(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043756
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/16 20060101AFI20240326BHJP
B23K 26/142 20140101ALI20240326BHJP
【FI】
B23K26/16
B23K26/142
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148923
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 成敏
(72)【発明者】
【氏名】米田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】成田 竜一
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 真之
(72)【発明者】
【氏名】浅野 伸
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 篤
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CB03
4E168DA43
4E168FB03
4E168FB05
4E168FC01
4E168FC04
(57)【要約】
【課題】レーザヘッドを往復移動させたとしても、効率よく生成物を回収できるレーザ加工装置を提供すること。
【解決手段】レーザ加工装置は、ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、レーザ光の照射による生成物を回収する回収機構と、を備える。回収機構は、掃気用ガスを供給する第1給気ノズルと、第1給気ノズルに対向して設けられる第1吸引ダクトと、を有する第1回収部と、掃気用ガスを供給する第2給気ノズルと、第2給気ノズルに対向して設けられる第2吸引ダクトと、を有する第2回収部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物にレーザ光を照射するレーザヘッドと、
前記レーザ光の照射による生成物を回収する回収機構と、を備え、
前記回収機構は、
掃気用ガスを供給する第1給気ノズルと、前記第1給気ノズルに対向して設けられる第1吸引ダクトと、を有する第1回収部と、
前記掃気用ガスを供給する第2給気ノズルと、前記第2給気ノズルに対向して設けられる第2吸引ダクトと、を有する第2回収部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1給気ノズルと前記第2吸引ダクトとが、前記レーザヘッドの軸線を中心とする円の径方向に並んで設けられ、
前記第2給気ノズルと前記第1吸引ダクトとが、前記径方向に並んで設けられる、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1給気ノズルが前記第2吸引ダクトよりも前記径方向の内側に設けられ、
前記第2給気ノズルが前記第1吸引ダクトよりも前記径方向の内側に設けられる、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1給気ノズルと前記第1吸引ダクトとを結ぶ第1線分と、
前記第2給気ノズルと前記第2吸引ダクトとを結ぶ第2線分と、が交差する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記回収機構は、
前記掃気用ガスを供給する第3給気ノズルを備える、
請求項2または請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザヘッドが、往路と復路とを往復移動しながら前記加工対象物を加工し、
前記往路において、前記第1回収部により前記生成物を回収し、
前記復路において、前記第2回収部により前記生成物を回収する、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記回収機構は、
前記第1回収部と前記第2回収部とが前記掃気用ガスを選択的に供給するとともに、前記生成物を含む前記掃気用ガスを吸引する掃気部を備え、
前記掃気部は、
前記掃気用ガスとしての圧縮エアを生成する圧縮機と、
