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  • 特開-ホットメルト接着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043757
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ホットメルト接着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20240326BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20240326BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20240326BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240326BHJP
   H01M 8/0284 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20240326BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J7/20
C09J167/00
C09J163/00
H01M8/0284
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148924
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田渕 聡寛
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5H126
【Fターム(参考)】
4J004AA13
4J004AA15
4J004AB03
4J040EC001
4J040EC061
4J040EC371
4J040ED001
4J040EF282
4J040GA05
4J040JA09
4J040JB01
4J040KA16
4J040LA01
4J040LA02
4J040NA19
5H126AA13
5H126BB06
5H126FF04
5H126FF07
5H126GG18
5H126JJ00
5H126JJ05
5H126JJ08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性に優れる接着剤層を有するホットメルト接着シートを提供する。
【解決手段】ホットメルト接着シートは、ホットメルト接着剤が、架橋剤を含む接着剤組成物の架橋物を含み、かつ、結晶性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、イソシアネート系架橋剤を含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂は、0℃以上のガラス転移温度を有する第1結晶性ポリエステル樹脂と、-50℃以下のガラス転移温度を有する第2結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びゴム変性エポキシ樹脂を含有し、前記第1結晶性ポリエステル樹脂及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂は、65質量部以上90質量部以下含有され、前記第2結晶性ポリエステル樹脂は、10質量部以上35質量部以下含有されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方面にホットメルト接着剤で形成された接着剤層が積層されたホットメルト接着シートであって、
前記ホットメルト接着剤は、架橋剤を含む接着剤組成物の架橋物を含み、かつ、結晶性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、イソシアネート系架橋剤を含有し、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、0℃以上のガラス転移温度を有する第1結晶性ポリエステル樹脂と、-50℃以下のガラス転移温度を有する第2結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びゴム変性エポキシ樹脂を含有し、
前記第1結晶性ポリエステル樹脂及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂は、65質量部以上90質量部以下含有され、前記第2結晶性ポリエステル樹脂は、10質量部以上35質量部以下含有されている
ホットメルト接着シート。
【請求項2】
前記第1結晶性ポリエステル樹脂は、130℃以上の軟化点を有し、
前記第2結晶性ポリエステル樹脂は、120℃以下の軟化点を有する
請求項1に記載のホットメルト接着シート。
【請求項3】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、450g/eq以上1000g/eq以下である
請求項1または2に記載のホットメルト接着シート。
【請求項4】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である
請求項3に記載のホットメルト接着シート。
【請求項5】
固体高分子型燃料電池の固体電解質膜に接着させて用いられる
請求項1または2に記載のホットメルト接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種プラスチック用の接着剤として、低温域(例えば、-10℃~15℃)での接着安定性、並びに、常温域(25±10℃)での接着性、柔軟性、加工性、及び、各種分子設計の容易さから、ポリウレタン系の接着剤が多く使われている。
前記ポリウレタン系の接着剤としては、主剤として、ポリエステルポリオールやアクリルポリオールを含み、かつ、架橋剤として、ポリイソシアネートを含んでおり、前記主剤と前記架橋剤との間で架橋反応を進行させることによりウレタン結合を生成させて用いられるものや、主剤として、ある程度の鎖長を有するポリウレタン(いわゆる、ポリウレタンプレポリマー)を含み、かつ、架橋剤として、イソシアネート系架橋剤を含んでおり、前記主剤と前記架橋剤との間で架橋反応を進行させ硬化させることにより用いられるものがある。
【0003】
また、主剤としてポリウレタン樹脂を含み、エポキシ樹脂、および、イソシアネート系架橋剤を含有した二液性の接着剤として、下記特許文献1には、耐湿熱性に優れた接着剤が記載されている。
近年、下記特許文献1に記載されたような液状の接着剤に比べて、取り扱い性に優れるとの観点から、部材の接着にホットメルト接着剤を利用する機会が増えている。
前記ホットメルト接着剤は、特に取り扱い性に優れるという観点から、ホットメルト接着シートの形態で用いられることが多い。
前記ホットメルト接着シートは、通常、ポリマーシートで形成された基材層と、該基材層上に積層され、前記ホットメルト接着剤で形成された接着剤層とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/157604号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐湿熱性(耐熱水性)の向上を図ることは、引用文献1に記載されたような二液性の接着剤だけではなく、ホットメルト接着シートの接着剤層にも求められている。
【0006】
また、ホットメルト接着シートの接着剤層には、耐酸性、耐アルコール性などを向上させることが求められているものの、そのような要望は満たされていない。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性に優れる接着剤層を有するホットメルト接着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るホットメルト接着シートは、
基材の少なくとも一方面にホットメルト接着剤で形成された接着剤層が積層されたホットメルト接着シートであって、
前記ホットメルト接着剤は、架橋剤を含む接着剤組成物の架橋物を含み、かつ、結晶性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、イソシアネート系架橋剤を含有し、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、0℃以上のガラス転移温度を有する第1結晶性ポリエステル樹脂と、-50℃以下のガラス転移温度を有する第2結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、
前記第1結晶性ポリエステル樹脂及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂は、65質量部以上90質量部以下含有され、前記第2結晶性ポリエステル樹脂は、10質量部以上35質量部以下含有されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性に優れる接着剤層を有するホットメルト接着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るホットメルト接着シートの構成を示す概略断面図。
