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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043773
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ピストンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/00 20060101AFI20240326BHJP
   F16J 1/01 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F02F3/00 G
F02F3/00 302Z
F16J1/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148948
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】阪井 博行
(72)【発明者】
【氏名】市川 和男
(72)【発明者】
【氏名】乃生 芳尚
(72)【発明者】
【氏名】中野 光一
(72)【発明者】
【氏名】坂木 民司
(72)【発明者】
【氏名】本田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中橋 宏和
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩康
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA05
3J044AA18
3J044BA04
3J044BC02
3J044BC04
3J044CA01
3J044CA13
3J044DA09
3J044EA00
(57)【要約】
【課題】空間部内部に粒子が充填されるとともに凝集抑制構造を備えたピストンを大量生産することが可能なピストンの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】ピストン製造方法では、まず、水と粉粒体との混合物を固化させた立体形状であって辺を凹ませた溝121~123を有する複数のブロック101~114を準備する。複数のブロック101~114を互いに重ね合わせて第1貫通孔131、第2貫通孔132および第3貫通孔133を有する中子100を準備する。キャビティ内部に中子100を配置して型締めする。キャビティならびに中子100の第1貫通孔131、第2貫通孔132および第3貫通孔133に溶湯を注入する。溶湯を凝固させることにより、空間部30を有するピストン本体20を形成し、それとともに、第1梁部材51、第2梁部材52および柱部材52を形成する。最後に、ピストン本体20の空間部30から水を排出する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン本体の内部に空間部が形成されるとともに当該空間部に粉粒体が充填された内燃機関用のピストンを製造する方法であって、
流動性を有するベース材と前記粉粒体との混合物を固化させることにより、複数の面および隣接する2つの前記面の境界の辺を有する立体形状であって前記辺を当該立体形状の内方に凹ませた溝を有する複数のブロックを準備するブロック準備工程と、
前記複数のブロックを互いに重ね合わせて前記複数のブロックのそれぞれの溝の幅方向側縁をつなぎ合わせることにより前記ピストンの往復動方向に交差する方向に延びる梁用貫通孔を形成し、前記複数のブロックを互いに接着することにより、前記梁用貫通孔を有する中子を準備する中子準備工程と、
前記ピストン本体の外形形状に対応するキャビティを有する鋳造型に対して、前記キャビティの内部に前記中子を配置して型締めする型締め工程と、
前記キャビティおよび前記中子の前記梁用貫通孔に、前記ピストンの材料からなる溶湯を注入する溶湯注入工程と、
前記溶湯を凝固させることにより、前記キャビティの内部に前記ピストン本体を形成するとともに当該ピストン本体の内部に前記中子の外形形状に対応する前記空間部を形成し、さらに、前記梁用貫通孔の内部に前記空間部内部を前記ピストンの往復動方向に交差する方向に延びる梁部材を形成する溶湯凝固工程と、
前記溶湯凝固工程の後に、前記ピストン本体の前記空間部から前記ベース材を排出するベース材排出工程と、
を含む、
ことを特徴とするピストンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のピストンの製造方法において、
前記中子準備工程において、前記梁用貫通孔を互いに交差するように2本形成するように、前記複数のブロックを組み合わせて互いに接着することにより、互いに交差する2本の前記梁用貫通孔を有する中子を準備し、
前記溶湯凝固工程において、互いに交差する2本の前記梁用貫通孔の内部に互いに交差する2本の前記梁部材を形成する、
ことを特徴とするピストンの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のピストンの製造方法において、
前記中子準備工程において、前記梁用貫通孔とともに前記往復動方向に延びる柱用貫通孔を形成するように、前記複数のブロックを組み合わせて互いに接着することにより、前記梁用貫通孔および前記柱用貫通孔を有する中子を準備し、
前記溶湯注入工程において、前記キャビティならびに前記中子の前記梁用貫通孔および前記柱用貫通孔に前記溶湯を注入し、
前記溶湯凝固工程において、前記梁用貫通孔の内部に前記梁部材を形成するとともに前記柱用貫通孔の内部に前記往復動方向に延びる柱部材を形成する、
ことを特徴とするピストンの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のピストンの製造方法において、
前記ベース材は、水を含み、
前記ブロック準備工程では、前記水と前記粉粒体との混合物を-40度以下で凍結することにより、前記複数のブロックを準備する、
ことを特徴とするピストンの製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のピストンの製造方法において、
前記粉粒体の前記空間部への充填率は、前記空間部の容積に占める体積割合として、35~50%である、
ことを特徴とするピストンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダ内で往復移動するピストンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンダ内に往復動可能に収容されるピストンを備えたエンジン(レシプロエンジン)では、燃費向上と出力確保の観点から、圧縮比を大きくするとともにピストンの慣性重量を低減することが考えられる。ここで、慣性重量の低減のためには、従来からピストン内部に空間部を設けて軽量化が図られている。ただし、燃焼圧力の最大値を高めると、ピストンに生じる振動からエンジンの振動や騒音がともに大きくなる。そのため、起振源となるピストンは、軽量化とともに振動抑制も要求される。
【0003】
起振源となるピストンの軽量化および振動抑制の両立を図る従来の構造として、特許文献1に記載されているように、ピストンの空間部に粒子状充填材を移動可能な充填率で充填した構造が提案されている。この構造では、ピストンの往復移動中に、粒子状充填材が空間部内部を移動することによって、ピストンで生じる振動のエネルギーを粒子状充填材同士の摩擦による熱エネルギーに変換し、それにより、ピストンの振動を減衰させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-186722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなピストンの空間部に充填された粒子状充填材を用いてピストンに生じる振動を減衰させる構造では、ピストンの往復移動中に粒子状充填材が凝集してほぼ一体の塊となって空間部内部で往復移動する現象が生じる。このため、粒子状充填材同士の摩擦による振動抑制機能が効果的に発揮できない。
