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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043762
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】防振材及び防振床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/43 20060101AFI20240326BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20240326BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E04B5/43 H
E04B5/02 C
E04F15/18 601F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148931
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 昌子
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 弘之
(72)【発明者】
【氏名】兼 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹友 伸介
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA19
2E220BA01
2E220CA07
2E220GA25X
2E220GA25Y
2E220GB22Y
2E220GB46X
(57)【要約】
【課題】防振材の材料を削減するとともに製造時の負担を軽減することが可能であり、且つ、遮音性能の向上を図ることが可能な防振材及び防振床構造を提供すること。
【解決手段】防振材40は、建物の上階の床板60と、該床板60を支持する梁10との間に配設される、線状の防振材40であって、長手方向に直交する断面形状が扁平なベース部41と、前記ベース部41の上面41aから上方に突出し、前記ベース部41の幅よりも幅が狭い、1つの凸部42と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上階の床板と、該床板を支持する梁との間に配設される、線状の防振材であって、
長手方向に直交する断面形状が扁平なベース部と、
前記ベース部の上面から上方に突出し、前記ベース部の幅よりも幅が狭い、1つの凸部と、を有することを特徴とする、防振材。
【請求項2】
前記ベース部の幅中央位置に前記凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防振材。
【請求項3】
前記ベース部の幅方向の一方に偏位した位置に前記凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防振材。
【請求項4】
前記凸部が、前記ベース部の幅方向の端よりも内側に設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の防振材。
【請求項5】
前記凸部、及び前記ベース部が、一体的に発泡ゴム材で成形されていることを特徴とする、請求項1に記載の防振材。
【請求項6】
建物の上階の床板と、該床板を支持する梁と、を備える防振床構造であって、
前記梁には、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の防振材が配設され、前記凸部にて前記床板が支持されていることを特徴とする防振床構造。
【請求項7】
幅方向において、前記凸部の前記梁の中央に近い方の端は、前記ベース部の前記梁の中央に近い方の端と重なるように配置されていることを特徴とする請求項6に記載の防振床構造。
【請求項8】
前記梁には、請求項3に記載の防振材が配設され、
前記凸部の前記梁の中央に近い方の端は、前記ベース部の前記梁の中央に近い方の端から、前記梁の中央から離れる方にずれて配置されていることを特徴とする請求項6に記載の防振床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振材及び防振床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の上階の床衝撃音は、上階の床を介してその振動が下方にある下階の天井に伝搬され、下階の天井が励振されることにより下階へ放射される。この床衝撃音には、重量床衝撃音と軽量床衝撃音が含まれる。
【0003】
従来の防振床構造は、例えば鉄骨梁(H形鋼や溝形鋼等)の上面に、帯状の防振材を取り付け、防振材の上に上階の床を形成する床板が載置されることにより形成される(例えば、特許文献1,2参照)。この床板は乾式の床板(乾式床)であり、ALC(軽量気泡コンクリート、Autoclaved Light weight Concrete)床板(ALCパネル)を一例として挙げることができる。例えば、床が重量床衝撃音を受けた際に、鉄骨梁の上にある防振材の弾性によって重量床衝撃音の周波数が低減され、遮音性能が発揮される。
【0004】
特許文献1,2に記載の防振材の上面には、凹凸形状が形成されている。この凹凸形状は、梁の長手方向と交差する幅方向に複数の凸部を有する。