前記圧縮エアを前記第1給気ノズルまたは前記第2給気ノズルに供給する給気管と、
前記圧縮エアが供給されることにより減圧雰囲気を生成するエジェクタと、
前記エジェクタと前記第1吸引ダクトまたは前記第2吸引ダクトとを接続する吸引管と、を備える、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記圧縮機から前記圧縮エアが供給され、それぞれ独立して開閉がなされる第1電磁弁と第2電磁弁を備え、
前記第1電磁弁が開、前記第2電磁弁が閉とされると、
前記給気管を通って前記圧縮エアが前記第1給気ノズルに供給され、かつ、前記吸引管を通じて前記第1吸引ダクトに減圧雰囲気が作用し、
前記第1電磁弁が閉、前記第2電磁弁が開とされると、
前記給気管を通って前記圧縮エアが前記第2給気ノズルに供給され、
かつ、前記吸引管を通じて前記第2吸引ダクトに減圧雰囲気が作用する、
請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記レーザヘッド、前記第1回収部および前記第2回収部を昇降させ、かつ、前記レーザヘッドの軸線の周りに回転させる駆動機構を備える、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
レーザヘッドから加工対象物にレーザ光を照射するレーザ加工方法であって、
第1給気ノズルから掃気用ガスを供給するとともに、前記レーザ光の照射による生成物を含む前記掃気用ガスを第1吸引ダクトで吸引する第1回収ステップと、
第2給気ノズルから前記掃気用ガスを供給するとともに、前記生成物を含む前記掃気用ガスを第2吸引ダクトで吸引する第2回収ステップと、が選択的に行われる、レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)の照射により不可避的に生ずるヒューム、スパッタなどの生成物を回収する機能を備えるレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射することによりワークを加工すると、ヒューム(fume)、スパッタ(spatter)と称される粉塵、煙霧が不可避的に生成される。このヒュームなどの生成物はレーザ加工の障害となるために、ヒュームなどの生成物を回収することが行われている。ヒュームなどの生成物を回収するには、特許文献1および特許文献2などに開示されるように、エア、その他のガスを加工部位に供給するとともに、当該部位を減圧、吸引することが行われている。
【0003】
レーザ光を照射して例えば加工対象物を切断する場合、レーザ光を出射するレーザヘッドを必要とされる軌跡に沿って移動させる。加工対象物の厚さ方向の寸法が大きい場合には、レーザ光を軌跡に沿って一度だけ照射したのでは切断しきれないために、複数回にわたって
当該軌跡にレーザ光を照射するべく、レーザヘッドを往復移動させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-021574号公報
【特許文献2】特開平10-225788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、レーザヘッドを往復移動させたとしても、効率よく生成物を回収できるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るレーザ加工装置は、加工対象物にレーザ光を照射するレーザヘッドと、レーザ光の照射による生成物を回収する回収機構と、を備える。この回収機構は、第1回収部と第2回収部を備える。第1回収部は、掃気用ガスを供給する第1給気ノズルと、第1給気ノズルに対向して設けられる第1吸引ダクトと、を有する。第2回収部は、掃気用ガスを供給する第2給気ノズルと、第2給気ノズルに対向して設けられる第2吸引ダクトと、を有する。
【0007】
本開示のレーザヘッドから加工対象物にレーザ光を照射するレーザ加工方法は、第1回収ステップと第2回収ステップとが選択的に行われる。
第1回収ステップは、第1給気ノズルから掃気用ガスを供給するとともに、レーザ光の照射による生成物を含む掃気用ガスを第1吸引ダクトで吸引する。
