(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043782
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B65G1/00 511J
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148970
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】岩田 昌重
(72)【発明者】
【氏名】木村 和誠
(72)【発明者】
【氏名】堀江 智史
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022LL06
3F022MM52
(57)【要約】
【課題】地震の揺れ等によっても倒れ難い搬送車を実現する。
【解決手段】転倒防止装置13は、走行体1が走行する走行面の振動が予め定められた基準値以上であることを示す振動発生情報を取得する振動発生情報取得部Cbと、走行体1に支持された支持アーム14と、支持アーム14を駆動するアーム駆動装置15と、を備えている。支持アーム14は、走行体1から車体幅方向Wの外側に突出して車体幅方向Wにおける走行体1よりも外側において走行面に接地する突出状態と、走行体1の幅寸法Swの内側に収まる収容状態と、に状態変更可能に構成されている。アーム駆動装置15は、振動発生情報取得部Cbにより振動発生情報を取得した場合に、支持アーム14を収容状態から突出状態に変更するアーム突出動作を実行する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送車であって、
走行経路に沿って走行する走行体と、
前記物品の移載を行う移載装置と、
転倒を防止するための転倒防止装置と、
を備え、
前記移載装置は、
前記走行体に固定され、上下方向に沿うように配置されたマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降体と、
前記昇降体に支持された移載機と、
を備え、
前記走行体が走行する方向を車体前後方向とし、前記車体前後方向に対して上下方向視で直交する方向を車体幅方向とし、前記走行体の前記車体前後方向の寸法を長さ寸法とし、前記走行体の前記車体幅方向の寸法を幅寸法とし、前記走行体の下端から前記マストの上端までの高さを高さ寸法として、
前記長さ寸法及び前記高さ寸法が、前記幅寸法よりも大きく、
前記転倒防止装置は、
前記走行体が走行する走行面の振動が予め定められた基準値以上であることを示す振動発生情報を取得する振動発生情報取得部と、
前記走行体に支持された支持アームと、
前記支持アームを駆動するアーム駆動装置と、
を備え、
前記支持アームは、前記走行体から前記車体幅方向の外側に突出して前記車体幅方向における前記走行体よりも外側において前記走行面に接地する突出状態と、前記走行体の前記幅寸法の内側に収まる収容状態と、に状態変更可能に構成され、
前記アーム駆動装置は、前記振動発生情報取得部により前記振動発生情報を取得した場合に、前記支持アームを前記収容状態から前記突出状態に変更するアーム突出動作を実行する、搬送車。
【請求項2】
前記アーム駆動装置は、前記振動発生情報取得部により前記振動発生情報を取得していない状態では、前記支持アームを前記収容状態に維持する、請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記走行経路には、それぞれが前記物品を収容するように構成されて互いに対向して配置された一対の収納棚の間を通る棚間領域と、前記棚間領域の外側の外領域とが含まれ、
前記アーム駆動装置は、前記棚間領域では、前記アーム突出動作の実行を禁止する、請求項1又は2に記載の搬送車。
【請求項4】
前記収納棚は、前記走行経路に面する正面に沿って水平方向に延在する対象梁部材を備え、
前記マストにおける前記対象梁部材に対応する高さに、前記マストから前記車体幅方向の外側に突出する被案内部材が設けられている、請求項3に記載の搬送車。
【請求項5】
前記走行体は、駆動輪と、前記駆動輪を回転駆動する車輪駆動源と、従動輪と、を備え、
前記従動輪は、前記駆動輪に対して前記車体前後方向の両側に分かれて配置され、
前記従動輪の回転軸心は、前記走行体の本体に対して上下方向の相対位置が固定された状態で支持され、
前記駆動輪の回転軸心は、前記走行体の本体に対してサスペンション機構を介して上下方向に弾性を有する状態で支持され、
前記支持アームは、前記車体前後方向における前記従動輪よりも前記駆動輪に近い位置に配置されている、請求項1又は2に記載の搬送車。
【請求項6】
前記支持アームは、アーム本体と、前記アーム本体に支持されていると共に前記走行面に接地するように配置された支持車輪と、を備え、
前記支持車輪の回転軸心は、前記アーム本体に対して、上下方向に沿う軸心回りに回転自在に支持されている、請求項1又は2に記載の搬送車。
【請求項7】
前記支持アームは、上下方向に沿う軸心回りに揺動自在に前記走行体に支持されている、請求項6に記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において地震対策が進んでいる。これは、物品の収納、保管、及び搬送を自動で行う自動倉庫などの設備においても同様である。
【0003】
地震対策の1つとして、例えば特許第6313087号公報(特許文献1)に開示された自動倉庫では、地震情報を受信した場合に、スタッカークレーン(10)の昇降台(28)をラック(4)の最上段に設定された退避位置まで移動させている。これにより、特許文献1に開示された自動倉庫では、地震発生時にラック(4)から落下する荷物(W)によって昇降台(28)が破損することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のスタッカークレーン(10)では、下部台車(26)と上部台車(32)とがそれぞれレール(12,36)によって案内されているため、地震の揺れ等によってスタッカークレーン(10)が倒れる可能性は低い。しかし、上部を案内するレールが設けられていない搬送設備において物品を搬送する搬送車であっても、当該搬送車の上下方向の寸法が大きい場合等には、地震の揺れ等によって搬送車が倒れる可能性がある。
【0006】
そこで、地震の揺れ等によっても倒れ難い搬送車の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
物品を搬送する搬送車であって、
走行経路に沿って走行する走行体と、
前記物品の移載を行う移載装置と、
転倒を防止するための転倒防止装置と、
を備え、
前記移載装置は、
前記走行体に固定され、上下方向に沿うように配置されたマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降体と、
前記昇降体に支持された移載機と、
を備え、
前記走行体が走行する方向を車体前後方向とし、前記車体前後方向に対して上下方向視で直交する方向を車体幅方向とし、前記走行体の前記車体前後方向の寸法を長さ寸法とし、前記走行体の前記車体幅方向の寸法を幅寸法とし、前記走行体の下端から前記マストの上端までの高さを高さ寸法として、
前記長さ寸法及び前記高さ寸法が、前記幅寸法よりも大きく、
前記転倒防止装置は、
前記走行体が走行する走行面の振動が予め定められた基準値以上であることを示す振動発生情報を取得する振動発生情報取得部と、
前記走行体に支持された支持アームと、
前記支持アームを駆動するアーム駆動装置と、
を備え、
前記支持アームは、前記走行体から前記車体幅方向の外側に突出して前記車体幅方向における前記走行体よりも外側において前記走行面に接地する突出状態と、前記走行体の前記幅寸法の内側に収まる収容状態と、に状態変更可能に構成され、
前記アーム駆動装置は、前記振動発生情報取得部により前記振動発生情報を取得した場合に、前記支持アームを前記収容状態から前記突出状態に変更するアーム突出動作を実行する。
【0008】
搬送車の長さ寸法及び高さ寸法が幅寸法よりも大きい場合、地震やその他の要因により走行面の振動が発生した場合に、搬送車が車体幅方向に大きく傾いたり転倒したりし易い。