【0006】
そこで、空間部内部に粒子の凝集を抑制する構造を設けることが考えられるが、空間部内部に粒子が充填されるとともに凝集抑制構造を備えたピストンを大量生産することは困難である。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、空間部内部に粒子が充填されるとともに凝集抑制構造を備えたピストンを大量生産することが可能なピストンの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のピストンの製造方法は、ピストン本体の内部に空間部が形成されるとともに当該空間部に粉粒体が充填された内燃機関用のピストンを製造する方法であって、流動性を有するベース材と前記粉粒体との混合物を固化させることにより、複数の面および隣接する2つの前記面の境界の辺を有する立体形状であって前記辺を当該立体形状の内方に凹ませた溝を有する複数のブロックを準備するブロック準備工程と、前記複数のブロックを互いに重ね合わせて前記複数のブロックのそれぞれの溝の幅方向側縁をつなぎ合わせることにより前記ピストンの往復動方向に交差する方向に延びる梁用貫通孔を形成し、前記複数のブロックを互いに接着することにより、前記梁用貫通孔を有する中子を準備する中子準備工程と、前記ピストン本体の外形形状に対応するキャビティを有する鋳造型に対して、前記キャビティの内部に前記中子を配置して型締めする型締め工程と、前記キャビティおよび前記中子の前記梁用貫通孔に、前記ピストンの材料からなる溶湯を注入する溶湯注入工程と、前記溶湯を凝固させることにより、前記キャビティの内部に前記ピストン本体を形成するとともに当該ピストン本体の内部に前記中子の外形形状に対応する前記空間部を形成し、さらに、前記梁用貫通孔の内部に前記空間部内部を前記ピストンの往復動方向に交差する方向に延びる梁部材を形成する溶湯凝固工程と、前記溶湯凝固工程の後に、前記ピストン本体の前記空間部から前記ベース材を排出するベース材排出工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明は、ピストンの鋳造時にピストンの空間部を形成するための中子に空間部への粉粒体の充填と凝集抑制構造の形成という2つの機能を持たせることにより、粉粒体および凝集抑制構造を備えたピストンの量産を可能にする画期的なピストンの製造方法である。
【0010】
すなわち、上記のピストンの製造方法では、まず、ブロック準備工程において、流動性を有するベース材と粉粒体との混合物を固化させることにより、複数の面および隣接する2つの前記面の境界の辺を有する立体形状であって少なくとも1つの辺を当該立体形状の内方に凹ませた溝を有する複数のブロックを準備する。ついで、中子準備工程において、複数のブロックを互いに重ね合わせて複数のブロックのそれぞれの溝の幅方向側縁をつなぎ合わせることによりピストンの往復動方向に交差する方向に延びる梁用貫通孔を形成し、複数のブロックを互いに接着することにより、梁用貫通孔を有する中子を準備する。そして、溶湯注入工程において溶湯がキャビティとともに中子の梁用貫通孔に流入することにより、溶湯凝固工程では、空間部を有するピストン本体を形成するとともに当該空間部の内部にピストンの往復動方向に交差する方向に延びる梁部材を形成することができる。
【0011】
その後、凝固後の型開き後に中子の構成材料の一つである流動性を有するベース材をピストン本体の空間部から排出することにより、中子の他の構成材料である粉粒体がピストンの内部の空間部に残留する。これにより、ピストンの一般的な鋳造技術を利用して、空間部内部に粉粒体が充填されるとともに凝集抑制構造としての梁部材を備えたピストンを大量生産することが可能になる。
【0012】
上記のように形成された梁部材は、ピストンの往復動方向に対して交差する方向に延びているので、凝集抑制構造として機能することが可能である。すなわち、ピストンの往復移動中では、粉粒体が空間部における往復動方向の端部に一時的に集まっても粉粒体が往復動方向に移動する途中で当該粉粒体が梁部材に衝突することにより粉粒体の分散を促進するとともに粉粒体の移動方向を変えることが可能になる。これにより、梁部材は、粉粒体の凝集を抑制させる凝集抑制構造として機能することが可能である。また、その結果、粉粒体間の摩擦を増幅させるので、ピストンの振動抑制機能を効果的に発揮することが可能である。
【0013】
なお、本発明でいう「ブロック」とは、中子を構成するための複数の面および隣接する2つの前記面の境界の辺を有する立体形状を有する部品またはセグメントのことであり、複数の面と隣接する2つの面の境界の辺を有する形状であればよく、たとえば、略立方体形状や略直方体形状など種々の形状が含まれる。
【0014】
上記のピストンの製造方法において、前記中子準備工程において、前記梁用貫通孔を互いに交差するように2本形成するように、前記複数のブロックを組み合わせて互いに接着することにより、互いに交差する2本の前記梁用貫通孔を有する中子を準備し、前記溶湯凝固工程において、互いに交差する2本の前記梁用貫通孔の内部に互いに交差する2本の前記梁部材を形成するのが好ましい。
【0015】
上記の製造方法では、ピストンの鋳造時に互いに交差する2本の梁部材を同時に形成することが可能になり、ピストン製造の作業性が向上する。しかも、上記の製造方法で製造されるピストンでは、2本の梁部材が空間部の広範囲にわたって平面的に張り巡らされるので、粉粒体が往復動方向に移動する途中に複数の梁部材うちのいずれかに確実に衝突して粉粒体を分散させることが可能になり、減衰効果を確実に高めることが可能である。
【0016】
上記のピストンの製造方法において、前記中子準備工程において、前記梁用貫通孔とともに前記往復動方向に延びる柱用貫通孔を形成するように、前記複数のブロックを組み合わせて互いに接着することにより、前記梁用貫通孔および前記柱用貫通孔を有する中子を準備し、前記溶湯注入工程において、前記キャビティならびに前記中子の前記梁用貫通孔および前記柱用貫通孔に前記溶湯を注入し、前記溶湯凝固工程において、前記梁用貫通孔の内部に前記梁部材を形成するとともに前記柱用貫通孔の内部に前記往復動方向に延びる柱部材を形成するのが好ましい。
【0017】
上記の製造方法では、ピストンの鋳造時に往復動方向に交差する方向に延びる梁部材とともに往復動方向に延びる柱部材を同時に形成することが可能になり、ピストン製造の作業性が向上する。また、上記の製造方法で製造されるピストンでは、ピストン本体の空間部の部位の剛性が弱くても、往復動方向に延びる柱部材が空間部の内壁を往復動方向で支持することにより、ピストン本体における空間部の部位を補強することが可能である。したがって、梁部材による粉粒体の凝集抑制と柱部材によるピストン本体の補強が可能になる。
【0018】
上記のピストンの製造方法において、前記ベース材は、水を含み、前記ブロック準備工程では、前記水と前記粉粒体との混合物を-40度以下で凍結することにより、前記複数のブロックを準備するのが好ましい。
【0019】
上記のピストンの製造方法では、ベース材に含まれる水は調達し易く、しかも、水の量を調整することにより、水と粉粒体を混合するときに粉粒体の充填量を容易に調整することが可能である。また、水と粉粒体との混合物を-40度以下で凍結することにより、ブロックが高温の溶湯と接触したときの耐熱性を向上させることが可能である。さらに、中子を準備するときに、隣接する2つのブロックの対向面に水を塗布することによりブロック同士の接着を容易に行うことが可能である。