第2回収ステップは、第2給気ノズルから掃気用ガスを供給するとともに、生成物を含む掃気用ガスを第2吸引ダクトで吸引する。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、第1給気ノズルと第1吸引ダクトとを有する第1回収部と、第2給気ノズルと第2吸引ダクトとを有する第2回収部を備える。本開示によれば、例えば、第1回収部を往路における生成物の回収に用い、第2回収部を復路における生成物の回収に用いる、というように、往路および復路のそれぞれにおいて機能する回収部を備えるので、効率よく生成物を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るレーザ加工装置の要部を示す図である。
【
図2】実施形態に係るレーザ加工装置の回収機構を示す図である。
【
図3】レーザ加工ヘッドが往復移動する様子を示す図である。
【
図4】実施形態に係るレーザ加工装置の回収動作を示す図である。
【
図5】第1変形例に係るレーザ加工装置の要部を示す図である。
【
図6】第2変形例に係るレーザ加工装置の要部を示す図である。
【
図7】第2変形例に係るレーザ加工装置の動作を示す図である。
【
図8】第3変形例に係るレーザ加工装置の要部を示す図である。
【
図9】第3変形例に係るレーザ加工装置の動作を示す図である。
【
図10】本開示に含まれる第1回収部、第2回収部の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係るレーザ加工装置1の実施形態について説明する。
レーザ加工装置1は、レーザ光を出射するレーザヘッド10と、ヒュームなどの生成物を回収する回収機構30と、を備える。回収機構30は、第1給気ノズル32と第1吸引ダクト33の組および第2給気ノズル36と第2吸引ダクト37の組を備えている。レーザヘッド10が往路と復路を往復移動して加工対象物Wを加工する場合、例えば、往路を移動するときには一方の第1給気ノズル32と第1吸引ダクト33の組が機能し、復路を移動するときには他方の第2給気ノズル36と第2吸引ダクト37の組が機能する。以下、構成、動作および効果の順で、レーザ加工装置1を説明する。
【0011】
[レーザ加工装置1の構成例:
図1,
図2参照]
レーザ加工装置1は、
図1および
図2に示すように、レーザヘッド10と回収機構30を備える。
【0012】
[レーザヘッド10:
図1参照]
レーザヘッド10は、図示が省略されるレーザ発振器で生成されたレーザ光LBを加工対象物Wの表面で焦点を結ぶように出射する。レーザ発振器として、例えば、光ファイバを媒質としてレーザを出力するファイバレーザ出力装置、または、短パルスのレーザを出力する短パルスレーザ出力装置などが用いられる。また、レーザ発信器とレーザヘッド10との間には、レンズ、プリズムを含む光学系、その他の機器が適用される。
【0013】
[回収機構30:
図1,
図2参照]
回収機構30は、例えば往路における加工の際に機能する第1回収部31と、例えば復路における加工の際に機能する第2回収部35と、を備える。第1回収部31と第2回収部35は、構成要素は同じであるが、構成要素の配置が180度だけ異なる。回収機構30は、第1回収部31と第2回収部35に掃気用ガスを供給するとともに供給された掃気用ガスをヒュームなどの生成物と一緒に加工部位から排出する掃気部40を備える。
【0014】
第1回収部31は、不活性ガスなどの掃気用ガスを加工部位に供給する第1給気ノズル32と、生成物を含む掃気用ガスを加工部位から排出する第1吸引ダクト33と、を備える。第1給気ノズル32と第1吸引ダクト33とは、レーザヘッド10を間に挟み、かつ、軸線Cを基準とする対称の位置、つまり180度だけ位相がずれた位置に配置される。この配置が最も好ましい対向配置の例であるが、掃気ができる例えば位相が150度程度ずれている場合でも、本開示の対向配置に含まれる。
【0015】
第1給気ノズル32はその先端に給気口32Aを備え、第1吸引ダクト33はその先端に吸引口33Aを備える。また、第1給気ノズル32には先端の近くに屈曲部32Bが形成され、第1吸引ダクト33は先端の近くに屈曲部33Bが形成される。第1給気ノズル32の給気口32Aと第1吸引ダクト33の吸引口33Aとが互いに対向するように、屈曲部32Bと屈曲部33Bが軸線Cに向けて曲がる。
【0016】
