(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043822
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】注意喚起システム及び注意喚起方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149023
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 雄大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正行
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】時間的に変化する自車両と先行車との衝突リスクの大きさを、運転者の主観との整合性が高い態様で、自車両の運転者に伝達する。
【解決手段】注意喚起システムは、自車両と先行車との間の車間距離を自車両の車速で除算した値である車間時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTHW取得部と、車間距離を自車両と先行車との間の相対速度で除算した値である衝突余裕時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTTC取得部と、車間時間と衝突余裕時間とに基づいて、先行車への接近を報知する接近警報を自車両の乗員に対して出力する報知部と、を備え、報知部は、接近警報の顕著性の程度である顕著性レベルを車間時間及び衝突余裕時間に応じて決定して、決定した顕著性レベルの接近警報を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と先行車との間の車間距離を自車両の車速で除算した値である車間時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTHW取得部と、
前記車間距離を自車両と前記先行車との間の相対速度で除算した値である衝突余裕時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTTC取得部と、
前記車間時間と前記衝突余裕時間とに基づいて、先行車への接近を報知する接近警報を自車両の乗員に対して出力する報知部と、
を備え、
前記報知部は、前記接近警報の顕著性の程度である顕著性レベルを前記車間時間及び前記衝突余裕時間に応じて決定して、前記決定した顕著性レベルの前記接近警報を出力する、
注意喚起システム。
【請求項2】
前記報知部は、
前記車間時間が第1閾値以下となったときに、前記顕著性レベルを、前記車間時間の減少につれて単調増加する第1レベルの大きさに設定し、
前記車間時間が第1閾値以下であって且つ前記衝突余裕時間が第2閾値以下となったときに、前記衝突余裕時間の減少につれて単調増加する第2レベルを前記第1レベルに加算した第3レベルの大きさに設定する、
請求項1に記載の注意喚起システム。
【請求項3】
前記報知部は、
前記車間時間の逆数に対し単調増加する前記第1レベルを算出し、
前記衝突余裕時間の逆数に対し単調増加する前記第2レベルを算出する、
請求項2に記載の注意喚起システム。
【請求項4】
前記報知部は、前記第2レベルを、前記衝突余裕時間が第2閾値以下となったときの前記車間時間の値が小さいほど大きな値に設定する、
請求項2に記載の注意喚起システム。
【請求項5】
前記報知部は、前記第2レベルを、自車両が加速中であるときは、自車両が加速中でないときに比べて小さな値に設定する、
請求項2ないし4のいずれか一項に記載の注意喚起システム。
【請求項6】
注意喚起システムのコンピュータが実行する注意喚起方法であって、
自車両と先行車との間の車間距離を自車両の車速で除算した値である車間時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTHW取得ステップと、
前記車間距離を自車両と前記先行車との間の相対速度で除算した値である衝突余裕時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTTC取得ステップと、
前記車間時間と前記衝突余裕時間とに基づいて、先行車への接近を報知する接近警報を自車両の乗員に対して出力する報知ステップと、
を有し、
前記報知ステップでは、前記接近警報の顕著性の程度である顕著性レベルを前記車間時間及び前記衝突余裕時間に応じて決定して、前記決定した顕著性レベルの前記接近警報を出力する、
