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  • 特開-キャップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043808
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B65D47/08 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149006
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前川 政貴
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB11
3E084DC03
3E084GA01
3E084GA06
3E084GB01
3E084KA20
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、上記の従来技術における問題点を解消し、キャップに要求される強度、耐久性を低下させることなく、分別廃棄時における本体とキャップの分離を容易かつ迅速、円滑、確実に達成できるキャップを提案するものである。
【解決手段】容器本体10の開口部に嵌合して使用されるキャップ1であって、形状記憶樹脂からなり、使用温度において使用されるものであり、前記使用温度以上の所定温度に加熱された状態で外力を加えられることにより、前記開口部への嵌合が解除されることを特徴とするキャップである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の開口部に嵌合して使用されるキャップであって、形状記憶樹脂からなり、使用温度において使用されるものであり、
前記使用温度以上の所定温度に加熱された状態で外力を加えられることにより、前記開口部への嵌合が解除されることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記所定温度は、形状記憶樹脂のガラス移転点温度または融点以上の温度であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記所定温度は、45℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項4】
容器本体の開口部に嵌合して使用される際の形状が記憶されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の開口部に取り付けて使用するキャップに関し、特に使用後の取り外しが容易であり、再使用も可能なプラスチック製のキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
液体の内容物を収納する容器の栓としては、ワインのボトルに用いられるコルク栓に始まって、様々な材質、形状のものが使用されている。容器本体がガラス製や、硬質のプラスチック製であると、ねじを成形した金属製のキャップや、開口部の形状に嵌合するように成形したプラスチック製のキャップなどが一般的に用いられている。
【0003】
プラスチック製のキャップとしては、下蓋(嵌合部)と上蓋がヒンジによって結合され、再封止が可能なタイプもある。内容物を一度には使い切らない用途には便利であるため、調味料などの容器に広く用いられている。このようなタイプでは、どうしてもプラスチック使用量が多くなるため、容器本体とキャップの材質が異なる場合には、廃棄する際に分別することが望ましいとされている。
【0004】
そこで従来、容器本体とキャップの分離を可能にするために、さまざまな工夫がなされてきた。一例を挙げれば、ヒンジキャップの上蓋を上方向へ引っ張り上げ、リング部と下蓋との接合を切り離し、リング部を持ち、上方向へ引っ張り上げ、容器からキャップを取り外す構造である。
【0005】
他の例では、ヒンジキャップのヒンジ部片側に切れ込みが入っており、ヒンジキャップの上蓋を下方向に引っ張り、リング部とヒンジ部の片側の接合を切り離す。その後、上蓋ごと円周方向に回転させ、最後はヒンジキャップごと上方向へ引っ張り上げ、容器からキャップを取り外す構造である。
【0006】
特許文献1に記載された例は、ヒンジキャップのヒンジ部の両側に切れ込みが入っており、ヒンジキャップの上蓋を下方向に引っ張り、リング部とヒンジ部の両側の接合を切り離す。その後、上蓋と切り離されたヒンジ部ごと上方向へ引っ張り上げ、容器からキャップを取り外す構造である。
【0007】
一般にこれらのキャップは、容器本体に対して強固に取り付ける必要があり、ヒンジ部についても高い強度や耐久性が要求されるため、ポリプロピレン樹脂等の比較的硬質な合成樹脂材料で一体成型されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開1999-049211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ポリプロピレン樹脂等の硬質な樹脂で一体成型すると、キャップに必要とされる強度や耐久性は充足される反面、丈夫で破断され難いため、接合切り離し部が容易には切れず、本体とキャップの分離時に大きな力を必要とする。
【0010】
このため、女性や子供、年配者など、力の弱い人には分離操作が不可能であったり、また本体とキャップの分離時に意図していない箇所で切り離されるなどして、この分離作業
を迅速かつ円滑に行うことは、必ずしも容易ではなかった。
【0011】
本発明の解決しようとする課題は、上記の従来技術における問題点を解消し、キャップに要求される強度、耐久性を低下させることなく、分別廃棄時における本体とキャップの分離を容易かつ迅速、円滑、確実に達成できるキャップを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、容器本体の開口部に嵌合して使用されるキャップであって、形状記憶樹脂からなり、使用温度において使用されるものであり、前記使用温度以上の所定温度に加熱された状態で外力を加えられることにより、前記開口部への嵌合が解除されることを特徴とするキャップである。
【0013】
