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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043819
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置及び携帯型情報端末
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240326BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240326BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240326BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G03B30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149019
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松久 治可
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AE06
2H044BD07
2H044BE02
2H044BE18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型で耐久性の高いレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置1は、レンズユニット20と、レンズユニットを保持する保持部材40と、保持部材を光軸方向に移動させてレンズユニットを同方向に移動させる駆動機構と、レンズユニットと固定部材10とに接続されたカメラモジュールFPC30と、を有する。カメラモジュールFPCは、レンズユニットに固定される第1領域と、固定部材に固定される第2領域と、第1領域と第2領域との間に延びる中間領域と、を備える。中間領域は、互いに対向するレンズユニットの外面と保持部材の内面との間に収納される。中間領域の少なくとも一部は、レンズユニットが光軸方向に移動すると、レンズユニットの外面に沿ってレンズユニットに対して移動する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、前記レンズを少なくとも光軸方向に移動させるレンズ駆動部と、を含むレンズユニットと、
前記レンズユニットの周囲に設けられ、前記レンズユニットを保持する保持部材と、
前記保持部材の周囲に設けられ、前記保持部材を前記光軸方向に移動可能に支持する回転部材と、
前記回転部材の周囲に設けられ、前記回転部材を回転可能に支持する固定部材と、
前記保持部材を前記光軸方向に移動させて前記レンズユニットを同方向に移動させる駆動機構と、
前記レンズユニットと前記固定部材とに接続されたフレキシブルプリント基板と、を有し、
前記フレキシブルプリント基板は、前記レンズユニットに固定される第1固定部が設けられた第1領域と、前記固定部材に固定される第2固定部が設けられた第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に延びる中間領域と、を備え、
前記中間領域は、互いに対向する前記レンズユニットの外面と前記保持部材の内面との間に収納され、
前記中間領域の少なくとも一部は、前記レンズユニットが前記光軸方向に移動すると、前記レンズユニットの前記外面に沿って前記レンズユニットに対して移動する、レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント基板の前記第1領域には、前記レンズユニットに固定されていない非固定部が設けられ、
前記第1固定部および前記非固定部は、前記レンズユニットの下に配置されて前記レンズユニットの底面と対向し、