しかし、本構成によれば、振動発生情報を取得した場合に、支持アームを突出状態として走行体よりも外側において走行面に接地させることができる。従って、走行面の振動が発生した場合であっても、搬送車が車体幅方向に大きく傾くことを規制でき、延いては搬送車が転倒することを防止できる。つまり、本構成によれば、地震の揺れ等によっても倒れ難い搬送車を実現できる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】移載装置の第1姿勢と第2姿勢とを示す平面図
【
図9】段積み領域に対する容器の掬い及び卸しの並行動作を行う場合の説明図
【
図10】支持アームの突出状態と収容状態とを示す平面図
【
図11】傾いた搬送車を容器棚によって支える構造を示す説明図
【
図12】低重心化制御による昇降体の動作を示す説明図
【
図13】低重心化制御を開始するタイミングを示す説明図
【
図14】低重心化制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャート
【
図16】別実施形態の転倒防止装置の構造を示す説明図
【
図17】別実施形態の転倒防止装置の構造を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
搬送車は、物品を搬送するように構成されている。以下、搬送車が、容器を搬送する搬送設備に備えられている場合を例示して、当該搬送車の実施形態について説明する。本実施形態では、搬送車は、容器を収納する容器棚の正面に沿って走行して容器を搬送する。すなわち本実施形態では、容器が「物品」に相当し、容器を収納する容器棚が「収納棚」に相当する。
【0012】
図1に示すように、搬送設備Fは、容器70(
図3参照)を収納する容器棚8と、容器70の搬出及び搬入を行う搬出入部9と、設備全体を管理する上位コントローラHと、を備えている。搬送車100は、搬出入部9によって搬入された容器70を容器棚8へ搬送し、又は、容器棚8に収納された容器70を搬出のために搬出入部9へ搬送する。
【0013】
本実施形態では、複数の容器棚8が、規定の間隔を空けつつ互いに平行に配置されている。複数の容器棚8のそれぞれは少なくとも正面が開口しており、当該正面において容器70の出し入れが行われる。そして、正面が向かい合って隣り合う一対の容器棚8の間に、走行体1(搬送車100)の走行経路Rの一部が設定されている。換言すれば、隣り合う一対の容器棚8が、間隔を空けて互いに平行に配置されており、走行経路Rの一部が、一対の容器棚8の間を通るように設定されている。また、搬送設備Fに備えられた複数の容器棚8のうち最も端に配置された容器棚8は、正面を外側に向けて配置されており、当該端の容器棚8の正面に沿った領域にも走行経路Rの一部が設定されている。また、搬送設備Fには、複数の搬出入部9が設けられており、複数の搬出入部9のそれぞれを通る領域にも、走行経路Rの一部が設定されている。
【0014】
走行経路Rは、一対の容器棚8間に当該容器棚8の正面に沿って当該容器棚8の延在方向に延びる棚内経路Raと、複数の容器棚8のうち最も端に配置された容器棚8の正面に沿って当該容器棚8の延在方向に延びる端経路Rcと、容器棚8の配置領域の外部に設定された棚外経路Rbと、を含んでいる。棚内経路Raは、複数の容器棚8のそれぞれに対応して設定されている。本実施形態では、正面が向かい合って隣り合う一対の容器棚8の間の領域に設定された走行経路Rの一部が、棚内経路Raに相当する。また、正面を外側に向けて配置された容器棚8の当該正面に沿った領域に設定された走行経路Rの一部が、端経路Rcに相当する。また、棚外経路Rbは、複数の棚内経路Raを繋ぐように設定されている。また、棚外経路Rbは、複数の搬出入部9のそれぞれを通るようにも設定されている。本実施形態では、走行経路Rにおける棚内経路Ra及び端経路Rc以外の部分が、棚外経路Rbに相当する。
【0015】
図2に示すように、搬送設備Fには、走行体1が走行する棚間領域IA、端領域EA及び外部領域OAが設定されている。本実施形態では、搬送設備Fには、方向変換領域DAが更に設定されている。なお、本実施形態では、端領域EA及び外部領域OAが「外領域」に相当する。
【0016】
棚間領域IAは、各容器棚8の正面に沿って一対の容器棚8の間に設定された領域である。棚間領域IAの全体が、当該棚間領域IAに対応する容器棚8の正面に対向している。換言すれば、棚間領域IAは、当該棚間領域IAに対応する容器棚8の正面に沿って当該容器棚8の延在方向に延びている。そして、当該棚間領域IAの前記延在方向の寸法と当該容器棚8の前記延在方向の寸法とは等しくなっている。
【0017】
また、棚間領域IAは、棚内経路Ra(
図1参照)が通る領域であり、棚内経路Raを走行する走行体1が容器棚8の正面に対向する領域である。
【0018】
端領域EAは、複数の容器棚8のうち最も端に配置された容器棚8の正面に沿って設定された領域である。端領域EAの全体が、当該端領域EAに対応する容器棚8の正面に対向している。換言すれば、端領域EAは、当該端領域EAに対応する容器棚8の正面に沿って当該容器棚8の延在方向に延びている。そして、当該端領域EAの前記延在方向の寸法と当該容器棚8の前記延在方向の寸法とは等しくなっている。
【0019】
また、端領域EAは、端経路Rc(
図1参照)が通る領域であり、端経路Rcを走行する走行体1が容器棚8の正面に対向する領域である。
【0020】
外部領域OAは、搬送設備F内における棚間領域IA及び端領域EA以外の領域である。外部領域OAは、棚外経路Rbが通る領域である。本実施形態では、外部領域OAにおける複数箇所に、方向変換領域DAが設定されている。方向変換領域DAは、走行体1が進行方向を変更するための領域である。複数の方向変換領域DAのうちの一部は、複数の走行経路R(棚外経路Rb)が交わる箇所に設定されている。詳細は後述するが、本実施形態に係る走行体1は、方向変換領域DAにおいて、その場で上下方向に沿う軸心まわりに回転することで、進行方向を変更する。
【0021】
〔容器棚〕
図3に示すように、容器棚8は、容器70を収納する棚部80を上下方向に複数段備えている。本実施形態では、容器棚8は、当該容器棚8の正面に沿って水平方向に延在する梁部材82を複数備えると共に、上下方向に沿って延在し、複数の梁部材82のそれぞれに連結される複数の支柱部材81を備えている。すなわち、容器棚8は、複数の支柱部材81と複数の梁部材82とを組み合わせた支持枠を備えて構成されている。
【0022】
複数の梁部材82は、上下方向に互いに離間して配置されている。そして、複数の梁部材82のそれぞれに、容器70を載置するための載置部材83が連結されている。本例では、容器70は、一対の載置部材83に載置されることにより、棚部80に収納される。また、棚部80には、一対の載置部材83の組が複数組配置されており、1つの棚部80において複数の容器70を収納可能となっている。なお、本例では、
図3に示す正面視で幅方向(左右方向)に隣接する一対の支柱部材81の間であって、上下方向に隣接する一対の梁部材82の間の領域が、容器棚8の開口に相当する。
【0023】
本実施形態では、棚部80における容器70を収納するための基準位置80Pに、当該基準位置80Pにおいて容器70を収納するための目標となる目標部82Tが設けられている。本例では、目標部82Tは、梁部材82に設けられている。目標部82Tは、一対の載置部材83の組につき1つ設けられている。図示の例では、目標部82Tは、梁部材82に形成された孔によって構成されている。
【0024】
〔容器〕
容器70は、搬送車100による搬送対象である。詳細な図示は省略するが、容器70は、上方に開口する開口部を備えた箱状に形成されている。本例では、上下方向視における容器の外形は、矩形状を成している。容器70の内部には、規定の被収容物が収容可能となっている。被収容物には、例えば、食料品や生活用品などの各種商品、又は、工場の生産ライン等において用いられる部品や仕掛品などが含まれる。
【0025】
本実施形態では、容器70は、その内部に被収容物を収容した状態で、別の容器70と積み重ねることが可能に構成されている。すなわち、容器70は、上下方向に段積み可能に構成されている(
図4参照)。本例では、容器70の底部が、別の容器70の開口部に対して上方から嵌合することにより、2つの容器70が上下方向に段積みされる。
【0026】
〔搬送車〕
