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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043794
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】施解錠装置、箱錠およびドア
(51)【国際特許分類】
   E05B 47/00 20060101AFI20240326BHJP
   E05B 63/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E05B47/00 J
E05B47/00 H
E05B63/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148984
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】有馬 裕樹
(57)【要約】
【課題】省スペース化を図ることができる施解錠装置、箱錠およびドアを提供する。
【解決手段】回転が拘束されると施錠状態になり、回転が許容されると解錠状態になる施解錠部5と、手動操作によって回転し施解錠部5の施錠状態と解錠状態とを切り替える手動回転部6と、電動操作によって回転し施解錠部5の施錠状態と解錠状態とを切り替える電動回転部7と、を有し、施解錠部5の回転軸、手動回転部6の回転軸および電動回転部7の回転軸は、同軸に配置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転が拘束されると施錠状態になり、前記回転が許容されると解錠状態になる施解錠部と、
手動操作によって回転し前記施解錠部の施錠状態と解錠状態とを切り替える手動回転部と、
電動操作によって回転し前記施解錠部の施錠状態と解錠状態とを切り替える電動回転部と、を有し、
前記施解錠部の回転軸、前記手動回転部の回転軸および前記電動回転部の回転軸は、同軸に配置されている施解錠装置。
【請求項2】
前記施解錠部は、扇形歯車である請求項1に記載の施解錠装置。
【請求項3】
前記電動回転部は、
電動モータの軸に取り付けられたウォームギアに連動して前記回転軸回りに回転するウォームホイールを備え、
前記電動回転部および前記施解錠部のいずれか一方に一体かつ同軸に回転可能に設けられて、前記電動回転部が前記施解錠部を施錠状態にする姿勢となると、他方と接触して前記施解錠部の回転を拘束し、前記電動回転部が前記施解錠部を解錠状態にする姿勢となると、前記他方と離れて前記施解錠部の回転を許容する第1回転拘束部を有する請求項1または2に記載の施解錠装置。
【請求項4】
前記手動回転部は、
サムターンの軸部が連結し前記回転軸回りに回転するサムターン軸連結部と、
前記サムターン軸連結部の外周から突出し、前記サムターン軸連結部と一体かつ同軸に回転可能なアーム部と、
前記アーム部と連動する第2回転拘束部と、を有し、
前記第2回転拘束部は、前記手動回転部が前記施解錠部を施錠状態にする姿勢になると、前記施解錠部の回転軌道上に配置され前記施解錠部の回転を拘束し、前記手動回転部が前記施解錠部を解錠状態にする姿勢になると、前記施解錠部の回転軌道から外れて前記施解錠部の回転を許容する請求項1または2に記載の施解錠装置。
【請求項5】
前記施解錠部、前記手動回転部および前記電動回転部は、箱錠の筐体の内部に収容され、
前記筐体は、前記施解錠部の回転軌道上に配置され、前記施解錠部が接触すると前記施解錠部の回転範囲を規制する第1規制部を有する請求項1または2に記載の施解錠装置。
【請求項6】
前記施解錠部、前記手動回転部および前記電動回転部は、箱錠の筐体の内部に収容され、
前記筐体は、前記電動回転部の回転軌道上に配置され、前記電動回転部が接触すると前記電動回転部の回転範囲を規制する第2規制部を有する請求項1または2に記載の施解錠装置。
【請求項7】
筐体と、
前記筐体の内部に収容された施解錠装置と、を有し、
前記施解錠装置は、
回転が拘束されると施錠状態になり、前記回転が許容されると解錠状態になる施解錠部と、
手動操作によって回転し前記施解錠部の施錠状態と解錠状態とを切り替える手動回転部と、
電動操作によって回転し前記施解錠部の施錠状態と解錠状態とを切り替える電動回転部と、を有し、
前記施解錠部の回転軸、前記手動回転部の回転軸および前記電動回転部の回転軸は、同軸に配置されている箱錠。
【請求項8】
前記筐体の内部に設けられ軸方向に移動するラッチボルトと、
前記筐体の端部に設けられる板部と、
前記板部の少なくとも一部を覆うカバー部と、をさらに有し、
前記板部および前記カバー部には、それぞれ前記ラッチボルトが軸方向に貫通する孔部が形成され、
前記板部の孔部は、前記ラッチボルトが軸径回りに回転可能な形状であり、
前記カバー部の孔部は、前記ラッチボルトの軸径回りの回転を拘束する形状である請求項7に記載の箱錠。
【請求項9】
請求項7または8に記載の箱錠を備えるドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、施解錠装置、箱錠およびドアに関する。
【背景技術】
【0002】