本発明に係るキャップは、形状記憶樹脂を用いたことにより、使用温度よりもわずかに高い温度に加熱することにより軟化するため、湯を掛ける等の簡単な操作で開口部への嵌合を容易に解除することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記所定温度が、形状記憶樹脂のガラス移転点温度または融点以上の温度であることを特徴とする請求項1に記載のキャップである。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記所定温度が、45℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のキャップである。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、容器本体の開口部に嵌合して使用される際の形状が記憶されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のキャップである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るキャップは、形状記憶樹脂を用いたことにより、使用温度よりもわずかに高い温度に加熱することにより軟化するため、キャップに湯をかける等の簡単な操作により、開口部への嵌合が容易に解除される。これにより、力の弱い人でも容易にキャップを容器本体から取り外すことができる。
【0018】
また、所定温度が45℃以上80℃以下である場合には、一般家庭において十分実施可能な温度であり、実用性が高い。
【0019】
また、容器本体の開口部に嵌合して使用される際の形状が記憶されている場合、わずかな加熱によって、取り外したキャップを元の形状に戻すことができる。従って、キャップの再使用が可能となり、例えば詰替え容器にキャップのみを付け替えて使用するといった使用方法が可能となる。本発明に係るキャップは、取り外しに当たって、一部を切断するような必要がないため、安心して再使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係るキャップの一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面を参照しながら、本発明に係るキャップについて説明する。図1は、本発明に係るキャップ1の一例を示した模式図である。図1に示した例は、容器本体10の開口部に取り付けて使用するヒンジ付きのキャップである。下蓋3と上蓋2は、ヒンジ6によって結合されている。上蓋2は、ヒンジ6によって開閉し、再封止が可能である。なお、本発明に係るキャップは、必ずしもヒンジキャップである必要はなく、スクリューキャップ
のような、より単純な形状のキャップでも良い。
【0022】
一般的に、内容物を一度に使い切る用途であれば、ヒンジキャップの必要はなく、単純な形状のキャップでよい。しかし内容物を何回にも小出しに使うような場合には、再封止が可能なヒンジキャップが便利である。
【0023】
ヒンジキャップは、構造も複雑であり、使用するプラスチック量も多いので、それなりにコストがかかる。しかし従来はこれを取り外して再使用するという発想がなかった。従来のヒンジキャップは、いずれも取り外しに当たって、一部を切断する必要があるため、再使用は不可能であった。
【0024】
本発明に係るキャップ1は、容器本体10の開口部に嵌合して使用されるキャップ1であって、形状記憶樹脂からなる。形状記憶樹脂は、通常の使用温度においては、一般的な合成樹脂として使用可能であるが、使用温度以上の所定の温度(所定温度)以上に加熱されると、軟化して開口部への嵌合力が著しく低下する。従って外力に対する抵抗力が下がり、本体容器の開口部への嵌合が容易に解除されるようになる。
【0025】
この軟化する所定温度は、形状記憶樹脂の種類によって異なるが、この温度が45℃以上80℃以下の樹脂を選択することにより、家庭においても、湯を掛けるだけの簡単な操作で、容器本体への強固な嵌合を解除することができる。
【0026】
この所定温度は、形状記憶樹脂のガラス転移温度であるか、または融点である。
【0027】
本発明に係るキャップの製造方法および使用方法について説明する。射出成型機としては、通常一般的に用いられている射出成型機が使用できる。金型についても同様に一般的な構造の金型が使用できる。金型は、キャップの使用時、すなわち、容器本体10の開口部に嵌合することが可能な形状に対応した形状を有する。
【0028】
形状記憶樹脂の融点が50℃の場合には、樹脂を成形温度(例えば200℃)に加熱し、金型内に射出して成形する。この時、ポリマー鎖を何らかの方法で架橋する。架橋の方法については、化学架橋、物理架橋を問わない。その後、金型内の形状記憶樹脂を所定温度以下(例えば、10℃以上45℃未満)まで冷却する。これにより、形状記憶樹脂は金型に対応する形状を記憶する。
【0029】
形状記憶樹脂を融点以下の温度に冷却し、金型から取り出す。成形されたキャップは、内容物を充填した容器本体の口部に打栓することにより、製品が完成する。
【0030】
製品の使用後は、キャップに例えば60℃の温水を掛けることにより、キャップは軟化するので、容易に取り外すことができる。この時、軟化したキャップは引き延ばされて変形するが、再度温水を掛けることにより、記憶されている当初の形状に復活する。
【0031】
このように、本発明に係るキャップは、簡単な操作で、元の形状に戻るため、例えばそのまま廃棄する場合でもコンパクトで嵩張らないし、例えば詰替え容器に取り付けて再使用することもできる。
【0032】
このような形状記憶樹脂の例としては、ポリカプロラクトンが挙げられる。ポリカプロラクトンは、融点は60℃と極めて低いがガラス転移温度は-60℃であり、高結晶性のプラスチックである。物性的にはポリプロピレンに近く、破断伸度も300%以上と大きい。従って、本発明に係るキャップには、適した材料であると言える。
【0033】
本発明に係るキャップは、液体状の食品や調味料等を収納する容器のキャップとして適しているが、内容物は食品に限らず、また液体にも限定されず、粉体などでも良い。容器本体もガラスや硬質プラスチック等が考えられるが、特に限定されない。
【符号の説明】
【0034】
1・・・キャップ
2・・・上蓋
3・・・下蓋
6・・・ヒンジ
10・・・容器本体
図1