図2】本発明の一実施形態に係るホットメルト接着シートを固体高分子型燃料電池の固体電解質膜に取り付けて使用した状態を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るホットメルト接着シートについて説明する。
以下では、本発明の一実施形態を、単に、本実施形態と称することがある。
【0012】
図1に示したように、本実施形態に係るホットメルト接着シート10は、基材10aの一方面にホットメルト接着剤で形成された接着剤層10bが積層されたホットメルト接着シートである。
図1に示したホットメルト接着シート10では、基材10aの一方面にのみ接着剤層10bが積層されているが、接着剤層10bは基材10aの他方面に積層されていてもよい。
すなわち、ホットメルト接着シート10は、基材10aの両面に接着剤層10bが積層されたホットメルト接着シートであってもよい。
【0013】
本実施形態に係るホットメルト接着シート10においては、前記ホットメルト接着剤は、架橋剤を含む接着剤組成物の架橋物を含み、かつ、結晶性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、イソシアネート系架橋剤を含有する。
本実施形態に係るホットメルト接着シート10においては、前記結晶性ポリエステル樹脂は、0℃以上のガラス転移温度を有する第1結晶性ポリエステル樹脂と、-50℃以下のガラス転移温度を有する第2結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。
本実施形態に係るホットメルト接着シート10においては、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びゴム変性エポキシ樹脂を含有する。
本実施形態に係るホットメルト接着シート10においては、前記第1結晶性ポリエステル樹脂及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂は、65質量部以上90質量部以下含有され、前記第2結晶性ポリエステル樹脂は、10質量部以上35質量部以下含有されている。
以下では、結晶性ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂(A)と称し、エポキシ樹脂をエポキシ樹脂(B)と称し、イソシアネート系架橋剤をイソシアネート系架橋剤(C)と称する。
また、第1結晶性ポリエステル樹脂を第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)と称し、第2結晶性ポリエステル樹脂を第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)と称する。
さらに、ビスフェノール型エポキシ樹脂をビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)と称し、ゴム変性エポキシ樹脂をゴム変性エポキシ樹脂(b2)と称する。
【0014】
本実施形態に係るホットメルト接着シート10の接着剤層10bにおいては、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)(第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2))の少なくとも一部と前記エポキシ樹脂(B)とは、前記イソシアネート系架橋剤(C)によって架橋されている。
すなわち、本実施形態に係るホットメルト接着シート10の接着剤層10bにおいては、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)の少なくとも一部と前記エポキシ樹脂(B)とは、前記イソシアネート系架橋剤(C)によって架橋された状態とされて含まれている。
ここで、上記したように、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が0℃以上の第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)、及び、ガラス転移温度が-50℃以下の第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)というガラス転移温度差が大きい2種類の結晶性エポキシ樹脂を含んでいる。
そのため、本実施形態に係るホットメルト接着シート10の接着剤層10bにおいては、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)がゴム状態となる第1ゴム状態と、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)がゴム状態となる第2ゴム状態とを、十分にずらしたタイミングで発現させることができる。
また、前記第1ゴム状態の発現の程度及び前記第2ゴム状態の発現の程度は、接着剤層10b中における、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)の含有比率及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の含有比率の影響を受けると考えられる。
そして、上記したように、本実施形態に係るホットメルト接着シート10においては、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、65質量部以上90質量部以下含有され、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)は、10質量部以上35質量部以下含有されている。
このように、本実施形態に係るホットメルト接着シート10では、接着剤層10bが、ガラス転移温度差が大きい2種類の結晶性エポキシ樹脂を上記のごとき適切な含有比率で含んでいるので、接着剤層10bを被着体(例えば、PENフィルムなどの樹脂フィルムやパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂シートなどの樹脂シート)に好適に被着させることができる。
また、上記したように、前記エポキシ樹脂(B)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)を含有しており、該ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)は、耐酸性や耐アルコール性などの耐薬品性及び耐湿熱性(耐熱水性)に優れるという性質を有する。
さらに、上記したように、前記エポキシ樹脂(B)は、ゴム変性エポキシ樹脂(b2)を含有しており、前記ゴム変性エポキシ樹脂(b2)は、十分なゴム弾性を示すという性質を有する。
これにより、接着剤層10bは、前記被着体に対して良好なる追従性を示すようになって、前記被着体に対してより一層好適に被着されるものとなる。
本実施形態に係るホットメルト接着シート10の接着剤層10bでは、上記のごとき効果が生じるようになるので、該接着剤層10bは、耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性に優れるという効果を奏するものとなる。
例えば、接着剤層10bは、PENフィルムやパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂シートなどの被着体に被着させた状態において、95℃といった高温で水やアルコールと接触したり、95℃といった高温で強酸性下に曝されたりしたような場合でも、長時間(1000時間)に亘って、前記被着体に対する接着性を維持することができる。
【0015】
なお、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水酸基価の値が高い場合には、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、前記イソシアネート系架橋剤(C)を介して前記エポキシ樹脂(B)と架橋構造体を形成し易くなり、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の水酸基価の値が低い場合には、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)は、前記イソシアネート系架橋剤(C)を介して前記エポキシ樹脂(B)と架橋構造体を形成し難くなり、分散された状態で存在し易くなると考えられる。
すなわち、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)は、前記架橋構造体中に適度に分散された状態で存在するようになると考えられる。