電動で施解錠を行う電動式の施解錠装置が知られている。特許文献1に開示されている施解錠装置は、駆動モータの出力軸に取り付けられたウォームギアの回転が複数の歯車を介して回転部に伝達され、回転部が回転することでデッドボルトが移動して施解錠を行っている。筐体の内部に施解錠装置およびドアラッチ装置が設けられる箱錠においても、手動式に加えて電動式の施解錠装置が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-44393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動式の施解錠装置は、手動式の施解錠装置と比べて部品点数が多く、設置スペースが大きくなる。電動式の施解錠装置は、手動式の施解錠装置と設計が異なるため、手動式の施解錠装置と共通する部品が少ない。箱錠に電動式の施解錠装置を設ける場合は、手動式の施解錠装置のみを設ける場合と比べて、筐体を大きくする必要がある。リフォーム時など筐体を大きくできない場合には、ドアラッチ装置を箱錠から除去し、箱錠とは別にドアラッチ装置を設ける必要がある。このため、箱錠の内部に設けられる施解錠装置の省スペース化が望まれている。
【0005】
本開示は、省スペース化を図ることができる施解錠装置、箱錠およびドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る施解錠装置は、回転が拘束されると施錠状態になり、前記回転が許容されると解錠状態になる施解錠部と、手動操作によって回転し前記施解錠部の施錠状態と解錠状態とを切り替える手動回転部と、電動操作によって回転し前記施解錠部の施錠状態と解錠状態とを切り替える電動回転部と、を有し、前記施解錠部の回転軸、前記手動回転部の回転軸および前記電動回転部の回転軸は、同軸に配置されている。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る箱錠は、筐体と、前記筐体の内部に収容された施解錠装置と、を有し、前記施解錠装置は、回転が拘束されると施錠状態になり、前記回転が許容されると解錠状態になる施解錠部と、手動操作によって回転し前記施解錠部の施錠状態と解錠状態とを切り替える手動回転部と、電動操作によって回転し前記施解錠部の施錠状態と解錠状態とを切り替える電動回転部と、を有し、前記施解錠部の回転軸、前記手動回転部の回転軸および前記電動回転部の回転軸は、同軸に配置されている。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係るドアは、上記の箱錠を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ドアおよび箱錠の斜視図である。
図2】箱錠の斜視図である。
図3】ハンドルギアが閉鎖姿勢、ラッチボルトが閉鎖位置の箱錠の正面図である。
図4】ハンドルギアが開放姿勢、ラッチボルトが開放位置の箱錠の正面図である。
図5】箱錠の室内側から見た分解斜視図である。
図6】施解錠部を屋外側から見た斜視図である。
図7】手動回転部による施錠状態の箱錠の正面図である。
図8】電動回転部による施錠状態の箱錠の正面図である。
図9】手動回転部材およびねじりコイルバネを室外側から見た図である。
図10】手動回転拘束部を室外側から見た斜視図である。
図11】施錠状態の手動回転部を室内側から見た図である。
図12】施錠状態の手動回転部を室外側から見た図である。
図13】施錠状態と解錠状態との間の姿勢の手動回転部を室外側から見た図である。
図14】解錠状態の手動回転部を室内側から見た図である。
図15】解錠状態の手動回転部を室外側から見た図である。
図16】解錠状態の電動回転部の正面図である。
図17】解錠状態の電動回転部の斜視図である。
図18】施錠状態の電動回転部の正面図である。
図19】施錠状態の電動回転部の斜視図である。
図20】電動回転部を設けずに手動回転部を設けた施解錠装置の正面図である。
図21】電動回転部を設けずに手動回転部を設けた施解錠装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、箱錠1は、開口部に設けられる開き戸のドア11の戸先側の端部に取り付けられる。以下の説明では、ドア11の面に沿った水平方向をドア幅方向と表記する。図面では、ドア幅方向を矢印Xで表記する。ドア11は、ドア幅方向の一方側に設けられ上下方向に延びる軸線回りに回転して開口部を開閉する。ドア幅方向のうち、ドア11の吊元がある側を吊元側と表記し、ドア11の戸先がある側を戸先側と表記する。図面では、上下方向を矢印Zで表記する。ドア11の一方の面と他方の面とを結ぶ方向を室内外方向と表記する。図面では、室内外方向をY方向と表記する。室内外方向のうち、ドア11が開口部を閉鎖した際に室外と面するドア11の一方側の面がある側を室外側、ドア11が開口部を閉鎖した際に室内と面するドア11の他方側の面がある側を室内側と表記する。図1では、ドア11の手前側が室内側、ドア11の奥側が室外側である。
【0011】
図1から図3に示すように、箱錠1は、筐体21と、フロント板22と、フロント板カバー25と、ドアラッチ装置3と、施解錠装置4と、を有し、止めねじ261、止めねじ262によってドア11に固定されている。ドアラッチ装置3および施解錠装置4は、筐体21の内部に設けられている。筐体21は、室内側に開口している。筐体21の内部には、制御基板13が設けられている。制御基板13は、施解錠装置4の電動モータ9を制御する制御基板や、ハンドルハブ34に電動モータを接続して電動化する場合の制御基板などである。
【0012】