注意喚起方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の注意を喚起する注意喚起システム及び注意喚起方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて予防安全技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
特許文献1には、自車両の前後に先行車と後続車とが走行している場合に、自車両と先行車との間の車間時間THWf及び衝突余裕時間TTCfから算出される追突リスクRfと、自車両と後続車との間の車間時間THWr及び衝突余裕時間TTCrから算出される後続車との追突リスクRfと、に基づいて自車両のブレーキ制御等を行うことが記載されている。
【0004】
特許文献2には、先行車との衝突余裕時間TTCが所定の閾値を下回ったときに自動制動を開始すること、および、先行車との相対速度に応じて上記閾値を変更することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-262629号公報
【特許文献2】特開2005-10893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、予防安全技術においては、運転者の受容性及び納得性の観点から、時間的に変化し得る自車両と先行車との接触リスクの大きさを、運転者が先行車の挙動から感覚的に把握するのと同様な態様で、自車両の運転者に伝達することが課題である。
本願は、上記課題の解決のため、時間的に変化する自車両と先行車との衝突リスクの大きさを、運転者の主観との整合性が高い態様で自車両の運転者に伝達することを目的としたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、自車両と先行車との間の車間距離を自車両の車速で除算した値である車間時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTHW取得部と、前記車間距離を自車両と前記先行車との間の相対速度で除算した値である衝突余裕時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTTC取得部と、前記車間時間と前記衝突余裕時間とに基づいて、先行車への接近を報知する接近警報を自車両の乗員に対して出力する報知部と、を備え、前記報知部は、前記接近警報の顕著性の程度である顕著性レベルを前記車間時間及び前記衝突余裕時間に応じて決定して、前記決定した顕著性レベルの前記接近警報を出力する、注意喚起システムである。
本発明の他の態様によると、前記報知部は、前記車間時間が第1閾値以下となったときに、前記顕著性レベルを、前記車間時間の減少につれて単調増加する第1レベルの大きさに設定し、前記車間時間が第1閾値以下であって且つ前記衝突余裕時間が第2閾値以下となったときに、前記衝突余裕時間の減少につれて単調増加する第2レベルを前記第1レベルに加算した第3レベルの大きさに設定する。
本発明の他の態様によると、前記報知部は、前記車間時間の逆数に対し単調増加する前記第1レベルを算出し、前記衝突余裕時間の逆数に対し単調増加する前記第2レベルを算出する。
本発明の他の態様によると、前記報知部は、前記第2レベルを、前記衝突余裕時間が第2閾値以下となったときの前記車間時間の値が小さいほど大きな値に設定する。
本発明の他の態様によると、前記報知部は、前記第2レベルを、自車両が加速中であるときは、自車両が加速中でないときに比べて小さな値に設定する。
本発明の他の態様は、注意喚起システムのコンピュータが実行する注意喚起方法であって、自車両と先行車との間の車間距離を自車両の車速で除算した値である車間時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTHW取得ステップと、前記車間距離を自車両と前記先行車との間の相対速度で除算した値である衝突余裕時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTTC取得ステップと、前記車間時間と前記衝突余裕時間とに基づいて、先行車への接近を報知する接近警報を自車両の乗員に対して出力する報知ステップと、を有し、前記報知ステップでは、前記接近警報の顕著性の程度である顕著性レベルを前記車間時間及び前記衝突余裕時間に応じて決定