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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043824
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】角度検出方法及び角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20240326BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01D5/12 K
G01D5/20 110Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149025
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕史
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA01
2F077AA43
2F077CC02
2F077FF34
2F077PP26
2F077TT21
2F077TT82
(57)【要約】
【課題】回路構成及び信号線取り回しを複雑にすることなく、位相変調方式のレゾルバを用いた角度検出装置におけるレゾルバ/デジタル変換部の異常を判定する。
【解決手段】位相変調方式のレゾルバ10の回転角度θを検出する角度検出装置であって、基準信号を生成する基準信号生成部120と、レゾルバ10から出力されるレゾルバ信号を処理することにより、レゾルバ10の回転角度θに応じた検出角度φを生成すると共に、基準信号に対して回転角度θに相当する位相のずれを有する位相出力を生成する、レゾルバ/デジタル変換部110と、位相出力に応じた2相の励磁信号を生成し、励磁信号をレゾルバ10の励磁巻線に供給する励磁部130と、基準信号の位相とレゾルバ信号の位相とを比較し、位相差が閾値を超えた場合、レゾルバ/デジタル変換部110が異常であると判定する異常監視部140とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調方式のレゾルバ(10)の回転角度θを検出する角度検出方法であって、
基準信号生成部(120)により生成された基準信号に対して、前記レゾルバ(10)の回転角度θに相当する位相のずれを有する位相出力をレゾルバ/デジタル変換部(110)により生成する機能と、
前記位相出力に応じた2相の励磁信号を励磁部(130)により生成し、前記励磁信号を前記レゾルバ(10)の励磁巻線に供給する機能と、
前記レゾルバ(10)から出力されるレゾルバ信号をレゾルバ/デジタル変換部(110)において処理し、前記レゾルバ(10)の回転角度θに応じた検出角度φを生成する機能と、
前記基準信号の位相と前記レゾルバ信号の位相とを、異常監視部(140)により比較し、位相差が閾値を超えた場合、前記レゾルバ/デジタル変換部(110)が異常であると判定する機能と、
を有する角度検出方法。
【請求項2】
第1相のレゾルバ信号と第2相のレゾルバ信号とを前記レゾルバ(10)から出力し、
前記基準信号と前記第1相のレゾルバ信号との位相を前記異常監視部(140)により比較し、
前記基準信号に対して+90°位相をずらした第2相の基準信号と前記第2相のレゾルバ信号との位相を前記異常監視部(140)により比較する、
請求項1に記載の角度検出方法。
【請求項3】
前記基準信号のデジタルデータを前記基準信号生成部(120)により生成し、
前記レゾルバ信号をコンパレータ(143)により2値データに変換し、
前記基準信号を構成するデジタルデータの最上位ビットまたは上位2ビットより得られた位相データの反転データと前記2値データとの排他的論理和を排他的論理和演算回路(144)により求め、
前記排他的論理和演算回路(144)の2つの入力が不一致の期間が閾値より大きい場合、判定部(145)により異常と判定して異常判定信号を生成する、
請求項1に記載の角度検出方法。
【請求項4】
位相変調方式のレゾルバ(10)の回転角度θを検出する角度検出装置であって、
基準信号を生成する基準信号生成部(120)と、
前記レゾルバ(10)から出力されるレゾルバ信号を処理することにより、前記レゾルバ(10)の回転角度θに応じた検出角度φを生成すると共に、前記基準信号に対して前記回転角度θに相当する位相のずれを有する位相出力を生成する、レゾルバ/デジタル変換部(110)と、