前記レンズユニットが前記光軸方向に移動すると、前記レンズユニットの前記底面と前記第1固定部とが成す角度は変化しない一方、前記レンズユニットの前記底面と前記非固定部とが成す角度は変化する、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記フレキシブルプリント基板の前記第1固定部と前記第2固定部とが前記レンズの光軸を挟んで互いに反対側に配置されている、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記フレキシブルプリント基板は、前記第1領域,前記第2領域および前記中間領域を2つずつ備える、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記レンズユニットの前記光軸方向の位置を検出する位置検出部を有する、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記位置検出部は、前記フレキシブルプリント基板に搭載され、前記レンズユニットの前記光軸方向の移動に伴って同方向に移動する磁気センサと、前記固定部材に設けられた磁石と、から構成される、請求項5に記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
前記保持部材にカムピンが設けられ、
前記回転部材に前記カムピンが挿入されるカム溝が設けられ、
前記保持部材は、回転する前記回転部材から前記光軸方向の推力を受ける、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項8】
前記レンズを透過した光が入射する撮像素子を有する、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置を備える携帯型情報端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置及び携帯型情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズを移動させる機構や、そのような機構を備えた撮影装置などが知られている。特許文献1には、レンズを光軸方向に移動させて撮影倍率を変更可能なレンズ鏡筒が記載されている。特許文献1によれば、当該レンズ鏡筒は、デジタルカメラ等の撮影装置に搭載される。
【0003】
特許文献1に記載されているレンズ鏡筒は、一端が光軸方向に移動するシャッタコイル等に接続され、他端がコネクタに接続されたFPCを有している。FPCは、レンズ鏡筒の内部でU字状に折り曲げられてレンズ鏡筒の外に引き出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-137526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レンズ駆動装置が備えるフレキシブルプリント基板(FPC/FlexiblePrint Circuits)を小さな曲げ半径で折り曲げると、折り曲げ部の導体層にひび割れが生じる虞がある。一方、レンズ駆動装置が備えるフレキシブルプリント基板を大きな曲げ半径で折り曲げると、折り曲げ部を収容するために大きなスペースが必要となる。
【0006】
本発明の目的は、小型で耐久性の高いレンズ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るレンズ駆動装置は、レンズと、前記レンズを少なくとも光軸方向に移動させるレンズ駆動部と、を含むレンズユニットと、前記レンズユニットの周囲に設けられ、前記レンズユニットを保持する保持部材と、前記保持部材の周囲に設けられ、前記保持部材を前記光軸方向に移動可能に支持する回転部材と、前記回転部材の周囲に設けられ、前記回転部材を回転可能に支持する固定部材と、前記保持部材を前記光軸方向に移動させて前記レンズユニットを同方向に移動させる駆動機構と、前記レンズユニットと前記固定部材とに接続されたフレキシブルプリント基板と、を有する。前記フレキシブルプリント基板は、前記レンズユニットに固定される第1固定部が設けられた第1領域と、前記固定部材に固定される第2固定部が設けられた第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に延びる中間領域と、を備える。前記中間領域は、互いに対向する前記レンズユニットの外面と前記保持部材の内面との間に収納される。前記中間領域の少なくとも一部は、前記レンズユニットが前記光軸方向に移動すると、前記レンズユニットの前記外面に沿って前記レンズユニットに対して移動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型で耐久性の高いレンズ駆動装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、レンズ駆動装置の外観斜視図である。
図2図2は、レンズ駆動装置の他の外観斜視図である。
図3図3は、レンズ駆動装置の分解斜視図である。