第2回収部35は、不活性ガスなどの掃気用ガスを加工部位に供給する第2給気ノズル36と、生成物を含む掃気用ガスを加工部位から排出する第2吸引ダクト37と、を備える。第2給気ノズル36と第2吸引ダクト37とは、レーザヘッド10を間に挟み、かつ、軸線Cを基準とする対称の位置、つまり180度だけ位相がずれた位置に配置される。
【0017】
第2給気ノズル36はその先端に給気口36Aを備え、第2吸引ダクト37はその先端に吸引口37Aを備える。また、第2給気ノズル36には先端の近くに屈曲部36Bが形成され、第2吸引ダクト37には先端の近くに屈曲部37Bが形成される。第2給気ノズル36の給気口36Aと第2吸引ダクト37の吸引口37Aとが互いに対向するように、屈曲部36Bと屈曲部37Bが軸線Cに向けて曲がる。
【0018】
第1給気ノズル32と第2吸引ダクト37は、第1給気ノズル32が径方向の内側に、かつ、第2吸引ダクト37が径方向の外側に並んで配置される。第2給気ノズル36と第1吸引ダクト33は、第2給気ノズル36が径方向の内側に、かつ、第1吸引ダクト33が径方向の外側に並んで配置される。ここでいう径方向とは、軸線Cを中心とする仮想的な円についてのものである。
【0019】
第1回収部31および第2回収部35は、レーザヘッド10に固定される支持筒38に支持される。支持筒38の中央を占める空隙からなるレーザ通路39にレーザヘッド10が配置されており、その先端から出射されるレーザ光LBがレーザ通路39を通って加工対象物W(図示省略)に照射される。第1回収部31(第1給気ノズル32,第1吸引ダクト33)および第2回収部35(第2給気ノズル36,第2吸引ダクト37)は、一例として、支持筒38の下端部から吊り下げられている。第1給気ノズル32、第1吸引ダクト33、第2給気ノズル36および第2吸引ダクト37には、支持筒38を介して、掃気部40を構成する第1給気管46A、第1吸引管46C、第2給気管47Aおよび第2吸引管47Cが接続される。
【0020】
[掃気部40:
図2,
図1参照]
掃気部40は、回収機構30を用いてヒュームなどの生成物を含むエア、その他のガスを掃気する。ここで、掃気とは、ガスを供給する給気と当該ガスの吸引の両方を行うことをいう。以下では掃気用ガスとして圧縮エアを用いる例を説明するが、他のガス、例えば不活性ガスを掃気用ガスとして用いることもできる。
掃気部40は、圧縮機41と、圧縮機41から供給される圧縮エアの供給および停止を行う第1電磁弁43および第2電磁弁45と、を備える。圧縮機41と第1電磁弁43および第2電磁弁45との間は、途中から分岐管42Aと分岐管42Bに分岐する基礎配管42により接続されており、圧縮機41からの圧縮エアは基礎配管42を通って第1電磁弁43および第2電磁弁45に至る。
【0021】
第1電磁弁43には第1掃気管46の一端が接続され、第2電磁弁45には第2掃気管47の一端が接続される。第1掃気管46はその他端が第1回収部31に接続され第2掃気管47はその他端が第2回収部35に接続される。
【0022】
第1掃気管46は、第1給気管46Aと第1圧縮エア供給管46Bに分岐される。第1給気管46Aは第1給気ノズル32に接続され、第1圧縮エア供給管46Bは第1エジェクタ48に接続される。エジェクタとは、内部に圧縮エアを流すことにより減圧(真空)空間を形成する機械的な要素をいう。
圧縮機41からの圧縮エアが第1電磁弁43を介して第1給気管46Aに供給されると、圧縮エアは第1給気ノズル32の給気口32Aから加工部位に向けて吐出される。
第1エジェクタ48には第1吸引管46Cの一端が接続され、第1吸引管46Cの他端は第1吸引ダクト33に接続される。第1エジェクタ48に圧縮機41からの圧縮エアが供給されると、減圧された第1エジェクタ48に接続される第1吸引管46Cの内部が減圧雰囲気とされることで、第1吸引ダクト33は吸引口33Aからヒュームなどの生成物を含む周囲のエアを吸引する。吸引された生成物を含むエアは第1エジェクタ48を介して図示が省略されるタンクなどの容器に回収される。
【0023】
第2掃気管47は、第2給気管47Aと第2圧縮エア供給管47Bに分岐される。第2給気管47Aは第2給気ノズル36に接続され、第2圧縮エア供給管47Bは第2エジェクタ49に接続される。
圧縮機41からの圧縮エアが第2電磁弁45を介して第2給気管47Aに供給されると、圧縮エアは第2給気ノズル36の給気口36Aから吐出される。