【0005】
ところで、上記する防振材のバネ定数が小さい(防振材が柔らかい)ほど、床衝撃音の周波数低減効果は高くなるが、バネ定数が小さいことにより防振材の耐荷重性が小さくなり、比較的重量のある床板を支持するのが難しくなるといった背反がある。また、バネ定数が小さいことにより、防振材のクリープが進行し易くなり、経年的に安定した遮音性能を発揮し難くなるといった背反もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-182207号公報
【特許文献2】特開2005-16103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載の床構造では、床板を受ける防振材の面圧が大きいほどバネ定数を小さくできるため、線状で受ける場合も接触面積が小さい凸部の上面で受けるようにしている。しかしながら、複数の凸部が幅方向に形成されている従来の構造では、防振材を製造するために必要な材料の使用量が増えるとともに、凹凸形状を形成するための製造時の負担が課題となる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、防振材の材料を削減するとともに、製造時の負担を軽減することが可能であり、且つ、遮音性能の向上を図ることが可能な防振材及び防振床構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による防振材の一態様は、
建物の上階の床板と、該床板を支持する梁との間に配設される、線状の防振材であって、
長手方向に直交する断面形状が扁平なベース部と、
前記ベース部の上面から上方に突出し、前記ベース部の幅よりも幅が狭い、1つの凸部と、を有することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、ベース部から上方に突出する凸部が1つのみ設けられていることにより、複数の凸部を有する構成と比較して、簡素な構造とすることができる。これにより、防振材の材料を削減することができると共に、製造時の負担を軽減することができる。また、凸部の幅は、ベース部の幅よりも狭く、このような凸部により床板を受けることにより、凸部の上面における面圧を大きくすることができる。これにより、遮音性能の向上を図ることができる。また、凸部よりも幅が広いベース部の下面を設置面として、梁上に載置することができるので、梁に対する防振材の位置ずれを防止できる。防振材の位置ずれを防止することにより、防振材の上に載置される床板の位置ずれを防止できる。そのため、床板を一度載置した後に、再び、床板の配置を調整する必要がなくなる。本態様では、凸部の幅が、ベース部の幅と比較して狭いので、施工現場において床板を載置する際に、幅方向の位置を特定しやすい。これにより、防振材に対して、床板を精度良く配置することができる。また、本態様では、経年的な使用により、凸部にへたりが生じた際においても、ベース部によって床板を受けることができる。
【0011】
また、本発明の他の態様において、
前記ベース部の幅中央位置に前記凸部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、幅方向において、防振材の上面の全面もしくは両端で受ける従来構造と比較して、床板の長手方向における防振材の支点間の距離を離すことができる。これにより、床板の固有振動数(共振周波数)を低減することができ、遮音性能の向上を図ることができる。防振材の支点間の距離を長くすることにより、床板を撓ませ易くすることができ、遮音性能を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の他の態様において、
前記ベース部の幅方向の一方に偏位した位置に前記凸部が設けられている。
【0014】
本態様によれば、幅方向において、防振材の上面の全面もしくは両端で受ける従来構造と比較して、床板の長手方向における防振材の支点間の距離を更に離することができる。これにより、床板の固有振動数(共振周波数)を低減することができ、遮音性能の向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明の他の態様において、
前記凸部が、前記ベース部の幅方向の端よりも内側に設けられていることを特徴とする。
【0016】
ここでいう「内側」とは、防振材の幅方向の内側であって、幅方向の中心位置に近い方である。換言すると、H形鋼の梁において、ウェブに近い方が外側であり、梁の幅方向の端に近い方が内側となる。本態様によれば、ベース部と凸部の端が防振材の幅方向に重なる構造と比較して、凸部は、ベース部の外側の端よりも内側に配置される。そのため、床板の端が、凸部の上面に重なるように配置されるおそれが低減される。床板の端が、防振材の凸部の上面よりも外側に配置されるので、凸部の上面の全面で、床板を受けることができ、防振材の凸部における面圧を適切に維持することができる。
【0017】
また、本発明の他の態様において、
前記凸部、及び前記ベース部が、一体的に発泡ゴム材で成形されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、気泡を多数含む発泡ゴム材を採用することにより、補強材を十分に添加した粘弾性材によって、強度を維持させながらも、見掛け上のゴム硬度を下げることができ、床衝撃音を低減できる防振材を提供することができる。
