(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043777
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】シーズヒータ製造方法及びシーズヒータ製造用治具
(51)【国際特許分類】
H05B 3/48 20060101AFI20240326BHJP
B21D 7/00 20060101ALI20240326BHJP
B21D 3/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H05B3/48
B21D7/00 A
B21D3/10 A
B21D3/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148957
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】594073129
【氏名又は名称】新熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】桑嶋 建
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直斗
【テーマコード(参考)】
3K092
4E063
【Fターム(参考)】
3K092QA01
3K092RA01
3K092RD03
3K092RD08
3K092RD39
3K092RD47
3K092VV03
4E063AA04
4E063MA02
(57)【要約】
【課題】所定のパターンに曲げ加工されたシースの精度を容易に向上可能なシーズヒータ製造方法等を提供する。
【解決手段】シース110の内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータの製造方法を、シースが所定の基準面Rに沿った所定のパターンを形成して延在するよう曲げ加工を行う工程と、曲げ加工後のシースにおけるパターンを構成する部分P1~P6を、基準面の法線方向に沿って近接又は離間可能とされた第1、第2の矯正型210,220によって挟持し、シースの各部位における基準面からの距離のばらつきを矯正する工程とを有し、第1の矯正型と第2の矯正型の少なくとも一方におけるシースとの接触面を弾性体223,224によって構成した構成とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータの製造に用いられるシーズヒータ製造方法であって、
前記シースが所定の基準面に沿った所定のパターンを形成して延在するよう曲げ加工を行う工程と、
前記曲げ加工後の前記シースにおける前記パターンを構成する部分を、前記基準面の法線方向に沿って近接又は離間可能とされた第1の矯正型及び第2の矯正型によって挟持し、前記シースの各部位における前記基準面からの距離のばらつきを矯正する工程とを有し、
前記第1の矯正型と前記第2の矯正型の少なくとも一方における前記シースとの接触面を弾性体によって構成したこと
を特徴とするシーズヒータ製造方法。
【請求項2】
前記弾性体は、第1層と、前記第1層と重ねて配置され、前記第1層とは弾性率が異なる第2層とを有すること
を特徴とする請求項1に記載のシーズヒータ製造方法。
【請求項3】
前記第1の矯正型及び前記第2の矯正型によって前記矯正を行う際に前記シースに負荷される圧迫力を、前記シースの断面形状の塑性変形が生じないよう設定したこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシーズヒータ製造方法。
【請求項4】
前記弾性体は、前記第1の矯正型と前記第2の矯正型とのいずれか一方にのみ設けられること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシーズヒータ製造方法。
【請求項5】
前記パターンは、小径部から大径部にかけて同心円状に配列された複数の円弧状部を含むこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシーズヒータ製造方法。
【請求項6】
前記基準面が平面であって、前記第1の矯正型及び前記第2の矯正型の前記シースとの接触面部を平面としたこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシーズヒータ製造方法。
【請求項7】
筒状のシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータの製造に用いられるシーズヒータ製造用治具であって、
所定の基準面に沿った所定のパターンを形成して延在するよう曲げ加工を行ったシースにおける前記パターンを構成する部分に、前記基準面の法線方向に沿った第1の方向から当接する第1の矯正型と、
前記シースにおける前記パターンを構成する部分を、前記基準面の法線方向に沿った第2の方向から当接して前記第1の矯正型とともに前記シースを挟持する第2の矯正型とを有し、
前記第1の矯正型と前記第2の矯正型の少なくとも一方における前記シースとの接触面を弾性体によって構成したこと