前記位相出力に応じた2相の励磁信号を生成し、前記励磁信号を前記レゾルバ(10)の励磁巻線に供給する励磁部(130)と、
前記基準信号の位相と前記レゾルバ信号の位相とを比較し、位相差が閾値を超えた場合、前記レゾルバ/デジタル変換部(110)が異常であると判定する異常監視部(140)と、
を有する角度検出装置。
【請求項5】
前記レゾルバ(10)は、第1相のレゾルバ信号と第2相のレゾルバ信号とを出力し、
前記異常監視部(140)は、前記基準信号と前記第1相のレゾルバ信号との位相とを比較し、前記基準信号に対して+90°位相をずらした第2相の基準信号と前記第2相のレゾルバ信号との位相とを比較する、
請求項4に記載の角度検出装置。
【請求項6】
前記基準信号生成部(120)は、前記基準信号のデジタルデータを生成し、
前記異常監視部(140)は、
前記レゾルバ信号を2値データに変換するコンパレータ(143)と、
前記基準信号を構成するデジタルデータの最上位ビットまたは上位2ビットより得られた位相データの反転データと前記2値データとの排他的論理和を求める排他的論理和演算回路(144)と、
前記排他的論理和演算回路(144)の2つの入力が不一致の期間が閾値より大きい場合、異常と判定して異常判定信号を生成する判定部(145)とを有する、
請求項4に記載の角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度検出方法及び角度検出装置に関し、特に、2相励磁/2相出力または2相励磁/1相出力であって位相変調方式のレゾルバを用いた角度検出装置におけるレゾルバ/デジタル変換部の異常を判定するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
レゾルバを用いた角度検出装置において、レゾルバ/デジタル変換部の異常判定を行うことが提案されている。この種の角度検出方法及び角度検出装置としては、例えば、特許文献1に示される構成を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3216491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の特許文献1記載の角度検出装置は、レゾルバ/デジタル変換部においてレゾルバ信号に基づいて角度情報を求めるのと並行して、制御CPUにおいてもレゾルバ信号に基づいて角度情報を求める。制御CPUは、レゾルバ/デジタル変換部により求められた角度情報と、自ら求めた角度情報とを比較して、両者が一致していれば、角度検出装置が正常であると判定する。
【0005】
特許文献1記載の角度検出装置の場合、制御CPUにアナログのレゾルバ信号を入力するため、A/D変換部などのインタフェースを新たに設ける必要があり、回路構成及び信号線取り回しを複雑にする問題があった。
【0006】
このため、回路構成及び信号線取り回しを複雑にすることなく、位相変調方式のレゾルバを用いた角度検出装置におけるレゾルバ/デジタル変換部の異常を判定することが望まれていた。
本発明は、以上のような課題を解決するために、回路構成及び信号線取り回しを複雑にすることなく、位相変調方式のレゾルバを用いた角度検出装置におけるレゾルバ/デジタル変換部の異常を判定することが可能な角度検出方法及び角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る角度検出方法は、位相変調方式のレゾルバの回転角度を検出する角度検出方法であって、基準信号生成部により生成された基準信号に対して、レゾルバの回転角度に相当する位相のずれを有する位相出力をレゾルバ/デジタル変換部により生成する機能と、位相出力に応じた2相の励磁信号を励磁部により生成し、励磁信号をレゾルバの励磁巻線に供給する機能と、レゾルバから出力されるレゾルバ信号をレゾルバ/デジタル変換部において処理し、レゾルバの回転角度に応じた検出角度を生成する機能と、基準信号の位相とレゾルバ信号の位相とを、異常監視部により比較し、位相差が閾値を超えた場合、レゾルバ/デジタル変換部が異常であると判定する機能と、を有する。
【0008】
この発明に係る角度検出装置は、位相変調方式のレゾルバの回転角度を検出する角度検出装置であって、基準信号を生成する基準信号生成部と、レゾルバから出力されるレゾルバ信号を処理することにより、レゾルバの回転角度に応じた検出角度φを生成すると共に、基準信号に対して回転角度に相当する位相のずれを有する位相出力を生成する、レゾルバ/デジタル変換部と、位相出力に応じた2相の励磁信号を生成し、励磁信号をレゾルバの励磁巻線に供給する励磁部と、基準信号の位相とレゾルバ信号の位相とを比較し、位相差が閾値を超えた場合、レゾルバ/デジタル変換部が異常であると判定する異常監視部と、を有する。