そして、このように、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)が、前記架橋構造体中に適度に分散された状態においては、前記接着剤層10bは、前記被着体に対してより一層好適に被着させやすいものになると考えられる。
これにより、本実施形態に係るホットメルト接着シート10の接着剤層10bは、耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性に優れるという効果をより一層奏し易いものとなると考えられる。
【0016】
(結晶性ポリエステル樹脂(A))
結晶性ポリエステル樹脂(A)としては、多価カルボン酸とポリオールとを脱水縮合させてなるものを採用することができる。
ホットメルト接着シート10の接着剤層10bにおいて、前記エポキシ樹脂(B)の一部が開環されていない状態(未反応な状態)である場合、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が加水分解されて分子末端に水酸基やカルボキシ基を有する短鎖なものとなったときに、これらに未反応のエポキシ基を反応させて前記結晶性ポリエステル樹脂(A)を再び長鎖化させることができる。
【0017】
本明細書において、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)とは、多価カルボン酸とポリオールとを含むポリエステルのうち、示差走査熱量計装置(DSC)を用いた測定において、結晶化に由来するピーク及び結晶融解に由来するピークの少なくとも一方を示すポリエステル樹脂を意味する。
これに対し、非結晶性ポリエステル樹脂とは、DSCを用いた測定によって結晶化に由来するピーク及び結晶融解に由来するピークのいずれもが示されないポリエステル樹脂を意味する。
【0018】
したがって、ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステル樹脂であるか非結晶性ポリエステル樹脂であるかを判別する必要がある場合には、DSCを用いた測定により、結晶化に由来するピーク及び結晶融解に由来するピークの少なくとも一方が確認されるか否かによって判別することができる。
【0019】
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)を構成する前記多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;p-オキシ安息香酸、p-(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸などの不飽和脂環族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などのトリカルボン酸が挙げられる。
【0020】
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)を構成する前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールなどの脂肪族グルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングルコール、ジプロピレングリコールなどのオリゴアルキレングルコール;1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレンエーテルグルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどのトリオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0021】
上で説明したように、本実施形態のホットメルト接着シート10では、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)は、0℃以上のガラス転移温度を有する第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)と、-50℃以下のガラス転移温度を有する第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)とを含有する。
【0022】
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)のガラス転移温度、及び、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)のガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量計装置(DSC)を用いて測定することができる。
より具体的には、窒素ガスを流しながら、予測されるガラス転移温度Tgよりも30K以上低い温度から予測されるガラス転移温度よりも30K以上高い温度まで昇温速度5℃/minで試料(第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2))を昇温させたときに得られるDSC曲線から、前記試料についてのガラス転移温度を求めることができる。
なお、ガラス転移温度については、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法に基づいて、中間点ガラス転移温度を決定することにより求めることができる。
【0023】
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)のガラス転移温度は、3℃以上であってもよいし、5℃以上であってよい。
また、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)のガラス転移温度は、20℃以下であってもよいし、15℃以下であってもよい。
さらに、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)のガラス転移温度は、-70℃以上であってもよいし、-65℃以上であってもよい。
また、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)のガラス転移温度は、-53℃以下であってもよいし、-55℃以下であってもよい。
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)の市販品としては、例えば、ユニチカ社製の商品名「XO-5516」が挙げられ、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の市販品としては、例えば、TOYOBO社製の商品名「バイロン(登録商標)GM-920」が挙げられる。
【0024】
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)は、第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)を合計で70質量%以上含んでいることが好ましく、80質量%以上含んでいることがより好ましく、90質量%以上含んでいることがより好ましい。
また、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)は、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)を合計で100質量%含んでいることが特に好ましい。
すなわち、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)は、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)で全てが占められていることが特に好ましい。
【0025】
本実施形態に係るホットメルト接着シート10においては、前記ホットメルト接着剤は、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)を65質量部以上80質量部以下含み、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)を20質量部以上35質量部以下含んでいてもよい。
また、前記ホットメルト接着剤は、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)を65質量部以上75質量部以下含み、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)を25質量部以上35質量部以下含んでいてもよい。
さらに、前記ホットメルト接着剤は、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)を63質量部以上73質量部以下含み、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)を27質量部以上37質量部以下含んでいてもよい。