図4に示すように、搬送車100は、規定の走行経路Rに沿って走行する走行体1と、容器70の移載を行う移載装置4と、搬送車100の転倒を防止するための転倒防止装置13と、移載装置4及び転倒防止装置13を制御する制御部Cと、を備えている。本実施形態では、搬送車100は、複数の容器70を段積み状態の容器群7として規定の段積み領域2A内に支持する容器群支持部2と、容器群支持部2に支持された容器群7の容器70を持ち上げる持ち上げ装置3と、を備えている。そして、制御部Cは、移載装置4及び転倒防止装置13の他、走行体1と容器群支持部2と持ち上げ装置3とを制御する。
【0027】
容器群支持部2、持ち上げ装置3、移載装置4及び転倒防止装置13は、走行体1に搭載されている。走行体1が走行する方向を「車体前後方向L」とすると、容器群支持部2と移載装置4とは、走行体1上において車体前後方向Lに並んで配置されている。なお、以下では、車体前後方向Lに対して上下方向視で直交する方向を「車体幅方向W」とする。
【0028】
また、
図4及び
図6に示すように、搬送車100は、走行体1の車体前後方向Lの寸法を長さ寸法Slとし、走行体1の車体幅方向Wの寸法を幅寸法Swとし、走行体1の下端から後述する一対の移載用マスト40(第1マスト)の上端までの高さを高さ寸法Shとした場合に、長さ寸法Sl及び高さ寸法Shが幅寸法Swよりも大きい。
【0029】
制御部Cは、搬送車100の各機能部を制御する。本例では、制御部Cは、走行体1、容器群支持部2、持ち上げ装置3、移載装置4、転倒防止装置13及び、後述する旋回装置5を制御する。容器70を搬送及び移載するための動作は、制御部Cによる各機能部の制御によって実現される。制御部Cは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0030】
〔走行体〕
走行体1は、規定の走行経路R(
図1参照)を走行するように構成され、棚間領域IA、端領域EA及び外部領域OA(
図2参照)を走行可能に構成されている。本実施形態では、走行体1は、棚内経路Raと端経路Rcと棚外経路Rbとを走行するように構成されている。そして、走行体1は、棚内経路Raを走行又は停止している状態で棚間領域IAに位置し、端経路Rcを走行又は停止している状態で端領域EAに位置し、棚外経路Rbを走行又は停止している状態で外部領域OAに位置する。走行体1が棚間領域IA又は端領域EAと外部領域OAとの境界にある状態では、走行体1の一部が棚間領域IA又は端領域EAに位置し、走行体1の他の一部が外部領域OAに位置することになる。本実施形態では、走行体1は、床面を走行するように構成されている。
【0031】
走行体1は、走行本体部10と、走行本体部10に連結された複数の走行車輪11と、複数の走行車輪11のうち少なくとも1つを駆動する車輪駆動源11Mと、を備えている。車輪駆動源11Mは、不図示のモータを含んで構成されている。車輪駆動源11Mが走行車輪11を駆動することにより、走行体1に推進力が付与される。
【0032】
本実施形態では、複数の走行車輪11は、駆動輪11aと従動輪11bとを含む。駆動輪11aは、車輪駆動源11Mによって駆動される。従動輪11bは、走行本体部10の移動や姿勢変更に伴って回転する。すなわち、走行体1は、駆動輪11aと、駆動輪11aを回転駆動する車輪駆動源11Mと、従動輪11bとを備えている。
【0033】
図5及び
図6に示すように、本実施形態では、一対の駆動輪11aが、走行本体部10の車体前後方向Lの中央領域10Amにおいて車体幅方向Wに離間して配置されている。中央領域10Amは、走行本体部10の車体前後方向Lの寸法(長さ寸法)を3等分した範囲に形成される各領域のうち、車体前後方向Lの中央に配置される領域である。本例では、一対の車輪駆動源11Mは、走行本体部10の中央領域10Amに配置されている。
【0034】
本実施形態において、一対の駆動輪11aのそれぞれは、それぞれの回転軸が車体幅方向Wに沿うように、走行本体部10に対して回転可能に支持されている。すなわち、本例では、2つの駆動輪11aが走行本体部10に支持されている。一対の駆動輪11aにおけるそれぞれの回転軸は、サスペンション機構12を介して上下方向に弾性を有する状態で走行本体部10に支持されている。すなわち、一対の駆動輪11aの回転軸の位置は、上下方向において変動し得る。一対の駆動輪11aは、それぞれ別の車輪駆動源11Mによって駆動される。
【0035】
一対の駆動輪11aのそれぞれに対して車体前後方向Lの両側に、従動輪11bが設けられている。すなわち本例では、4つの従動輪11bが、走行本体部10に支持されている。各従動輪11bは、上下方向に沿う軸心まわりに回転自在に走行本体部10に支持されている。すなわち、従動輪11bの回転軸が沿う方向は、水平面内において変更され得る。各従動輪11bにおけるそれぞれの回転軸は、走行本体部10に対して上下方向の相対位置が固定された状態で支持されている。本例では、各従動輪11bは、キャスターとして構成されている。
【0036】
すなわち、本実施形態において、長さ寸法Slは走行本体部10の車体前後方向の長さ寸法であり(
図4参照)、幅寸法Swは走行本体部10の車体幅方向の寸法である(
図6参照)。
【0037】
走行体1は、上記のような構成により、その場において上下方向に沿う軸心まわりに回転することが可能となっている。詳細には、一対の駆動輪11aが、互いに反対方向に回転駆動されることにより、走行体1は、その場において、上下方向に沿う軸心まわりに回転する。これにより、走行体1は、比較的狭い領域内で進行方向を変更することができる。本実施形態では、走行体1は、方向変換領域DA(
図2参照)において、進行方向を変更するように構成されている。なお、一対の駆動輪11aの一方の回転を停止させ、他方を回転させることで走行体1の進行方向を変更し、或いは、一対の駆動輪11aを同じ方向に回転させつつ互いの回転速度を異ならせることで走行体1の進行方向を変更するようにしても良い。
【0038】
〔容器群支持部〕
図4に示すように、容器群支持部2は、走行体1に搭載されている。容器群支持部2は、複数の容器70を段積み状態の容器群7として支持可能に構成されている。容器群支持部2の上方には、容器群7が配置される段積み領域2Aが規定されている。段積み領域2Aは、容器群支持部2から上方に延在する立体的な仮想領域である。本例では、容器群支持部2は、容器群7を載置した状態で当該容器群7を移動させることが可能なコンベヤとして構成されている。本例では、容器群支持部2は、容器群7を車体幅方向Wに沿って移動させることが可能となっている。容器群支持部2を構成するコンベヤとしては、ローラコンベヤ、チェーンコンベヤ、ベルトコンベヤなどの周知のコンベヤ等であって良い。
【0039】
搬出入部9(
図1及び
図2参照)には、複数の容器70が段積みされた状態の容器群7が搬入される。走行体1が搬出入部9に隣接した状態で、容器群支持部2は、搬出入部9から容器群7を受け取り、または、搬出入部9へ容器群7を引き渡す。すなわち、容器群支持部2は、搬出入部9との間で容器群7の受け渡しを行うように構成されている。詳細な図示は省略するが、本例では、搬出入部9は、容器70から商品等の被収容物を取り出す作業が行われるピッキングエリアに隣接している。容器群支持部2から搬出入部9へ容器群7が引き渡されると、搬出入部9に隣接するピッキングエリアにおいて容器70から被収容物が取り出される。容器70に収容された被収容物の一部又は全部が取り出された後は、当該容器70は、搬出入部9から容器群支持部2(搬送車100)に引き渡されて、再び容器棚8へ搬送される。但し、搬出入部9は、ピッキングエリアに隣接していなくても良く、他の設備や作業エリアに隣接していても良い。また、例えば、搬出入部9は、容器群支持部2から引き渡された容器群7を搬送設備Fの外部へ搬送するように構成されていても良い。
【0040】
〔持ち上げ装置〕
持ち上げ装置3は、走行体1に搭載されている。持ち上げ装置3は、容器群支持部2に支持された容器群7の容器70、換言すれば、段積み領域2Aに配置された容器群7の容器70を持ち上げるように構成されている。
【0041】
持ち上げ装置3は、走行体1から上方に立設された持ち上げ用マスト30と、持ち上げ用マスト30に連結された持ち上げ用昇降体30Bと、持ち上げ用昇降体30Bを持ち上げ用マスト30に沿って昇降させる持ち上げ用昇降体駆動部30Mと、を備えている。詳細な図示は省略するが、持ち上げ用昇降体駆動部30Mは、例えば、持ち上げ用昇降体30Bに連結されたベルト等の無端体と、当該無端体が巻回された回転体と、当該回転体を回転駆動するモータと、を備えている。
