(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043778
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】防音壁ユニット及び防音壁
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
E01F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148958
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】西井 雅宏
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001BB01
2D001CA01
2D001CD01
(57)【要約】
【課題】複数並べたときに互いの隙間を通して音が漏れるのを抑制するとともに、交換が容易な防音壁ユニットを提供する。
【解決手段】防音壁ユニット10は、吸音材11と、吸音材が取付けられた壁本体16と、を備え、壁本体は、吸音材が、取付け面17aに取付けられた支持部17と、支持部における、取付け面に沿う沿面方向Xの第1側X1の端部から、取付け面に直交する厚さ方向Yのうち、取付け面が向く第1側Y1に向かうに従い、沿面方向の第1側に傾斜するように延びる第1傾斜部18Aと、第1傾斜部が延びる先端部から、厚さ方向の第1側に向かって延びる第1直交部19Aと、支持部における、沿面方向の第2側X2の端部から、厚さ方向の第1側に向かうに従い、沿面方向の第1側に傾斜するように延びる第2傾斜部18Bと、第2傾斜部が延びる先端部から、厚さ方向の第1側に向かって延びる第2直交部19Bと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音材と、
前記吸音材が取付けられた壁本体と、
を備え、
前記壁本体は、
前記吸音材が、取付け面に取付けられた支持部と、
前記支持部における、前記取付け面に沿う沿面方向の第1側の端部から、前記取付け面に直交する厚さ方向のうち、前記取付け面が向く第1側に向かうに従い、前記沿面方向の前記第1側に傾斜するように延びる第1傾斜部と、
前記第1傾斜部が延びる先端部から、前記厚さ方向の前記第1側に向かって延びる第1直交部と、
前記支持部における、前記沿面方向の第2側の端部から、前記厚さ方向の前記第1側に向かうに従い、前記沿面方向の前記第1側に傾斜するように延びる第2傾斜部と、
前記第2傾斜部が延びる先端部から、前記厚さ方向の前記第1側に向かって延びる第2直交部と、
を有する、防音壁ユニット。
【請求項2】
前記第1直交部の前記厚さ方向の長さは、前記第1傾斜部の前記厚さ方向の長さよりも短い、請求項1に記載の防音壁ユニット。
【請求項3】
前記第1直交部の延長線と前記第1傾斜部とがなす角度は、5°以上45°以下である、請求項1又は2に記載の防音壁ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の防音壁ユニットを、前記沿面方向に並べて複数備え、
前記沿面方向に隣り合う一対の前記防音壁ユニットのうち、前記沿面方向の前記第1側に位置する前記防音壁ユニットの前記第2傾斜部と、前記沿面方向の前記第2側に位置する前記防音壁ユニットの前記第1傾斜部との距離は、前記第1傾斜部の前記厚さ方向の長さ以下である、防音壁。
【請求項5】
吸音材と、
前記吸音材が取付けられた壁本体と、
を備え、
前記壁本体は、
前記吸音材が、取付け面に取付けられた支持部と、
前記支持部における、前記取付け面に沿う沿面方向の第1側の端部から、前記取付け面に直交する厚さ方向のうち、前記取付け面が向く第1側に向かって延びるとともに、前記沿面方向の前記第1側に向かって凸となるように湾曲する第1湾曲部と、
前記支持部における、前記沿面方向の第2側の端部から、前記厚さ方向の前記第1側に向かって延びるとともに、前記沿面方向の前記第1側に向かって凸となるように湾曲する第2湾曲部と、
を有する、防音壁ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音壁ユニット及び防音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の防音壁ユニットを並べて構成した防音壁が知られている(例えば、特許文献1参照)。防音壁ユニットは、防音パネル(吸音材)と、防音パネルが取付けられた面板(支持部)と、面板の両端部に設けられた一対の支柱と、を有する。それぞれの支柱は、鋼板を階段状に折り返して構成されている。そして、隣り合う一対の防音壁ユニットのうち、一方の防音壁ユニットの支柱と、他方の防音壁ユニットの支柱とを嵌合させる。