第2エジェクタ49には第2吸引管47Cの一端が接続され、第2吸引管47Cの他端は第2吸引ダクト37に接続される。第2エジェクタ49に圧縮機41からの圧縮エアが供給されると、減圧された第2エジェクタ49に接続される第2吸引管47Cの内部が減圧雰囲気とされることで、第2吸引ダクト37は吸引口37Aからヒュームなどの生成物を含む周囲のエアを吸引する。吸引された生成物を含むエアは第2エジェクタ49を介して図示が省略されるタンクなどの容器に回収される。
【0024】
掃気部40において、第1電磁弁43と第2電磁弁45とは、レーザヘッド10による加工対象物Wの加工が往路と復路のいずれに対するものであるかに対応して開閉が選択的に行われる。つまり、往路を加工するときには、例えば、第1電磁弁43が開(ON)、第2電磁弁45が閉(OFF)とされる。そうすると、第1給気管46Aを介して第1給気ノズル32に圧縮エアが供給されるとともに、第1圧縮エア供給管46Bを介して第1エジェクタ48に圧縮エアが供給され、掃気がなされる。また、復路を加工するときには、第2電磁弁45が開(ON)、第1電磁弁43が閉(OFF)とされる。そうすると、第2給気管47Aを介して第2給気ノズル36に圧縮エアが供給されるとともに、第1圧縮エア供給管46Bを介して第2エジェクタ49に圧縮エアが供給され、掃気がなされる。
【0025】
[往復移動:
図3,
図4参照]
レーザヘッド10が往復移動しながら加工対象物Wを加工することについて、
図3および
図4を参照して説明する。
図3において、太い実線が平面視した加工対象物Wにおける加工軌跡MTである。レーザ光LBを出射するレーザヘッド10を加工軌跡MTに倣って移動させながら加工がなされる。レーザ光LBを一度だけ加工軌跡MTに倣ったとしても、加工対象物Wの加工を完了できないことがある。例えば、加工対象物Wを加工軌跡MTに沿って切断する場合である。この場合は、レーザヘッド10を加工軌跡MTの始点SPから終点EPまでを移動させたなら(
図3 1st)、逆向きにレーザヘッド10を終点EPから始点SPまで移動させる(
図32nd)。この動作が往復移動である。さらにレーザ光LBの照射が必要であれば、レーザヘッド10を加工軌跡MTの始点SPから終点EPまでを移動させたなら(
図3 3rd)、逆向きにレーザヘッド10を終点EPから始点SPまで移動させる(
図3 4th)。なお、
図3において、レーザ光LBをも示す破線矢印で示される往復移動の軌跡は加工軌跡MTからそれぞれをずらして描いているが、これは往復移動を認識できるようにするためである。
【0026】
図4は、往路(O-B)における掃気部40の動作および復路(I-B)における掃気部40の動作を示している。なお、開いている第1電磁弁43または第2電磁弁45は白抜きで表され、閉じている第1電磁弁43または第2電磁弁45は黒く塗りつぶされている。さらにエアが流れている配管類は太く描かれている。
【0027】
往路(O-B)においては、第1電磁弁43が開いているのに対して、第2電磁弁45が閉じている。圧縮機41からの圧縮エアは、第1給気管46A、第1給気ノズル32を通って給気口32Aから吐出される。また、圧縮機41からの圧縮エアは、第1圧縮エア供給管46B、第1エジェクタ48を通ることで第1吸引管46Cおよび第1吸引ダクト33の内部を減圧し、吸引口33Aから周囲のエアを吸引する。こうして、往路における掃気によるヒュームなどの生成物が回収される。
【0028】
復路(I-B)においては、第1電磁弁43が閉じているのに対して、第2電磁弁45が開いている。圧縮機41からの圧縮エアは、第2給気管47A、第2給気ノズル36を通って給気口36Aから吐出される。また、圧縮機41からの圧縮エアは、第2圧縮エア供給管47B、第2エジェクタ49を通ることで第2吸引管47Cおよび第2吸引ダクト37の内部を減圧雰囲気とし、吸引口37Aから周囲の生成物を含むエアを吸引する。こうして、往路における掃気によるヒュームなどの生成物が回収される。
【0029】
[効 果]
回収機構30によれば、いずれも掃気によるヒュームなどの生成物の回収が可能な第1回収部31と第2回収部35を備え、かつ、第1回収部31と第2回収部35を互いに対向して配置する。したがって、レーザヘッド10を往復移動しながら加工対象物Wを加工するのに、第1回収部31と第2回収部35の配置を変えることなく、ヒュームなどの生成物の回収ができる。
【0030】