図4図4は、レンズユニット,カメラモジュールFPC及び保持部材の組付け状態を示す斜視図である。
図5図5は、レンズユニット,カメラモジュールFPC及び保持部材の組付け状態を示す分解斜視図である。
図6図6は、カメラモジュールFPCの展開図である。
図7図7は、レンズユニットが待機位置にあるときのカメラモジュールFPCを示す斜視図である。
図8図8は、レンズユニットが待機位置にあるときのカメラモジュールFPCを示す他の斜視図である。
図9図9は、レンズユニットが撮影位置にあるときのカメラモジュールFPCを示す斜視図である。
図10図10は、レンズユニットが撮影位置にあるときのカメラモジュールFPCを示す他の斜視図である。
図11図11は、レンズ駆動装置が搭載されたスマートフォンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一又は実質的に同一の構成や要素には同一の符号を用いる。また、一度説明した構成や要素については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0011】
<レンズ駆動装置の概要>
図1図2は、本実施形態に係るレンズ駆動装置1の外観斜視図である。図3は、本実施形態に係るレンズ駆動装置1の分解斜視図である。
【0012】
レンズ駆動装置1は、固定部材10,レンズユニット20,フレキシブルプリント基板30,保持部材40,回転部材50,リングプレート71,カバーガラス72,シール73等を有する。
【0013】
固定部材10は、ベースプレート11とカバー12とから構成され、レンズユニット20,フレキシブルプリント基板30,保持部材40,回転部材50等を収容するケース又はハウジングを構成している。別の見方をすると、固定部材10は、レンズ駆動装置1の外郭を形成している。
【0014】
レンズユニット20は、ベースプレート11の上に配置されている。保持部材40は、レンズユニット20の周囲に設けられ、レンズユニット20を保持している。フレキシブルプリント基板30は、レンズユニット20の周囲に設けられている。回転部材50は、保持部材40の周囲に設けられ、保持部材40を移動可能に支持している。カバー12は、回転部材50の周囲に設けられ、回転部材50を回転可能に支持している。
【0015】
保持部材40に保持されているレンズユニット20は、保持部材40と一体化されている。よって、保持部材40が光軸方向に移動すると、レンズユニット20も同方向に移動する。レンズ駆動装置1は、保持部材40を光軸方向に移動させることにより、レンズユニット20を光軸方向の異なる2以上の位置に移動させる。
【0016】
なお、特に断らない限り、本明細書における光軸方向は、レンズユニット20が備えるレンズ21の光軸21aの方向を意味する。また、図1は、レンズユニット20が第1の位置にあるときのレンズ駆動装置1の外観を示している。一方、図2は、レンズユニット20が第1の位置とは異なる第2の位置にあるときのレンズ駆動装置1の外観を示している。
【0017】
フレキシブルプリント基板30の一端側はレンズユニット20に固定され、フレキシブルプリント基板30の他端側は固定部材10に固定されている。また、フレキシブルプリント基板30の一部は、レンズユニット20と保持部材40との間に収納されている。
【0018】
レンズユニット20が光軸方向に移動する際、フレキシブルプリント基板30の一部は、レンズユニット20の外面に沿って当該レンズユニット20に対して移動する。かかるフレキシブルプリント基板30の相対移動により、レンズユニット20の移動に伴うフレキシブルプリント基板30の伸縮が吸収される。なお、以下の説明では、フレキシブルプリント基板を“カメラモジュールFPC30”と呼ぶ場合がある。
【0019】
<固定部材(ベースプレート)>
固定部材10のベースプレート11には、リード13やセンサ基板14が設けられており、センサ基板14には撮像素子15が実装されている。センサ基板14からは、撮像素子15と電気的に接続されたフレキシブルプリント基板14aが引き出されている。以下の説明では、フレキシブルプリント基板14aを“撮像センサFPC14a”と呼んでカメラモジュールFPC30を含む他のフレキシブルプリント基板と区別する場合がある。
【0020】
固定部材10内に、モータ16や歯車群17が設けられている。歯車群17は、モータ16の出力軸に設けられているウォームと噛み合うねじ歯車を含む複数の歯車を含み、全体として減速機構を構成している。また、モータ16及び歯車群17は、保持部材40を光軸方向に移動させる後述の駆動機構を構成している。なお、モータ16は、カバー12の内側に設けられている保持部によって保持されている。また、歯車群17に含まれる歯車は、カバー12の内側に設けられている回転軸によって支持されている。