【0003】
例えば、防音壁は、電車用の軌道に沿って配置される。隣り合う一対の防音壁ユニットの支柱間の隙間が階段状であることで、軌道上を走行する電車が発生する音が、この隙間を通して防音壁の外部に漏れるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えばある防音壁ユニットが破損した場合でも、隣り合う防音壁ユニットの支柱同士が嵌合している。このため、破損した防音壁ユニットを挟むように配置されている一対の防音壁ユニットに対して破損した防音壁ユニットを水平面に沿って移動させても、破損した防音壁ユニットを交換し難い。従って、クレーン等の重機で破損した防音壁ユニットを引き上げて交換する必要があった。重機を用いて防音壁ユニットを交換すると、交換に必要な費用が高くなる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、複数並べたときに互いの隙間を通して音が漏れるのを抑制するとともに、交換が容易な防音壁ユニット、及びこの防音壁ユニットを備える防音壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1は、吸音材と、前記吸音材が取付けられた壁本体と、を備え、前記壁本体は、前記吸音材が、取付け面に取付けられた支持部と、前記支持部における、前記取付け面に沿う沿面方向の第1側の端部から、前記取付け面に直交する厚さ方向のうち、前記取付け面が向く第1側に向かうに従い、前記沿面方向の前記第1側に傾斜するように延びる第1傾斜部と、前記第1傾斜部が延びる先端部から、前記厚さ方向の前記第1側に向かって延びる第1直交部と、前記支持部における、前記沿面方向の第2側の端部から、前記厚さ方向の前記第1側に向かうに従い、前記沿面方向の前記第1側に傾斜するように延びる第2傾斜部と、前記第2傾斜部が延びる先端部から、前記厚さ方向の前記第1側に向かって延びる第2直交部と、を有する、防音壁ユニットである。
【0008】
この発明では、吸音材により、例えば、防音壁ユニットの脇を走行する電車が発生する音を吸収することができる。例えば、複数の防音壁ユニットを沿面方向に並べ、沿面方向に隣り合う一対の防音壁ユニットのうち、沿面方向の第1側に位置する防音壁ユニットの第2傾斜部及び第2直交部と、沿面方向の第2側に位置する防音壁ユニットの第1傾斜部及び第1直交部とを、互いに対向又は接触させる。複数の防音壁ユニットをこのように配置させることで、これらの隙間を通して音が漏れるのを抑制することができる。
【0009】
また、例えば、破損した防音壁ユニットを挟む一対の防音壁ユニットの間から破損した防音壁ユニットを取出すには、以下の手順を行う。すなわち、一対の防音壁ユニットに対して破損した防音壁ユニットを第1傾斜部及び第2傾斜部に沿って移動させる。この後で、沿面方向及び厚さ方向にそれぞれ直交する軸線回りに破損した防音壁ユニットを回転させること等により、破損した防音壁ユニットを取出す。第1傾斜部と第1直交部とのなす角度、及び第2傾斜部と第2直交部とのなす角度がそれぞれ鋭角であるため、破損した防音壁ユニットの取出しが容易になる。
一対の防音壁ユニットの間に新しい防音壁ユニットを取付けるには、この手順の逆の手順を行う。従って、防音壁ユニットを容易に交換することができる。
【0010】
(2)本発明の態様2は、前記第1直交部の前記厚さ方向の長さは、前記第1傾斜部の前記厚さ方向の長さよりも短い、(1)に記載の防音壁ユニットであってもよい。
この発明では、一対の防音壁ユニットの間から、これら一対の防音壁ユニットに挟まれる防音壁ユニットをさらに容易に交換することができる。
【0011】
(3)本発明の態様3は、前記第1直交部の延長線と前記第1傾斜部とがなす角度は、5°以上45°以下である、(1)又は(2)に記載の防音壁ユニットであってもよい。
この発明では、複数の防音壁ユニットを沿面方向に並べて配置したときに、防音壁ユニットの隙間を通して音が漏れるのを、効果的に抑制することができる。
【0012】
(4)本発明の態様4は、(1)から(3)のいずれか一に記載の防音壁ユニットを、前記沿面方向に並べて複数備え、前記沿面方向に隣り合う一対の前記防音壁ユニットのうち、前記沿面方向の前記第1側に位置する前記防音壁ユニットの前記第2傾斜部と、前記沿面方向の前記第2側に位置する前記防音壁ユニットの前記第1傾斜部との距離は、前記第1傾斜部の前記厚さ方向の長さ以下である、防音壁である。