また、前記ホットメルト接着剤は、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)を62質量部以上72質量部以下含み、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)を28質量部以上38質量部以下含んでいてもよい。
さらに、前記ホットメルト接着剤は、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)を61質量部以上71質量部以下含み、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)を29質量部以上39質量部以下含んでいてもよい。
【0026】
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、130℃以上の軟化点を有し、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)は、140℃以上の軟化点を有する。
なお、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)の軟化点、及び、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の軟化点は、JIS K 7234の環球法によって求められる軟化点のことである。
接着剤層10bが、上記のごとき軟化点を有する第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)を含み、上記のごとき軟化点を有する第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)を含むことにより、PENフィルムやパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂シートなどの被着体に被着させるときに好適に溶融させることができる。
これにより、接着剤層10bを前記被着体に対してより一層好適に被着させることができる。
【0027】
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、135℃以上の軟化点を有していてもよいし、140℃以上の軟化点を有していてもよいし、145℃の軟化点を有していてもよい。
また、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、160℃以下の軟化点を有していてもよいし、155℃以下の軟化点を有していてもよいし、150℃以下の軟化点を有していてもよい。
さらに、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)は、120℃以下の軟化点を有していてもよいし、115℃以下の軟化点を有していてもよいし、110℃以下の軟化点を有していてもよい。
また、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)は、90℃以上の軟化点を有していてもよいし、95℃以上の軟化点を有していてもよいし、100℃以上の軟化点を有していてもよいし、105℃以上の軟化点を有していてもよい。
【0028】
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、数平均分子量Mnが18,000以上であってもよいし、19,000以上であってもよい。
また、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、数平均分子量Mnが22,000以下であってもよいし、21,000以下であってもよい。
さらに、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)は、数平均分子量Mnが28,000以上であってもよいし、29,000以上であってもよい。
また、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)は、数平均分子量Mnが32,000以下であってもよいし、31,000以下であってもよい。
【0029】
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)の数平均分子量Mn、及び、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の数平均分子量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)の数平均分子量Mn、及び、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の数平均分子量Mnは、例えば、以下の装置及び条件にて測定することができる。

測定装置及び測定条件
・機器装置:商品名「HLC-8020」(東ソー社製)
・カラム:商品名「TSKgel G2000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G4000HXL」(いずれも東ソー社製)
・溶媒:THF
・流速:1.0mL/min
・試料濃度:2g/L
・注入量:100μL
・温度:40℃
・検出器:型番「RI-8020」(東ソー社製)
・標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0030】
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水酸基価は、4mgKOH/g以上であることが好ましく、6mgKOH/g以上であることがより好ましく、8mgKOH/g以上であることがより好ましい。
前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水酸基価は、15mgKOH/g以下であってもよいし、12mgKOH/g以下であってもよいし、10mgKOH/g以下であってもよい。
上記のような範囲で水酸基価を有することにより、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、前記イソシアネート系架橋剤(C)を介して、前記エポキシ樹脂(B)と良好なる架橋構造体を形成することができる。
そして、前記エポキシ樹脂(B)との良好なる架橋構造体が形成されることにより、接着剤層10bは、被着体に対して良好なる被着性を示すものとなる。
これにより、接着剤層10bは、PENフィルムやパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂シートなどの被着体に被着させた状態において、95℃といった高温で水やアルコールと接触したり、95℃といった高温で強酸性下に曝されたりしたような場合でも、長時間(1000時間)に亘って、前記被着体に対する接着性をより一層維持することができる。
前記水酸基価は、JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」の「7.3 ピリジン-塩化アセチル法」にしたがって測定することができる。
【0031】
前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)は、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)よりも低い水酸基価を有していることが好ましい。
前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の水酸基価の値は、2mgKOH/g以下であることが好ましく、1mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.5mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.1mgKOH/g以下であることがより好ましく、実質的に0mgKOH/gであることが好ましい。
なお、前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の水酸基価も、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水酸基価と同様にして求めることができる。
【0032】
(エポキシ樹脂(B))
上記したように、エポキシ樹脂(B)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)及びゴム変性エポキシ樹脂(b2)を含有している。
【0033】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂が挙げられる。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)は、変性されたものであってもよい。