を特徴とするシーズヒータ製造用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーズヒータ製造方法及びシーズヒータ製造用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
シーズヒータは、円筒状の金属製シースの内部に、絶縁体粉末に埋設された発熱線を収容した電気ヒータである。
このようなシーズヒータは、シースに適宜曲げ加工を行うことによって高い形状自由度を有することから、例えば所定の平面に沿ってシースが巻き回された部分を設けることが知られている。
このようなシーズヒータに関する技術として、例えば、特許文献1には、絶縁材と電熱線を内蔵した金属パイプを減径、焼鈍しした後、平面状に加工するためのプレス加工を二回以上に分割して行うことが記載されている。
特許文献2には、渦巻形シーズヒータの成型方法において、シーズヒータとともに形状記憶合金からなる直線状のスペーサを渦巻形に巻き付けることが記載されている。
特許文献3には、渦巻形シーズヒータにおいて、金属パイプ(シース)を渦巻形状とするとともに、プレス加工により一端に平坦部を形成し、端子が挿入された部分に位置する金属パイプ両端部を、閉端部より下方に屈曲されて被加熱物に対する熱伝導を改善することが記載されている。
特許文献4には、電熱器用のシーズヒータにおいて、金属パイプ(シース)をプレス加工し、一旦に平坦部を、適宜間隔を有して設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58- 78487号公報
【特許文献2】特開昭59-194375号公報
【特許文献3】実開昭55- 75995号公報
【特許文献4】実開昭58- 14690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シーズヒータにおいて、シースを平面に沿った所定のパターン(一例として渦巻型等)に曲げ加工したものがある。
このようなシーズヒータの製造において、シースを曲げ加工してパターンを形成する工程は作業者による手作業による場合が多く、作業者に高度なスキルが要求されるとともに、作業者の個人差による製品仕上がりのばらつきを抑制することが困難であった。
また、このようなパターンが形成された部分を、手作業によって平面性を向上する修正(矯正)を行うことも考えられるが、この場合、多くの工数、時間を要し、コストアップの要因となっていた。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、所定のパターンに曲げ加工されたシースの精度を容易に向上可能なシーズヒータ製造方法、及び、シーズヒータ製造用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係るシーズヒータ製造方法は、筒状のシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータの製造に用いられるシーズヒータ製造方法であって、前記シースが所定の基準面に沿った所定のパターンを形成して延在するよう曲げ加工を行う工程と、前記曲げ加工後の前記シースにおける前記パターンを構成する部分を、前記基準面の法線方向に沿って近接又は離間可能とされた第1の矯正型及び第2の矯正型によって挟持し、前記シースの各部位における前記基準面からの距離のばらつきを矯正する工程とを有し、前記第1の矯正型と前記第2の矯正型の少なくとも一方における前記シースとの接触面を弾性体によって構成したことを特徴とする。
これによれば、所定のパターンを曲げ加工後のシースを、少なくとも一方が弾性体を有する第1、第2の矯正型で押圧することにより、所定のパターンの基準面からのずれが低減されるようシースの曲げ形状を矯正することができる。
また、第1の矯正型、第2の矯正型の少なくとも一方におけるシースとの接触面を、所定の剛性を有する弾性体としたことにより、シースの筒状部の断面に不要な変形を生じさせることがなく、また、シースの曲げ部を矯正する際のスプリングバックを抑制することができる。
これにより、最終製品の仕上がり、歩留まりを改善することができる。
【0006】
本発明において、前記弾性体は、第1層と、前記第1層と重ねて配置され、前記第1層とは弾性率が異なる第2層とを有する構成とすることができる。
これによれば、シースの曲げ部を矯正する際のスプリングバックをより一層抑制し、矯正効果を高めることができる。
【0007】
本発明において、前記第1の矯正型及び前記第2の矯正型によって前記矯正を行う際に前記シースに負荷される圧迫力を、前記シースの断面形状の塑性変形が生じないよう設定した構成とすることができる。
これによれば、上述した効果を確実に発揮することができる。
【0008】
本発明において、前記弾性体は、前記第1の矯正型と前記第2の矯正型とのいずれか一方にのみ設けられる構成とすることができる。
これによれば、各矯正型の構成を簡素化しつつ上述した効果を得ることができる。
【0009】
本発明において、前記パターンは、小径部から大径部にかけて同心円状に配列された複数の円弧状部を含む構成とすることができる。
これによれば、複数の円弧状部の一部が基準面から浮き上がる態様の形状不整を適切に矯正し、各円弧状部を基準面に近づけることができる。
【0010】