【0042】
ここで、持ち上げ用マスト30は、容器70の移載には関与しないマストである。換言すれば、持ち上げ用マスト30は、後述する移載機Bのような移載手段が設けられていないマストである。後述する移載用マスト40と区別するために、当該移載用マスト40を「第1マスト」と称し、容器70の移載には関与しないマスト(本例では持ち上げ用マスト30)を「第2マスト」と称することができる。すなわち本例では、走行体1には、第1マストと第2マストとが固定されており、第1マストと第2マストとは、車体前後方向Lに離間して配置されている。
【0043】
持ち上げ装置3は、段積み領域2Aに段積みされた容器群7の内の任意の高さの容器70を当該容器70の下に隣接する容器70に対して持ち上げる第1持ち上げ機構31と、第1持ち上げ機構31により持ち上げられた容器70よりも下方の容器70を当該容器70の下に隣接する容器70に対して持ち上げる第2持ち上げ機構32と、を備えている。また、本実施形態では、第1持ち上げ機構31と第2持ち上げ機構32とが、上下方向に離間して配置されている。これにより、例えば
図9に示すように、第1持ち上げ機構31によって持ち上げられた容器70と、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70との、上下方向の間にスペースを形成することが可能となっている。また、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70の下方にも、上下方向のスペースを形成することが可能となっている。
【0044】
第1持ち上げ機構31によって持ち上げられた容器70と第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70との上下方向の間にスペースを形成した場合には、当該スペースに、他の容器70を卸すことが可能となっている。すなわち、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70の上に、移載装置4によって他の容器70を段積みすることが可能となっている。
図9では、第1持ち上げ機構31によって持ち上げられた容器70(
図9において「5」の数字を付した容器)と第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70(
図9において「4」の数字を付した容器)との上下方向の間に形成されたスペースに、移載装置4によって保持された容器70(
図9において「α」の文字を付した容器)を卸す場合の例を示している。
【0045】
また、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70の下方に上下方向のスペースを形成した場合には、当該スペースを利用して、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70の下方に配置された容器70を掬うことが可能となっている。
図9では、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70(
図9において「4」の数字を付した容器)の下方に配置された容器70(
図9において「3」の数字を付した容器)を掬う場合の例を示している。なお、段積み領域2Aに対する容器70の卸し動作および掬い動作については後述する。
【0046】
〔移載装置〕
図4に示すように、移載装置4は、走行体1に搭載されている。移載装置4は、移載対象箇所Tに対して容器70の移載を行うように構成されている。移載装置4は、移載対象箇所Tへ容器70を移載する卸し動作と、移載対象箇所Tから容器70を移載する掬い動作と、を行うように構成されている。なお、本明細書では、移載対象箇所Tから移載装置4へ容器70を移載することを「掬い」と称しており、「掬い」は、特定の移載動作に限定されるものではない。本実施形態では、移載対象箇所Tには、段積み領域2Aと容器棚8の棚部80とが含まれる。
【0047】
ここでは、移載装置4により移載される容器70の移動方向を「移載方向X」とする。また、移載方向Xにおける一方側を「移載方向卸し側X1」とし、他方側を「移載方向掬い側X2」とする。本例では、移載方向Xは、水平方向に沿う方向である。移載方向卸し側X1は、容器70を卸す場合に、移載方向Xに沿って容器70が移動する側である。移載方向掬い側X2は、容器70を掬う場合に、移載方向Xに沿って容器70が移動する側である。
【0048】
本実施形態では、搬送車100は、移載装置4を上下方向に沿う軸心まわりに旋回させる旋回装置5を備えている。
図7に示すように、旋回装置5は、移載装置4を上下方向に沿う軸心回りに旋回させて、移載方向卸し側X1を段積み領域2Aに向けた第1姿勢P1と、移載方向卸し側X1を容器棚8に向けた第2姿勢P2とに、移載装置4の向きを変更するように構成されている。このように本実施形態では、移載方向Xは、旋回装置5によって水平面内において変更され得る。
【0049】
本実施形態では、移載装置4は、移載対象箇所Tの位置に応じて姿勢を変更する。具体的には、移載装置4は、移載対象箇所Tが段積み領域2Aである場合に第1姿勢P1となり、移載対象箇所Tが容器棚8(棚部80)である場合に第2姿勢P2となる。
図4に示すように、本例では、旋回装置5は、移載装置4を支持する旋回台50と、移載用昇降体40Bに対して旋回台50を旋回自在に支持する旋回軸51と、旋回軸51を駆動する旋回駆動部(不図示)と、を備えている。
【0050】
図4に示すように、移載装置4は、走行体1に固定されると共に上下方向に沿うように配置された移載用マスト40と、移載用マスト40に沿って昇降する移載用昇降体40Bと、移載用昇降体40Bに連結されると共に容器70を保持する保持部Aと、容器70を移載する移載機Bと、を備えている。また、移載装置4は、移載用昇降体40Bを移載用マスト40に沿って昇降させる移載用昇降体駆動部40Mを備えている。これにより、移載装置4は、保持部A及び移載機Bを上下方向に移動させることができ、複数段の棚部80(
図3参照)のそれぞれに対して容器70を移載することが可能となっている。本例では、移載装置4を制御する制御部Cが、走行体1が棚間領域IA及び端領域EA(
図2参照)にいる場合に、容器棚8に対する容器70の移載のために移載用昇降体40Bを昇降させる昇降制御を実行するように構成されている。なお、本実施形態では、移載用マスト40が「マスト」に相当し、移載用昇降体40Bが「昇降体」に相当する。
【0051】
本実施形態では、一対の移載用マスト40が、車体幅方向Wに離間して走行体1に固定されている(
図11も参照)。移載用昇降体40Bは、一対の移載用マスト40に対して昇降自在に支持されている。上述のように、移載用マスト40は、「第1マスト」と称することができる。そして、移載用マスト40以外のマスト(本例では持ち上げ装置3が備える持ち上げ用マスト30)は、「第2マスト」と称することができる。
【0052】
すなわち、本実施形態において、高さ寸法は走行体1が走行する走行面から移載用マスト40の上端までの高さである(
図4参照)。
【0053】
保持部Aは、移載用昇降体40Bに連結されており、容器70を保持可能に構成されている。本実施形態では、保持部Aは、第1保持部41Aと、第1保持部41Aよりも下方に配置された第2保持部42Aと、を含む。第1保持部41Aと第2保持部42Aとは、それぞれ単独で容器70を保持可能に構成されている。
【0054】
本実施形態では、移載装置4は、第1保持部41Aと第2保持部42Aとを上下方向に連結する保持連結部43を備えている。保持連結部43は、第1保持部41Aと第2保持部42Aとの上下方向の間隔が一定となるように、両者を連結している。
【0055】
移載機Bは、棚部80及び段積み領域2Aのそれぞれに対して容器70を移載可能に構成されている。棚部80が移載対象箇所Tとされる場合、移載機Bは、保持部Aと棚部80との間で容器70を移載する。また、段積み領域2Aが移載対象箇所Tとされる場合、移載機Bは、保持部Aと段積み領域2Aとの間で容器70を移載する。本例では、移載機Bは、第1姿勢P1において段積み領域2Aに対して容器70を移載し、第2姿勢P2において棚部80に対して容器70を移載する(