すなわち、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)は、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂であってもよいし、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂であってもよいし、変性ビスフェノールAD型エポキシ樹脂であってもよい。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)のエポキシ当量は、450g/eq以上1000g/eq以下であることが好ましい。
前記エポキシ当量は、JIS K 7236に従って求めることができる。
【0034】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)としては、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、450g/eq以上1000g/eq以下であることが好ましい。
このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱化学社製の商品名「jER 1001」、「jER 1002」、「jER 1003」、「jER 1055」、「jER 1004」、及び、「jER 1004AF」などが挙げられる。
【0035】
ゴム変性エポキシ樹脂(b2)は、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有し、ゴムに由来する構造を有する化合物であれば、特に限定されず、各種公知のものを用いることができる。
前記ゴム変性エポキシ樹脂(b2)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ゴム変性エポキシ樹脂(b2)としては、例えば、エポキシ樹脂とゴムとの反応物が挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、上記したようなビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)を用いることができる。
【0036】
前記ゴムとしては、例えば、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル基末端アクリロニトリルブタジエンゴム(CTBN)、アミノ基末端アクリルニトリルブタジエンゴム(ATBN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴムなどが挙げられる。
前記ゴムは、エポキシ基との反応性の点から、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などのエポキシ基と反応し得る官能基を末端に有しているものが好ましい。
【0037】
前記ゴム変性エポキシ樹脂(b2)は、入手が容易あることやエポキシ基との反応性の点から、エポキシ樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)との反応物(NBR変性エポキシ樹脂)、エポキシ樹脂とカルボキシル基末端アクリロニトリルブタジエンゴムとの反応物(CTBN変性エポキシ樹脂)、エポキシ樹脂とアミノ基末端アクリロニトリルブタジエンゴムとの反応物(ATBN変性エポキシ樹脂)であることが好ましく、これらの中でも、特に、NBR変性エポキシ樹脂であることが好ましい。
なお、前記NBR変性エポキシ樹脂の市販品としては、アデカ社製の商品名「アデカレジンEPR-1415-1」が挙げられる。
また、前記ゴム変性エポキシ樹脂(b2)の製造方法は、前記エポキシ樹脂と前記ゴムとを反応させることができる方法であれば特に限定されず、各種公知の製造方法を採用することができる。
【0038】
前記ゴム変性エポキシ樹脂(b2)の物性は特に限定されるものではないが、取り扱い性や接着特性などの点から、エポキシ当量が150g/eq以上1000g/eqのものであることが好ましい。
前記ゴム変性エポキシ樹脂(b2)においても、前記エポキシ当量は、JIS K 7236に従って求めることができる。
【0039】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)及びゴム変性エポキシ樹脂(b2)は、第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、20質量部以上含まれていてもよいし、30質量部以上含まれていてもよいし、40質量部以上含まれていてもよい。
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)及びゴム変性エポキシ樹脂(b2)は、第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、60質量部以下含まれていてもよいし、50質量部以下含まれていてもよい。
【0040】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)に対するゴム変性エポキシ樹脂(b2)の質量比率は、50%以上であってもよいし、60%以上であってもよいし、70%以上であってもよい。
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)に対するゴム変性エポキシ樹脂(b2)の質量比率は、90%以下であってもよいし、80%以下であってもよい。
【0041】
(イソシアネート系架橋剤(C))
前記イソシアネート系架橋剤(C)としては、特に限定されるものではないが、イソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、ポリメリック体といった多官能のイソシアネート基を有するもの等、従来から使用されている公知のものを使用することができる。
例えば、2,4-トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス-(p-イソシアネートフェニル) チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。
【0042】
これらのイソシアネート系架橋剤(C)のうち、芳香族系のものであれば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートおよびキシリレンジイソシアネートが好ましい。
脂肪族系のものであれば、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの変性体が好ましい。
また、イソシアネート系架橋剤(C)としては、1分子中にイソシアネート基を3個以上含むものが好ましい。
さらに、イソシアネート系架橋剤(C)としては、前記ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、さらには低分子量のポリオールとポリアミンとを分子末端がイソシアネートとなるように反応させたウレタンプレポリマーなども好ましく使用される。
上記各種のイソシアネート系架橋剤(C)の中でも、キシリレンジイソシアネートを用いることが好ましい。
前記キシリレンジイソシアネートの市販品としては、例えば、三井武田ケミカル社製の商品名「タケネートD-110N」が挙げられる。
【0043】
上記したように、本実施形態のホットメルト接着シート10の接着剤層10bにおいては、前記イソシアネート系架橋剤(C)は、第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、3質量部以上含有されていてもよいし、5質量部以上含有されていてもよいし、7質量部以上含有されていてもよい。
前記イソシアネート系架橋剤(C)は、第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計量100質量部に対して、20質量部以下含有されていてもよいし、15質量部以下含有されていてもよいし、12質量部以下含有されていてもよい。
【0044】
次に、図2を参照しながら、本実施形態に係るホットメルト接着シート10の接着剤層10bを接着させる被着体を、固体高分子型燃料電池の膜/電極接合体(MEA)20とする場合を例に挙げてさらに説明する。
【0045】
前記被着体たる膜/電極接合体(MEA)20は、負極側から正極側に向けて水素ガスを透過させるとともに正極側に供給された酸素と前記水素とを反応させて電気を生じさせることができるように構成されている。
【0046】
図2に示したように、膜/電極接合体(MEA)20では、固体電解質膜201の互いに対向する両面に、正極202及び負極203がそれぞれ積層されている。
正極202は、正極触媒層202aと正極触媒層202a上に積層された正極ガス拡散層202bとを備えており、正極触媒層202aが固体電解質膜201の一方面に積層されている。
負極203は、負極触媒層203aと負極触媒層203a上に積層された負極ガス拡散層203bとを備えており、負極触媒層203aが固体電解質膜201の他方面に積層されている。