本発明において、前記基準面が平面であって、前記第1の矯正型及び前記第2の矯正型の前記シースとの接触面部を平面とした構成とすることができる。
これによれば、シースの曲げ加工によって形成されるパターンの平面性を容易に向上することができる。
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明の他の一態様に係るシーズヒータ製造用治具は、筒状のシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータの製造に用いられるシーズヒータ製造用治具であって、所定の基準面に沿った所定のパターンを形成して延在するよう曲げ加工を行ったシースにおける前記パターンを構成する部分に、前記基準面の法線方向に沿った第1の方向から当接する第1の矯正型と、前記シースにおける前記パターンを構成する部分を、前記基準面の法線方向に沿った第2の方向から当接して前記第1の矯正型とともに前記シースを挟持する第2の矯正型とを有し、前記第1の矯正型と前記第2の矯正型の少なくとも一方における前記シースとの接触面を、前記シースの筒状部を断面における径方向に圧迫した際の剛性よりも低い剛性を有する弾性体によって構成したことを特徴とする。
これによっても、上述したシーズヒータ製造方法の効果と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、所定のパターンに曲げ加工されたシースの精度を容易に向上可能なシーズヒータ製造方法、及び、シーズヒータ製造用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用したシーズヒータ製造方法の実施形態における曲げ加工前のシーズヒータの外観を示す図である。
【
図2】シーズヒータを曲げ加工した後の状態を示す図であって、曲げ加工部分の基準面の法線方向から見た図である。
【
図4】実施形態のシーズヒータ製造用治具にシーズヒータの半製品がセットされた状態を示す図である。
【
図5】実施形態のシーズヒータ製造用治具によりシーズヒータの半製品の矯正を行う状態を示す図である。
【
図6】実施形態において形状不整を矯正した後のシーズヒータを基準面と平行な方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用したシーズヒータ製造方法、及び、シーズヒータ製造用治具の実施形態について説明する。
実施形態において、シーズヒータは、例えば、耐熱性ステンレス合金などの金属材料からなる円筒であるシースの内部に発熱線を挿入し、隙間に絶縁体からなる粉末を充填して構成されている。
【0015】
図1は、実施形態のシーズヒータ製造方法における曲げ加工前のシーズヒータの外観を示す図である。
シーズヒータ100は、シース110を有する。
シース110は、例えば、ステンレス系合金やアルミニウム系合金などの金属材料等の筒状体である。
図1に示す状態では、シース110は、その中心軸方向がストレートとなるよう形成されている。
【0016】
シース110の内部には、図示しない発熱線及び絶縁体粉末が収容される。
発熱線は、例えば、ニッケル-クロム系の金属製の線材として構成することができる。
発熱線の両端部に設けられた端子120,130は、外部に設けられた図示しない電源に接続される。
発熱線は、通電されることによって抵抗加熱し、シーズヒータ100の熱源となる。
絶縁体粉末は、粉体状に形成された例えば酸化マグネシウム等の絶縁材である。
絶縁体粉末は、発熱線の外表面とシース110の内周面との間に充填されている。
【0017】
次に、シーズヒータ100は、シース110に曲げ加工を施すことにより、基準面R(ここでは一例として平面)に沿った所定のパターンが形成される。
図2は、シーズヒータを曲げ加工した後の状態を示す図であって、曲げ加工部分の基準面の法線方向から見た図である。
図3は、
図2のIII-III部矢視図である。
曲げ加工後のシース110には、小径部P1、折返し部P2、中径部P3、折返し部P4、大径部P5、径方向延在部P6、立上部P7等が連続的に形成されている。
【0018】
小径部P1は、曲げ加工前のシース110の長手方向における中央部近傍に形成され、基準面Rに沿って円弧状に延在する湾曲した部分である。
小径部P1は、中心角が例えば180度以上にわたって形成されている。
【0019】
折返し部P2は、小径部P1の両端部にそれぞれ形成され、小径部P1から外径側へ張り出す方向に例えば約180°湾曲した部分である。
折返し部P2は、小径部P1の端部と、中径部P3の端部との間をつなげる部分である。
なお、折返し部P2、中径部P3、折返し部P4、大径部P5、径方向延在部P6、立上部P7は、小径部P1の径方向(
図2においては上下方向)に沿った軸に関して対象に、各一対が設けられる。
【0020】
中径部P3は、基準面Rの法線方向から見たときに、小径部P1と同心の円弧に沿って延在する湾曲した部分である。
中径部P3は、曲率半径が小径部P1よりも大きくなっている。
小径部P1の外周縁と、中径部P3の内周縁とは、これらの径方向に間隔を隔てて配置されている。
中径部P3の一方の端部は、折返し部P2と連続している。
中径部P3の他方の端部は、折返し部P4と連続している。
【0021】