【0021】
モータ16は、ステッピングモータである。モータ16のドライバICは、フレキシブルプリント基板80を介して不図示のコントローラと接続されている。以下の説明では、フレキシブルプリント基板80を“アクチュエータFPC80”と呼んで、撮像センサFPC14a及びカメラモジュールFPC30を含む他のフレキシブルプリント基板と区別する場合がある。
【0022】
<レンズユニット>
レンズユニット20は、レンズ21等を収容するハウジング22を備えている。レンズ21は、ハウジング22の中央に収容されている。ハウジング22の内部であってレンズ21の周囲には、駆動源(例えば、ボイスコイルモータ(VCM))を備え、レンズ21を少なくとも光軸方向に移動させるレンズ駆動部が設けられている。レンズ21がレンズ駆動部によって光軸方向やその他の方向に移動されることにより、オートフォーカス(AF)や手振れ補正(OIS)などが実現される。
【0023】
既述のとおり、レンズユニット20は、ベースプレート11の上に配置されている。より特定的には、レンズユニット20は、レンズ21の光軸21aが撮像素子15の撮像面(受光面)の中心と一致する位置に配置されている。よって、レンズ21を透過した光は、撮像素子15の撮像面(受光面)に入射する。
【0024】
カメラモジュールFPC30は、レンズユニット20のハウジング22の周囲に設けられ、ハウジング22に部分的に固定されている。カメラモジュールFPC30については、後に改めて説明する。
【0025】
<保持部材>
保持部材40は、レンズユニット20を取り囲む円筒形状を有し、天井部41を備えている。もっとも、天井部41には、レンズユニット20が備えるレンズ21を露出させる開口41aが設けられている。つまり、天井部41は円環状に形成されている。
【0026】
保持部材40の内側には、3つの係合凹部42が周方向で異なる位置に設けられている。一方、レンズユニット20の外側には、3つの係合凸部23が設けられている。レンズユニット20の3つの係合凸部23は、保持部材40の異なる係合凹部42にそれぞれ嵌め合わされている。この結果、レンズユニット20と保持部材40とは、相対回転不能に一体化している。以下の説明では、一体化されているレンズユニット20及び保持部材40を“レンズモジュール25”と総称する場合がある。
【0027】
保持部材40の外面(外周面)には、3本のカムピン43及び係合ピン44が設けられている。それぞれのカムピン43及び係合ピン44は、保持部材40の外周面から径方向に突出している。もっとも、係合ピン44の突出長は、カムピン43の突出長よりも長い。
【0028】
天井部41には、リングプレート71を固定するねじ74が結合される複数のねじボス45が設けられている。リングプレート71は、ねじボス45に結合されたねじ74によって保持部材40に固定されており、リングプレート71にカバーガラス72が固定されている。なお、ねじ74の頭部は、リングプレート71に貼られたシール73によって覆われ、外部から目視できないように隠されている。
【0029】
<回転部材>
回転部材50は、保持部材40を取り囲む円筒形状を有する。回転部材50の内面(内周面)には、3本のカム溝51が周方向で異なる位置に設けられている。また、回転部材50の周壁には、3つの切欠き52が周方向で異なる位置に設けられている。さらに、回転部材50の外面(外周面)には、3本の係合ピン53が周方向で異なる位置に設けられている。
【0030】
それぞれのカム溝51は、回転部材50の周方向に沿って斜めに延びている。より特定的には、カム溝51の底面(カム面)は、回転部材50の周方向に沿って斜めに延びている。別の見方をすると、カム溝51の底面(カム面)は、周方向に沿って高さが漸増または漸減するように傾斜している。なお、切欠き52の上面は、カム溝51の底面(カム面)と同様に傾斜している。また、カムピン43は、回転部材50の外周面から径方向に突出している。
【0031】
保持部材40の3本のカムピン43は、回転部材50の異なるカム溝51にそれぞれ挿入されている。この結果、回転部材50は、カム溝51に挿入されたカムピン43を介して保持部材40を光軸方向に移動可能に支持している。保持部材40の光軸方向への移動については後述する。
【0032】