【0020】
上記のピストンの製造方法において、前記粉粒体の前記空間部への充填率は、前記空間部の容積に占める体積割合として、35~50%であるのが好ましい。
【0021】
上記の範囲であれば、上記の製造方法で製造されるピストンでは、粉粒体が空間部の内部を円滑に往復移動することができ、ピストンの減衰効果が確実に発揮される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明のピストンの製造方法によれば、空間部内部に粒子が充填されるとともに凝集抑制構造としての梁部材を備えたピストンを大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のピストンの製造方法で製造されるピストンの一例として、ピストン本体内部に粉粒体が収容されるとともに第1~第2梁部材および柱部材を有する分散フレームが収容されたピストンの一部切欠斜視図である。
図2図1のピストン本体内部に収容された粉粒体および分散フレームを示す一部切り欠いたピストンを後方側から見た図である。
図3図1のピストン本体内部に収容された粉粒体および分散フレームを示す一部切り欠いたピストンを右側から見た図である。
図4図1のピストン本体内部に収容された粉粒体および分散フレームを示す一部切り欠いたピストンを上方から見た図である。
図5図1の一対の空間部および一対の分散フレームの位置関係を模式的に示す説明図である。
図6図1の分散フレームが面心立方構造であることを模式的に示す説明図である。
図7】本発明の実施形態に係るピストンの製造方法のフローチャートである。
図8図7のブロックを準備する工程の具体的な手順を示すフローチャートである。
図9図7のブロックを準備する工程によって形成された複数のブロックを模式的に示す説明図である。
図10図7のブロックを準備する工程によって形成された複数のブロックの具体例であって、図5の一対の空間部に対応する中子を形成するための合体前の複数のブロックを示す説明図である。
図11図10の合体前の複数のブロックの平面図である。
図12図10の合体前の複数のブロックの底面図である。
図13図10の合体前の複数のブロックを右側から見た図である。
図14図10の合体前の複数のブロックを前側から見た図である。
図15図7の中子を準備する工程によって形成された中子を模式的に示す説明図であって、図9の複数のブロックを用いて形成された中子を示す説明図である。
図16図7の中子を準備する工程によって形成された中子の具体例として、図10の複数のブロックを合体して形成された中子であって、図5の一対の空間部および分散フレームに対応する中子の斜視図である。
図17図16の中子を右側から見た図である。
図18図16の中子を前側から見た図である。
図19】型締め工程において、モールドのキャビティ内に中子を配置した状態を示す断面図である。
図20】溶湯が凝固した後に型開きして中子のベース材である水を気化して排出する状態を示す断面図である。
図21】本発明の製造方法で製造されるピストンの変形例として、立方体の中心を通って対角線を通る4本の梁部材によって構成された体心立方構造の分散フレームを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るピストンの製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
なお、本実施形態では、ピストン1および中子100に関する以下の説明において、「上下方向」は図示しないエンジンのシリンダの中心軸の方向(シリンダ軸方向)およびピストン1の往復動方向と同義であり、エンジンの燃焼室側が「上」、その反対側(クランク室側)が「下」である。また、「前後方向」とはエンジンのクランクシャフトの軸方向と平行な方向のことであり、その一方側を「前」、他方側を「後」とする。さらに、「左右方向」とは「上下方向」および「前後方向」の双方に直交する方向のことであり、その一方側を「左」、他方側を「右」とする。この場合、左側は燃焼室の排気側から吸気側を向く側であるから、左側は吸気側と同義である。また、右側は吸気側から排気側を向く側であるから、右側は排気側と同義である。図中において、「左」「右」の表記に括弧付きで「IN」「EX」を併記しているのはこのためである。
【0026】
[I.本製造方法で製造されるピストンの概要]
本発明の製造方法で製造されるピストンは、内燃機関用のピストンであり、エンジンのシリンダ内で上下方向に往復動する部材である。このピストン1は、以下の図1~5に示されるように、前後方向に分かれて一対の空間部30が内部に形成されたピストン本体20と、一対の空間部30のそれぞれに充填された粉粒体40と、一対の空間部30のそれぞれ内部に形成された分散フレーム50とを有する。分散フレーム50は、粉粒体40の凝集を抑制するためのフレーム状の構造体であり、前後方向に延びる第1梁部材51と、左右方向に延びる第2梁部材52と、上下方向に延びる柱部材53とを有する。ピストン1の構成の詳細な説明については、後段で説明する。
【0027】
[II.ピストン1の製造方法]
本実施形態に係るピストンの製造方法の概要について、図7を用いて説明する。
【0028】
図7に示すように、ピストンの製造方法は、次のステップを備える。
【0029】
最初に、ブロック準備工程S1として、ピストン本体20の一対の空間部30を形成する中子100(図16図18参照)を構成するための構成部品として、複数のブロック101~114(図10図14参照)を準備する。複数のブロック101~114のそれぞれは、後述のように溝121~123(図10図14参照)を有する。
【0030】
ついで、中子準備工程S2として、上記の溝121~123を有する複数のブロック101~114を接着し、複数の貫通孔131~133(図16図19参照)を有する中子100を準備する。
【0031】
ついで、型締め工程S3として、モールド(鋳造型)のキャビティの内部に中子100を配置して型締めする。
【0032】
ついで、溶湯注入工程S4として、キャビティおよび中子100の複数の貫通孔131~133に、ピストンの材料からなる溶湯を注入する。
【0033】
そして、溶湯凝固工程S5として、溶湯を凝固させて、空間部30を有するピストン本体20および分散フレーム50(具体的には、第1梁部材51、第2梁部材52、および柱部材53)を形成する。
【0034】
溶湯の凝固後に、ベース材排出工程S6として、ピストン本体20の空間部30からベース材である水分を排出する。
【0035】
つぎに、上記の各工程S1~S6について、さらに詳細に説明する。
【0036】
(ブロック準備工程S1)
ブロック準備工程S1は、上記のように、図10図14に示される溝121~123を有する複数のブロック101~114を準備する工程である。このブロック準備工程S1については、まず、図9に示された簡略化されたモデルを用いて簡単に説明する。図9の簡略化モデルでは、ベース材BSと粉粒体PWとの混合物を固化した複数(図9では4つ)のブロックB1~B4を準備する。4つのブロックB1~B4は、これら4つのブロックB1~B4が突き合わされる部分における各ブロックB1~B4の辺SDにそれぞれ溝Gを有する。溝Gは、辺SDにおいてブロックの内方に凹ませた形状を有する。
【0037】
具体的なブロック準備工程S1では、図8のフローチャートに示されるような手順で複数のブロック101~114(図10~14参照)を準備する。
【0038】
まず、ステップS21として、流動性を有するベース材としての液体(例えば水)と粉粒体40(金属やセラミックスなどの粒状体)とを混錬する。
【0039】