して、前記決定した顕著性レベルの前記接近警報を出力する、注意喚起方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、時間的に変化する自車両と先行車との衝突リスクの大きさを、運転者の主観との整合性が高い態様で、自車両の運転者に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る注意喚起システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、自車両が道路走行において遭遇するシーンの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すシーンにおける、顕著性レベルの時間推移の例について説明するための図である。
【
図4】
図4は、自車両が加速している場合と加速していない場合の顕著性レベルの時間推移の違いを示す図である。
【
図5】
図5は、注意喚起システムが実行する注意喚起方法の処理の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る注意喚起システム1の構成を示す図である。
注意喚起システム1は、自車両2に搭載されて、自車両2の先行車への接近を運転者に報知する接近警報を発出する。ここで、「自車両」とは、注意喚起システム1が搭載された車両であることを意味する。
【0011】
自車両2は、自車両2の車速を検知する車速センサ3と、自車両2の前方にある物体を検知する物体検知装置4と、自車両2の車室内に配されたHMI(Human Machine Interface)装置5と、を備える。物体検知装置4は、例えば、カメラ、レーダ、ライダー、及び又はソナーを含み得る。HMI装置5は、例えば、スピーカである。ただし、スピーカは一例であって、HMI装置5は、自車両2の運転者を含む乗員に接近警報を種々の態様で報知し得る任意の装置であり得る。HMI装置5は、スピーカのほか、例えば、自車両2の運転席に設けられて当該運転席のシートベルトの張力(又は締め付け力)を変化させることのできる電動シートベルトや、自車両2のステアリングハンドルに設けられて、当該ステアリングハンドルに種々の強度の振動を与えることのできる振動デバイス、あるいは表示装置であり得る。
【0012】
注意喚起システム1は、プロセッサ10とメモリ11と、有する。メモリ11は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。プロセッサ10は、例えば、CPU等を備えるコンピュータである。プロセッサ10は、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有する構成であってもよい。そして、プロセッサ10は、機能要素又は機能ユニットとして、THW取得部13と、TTC取得部14と、報知部15と、を備える。
【0013】
プロセッサ10が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータであるプロセッサ10が、メモリ11に保存されたプログラム12を実行することにより実現される。なお、プログラム12は、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、プロセッサ10が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0014】
THW取得部13は、自車両2と、自車両2の前方を走行する先行車と、の間のTHW(車間時間、Time Headway)を、所定の時間間隔で繰り返し取得する。例えば、THW取得部13は、所定の時間間隔で、先行車と自車両2との間の現在の車間距離を物体検知装置4から取得し、自車両2の現在の車速を車速センサ3から取得する。そしてTHW取得部13は、現在の車間距離を自車両2の現在の車速で除算して得られる値を、現在のTHWとして取得する。
【0015】
TTC取得部14は、先行車に対する自車両2の現在のTTC(衝突余裕時間、Time to Collision)を、所定の時間間隔で繰り返し取得する。例えば、TTC取得部14は、所定の時間間隔で、先行車と自車両2との間の現在の車間距離を物体検知装置4から取得する。そして、TTC取得部14は、所定の時間間隔で取得した上記車間距離の時間変化から、先行車と自車両2との間の現在の相対速度を算出し、現在の上記車間距離を上記算出した現在の相対速度で除算して得られる値を、現在のTTCとして取得する。