なお、保持部材40の3本の係合ピン44は、回転部材50の異なる切欠き52を通じて回転部材50の外に突出している。また、回転部材50の外周面には、歯車群17の最終段の歯車と噛み合う複数のギヤ歯が形成されている。これらギヤ歯は、隣接する2つの切欠き52の間の領域に周方向に沿って互いに平行に並んでいる。
【0033】
<固定部材(カバー)>
固定部材10のカバー12は、回転部材50を取り囲む筒部61と、歯車群17を覆うギヤケース部62と、を備えている。もっとも、筒部61とギヤケース部62とは一体成形されている。
【0034】
筒部61は、円筒形状を有する。筒部61の内面(内周面)には、光軸方向に延びる3本の係合溝63と、周方向に延びる3本の係合溝64と、が設けられている。係合溝63と係合溝64とは、周方向に沿って交互に配置されている。
【0035】
回転部材50の外に突出している保持部材40の係合ピン44は、光軸方向に延びる係合溝63に挿入されている。一方、回転部材50の外周面に設けられている係合ピン53は、周方向に延びる係合溝64に挿入されている。
【0036】
この結果、保持部材40及びこれと一体のレンズユニット20は、係合溝63に案内されて光軸方向に移動可能である一方、周方向には移動不能である。言い換えれば、レンズモジュール25は、固定部材10に対して昇降可能である一方、回転不能である。これに対し、回転部材50は、係合溝64に案内されて周方向に移動可能である一方、光軸方向には移動不能である。言い換えれば、回転部材50は、固定部材10に対して回転可能である一方、昇降不能である。
【0037】
<レンズユニットの光軸方向への移動>
既述のとおり、回転部材50の外周面には、歯車群17の最終段の歯車と噛み合う複数のギヤ歯が形成されている。よって、モータ16が作動すると、保持部材40の周囲で回転部材50が回転する。ここで、保持部材40のカムピン43は、回転部材50のカム溝51に挿入されており、カム溝51の底面(カム面)は上記のように傾斜している。この結果、回転部材50が回転すると、保持部材40は、光軸方向の推力を受け、同方向に移動する。つまり、モータ16,歯車群17,カムピン43及びカム溝51は、保持部材40を光軸方向に移動させてレンズユニット20を同方向に移動させる駆動機構を構成している。
【0038】
回転部材50が第1方向に回転すると、レンズモジュール25(レンズユニット20及び保持部材40)は、ベースプレート11(撮像素子15)から離れる方向(上方)に移動する。より特定的には、図3に示されている回転部材50が第1方向に回転すると、図1に示されているレンズモジュール25が図2に示されている位置に移動する。この結果、レンズモジュール25に含まれるレンズユニット20は、第1の位置から、光軸方向において第1の位置とは異なる第2の位置に移動する。
【0039】
一方、回転部材50が第1方向と反対の第2方向に回転すると、レンズモジュール25がベースプレート11(撮像素子15)に近づく方向(下方)に移動する。より特定的には、図3に示されている回転部材50が第2方向に回転すると、図2に示されているレンズモジュール25が図1に示されている位置に移動する。この結果、レンズモジュール25に含まれるレンズユニット20は、第2の位置から、光軸方向において第2の位置とは異なる第1の位置に移動する。
【0040】
以下の説明では、レンズモジュール25が図1に示されている位置にあるときのレンズユニット20の位置を“待機位置”と呼ぶ場合がある。また、レンズモジュール25が図2に示されている位置にあるときのレンズユニット20の位置を“撮影位置”と呼ぶ場合がある。
【0041】
図1より、レンズユニット20が待機位置にあるときには、リングプレート71やカバーガラス72が固定部材10(カバー12)の上面と面一になることがわかる。別の見方をすると、レンズユニット20が待機位置にあるときには、レンズユニット20を含むレンズモジュール25がハウジング内に収まる。
【0042】
図2より、レンズユニット20が撮影位置にあるときには、リングプレート71やカバーガラス72が固定部材10(カバー12)の上面よりも上方に押し出されることがわかる。別の見方をすると、レンズユニット20が撮影位置にあるときには、レンズユニット20を含むレンズモジュール25がハウジングから迫り出す。
【0043】