折返し部P4は、中径部P3の折返し部P2側とは反対側に端部に形成され、中径部P3から外径側に張り出す方向に例えば約180°湾曲した部分である。
折返し部P4は、中径部P3の端部と、大径部P5の端部との間をつなげる部分である。
【0022】
大径部P5は、基準面Rの法線方向から見たときに、小径部P1、中径部P3と同心の円弧に沿って延在する湾曲した部分である。
大径部P5は、曲率半径が小径部P1、中径部P3よりも大きくなっている。
中径部P3の外周縁と、大径部P5の内周縁とは、これらの径方向に間隔を隔てて配置されている。
大径部P5の一方の端部は、折返し部P4と連続している。
大径部P5の他方の端部は、径方向延在部P6と連続している。
【0023】
径方向延在部P6は、大径部P5の折返し部P4側とは反対側の端部から、基準面Rに沿って、小径部P1の中央部まで、小径部P1の径方向にほぼ沿ってストレートに延在する部分である。
【0024】
立上部P7は、径方向延在部P6の大径部P5側とは反対側の端部(小径部P1の中央部)から、基準面Rに対する法線方向にほぼ沿って立ち上げられた部分である。
一対の立上部P7には、シーズヒータ100の端子120,130がそれぞれ設けられる。
【0025】
このような各部P1乃至P7の形状は、例えば、作業者が図示しない治具に手作業によって巻き付けることで形成される。
特に、基準面Rに沿って形成されたパターンを構成する各部P1乃至P6は、基準面Rに沿って平面的(シース110の中心線が基準面Rから乖離しないように)に配列されていることが理想であるが、実際には手作業の練度、くせなどにより、基準面Rからの乖離(形状不整)が発生する場合がある。
例えば、
図3に示す例であれば、中径部P3が大径部P5に対して上方側へ浮き上がっていることがわかる。さらに、大径部P5も基準面Rに対して歪んでおり、平面性が損なわれていることがわかる。
【0026】
このような形状不整が所定以上存在する状態で、最終製品の精度や仕上がり、歩留まりなどに悪影響をもたらすことが懸念される。
そこで、従来は、作業者が手作業によって形状不整の矯正を行っていたが、この場合、作業が煩雑となってシーズヒータ100の生産性を阻害し、さらに、矯正作業を行う作業者の技量に矯正精度が左右されるという問題点があった。
【0027】
そこで、本実施形態においては、以下説明するシーズヒータ製造用治具を用いて、手曲げ加工後の矯正を行っている。
図4は、実施形態のシーズヒータ製造用治具にシーズヒータの半製品がセットされた状態を示す図である。
シーズヒータ製造用治具200は、上型(第1の矯正型)210、下型(第2の矯正型)220を有する。
【0028】
上型210は、ベースプレート211、突出部212等を有する。
ベースプレート211は、上型210の上端面を構成する例えば円盤状の部材である。
突出部212は、ベースプレート211の下面部から張り出して設けられた部材である。
突出部212は、例えば、ベースプレート211よりも外径が小さくかつ板厚の円盤状もしくは円柱状に形成することができる。
突出部212は、シーズヒータ100のシース110における矯正が必要な部分(P1乃至P5)を押圧する押し子となる。
ベースプレート211、突出部212の中央部には、シーズヒータ100の立上部P7との干渉を防止する開口Oが設けられている。
立上部P7は、端子120,130とともに、開口Oを介して、上型210の上方へ貫通可能な状態となる。
【0029】
下型220は、ベースプレート221、枠部222、第1弾性シート223、第2弾性シート224等を有する。
ベースプレート221は、下型220の下端面を構成する例えば円盤状の部材である。
枠部222は、ベースプレート221の上面部から突出した壁状の部材である。
枠部222は、例えば、基準面の法線方向(
図4の上下方向)から見た平面形が円環状となる枠体として形成される。
枠部222は、突出部212の外径と実質的に同等かつ不可避的に設けられるクリアランスだけ大きい内径を有し、突出部212を挿入可能となっている。
枠部222は、上型210、下型220でシーズヒータ100のシース110の形状不整を矯正する際に、上型210と下型220との基準面R内における位置決め、同じくシーズヒータ100のシース110の外径部P5と下型220との位置決めを行う機能を有する。
【0030】
第1弾性シート223、第2弾性シート224は、下型220の上方であって、枠部222の内側に、上型210側から順次設けられている。
第1弾性シート223、第2弾性シート224は、それぞれ例えばゴム系やエラストマー系、発泡ウレタン系などの弾性を有しかつ上型210、下型220を構成する他の材料よりも弾性率が小さい弾性材料によって形成されている。
ここで、第1弾性シート223、第2弾性シート224は、相互に弾性率が異なる材料によって構成される。
例えば、第1弾性シート223のほうが、第2弾性シート224に対して、弾性率が低い材料によって、上下方向の圧縮荷重に対する剛性が低くなるよう構成することができる。
また、第1弾性シート223、第2弾性シート224の上下方向の圧縮に対する剛性が、シース110を断面の径方向に圧迫した際のシース110の剛性よりも低くなるよう設定することが好ましい。
【0031】