ついで、ステップS22として、液体(例えば水)と粉粒体40との混合物を、複数のブロック101~114それぞれの形状に対応する成形型に入れて複数のブロック101~114の形状に成形する。
【0040】
最後に、混合物を-40度以下まで冷却して凍結(固化)させることにより、凍結した複数のブロック101~114が完成する。
【0041】
図10図14に示されるように、複数のブロック101~114それぞれは、複数の面および隣接する2つの前記面の境界の辺を有する立体形状であって少なくとも1つの辺を当該立体形状の内方に凹ませた溝121~123を有する。
【0042】
複数のブロック101~114それぞれは、中子100を構成するための複数の面および隣接する2つの前記面の境界の辺を有する立体形状を有する部品またはセグメントであり、複数の面と隣接する2つの面の境界の辺を有する形状であればよい。この立体形状には、たとえば、略立方体形状や略直方体形状など種々の形状が含まれる。
【0043】
本実施形態のブロック101~114は、それぞれ、他のブロックと向かい合う面は平面であるが、中子100の外表面を構成する面(すなわち、中子100の外側に露出する面を構成する面)は曲面で構成した立体形状である。これにより、複数のブロック101~114を合体することにより、複雑な外形形状を有する中子100を形成することが可能である。
【0044】
また、本発明でいう立体形状は、当該立体形状を構成する複数の面のうちの一部において隣接する2つの面およびそれらの境界の辺が同一平面上にあるような形状であってもよい。例えば、上記の複数のブロック101~114の隣接する2つ、4つまたは6つのブロックを合体して、他のブロックと向かい合う平面を合体して同一平面上に隣接させ、その同一平面上の隣接する2つの面の境界の辺に沿って溝を形成すればよい。
【0045】
溝121~123は、それぞれ、複数のブロック101~114のうち、4つのブロックが突き合わされる部分における各ブロックの辺に形成されている。溝121~123は、複数のブロック101~114にとっては円弧状にブロック内方に凹んだ断面を有する。溝121~123は、具体的には以下のように形成されている。
【0046】
溝121は、中子100の前後方向に延びる前後一対の第1貫通孔131を形成するために前後方向に延びている。前側の第1貫通孔131に対応する溝121は、中子100の最も前側の部分に対応する4つのブロック107~110からなる第1ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、第1ブロック組の後側の4つのブロック101~104からなる第2ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、にそれぞれ形成されている。後側の第1貫通孔131に対応する溝121は、中子100の最も後側の部分に対応する4つのブロック111~114からなる第3ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、前記第3ブロック組の前側に隣接する4つのブロック101、102、105、106からなる第4ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、にそれぞれ形成されている。
【0047】
溝122は、中子100の左右方向に延びる前後一対の第2貫通孔132を形成するために左右方向に延びている。前側の第2貫通孔132に対応する溝122は、前側かつ右側の4つのブロック101、103、107、109からなる第5ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、前側かつ左側の4つのブロック102、104、108、110からなる第6ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、にそれぞれ形成されている。後側の第2貫通孔132に対応する溝122は、後側かつ右側の4つのブロック101、105、111、113からなる第7ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、後側かつ左側の4つのブロック102、106、112、114からなる第8ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、にそれぞれ形成されている。
【0048】
溝123は、中子100の上下方向に延びる前後一対の第3貫通孔133を形成するために上下方向に延びている。前側の第3貫通孔133に対応する溝123は、前側かつ上側の4つのブロック101、102、107、108からなる第9ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、前側かつ下側の4つのブロック103、104、109、110からなる第10ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、にそれぞれ形成されている。後側の第3貫通孔133に対応する溝123は、後側かつ上側の4つのブロック101、102、111、112からなる第11ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、後側かつ下側の4つのブロック105、106、113、114からなる第12ブロック組の突合せ部における各ブロックの辺と、にそれぞれ形成されている。
【0049】
(中子準備工程S2)
中子準備工程S2では、図9に示される簡易モデルを用いて説明すれば、それぞれ溝Gを有する凍結した複数のブロックB1~B4を互いに重ね合わせて複数のブロックB1~B4のそれぞれの溝Gの幅方向側縁G1をつなぎ合わせる。これにより、図15に示された簡略化された中子のモデルのように、貫通孔Hを形成し、ブロックB1~B4の対向面同士を互いに接着することにより、溝Gが結合することにより形成された貫通孔Hを有する中子を形成する。
【0050】
具体的な中子準備工程S2では、図10~14に示される上記の溝121~123を有する凍結した複数のブロック101~114を互いに接着し、図16~18に示される複数の貫通孔131~133を有する凍結した中子100を準備する。
【0051】
具体的には、図16~18に示される中子100は、具体的には、ピストン本体20の一対の空間部30(図5参照)に対応する外形形状を有する一対の第1対応部分136と、一対の空間部30の間をつなぐ一対の細い流路31(図5参照)に対応する外形形状を有する一対の第2対応部分37とを有する。なお、135は、型開き後に凍結した中子100に含まれる水分を排出するための突起部である。突起部135は、中子100の下面の前後方向の中間でかつ左右方向両側に配置されている。
【0052】
一対の第1対応部分136のそれぞれは、前後方向に延びる第1貫通孔131と、左右方向に延びる第2貫通孔132と、上下方向に延びる第3貫通孔133とを有する。
【0053】
第1貫通孔131は、第1の梁用貫通孔であり、分散フレーム50の前後方向に延びる第1梁部材51(図5参照)に対応する。
【0054】
第2貫通孔132は、第2の梁用貫通孔であり、分散フレーム50の左右方向に延びる第2梁部材52(図5参照)に対応する。第2貫通孔132は、第1貫通孔131と直交(すなわち90度に交差)する。
【0055】
第3貫通孔133は、柱用貫通孔であり、分散フレーム50の上下方向に延びる柱部材53(図5参照)に対応する。第3貫通孔133は、第1貫通孔131と第2貫通孔132との交点を通って上下方向に延びる。
【0056】
複数のブロック101~114は、それぞれベース材として水が用いられているので、ブロック同士の対向面に水を塗布すればようにブロック同士を接着することが可能である。
【0057】