この発明では、複数の防音壁ユニットを配置した場合に、防音壁ユニット間の隙間を塞ぐことで、この隙間を通して音が漏れることを防止することができ、かつ、防音壁ユニットが破損した場合に、容易に交換することができる。
【0013】
(5)本発明の態様5は、吸音材と、前記吸音材が取付けられた壁本体と、を備え、前記壁本体は、前記吸音材が、取付け面に取付けられた支持部と、前記支持部における、前記取付け面に沿う沿面方向の第1側の端部から、前記取付け面に直交する厚さ方向のうち、前記取付け面が向く第1側に向かって延びるとともに、前記沿面方向の前記第1側に向かって凸となるように湾曲する第1湾曲部と、前記支持部における、前記沿面方向の第2側の端部から、前記厚さ方向の前記第1側に向かって延びるとともに、前記沿面方向の前記第1側に向かって凸となるように湾曲する第2湾曲部と、を有する、防音壁ユニットである。
【0014】
この発明では、吸音材により、例えば、防音壁ユニットの脇を走行する電車が発生する音を吸収することができる。例えば、複数の防音壁ユニットを沿面方向に並べ、沿面方向に隣り合う一対の防音壁ユニットのうち、沿面方向の第1側に位置する防音壁ユニットの第2湾曲部と、沿面方向の第2側に位置する防音壁ユニットの第1湾曲部とを、互いに対向又は接触させる。複数の防音壁ユニットをこのように配置させることで、これらの隙間を通して音が漏れるのを抑制することができる。
【0015】
また、例えば、破損した防音壁ユニットを挟む一対の防音壁ユニットの間から破損した防音壁ユニットを取出すには、以下の手順を行う。すなわち、一対の防音壁ユニットに対して破損した防音壁ユニットを、沿面方向及び厚さ方向にそれぞれ直交する軸線回りに、第1湾曲部及び第2湾曲部に沿って回転させること等により、破損した防音壁ユニットを取出す。第1湾曲部及び第2湾曲部の表面が比較的滑らかであるため、破損した防音壁ユニットの取出しが容易になる。
一対の防音壁ユニットの間に新しい防音壁ユニットを取付けるには、この手順の逆の手順を行う。従って、防音壁ユニットを容易に交換することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の防音壁ユニット及び防音壁では、防音壁ユニットを複数並べたときに互いの隙間を通して音が漏れるのを抑制するとともに、交換を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態の防音壁の斜視図である。
【
図3】同防音壁が施工されるスラブ軌道の断面図である。
【
図4】同防音壁の防音壁ユニットを取出す手順を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態の防音壁を平面視した断面図である。
【
図6】同防音壁の防音壁ユニットを取出す手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る防音壁ユニット及び防音壁の第1実施形態を、
図1から
図4を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の防音壁1は、複数の本実施形態の防音壁ユニット10と、連結部材25と、を備える。なお、
図2では、複数の防音壁ユニット10のうち、一部のみを示している。
防音壁ユニット10は、吸音材11と、壁本体16と、を備える。
例えば、吸音材11はグラスウール、発泡スチロール等で形成されている。
【0019】
壁本体16は、支持部17と、第1傾斜部18Aと、第1直交部19Aと、第2傾斜部18Bと、第2直交部19Bと、支持部材20と、を有する。
支持部17、傾斜部18A,18B、及び直交部19A,19Bは、それぞれ平板状に形成されている。
図2に示すように、支持部17の主面である取付け面17aには、吸音材11が取付けられている。ここで、取付け面17aに沿う一方向を、沿面方向Xと規定する。取付け面17aに直交する方向を、支持部17の厚さ方向(以下では、単に厚さ方向と言う)Yと規定する。沿面方向X及び厚さ方向Yにそれぞれ直交する方向を、直交方向Zと規定する。なお、
図2は、防音壁1を直交方向Zに見たときの断面図である。
【0020】
第1傾斜部18Aは、支持部17における沿面方向Xの第1側X1(以下では、単に第1側X1と言う)の端部から、厚さ方向Yのうち、取付け面17aが向く第1側Y1(以下では、単に第1側Y1と言う)に向かうに従い、第1側X1に向かって傾斜するように延びている。