【0016】
報知部15は、THW取得部13およびTTC取得部14が繰り返し取得するTHWおよびTTCに基づき、自車両2と先行車との接近を報知する接近警報を、HMI装置5により自車両2の乗員に対して出力する。
【0017】
本実施形態では、特に、報知部15は、上記接近警報の顕著性の程度である顕著性レベルを、THW及びTTCに応じて決定し、上記決定した顕著性レベルの接近警報を、HMI装置により出力する。
【0018】
これにより、注意喚起システム1では、先行車との近さ感を示すTHWと、先行車への近づき感を示すTTCと、に基づいて決定される顕著性レベルで接近警報を出力するので、時間的に変化する自車両と先行車との衝突リスクの大きさを、運転者の主観との整合性が高い態様で、自車両の運転者に伝達することができる。
【0019】
ここで、接近警報の顕著性の程度とは、接近警報が人の注意を引き付ける又は誘引する強さの度合いをいう。
【0020】
例えば、顕著性レベルは、接近警報が音又は振動として出力される場合には、当該音又は振動の強度、周波数、周波数の変化周期、繰り返し周期により定まる。音又は振動で与えられる接近警報は、上記強度が大きいほど、周波数が高いほど、周波数の変化周期が短いほど、上記繰り返し周期が短いほど、接近警報の顕著性レベルは高い。
【0021】
あるいは、顕著性レベルは、接近警報が電動シートベルトの張力として出力される場合には、上記張力の大きさより定まり、張力が大きいほど、接近警報の顕著性レベルは高い。
【0022】
また、あるいは、顕著性レベルは、接近警報が、表示装置に表示される文字や図形等のグラフィック要素として出力される場合には、表示されるグラフィック要素の輝度、輝度変化の周期、点滅の周期、又は色合いにより定まり得る。例えば、上記輝度が高いほど、輝度変化又は点滅の周期が短いほど、又は色合いが寒色から暖色へ近づくほど、接近警報の顕著性レベルは高い。
【0023】
具体的には、報知部15は、THWが第1閾値T1以下となったときに、顕著性レベルを、THWの減少につれて単調増加する第1レベルの大きさに設定する。そして、THWが第1閾値T1以下であって且つTTCが第2閾値T2以下となったときに、報知部15は、TTCの減少につれて単調増加する第2レベルを前記第1レベルに加算した第3レベルの大きさに設定する。
【0024】
これにより、TTCが第2閾値T2以下となるまでは、THWのみに応じた顕著性レベルで接近警報が出力されるので、先行車と自車両2との接触リスクが比較的低い期間に、過度な接近警報を与えて運転者を煩わせてしまうのを防止することができる。また、一方、TTCが第2閾値T2以下となって接触リスクが切迫した状態となる期間には、TTCに応じたレベルが追加された顕著性レベルで接近警報が出力されるので、運転者に接触リスクの切迫感を伝えることができる。
【0025】
例えば、報知部15は、車間時間の逆数に対し単調増加するように第1レベルを算出し、前記衝突余裕時間の逆数に対し単調増加するように第2レベルを算出する。
これにより、顕著性レベルは、THW及びTTCの減少に伴ってリニアに上昇するのではなく、それらが減少するほどその上昇率が上がるので、先行車の接近に伴う運転者の主観又は感覚に、より近い態様で変化し得る。したがって、接近警報に対する運転者の受容性又は納得性をより高めることができる。
【0026】
より具体的には、報知部15は、第1レベルの値Lf、第2レベルの値Ls、および第3レベルの値Ltを、次式で算出する。
Lf=k1/THW (1)
Ls=k2×k3×(1/TTC-1/T2) (2)
Lt=Lf+Ls (3)
上式において、k1、k2、k3は、それぞれ比例係数である。
【0027】
そして、報知部15は、顕著性レベルSLを、次式のように設定する。
TTH≦T1、且つ、TTC>T2のとき:SL=Lf であり、
TTH≦T1、且つ、TTC≦T2のとき:SL=Lt (4)
【0028】
顕著性レベルの設定に際し、報知部15は、第2レベルLsを、TTCが第2閾値T2以下となったときのTHWの値が小さいほど大きな値に設定してもよい。これにより、TTCが第2閾値T2以下になった時点での車間距離が小さいほど、その後の接近警報の顕著性レベルをより高めて、運転者に接触リスクの切迫感を伝えることができる。
【0029】
例えば、報知部15は、式(2)における比例係数k2を、次式で算出する。
k2=1-T3/C1 (5)
ここで、T3は、TTCが第2閾値T2以下となったときのTHWの値であり、C1は、係数である。