フロント板22は、筐体21の戸先側の端部に設けられている。フロント板22には、ドア幅方向に貫通する孔部221が形成されている。フロント板カバー25は、フロント板22の戸先側の面全体を覆うように配置される。フロント板カバー25は、ドア11の戸先側の端面に沿って設けられている。フロント板カバー25には、ドア幅方向に貫通する孔部251が形成されている。フロント板カバー25の孔部251と、フロント板22の孔部221とは、ドア幅方向に重なっている。これらの孔部221および孔部251には、ドアラッチ装置3のラッチボルト31のラッチ311が挿入される。フロント板22は、特許請求の範囲の板部に相当する。フロント板カバー25は、特許請求の範囲のカバー部に相当する。
【0013】
施解錠装置4は、サムターン錠であり、手動操作とともに電動操作も可能である。施解錠装置4は、ラッチボルト31の移動を規制して施解錠を行う。サムターン錠のサムターン41は、図1に示す。
【0014】
図2および図3に示すように、ドアラッチ装置3は、ラッチボルト31と、ラックギア部32と、ドアハンドル33と、ハンドルハブ34と、ハンドルギア部35と、を有する。ドアハンドル33は、図1に示す。ラッチボルト31およびラックギア部32は、幅方向に延びている。ラッチボルト31およびラックギア部32は、それぞれ図3に示す閉鎖位置と図4に示す開放位置との間をドア幅方向に移動可能である。閉鎖位置および開放位置のいずれの場合も、ラッチ311は、フロント板22の孔部221およびフロント板カバー25の孔部251に挿入されている。ラッチ311のフロント板カバー25からの戸先側への突出量は、開放位置に配置されるときと比べて閉鎖位置に配置されるときの方が大きい。ラッチボルト31およびラックギア部32それぞれの閉鎖位置は、開放位置よりも戸先側の位置である。
【0015】
図3に示すように、ドア11が開口部を閉鎖している状態で、ラッチボルト31が閉鎖位置に配置されると、ラッチボルト31のラッチ311がドア枠のストライク12に挿入される。これにより、ドア11の開閉移動が規制される。図4に示すように、ドア11が開口部を閉鎖している状態で、ラッチボルト31が開放位置に配置されると、ラッチ311がドア枠のストライク12から外れる。これにより、ドア11の開閉移動が可能になる。開放位置に配置された際のラッチ311のフロント板カバー25からの突出量は、わずかである。ドア11が開口部を閉鎖している状態で、開放位置に配置されたラッチ311のフロント板カバー25からの突出部分は、ドア枠とドア11との隙間に配置され、ドア枠のストライク12には挿入されない。
【0016】
ラックギア部32は、閉鎖位置から開放位置、すなわち吊元側に移動すると、ラッチボルト31を吊元側に押して開放位置に配置する。ラッチボルト31の吊元側の端部と、筐体21の壁部との間には圧縮ばね312が設けられている。圧縮ばね312は、ラッチボルト31が開放位置に配置されると圧縮され、その復元力によってラッチボルト31を戸先側に押す。ラッチボルト31は、開放位置のラックギア部32によって吊元側に押されているため、圧縮ばね312によって戸先側に押されても開放位置に配置される。ラックギア部32は、開放位置から閉鎖位置、すなわち戸先側に移動すると、ラッチボルト31を吊元側に押さない。ラックギア部32が閉鎖位置に戻ると、ラッチボルト31は、圧縮ばね312の復元力によってラッチボルト31が閉鎖位置に復元される。
【0017】
ラッチボルト31は、フロント板カバー25が装着される前には、ラックギア部32に対して軸径方向に自由に回転可能である。フロント板22の孔部221は、挿入されたラッチボルト31が軸径方向に自由に回転可能な形状である。フロント板カバー25の孔部251は、挿入されたラッチボルト31の軸径方向の回転を拘束する形状である。ラッチボルト31は、フロント板カバー25の孔部251には挿入されず、フロント板22の孔部221のみに挿入された状態であれば、軸径方向に回転しても、フロント板22の孔部221の縁部と干渉しない。ラッチボルト31は、フロント板カバー25の孔部251に挿入された状態であれば、軸径方向に回転しようとすると、フロント板カバー25の孔部251の縁部と干渉し、回転が拘束される。
【0018】
箱錠1の施工時には、フロント板カバー25が装着されていない状態において、ラッチボルト31を軸径方向に回転させ、ドア11の開き方向に合わせてラッチボルト31の向きを調整する。ラッチボルト31の向きを調整した後に、フロント板カバー25を装着して、ラッチボルト31の軸径方向の回転を拘束する。ラッチボルト31の向きを所望の向きに調整した後に、ラッチボルト31の軸径方向の回転を拘束することによって、ラッチボルト31が軸径方向に回転してドア11の開閉を妨げることがない。
【0019】
フロント板22には、止めねじ261および止めねじ262がドア幅方向に貫通する止めねじ通し孔が形成されている。フロント板カバー25には、吊元側に突出し、止めねじ通し孔に嵌め込まれる中空孔付きの突出部が設けられている。箱錠1をドア11に設置する際には、以下の手順で行う。箱錠1をドア11の設置位置に配置し、フロント板カバー25でフロント板22の戸先側の面を覆い、フロント板カバー25の突出部がフロント板22の止めねじ通し孔に嵌め込む。突出部の中空孔に止めねじ261および止めねじ262を通して締結する。このようにすることによって、箱錠1とドア11、フロント板カバー25が固定される。止めねじ261および止めねじ262は、皿ねじでもよいし、なべねじ、トラスねじ、低頭ねじ、平ねじ等でもよく、ネジの種類は限定されない。止めねじ261および止めねじ262のねじ頭部穴形状についても、プラス、マイナス、六角穴、ヘクサロビュラなどでもよく、限定されない。
【0020】