【0009】
この発明において、第1相のレゾルバ信号と第2相のレゾルバ信号とをレゾルバから出力し、基準信号と第1相のレゾルバ信号との位相を異常監視部により比較し、基準信号に対して+90°位相をずらした第2相の基準信号と第2相のレゾルバ信号との位相を異常監視部により比較する、ことを特徴とする。
【0010】
この発明において、基準信号のデジタルデータを基準信号生成部により生成し、レゾルバ信号をコンパレータにより2値データに変換し、基準信号を構成するデジタルデータの最上位ビットまたは上位2ビットより得られた位相データの反転データと2値データとの排他的論理和を排他的論理和演算回路により求め、排他的論理和演算回路の2つの入力が不一致の期間が閾値より大きい場合、判定部により異常と判定して異常判定信号を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、回路構成及び信号線取り回しを複雑にすることなく、位相変調方式のレゾルバを用いた角度検出装置におけるレゾルバ/デジタル変換部の異常を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1の角度検出装置の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態2の角度検出装置の構成を示す構成図である。
図3】実施の形態2の角度検出装置の主要部の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の角度検出方法と角度検出装置の実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1における角度検出装置100の基本的な構成及び処理について、図1を参照して説明する。
図1は、実施の形態1の角度検出装置100の構成を示す構成図である。なお、角度検出装置100は、角度検出方法の各処理機能を実行する装置でもある。
【0015】
[角度検出装置100の構成と各部の処理]
図1において、角度検出方法を実行する角度検出装置100は、主に、レゾルバ/デジタル変換部110と、基準信号生成部120と、励磁部130と、異常監視部140とを有している。図1において、角度検出装置100には、位相変調方式のレゾルバとして2相励磁/2相出力のレゾルバ10が接続されている。
【0016】
まず、レゾルバ10と、レゾルバ/デジタル変換部110と、基準信号生成部120と、励磁部130とにおける、レゾルバ10の回転角度θに応じた検出角度φの生成について、信号生成と角度検出とに分けて説明する。その後、異常監視部140における異常監視について説明する。
【0017】
[信号生成]
基準信号生成部120は、所定の基準周波数ωに対応して時間基準を表す基準信号ωtと、基準信号ωtの正弦を表す基準正弦信号sinωtと、基準信号ωtの余弦を表す基準余弦信号cosωtとを生成する。基準信号生成部120は、基準信号ωtをレゾルバ/デジタル変換部110と異常監視部140とに供給し、基準正弦信号sinωtと基準余弦信号cosωtとをレゾルバ/デジタル変換部110に供給する。
【0018】
レゾルバ/デジタル変換部110は、基準信号生成部120により生成された基準信号ωtに対して、レゾルバ10の回転角度θに相当する検出角度φを有する位相出力ωt+φを生成し、生成した位相出力ωt+φを励磁部130に供給する。なお、レゾルバ/デジタル変換部110については、後に詳しく説明する。
【0019】
励磁部130は、レゾルバ/デジタル変換部110から供給される位相出力ωt+φに基づいて、直交する2相の励磁信号として、第1相の励磁信号sin(ωt+φ)と、第2相の励磁信号cos(ωt+φ)とを生成する。励磁部130は、生成した第1相の励磁信号sin(ωt+φ)と第2相の励磁信号cos(ωt+φ)とを、レゾルバ10の励磁巻線に供給する。
以上のようにして、励磁部130は基準信号ωtと検出角度φとに基づいて励磁信号を生成する。
【0020】
[角度検出]
2相励磁2相出力かつ位相変調方式のレゾルバ10は、励磁部130から直交する2相の励磁信号(第1相の励磁信号sin(ωt+φ)と、第2相の励磁信号cos(ωt+φ))を供給されると、これら励磁信号により発生した磁束を検出巻線により検出し、回転角度θに応じた位相を持った2相の位相変調アナログ信号を、2相のレゾルバ信号として出力する。