【0019】
また、本発明による防振床構造の一態様は、
建物の上階の床板と、該床板を支持する梁と、を備える防振床構造であって、
前記梁には、上記の防振材が配設され、前記凸部にて前記床板が支持されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、ベース部から上方に突出する凸部が1つのみ設けられていることにより、複数の凸部を有する構成と比較して、簡素な構造とすることができる。これにより、防振材の材料を削減することができると共に、製造時の負担を軽減することができる。また、凸部の幅は、ベース部の幅よりも狭く、このような凸部により床板を受けることにより、凸部の上面における面圧を大きくすることができる。これにより、遮音性能の向上を図ることができる。また、凸部よりも幅が広いベース部の下面を設置面として、梁上に載置することができるので、梁に対する防振材の位置ずれを防止できる。防振材の位置ずれを防止することにより、防振材の上に載置される床板の位置ずれを防止できる。そのため、床板を一度載置した後に、再び、床板の配置を調整する必要がなくなる。本態様では、凸部の幅が、ベース部の幅と比較して狭いので、施工現場において床板を載置する際に、幅方向の位置を特定しやすい。これにより、防振材に対して、床板を精度良く配置することができる。また、本態様では、経年的な使用により、凸部にへたりが生じた際においても、ベース部によって床板を受けることができる。
【0021】
また、本発明の他の態様において、
幅方向において、前記凸部の前記梁の中央に近い方の端は、前記ベース部の前記梁の中央に近い方の端と重なるように配置されている。
【0022】
本態様によれば、幅方向において、防振材の上面の全面もしくは両端で受ける従来構造と比較して、床板の長手方向における防振材の支点間の距離を更に離することができる。これにより、床板の固有振動数(共振周波数)を低減することができ、遮音性能の向上を図ることができる。また、ベース部の端部と凸部の端部の位置とが揃っているので、ベース部の端部と凸部の端部とが揃っていない構成と比較して、製造が容易である。また、ベース部の端部と、凸部の端部とが揃っていると、幅方向において、凸部の端部の位置を容易に特定することができることにより、床板を載置する際の位置を特定しやすい。そのため、床板を精度良く配置することができる。
【0023】
また、本発明の他の態様において、
前記梁には、上記の防振材が配設され、
前記凸部の前記梁の中央に近い方の端は、前記ベース部の前記梁の中央に近い方の端から、前記梁の中央から離れる方にずれて配置されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、ベース部と凸部の端が、防振材の幅方向に重なる構造と比較して、凸部は、ベース部の外側の端よりも内側に配置される。そのため、床板の端が、凸部の上面に重なるように配置されるおそれが低減される。床板の端が、防振材の凸部の上面よりも外側に配置されるので、凸部の上面の全面で、床板を受けることができ、防振材の凸部における面圧を適切に維持することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、防振材の材料を削減するとともに、製造時の負担を軽減することが可能であり、且つ、遮音性能の向上を図ることが可能な防振材及び防振床構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る建物の床構造の一例の一部の分解斜視図である。
図2】第1実施形態に係る建物の床構造の一例の縦断面図である。
図3】第1実施形態に係る防振材の縦断面図である。
図4】第1実施形態に係る防振材の平面図である。
図5】第1実施形態に係る建物の床構造の一例の縦断面図であり、床板の長手方向に離れて配置された梁上の防振材を示す縦断面図である。
図6】第2実施形態に係る建物の床構造の一例の縦断面図である。
図7】第2実施形態に係る防振材を示す縦断面図である。
図8】第3実施形態に係る防振材を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、各実施形態に係る防振床構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[第1実施形態に係る建物の床構造]
はじめに、図1乃至図5を参照して、第1実施形態に係る建物の床構造の一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る建物の床構造の一例の一部の分解斜視図である。図2は、第1実施形態に係る建物の床構造の一例の縦断面図である。図3は、第1実施形態に係る防振材の縦断面図である。図4は、第1実施形態に係る防振材の平面図である。図5は、第1実施形態に係る建物の床構造の一例の縦断面図であり、床板の長手方向に離れて配置された梁上の防振材を示す縦断面図である。図1は、梁10の一方側の防振材40及び床板60を示しており、他方の防振材40及び床板60の図示を省略しており、さらに、床50を構成する各種マット材を省略している。また、図3及び図4では、梁10及び床板60を仮想線で示している。また、各図において、互いに直交する3方向として、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を適宜図示する。Y軸方向は、梁10の長手方向に沿う。X軸方向は、梁10の長手方向に交差する幅方向に沿う。Z軸方向は、鉛直方向に沿う。