ドアハンドル33、ハンドルハブ34およびハンドルギア部35は、図3に示す閉鎖姿勢と図4に示す開放姿勢との間をドアハンドル33の軸部331の軸線332回りに一体に回転可能である。ドアハンドル33の軸部331の軸線332は、室内外方向に延びている。
【0021】
ラックギア部32には、下縁部および上縁部それぞれに幅方向に延びる直線状の歯形が形成されている。ラックギア部32の下縁部の歯形を開閉ラックギア321と表記する。ラックギア部32の上縁部の歯形を施解錠ラックギア322と表記する。ハンドルギア部35の上部には、外周にドアハンドル33の軸部331の軸線332回りに沿った歯形が形成されている。ハンドルギア部35の歯形をハンドルギア351と表記する。
【0022】
ハンドルギア部35は、ラックギア部32の下に配置されている。ハンドルギア351は、開閉ラックギア321と噛み合っている。ドアハンドル33が操作されてハンドルギア部35が軸線332回り回転すると、ハンドルギア351が回転することによって開閉ラックギア321がドア幅方向に移動し、ラックギア部32がドア幅方向に移動する。ハンドルギア部35は、軸線332回りに回転して姿勢を変えることによって、ラックギア部32を閉鎖位置および開放位置に配置できる。ハンドルギア部35の姿勢のうち、図3に示すラックギア部32を閉鎖位置に配置する姿勢を閉鎖姿勢と表記する。ハンドルギア部35の姿勢のうち、図4に示すラックギア部32を開放位置に配置する姿勢を開放姿勢と表記する。閉鎖姿勢のハンドルギア部35のハンドルギア351は、開放姿勢のハンドルギア部35のハンドルギア351よりも戸先側に配置される。
【0023】
施解錠装置4は、ドア11が開口部を閉鎖した状態において、ラックギア部32を閉鎖位置に拘束してラッチボルト31を閉鎖位置に配置することによって施錠し、ラックギア部32のドア幅方向の移動を許容することによって解錠する。以下では、施解錠装置4がラックギア部32を閉鎖位置に拘束してラッチボルト31を閉鎖位置に配置している状態を施錠状態と表記し、ラックギア部32のドア幅方向の移動を許容している状態を解錠状態と表記する。施解錠装置4を構成する部材は、施錠状態と解錠状態とで姿勢や位置が変化する。各部材において、施錠状態にする姿勢や位置を施錠姿勢、施錠位置と表記し、解錠状態にする姿勢や位置を解錠姿勢、解錠位置と表記する。
【0024】
図2図3および図5に示すように、施解錠装置4は、施解錠部5と、手動回転部6と、電動回転部7と、電動モータ9と、を有する。施解錠部5は、回転可能な部材である。施解錠部5は、施錠姿勢と解錠姿勢との間を回転する。手動回転部6の手動回転部材61は、手動操作によって回転し施錠姿勢と解錠姿勢とを切り替える。電動回転部7は、電動操作によって回転し施解錠部5の施錠姿勢と解錠姿勢とを切り替える。施解錠部5の回転軸、手動回転部材61の回転軸および電動回転部7の回転軸は、それぞれ室内外方向に延び、同軸に配置されている。施解錠部5の回転軸、手動回転部材61の回転軸および電動回転部7の回転軸を全て回転軸4aと表記する。
【0025】
図5および図6に示すように、施解錠部5は、施解錠板部51と、第1突出部52と、第2突出部53と、を有する。施解錠板部51は、扇形歯車である。施解錠板部51は、平板状で板面が扇形である。施解錠板部51は、扇形の円弧に対応する縁部に歯形511が形成されている。施解錠板部51に形成された歯形511を扇形ギア511と表記する。施解錠板部51は、板面が室内外方向を向く向きに配置される。施解錠板部51の扇形の円弧の中心に対応する部分には、板面を貫通する円形の孔部512が形成されている。施解錠部5の回転軸4aは、孔部512の中心を通る直線である。施解錠板部51は、孔部512が上側、扇形ギア511が下側となる向きに配置される。すなわち、扇形ギア511は、回転軸4aの下方に配置される。扇形ギア511は、回転軸4aの下方において、回転軸4a回りに所定角度回転し、ドア幅方向に移動する。
【0026】
第1突出部52は、施解錠板部51の吊元側の縁部の下端部近傍から吊元側に突出し更に室外側に突出している。第2突出部53は、施解錠板部51の戸先側の縁部の上端部近傍から戸先側に突出し更に室外側に突出している。第2突出部53は、特許請求の範囲の第1回転拘束部である。
【0027】
図3および図4に示すように、施解錠部5は、ラックギア部32の上側に配置される。施解錠板部51の扇形ギア511は、ラックギア部32の上縁部の施解錠ラックギア322と噛み合っている。施解錠部5とラックギア部32とは連動する。
【0028】
手動回転部6および電動回転部7は、施解錠部5を施錠姿勢に拘束可能である。図7には、手動回転部6によって施解錠部5が施錠姿勢に拘束されている様子を示す。図8には、電動回転部7によって施解錠部5が施錠姿勢に拘束されている様子を示す。施解錠部5が施錠姿勢に拘束されると、ラックギア部32は、閉鎖位置に拘束される。ラックギア部32が閉鎖位置に拘束されると、ドアハンドル33の回転も拘束される。ドア11が開口部を閉鎖している状態で、ラックギア部32が閉鎖位置に拘束されると、ラッチボルト31のラッチ311がストライク12に挿入された状態に維持されるため、ドア11を開放できず施錠状態になる。
【0029】
施解錠部5は、施錠姿勢に拘束されずに、回転軸4a回りの回転が許容されている状態では、ドアハンドル33の操作によってラックギア部32およびラッチボルト31が開放位置に移動可能であり、施錠されない。施解錠部5が施錠姿勢に拘束されていない状態が解錠状態である。図7および図8に示す施錠姿勢の施解錠部5の扇形ギア511は、可動範囲における戸先側の端部に配置される。施錠姿勢の施解錠部5は、扇形ギア511が吊元側に向かうように回転軸4a回りに所定角度回転すると、解錠姿勢になる。