2相のレゾルバ信号は、回転角度θに応じた位相を持っており、第1相のレゾルバ信号sin(ωt+φ-θ)と、第2相のレゾルバ信号cos(ωt+φ-θ)と表すことができる。
【0021】
レゾルバ/デジタル変換部110は、第1の乗算器111a、第2の乗算器111b、減算器112、A/D変換部113、制御則114、アキュムレータ115、および加算器116を備える。
第1の乗算器111aは、第1相のレゾルバ信号sin(ωt+φ-θ)と、基準余弦信号cosωtとを乗算し、第1中間信号sin(ωt+φ-θ)・cosωtを生成する。第1の乗算器111aは、生成した第1中間信号sin(ωt+φ-θ)・cosωtを減算器112の一方の入力に供給する。
第2の乗算器111bは、第2相のレゾルバ信号cos(ωt+φ-θ)と、基準正弦信号sinωtとを乗算し、第2中間信号cos(ωt+φ-θ)・sinωtを生成する。第2の乗算器111bは、生成した第2中間信号cos(ωt+φ-θ)・sinωtを減算器112の他方の入力に供給する。
減算器112は、第1中間信号sin(ωt+φ-θ)・cosωtと第2中間信号cos(ωt+φ-θ)・sinωtとの差分εを算出する。角度検出装置100は、負帰還制御において、差分εを制御偏差とし、この制御偏差が0となるか、または0に近づくように、検出角度φの値を決定する。減算器112は、差分εをA/D変換部113に供給する。
【0022】
A/D変換部113は、差分εをデジタル信号化し、デジタル化差分Dεを生成する。A/D変換部113は、生成したデジタル化差分Dεを制御則114に供給する。
制御則114は、デジタル化差分Dεに対して適用され、制御信号として角速度信号ωを生成する。制御則114は、生成した角速度信号ωをアキュムレータ115に供給する。なお、制御則114は、積分特性を有し、負帰還系の特性を改善するとともに安定性を確保するよう設計される。
【0023】
アキュムレータ115は、累積演算を行うものであり、入力された角速度信号ωを累算し、回転角度θを表す検出角度φを生成する。アキュムレータ115により生成された検出角度φは、レゾルバ10の回転角度θの検出結果として角度検出装置100から外部に供給されると共に、加算器116にも供給される。
加算器116は、検出角度φと、基準信号生成部120からの基準信号ωtとの和に相当する位相出力ωt+φを生成する。加算器116は、生成した位相出力ωt+φを励磁信号の基礎として励磁部130に供給する。
【0024】
以上のようにして、レゾルバ/デジタル変換部110は、レゾルバ10からのレゾルバ信号を処理し、レゾルバ10の回転角度θに応じた検出角度φを生成する。
【0025】
[異常監視]
異常監視部140は、移相部141、反転部142a及び142b、第1のコンパレータ143a、第2のコンパレータ143b、第1の排他的論理和演算回路144a、第2の排他的論理和演算回路144b、第1の判定部145a、第2の判定部145b、及び論理和演算回路146を備える。
なお、第1の排他的論理和演算回路144aと第2の排他的論理和演算回路144bとは、それ以降の論理を反転することにより、排他的論理和演算XORの代わりに否定排他的論理和演算XNORを実行するようにしてもよい。
【0026】
第1の排他的論理和演算回路144aの一方の入力には、基準信号生成部120からの基準信号ωtが反転部142aにより反転された反転データが供給される。
第2の排他的論理和演算回路144bの一方の入力には、第2相のレゾルバ信号の位相に合わせ、移相部141により+90°位相調整された第2相の基準信号ωt+90°が反転部142bにより反転された反転データが供給される。移相部141における位相調整は、例えば、基準信号ωtを構成するデジタルデータの上位2ビットの調整により実行される。
【0027】
第1のコンパレータ143aは、第1相のレゾルバ信号sin(ωt+φ-θ)を2値化して第1相レゾルバ信号2値データDR1を生成する。第1のコンパレータ143aは、生成した第1相レゾルバ信号2値データDR1を第1の排他的論理和演算回路144aの他方の入力に供給する。
第2のコンパレータ143bは、第2相のレゾルバ信号cos(ωt+φ-θ)を2値化して第2相レゾルバ信号2値データDR2を生成する。第2のコンパレータ143bは、生成した第1相レゾルバ信号2値データDR2を第2の排他的論理和演算回路144bの他方の入力に供給する。
【0028】