【0029】
図示する建物の床構造(防振床構造)100は、建物の上階(例えば、二階や三階)の床50と、床50を支持する梁10とを有する。図示例の梁10は、ウェブ11と上フランジ12と下フランジ13とを有するH形鋼により形成される。
【0030】
梁10の上フランジ12の上面12aには、防振材40が配置されている。防振材40は、帯状を成し、梁10の長手方向に沿って連続的に配置されている。防振材40の長手方向は、梁10の長手方向に沿う。防振材40は、上階の床板60と、床板60を支持する梁10との間に配設される、線状の防振材である。
【0031】
図3に示されるように、防振材40は、ベース部41及び凸部42を有する。ベース部41の長手方向に直交する断面形状は扁平である。ベース部41の断面形状は、矩形状でもよい。ベース部41は、Z軸方向に沿う厚さよりも、X軸方向に沿う幅の方が大きい。ベース部41は、上面41a及び下面41bを含む。下面41bは、梁10の上フランジ12に近い方の面であり、上面41aは、床板60に近い方の面である。ベース部41の幅W41は、例えば40mmでもよい。ベース部41の厚さT41は、例えば4mmでもよい。厚さT41は、上面41aから下面41bまでの長さである。
【0032】
凸部42は、ベース部41の上面41aから上方に突出している。凸部42の断面積は、ベース部41の断面積よりも小さい。凸部42は、上面42aを有する。凸部42の上面42aは、ベース部41の上面41aよりも上方に位置する。
【0033】
凸部42は、幅方向においてベース部41の中央位置(幅中央位置)に設けられている。凸部42の幅W42は、例えば10mmでもよい。凸部42の厚さT42は、例えば4mmでもよい。防振材40の厚さT40は、8mmでもよい。厚さT42は、ベース部41の上面41aから凸部42の上面42aまでの長さである。厚さT40は、ベース部41の下面41bから凸部42の上面42aまでの長さである。
【0034】
図1及び図2に示されるように、梁10の上フランジ12は、長手方向に延びる端12c,12dを有する。端12cは、梁10の幅方向において一方側の端であり、端12dは、他方側の端である。図3及び図4に示されるように、ベース部41は、長手方向に延びる端41c,41dを有する。端41c,41dは、幅方向に離れている。凸部42は、長手方向に延びる端42c,42dを有する。端42c,42dは、幅方向に離れている。
【0035】
ベース部41の端41cは、上フランジ12の端12c,12dに近い位置に配置され、ベース部41の端41dは、梁10のウェブ11に近い位置に配置されている。凸部42の端42cは、ベース部41の端41cに近い位置に配置され、凸部42の端42dは、ベース部41の端41dに近い位置に配置されている。
【0036】
図1に示されるように、複数の床板60は、梁10の長手方向に並べられている。床板60の長手方向は、梁10の長手方向と交差する方向である。図2及び図5に示されるように、床板60の長手方向の端部60aは、防振材40によって支持されている。床板60の長手方向の端部60aは、防振材40を介して梁10に支持されている。防振材40は、鉛直方向において、床板60と上フランジ12とに挟まれている。
【0037】
床板60の端面60bは、床板60の長手方向と交差する面であり、Y-Z面に沿う。床板60の端面60bは、梁10の長手方向に沿う端部60aに含まれる。
【0038】
図2に示されるように、梁10の幅方向において、一方側に配置される床板60と、他方側に配置される床板60との間には、隙間が形成されている。同様に、梁10の幅方向において、一方側に配置される防振材40と、他方側に配置される防振材40との間には隙間が形成されている。
【0039】
梁10の幅方向において、防振材40の凸部42間の隙間は、床板60の端面60b間の隙間よりも広い。床板60は、凸部42の上面42aの上に載置されている。
【0040】
防振材40は、例えばゴムの他、ゴム状のエラストマー、樹脂等の粘弾性材が用いられる。構成材料としては、エチレン‐プロピレン‐ジエン共重合ゴム(EPDM)、または、アクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)、ウレタン(ポリウレタン)を例示するが、これに限定することなく天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、再生ゴム、ポリイソブチレン、部分架橋ブチルゴム、およびオレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマーといった熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマー成分を例示することができる。又、これらの発泡体(スポンジ)を用いることができる。これらの発泡体は、発泡ゴム材の一例である。
【0041】