【0030】
図5に示すように、手動回転部6は、手動回転部材61と、ねじりコイルばね62と、手動回転拘束部8と、を有する。図5および図9に示すように、手動回転部材61は、サムターン軸連結部63と、アーム部64と、フランジ部65と、第1ばね取り付け部66と、を有する。第1ばね取り付け部66は、図9に示す。サムターン軸連結部63、アーム部64、フランジ部65およびばね取り付け部66は、一体に形成された部材である。手動回転拘束部8は、アーム部64に連動する。手動回転拘束部8は、特許請求の範囲の第2回転拘束部である。
【0031】
サムターン軸連結部63は、円柱状である。サムターン軸連結部63は、サムターン41の軸部が挿入される孔部631を有する。サムターン軸連結部63は、軸線が室内外方向に延びる向きに配置される。手動回転部材61は、手動回転部6の回転軸4a回りに回転可能に支持されている。手動回転部材61の回転軸についても回転軸4aと表記する。手動回転部材61の回転軸4aは、サムターン軸連結部63の中心軸である。図2および図5に示すように、サムターン軸連結部63は、施解錠部5の孔部512に挿入されている。上述しているように、手動回転部材61は、施解錠部5と同軸に配置されている。手動回転部材61は、施解錠部5と回転軸4a周りに相対回転可能である。
【0032】
図5および図9に示すように、アーム部64は、サムターン軸連結部63の室外側の縁部近傍の一部からサムターン軸連結部63の中心軸に直交する径方向に突出している。フランジ部65は、サムターン軸連結部63の室外側の縁部の一部からサムターン軸連結部63の軸線、すなわち回転軸4aに直交する径方向に突出している。アーム部64とフランジ部65とは、サムターン軸連結部63の周方向に隣接している。アーム部64はフランジ部65よりも径方向の外側に突出している。
【0033】
図9に示すように、第1ばね取り付け部66は、フランジ部65の室外側の面から室外側に突出して設けられている。第1ばね取り付け部66は、円柱状である。第1ばね取り付け部66は、室内外方向に延びる向きに配置されている。第1ばね取り付け部66には、ねじりコイルばね62の一方の端部621が取り付けられる。図5および図7に示すように、ねじりコイルばね62の他方の端部622は、筐体21に設けられた第2ばね取り付け部211に取り付けられる。
【0034】
手動回転拘束部8は、アーム部64の回転に連動して上下方向に移動する。図7に示すように、手動回転拘束部8は、可動範囲における下端位置に配置されると、施解錠部5の第1突出部52の回転軌道上に配置される。手動回転拘束部8が下端位置に配置されるときには、施解錠部5は施錠姿勢である。手動回転拘束部8は、下端位置に配置されると、施錠姿勢の施解錠部5の第1突出部52に吊元側から接触する。施錠姿勢の施解錠部5は、手動回転拘束部8と接触することで吊元側に向かう回転、すなわち解錠姿勢に向かう回転が拘束される。
【0035】
図3に示すように、手動回転拘束部8は、可動範囲における上端位置に配置されると、施解錠部5の第1突出部52の回転軌道から外れた位置に配置される。手動回転拘束部8が上端位置に配置されると、施解錠部5の回転が許容される。手動回転拘束部8が配置される位置で、施解錠部5の回転を拘束する下端位置を施錠位置と表記する。手動回転拘束部8が配置される位置で、施解錠部5の回転を拘束しない上端位置を解錠位置と表記する。
【0036】
図5および図10に示すように、手動回転拘束部8は、下側ブロック部81と、上側ブロック部82と、ピン83と、被ガイド部84と、を有する。ピン83は、図10に示す。下側ブロック部81は、上側ブロック部82の下側に配置されている。下側ブロック部81、上側ブロック部82、ピン83および被ガイド部84は、一体に形成された部材である。
【0037】
図10に示すように、下側ブロック部81は、吊元側に段部817が形成されている。下側ブロック部81の段部817よりも上側の吊元側の端面812は、段部817よりも下側の吊元側の端面815よりも吊元側に突出している。下側ブロック部81の吊元側における上下方向の中間部に配置され、段部817を形成する下向きの面を段部下面818と表記する。
【0038】
上側ブロック部82は、下側ブロック部81よりも室内外方向およびドア幅方向の寸法が小さい。下側ブロック部81の室内側の端面813は、上側ブロック部82の室内側の端面823よりも室内側に配置されている。下側ブロック部81の室外側814の端面は、上側ブロック部82の室外側の端面824よりも室外側に配置されている。下側ブロック部81の上端面815は、上側ブロック部82の室外側および室内側において露出している。下側ブロック部81の上端面815と戸先側の端面811とがなす角部816は、戸先側および上側に張り出す円弧面である。
【0039】
ピン83は、上側ブロック部82の室外側の面824から室外側に突出している。ピン83は、上側ブロック部82の上下方向の中間部に設けられている。ピン83と下側ブロック部81における上側ブロック部82よりも室外側の上端面815とは、上下方向に離れている。ピン83と下側ブロック部81の上端面815との間には、アーム部64が挿入される。ピン83と下側ブロック部81の上端面815との間をアーム挿入部85と表記する。
【0040】