掃気部40は、第1給気管46Aを第1給気ノズル32に接続するとともに、第1圧縮エア供給管46Bの途中に第1エジェクタ48を介在させ、かつ、第1エジェクタ48と第1吸引ダクト33を第1吸引管46Cで接続する。また、掃気部40は、第2給気管47Aを第2給気ノズル36に接続するとともに、第2圧縮エア供給管47Bの途中に第2エジェクタ49を介在させ、かつ、第2エジェクタ49と第2吸引ダクト37を第2吸引管47Cで接続する。したがって、掃気部40によれば、一台の圧縮機41を設けるだけで、第1回収部31によるヒュームなどの生成物の回収と、第2回収部35によるヒュームなどの生成物の回収を選択的に行うことができる。
【0031】
好ましい実施形態を説明したが、上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0032】
[第1変形例:
図5参照]
例えば、
図5に示すように、第1給気ノズル32および第1吸引ダクト33を備える第1回収部31と、第2給気ノズル36および第2吸引ダクト37を備える第2回収部35と、を位相をずらして配置できる。この第1回収部31と第2回収部35の配置であっても、加工軌跡MTに沿って往復移動させれば、生成物の回収を行うことができる。しかも、第1給気ノズル32と第2吸引ダクト37とが互いに径方向において離れて配置され、かつ、第1吸引ダクト33と第2給気ノズル36とが互いに離れて配置される。したがって、第1吸引ダクト33の吸引口33Aおよび第2吸引ダクト37の吸引口37Aの開口寸法を大きくしても、それぞれ、第1給気ノズル32と第2給気ノズル36との干渉を避けることができるので、ヒュームなどの生成物の回収の効率を向上できる。なお、
図5においては吸引口33Aと吸引口37Aの開口径は従前のままとしている。
【0033】
[第2変形例:
図6,
図7参照]
また、
図6に示すように、レーザヘッド10の駆動機構50を設けることができる。駆動機構50は、レーザヘッド10を昇降させる例えば流体圧シリンダ51と、流体圧シリンダ51を回転可能に支持する電動モータ53と、を備える。
【0034】
例えば、加工対象物Wの表面WSに起伏があり、かつ、この起伏に関する情報を取得しておく。そうすれば、
図7に示すように、この起伏情報に基づいて、レーザヘッド10と加工対象物Wの表面WSとの距離Lが一定となるように、流体圧シリンダ51を昇降させる。そうすれば、第1回収部31および第2回収部35と加工対象物Wの干渉を防止しつつ、安定した加工対象物Wの加工が実現される。
【0035】
ここでは図示を省略するが、加工対象物Wの表面WSにおける加工軌跡MTに、直線だけでなく曲線の部分や折れ曲がった部分が存在する平面方向に変動することがある。この場合には、流体圧シリンダ51だけでなく、電動モータ53を回転駆動することにより、加工軌跡MTに対応してレーザヘッド10を移動せることができる。この場合も、平面方向に変動する加工軌跡MTに関する情報を取得しておけば、レーザヘッド10を加工軌跡MTに沿って移動させることができる。流体圧シリンダ51の昇降をも含めれば、3次元形状の加工軌跡MTに対応できる。
【0036】
[第3変形例:
図8、
図9参照]
次に、
図8に示すように、第1給気ノズル32および第1吸引ダクト33を備える第1回収部31と、第2給気ノズル36および第2吸引ダクト37を備える第2回収部35と、に加えて、第3給気ノズル34を設けることができる。第3給気ノズル34は、第1吸引ダクト33と第2吸引ダクト37の間に設けられる。第1回収部31および第2回収部35により水平方向Hに沿う表面WSを加工することを想定しているのに対して、鉛直方向Vの加工用として第1給気ノズル32よび第2給気ノズル36とは圧縮エアの吐出角度の異なる第3給気ノズル34を設ける。この吐出角度の相違は、第3給気ノズル34からの圧縮エアをレーザ光LBの照射位置に届けるためである。これにより鉛直方向Vに沿う表面WSを円滑に加工することもできる。
【0037】
鉛直方向Vにレーザ加工する場合において、
図9のSTEP1に示すように、加工軌跡MTに第3給気ノズル34が沿うように、電動モータ53で位相を合わせる。このとき、レーザヘッド10は一例として水平方向Hに対して45°だけ傾いている。
【0038】
以上の姿勢を保ったまま、レーザヘッド10および回収機構30を、表面WSの水平方向Hと鉛直方向Vとの交差部分であるコーナ隅部に向けて前進させてから、