図7参照)。
【0056】
図4に示すように、本実施形態では、移載機Bは、第1移載機41Bと、第1移載機41Bよりも下方に配置された第2移載機42Bと、を含む。第1移載機41Bは、第1保持部41Aと移載対象箇所Tとの間で容器70を移載する。第2移載機42Bは、第2保持部42Aと移載対象箇所Tとの間で容器70を移載する。
【0057】
図8は、棚部80に対する容器70の掬い動作(移載動作)を示しており、第1移載機41Bによって、棚部80に収納された容器70を第1保持部41Aへ掬う場合を例示している。この場合、制御部C(
図4参照)は、第1移載機41Bの位置を、棚部80の基準位置80P(
図3参照)に合せた後、容器70を移載方向掬い側X2へ向けて引き込む。本実施形態において、棚部80の基準位置80Pは、移載装置4に設けられた基準位置検出センサSe1により検出する。
【0058】
また、図示はしないが、棚部80に対する容器70の卸し動作(移載動作)を行う場合、制御部C(
図4参照)が、容器70を卸す対象となる棚部80に別の容器70が収納されていないと判定した場合に、容器70を移載方向卸し側X1へ向けて押圧する。尚、本実施形態においては、移載装置4に設けられた収納容器検出センサSe2によって、棚部80に収納された容器70を検出する。
【0059】
また、上述したように、本実施形態では、持ち上げ装置3によって、段積み領域2Aに段積みされた複数の容器70の上下方向の間にスペースを形成することが可能となっている。そして、移載装置4は、これらのスペースを利用して、段積み領域2Aに対する容器70の移載を行う。本実施形態では、移載装置4は、段積み領域2Aに対して、容器70の掬い動作および卸し動作を行うように構成されている。詳細には、移載装置4は、段積み領域2Aに対して、容器70の掬い及び卸しを並行して行う並行動作を行うように構成されている(
図9参照)。
【0060】
図9には、段積み領域2Aに、5段の容器70が容器群7として5段積みされている場合に並行動作を行う例が示されている。本例では、持ち上げ装置3によって5段目の容器70(
図9において「5」の数字を付した容器)と4段目の容器70(
図9において「4」の数字を付した容器)との上下方向の間に形成されたスペースを利用して、第1移載機41Bによって4段目の容器70(容器「4」)の上に卸し対象の容器70(
図9において「α」の文字を付した容器)を移載方向卸し側X1へ向けて押圧し、当該卸し対象の容器(容器「α」)を卸す。また、それに並行して、持ち上げ装置3によって4段目の容器70(容器「4」)の下方に形成されたスペースを利用して、第2移載機42Bによって第3段目の容器70(
図9において「3」の数字を付した容器)を移載方向掬い側X2へ向けて引き込み、当該容器70(容器「3」)を掬う。すなわち、本例では、段積み領域2Aに配置された複数の容器70のうち一部の容器70(容器「3」)が、新たな容器70(容器「α」)と入れ替えられる。
【0061】
〔転倒防止装置〕
図4、
図5及び
図6に示すように、転倒防止装置13は、走行体1に搭載されている。転倒防止装置13は、搬送車100の転倒を防止するように構成されている。
【0062】
転倒防止装置13は、走行体1に支持された支持アーム14と、支持アーム14を駆動するアーム駆動装置15と、走行体1が走行する走行面の振動が予め定められた基準値以上であることを示す振動発生情報を取得する振動発生情報取得部Cb(
図4参照)とを備えている。
【0063】
支持アーム14は、アーム本体14aと、アーム本体14aに支持されていると共に走行面に接地するように配置された支持車輪14bとを備えている。また、支持アーム14は、走行本体部10の中央領域10Amに配置された駆動輪11aの近傍に配置されている。すなわち、支持アーム14は、車体前後方向Lにおける従動輪11bよりも駆動輪11aに近い位置に配置されている。本実施形態では、一対のアーム本体14aが、走行本体部10の車体幅方向Wの両側にそれぞれ支持されている。すなわち、本実施形態では、走行体1が車体幅方向Wの両側に支持アーム14を備えている。
【0064】
各アーム本体14aは、上下方向に沿う軸心まわりに揺動自在に走行本体部10に支持されている。すなわち、各支持アーム14は、上下方向に沿う軸心まわりに揺動自在に走行体1に支持されている。
図5及び
図6に示すように、本実施形態において、各アーム本体14aは、長尺の部材であり、走行本体部10の側面から水平方向に延出したアーム取付け部1aに一端側が軸支されている。各アーム本体14aは、一端側の回転軸心まわりに揺動自在である。
【0065】
支持車輪14bは、アーム本体14aの他端側に設けられている。支持車輪14bは、上下方向に沿う軸心まわりに回転自在にアーム本体14aに支持されている。すなわち、支持車輪14bの回転軸が沿う方向は、水平面内において変更され得る。本例では、支持車輪14bは、キャスターとして構成されている。
【0066】
支持アーム14は、走行体1から車体幅方向Wの外側に突出して車体幅方向Wにおける走行体1よりも外側において走行面に接地する突出状態と、走行体1の幅寸法Swの内側に収まる収容状態と、に状態変更可能に構成されている。
図10に示すように、本実施形態では、各アーム本体14aが一端側の回転軸心まわりに揺動し、走行本体部10の側面から離反して、各アーム本体14aの長手方向が車体幅方向Wに沿った状態が突出状態である。一方、走行本体部10の側面に近接して、各アーム本体14aの長手方向が車体前後方向Lに沿った状態が収容状態である。なお、本例では、支持車輪14bが走行面に接地した状態で、支持アーム14の突出状態と収容状態とが変更され得る。
【0067】
本実施形態において、アーム駆動装置15は、アーム本体14aの一端側に設けられた動力伝達機構としての回転体と、回転体を回転駆動する駆動源としてのモータ15aなどを備えている。また、モータ15aの駆動は、制御部Cによって制御される。
【0068】
アーム駆動装置15は、振動発生情報取得部Cbにより振動発生情報を取得した場合に、支持アーム14を収容状態から突出状態に変更するアーム突出動作を実行する。本実施形態では、振動発生情報取得部Cbによって振動発生情報が取得された場合に、制御部Cがモータ15aの駆動を制御して支持アーム14のアーム突出動作を実行する。本例では、振動発生情報取得部Cbは、上位コントローラHから送信される振動発生情報を取得するように構成されている。この場合、上位コントローラHは、地震の発生状況などの振動の発生に関連する情報を外部から受信可能に構成され、受信した情報に基づいて、振動発生情報取得部Cbに振動発生情報を送信する。また、アーム駆動装置15は、振動発生情報取得部Cbにより振動発生情報を取得していない状態では、支持アーム14の収容状態を維持する。換言すれば、アーム駆動装置15は、振動発生情報取得部Cbにより振動発生情報を取得していない状態では、アーム突出動作を実行しない。
【0069】
また、アーム駆動装置15は、走行体1が棚間領域IAにいる状態、換言すれば、走行体1が棚内経路Ra(
図1参照)を走行又は停止している状態である間は、アーム突出動作を行わないように構成されている。すなわち、アーム駆動装置15は、走行体1が棚間領域IAにいる場合には、棚間領域IAではアーム突出動作の実行を禁止する。逆に言えば、アーム駆動装置15は、走行体1が端領域EA及び外部領域OAにいる場合には、アーム突出動作の実行を許容する。
【0070】
本実施形態では、振動発生情報取得部Cbが振動発生情報を取得すると、走行体1が端領域EA又は外部領域OAにある場合に、モータ15aの駆動を制御してアーム突出動作を行って、支持アーム14を収納状態から突出状態に変更する(
図10参照)。
【0071】
本実施形態では、搬送車100は、走行体1の現在の位置情報を取得する位置情報取得部Ca(
図4参照)を備えている。本例では、制御部Cは、位置情報取得部Caによって取得された位置情報に基づいて、走行体1が棚間領域IAにいるか、端領域EAにいるか、外部領域OAにいるかを判定する。本例では、位置情報取得部Caは、設備全体を管理する上位コントローラHから送信される走行体1の現在の位置情報を取得するように構成されている。この場合、上位コントローラHは、設備全体に存在する走行体1(搬送車100)の位置を把握しており、走行体1(搬送車100)の現在の位置情報を位置情報取得部Caに送信する。