【0030】
報知部15は、また、第2レベルLsを、自車両2が加速中であるときは、自車両が加速中でないときに比べて小さな値に設定してもよい。これにより、例えば自車両2が先行車を追い越そうとする場合のように、運転者が意図的に自車両2を加速している場合には、加速していない場合に比べて接近警報の顕著性レベルが下がるので、過度な接近警報により運転者を煩わせてしまうのを防止することができる。
【0031】
例えば、報知部15は、式(2)における比例係数k3を、次式のように決定する。
自車両2が加速していないとき: k3=1 であって、
自車両2が加速しているとき : k3<1(例えば、k3=0.8) (6)
【0032】
報知部15は、例えば、車速センサ3から所定の時間間隔で取得される車速の値から算出される加速度の値が、予め定められた所定の閾値以上であるときに、自車両2が加速中であると判断することができる。これに代えて、報知部15は、自車両2が備えるアクセルペダルセンサ(不図示)からの情報に基づき、アクセルペダルの踏み込み量の変化量が予め定められた閾値以上であるときに、自車両2が加速中であると判断することができる。
【0033】
次に、
図2および
図3を用いて、報知部15が出力する接近警報の顕著性レベルの時間推移の一例について説明する。
図2は、自車両2が道路走行において遭遇するシーンの一例を示す図である。
図3は、
図2に示すシーンにおける、顕著性レベルの時間推移の例について説明するための図である。
【0034】
図2には、道路25を走行する自車両2および先行車20の、時刻t0、t1、t2、t3における位置を示す各図が、最上段から最下段まで並べて示されている。
図3において、横軸は時間、縦軸は顕著性レベルを示し、グラフ30、31、32は、顕著性レベルの時間変化を示している。
【0035】
図2に示すシーンでは、時刻t0において、自車両2は車速V10で、先行車20は車速V20で、共に定速走行している(
図2の最上段)。ここで、先行車20の車速V20は、自車両2の車速V10より僅かに遅く(V20<V10)、先行車20と自車両2とのTHWは徐々に減少していく。
【0036】
そして、先行車20と自車両2とのTHWは、時刻t1において第1閾値T1を横切っり(
図2の2段目)、時間経過と共に更に減少していく。
その後、自車両2は定速走行のまま、先行車20が車速V20から減速を開始し、先行車20と自車両2と間のTTCは、時刻t2において第2閾値T2を横切り(
図2の3段目)、更に減少していく。
その後、先行車20の車速がV21(<V20)に達した後、時刻t3において、自車両2は、車速V10から減速を開始し、TTCが増加に転じる(
図2の最下段)。
【0037】
図3に示すグラフ30、31、32は、例えば自車両2の車速V10と先行車20の車速V20との速度差の大きさに依存して、時刻t2にTTCが第2閾値T2を横切る際のTHWの値が異なる3つのケースについての、それぞれの顕著性レベルの時間変化を示している。
【0038】
TTCが第2閾値T2を横切る際のTHWの値は、
図3に示すグラフ32において最も大きく、グラフ30において最も小さく、グラフ31では、それらの中間の値となっている。ここで、時刻t1からt2の期間における顕著性レベルは、THWの逆数に比例する式(1)の第1レベルLfに設定されるため、時刻t2においてTHWが最も大きいグラフ32は、他のグラフ30、31に比べて最も低い顕著性レベルを示すこととなる。なお、グラフ30、31、32は、顕著性レベルの変化を模式的に示したものであり、実際の顕著性レベルは、曲線的に変化し得る。
【0039】
上述したように、報知部15は、式(5)に示す比例係数k2により、式(2)で示す第2レベルLsを、TTCが第2閾値T2以下となったときのTHWの値が小さいほど大きな値に設定するので、時刻t2からt3の期間における傾きは、グラフ30が最も大きく、グラフ32が最も小さくなる。
【0040】
なお、自車両2は、時刻t3において減速を開始するので、グラフ30、31、32は、それぞれ、顕著性レベルが時刻t3から減少に転じることとなる(不図示)。
【0041】
時刻t2においてTTCが第2閾値T2を横切る要因は、上述した
図2に示すシーンでは先行車20における減速であるものとしたが、自車両2の加速であってもよい。
図4は、TTCが第2閾値T2を横切る時刻t2において自車両2が加速している場合と加速していない場合の、顕著性レベルの時間推移の違いを示した図である。