図9のSTEP2に示すようにコーナ隅部から鉛直方向Vの上向きに移動させながら加工する。この第3変形例による加工の過程において、第1給気ノズル32および第2給気ノズル36からの圧縮エアの供給は行わないが、第1吸引ダクト33および第2吸引ダクト37からのヒュームなどの生成物の吸引は行う。ヒュームなどの回収は、コーナ隅部の近傍に外部の集塵機によって行うこともできる。また、
図9のSTEP2は上向きの加工だけを示しているが、第3変形例においても、レーザヘッド10および回収機構30を
図9のSTEP2の逆に下向きにように移動させる昇降を繰り返してレーザ加工を行うことができる。
【0039】
[本開示に含まれる第1回収部、第2回収部の配置例:
図10]
第1回収部31を構成する第1給気ノズル32と第1吸引ダクト33および第2回収部35を構成する第2給気ノズル36と第1吸引ダクト33について、実施形態および変形例において3つの配置例を示した。3つの配置例を
図10に示す。
図10において、上段が実施形態の配置例に対応し、中段が第1変形例の配置例に対応し、下段が第3変形例の配置例に対応する。
【0040】
実施形態の配置例は、第1給気ノズル32と第1吸引ダクト33とを結ぶ第1線分L1と、第2給気ノズル36と第2吸引ダクト37とを結ぶ第2線分L2と、が重複する。つまり、第1給気ノズル32、第1吸引ダクト33、第2給気ノズル36および第2吸引ダクト37が一直線上に配列される。
第1変形例の配置例は、第1給気ノズル32と第1吸引ダクト33とを結ぶ第1線分L1と、第2給気ノズル36と第2吸引ダクト37とを結ぶ第2線分L2と、が交差する。
実施形態の配置例において、第1線分L1と第2線分L2を加工軌跡MTに沿う方向に電動モータ53で都度向きを合わせて往復移動させれば、生成物を最も効率よく回収できる。これに対して、第3変形例の配置例は、第3給気ノズル34に対応する吸引ダクトが設けられてないため、実施形態の配置例に比べると生成物の回収の効率は劣るおそれがあるものの、加工対象物Wの鉛直方向Vの表面WSの周辺に設置する外部集塵機と組み合わせてヒュームなどを吸引することにより、生成物を十分に回収できる。
【0041】
以上の通りであり、第1線分L1と第2線分L2が重複する場合に限らず、第1線分L1と第2線分L2が交差する場合であっても、本開示の第1回収部31と第2回収部35の配置例に含まれる。
[付記]
<付記1>
レーザ加工装置(1)は、加工対象物(W)にレーザ光(LB)を照射するレーザヘッド(10)と、レーザ光(LB)の照射による生成物を回収する回収機構(30)と、を備える。
回収機構(30)は、掃気用ガスを供給する第1給気ノズル(32)と、第1給気ノズル(32)に対向して設けられる第1吸引ダクト(33)と、を有する第1回収部(31)と、掃気用ガスを供給する第2給気ノズル(36)と、第2給気ノズル(36)に対向して設けられる第2吸引ダクト(37)と、を有する第2回収部(35)と、を備える。
【0042】
<付記2>
付記1において、好ましくは、第1給気ノズル(32)と第2吸引ダクト(37)とが、レーザヘッド(10)の軸線(C)を中心とする円の径方向に並んで設けられ、第2給気ノズル(36)と第1吸引ダクト(33)とが、径方向に並んで設けられる。
この配列によれば、第1給気ノズル(32)、第2吸引ダクト(37)、第2給気ノズル(36)および第1吸引ダクト(33)が一直線上に並ぶ。この直線に沿って往復移動させれば、生成物を効率よく回収できる。
【0043】
<付記3>
付記1または付記2において、好ましくは、第1給気ノズル(32)が第2吸引ダクト(37)よりも径方向の内側に設けられ、第2給気ノズル(36)が第1吸引ダクト(33)よりも径方向の内側に設けられる。
この配列によれば、第1給気ノズル(32)から吐出される掃気用ガスが第2吸引ダクト(37)に邪魔されずに加工部位に向けて供給される。また、第2給気ノズル(36)から吐出される掃気用ガスが第1吸引ダクト(33)に邪魔されずに加工部位に向けて供給される。
【0044】
<付記4>
付記1~付記3において、好ましくは、第1給気ノズル(32)と第1吸引ダクト(33)とを結ぶ第1線分(L1)と、第2給気ノズル(36)と第2吸引ダクト(37)とを結ぶ第2線分(L2)と、が交差する。
このように、第1線分(L1)と第2線分(L2)とが交差する配列であっても、加工軌跡(MT)を選択することにより、生成物を十分に回収できる。
