し、火災の判定を行っている。煙感知器5で閾値を超える加速度値を検出すると、振動検出信号を伝送線7に送信する。煙感知器5は個別にアドレスを有しており、伝送線7に送信する振動検出信号は煙感知器5のアドレスを含んでいる。
【0034】
火災受信機6では、振動検出信号を受信しているかを監視している(ステップS51)。そして、振動検出信号を受信すると、所定時間以内に他の煙感知器5から振動検出信号を受信したかを判定する(ステップS52)。実施例2では、所定時間を5秒に設定する。5秒以内に他の煙感知器5から振動検出信号を受信した場合には、広範囲の振動であることを示すので、振動原因を地震と判定する。そして、全ての煙感知器5に対して、感度引き上げ信号を送信して(ステップS53)終了する。これにより、全ての煙感知器5では、火災発報する散乱光の閾値を引き下げることにより、煙感知の感度を引き上げる。感度の引き上げは実施例1と同様に所定期間にわたって行われる。所定時間である5秒以内に他の煙感知器5から振動検出信号を受信しない場合には、振動原因を衝突と判定して、煙感知器5の感度確認を行い(ステップS54)、終了する。終了後は、再びステップS51から開始する。
【0035】
<煙感知器5の感度確認>
ステップS54の煙感知器5の感度確認では、振動検出信号を送信した煙感知器5に感度確認信号を送信する。感度確認信号は振動検出信号と同じアドレスを含んでおり、振動検出信号を送信した煙感知器5のみが感度確認信号を受信することができる。感度確認信号を受信した煙感知器5は、可変反射パネル54を用いて実施例1と同様に感度確認を行い、結果を感度確認結果信号として火災受信機6に送信する。感度確認結果信号も煙感知器5に固有なアドレスを有している。感度確認結果信号が感度異常を示す場合は、火災受信機6から警告音が発生され、感度異常を示した煙感知器5のコードが表示される。
【0036】
火災受信機6の制御手段61と記憶手段62は、煙感知器5の振動検知手段53により得られた振動信号を判定する判定手段や、火災検知の感度を引き上げる感度変更手段としても機能する。そして、判定手段は振動原因を判定し、判定の結果に応じて火災検知手段である煙感知器5の感度を確認または調整する。
【0037】
実施例2では、所定時間以内に振動を検知した煙感知器5が1つである場合に衝撃と判定し、2以上である場合に地震と判定したが、1または2の場合に衝撃と判定し、3以上の場合に地震と判定してもよい。また、1つである場合に衝撃と判定し4以上の場合に地震と判定してもよい。このように振動を検知した煙感知器5の数により振動原因を判定してもよいが、実施例1と同様に振動パターンとの比較により振動原因を判定してもよい。この場合、振動原因の判定は煙感知器5で行ってもよく、火災受信機6で行ってもよい。
【0038】
煙感知器は、炎感知器等の他の火災感知器でもよい。また、火災感知器には、非火災報を防止するため、所定時間にわたって煙等の異常検出があると火災を報知する遅延処理を行うものがある。実施例1、2では、振動原因を地震とした際に閾値を下げて感度を上昇させているが、遅延時間を短くしても感度は引き上げられる。
【0039】
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 煙感知器、11 火災検知手段、111 発光ダイオード、112 受光素子、113 制御手段、114 記憶手段、12 ブザー、13 無線送受信手段、14 電池、15 振動検知手段、16 可変反射パネル、161 反射パネル、162 液晶パネル、171 煙流入口、172 下面カバー、173 遮光壁、
2 取付ベース、
3 家屋、31 キッチン、32 リビングルーム、33 屋根裏部屋、34 クローゼット、35 物置、36 天井板、37 勾配天井、
4 煙感知器、
5 煙感知器、51 火災検知手段、511 発光ダイオード、512 受光素子、513 制御手段、514 記憶手段、52 有線送受信手段、53 振動検知手段、54 可変反射パネル
6 火災受信機、61 制御手段、62 記憶手段
7 伝送線、
8 スピーカー、
9 建物、
R 検出領域、L 赤外線、D 散乱光、T 反射光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9