上記の中子100は、ベース材としての水と粉粒体40との混合物によって構成されているが、粉粒体40の空間部30への充填率が空間部30の容積に占める体積割合として、35~50%になるように、中子100における粉粒体40の充填量が設定される。
【0058】
(型締め工程S3)
型締め工程S3では、ピストン本体20の外形形状に対応するキャビティを有するモールド(鋳造型)に対して、キャビティの内部に中子100を配置して型締めする。
【0059】
具体的には、上記のように準備した中子100を、図19に示されるように、モールド220を構成するセグメント221~224の組み合わせにより形成されるキャビティ(空洞部)220a内に配置して、モールド(鋳造型)220を型締めする。ここで、モールド220を構成するセグメント221~224のうち、セグメント222には、中子100の2つの突起部135を差し込むことができる2箇所の凹部220bが設けられている。
【0060】
中子100をキャビティ220a内に配置する際には、中子100の突起部135を凹部220bに差し込むことで、キャビティ220a内での中子100の位置および姿勢を規定することができる。
【0061】
(溶湯注入工程S4)
溶湯注入工程S4では、キャビティおよび中子100の複数の貫通孔131~133に、ピストンの材料からなる溶湯(溶融した金属であり、例えば、アルミニウム合金を溶融したもの)を注入する。具体的には、図19において、図示を省略する湯口から溶湯(溶融金属)をキャビティ220a内に注入するとともに、図16~18に示される中子100の第1~第3貫通孔131~133に注入する。 このとき、注入時における溶湯の温度は、略800℃である。キャビティ220a内に注入された溶湯は、中子100と接する部分から凝固し始める。
【0062】
一方、中子100は、溶湯が注入された後において、0℃付近まで温度が漸次上昇し、その後、少しの間0℃付近の温度で推移する。中子100は、0℃付近の温度で少しの間推移した後、温度上昇し、中子100のベース材である水が気化し始める。
【0063】
(溶湯凝固工程S5)
溶湯凝固工程S5では、キャビティ220a内で溶湯を凝固させることにより、キャビティ220aの内部にピストン本体20を形成するとともに当該ピストン本体20の内部に中子100の外形形状に対応する一対の空間部30を形成する。
【0064】
それとともに、中子100の一対の空間部30のそれぞれの内部に図1~5に示される2本の梁部材51、52および柱部材53を有する分散フレーム50を形成する。具体的には、中子100の第1貫通孔131および第2貫通孔132の内部に空間部30内部をピストンの往復動方向(上下方向)に交差する方向に延びる梁部材、すなわち、前後方向に延びる第1梁部材51および左右方向に延びる第2梁部材52を形成する。さらに、第3貫通孔133の内部に往復動方向(上下方向)に延びる柱部材53を形成する。
【0065】
(ベース材排出工程S6)
ベース材排出工程S6では、上記の溶湯凝固工程の後に、ピストン本体20の空間部30から中子100を構成していたベース材である水を気化した状態で排出する。
【0066】
具体的には、図20に示すように、キャビティ220a内への溶湯の注入から所定時間経過して溶湯が凝固した後に、モールド220を型開きする。これにより突起部135におけるピストン本体20(すなわち、溶融金属が凝固した部分)から露出する部分から、中子100を構成していたベース材BSである水が気化した状態で外部へ排出される。中子100の他の構成材料である粉粒体40はピストン本体20の内部の空間部30に残留する。なお、突起部135の直径または幅は、水が気化して排出されるが、粉粒体40が空間部30に残留することを可能にする寸法に設定される。
【0067】
なお、本実施形態に係る製造方法では、突起部135をピストンヘッド21における頂面とは反対側のスカート部26が設けられた側に向けて突出するようにしているが、突起部135も中子100の他の部分と同様に水でできているので気化する。突起部135の消滅後には、ピストンヘッド21の下面には突起部135が存在した場所に開口が形成されるが、ピストン本体20の製造完了時に溶接などで塞げばよい。
【0068】
[III.本実施形態のピストン製造方法の特徴]
(1)
本実施形態のピストン1の製造方法では、まず、ブロック準備工程において、流動性を有するベース材BSと粉粒体40との混合物を固化させることにより、複数の面および隣接する2つの前記面の境界の辺を有する立体形状であって少なくとも1つの辺を当該立体形状の内方に凹ませた溝121~123を有する複数のブロック101~114(図10図14参照)を準備する。ついで、中子準備工程において、複数のブロック101~114を互いに重ね合わせて複数のブロック101~114のそれぞれの溝121~123の幅方向側縁をつなぎ合わせることによりピストンの往復動方向(本実施形態では上下方向)に交差する方向(本実施形態では前後方向および左右方向)に延びる梁用貫通孔である第1貫通孔131および第2貫通孔132を形成し、複数のブロック101~114を互いに接着することにより、梁用貫通孔である第1貫通孔131および第2貫通孔132を有する中子100(図16~18参照)を準備する。そして、溶湯注入工程において溶湯がキャビティ220a(図19参照)とともに中子100の梁用貫通孔である第1貫通孔131および第2貫通孔132に流入することにより、溶湯凝固工程では、一対の空間部30を有するピストン本体20を形成するとともに当該空間部30の内部に前後方向および左右方向に延びる第1梁部材51および第2梁部材52(図5参照)を形成することができる。
【0069】
その後、凝固後の型開き後に中子100の構成材料の一つである流動性を有するベース材BS(図20参照)をピストン本体20の空間部30から排出することにより、中子100の他の構成材料である粉粒体40がピストンの内部の空間部30に残留する。これにより、ピストンの一般的な鋳造技術を利用して、空間部30内部に粉粒体40が充填されるとともに凝集抑制構造としての第1梁部材51および第2梁部材52を備えたピストン1を大量生産することが可能になる。
【0070】
上記のように形成された第1梁部材51および第2梁部材52は、ピストンの往復動方向(上下方向)に対して交差する方向(前後方向および左右方向)に延びているので、凝集抑制構造として機能することが可能である。すなわち、ピストン1の往復移動中では、粉粒体40が空間部30における上下方向の端部に一時的に集まっても粉粒体40が上下方向に移動する途中で当該粉粒体40が第1梁部材51および第2梁部材52に衝突することにより粉粒体40の分散を促進するとともに粉粒体40の移動方向を変えることが可能になる。これにより、第1梁部材51および第2梁部材52は、粉粒体40の凝集を抑制させる凝集抑制構造として機能することが可能である。また、その結果、粉粒体40間の摩擦を増幅させるので、ピストンの振動抑制機能を効果的に発揮することが可能である。
【0071】
(2)
本実施形態のピストン1の製造方法では、中子準備工程において、梁用貫通孔である第1貫通孔131および第2貫通孔132を互いに交差するように2本形成するように、複数のブロック101~114を組み合わせて互いに接着することにより、互いに交差する2本の梁用貫通孔である第1貫通孔131および第2貫通孔132を有する中子100を準備する。そして、溶湯凝固工程において、互いに交差する2本の梁用貫通孔である第1貫通孔131および第2貫通孔132の内部に互いに交差する2本の第1梁部材51および第2梁部材52を形成する。
【0072】