【0072】
ここで、近年、様々な分野において地震対策が進んでいる。本開示に係る搬送車100は、地震発生時などに激しい揺れが生じた場合であっても、倒れ難い構成となっている。本実施形態では、走行体1(搬送車100)が棚間領域IA、端領域EA及び外部領域OA(
図2参照)の何れの領域にいる場合であっても、搬送車100が倒れ難いように3つの転倒防止措置を講じている。以下、詳細に説明する。
【0073】
〔第1の転倒防止措置〕
まず、第1の転倒防止措置について説明する。本実施形態では、地震発生時などに激しい揺れが生じ、走行体1が走行する走行面の振動が予め定められた基準値以上となる場合に、上位コントローラHから制御部Cの振動発生情報取得部Cbに振動発生情報が送信される。
【0074】
振動発生情報取得部Cbが振動発生情報を取得すると、走行体1が棚間領域IA、端領域EA及び外部領域OAのいずれにいるか、換言すれば、走行体1が棚内経路Ra、端経路Rc及び棚外経路Rbのいずれを走行又は停止している状態であるかを、位置情報取得部Caで取得した位置情報に基づいて制御部Cが判断する。
【0075】
走行体1が外部領域OAにいると判断した場合、制御部Cがモータ15aの駆動を制御し、一対の支持アーム14が収容状態から突出状態へと変換される(
図10参照)。すなわち、走行体1が外部領域OAにいる場合、一対の支持アーム14の双方についてアーム突出動作が実行される。
【0076】
これにより、一対の支持アーム14の支持車輪14bが、車体幅方向Wにおける走行体1よりも外側において走行面に接地した状態になる。そのため、搬送車100が車体幅方向Wにおける何れの側にも大きく傾くことを規制でき、搬送車100の転倒を防止できる。
【0077】
走行体1が端領域EAにいると判断した場合、制御部Cがモータ15aの駆動を制御し、一対の支持アーム14のうち、容器棚8の正面に対向する側に設けられた支持アーム14のみが収容状態から突出状態へと変換される。換言すれば、走行体1が端領域EAにいる場合、一対の支持アーム14のうちの一方のみについてアーム突出動作が実行される。
【0078】
これにより、一方の支持アーム14の支持車輪14bが車体幅方向Wにおける走行体1よりも外側において走行面に接地した状態となる。そのため、搬送車100が車体幅方向Wにおける、容器棚8の正面に対向する側の反対側に大きく傾くことを規制できる。また、搬送車100が車体幅方向Wにおける、容器棚8の正面に対向する側へ傾くことについては、後述するように、容器棚8によって規制することができる。
【0079】
走行体1が棚間領域IAにいると判断した場合、一対の支持アーム14双方についてアーム突出動作の実行が禁止される。この場合、後述するように、搬送車100の車体幅方向Wへの傾きは、容器棚8によって規制することができるため、棚間領域IAでアーム吐出動作を実行しなくても、搬送車100の転倒を防止できる。なお、本例では、アーム突出動作の実行が禁止された場合、搬送車100の走行位置が棚間領域IAから外部領域OAに変化するタイミングで、制御部Cが一対の支持アーム14双方についてアーム突出動作を実行し、一対の支持アーム14が収容状態から突出状態へと変換される。
【0080】
以上のように、第1の転倒防止措置を講じたことにより、端領域EA及び外部領域OAにいる搬送車100を倒れ難くできる。
【0081】
〔第2の転倒防止措置〕
次に、第2の転倒防止措置について説明する。
図11に示すように、本実施形態では、容器棚8は、容器棚8の正面に沿って水平方向に延在する対象梁部材820を備えている。対象梁部材820は、各容器棚8に備えられている。対象梁部材820は、各容器棚8における複数の梁部材82のうち何れかとされる。本例では、対象梁部材820は、複数の梁部材82のうち最も上方に配置された梁部材82である。
【0082】
本実施形態では、移載用マスト40における対象梁部材820に対応する高さの位置に、移載用マスト40から車体幅方向Wの外側に突出する被案内部材6が固定されている。被案内部材6は、棚間領域IAにいる搬送車100が車体幅方向Wに向けて傾いた場合に、対象梁部材820に対して当接する位置に配置されている。
【0083】
ここでは、被案内部材6は、対象梁部材820が設置される高さ以上の高さに配置される。本実施形態では、被案内部材6が配置される配置高さは、走行体1が棚間領域IAにいる状態、換言すれば、走行体1が棚内経路Ra(
図1参照)を走行又は停止している状態での、当該被案内部材6と対象梁部材820との車体幅方向Wにおける離間距離DLに応じて設定される。本例では、この離間距離DLは、走行体1が棚間領域IAにおけるどの位置にいる場合であっても、基本的には一定の範囲内となっている。言い換えれば、走行体1が棚間領域IAにおけるどの位置にいる場合であっても離間距離DLが一定範囲内の値となるように、棚内経路Ra(走行経路R)が設定されている。
【0084】
図11の右図に示すように、被案内部材6の位置は、搬送車100が車体幅方向Wに向けて傾くことに伴って低くなる。離間距離DLが長くなるに従って、搬送車100の傾きは大きくなり、被案内部材6の位置は低くなる。そのため、被案内部材6は、離間距離DLが長くなるに従って対象梁部材820が設置される高さによりも高い位置に配置され、離間距離DLが短くなるに従って対象梁部材820が設置される高さに近づくように配置されると好適である。これにより、棚間領域IAにいる搬送車100が車体幅方向Wに向けて傾いた場合に、対象梁部材820に対して被案内部材6を適切に当接させることができる。そして、上記のような構成によって、対象梁部材820(容器棚8)によって搬送車100を支えることができ、棚間領域IAにおいて搬送車100を倒れ難くすることができる。なお、本実施例の説明において、「対象梁部材820の高さ」は、対象梁部材820における上下方向の中心位置を基準とする床面からの高さである。同様に、「被案内部材6の配置高さ」は、被案内部材6における上下方向の中心位置を基準とする床面からの高さである。
【0085】
被案内部材6の移載用マスト40からの車体幅方向Wの突出量は、棚間領域IAにいる搬送車100が車体幅方向Wに向けて傾いた場合に、被案内部材6が対象梁部材820に対して最初に当接するような大きさに設定されている。言い換えると、搬送車100が車体幅方向Wに向けて傾いた状態で、搬送車100における容器棚8に対向する部分の中で、被案内部材6の車体幅方向Wの突出端部(当接面)が最も容器棚8に近い側に位置するように、被案内部材6の車体幅方向Wの突出量が設定されている。この突出量は、被案内部材6が移載用マスト40に固定される高さに応じて設定されると好適である。すなわち、搬送車100の傾きによる移載用マスト40の車体幅方向Wの変位量は、上方へ向かうに従って大きくなる。そのため、被案内部材6の車体幅方向Wの突出量は、被案内部材6が移載用マスト40に固定される位置が高くなるに従って小さくすることができる。逆に、被案内部材6が移載用マスト40に固定される位置が低くなるに従って大きくする必要がある。また、被案内部材6の車体幅方向Wの突出量は、例えば、被案内部材6の周囲において、移載用マスト40に他の部材が設けられている場合には、被案内部材6の車体幅方向Wの突出端部(当接面)が当該他の部材よりも車体幅方向Wの外側に位置するような値に設定されると好適である。これにより、棚間領域IAにいる搬送車100が車体幅方向Wに向けて傾いた場合に、被案内部材6を対象梁部材820に対して最初に当接させることができる。
【0086】
本実施形態では、一対の移載用マスト40のそれぞれに、車体幅方向Wの外側に突出するように被案内部材6が設けられている。これにより、一対の容器棚8の間に走行体1がいる状態で、搬送車100が車体幅方向Wにおける何れの側に傾いた場合であっても、一対の容器棚8のうち何れかによって搬送車100を支えることができる。
【0087】
また、本実施形態では、一対の持ち上げ用マスト30(
図4参照)のそれぞれにも、車体幅方向Wの外側に突出するように被案内部材6が設けられている。換言すれば、本実施形態では、第1マスト(移載用マスト40)と、第1マストに対して車体前後方向Lに離間して配置された第2マスト(持ち上げ用マスト30)とのそれぞれに、被案内部材6が設けられている。これにより、棚間領域IAにいる搬送車100が車体幅方向Wに向けて傾いた場合に、容器棚8によって安定性高く搬送車100を支えることができる。