第1直交部19Aは、第1傾斜部18Aが延びる先端部(第1側Y1の端部)から、第1側Y1に向かって延びている。ここで言う第1直交部19Aが第1側Y1に向かって延びるとは、第1直交部19Aと厚さ方向Yとのなす角が30°以内であることを意味する。このなす角は、20°以内であることがより好ましい。このなす角は、第2直交部19Bについても、同様である。
【0021】
第2傾斜部18Bは、支持部17における、沿面方向Xの第2側X2(以下では、単に第2側X2と言う)の端部から、第1側Y1に向かうに従い第1側X1に向かって傾斜するように延びている。第2側X2は、沿面方向Xのうち第1側X1とは反対側である。
第2直交部19Bは、第2傾斜部18Bが延びる先端部から、第1側Y1に向かって延びている。
傾斜部18A,18Bは、吸音材11を沿面方向Xに挟んでいる。
図2に示す断面において、第1傾斜部18Aの長さ及び第2傾斜部18Bの長さは、互いに等しいことが好ましい。第1直交部19Aの長さ及び第2直交部19Bの長さは、互いに等しいことが好ましい。
直交方向Zに見たときに、第1直交部19Aの延長線M1と第1傾斜部18Aとがなす角度θAと、第2直交部19Bの延長線M2と第2傾斜部18Bとがなす角度θBとは、互いに等しいことが好ましい。
第1直交部19A及び第2直交部19Bは、互いに平行であることが好ましい。
【0022】
第1直交部19Aの厚さ方向Yの長さは、第1傾斜部18Aの厚さ方向Yの長さよりも短いことが好ましい。
角度θAは、5°以上45°以下であることが好ましい。
【0023】
例えば、壁本体16が有する支持部17、傾斜部18A,18B、及び直交部19A,19Bは、鋼板を折り曲げることにより一体に形成されている。
なお、壁本体16は、予め別体に形成した支持部17、傾斜部18A,18B、及び直交部19A,19Bを、互いに接合することにより構成してもよい。
【0024】
図1に示すように、例えば、支持部材20は箱状に形成され、支持部17、傾斜部18A,18B、及び直交部19A,19Bの下端部に固定されている。
【0025】
図2に示すように、直交部19A,19Bには、第1連結部26A,26Bがそれぞれ固定されている。例えば、直交部19A,19Bは、長手方向に直交する断面がL字形の鋼材により形成されている。
図1及び
図2に示すように、複数の防音壁ユニット10は、沿面方向Xに並べて配置されている。以下では、沿面方向Xに並べて配置された複数の防音壁ユニット10を、第1側X1の端から第2側X2に向かって順に、防音壁ユニット10A,10B,10C,‥と言う。防音壁ユニット10A,10B,10C,‥を区別しないで言うときには、防音壁ユニット10と言う。
また、以下では、防音壁ユニット10A,10B,10C,‥のうち、沿面方向Xに隣り合う防音壁ユニット10A,10Bを例にとって説明する。
沿面方向Xに隣り合う防音壁ユニット10A,10Bのうち、第1側X1に位置する防音壁ユニット10は防音壁ユニット10Aであり、第2側X2に位置する防音壁ユニット10は防音壁ユニット10Bである。
【0026】
図2に示すように、防音壁ユニット10Aの第2傾斜部18B及び第2直交部19Bと、防音壁ユニット10Bの第1傾斜部18A及び第1直交部19Aとが、互いに対向又は接触している。
防音壁ユニット10B,10C等についても、防音壁ユニット10A,10Bと同様である。
防音壁ユニット10Aの第2傾斜部18Bと、防音壁ユニット10Bの第1傾斜部18Aとの距離L1は、防音壁ユニット10Bの第1傾斜部18Aの厚さ方向Yの長さ以下であることが好ましい。
【0027】
複数の防音壁ユニット10の第1連結部26A,26Bは、第2連結部27及び締結部材28A,28Bにより互いに接続されている。なお、第1連結部26A,26B、第2連結部27、及び締結部材28A,28Bで、連結部材25を構成する。
第2連結部27は、いわゆる胴縁である。第2連結部27は、第1連結部26A,26Bと同様に構成され、水平面に沿って延びている。
例えば、締結部材28A,28Bは、ボルト及びナット(符号省略)を有している。締結部材28Aは、第1連結部26Aと第2連結部27とを連結している。締結部材28Bは、第1連結部26Bと第2連結部27とを連結している。
【0028】
以下では、防音壁1の寸法の一例について説明する。