ここで、異常監視部140は、基準信号の位相とレゾルバ信号の位相とを比較する。
第1の排他的論理和演算回路144aは、一方の入力である基準信号ωtを構成するデジタルデータの最上位ビットの反転データと、他方の入力である第1相レゾルバ信号2値データDR1との排他的論理和演算による位相比較を行い、2つの入力が一致する期間でLレベルを出力し、2つの入力が不一致の期間でHレベルを出力する。
なお、上記の「最上位ビットの反転データ」は、上位2ビットより得られた位相データの反転データであってもよい。以下、「最上位ビットまたは上位2ビットより得られた位相データの反転データ」を単に「最上位ビットの反転データ」と言う。
第2の排他的論理和演算回路144bは、一方の入力である基準信号ωt+90°を構成するデジタルデータの最上位ビットの反転データと、他方の入力である第2相レゾルバ信号2値データDR2との排他的論理和演算による位相比較を行い、2つの入力が一致する期間でLレベルを出力し、2つの入力が不一致の期間でHレベルを出力する。
【0029】
この後、異常監視部140は、基準信号の位相とレゾルバ信号の位相との不一致の期間が閾値を超えているかを調べる。続いて、異常監視部140は、基準信号の位相とレゾルバ信号の位相との不一致の期間が閾値を超えていれば、レゾルバ/デジタル変換部110が異常であると判定する。
第1の判定部145aは、第1の排他的論理和演算回路144aの2つの入力の不一致の期間が閾値以下であれば正常であることを示すLレベルを出力し、不一致の期間が閾値より大きければ異常と判定してHレベルの異常判定信号を生成する。第1の判定部145aは、LレベルまたはHレベルの出力を論理和演算回路146の一方の入力に供給する。
第2の判定部145bは、第2の排他的論理和演算回路144bの2つの入力の不一致の期間が閾値以下であれば正常であることを示すLレベルを出力し、不一致の期間が閾値より大きければ異常と判定してHレベルの異常判定信号を生成する。第2の判定部145bは、LレベルまたはHレベルの出力を論理和演算回路146の他方の入力に供給する。
【0030】
この後、異常監視部140は、異常であるとの判定結果を予め定められた通知先に通知する。すなわち、論理和演算回路146は、第1の判定部145aの出力と第2の判定部145bの出力との論理和演算を行い、第1の判定部145aと第2の判定部145bとのいずれか一方からHレベルの異常判定信号が出力された場合、予め定められた通知先に異常判定信号Errを出力する。予め定められた通知先としては、上位の制御装置または表示部などが該当する。
【0031】
[異常監視の原理説明]
レゾルバ10から出力されるレゾルバ信号は、励磁信号に対して位相変調されて出力される。なお、励磁部130は、基準信号ωtに対して検出角度φだけずれた位相を持つ位相出力ωt+φに基づいて励磁信号を生成している。
このため、レゾルバ/デジタル変換部110が健全な状態すなわち正常であれば、レゾルバ10の回転角度θと、レゾルバ/デジタル変換部110により生成されて出力される検出角度φとが一致する。この結果、レゾルバ信号の位相は、基準信号の位相と一致する。
【0032】
ここで、基準信号ωt、レゾルバ10の回転角度θ、レゾルバ/デジタル変換部110により生成される検出角度φを用いると、励磁信号の位相とレゾルバ信号の位相とは、以下の通りとなる。
励磁信号の位相:ωt+φ
レゾルバ信号の位相:ωt+φ-θ
上記の関係となるレゾルバ信号の位相を基準信号の位相とを比較した場合、レゾルバ/デジタル変換部110が正常に動作している場合は、φ=θとなり、レゾルバ信号の位相は基準信号の位相と同じになる。
【0033】
一方、レゾルバ/デジタル変換部110が異常である場合には、レゾルバ/デジタル変換部110においてレゾルバ10の回転角度θに一致する検出角度φが得られなくなる。この結果、レゾルバ信号と基準信号とは位相差を生じることとなる。従って、異常監視部140において、上記の位相差を検出し、予め設定した閾値を超えて位相がずれた場合にレゾルバ/デジタル変換部110を異常状態と判定する。これにより、レゾルバ/デジタル変換部110が正常であるか異常であるかを検出し、健全性を監視することができる。
異常監視部140は、論理回路を主要な構成要素としており、制御CPUを用いた先行技術と比較して、回路構成及び信号線取り回しを大幅に簡素化することが可能であり、判定の精度も向上する。
以上の閾値は、レゾルバ10が取り付けられた装置の要求に応じて任意の値に定めることができる。
【0034】
実施の形態2.