レンズユニット20を待機位置と撮影位置との間で光軸方向に移動させることにより、例えば次のような効果や機能が得られる。非撮影時にレンズユニット20を待機位置に移動させれば、レンズ駆動装置1の厚みを薄くすることができる。撮影時にレンズユニット20を撮影位置に移動させれば、必要な光路長を確保することができる。また、レンズユニット20を待機位置と撮影位置との間の任意の位置に移動させれば、光路長を調節することができる。なお、レンズユニット20も光路調節機能を備えていることは既述のとおりである。
【0044】
<カメラモジュールFPC>
図4は、レンズユニット20,カメラモジュールFPC30及び保持部材40の組付け状態を示す斜視図である。図5は、レンズユニット20,カメラモジュールFPC30及び保持部材40の組付け状態を示す分解斜視図である。図6は、カメラモジュールFPC30の展開図である。
【0045】
カメラモジュールFPC30は、第1領域31,第2領域32及び中間領域33を2つずつ備えている。一方の中間領域33は、一組の第1領域31と第2領域との間に延びてこれら2つの領域を繋いでいる。他方の中間領域33は、他の一組の第1領域31と第2領域32との間に延びてこれら2つの領域を繋いでいる。
【0046】
カメラモジュールFPC30は、2つの第1領域31を互いに繋ぐ共通領域34をさらに備えている。つまり、カメラモジュールFPC30は、2つの第1領域31,第2領域32及び中間領域33と、1つの共通領域34と、を備える1枚のフレキシブルプリント基板である。
【0047】
<第1領域>
それぞれの第1領域31には、レンズユニット20に固定された第1固定部31aが設けられている。それぞれの第1固定部31aは、レンズユニット20の下に配置され、ハウジング22の底面22aと対向している。さらに、それぞれの第1固定部31aは、ハウジング22の底面22aに、接着剤または両面テープによって固定されている。
【0048】
第1固定部31aには、複数のスルーホール35が設けられている。それぞれスルーホール35には、ハウジング22の底面22aから突出しているリード26が挿入されている。スルーホール35に挿入されたリード26は、スルーホール35の周囲に形成されているランドに半田付けされている。
【0049】
ハウジング22から突出している複数のリード26の少なくとも一部は、レンズユニット20が備えるレンズ駆動部と導通している。つまり、カメラモジュールFPC30は、レンズユニット20と電気的に接続されている。より特定的には、カメラモジュールFPC30は、レンズユニット20が備えるレンズ駆動部と電気的に接続されている。
【0050】
それぞれの第1領域31には、第1固定部31aと同じく、レンズユニット20の下に配置され、ハウジング22の底面22aと対向している非固定部31bが設けられている。もっとも、非固定部31bは、第1固定部31aと異なり、ハウジング22の底面22aに固定されていない。つまり、第1領域31は、レンズユニット20に固定されている部分と、レンズユニット20に固定されていない部分とを含んでいる。
【0051】
なお、本実施形態では、それぞれの第1領域31の概ね1/2が第1固定部31aに割り当てられ、残りの概ね1/2が非固定部31bに割り当てられている。さらに、非固定部31bは、第1固定部31aと中間領域33との間に位置しており、第1固定部31aと直交または略直交する方向に延びている。
【0052】
<第2領域>
それぞれの第2領域32には、固定部材10に固定された第2固定部32aが設けられている。それぞれの第2固定部32aは、固定部材10のベースプレート11(図3)に、接着剤または両面テープによって固定されている。第2固定部32aには、複数のスルーホール36が設けられている。それぞれスルーホール36には、ベースプレート11から突出しているリード13(図3)の一端側が挿入されている。スルーホール36に挿入されたリード13の一端側は、スルーホール36の周囲に形成されているランドに半田付けされている。
【0053】
一組の第1領域31及び第2領域32に設けられている第1固定部31aと第2固定部32aとは、レンズ21の光軸21aを挟んで互いに反対側に配置されている。同様に、他の一組の第1領域31及び第2領域32に設けられている第1固定部31aと第2固定部32aとは、レンズ21の光軸21aを挟んで互いに反対側に配置されている。
【0054】
なお、ベースプレート11から突出しているリード13の他端側は、アクチュエータFPC80(図3)に接続されている。別の見方をすると、アクチュエータFPC80は、カメラモジュールFPC30によって延長されて、レンズユニット20に接続されている。
【0055】
<中間領域および共通領域>