被ガイド部84は、下側ブロック部81の室内側および室外側の両側に設けられている。下側ブロック部81の室内側の被ガイド部84は、下側ブロック部81の室内側の813から室内側に突出している。下側ブロック部81の室外側の被ガイド部84は、下側ブロック部81の室外側の814から室外側に突出している。被ガイド部84は、図5に示す筐体21に設けられたガイド溝部212に挿入されている。ガイド溝部212は、上下方向に延びている。手動回転拘束部8は、ガイド溝部212に沿って上下方向に移動する。
【0041】
図11および図12に示すように、手動回転拘束部8が解錠位置に配置されている時には、アーム挿入部85には、手動回転部6のアーム部64が戸先側から挿入される。手動回転部材61は、アーム部64がサムターン軸連結部63から戸先側に突出している姿勢である。この状態では、ピン83がアーム部64の上に乗っている。これにより、手動回転拘束部8が解錠位置、すなわち上端位置に配置された状態に維持される。
【0042】
この状態から図13に示すように、アーム部64が下方に向かうように手動回転部材61が回転すると、下側ブロック部81の上端面815が下方に押され、アーム部64に乗っているピンも下方に移動するため、手動回転拘束部8が下方に移動する。図14および図15に示すように、更にアーム部64が下方に向かうように回転すると、アーム部64とともに下方に移動した手動回転拘束部8のアーム挿入部85からアーム部64が抜け出る。アーム部64がアーム挿入部85から抜け出ると、手動回転拘束部8の段部下面818が筐体21に設けられた上向きのストッパー面213と接触し、下方への移動が停止する。これにより、手動回転拘束部8が施錠位置、すなわち下端位置に配置された状態に安定的に維持される。
【0043】
サムターン41が操作され、手動回転部材61が施錠姿勢から解錠姿勢に向かって回転すると、アーム部64が下側から上側に向かって移動する。アーム部64は、所定の角度を回転すると、アーム挿入部85に入り、さらに上側に向かうように回転するとピン83を押し上げるようにして手動回転拘束部8を上方に移動させ、解錠位置に配置する。解錠位置に配置された手動回転拘束部8は、上側ブロック部82の上端面825が筐体21に設けられた壁部の下向き面216と接触または、わずかな隙間を開けた状態に配置される。これにより、手動回転拘束部8がガイド溝部212から外れて、解錠位置、すなわち上端位置よりも上方に移動することが防止される。
【0044】
アーム部64の先端部で解錠姿勢となった時に下側になる角部641は、先端側および下側に張り出す円弧面である。上述しているように、下側ブロック部81の上端面815と戸先側の端面811とがなす角部816は、戸先側および上側に張り出す円弧面である。アーム部64が手動回転拘束部8のピン83と下側ブロック部81との間に入り込むとき、および手動回転拘束部8のアーム挿入部85から外れるときには、アーム部64の角部641と、下側ブロック部81の角部816とが接触する。アーム部64の角部641および下側ブロック部81の角部816は、それぞれ円弧面であることにより、アーム部64がアーム挿入部85に入り込むとき、およびアーム挿入部85から外れるときに互いに引っかかることがなくスムーズに移動できる。アーム部64の角部641および下側ブロック部81の角部816は、円弧面でなく、湾曲面であってもよいし、角であってもよい。
【0045】
手動回転部材61が図11および図12に示す解錠姿勢から図14および図15に示す施錠姿勢になると、第1ばね取り付け部66が第2ばね取り付け部211に近づき、ねじりコイルばね62が圧縮される。施錠姿勢の手動回転部材61は、ねじりコイルばね62の復元力によって、解錠姿勢となる方向に押される。このため、サムターン41を施錠姿勢から解錠姿勢にする手動操作を行う際には、小さな力でサムターン41を施錠姿勢から解錠姿勢にできる。
【0046】
図3図5および図8に示すように、電動モータ9は、軸部91が幅方向に延びる方向に配置される。電動モータ9の軸部91には、ウォームギア92が取り付けられている。ウォームギア92は、電動モータ9の軸部91の回転とともに回転する。
【0047】
図5および図16に示すように、電動回転部7は、円筒状の円筒部71と、円筒部71の外周から突出するギア部72と、を有する。円筒部71およびギア部72は、ウォームギア92に連動して回転するウォームホイールを構成する。ウォームギア92は、電動モータ9の駆動によって回転する。電動回転部7の回転軸4aは、円筒部71の中心軸である。
【0048】
ギア部72は、円筒部71の外周の一部から円筒部71の径方向の外側に突出している。ギア部72の外周面は、円筒部71と同軸で円筒部71よりも曲率半径が大きい円弧状に形成されている。ギア部72の外周面には、ウォームギア92とかみ合う歯形723が形成されている。ギア部72における周方向の一方側の端面を第1端面721と表記する。ギア部72における周方向の他方側の端面を第2端面722と表記する。第1端面721は、径方向に沿った面ではなく、外周側の端部721aが内周側の端部721bよりも周方向の他方側に配置される。第2端面722も、径方向に沿った面ではなく、外周側の端部722aが内周側の端部722bよりも周方向の一方側に配置される。
【0049】
電動回転部7の円筒部71の孔部711には、手動回転部6のサムターン軸連結部63が挿入されている。電動回転部7は、施解錠部5および手動回転部材61と回転軸周りに相対回転可能である。図5に示すように、電動回転部7は、手動回転部材61のアーム部64およびフランジ部65の室内側に配置される。施解錠部5の施解錠板部51は、電動回転部7の室内側に配置される。施解錠部5の第2突出部53の回転軌道と電動回転部7のギア部72の回転軌道とは、一部が重なっている。施解錠部5の第1突出部52の回転軌道と電動回転部7のギア部72の回転軌道とは、重ならない。