支持部17の沿面方向Xの長さは、300mmである。傾斜部18A,18Bにおいて、厚さ方向Yの長さ(折れ長さ)はそれぞれ50mmであり、沿面方向Xの長さ(折れ間隔)はそれぞれ10mmである。角度θAは、11.3°である。
第1傾斜部18A及び第1直交部19A全体としての厚さ方向Yの長さ(防音壁ユニット10の奥行)は、90mmである。
隣り合う防音壁ユニット10の隙間の沿面方向Xの長さは、4mmである。
【0029】
図3に示すように、以上のように構成された防音壁1は、スラブ軌道100に施工される。スラブ軌道100は、路盤鉄筋コンクリート101と、軌道スラブ102と、一対のレール103と、を有する。
軌道スラブ102は、路盤鉄筋コンクリート101上に配置されている。一対のレール103は、軌道スラブ102上に、軌道スラブ102の幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。一対のレール103上を、電車110が走行する。
防音壁1の各防音壁ユニット10の支持部材20は、アンカー止め105により路盤鉄筋コンクリート101に固定される。防音壁1は、直交方向Zが上下方向に沿い、沿面方向Xが一対のレール103の長手方向に沿うように配置される。
スラブ軌道100の周辺の環境に応じて、防音壁1は、一対のレール103に対する前記幅方向の第1側に配置されたり、前記幅方向の両側に配置されたりする。
【0030】
本実施形態の防音壁ユニット10では、吸音材11により、防音壁ユニット10の脇を走行する電車110が発生する音を吸収することができる。複数の防音壁ユニット10を沿面方向Xに並べ、防音壁ユニット10Aの第2傾斜部18B及び第2直交部19Bと、防音壁ユニット10Bの第1傾斜部18A及び第1直交部19Aとを、互いに対向又は接触させる。防音壁ユニット10A,10Bをこのように配置させることで、防音壁ユニット10A,10Bの隙間を通して音が漏れるのを抑制することができる。この隙間を通して差し込んだ光が、スラブ軌道100に差し込むのを抑えることができる。
【0031】
また、例えば、複数の防音壁ユニット10のうち、防音壁ユニット10Bが破損したと仮定する。この場合、防音壁ユニット10Bを挟む防音壁ユニット10A,10Cの間から破損した防音壁ユニット10Bを取出すには、以下の手順を行う。
すなわち、複数の防音壁ユニット10から連結部材25を取外し、防音壁ユニット10Bを固定しているアンカー止め105を路盤鉄筋コンクリート101から取外す。
図4に示すように、防音壁ユニット10A,10Cに対して破損した防音壁ユニット10Bを傾斜部18A,18Bに沿って移動させる。この後で、直交方向Zに沿う軸線回りに破損した防音壁ユニット10Bを矢印B1で示すように回転させること等により、破損した防音壁ユニット10Bを取出す。角度θA,θBがそれぞれ鋭角であるため、破損した防音壁ユニット10Bの取出しが容易になる。
【0032】
防音壁ユニット10A,10Cの間に新しい防音壁ユニット10Bを取付けるには、この手順の逆の手順を行う。新しい防音壁ユニット10Bをアンカー止め105により路盤鉄筋コンクリート101に固定し、複数の防音壁ユニット10に連結部材25を取付ける。従って、防音壁ユニット10Bを容易に交換することができる。
また、防音壁ユニット10Bの交換に重機が不要なため、防音壁ユニット10Bの交換に必要なコストを抑制することができる。
【0033】
第1直交部19Aの厚さ方向Yの長さは、第1傾斜部18Aの厚さ方向Yの長さよりも短い場合がある。この場合には、防音壁ユニット10A,10Cの間から、防音壁ユニット10A,10Cに挟まれる防音壁ユニット10Bをさらに容易に交換することができる。
角度θAは、5°以上45°以下である場合がある。この場合には、複数の防音壁ユニット10を沿面方向Xに並べて配置したときに、防音壁ユニット10の隙間を通して音が漏れるのを、効果的に抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態の防音壁1では、防音壁ユニット10Aの第2傾斜部18Bと防音壁ユニット10Bの第1傾斜部18Aとの距離L1は、第1傾斜部18Aの厚さ方向Yの長さ以下である場合がある。この場合には、沿面方向Xに隣り合う防音壁ユニット10の隙間を塞ぐことで、この隙間を通して音が漏れるのを防止することができ、複数台並んだ防音壁ユニット10の一部を容易に交換することができる。
なお、支持部の形状は平板状に限定されず、取付け面を有する形状であれば限定されない。第1,2傾斜部及び第1,2直交部についても、平板状に限定されない。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図5及び