それぞれの中間領域33及び共通領域34は、互いに対向するレンズユニット20の外面と保持部材40の内面との間に収納されている。より特定的には、中間領域33及び共通領域34は、互いに対向するハウジング22の外周面22bと保持部材40の内周面40bとの間の隙間37に収納されている。
【0056】
さらに、中間領域33及び共通領域34は、ハウジング22の外周面22bに沿ってハウジング22を取り巻いている。また、2つの中間領域33は、ハウジング22を挟んで対向している。別の見方をすると、2つの中間領域33は、光軸21aを中心として対称である。
【0057】
なお、共通領域34はハウジング22の外周面22bに固定されているが、中間領域33はハウジング22の外周面22bに固定されていない。
【0058】
<カメラモジュールFPCの動き>
それぞれの中間領域33の少なくとも一部は、レンズユニット20を含むレンズモジュール25が光軸方向に移動すると、レンズユニット20の外面に沿ってレンズユニット20に対して移動する。つまり、カメラモジュールFPC30の中間領域33の少なくとも一部は、レンズモジュール25の繰り出し量に応じて、レンズユニット20に対して移動する。
【0059】
図7図8は、レンズユニット20が待機位置にあるときのカメラモジュールFPC30を示す斜視図である。図9図10は、レンズユニット20が撮影位置にあるときのカメラモジュールFPC30を示す斜視図である。
【0060】
レンズユニット20が待機位置から撮影位置に移動すると(図7図8図9図10)、カメラモジュールFPC30の第1領域31に設けられている第1固定部31aは、上方に引っ張られる。しかし、カメラモジュールFPC30の第2領域32に設けられている第2固定部32aは、固定部材10のベースプレート11(図3)に固定されている。この結果、第1領域31と第2領域32との間に延びているカメラモジュールFPC30の中間領域33は、レンズユニット20のハウジング22の外周面22bに沿ってレンズユニット20に対して下方に移動(スライド)する。
【0061】
さらに、第1固定部31aに繋がっている非固定部31bの一側は上方に引っ張られ、中間領域33に繋がっている非固定部31bの他側は下方に引っ張られる。この結果、非固定部31bが傾斜し、ハウジング22の底面22aから離れる。別の見方をすると、ハウジング22の底面22aと非固定部31bとが成す角度θ(図9)が変化(増加)する。
【0062】
一方、レンズユニット20が撮影位置から待機位置に移動すると(図9図10図7図8)、カメラモジュールFPC30は、上記とは逆の動きをする。つまり、中間領域33は、レンズユニット20のハウジング22の外周面22bに沿ってレンズユニット20に対して上方に移動(スライド)する。また、非固定部31bは、ハウジング22の底面22aに近づく。別の見方をすると、ハウジング22の底面22aと非固定部31bとが成す角度θ(図9)が変化(減少)する。そして、レンズユニット20が待機位置に到達すると、ハウジング22の底面22aと非固定部31bとは平行又は略平行になる。つまり、角度θ(図9)が0度または略0度になる。
【0063】
なお、ハウジング22の底面22aに固定されている第1固定部31aは、レンズユニット20と一体的に移動する。よって、レンズユニット20を含むレンズモジュール25が光軸方向に移動しても、ハウジング22の底面22aと第1固定部31aとが成す角度は変化しない。つまり、ハウジング22の底面22aと第1固定部31aとは、常に平行または略平行に保たれる。
【0064】
既述のとおり、カメラモジュールFPC30の共通領域34は、ハウジング22の外周面22bに固定されている。よって、レンズユニット20を含むレンズモジュール25が光軸方向に移動しても、レンズユニット20と共通領域34との位置関係は変化しない。
【0065】
そこで、本実施形態では、共通領域34に磁気センサが搭載されている。より特定的には、図6に示されるように、共通領域34にホールセンサ38が搭載されている。一方、図3に示されるように、ベースプレート11には、磁石18が設けられている。これらホールセンサ38及び磁石18は、レンズユニット20の光軸方向の位置を検出する位置検出部を構成している。
【0066】
具体的には、カメラモジュールFPC30の共通領域34に搭載されているホールセンサ38は、レンズユニット20と一緒に光軸方向に移動する。別の見方をすると、レンズユニット20の移動に伴ってホールセンサ38と磁石18との距離が変化する。すると、ホールセンサ38から出力される信号(電圧)が変化する。よって、ホールセンサ38から出力される信号に基づいて、レンズユニット20の光軸方向の位置や移動量などを検出することができる。