【0047】
図2に示したように、正極触媒層202a及び負極触媒層203aは、固体電解質膜201よりも平面寸法が小さくなるように形成され、正極ガス拡散層202b及び負極ガス拡散層203bは、正極触媒層202a及び負極触媒層203aとも平面寸法が小さくなるように形成されている。
すなわち、膜/電極接合体(MEA)においては、正極202及び負極203の平面寸法が、固体電解質膜201の平面寸法よりも小さくなっている。
上記のように、正極202の平面寸法が固体電解質膜201の平面寸法よりも小さくなることにより、膜/電極接合体(MEA)20の正極側(一方面側)には、固体電解質膜201が正極触媒層202aよりも外側に延出して固体電解質膜201が表面露出している正極側電解質膜露出領域201aが外周部に形成されている。
また、負極203の平面寸法が固体電解質膜201の平面寸法よりも小さくなることにより、膜/電極接合体(MEA)20の負極側(他方面側)には、固体電解質膜201が負極触媒層203aよりも外側に延出して固体電解質膜201が表面露出している負極側電解質膜露出領域201bが外周部に形成されている。
【0048】
また、膜/電極接合体(MEA)20の正極側には、正極触媒層202aが正極ガス拡散層202bよりも外側に延出して正極触媒層202aが表面露出している正極側触媒層露出領域202a1が形成されている。
正極側触媒層露出領域202a1は、正極側電解質膜露出領域201aの内側、かつ、正極ガス拡散層202bの外側に形成されている。
本実施形態においては、正極側電解質膜露出領域201aは、膜/電極接合体(MEA)20の外周部を周回するように環状に形成されている。
正極側触媒層露出領域202a1は、正極側電解質膜露出領域201aよりも小さい環状に形成されている。
すなわち、膜/電極接合体(MEA)の正極側には、正極側電解質膜露出領域201aと正極側触媒層露出領域202a1との境界線である第1境界線L1の内側に、正極側触媒層露出領域202a1と正極ガス拡散層202bとの境界線である第2境界線L2が形成されている。
【0049】
膜/電極接合体(MEA)20の負極側には、負極触媒層203aが負極ガス拡散層203bよりも外側に延出している負極触媒層203aが表面露出している負極側触媒層露出領域203a1が形成されている。
負極側触媒層露出領域203a1は、負極側電解質膜露出領域201bの内側、かつ、負極ガス拡散層203bの外側に形成されている。
本実施形態においては、負極側電解質膜露出領域201bは、膜/電極接合体(MEA)20の外周部を周回するように環状に形成されている。
負極側触媒層露出領域203a1は、負極側電解質膜露出領域201bよりも小さい環状に形成されている。
すなわち、膜/電極接合体(MEA)20の負極側には、負極側電解質膜露出領域201bと負極側触媒層露出領域203a1との境界線である第3境界線L3の内側に負極側触媒層露出領域203a1と負極ガス拡散層203bとの境界線である第4境界線L4が形成されている。
【0050】
図2に示された使用状態においては、膜/電極接合体(MEA)20の正極側に接着される第1のホットメルト接着シート10と、膜/電極接合体(MEA)20の負極側に接着される第2のホットメルト接着シート10との2枚のホットメルト接着シート10が、固体高分子型燃料電池のサブガスケット材として用いられている。
【0051】
第1のホットメルト接着シート10は、環状であり、膜/電極接合体(MEA)20に重ねた際に外周縁が膜/電極接合体(MEA)20よりも外側になり、かつ、内周縁が正極側触媒層露出領域202a1及び負極側触媒層露出領域203a1に収まる形状を有している。
すなわち、第1のホットメルト接着シート10の中抜き部分は、正極ガス拡散層202bよりも一回り大きな形状を有している。
【0052】
第2のホットメルト接着シート10も、第1のホットメルト接着シート10と同様の形状を有している。
【0053】
本実施形態においては、第1のホットメルト接着シート10と第2のホットメルト接着シート10とが、膜/電極接合体(MEA)20よりも外側において接着剤層10bの外周部を直に接着させて、前記サブガスケット材として用いられる。
【0054】
第1のホットメルト接着シート10は、第2のホットメルト接着シート10と接着している外周部以外の内周部が膜/電極接合体(MEA)20の外周部に接着されており、正極側電解質膜露出領域201aから第1境界線L1を越えて正極側触媒層露出領域202a1に至る範囲に接着されている。
第2のホットメルト接着シート10も、第1のホットメルト接着シート10と同様に接着されている。
【0055】
ホットメルト接着シート10を、上記のように、膜/電極接合体(MEA)20に接着(被着)させることにより、正極ガスの一部が正極側電解質膜露出領域201aを透過でき、負極ガスの一部が負極側電解質膜露出領域201bを透過できるので、固体高分子型燃料電池としての性能が低下することを抑制できる。
【0056】
先に説明したように、固体高分子型燃料電池では、膜/電極接合体(MEA)20において、水素と酸素とが反応して電気が生成される。
そして、上記のように、水素と酸素とが反応すると、膜/電極接合体(MEA)20は、比較的高温(例えば、95℃)に達するようになる。
前記固体高分子型燃料電池が自動車の動力源として搭載される場合においては、膜/電極接合体(MEA)20の中央部分は、管路を経由してラジエータに収容された不凍液を循環させることにより十分に冷却されるものの、通常、膜/電極接合体(MEA)20の端縁部分までは前記管路は配されていないので、膜/電極接合体(MEA)20の端縁部分は、高温を維持し続けるようになる。
【0057】
また、前記不凍液を循環させているときに、前記不凍液の一部が前記管路から漏れ出てしまって、前記管路から漏れ出した前記不凍液が固体電解質膜201の端縁側に取り付けられた接着剤層10bと接触してしまうことがある。
前記不凍液は、通常、液分として、ポリエチレングリコール及び水を含んでいることから、このような場合には、接着剤層10bは、高温において、ポリエチレングルコール及び水と接触された状態となる。
【0058】
さらに、先に説明した、電気が生成される反応においては、膜/電極接合体(MEA)20中を水素イオン(H)が物質移動するため、膜/電極接合体(MEA)20は、0.1~0.5M程度の希硫酸に相当する強酸性を示すようになる。
このような場合、固体電解質膜201の端縁側に取り付けられた接着剤層10bは、高温において、強酸性下に曝されるようになる。
【0059】
ここで、本実施形態に係るホットメルト接着シート10では、接着剤層10bは先に説明したように構成されているので、接着剤層10bは、耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性に優れるものとなっている。
したがって、自動車に搭載された固体高分子型燃料電池において、本実施形態に係るホットメルト接着シートをサブガスケット材として用いた場合に、上記のように、95℃といった高温で接着剤層10bが水やアルコールと接触したり、95℃といった高温で接着剤層10bが強酸性下に曝されたりしても、長時間(1000時間)に亘って、固体電解質膜201との接着性を維持することができる。
なお、固体電解質膜201は、後述するように、通常、パーフルオロカーボンスルホン酸などのフッ素樹脂で形成されたものである。
【0060】
なお、膜/電極接合体(MEA)20において、正極触媒層202a及び負極触媒層203aは、一般に、触媒を担持した炭素材料などの触媒担持材料、プロトン伝導性ポリマー、及び、溶媒を含む触媒インキ組成物を用いて形成されるものである。
【0061】
膜/電極接合体(MEA)20の固体電解質膜201は、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂などのフッ素樹脂で形成されている。
前記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂としては、デュポン社製の商品名「ナフィオン」、旭化成株式会社製の商品名「フレミオン」、旭硝子株式会社製の商品名「アシプレックス」などが挙げられる。
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、例えば、下記式(1)に示されるポリマー構造を有する樹脂である。
下記式(1)におけるm、n、および、xについて、例えば、前記「ナフィオン」では、m≧1、n=2、x=5~13.5であり、前記「アシプレックス」では、m=0,1、n=2~5、x=1.5~14であり、前記「フレミオン」では、m=0,1、n=1~5である。
【0062】
【化1】
【0063】
正極触媒層202a及び負極触媒層203aは、触媒粒子を含有する層である。
正極触媒層202aに含有される触媒粒子としては、白金が挙げられる。
負極触媒層203aに含有される触媒粒子としては、白金化合物が挙げられる。