【0088】
以上のような構成より、棚間領域IAにいる搬送車100を倒れ難くすることができる。
【0089】
〔第3の転倒防止措置〕
次に、第3の転倒防止措置について説明する。
図12に示すように、制御部C(
図4参照)は、移載用昇降体40Bの位置を昇降可能範囲VRの中央よりも下方に設定された下部範囲UR内に位置するように制御する低重心化制御を実行可能に構成されている。制御部Cは、移載装置4を制御することにより、低重心化制御を実行する。具体的には、制御部Cは、移載用昇降体駆動部40M(
図4参照)を制御して、低重心化制御を実行する。この低重心化制御の実行により、搬送車100全体の重心を低くして、搬送車100を倒れ難くすることができる。本実施形態では、制御部Cは、低重心化制御において、移載用昇降体40Bを昇降可能範囲VRの最下部に位置させる。これにより、搬送車100を更に倒れ難くすることができる。なお、本実施形態では、移載用マスト40に被案内部材6が設けられており、移載用昇降体40Bの昇降可能範囲VRの上限位置は、移載用昇降体40Bが被案内部材6と干渉しないように設定されている。
【0090】
制御部Cは、走行体1が棚間領域IA又は端領域EAにいるか外部領域OA(
図2参照)にいるかを判定し、外部領域OAの少なくとも一部において、低重心化制御を実行する。外部領域OAには、走行体1が棚間領域IAや端領域EAにいる場合に搬送車100の支えとなり得る容器棚8のような構造物が少ない。しかし、上記のように、外部領域OAの少なくとも一部において低重心化制御が実行されることによって、搬送車100が外部領域OAにいる場合に搬送車100全体の重心を低くすることができるため、外部領域OAにいる搬送車100を倒れ難くすることができる。なお、走行体1が端領域EAにいる場合には、走行体1の車体幅方向Wにおける一方側にのみ容器棚8が存在している。そのため、走行体1が端領域EAにいる場合、棚間領域IAにいる場合よりも搬送車100の支えとなり得る構造物が少ない。したがって、端領域EAの少なくとも一部においても低重心化制御が実行されることが好適である。
【0091】
図13に示すように、本実施形態では、移載機Bにより容器棚8との間で容器70を移載する場合の走行体1の停止位置を移載用停止位置SPとして、制御部Cは、走行体1の走行経路Rに沿って棚間領域IA又は端領域EAから外部領域OAへ出る前の最後の移載用停止位置SPにおいて容器70の移載を完了した後、走行体1が外部領域OAに出るまでに、低重心化制御を開始する。そして、制御部Cは、走行体1が外部領域OAにいる間、低重心化制御を実行している状態を維持する。本例では、移載機Bが次の容器70の移載を行う場合には、制御部Cは、走行体1が外部領域OAへ出た後、走行体1が外部領域OAにいる間、及び、走行体1が棚間領域IA又は端領域EAに進入してから次の移載を実行するまでの間、低重心化制御を実行している状態を維持する。
【0092】
次に、
図14のフローチャートを参照して、低重心化制御を実行する場合の処理手順について説明する。
【0093】
図14に示すように、制御部Cは、走行体1が現在走行しているルートが、棚間領域IA又は端領域EAから外部領域OAへ向かうルートであるか否かを判定する(ステップ#1)。走行体1が走行するルートは、例えば、上位コントローラHから送信される搬送指令に含まれる。この場合、制御部Cは、当該搬送指令に基づいて、ルートの判定を行う。
【0094】
制御部Cは、走行体1が現在走行しているルートが、棚間領域IA又は端領域EAから外部領域OAへ向かうルートではないと判定した場合には(ステップ#1:No)、ルーチンを終了する。制御部Cは、走行体1が現在走行しているルートが、棚間領域IA又は端領域EAから外部領域OAへ向かうルートであると判定した場合には(ステップ#1:Yes)、棚間領域IA又は端領域EAにおける最後の移載が完了したか否かを判定する(ステップ#2)。
【0095】
制御部Cは、棚間領域IA又は端領域EAにおける最後の移載が完了していないと判定した場合には(ステップ#2:No)、ステップ#2の処理を繰り返し行う。制御部Cは、棚間領域IA又は端領域EAにおける最後の移載が完了したと判定した場合には(ステップ#2:Yes)、低重心化制御を実行する(ステップ#3)。そして、制御部Cは、走行体1が外部領域OAを出た後、棚間領域IA又は端領域EAに進入して移載機Bによって次の容器70の移載が行われるまでの間、低重心化制御の実行を維持する(ステップ#4)。
【0096】
以上のような構成より、外部領域OAにいる搬送車100を倒れ難くすることができる。また、上述のように、本実施形態では、走行体1が方向変換領域DAにおいてその場で上下軸心まわりに回転することで進行方向を変更するように構成されている。走行体1がこのような態様で進行方向を変更する場合には、搬送車100に遠心力が作用し易い。しかしながら、走行体1が進行方向の変更を行う方向変換領域DA(外部領域OA)では、低重心化制御の実行によって搬送車100全体の重心が低くなっているため、走行体1が進行方向の変更を行う際にも搬送車100を倒れ難くすることができる。
【0097】
〔その他の実施形態〕
次に、搬送車のその他の実施形態について説明する。
【0098】
(1)上記の実施形態では、振動発生情報取得部Cbが上位コントローラHから振動発生情報を取得する態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、搬送車100に振動センサを搭載し、当該振動センサの検出値に基づいて、振動発生情報を取得する態様であってもよい。
【0099】
(2)上記の実施形態では、支持アーム14が走行体1に支持される態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、支持アーム14が走行体1に固定された取付部材などの他の部材を介して走行体1に支持される態様であってもよい。
【0100】
(3)上記の実施形態では、アーム駆動装置15が、モータ15aの動力を利用してアーム突出動作を行う態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、突出状態となるように支持アーム14を付勢する付勢手段(例えば、ばね)と、付勢手段の付勢力に抗して収容状態とした支持アーム14の動きをロックし、振動発生情報取得部Cbが振動発生情報を取得した場合にロックを解除するロック手段とを備えた態様としてもよい。この場合、振動発生情報取得部Cbが振動発生情報を取得すると、支持アーム14のロックが解除され、付勢力によって支持アーム14が収容状態から突出状態へと変更される。
【0101】
(4)上記の実施形態では、走行体1が車体幅方向Wの両側に支持アーム14を備えている態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、走行体1が車体幅方向Wの一方側にのみ支持アーム14を備えている態様であってもよい。
【0102】
(5)上記の実施形態では、アーム駆動装置15は、棚間領域IAではアーム突出動作の実行を禁止する態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、進入防止柵が設けられている場合には、当該進入防止柵に隣接する領域では、柵側へのアーム突出動作を実行しない態様であってもよい。また、一対の容器棚8の間隔が大きい場合等、アーム突出動作を実行しても支持アーム14が容器棚8と干渉しない場合には、アーム駆動装置15が棚間領域IAでアーム突出動作の実行を許容する態様であってもよい。
【0103】
(6)上記の実施形態では、各従動輪11bがキャスターとして構成されている態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、車体前後方向Lにおける前側の従動輪11bを非駆動の操舵輪とし、走行方向に応じて転舵される態様であってもよい。
【0104】
(7)上記の実施形態では、転倒防止装置13の支持アーム14は、走行本体部10の中央領域10Amに配置された駆動輪11aの近傍に配置されている態様について説明したが、この態様に限られるものではない。例えば、一対の駆動輪11aと複数の従動輪11bとを備える場合に、