【0050】
電動回転部7は、図3図16および図17に示す施解錠部5の許容を拘束する解錠姿勢から図8図18および図19に示す施解錠部5の回転を拘束する施錠姿勢から、まで回転可能である。図18および図19に示すように、施錠姿勢の電動回転部7では、ギア部72の第1端面721が円筒部71の戸先側に位置している。施錠姿勢の第1端面721は、内周側の端部721bから外周側の端部721aに向かって漸次下側かつ戸先側に向かう傾斜面である。施錠姿勢の電動回転部7では、ギア部72の第2端面722が円筒部71の吊元側に位置している。施錠姿勢の第2端面722は、内周側の端部722bから外周側の端部722aに向かって漸次下側かつ吊元側に向かう傾斜面である。
【0051】
図16および図17に示すように、解錠姿勢の電動回転部7では、ギア部72の第1端面721が円筒部71の戸先側の端部よりも吊元側に位置している。解錠姿勢の第1端面721は、鉛直面である。解錠姿勢の電動回転部7では、ギア部72の第2端面722は、円筒部71の吊元側で円筒部71の上端部近傍の高さに位置している。解錠姿勢の第2端面722は、水平面である。
【0052】
図8および図19に示すように、施解錠部5が施錠姿勢のときに電動回転部7が施錠姿勢になると、電動回転部7の第1端面721が施解錠部5の第2突出部53に下側かつ吊元側から接触する。第2突出部53は、筐体21の上壁部214から下方に突出する突起部215と、第1端面721とに挟まれる。突起部215は、特許請求の範囲の第1規制部である。突起部215は、施解錠部5の回転を規制する。電動回転部7が施錠姿勢に固定されると、施解錠部5は解錠姿勢側に回転できず、施錠姿勢に拘束される。これにより、施錠状態になる。施解錠部5が解錠姿勢であっても電動回転部7が解錠姿勢から施錠姿勢に向かって回転すると、施解錠部5の第2突出部53に下側かつ吊元側から電動回転部7の第1端面721が接触し、施解錠部5も電動回転部7とともに回転し、施錠姿勢になる。
【0053】
図3および図17に示すように、電動回転部7の第1端面721は、解錠姿勢になると、施解錠部5の第2突出部53から離れる。電動回転部7が解錠姿勢になると、施解錠部5は、施錠姿勢と解錠姿勢との間を回転可能である。電動回転部7の第2端面722は、解錠姿勢になると、筐体21の上壁部214と接触する。電動回転部7の第2端面722が、筐体21の上壁部214と接触すると、電動回転部7の第2端面722がさらに上側に向かう回転が拘束される。上壁部214は、特許請求の範囲の第2規制部である。上壁部214は、電動回転部7の回転範囲を規制する。
【0054】
施解錠装置4は、施解錠部5の回転軸、手動回転部材61の回転軸および電動回転部7の回転軸が同軸に配置されている。施解錠装置4は、手動回転部の回転軸と電動回転部の回転軸とが離れて配置されている従来の施解錠装置と比べて、小型化でき、省スペース化を図ることができる。手動回転部6および電動回転部7は、いずれも施解錠部5の回転を拘束して施錠状態にし、施解錠部5の回転を許容して解錠状態にする。手動回転部6および電動回転部7それぞれの施解錠に互いに共通する部材が使用される。このため、施解錠装置4、箱錠1およびドア11の小型化および省スペース化を図ることができる。
【0055】
施解錠装置4は、手動回転部6による手動操作と、電動回転部7による電動操作の両方が可能であるが、手動回転部6および電動回転部7を設置可能な施解錠装置4において、図20および図21に示すように、電動回転部7を設けずに、手動回転部6に、施解錠板部51と手動回転部材61のフランジ部65の間に電動回転部7と同一の軸長を持つカラー67を設ければ、手動操作のみを行う施解錠装置にすることが可能である。電気動作を不要とする場合では、図20および図21に示す上記の構成とすることにより安価な施解錠装置を選択可能であるが、例えば、将来的に、手動操作のみ行える施解錠装置に電動操作の機能を付加するリフォームを行う場合に、電動操作の機能を付加した施解錠装置として箱錠ごとをそのまま交換可能なため、ドアに対して新たな加工の必要がなく、経済的である。
【0056】
施解錠部5の施解錠板部51は、扇形歯車である。施解錠板部51は、円形の歯車の場合と比べて、小型化することができる。
【0057】
電動回転部7は、電動モータ9の軸に取り付けられたウォームギア92に連動して回転するウォームホイールを有する。電動回転部7のウォームホイールが施錠姿勢となって施解錠部5の第2突出部53と接触すると、施解錠部5が施錠姿勢に拘束されて、施錠状態になる。施解錠装置4は、電動回転部7のウォームホイールと施解錠部5との間に、リンク部材などを設ける必要がない。このため、施解錠装置4の小型化および省スペース化を図ることができる。
【0058】
手動回転部6は、手動回転部材61のアーム部64と連動する手動回転拘束部8と、を有する。手動回転拘束部8は、施錠姿勢になると、施解錠部5の回転軌道上に配置され施解錠部5の回転を拘束して施錠状態にする。手動回転拘束部8は、解錠姿勢になると、施解錠装置4の回転軌道から外れた解錠位置に配置され、施解錠部5の回転を許容して解錠状態にする。施解錠装置4は、手動回転部材61と施解錠部5との間に、リンク部材などを設ける必要がない。このため、施解錠装置4の小型化および省スペース化を図ることができる。
【0059】