床衝撃音の低減は、防振材40の硬度が低い方が効果的と考えられる。しかし、気泡の無いソリッド材で達成しようとすると、タイプAデュロメータ(JIS K6253に準拠)の測定値が30程度になることが予測され、床を支えるには十分な強度が必要となることから、その強度を求めて補強材を十分に添加しながらも硬度を30程度に維持させるのは非常に困難である。そこで、気泡を多数含む発泡体(スポンジ)を採用することにより、補強材を十分に添加した粘弾性材によって、強度を維持させながらも、見掛け上のゴム硬度を下げることができ、床衝撃音を低減できる理想的な防振材40を提供することが可能である。
【0042】
また、防振材40は、凸部42及びベース部41が、例えば押し出し成形により、発泡ゴム材で一体的に製造することができる。
【0043】
床50は、複数の乾式の床板60と、水平方向に敷設された複数の床板60の上に敷設される床マット70とを有する。床板60には、既述するALC床板や、プレキャストコンクリート床板(PCa床板、PCaパネル)等が適用される。
【0044】
図示例の床マット70は、二重の防音マット71,72と、パーチクルボード73と、フロアマット74が積層することにより形成されている。
【0045】
次に、建物の床構造100の施工方法について説明する。はじめに、現場では、建物の構造躯体である柱及び梁10が施工されている。梁10の上フランジ12の上面12aに対して、防振材40を配置する。例えば両面テープを用いて、防振材40を上フランジ12に貼り付けることができる。防振材40は、梁10の長手方向に沿って交互に連続するように配置される。
【0046】
なお、防振材40は、例えば接着剤を用いて、梁10に接着されてもよく、その他の方法によって、梁10に対して取り付けられてもよい。防振材40は、上フランジ12の上面12aに配置されるだけでもよい。
【0047】
梁10に対して防振材40を取り付けた後、複数の床板60を配置する。複数の床板60は、防振材40上に載置される。床板60の端部60aは、防振材40によって支持される。床板60の端部60aの下面は、防振材40の凸部42の上面42aに接触する。なお、防振材40の凸部42の上面42aと床板60の下面との間には、他の物体が介在していてもよい。
【0048】
床板60を載置する場合には、梁10上の防振材40の凸部42を目印として、凸部42に対して床板60を位置決めすることができる。防振材40では、幅方向において1つのみの凸部42が設けられているので、凸部42を視認しやすい。例えば凸部42の端と、床板60の端とが平行になるように、床板60を位置決めすることができる。
【0049】
次に、床板60を梁10に対して固定する。床板60は、例えば固定具、ボルト及びナット等を用いて、梁10に対して固定される。床板60の梁10に対する固定方法は、その他の方法でもよい。床板60を固定した後、床板60上に、床マット70を敷設する。
【0050】
なお、建物の床構造100の施工方法において、施工の順番は適宜、変更できる。例えば、工場において、予め梁10に対して、防振材40を貼り付けてもよい。防振材40が設けられた梁10を現場に運搬した後、現場にて、梁10を施工してもよい。
【0051】
本実施形態に係る防振材40によれば、ベース部41から上方に突出する凸部42が幅方向において1つのみ設けられていることにより、複数の凸部42を有する構成と比較して、簡素な構造とすることができる。これにより、防振材40の材料を削減することができると共に、製造時の負担を軽減することができる。また、凸部42の幅W42は、ベース部41の幅W42よりも狭く、このような凸部42により床板60を受けることにより、凸部42の上面42aにおける面圧を大きくすることができる。これにより、遮音性能の向上を図ることができる。
【0052】
また、凸部42よりも幅が広いベース部41の下面41bを設置面として、梁10の上フランジ12上に載置することができるので、梁10に対する防振材40の位置ずれを防止できる。防振材40の位置ずれを防止することにより、防振材40の上に載置される床板60の位置ずれを防止できる。そのため、床板60を一度載置した後に、再び、床板60の配置を調整する必要がなくなる。
【0053】
また、防振材40では、凸部42の幅W42が、ベース部41の幅W41と比較して狭いので、施工現場において床板60を載置する際に、幅方向の位置を特定しやすい。これにより、防振材40に対して、床板60を精度良く配置することができる。また、本態様では、経年的な使用により、凸部42にへたりが生じた際においても、ベース部41によって床板60を受けることができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、図6及び図7を参照して第2実施形態に係る防振材40Bを備えた床構造100Bについて説明する。図6は、第2実施形態に係る建物の床構造の一例の縦断面図である。図7は、第2実施形態に係る防振材を示す縦断面図である。
【0055】
図6及び図7に示される第2実施形態に係る防振材40Bが第1実施形態に係る防振材40と違う点は、凸部42Bの配置が異なる点である。第2実施形態の説明において、上記の第1実施形態の説明と同様の説明は省略する。
【0056】