図6を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図5に示すように、本実施形態の防音壁2が備える各防音壁ユニット40は、防音壁ユニット10の各構成において、傾斜部18A,18B、及び直交部19A,19Bに代えて、第1湾曲部41A及び第2湾曲部41Bを有する。なお、
図5では、連結部材25を示していない。支持部17及び湾曲部41A,41Bで、壁本体42を構成する。
第1湾曲部41Aは、支持部17における第1側X1の端部から、第1側Y1に向かって延びるとともに、第1側X1に向かって凸となるように湾曲している。第2湾曲部41Bは、支持部17における第2側X2の端部から、第1側Y1に向かって延びるとともに、第1側X1に向かって凸となるように湾曲している。
【0036】
図5に示す断面において、第1湾曲部41Aの湾曲形状及び第2湾曲部41Bの湾曲形状は、互いに等しいことが好ましい。
複数の防音壁ユニット40は、沿面方向Xに並べて配置されている。以下では、沿面方向Xに並べて配置された複数の防音壁ユニット10を、第1側X1の端から第2側X2に向かって順に、防音壁ユニット40A,40B,40C,‥と言う。
【0037】
以下では、防音壁2の寸法の一例について説明する。
湾曲部41A,41Bにおいて、厚さ方向Yの長さはそれぞれ84mmであり、沿面方向Xの長さはそれぞれ10mmである。湾曲部41A,41Bの曲率半径は、193mmである。
隣り合う防音壁ユニット40の隙間の沿面方向Xの長さは、4mmである。
湾曲部41A,41Bの沿面方向Xの長さは、隣り合う防音壁ユニット40の隙間の沿面方向Xの長さの2倍以上であることが好ましい。
ここで
図5に示すように、第1湾曲部41Aの両端を結ぶ線と、第1湾曲部41Aの長手方向の中央部との距離を、L3と規定する。距離L3は、隣り合う防音壁ユニット40の隙間の沿面方向Xの長さの、1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0038】
本実施形態の防音壁ユニット40では、吸音材11により、防音壁ユニット40の脇を走行する電車110が発生する音を吸収することができる。複数の防音壁ユニット40を沿面方向Xに並べ、防音壁ユニット40Aの第2湾曲部41Bと、防音壁ユニット40Bの第1湾曲部41Aとを、互いに対向又は接触させる。防音壁ユニット40A,40Bをこのように配置させることで、防音壁ユニット40A,40Bの隙間を通して音が漏れるのを抑制することができる。
【0039】
また、例えば、防音壁ユニット40Bが破損したと仮定する。この場合、防音壁ユニット40Bを挟む防音壁ユニット40A,40Cの間から破損した防音壁ユニット40Bを取出すには、以下の手順を行う。
すなわち、複数の防音壁ユニット40から連結部材25を取外し、防音壁ユニット40Bを固定しているアンカー止め105を路盤鉄筋コンクリート101から取外す。
図6に示すように、防音壁ユニット40A,40Cに対して破損した防音壁ユニット40Bを、直交方向Zに沿う軸線回りに、湾曲部41A,41Bに沿って矢印B3で示すように回転させること等により、破損した防音壁ユニット40Bを取出す。湾曲部41A,41Bの表面が、特許文献1の一対の支柱に比べて滑らかであるため、破損した防音壁ユニット40Bの取出しが容易になる。
防音壁ユニット40A,40Cの間に新しい防音壁ユニット40Bを取付けるには、この手順の逆の手順を行う。新しい防音壁ユニット40Bをアンカー止め105により路盤鉄筋コンクリート101に固定し、複数の防音壁ユニット40に連結部材25を取付ける。従って、防音壁ユニット40Bを容易に交換することができる。
【0040】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態及び第2実施形態では、防音壁ユニット10,40は、支持部材20及び連結部材25の少なくとも一方を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,2 防音壁
10 防音壁ユニット
11 吸音材
16,42 壁本体
17 支持部
17a 取付け面
18A 第1傾斜部
18B 第2傾斜部
19A 第1直交部
19B 第2直交部
41A 第1湾曲部
41B 第2湾曲部
L1 距離
X 沿面方向
X1,Y1 第1側
X2 第2側
Y 厚さ方向
θA 角度