筐体21の突起部215は、施解錠部5の回転範囲を規制している。すなわち、筐体21を施解錠部5の回転範囲を規制する部材として使用できる。施解錠部5の回転範囲を規制する部材を筐体21の内部に筐体21とは別に設ける場合と比べて箱錠1および施解錠装置4の部品点数を減らすことができる。
【0060】
筐体21の上壁部214は、電動回転部7の回転範囲を規制している。すなわち、筐体21を電動回転部7の回転を規制する部材として使用できる。電動回転部7の回転を規制する部材を筐体21の内部に筐体21とは別に設ける場合と比べて箱錠1および施解錠装置4の部品点数を減らすことができる。
【0061】
フロント板22の孔部221は、挿入されたラッチボルト31が軸径方向に自由に回転可能な形状である。フロント板カバー25の孔部251は、挿入されたラッチボルト31の軸径方向の回転を拘束する形状である。箱錠1の施工時には、フロント板カバー25が装着されていない状態において、ラッチボルト31を軸径方向に回転させることによって、ラッチボルト31をドア11の開き方向に合わせた向きに調整できる。ラッチボルト31の向きを調整した後に、フロント板カバー25を装着して、ラッチボルト31の回転を拘束することによって、ラッチボルト31が回転してドア11の開閉を妨げることを防止できる。
【0062】
本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、施解錠部5の施解錠板部51は、扇形歯車に代わって円形の歯車であってもよい。扇形歯車および円形の歯車のいずれの場合も、歯形は平歯ってあってもよいし、斜歯であってもよい。
【0063】
電動回転部7は、ウォームホイールに代わって不思議遊星歯車が設けられていてもよい。不思議遊星歯車を用いる場合には、例えば、電動モータの駆動によって太陽歯車が回転し、遊星歯車を介して2段以上に設けられた内歯車のうちの1段が回転する構造にする。このようにすることによって、上記と同様の施解錠装置を実現できる。電動回転部7は、施解錠部5の第2突出部53以外と接触して施解錠部5を施錠姿勢に拘束してもよい。電動回転部7と連動する部材が施解錠部5と接触して施解錠部5を施錠姿勢に拘束してもよい。
【0064】
上記の実施形態では、ウォームギア92は、電動モータ9の動力によって回転している。ウォームギア92は電動モータ9に代わって手動操作によって回転してもよい。例えば、把持ツマミを手動操作で回転させることによってウォームギア92が回転してもよい。ウォームギア92が電動モータ9などを用いた電動機によって回転する場合は、ウォームギア92の回転によってウォームホイールが施錠姿勢および解錠姿勢のいずれかになったことを知らせる動作完了信号を発信するようにしてもよい。例えば、ウォームホイールが施錠姿勢および解錠姿勢のいずれかになった際の増加電流を検知し、増加電流に応じて信号を発信するようにしてもよい。筐体21の内部にウォームホイールが施錠姿勢および解錠姿勢のいずれかになった際に接触する接触センサを設けて、接触センサの検知によって動作完了信号を発信するようにしてもよい。接触センサに代わって磁気センサや光センサによってウォームホイールが施錠姿勢および解錠姿勢のいずれかになったことを検知するようにしてもよい。
【0065】
手動回転部6は、手動回転拘束部8を設けずに、施解錠部5と直接接触して施解錠部5を施錠姿勢に拘束してもよい。手動回転部材61が手動回転拘束部8を移動させる構成は、上記以外であってもよい。
【0066】
筐体21は、施解錠部5の回転を規制する突起部215を有する。施解錠部5の回転を規制する第1規制部は、筐体21とは別の部材であってもよい。筐体21は、電動回転部7の回転を規制する上壁部214を有する。筐体21の上壁部214は、電動回転部7の回転範囲を規制している。電動回転部7の回転を規制する第2規制部は、筐体21とは別の部材であってもよい。
【0067】
箱錠1は、開き戸のドア11に設けられているが、開き戸以外のドアに設けられていてもよい。上記の実施形態では、施解錠装置4は、ラッチボルト31の移動を規制して施解錠を行う。箱錠1にデットボルトが設けられ、施解錠部5は、ラックギア部32およびラッチボルト31に代わってデットボルトの移動を規制して施解錠を行ってもよい。
【0068】
フロント板カバー25は、フロント板22の戸先側の一部を覆うように配置されていてもよい。フロント板22の孔部221およびフロント板カバー25の孔部251の両方が、挿入されたラッチボルト31が軸径方向に自由に回転可能な形状であってもよい。このような場合は、箱錠1がドア11に取り付けられた状態において、ラッチボルト31の軸径方向の回転を拘束する部材や機構が箱錠1に設けられているとよい。フロント板22の孔部221およびフロント板カバー25の孔部251の両方が挿入されたラッチボルト31の軸径方向の回転を拘束する形状であってもよい。フロント板カバー25およびフロント板22は、上記以外の形態であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 箱錠、4 施解錠装置、4a 回転軸、5 施解錠部、6 手動回転部、7 電動回転部、8 手動回転拘束部、9 電動モータ、11 ドア、21 筐体、22 フロント板、25 フロント板カバー、41サムターン、51 施解錠板部、52 第1突出部、53 第2突出部、61 手動回転部材、63 サムターン軸連結部、91 軸部、92 ウォームギア、214 上壁部、215 突起部、221 孔部、251 孔部、511 扇形ギア
図1
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