上型210、下型220を構成する各部材(第1弾性シート223、第2弾性シート224を除く)は、例えば、鋼材やアルミニウム系合金などの金属材料や、エンジニアリングプラスティックなどの樹脂系材料によって形成することができる。
また、例えば上型210のベースプレート211と突出部212や、下型220のベースプレート221と枠部222は、一体に形成することも可能である。
【0032】
シーズヒータ100は、シース110の曲げ加工が施された部分が枠部222の内径側に収まるように(大径部P5の外周縁が枠部222の内周面に沿うように)、下型220の上に載置される。
このとき、シース110の下部は、第1弾性シート223の上面と当接する。
その後、シース110のパターン部分(P1乃至P6)を上から覆うように、上型210を設置する。
このとき、突出部212の下端部は、枠部222の内径側に挿入される。
【0033】
その後、突出部212の下面部がシース110のパターン部分における上部と当接した状態で、上型210に下向き荷重を与え、シース110を押圧し、形状不整の矯正を行う。
図5は、実施形態のシーズヒータ製造用治具によりシーズヒータの半製品の矯正を行う状態を示す図である。
このような荷重の付加は、例えば、油圧式、電動式などのプレス機を用いて行うことができる。
また、シース110が比較的軟質の材料である場合には、人力によって行うことも可能な場合がある。
このとき、シース110に負荷される圧迫力は、シース110の断面形状の塑性変形が生じないよう設定することが好ましい。
【0034】
その後、シーズヒータ100をシーズヒータ製造用治具200から取り外す。
図6は、実施形態において形状不整を矯正した後のシーズヒータを基準面と平行な方向から見た図である。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)所定のパターンを曲げ加工後のシース110を、上型210と、弾性体を有する下型220とで挟持し、押圧することにより、所定のパターンの基準面Rからのずれが低減されるようシース110の曲げ形状を矯正することができる。
また、下型220におけるシース110との接触面を、所定の剛性を有する弾性シート223としたことにより、シース110の筒状部の断面に不要な変形を生じさせることがなく、また、シース110の曲げ部を矯正する際のスプリングバックを抑制することができる。
(2)弾性の異なる第1弾性シート223、第2弾性シート224を積層して配置したことにより、シース110の曲げ部を矯正する際のスプリングバックをより一層抑制し、矯正効果を高めることができる。
(3)シース110に上型210、下型220から負荷される圧迫力を、シース110の断面形状の塑性変形が生じないよう設定することにより、上述した効果を確実に発揮することができる。
(4)弾性シートを下型220にのみ設けたことによって、シーズヒータ製造用治具200の構成を簡素化しつつ上述した効果を得ることができる。
(5)シース110の曲げ加工によって形成されるパターンが、小径部から大径部にかけて同心円状に配列された複数の円弧状部である小径部P1、中径部P3、大径部P5を含む構成とすることにより、小径部P1、中径部P3、大径部P5の一部が基準面Rから浮き上がる態様の形状不整を適切に矯正し、各円弧状部を基準面Rに近づけることができる。
(6)基準面Rが平面であって、上型210、下型220のシース110との接触面部を平面とした構成としたことにより、シース110の曲げ加工によって形成されるパターンの平面性を容易に向上することができる。
【0036】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)シーズヒータ製造方法及びシーズヒータ製造用治具の構成、さらに、製造されるシーズヒータの構成は、上述した実施形態の構成に限定されることなく、適宜変更することができる。
(2)シーズヒータの半製品形状(曲げ加工直後の形状)や、製品形状、シーズヒータ製造用治具を構成する各部材の形状、構造、材質、製法等は、実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
(3)実施形態では下型にのみ弾性シート(弾性体)を設けているが、弾性体を上型に設けたり、上型、下型の両方に設けたりしてもよい。
また、実施形態では、弾性シートを一例として2層設けているが、本発明はこれに限らず、例えば3層以上設けてもよい。
(4)実施形態において、基準面は一例として平面であったが、本発明はこれに限らず、基準面は曲面であったり、屈曲面であったりしてもよい。
(5)シースを曲げ加工して形成されるパターンは、実施形態の構成に限らず適宜変更することができる。
例えば、渦巻状や二重渦巻状、ジグザグ状や、これらを他の要素とともに組み合わせたパターンとしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
100 シーズヒータ 110 シース
120,130 端子
200 シーズヒータ製造用治具 210 上型
211 ベースプレート 212 突出部
220 下型 221 ベースプレート
222 枠部 223 第1弾性シート
224 第2弾性シート R 基準面
P1 小径部 P2 折返し部
P3 中径部 P4 折返し部
P5 大径部 P6 径方向延在部
P7 立上部