図4の縦軸および横軸は、
図3と同じである。
【0042】
図4に示すグラフ30は、
図3に示すグラフ30と同じであり、時刻t2において自車両2が定速走行である
図2のシーンにおける顕著性レベルの時間推移を示している。これに対し、
図4に示すグラフ40は、時刻t2において自車両2が加速しているケースにおける顕著性レベルの時間推移を示している。
【0043】
上述したように、報知部15は、式(6)に示す比例係数k3により、式(2)で示す第2レベルLsを、自車両2が加速中であるときは、自車両が加速中でないときに比べて小さな値に設定するので、時刻t2からt3の期間におけるグラフ40の傾きは、グラフ30よりも小さくなる。
【0044】
次に、注意喚起システム1における動作の手順について説明する。
図5は、注意喚起システム1のコンピュータであるプロセッサ10が実行する注意喚起方法の処理の手順を示すフロー図である。本処理は、所定の時間間隔で、繰り返し実行される。
【0045】
処理を開始すると、報知部15は、自車両2の前方にある物体を検知する物体検知装置4からの情報に基づいて、自車両2の前方に先行車がいるか否かを判断する(S100)。そして、自車両2の前方に先行車がいないときは(S100、NO)、報知部15は、本処理を終了する。
【0046】
一方、自車両2の前方に先行車がいるときは(S100、YES)、THW取得部13は、自車両の先行車とのTHWを取得し(S102)、TTC取得部14は、先行車とのTTCを取得する(S104)。上述したように、
図5に示す本処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行されるので、ステップS102およびS104により、THWおよびTTCは上記所定の時間間隔で繰り返し取得される。ここで、ステップS102およびS104は、それぞれ、本開示におけるTHW取得ステップおよびTTC取得ステップに相当する。また、後述するステップS106からステップS126までの処理は、本開示における報知ステップに相当する。
【0047】
次に、報知部15は、ステップS102で取得されたTHWが第1閾値T1以下であるか否かを判断する(S106)。そして、THWが第1閾値T1以下でないときは(S106、NO)、報知部15は、本処理を終了する。
【0048】
一方、THWが第1閾値T1以下であるときは(S106、YES)、報知部15は、上述の式(1)により第1レベルLfを算出する(S108)。
【0049】
続いて、報知部15は、ステップS104で取得されたTTCが第2閾値T2以下であるか否かを判断する(S110)。そして、TTCが第2閾値T2より大きいときは(S108、NO)、報知部15は、ステップS108で算出したLfを顕著性レベルSLとして設定し(S114)、設定した顕著性レベルSLで接近警報を出力して(S126)、本処理を終了する。
【0050】
一方、TTCが第2閾値T2以下であるときは(S110、YES)、報知部15は、上述した式(5)により、第2レベルLsの算出に用いる係数k2を算出する(S112)。
【0051】
次に、報知部15は、自車両2が加速中か否かを判断する(S116)。そして、報知部15は、上述の式(6)に従い、自車両2が加速中でないときは(S116、NO)、第2レベルLsに算出に用いる係数k3を1に設定し(S118)、自車両2が加速中であるときは(S116、YES)、係数k3を1より小さな値、例えば0.8に設定する(S120)。
【0052】
続いて、報知部15は、上述した式(2)および(3)により第2レベルLsおよび第3レベルLtを算出する(S122)。そして、算出した第3レベルLtを顕著性レベルSLに設定し(S124)、設定した顕著性レベルSLで接近警報を出力したのち(S126)本処理を終了する。
【0053】
なお、本発明は上記の実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0054】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上述した実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0055】