前記白金化合物としては、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、及び、鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金が挙げられる。
【0064】
正極ガス拡散層202b及び負極ガス拡散層203bは、多孔質の導電性基材から構成されている。
前記多孔質の導電性基材としては、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスなどが挙げられる。
【0065】
また、本実施形態に係るホットメルト接着シート10は、レドックス・フロー電池においても用いることができる。
レドックス・フロー電池に用いるホットメルト接着シートは、電解液の透過を抑えるために用いられる。
【0066】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0067】
(1)
基材の少なくとも一方面にホットメルト接着剤で形成された接着剤層が積層されたホットメルト接着シートであって、
前記ホットメルト接着剤は、架橋剤を含む接着剤組成物の架橋物を含み、かつ、結晶性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、イソシアネート系架橋剤を含有し、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、0℃以上のガラス転移温度を有する第1結晶性ポリエステル樹脂と、-50℃以下のガラス転移温度を有する第2結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びゴム変性エポキシ樹脂を含有し、
前記第1結晶性ポリエステル樹脂及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して、前記第1結晶性ポリエステル樹脂は、65質量部以上90質量部以下含有され、前記第2結晶性ポリエステル樹脂は、10質量部以上35質量部以下含有されている
ホットメルト接着シート。
【0068】
斯かる構成によれば、前記ホットメルト接着シートの接着剤層を、耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性に優れるものとすることができる。
【0069】
(2)
前記第1結晶性ポリエステル樹脂は、130℃以上の軟化点を有し、
前記第2結晶性ポリエステル樹脂は、120℃以下の軟化点を有する
上記(1)に記載のホットメルト接着シート。
【0070】
斯かる構成によれば、前記ホットメルト接着シートの接着剤層を、耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性にさらに優れるものとすることができる。
【0071】
(3)
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、450g/eq以上1000g/eq以下である
上記(1)または(2)に記載のホットメルト接着シート。
【0072】
斯かる構成によれば、前記ホットメルト接着シートの接着剤層を、耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性にさらに優れるものとすることができる。
【0073】
(4)
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である
上記(3)に記載のホットメルト接着シート。
【0074】
斯かる構成によれば、前記ホットメルト接着シートの接着剤層を、耐熱水性、耐酸性、及び、耐アルコール性にさらに優れるものとすることができる。
【0075】
(5)
固体高分子型燃料電池の固体電解質膜に接着させて用いられる
上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のホットメルト接着シート。
【0076】
本発明に係るホットメルト接着シートは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係るホットメルト接着シートは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係るホットメルト接着シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0077】
[ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)の溶解例]
<ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)の溶解例:B1>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び、マンホールを備えた反応容器を用意した。
前記反応容器の内部を窒素で置換しながら、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:450~500g/eq、jER1001:三菱化学(株)製。以下、エポキシ樹脂B1という)400.0gを仕込み、撹拌しながら溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)600.0gを仕込んだ上で、系内を60℃まで昇温して前記メチルエチルケトンにエポキシ樹脂B1を完全溶解させた。
これにより、エポキシ樹脂B1の溶解品BB1(以下、エポキシ樹脂溶液BB1という)を得た。
なお、得られたエポキシ樹脂溶液BB1の固形分は40質量%であった。
【0078】
<ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)の溶解例:B2>
エポキシ樹脂B1に代えて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:670~770g/eq、jER1003:三菱化学(株)製。以下、エポキシ樹脂B2という)を用いた以外は、上記溶解例B1と同様にして、エポキシ樹脂B2の溶解品BB2(以下、エポキシ樹脂溶液BB2という)を得た。
なお、得られたエポキシ樹脂溶液BB2の固形分は40質量%であった。
【0079】
<ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)の溶解例:B3>
エポキシ樹脂B1に代えて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:875~975g/eq、jER1004:三菱化学(株)製。以下、エポキシ樹脂B3という)を用いた以外は、上記溶解例B1と同様にして、エポキシ樹脂B3の溶解品BB3(以下、エポキシ樹脂溶液BB3という)を得た。
なお、得られたエポキシ樹脂溶液BB3の固形分は40質量%であった。
【0080】
(実施例1)
エポキシ樹脂溶液BB2とエポキシ樹脂溶液BB3とを下記表1に示した配合割合となるように混ぜ合わせて混合溶液を得た後、該混合溶液に、第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)(ユニチカ社製の商品名「XO-5516」)、第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)(TOYOBO社製の商品名「バイロン(登録商標)GM-920」)、ゴム変性エポキシ樹脂(b2)(アデカ社製の商品名「アデカレジンEPR-1415-1」)、及び、イソシアネート系架橋剤(C)(三井武田ケミカル社製の商品名「タケネートD-110N」)を、下記表1の配合割合で加えて、実施例1に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
なお、第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)(「XO-5516」)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)(「GM-920」)は、以下のようにして、エポキシ樹脂溶液BB2とエポキシ樹脂溶液BB3との混合溶液に加えた。
すなわち、トルエン及びメチルエチルケトンを、質量比で、トルエン:メチルエチルケトン=8:2となるように混合して得た混合溶媒に、前記第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び前記第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)の合計が25質量%となるように溶解させた溶解液(以下、結晶性ポリエステル樹脂溶解液ともいう)を作製した後、結晶性ポリエステル樹脂溶解液をエポキシ樹脂溶液BB2とエポキシ樹脂溶液BB3との混合溶液に加えることにより実施した。
【0081】
(実施例2)
エポキシ樹脂溶液BB1とエポキシ樹脂溶液BB3とを下記表1に示した配合割合となるように混ぜ合わせて混合溶液を得た以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