図15に示すように、走行体1の車体前後方向Lにおける後側に一対の駆動輪11aが配置され、車体前後方向Lにおける従動輪11bよりも駆動輪11aに近い位置に支持アーム14が配置される態様であってもよい。
【0105】
(8)上記の実施形態では、支持アーム14が上下方向に沿う軸心まわりに揺動自在に走行体1に支持され、支持車輪14bがキャスターで構成される態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、支持アーム14がスライド自在に走行体1に支持される態様であってもよいし、支持車輪14bがキャスターで構成されていない態様であってもよい。
図16及び
図17に示すように、回転軸が車体幅方向Wに沿った状態で支持車輪14bがアーム本体14aに固定され、支持アーム14が走行体1に対して、車体前後方向Lと直交する面内で斜め下方向にスライド自在に支持されている態様であってもよい。この場合、収容状態では支持車輪14bと走行面との間にわずかな隙間を形成し、突出状態では支持車輪14bが走行面に接地するように、支持アーム14が配置される。なお、アーム突出動作は、例えば直動アクチュエータによって実現できる。また、支持アーム14が走行体1に対して車体幅方向Wにスライド自在に支持されている態様であってもよい。
【0106】
(9)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0107】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した搬送車について説明する。
【0108】
物品を搬送する搬送車であって、
走行経路に沿って走行する走行体と、
前記物品の移載を行う移載装置と、
転倒を防止するための転倒防止装置と、
を備え、
前記移載装置は、
前記走行体に固定され、上下方向に沿うように配置されたマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降体と、
前記昇降体に支持された移載機と、
を備え、
前記走行体が走行する方向を車体前後方向とし、前記車体前後方向に対して上下方向視で直交する方向を車体幅方向とし、前記走行体の前記車体前後方向の寸法を長さ寸法とし、前記走行体の前記車体幅方向の寸法を幅寸法とし、前記走行体の下端から前記マストの上端までの高さを高さ寸法として、
前記長さ寸法及び前記高さ寸法が、前記幅寸法よりも大きく、
前記転倒防止装置は、
前記走行体が走行する走行面の振動が予め定められた基準値以上であることを示す振動発生情報を取得する振動発生情報取得部と、
前記走行体に支持された支持アームと、
前記支持アームを駆動するアーム駆動装置と、
を備え、
前記支持アームは、前記走行体から前記車体幅方向の外側に突出して前記車体幅方向における前記走行体よりも外側において前記走行面に接地する突出状態と、前記走行体の前記幅寸法の内側に収まる収容状態と、に状態変更可能に構成され、
前記アーム駆動装置は、前記振動発生情報取得部により前記振動発生情報を取得した場合に、前記支持アームを前記収容状態から前記突出状態に変更するアーム突出動作を実行する。
【0109】
搬送車の長さ寸法及び高さ寸法が幅寸法よりも大きい場合、地震やその他の要因により走行面の振動が発生した場合に、搬送車が車体幅方向に大きく傾いたり転倒したりし易い。
しかし、本構成によれば、振動発生情報を取得した場合に、支持アームを突出状態として走行体よりも外側において走行面に接地させることができる。従って、走行面の振動が発生した場合であっても、搬送車が車体幅方向に大きく傾くことを規制でき、延いては搬送車が転倒することを防止できる。つまり、本構成によれば、地震の揺れ等によっても倒れ難い搬送車を実現できる。
【0110】
ここで、前記アーム駆動装置は、前記振動発生情報取得部により前記振動発生情報を取得していない状態では、前記支持アームを前記収容状態に維持する、と好適である。
【0111】
本構成によれば、走行面の振動がない状態では、支持アームが走行体の幅寸法の内側に収まる収容状態とされる。従って、車体幅方向に狭い通路を搬送車が走行する場合に支持アームが妨げにならないようにできる。
【0112】
また、前記走行経路には、それぞれが前記物品を収容するように構成されて互いに対向して配置された一対の収納棚の間を通る棚間領域と、前記棚間領域の外側の外領域とが含まれ、
前記アーム駆動装置は、前記棚間領域では、前記アーム突出動作の実行を禁止する、と好適である。
【0113】
本構成によれば、棚間領域でアーム突出動作を実行することが禁止されるので、支持アームが収容棚と干渉することを回避できる。なお、棚間領域では、収容棚が支えとなって搬送車の転倒が防止されるため、アーム突出動作を実行しなくても問題は生じ難い。
【0114】
また、前記収納棚は、前記走行経路に面する正面に沿って水平方向に延在する対象梁部材を備え、
前記マストにおける前記対象梁部材に対応する高さに、前記マストから前記車体幅方向の外側に突出する被案内部材が設けられている、と好適である。
【0115】
本構成によれば、棚間領域において搬送車が傾いた場合には、被案内部材が収容棚の対象梁部材に当接することで、搬送車が収容棚に支えられる。従って、棚間領域でアーム突出動作を実行しなくても搬送車の転倒を防止できる。
【0116】
また、前記走行体は、駆動輪と、前記駆動輪を回転駆動する車輪駆動源と、従動輪と、を備え、
前記従動輪は、前記駆動輪に対して前記車体前後方向の両側に分かれて配置され、
前記従動輪の回転軸心は、前記走行体の本体に対して上下方向の相対位置が固定された状態で支持され、
前記駆動輪の回転軸心は、前記走行体の本体に対してサスペンション機構を介して上下方向に弾性を有する状態で支持され、
前記支持アームは、前記車体前後方向における前記従動輪よりも前記駆動輪に近い位置に配置されている、と好適である。
【0117】
本構成によれば、駆動輪がサスペンション機構を介して走行体の本体に支持されているため、駆動輪の接地力を高めて駆動力を走行面に伝えやすい構成にできる。
一方、駆動輪がサスペンション機構を介して走行体の本体に支持されている場合、走行面が振動した場合に駆動輪が車体の傾きや揺れを支える機能は従動輪に比べて弱い。しかしながら、本構成によれば、駆動輪の近くに支持アームが配置されるため、従動輪と支持アームとで搬送車の揺れや傾きを適切に支えることができる。従って、走行面の振動が発生した場合であっても、搬送車が車体幅方向に大きく傾くことを規制でき、延いては搬送車が転倒することを防止できる。
【0118】
また、前記支持アームは、アーム本体と、前記アーム本体に支持されていると共に前記走行面に接地するように配置された支持車輪と、を備え、
前記支持車輪の回転軸心は、前記アーム本体に対して、上下方向に沿う軸心回りに回転自在に支持されている、と好適である。
【0119】
本構成によれば、支持アームが常時走行面に接地している構成であっても、当該支持アームが搬送車の走行の妨げとなることを回避できる。そのため、支持アームの接地部を上下動させる機構が不要となり、支持アームやアーム駆動装置の構成の簡素化を図り易い。
【0120】
また、前記支持アームは、上下方向に沿う軸心回りに揺動自在に前記走行体に支持されている、と好適である。
【0121】
本構成によれば、例えば、支持アームの揺動軸を走行体に支持するだけで支持アームを突出状態と収容状態に状態変更可能にできる。従って、走行体に対する支持アームの支持構造の簡素化を図り易い。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本開示に係る技術は、物品を搬送する搬送車に利用することができる。
【符号の説明】
【0123】
100 :搬送車
1 :走行体
4 :移載装置
6 :被案内部材
8 :容器棚(収納棚)
11a :駆動輪
11b :従動輪
11M :車輪駆動源
12 :サスペンション機構
13 :転倒防止装置
14 :支持アーム
14a :アーム本体
14b :支持車輪
15 :アーム駆動装置
40 :移載用マスト(マスト)
40B :移載用昇降体(昇降体)
70 :容器(物品)
820 :対象梁部材
B :移載機
C :制御部
Cb :振動発生情報取得部
IA :棚間領域
EA :端領域(外領域)
OA :外部領域(外領域)
R :走行経路
L :車体前後方向
W :車体幅方向
Sl :長さ寸法
Sw :幅寸法
Sh :高さ寸法