上記の製造方法では、ピストン1の鋳造時に互いに交差する2本の第1梁部材51および第2梁部材52を同時に形成することが可能になり、ピストン製造の作業性が向上する。しかも、上記の製造方法で製造されるピストン1では、2本の第1梁部材51および第2梁部材52が空間部30の広範囲にわたって平面的に張り巡らされるので、粉粒体40が上下方向に移動する途中に複数の第1梁部材51および第2梁部材52うちのいずれかに確実に衝突して粉粒体40を分散させることが可能になり、減衰効果を確実に高めることが可能である。
【0073】
(3)
本実施形態のピストン1の製造方法では、中子準備工程において、梁用貫通孔である第1貫通孔131および第2貫通孔132とともに往復動方向(上下方向)に延びる柱用貫通孔である第3貫通孔133を形成するように、複数のブロック101~114を組み合わせて互いに接着することにより、梁用貫通孔である第1貫通孔131および第2貫通孔132および柱用貫通孔である第3貫通孔133を有する中子100を準備する。
【0074】
溶湯注入工程において、キャビティ220aおよび中子100の第1貫通孔131、第2貫通孔132および第3貫通孔133に溶湯を注入する。溶湯凝固工程において、第1貫通孔131および第2貫通孔132の内部に第1梁部材51および第2梁部材52を形成するとともに第3貫通孔133の内部に上下方向に延びる柱部材53を形成する。
【0075】
上記の製造方法では、ピストン1の鋳造時に前後方向および左右方向に延びる第1梁部材51および第2梁部材52とともに上下方向に延びる柱部材53を同時に形成することが可能になり、ピストン製造の作業性が向上する。また、上記の製造方法で製造されるピストン1では、ピストン本体20の空間部30の部位の剛性が弱くても、上下方向に延びる柱部材53が空間部30の内壁を上下方向で支持することにより、ピストン本体20における空間部30の部位を補強することが可能である。したがって、第1梁部材51および第2梁部材52による粉粒体40の凝集抑制と柱部材53によるピストン本体20の補強が可能になる。
【0076】
(4)
本実施形態のピストン1の製造方法では、中子100を構成するベース材BSは、水を含む。ブロック準備工程では、水と粉粒体40との混合物を-40度以下で凍結することにより、複数のブロック101~114を準備する。
【0077】
上記のピストン1の製造方法では、ベース材BSに含まれる水は調達し易く、しかも、水の量を調整することにより、水と粉粒体40を混合するときに粉粒体40の充填量を容易に調整することが可能である。また、水と粉粒体40との混合物を-40度以下で凍結することにより、ブロック101~114が高温の溶湯と接触したときの耐熱性を向上させることが可能である。さらに、中子100を準備するときに、ブロック101~114のうち隣接する2つのブロックの対向面に水を塗布することによりブロック同士の接着を容易に行うことが可能である。
【0078】
(5)
本実施形態のピストン1の製造方法では、粉粒体40の空間部30への充填率は、空間部30の容積に占める体積割合として、35~50%である。
【0079】
上記の範囲であれば、上記の製造方法で製造されるピストン1では、粉粒体40が空間部30の内部を円滑に往復移動することができ、ピストン1の減衰効果が確実に発揮される。
【0080】
(変形例)
(A)
なお、上記実施形態の製造方法では、中子の構成材料の1つであるベース材として水を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ベース材は流動性を有する材料であれば種々の材料を採用することが可能である。他のベース材として、塩を含む材料、例えば、塩と凝結剤の混合物などを用いてもよい。このように塩を含むベース材を用いた場合には、型開き工程の後に、温水をピストン本体20の空間部30に注入することにより、塩を空間部30の内部から排出することが可能である。
【0081】
(B)
上記の実施形態の製造方法で製造されるピストン1は、第1梁部材51および第2梁部材52だけでなく柱部材53を備えているが、本発明では、柱部材を形成することは必須ではない。柱部材を省略して、往復動方向に対して交差する方向に延びる梁部材のみの構成、例えば、前後方向に延びる第1梁部材51および左右方向に延びる第2梁部材52のうちのいずれか1つまたは両方を備えた構成のピストンを製造してもよい。または、往復動方向に交差する方向であって、前後方向または左右方向に対して傾斜する方向に延びる梁部材を備えた構成のピストンを製造してもよい。さらに、1つの空間部30につき、複数の梁部材が多数の交点で交差する構成、例えば、マトリックス状に張り巡らされた多数の梁部材を備えた構成のピストンを製造してもよい。
【0082】
(C)
なお、上記の実施形態の製造方法で製造されるピストン1は、ピストンの往復動方向が上下方向と一致している例が示されているが、ピストンの往復動方向が上下方向と一致していない場合でもよい。例えば、往復動方向が上下方向に対して前後方向または左右方向に傾斜している場合、または往復動方向が水平方向と一致している場合であってもよい。その場合も、上記実施形態の作用効果を奏することが可能である。
【0083】
[IV.ピストン1の構成の詳細な説明]
つぎに、上記のピストン1の構成について、さらに詳細に説明する。
図1図5は、本発明の製造方法で製造されるピストン1の具体的構造を示す図であり、図1は斜視図、図2図4はピストン1の一部切り欠いてピストン1内部の空間部30に収容された粉粒体40および分散フレーム50を示す図、図5は一対の空間部30および一対の分散フレーム50の位置関係を模式的に示す図である。
【0084】
ピストン1は、上記のように、ピストン本体20と、粉粒体40(図1図4参照)と、分散フレーム50(図1図6参照)とを備える。
【0085】
ピストン本体20は、図1図2に示されるように、ピストンヘッド21と、ピストンヘッド21の外周から下方に延びる一対のスカート部26とを有している。
【0086】
ピストンヘッド21は、比較的扁平な円柱状の部材であり、エンジンの燃焼室の底面を形成する冠面22と、エンジンのシリンダの側周面と摺接する外周面24とを備える。冠面22は、ペントルーフ型の燃焼室の天井面と対向する面であり、その外縁部分を除く主要領域が、当該天井面に対応するように山型に突出するように形成されている。冠面22には、下方に窪むキャビティ23が形成されている。キャビティ23は、燃焼室の天井面に配置された図外のインジェクタからの燃料噴射を受けるための凹部であり、本実施形態では平面視で略楕円形に形成されている。
【0087】
ピストンヘッド21の外周面24には、ピストンリング(図示省略)が嵌め込まれる複数の(ここでは3つの)リング溝25が形成されている。ピストンリングは、エンジンの燃焼室からクランク室への燃焼ガスの漏出を防ぐ機能、および、シリンダの側周面に付着した余分なオイルを掻き落とす機能を有している。
【0088】
一対のスカート部26は、その一方が左側(吸気側)に、他方が右側(排気側)に位置するように配置されている。各スカート部26がシリンダの側周面に摺接することにより、ピストン1が往復動する際の首振り振動が抑制される。
【0089】
ピストンヘッド21の下側であって両スカート部26の間の部位には、前後一対の縦壁27が設けられている。前側の縦壁27は、両スカート部26の前端どうしをつなぐように左右方向に延びる壁部であり、後側の縦壁27は、両スカート部26の後端どうしをつなぐように左右方向に延びる壁部である。
【0090】
一対の縦壁27は、その左右方向の中間部にピンボス部28を有している。各ピンボス部28は、前後方向に貫通するピン孔28aを規定する環状の壁部である。ピン孔28aには、ピストン本体20と図示しないコンロッド(コネクティングロッド)とを結合するために前後方向に延びる図示しないピストンピンが固定的に挿入される。すなわち、ピストンピンは、その前端部および後端部がそれぞれ各ピンボス部28のピン孔28aに嵌入されることにより、一対の縦壁27に跨るような状態でピストン本体20に固定される。さらに、両ピンボス部28の間に位置するピストンピンの中間部には、コンロッドの小端部(上端部)が外挿される。すなわち、ピストン本体20は、ピストンピンを介してコンロッドの小端部に結合される。コンロッドの小端部は、一対のピンボス部28の前後方向の中間部に位置する上方に凹む収容凹部29(図3参照)に収容される。