【0067】
位置検出部の検出結果は、レンズユニット20の位置監視や、フィードバック制御によるレンズユニット20の位置調整などに利用することができる。
【0068】
なお、レンズユニット20の移動ストロークに応じて、ホールセンサ38や磁石18を増設してもよい。もっとも、位置検出部を構成するセンサは、ホールセンサ38に限られない。例えば、MRセンサやフォトインタラプタを用いて位置検出部を構成することもできる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係るレンズ駆動装置1では、カメラモジュールFPC30の一部がレンズユニット20の外面と保持部材40の内面との間に収納されている。別の見方をすると、レンズユニット20の外面と保持部材40の内面との間の隙間37がカメラモジュールFPC30の収納空間として活用されている。
【0070】
さらに、隙間37に収納されているカメラモジュールFPC30の一部がレンズユニット20に対して移動することによって、当該レンズユニット20の移動に伴うカメラモジュールFPC30の伸縮が吸収される。したがって、カメラモジュールFPC30の伸縮を吸収するための冗長部や折り曲げ部を設ける必要がない。
【0071】
なお、カメラモジュールFPC30上に設けられている配線パターンは、レンズ駆動部の駆動源であるボイスコイルモータ(VCM))を駆動するためのドライバICに接続されている。
【0072】
もっとも、カメラモジュールFPC30上に設けられている配線パターンの接続先は、上記ドライバICに限られない。例えば、AF用コイル,OIS用コイル,AF用位置検出センサ,OIS用位置検出センサに接続される配線パターンがカメラモジュールFPC30上に設けられる場合もある。また、グランド接続用の配線パターンや、ノイズ対策用の配線パターンがカメラモジュールFPC30上に設けられる場合もある。
【0073】
本実施形態に係るレンズ駆動装置1は、携帯型情報端末に搭載することができる。例えば、図11に示されるように、レンズ駆動装置1は、スマートフォン100に搭載することができる。この場合、撮像素子15を備えているレンズ駆動装置1は、カメラモジュールとして機能する。
【0074】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、2枚以上のフレキシブルプリント基板を組み合わせてカメラモジュールFPC30を構成してもよい。より特定的には、第1領域31,第2領域32及び中間領域33を1つずつ有する1枚のフレキシブルプリント基板と、第1領域31,第2領域32及び中間領域33を1つずつ有する他の1枚のフレキシブルプリント基板と、を組み合わせてカメラモジュールFPC30を構成してもよい。
【0075】
レンズユニット20を光軸方向に移動させる機構は、上記機構に限定されない。例えば、レンズユニット20を光軸方向に移動させる他の機構は、レンズユニット20を光軸方向一方側に付勢する付勢手段(例えば、スプリング)と、付勢手段の付勢に抗してレンズユニット20を光軸方向他方側に移動させる移動手段(例えば、カムやギヤ)と、を備える。
【符号の説明】
【0076】
1…レンズ駆動装置、10…固定部材、11…ベースプレート、12…カバー
13…リード、14…センサ基板、14a…フレキシブルプリント基板(撮像センサFPC)、15…撮像素子、16…モータ、17…歯車群、18…磁石、20…レンズユニット、21…レンズ、21a…光軸、22…ハウジング、22a…底面、22b…外周面、23…係合凸部、25…レンズモジュール、26…リード、30…フレキシブルプリント基板(カメラモジュールFPC)、31…第1領域、31a…第1固定部、31b…非固定部、32…第2領域、32a…第2固定部、33…中間領域、34…共通領域、35,36…スルーホール、37…隙間、38…ホールセンサ、40…保持部材、40b…内周面、41…天井部、41a…開口、42…係合凹部、43…カムピン、44…係合ピン、45…ねじボス、50…回転部材、51…カム溝、53…係合ピン、61…筒部、62…ギヤケース部、63,64…係合溝、71…リングプレート、72…カバーガラス、73…シール、80…フレキシブルプリント基板(アクチュエータFPC)、100…スマートフォン、θ…角度
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