【0045】
<付記5>
付記1~付記4において、好ましくは、回収機構(30)は、掃気用ガスを供給する第3給気ノズル(34)を備える。
第3給気ノズル(34)を備えることにより、平面方向のみならず鉛直方向の加工もできる。
【0046】
<付記6>
付記1~付記5において、好ましくは、レーザヘッド(10)が、往路と復路とを往復移動しながら加工対象物(W)を加工し、往路において、第1回収部(31)により生成物を回収し、復路において、第2回収部(35)により生成物を回収する。
第1回収部(31)と第2回収部(35)を備えることにより、往復移動を伴う加工であっても、レーザヘッド(10)を含む機器類を回転させることなく、生成物を回収できる。
【0047】
<付記7>
付記1~付記6において、好ましくは、回収機構(30)は、第1回収部(31)と第2回収部(35)に掃気用ガスを選択的に供給するとともに、生成物を含む掃気用ガスを吸引する掃気部(40)を備える。
掃気部(40)は、掃気用ガスとしての圧縮エアを生成する圧縮機(41)と、圧縮エアを第1給気ノズル(32)または第2給気ノズル(36)に供給する給気管(46A,47A)と、圧縮エアが供給されることにより減圧雰囲気を生成するエジェクタ(48,49)と第1吸引ダクト(33)または第2吸引ダクト(37)とを接続する吸引管(46C,47C)と、を備える。
この掃気部(40)によれば、一台の圧縮機(41)を設けるだけで、第1回収部(31)による生成物の回収と、第2回収部(35)による生成物の回収を選択的に行うことができる。
【0048】
<付記8>
付記7において、好ましくは、圧縮機(41)から圧縮エアが供給され、それぞれ独立して開閉がなされる第1電磁弁(43)と第2電磁弁(45)を備え、第1電磁弁(43)が開、第2電磁弁(45)が閉とされると、給気管(46A)を通って圧縮エアが第1給気ノズル(32)に供給され、かつ、吸引管(46C)を通じて第1吸引ダクト(33)に減圧雰囲気が作用し、第1電磁弁(43)が閉、第2電磁弁(45)が開とされると、給気管(47A)を通って圧縮エアが第2給気ノズル(36)に供給され、かつ、吸引管(47C)を通じて第2吸引ダクト(37)に減圧雰囲気が作用する。
第1電磁弁(43)と第2電磁弁(45)の開閉を制御することにより、第1回収部(31)による生成物の回収と、第2回収部(35)による生成物の回収を、選択的に行うことができる。
【0049】
<付記9>
付記1~付記8において、好ましくは、レーザヘッド(10)および第1回収部(31)、第2回収部(35)を昇降させ、かつ、レーザヘッド(10)の軸線(C)の周りに回転させる駆動機構(50)を備える。
この駆動機構(50)を設けることにより、表面(WS)が三次元的に変化する加工対象物(W)の加工に対応できる。
【0050】
<付記10>
レーザヘッド(10)から加工対象物(W)にレーザ光(LB)を照射するレーザ加工方法であって、第1給気ノズル(32)から掃気用ガスを供給するとともに、レーザ光(LB)の照射による生成物を含む掃気用ガスを第1吸引ダクト(33)で吸引する第1回収ステップ(31)と、第2給気ノズル(36)から掃気用ガスを供給するとともに、生成物を含む掃気用ガスを第2吸引ダクト(37)で吸引する第2回収ステップ(35)と、が選択的に行われる。
【符号の説明】
【0051】
1 レーザ加工装置
10 レーザヘッド
30 回収機構
31 第1回収部
32 第1給気ノズル
32A 給気口
32B 屈曲部
33 第1吸引ダクト
33A 吸引口
33B 屈曲部
34 第3給気ノズル
35 第2回収部
36 第2給気ノズル
36A 給気口
36B 屈曲部
37 第2吸引ダクト
37A 吸引口
37B 屈曲部
38 支持筒
39 レーザ通路
40 掃気部
41 圧縮機
42 基礎配管
42A 分岐管
42B 分岐管
43 第1電磁弁
45 第2電磁弁
46 第1掃気管
46A 第1給気管
46B 第1圧縮エア供給管
46C 第1吸引管
47 第2掃気管
47A 第2給気管
47B 第2圧縮エア供給管
47C 第2吸引管
48 第1エジェクタ
49 第2エジェクタ
50 駆動機構
51 流体圧シリンダ
53 電動モータ
LB レーザ光
MT 加工軌跡
SP 始点
EP 終点
C 軸線
H 水平方向
V 鉛直方向
W 加工対象物
WS 表面