【0091】
ピストンヘッド21の内部、具体的には、一対のピンボス部28のそれぞれ上の部分に一対の空間部30が形成されている。一対の空間部30は、収容凹部29を間に挟みながら前後方に並んで配置されている。
【0092】
それぞれの空間部30は、図1および図2に示されるように、その前後方向に沿った断面(左右方向と直交する切断面により切断した断面)が中央側ほど拡大するように形成されている。詳しくは、各空間部30は、前後方向視で下側に凸となるように突出した底面を有しており、その突出量がピストン本体20の左右方向の中央位置において最も大きくなるように形成されている。言い換えると、各空間部30は、その断面積(すなわち、図3に示される左右方向に直交する断面についての断面積)が図1および図2のピン孔28aの中心Oに近づくほど拡大するように形成されている。このため、各空間部30の断面積は、ピン孔28aの中心Oに対応する位置(左右方向の中央)において最も大きくなる。また、各空間部30は、その前後方向の幅が下側ほど縮小するように形成されている。また、図3に示されるように、各空間部30の前後方向の幅は、上下方向において、3本のリング溝25のうち一番上のリング溝25の高さ位置で最も大きくなるように設定される。そして、各空間部30のその高さ位置で第1梁部材51およびそれに直交する第2梁部材52が配置されている。
【0093】
本実施形態では、一対の空間部30は、図5に示されるように、ピストン本体20の外周方向に沿って前後方向に延びる一対の細い流路31を通して連通している。したがって、ピストン本体20の内部には、一対の空間部30および一対の流路31によって1つの大きな空間部が形成されている。
【0094】
それぞれの空間部30には、図1~4に示されるように、粉粒体40および分散フレーム50が配置されている。
【0095】
粉粒体40は、多数の微細な粒子の集合体である。粉粒体40は、空間部30の内部で移動可能な充填率(すなわち、空間部30を粉粒体40によって完全に塞がない程度の充填率)で空間部30に充填されている。
【0096】
粉粒体40の充填率は、例えば、上記のように空間部30の容積に占める体積割合として、35~50%であれば粉粒体40は往復移動中に分散フレーム50の2本の梁部材51、52に衝突して円滑に分散することが可能である。
【0097】
粉粒体40としては、上記のように金属やセラミックスなどの粒状体などが用いられるが、さらに詳しくは、ピストン鋳造時およびエンジン使用時の熱に耐えられる程度の耐熱性を有するセラミックなどの無機材料または金属材料からなる粉体または粒体が選定される。粉粒体40の粒子の大きさおよび形状は、ピストン1の往復移動に伴って粉粒体40が空間部30の内部で移動可能な条件を満たすように適宜選定される。
【0098】
図1~5に示されるように、分散フレーム50は、各空間部30の内部に配置され、ピストン1の往復移動に伴って粉粒体40が空間部30の内部で往復移動する際に粉粒体40を分散するように構成されている。
【0099】
分散フレーム50は、上記のように、往復動方向(上下方向)に対して交差する方向(図1~6に示される前後方向および左右方向)に延びる少なくとも1つ以上の梁部材として、第1梁部材51および第2梁部材52を備えている。さらに詳述すれば、本実施形態の分散フレーム50は、前後方向に延びる第1梁部材51と、左右方向に延びる第2梁部材52と、往復動方向(上下方向)に延びる柱部材53とを備える。第1梁部材51は、前後方向に延びる円柱状の部材であり、その両端は空間部30の前後方向に対向する一対の側壁に支持されている。第2梁部材52は、左右方向に延びる円柱状の部材であり、その両端は空間部30の左右方向に対向する一対の側壁に支持されている。柱部材53は、上下方向に延びる円柱状の部材であり、その両端は空間部30の上下方向に対向する天壁おおよび底壁に支持されている。
【0100】
本実施形態では、複数の梁部材として、第1梁部材51および第2梁部材52が平面視で互いに交差(直交)して延びるように配置されている。なお、第1梁部材51および第2梁部材52は交差していればよく、直交していなくてもよい。
【0101】
第1梁部材51および第2梁部材52が交差する交点54は、往復動方向(上下方向)から見てピンボス部28と重なる位置、すなわち、ピンボス部28の上にある。具体的には、交点54は、ピンボス部28のピン孔28aの中心Oの上にある。
【0102】
交差する梁部材51、52のうちの1本の梁部材である第1梁部材51は、各ピンボス部28に沿って延びる。具体的には、第1梁部材51は、図1および図3に示されるように、ピンボス部28のピン孔28aの中心Oを通る中心線C(前後方向に延びる線)に沿って延びる。
【0103】
柱部材53は、第1梁部材51および第2梁部材52が交差する交点54を通って上下方向に延びる。
【0104】
以上のように、本実施形態の分散フレーム50は、図6に示されるように、平面視において互いに直交して延びる第2本の梁部材51、52、すなわち、前後方向に延びる第1梁部材51および左右方向に延びる第2梁部材52と、第1梁部材51および第2梁部材52の交点54を通って上下方向に延びる柱部材53とによって構成された面心立方構造である。
【0105】
この面心立方構造では、立方体を構成する6つの平面S11、S12、S21、S22、S31、S32の互いに対向する平面の中心同士を結ぶように、第1梁部材51、第2梁部材52、および柱部材53が延びている。すなわち、第1梁部材51は、前後方向に延びて前後方向に向かい合う2つの平面S11およびS12の中心同士を結ぶ。第2梁部材52は、左右方向に延びて左右方向に向かい合う2つの平面S21およびS22の中心同士を結ぶ。柱部材53は、上下方向に延びて上下方向に向かい合う2つの平面S31およびS32の中心同士を結ぶ。
【0106】
本実施形態では、分散フレーム50を構成する第1梁部材51、第2梁部材52、および柱部材53は、円柱状であるので、粉粒体40との衝突時に粉粒体40を分散させる効果が高く、かつ、梁部材の劣化や損耗が少ない。なお、本発明はこれらの梁部材51、52および柱部材53の断面形状についてとくに限定するものではなく、粉粒体40を分散させることが可能であればいかなる断面形状(例えば多角形の断面形状)でもよい。
【0107】
分散フレーム50が空間部30の内部で占める容積率は、15%以下(好ましくは6~6.8%)であれば、上記の梁部材51、52および柱部材53の本数および太さを減らしても粉粒体40の効果的な分散によりピストンの減衰効果を十分に発揮することが可能である。
【0108】
分散フレーム50を構成する第1梁部材51、第2梁部材52、および柱部材53は、上記のように、ピストン本体20とともに鋳造により一体形成される。
【0109】
(上記ピストン1の特徴)
(1)
上記のピストン1は、ピストン本体20の空間部30に粒子状の粉粒体40が充填された構成において、粉粒体40を分散する分散フレーム50を備えている。分散フレーム50は、ピストン1の往復動方向に対して交差する方向に延びる少なくとも1つ以上の梁部材(第1梁部材51および第2梁部材52)を備えている。このため、ピストン1の往復移動中では、粉粒体40が空間部30における往復動方向(上下方向)の端部、すなわち、空間部30の下部または上部に一時的に集まっても粉粒体40が上下方向に移動する途中で当該粉粒体40が分散フレーム50の梁部材に衝突することにより粉粒体40の分散を促進するとともに粉粒体40の移動方向を変えることが可能になる。これにより、粉粒体40の凝集を抑制するとともに粉粒体40間の摩擦を増幅させるので、ピストン1の振動抑制機能を効果的に発揮することが可能である。