【0082】
(実施例3)
エポキシ樹脂溶液BB1とエポキシ樹脂溶液BB2とエポキシ樹脂溶液BB3とを下記表1に示した配合割合となるように混ぜ合わせて混合溶液を得た以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
【0083】
(比較例1)
エポキシ樹脂溶液BB1とエポキシ樹脂溶液BB2とエポキシ樹脂溶液BB3とを下記表1に示した配合割合となるように混ぜ合わせた混合溶液を得たことと、ゴム変性エポキシ樹脂(b2)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
【0084】
(比較例2)
前記結晶性ポリエステル樹脂溶解液に、ゴム変性エポキシ樹脂(b2)(アデカ社製の商品名「アデカレジンEPR-1415-1」)、及び、イソシアネート系架橋剤(C)(三井武田ケミカル社製の商品名「タケネートD-110N」)を、下記表1の配合割合で加えて、比較例2に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
すなわち、比較例2に係るホットメルト接着剤層用組成物は、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含まないものであった。
【0085】
(比較例3)
第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)(ユニチカ社製の商品名「XO-5516」)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)(TOYOBO社製の商品名「バイロン(登録商標)GM-920」)を下記表1の配合割合とし、エポキシ樹脂溶液BB1とエポキシ樹脂溶液BB2とエポキシ樹脂溶液BB3とを下記表1に示した配合割合となるように混ぜ合わせて混合溶液を得た以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
【0086】
(比較例4)
第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)(ユニチカ社製の商品名「XO-5516」)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)(TOYOBO社製の商品名「バイロン(登録商標)GM-920」)を下記表1の配合割合とした以外は、比較例3と同様にして、比較例4に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
【0087】
(比較例5)
第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)(ユニチカ社製の商品名「XO-5516」)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)(TOYOBO社製の商品名「バイロン(登録商標)GM-920」)を下記表1の配合割合とした以外は、比較例3と同様にして、比較例5に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
【0088】
(比較例6)
前記結晶性ポリエステル樹脂溶解液として、第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)(TOYOBO社製の商品名「バイロン(登録商標)GM-920」)を25質量%となるように前記混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=8:2(質量比)の混合溶媒)に溶解させたものを用いた以外は、比較例3と同様にして、比較例6に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
【0089】
(比較例7)
前記結晶性ポリエステル樹脂として、第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)(ユニチカ社製の商品名「XO-5516」)を25質量%となるように前記混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=8:2(質量比)の混合溶媒)に溶解させたものを用いた以外は、比較例3と同様にした、比較例7に係るホットメルト接着剤層用組成物を得た。
【0090】
下記表2に、第1結晶性ポリエステル樹脂(a1)(ユニチカ社製の商品名「XO-5516」)及び第2結晶性ポリエステル樹脂(a2)(TOYOBO社製の商品名「バイロン(登録商標)GM-920」)の各種物性を示した。
なお、以下の表2に示された物性のうち、数平均分子量、軟化点、ガラス転移温度、水酸基価は、先の実施形態の項で説明した方法で測定することができる。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
[ホットメルト接着剤層用組成物の塗工]
各例のホットメルト接着剤層用組成物を固形分30質量%となるように、メチルエチルケトン(MEK)を用いて希釈した。
各例では、希釈したホットメルト接着剤層用組成物をPENフィルム(縦:210mm、横:150mm、厚み:100μm、テオネックス:東洋紡フィルムソリューション(株)製)の片面側全面に塗布し、塗布後100℃で1分間乾燥させた後、40℃のオーブン中に48時間放置して硬化反応(架橋反応)を進行させて、ホットメルト接着剤層付のPENフィルムを得た。
塗工は、乾燥後のホットメルト接着剤層の厚みが20μmとなるように実施した。
【0094】
[接着シートの作製]
各例のホットメルト接着剤層付のPENフィルムのホットメルト接着剤層の露出面とパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂シート(テトラフルオロエチレン/ パーフルオロ[2-(フルオスルホニルエトキシ)プロビルビニルエーテル]共重合体膜(デュポン社製、商品名“NAFIONN-115”))の一方面とが当接するように、各例のホットメルト接着剤層付のPENフィルムとパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂シートとを重ね合わせた。
なお、前記ホットメルト接着剤層付のPENフィルムとパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂シートとは、同形状であった。
140℃に調整したラミネータを用いて、各例のホットメルト接着剤層付のPENフィルムとパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂シートとを熱圧着することで貼り合せて、各例に係る接着シートを作製した。
【0095】
[耐熱水性]
各例の第接着シートについて、各例の第接着シートから幅10mm×長さ80mmの大きさの試験体を切り出して、該試験体を95℃の熱水中に1000時間浸漬させ、室温に冷却後各試験体について、以下の基準で、耐熱水性を評価した。

・優: 浸漬後に、剥離が認められない。
・不可: 浸漬後に、剥離が認められる。
【0096】
[耐酸性]
各例の第接着シートについて、各例の第接着シートから幅10mm×長さ80mmの大きさの試験体を切り出して、該試験体を95℃のpH2の希硫酸に1000時間浸漬させ、室温に冷却後各試験体について、以下の基準で、耐酸性を評価した。

・優: 浸漬後に、剥離が認められない。
・不可: 浸漬後に、剥離が認められる。
【0097】
[耐アルコール性]
各例の接着シートについて、各例の接着シートから幅10mm×長さ80mmの大きさの試験体を切り出して、該試験体を95℃の水-エチレングルコール混合溶液(エチレングルコールの混合割合は50体積%)に1000時間浸漬させ、室温に冷却後各試験体について、以下の基準で、耐アルコール性を評価した。

・優: 浸漬後に、剥離が認められない。
・不可: 浸漬後に、剥離が認められる。
【0098】
上記の各評価結果を以下の表3に示した。
【0099】
【表3】
【0100】
上記表3より、各実施例においては、いずれも評価項目も「優」となっている、すなわち、剥離が認められない結果となっているのに対し、いずれの評価項目も「不可」となっている、すなわち、剥離が認められる結果となっていることが把握される。
【符号の説明】
【0101】
10 ホットメルト接着シート、20 膜/電極接合体(MEA)、201 固体電解質膜、202 正極、203 負極、
10a 基材、10b 接着剤層、201a 正極側電解質膜露出領域、201b 負極側電解質膜露出領域、202a 正極触媒層、202b 正極ガス拡散層、203a 負極触媒層、203b 負極ガス拡散層、202a1 正極側触媒層露出領域、203a1 負極側触媒層露出領域、
L1 第1境界線、L2 第2境界線、L3 第3境界線、L4 第4境界線。
図1
図2