図6に示されるように、第2実施形態に係る建物の床構造100Bは、防振材40Bを備える。防振材40Bは、ベース部41及び凸部42Bを有する。凸部42Bは、ベース部41の幅方向の一方に偏位した位置に設けられている。凸部42Bは、ベース部41の幅方向の中央位置から外れた位置に配置されている。凸部42Bは、梁10の上フランジ12に載置された状態において、梁10の幅方向において、端12cよりもウェブ11に近い位置に配置されている。
【0057】
平面視において、凸部42Bの端42dは、ベース部41の端41dに重なるように配置されている。
【0058】
このような第2実施形態に係る防振材40Bを備える床構造100Bでは、第1実施形態に係る床構造100と同様の作用効果を奏する。第2実施形態に係る床構造100Bでは、梁10の幅方向において、凸部42Bが、ベース部41の中央位置よりも、梁10の中央位置であるウェブ11に近い位置に配置されている。このような床構造100Bによれば、梁10の幅方向において、防振材の上面の全面もしくは両端で受ける従来構造と比較して、床板60の長手方向における防振材40Bの支点間の距離を更に離することができる。これにより、床板60の固有振動数(共振周波数)を低減することができ、遮音性能の向上を図ることができる。なお、防振材40Bの支点間の距離とは、X軸方向における凸部42B同士の距離である。
【0059】
また、第2実施形態に係る床構造100Bでは、梁10の幅方向において、凸部42Bの梁10の中央位置であるウェブ11に近い方の端42dは、ベース部41のウェブ11に近い方の端41dに重なるように配置されている。このような構成の床構造100Bでは、ベース部41の端41dと凸部42Bの端42dの位置とが揃っているので、ベース部の端と凸部の端とが揃っていない構成と比較して、製造が容易である。また、ベース部41の端41dと、凸部42Bの端42dとが揃っていると、梁10の幅方向において、凸部42Bの端42dの位置を容易に特定することができる。これにより、床板60を載置する際の位置を特定しやすい。そのため、床板60を精度良く配置することができる。
【0060】
[第3実施形態]
次に、図8を参照して第3実施形態に係る防振材40Cを備えた床構造について説明する。図8は、第3実施形態に係る防振材を示す縦断面図である。図8に示される第3実施形態に係る防振材40Cが第2実施形態に係る防振材40Bと違う点は、凸部42Cの配置が異なる点である。第3実施形態の説明において、上記の第1,2実施形態の説明と同様の説明は省略する。床構造100は、防振材40,40Bに代えて、防振材40Cを備えていてもよい。
【0061】
防振材40Cは、ベース部41及び凸部42Cを有する。凸部42Cは、ベース部41の幅方向の一方に偏位した位置に設けられている。凸部42Cは、梁10の上フランジ12に載置された状態において、梁10の幅方向において、端12cよりもウェブ11に近い位置に配置されている。
【0062】
平面視において、凸部42Cの端42dは、ベース部41の端41dよりも内側に設けられている。ここでいう「内側」とは、防振材40Cの幅方向における内側であって、幅方向の中心位置に近い方である。
【0063】
このような第3実施形態に係る防振材40Cを備える床構造では、上記の第1及び第2実施形態に係る床構造100,100Bと同様の作用効果を奏する。ベース部41と凸部42の端41d,42dが、防振材40Cの幅方向に重なる構造と比較して、凸部42Cは、ベース部41の外側の端41dよりも内側に配置される。そのため、床板60の端面60bが、凸部42Cの上面42aに重なるように配置されるおそれが低減される。床板60の端面60bが、防振材40Cの凸部42の上面42aよりも外側に配置されるので、凸部42Cの上面42aの全面で、床板60を受けることができ、防振材40Cの凸部42Cにおける面圧を適切に維持することができる。
【0064】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0065】
[変形例]
上記実施形態では、防振材40と床板60とが接触するように配置されているが、床板60は、例えば支持金物を介して、防振材40に支持されている構成でもよい。また、防振材40は、梁10の上フランジ12の上面12aに配置されるものに限定されず、梁10に取り付けられた支持金物上に配置されるものでもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、梁10としてH形鋼を例示しているが、梁10は、H形鋼に限定されない。例えば、梁10は、角型鋼管でもよく、矩形断面を有する木材でもよい。
【符号の説明】
【0067】
10:梁(H形鋼)
11:ウェブ
12:上フランジ
12a:上面
12c:端
12d:端
13:下フランジ
40,40B,40C:防振材
41:ベース部
41a:上面
41b:下面
41c:端
41d:端
42,42B,42C:凸部
42c:端
42d:端
50:床
60:床板
60a:端部
60b:端面
60c:端
70:床マット
71,72:防音マット
73:パーチクルボード
74:フロアマット
100,100B:床構造(防振床構造)
T40:防振材の厚さ
T41:ベース部の厚さ
T42:凸部の厚さ
W41:ベース部の幅
W42:凸部の幅
X:X軸方向(防振材の幅方向)
Y:Y軸方向(防振材の長手方向)
Z:Z軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8