【0110】
また、第1梁部材51および第2梁部材52がピストン本体20の空間部30の内壁を支持することにより、ピストン本体20の強度を上げることが可能になる。すなわち、第1梁部材51および第2梁部材52を含む分散フレーム50をピストン本体20の補強のための補強部材として活用することが可能である。
【0111】
(2)
上記のピストン1では、図4に示されるように、第1梁部材51および第2梁部材52は、平面視で互いに交差して延びるように配置されているので、第1梁部材51および第2梁部材52が空間部30の広範囲にわたって平面的に張り巡らされる。そのため、粉粒体40が往復動方向(上下方向)に移動する途中に第1梁部材51および第2梁部材52のうちのいずれかに確実に衝突して粉粒体40を分散させることが可能になり、減衰効果を確実に高めることが可能である。
【0112】
とくに図4に示されるように平面視で広い空間部30であっても、上記のように第1梁部材51および第2梁部材52が広範囲にわたって平面的に張り巡らされているので、粉粒体40が確実に第1梁部材51および第2梁部材52に衝突して粉粒体40を分散させることが可能になる。
【0113】
(3)
上記のピストン1では、図4に示されるように、ピストン本体20は、往復動方向(上下方向)から見て空間部30と重なる位置(すなわち、空間部30よりも下方の位置)にエンジンのコンロッドと当該ピストン本体20とを結合するピストンピンが挿入されるピンボス部28を備える。
【0114】
第1梁部材51および第2梁部材52が交差する交点54は、上下方向から見てピンボス部28と重なる位置、すなわち、ピンボス部28の上にある。
【0115】
空間部30におけるピンボス部28の上の位置では、空間部30の上下方向の幅が最も広くなり、それにより空間部30の底面が最も低くなるので、粉粒体40がたまりやすい。そこで、上記の構成では、梁部材の交点54がピンボス部28の上にあることにより、空間部30の底面における上下方向から見てピンボス部28と重なる位置で集まった粉粒体40を往復動方向に移動中に確実に交差する第1梁部材51および第2梁部材52に衝突させて粉粒体40を分散させることが可能である。
【0116】
(4)
上記のピストン1では、図3および図4に示されるように、交差する第1梁部材51および第2梁部材52のうちの第1梁部材51は、ピンボス部28に沿って延びるので、空間部30の底面における往復動方向(上下方向)から見てピンボス部28と重なる位置で集まった粉粒体40を上下方向に移動中に確実にピンボス部28に沿って延びる第1梁部材51に衝突させて粉粒体40を分散させることが可能である。
【0117】
(5)
上記のピストン1では、分散フレーム50は、図1~6に示されるように、上下方向に延びる柱部材53をさらに備える。ピストン本体20の空間部30の部位では剛性が弱いが、上下方向に延びる柱部材53が空間部30の内壁を上下方向で支持することにより、ピストン本体20における空間部30の部位を補強することが可能である。
【0118】
また、柱部材53は、ピンボス部28の上にあるので、ピストン本体20におけるピンボス部28上の位置の部位を効果的に補強することが可能である。さらに詳細にいえば、空間部30におけるピンボス部28の上の位置では、空間部30の底面が最も低くなり、空間部30の上下方向の寸法が大きくなっているので、ピストン本体20におけるピンボス部28上の位置における剛性が他の部分よりも相対的に弱い。そこで、上記のように、柱部材53をピンボス部28上に配置することにより、ピストン本体20の効果的な補強が可能になる。
【0119】
(6)
上記のピストン1では、分散フレーム50は、図6に示されるように、平面視において互いに直交して延びる第1梁部材51および第2梁部材52と、第1梁部材51および第2梁部材52の交点54を通って上下方向に延びる柱部材53とによって構成された面心立方構造である。
【0120】
かかる構成によれば、3本の棒状体、すなわち、2本の梁部材(すなわち第1梁部材51および第2梁部材52)および1本の柱部材53のみで粉粒体40の高い分散効果を得ることが可能である。しかも、第1梁部材51、第2梁部材52および柱部材53が1点で交差するので、分散フレーム50およびそれによって支持されるピストン本体20の強度が高くなる。
【0121】
また、この構成であれば、分散フレーム50が空間部30の内部で占める容積率を十分に下げながら高い減衰効果を得ることが可能である。
【0122】
(7)
上記のピストン1では、分散フレーム50が空間部30の内部で占める容積率は、15%以下(好ましくは6~6.8%)である。この範囲であれば、分散フレーム50の梁部材の本数や太さを減らしながら粉粒体40の効果的な分散をしてピストンの減衰効果を十分に発揮することが可能である。
【0123】
(ピストン1の変形例)
上記の実施形態では、ピストン1の一例として、面心立方構造の分散フレーム50(すなわち、前後方向に延びる第1梁部材51、左右方向に延びる第2梁部材52、および上下方向に延びる柱部材53を備えた構成)を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。分散フレームは、往復動方向に対して交差する方向に延びる少なくとも1つ以上の梁部材を備えていれば種々の構成を採用することが可能である。
【0124】
分散フレームの変形例として、例えば、図21に示されるように、分散フレーム60が往復動方向(上下方向)に交差する4本の梁部材61、62、63、64によって構成された体心立方構造であってもよい。
【0125】
4本の梁部材61、62、63、64は、立方体における中心BCを通る4本の対角線に沿って延び、すなわち、立方体の6つの角部P1~P8のうちの2点を結ぶように延びる。具体的には、第11梁部材61は、中心BCを通るとともに角部P1およびP8を結ぶ。第12梁部材62は、中心BCを通るとともに角部P2およびP7を結ぶ。第13梁部材63は、中心BCを通るとともに角部P3およびP6を結ぶ。第14梁部材64は、中心BCを通るとともに角部P4およびP5を結ぶ。
【0126】
このような体心立方構造の分散フレーム60では、4本の梁部材61~64で粉粒体40の高い分散効果を得ることが可能である。しかも、4本の梁部材61~64が1点で交差するので、分散フレーム60およびそれによって支持されるピストン本体20の強度が高くなる。
【0127】
また、この構成であれば、分散フレーム50が空間部30の内部で占める容積率を十分に下げながら高い減衰効果を得ることが可能である。
【0128】
なお、図6に示される上記の面心立方構造の分散フレーム50の方が図21に示される体心立方構造の分散フレーム60よりも少ない梁部材により粉粒体40と衝突して分散させて減衰効果が高いので、図6に示される上記の面心立方構造の分散フレーム50を採用する方が好ましい。
【符号の説明】
【0129】
1 ピストン
20 ピストン本体
30 空間部
40 粉粒体
50 分散フレーム
51 第1梁部材
52 第2梁部材
53 柱部材
54 交点
100 中子
101~114 ブロック
121~123 溝
131 第1貫通孔
132 第2貫通孔
133 第3貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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