(構成1)自車両と先行車との間の車間距離を自車両の車速で除算した値である車間時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTHW取得部と、前記車間距離を自車両と前記先行車との間の相対速度で除算した値である衝突余裕時間を所定の時間間隔で繰り返し取得するTTC取得部と、前記車間時間と前記衝突余裕時間とに基づいて、先行車への接近を報知する接近警報を自車両の乗員に対して出力する報知部と、を備え、前記報知部は、前記接近警報の顕著性の程度である顕著性レベルを前記車間時間及び前記衝突余裕時間に応じて決定して、前記決定した顕著性レベルの前記接近警報を出力する、注意喚起システム。
構成1の注意喚起システムによれば、先行車との近さ感を示す車間時間と、先行車への近づき感を示す衝突余裕時間と、に基づく顕著性レベルで接近警報を出力するので、時間的に変化する自車両と先行車との衝突リスクの大きさを、運転者の主観との整合性が高い態様で、自車両の運転者に伝達することができる。
【0056】
(構成2)前記報知部は、前記車間時間が第1閾値以下となったときに、前記顕著性レベルを、前記車間時間の減少につれて単調増加する第1レベルの大きさに設定し、前記車間時間が第1閾値以下であって且つ前記衝突余裕時間が第2閾値以下となったときに、前記衝突余裕時間の減少につれて単調増加する第2レベルを前記第1レベルに加算した第3レベルの大きさに設定する、構成1に記載の注意喚起システム。
構成2の注意喚起システムによれば、TTCが第2閾値T2以下となるまでは、THWのみに応じた顕著性レベルで接近警報が出力されるので、先行車と自車両2との接触リスクが比較的低い期間に、過度な接近警報を与えて運転者を煩わせてしまうのを防止することができる。
【0057】
(構成3)前記報知部は、前記車間時間の逆数に対し単調増加する前記第1レベルを算出し、前記衝突余裕時間の逆数に対し単調増加する前記第2レベルを算出する、構成2に記載の注意喚起システム。
構成3の注意喚起システムによれば、顕著性レベルは、THW及びTTCの減少に伴ってリニアに上昇するのではなく、それらが減少するほどその上昇率が上がるので、先行車の接近に伴う運転者の主観又は感覚に、より近い態様で変化し得る。その結果、接近警報に対する運転者の受容性又は納得性をより高めることができる。
【0058】
(構成4)前記報知部は、前記第2レベルを、前記衝突余裕時間が第2閾値以下となったときの前記車間時間の値が小さいほど大きな値に設定する、構成2または3に記載の注意喚起システム。
構成4の注意監視システムによれば、TTCが第2閾値T2以下になった時点での車間距離が小さいほど、その後の接近警報の顕著性レベルをより高めて、運転者に接触リスクの切迫感を伝えることができる。
【0059】
(構成5)前記報知部は、前記第2レベルを、自車両が加速中であるときは、自車両が加速中でないときに比べて小さな値に設定する、構成2ないし4のいずれかに記載の注意喚起システム。
構成5の注意喚起システムによれば、例えば自車両が先行車を追い越そうとする場合のように、運転者が意図的に自車両を加速している場合には、加速していない場合に比べて接近警報の顕著性レベルが下がるので、過度な接近警報により運転者を煩わせてしまうのを防止することができる。
【0060】
(構成6)注意喚起システムのコンピュータが実行する注意喚起方法であって、自車両と先行車との間の車間距離を自車両の車速で除算した値である車間時間(THW)を所定の時間間隔で繰り返し取得するTHW取得ステップと、前記車間距離を自車両と前記先行車との間の相対速度で除算した値である衝突余裕時間(TTC)を所定の時間間隔で繰り返し取得するTTC取得ステップと、前記車間時間と前記衝突余裕時間とに基づいて、先行車への接近を報知する接近警報を自車両の乗員に対して出力する報知ステップと、を有し、前記報知ステップでは、前記接近警報の顕著性の程度である顕著性レベルを前記車間時間及び前記衝突余裕時間に応じて決定して、前記決定した顕著性レベルの前記接近警報を出力する、注意喚起方法。
構成5の注意喚起方法によれば、先行車との近さ感を示す車間時間と、先行車への近づき感を示す衝突余裕時間と、に基づく顕著性レベルで接近警報を出力するので、時間的に変化する自車両と先行車との衝突リスクの大きさを、運転者の主観との整合性が高い態様で、自車両の運転者に伝達することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…注意喚起システム、2…自車両、3…車速センサ、4…物体検知装置、5…HMI装置、10…プロセッサ、11…メモリ、12…プログラム、13…THW取得部、14…TTC取得部、15…報知部、20…先行車、25…道路25。