次に、実施の形態2における角度検出装置100の基本的な構成について、図2図3とを参照して説明する。図2は、実施の形態2の角度検出装置100の構成を示す構成図である。図3は、実施の形態2の角度検出装置100の主要部の構成を示す構成図である。
【0035】
[角度検出装置100の構成と各部の処理]
図2において、図1と同一物には同一番号を付すことで、重複した説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
図2において、角度検出装置100は、主に、レゾルバ/デジタル変換部110と、基準信号生成部120と、励磁部130と、異常監視部140とを有している。図2において、角度検出装置100には、位相変調方式のレゾルバとして2相励磁/1相出力のレゾルバ10が接続されている。
【0036】
[信号生成]
基準信号生成部120は、所定の基準周波数ωに対応して時間基準を表す基準信号ωtと、基準信号ωtの余弦を表す基準余弦信号cosωtとを生成する。基準信号生成部120は、生成した基準信号ωtをレゾルバ/デジタル変換部110と異常監視部140とに供給し、生成した基準余弦信号cosωtをレゾルバ/デジタル変換部110に供給する。
励磁部130は、レゾルバ/デジタル変換部110から供給される位相出力ωt+φに基づいて、直交する2相の励磁信号として、第1相の励磁信号sin(ωt+φ)と、第2相の励磁信号cos(ωt+φ)とを生成し、レゾルバ10の励磁巻線に供給する。
【0037】
[角度検出]
2相励磁1相出力かつ位相変調方式のレゾルバ10は、励磁部130から直交する2相の励磁信号(第1相の励磁信号sin(ωt+φ)と、第2相の励磁信号cos(ωt+φ))を供給されると、これら励磁信号により発生した磁束を検出巻線により検出し、回転角度θに応じた位相を持った1相の位相変調アナログ信号を、1相のレゾルバ信号として出力する。1相のレゾルバ信号は、回転角度θに応じた位相を持っており、sin(ωt+φ-θ)と表すことができる。
【0038】
レゾルバ/デジタル変換部110は、実施の形態1と同様に、位相出力ωt+φを励磁部130に向けて出力すると共に、レゾルバ10からのレゾルバ信号を処理し、レゾルバ10の回転角度θに応じた検出角度φを生成する。
【0039】
[異常監視]
異常監視部140は、反転部142、コンパレータ143、排他的論理和演算回路144、及び判定部145を備える。なお、排他的論理和演算回路144は、判定部145の論理を反転することにより、排他的論理和演算XORの代わりに、否定排他的論理和演算XNORを実行するようにしてもよい。
【0040】
排他的論理和演算回路144の一方の入力には、基準信号生成部120からの基準信号ωtが反転部142により反転された反転データが供給される。
コンパレータ143は、レゾルバ信号sin(ωt+φ-θ)を2値化してレゾルバ信号2値データDRを生成する。コンパレータ143は、生成したレゾルバ信号2値データDRを排他的論理和演算回路144の他方の入力に供給する。
【0041】
排他的論理和演算回路144は、一方の入力である基準信号ωtを構成するデジタルデータの最上位ビットの反転データと、他方の入力であるレゾルバ信号2値データDRとの排他的論理和演算による位相比較を行い、2つの入力が一致する期間でLレベルを出力し、2つの入力が不一致の期間でHレベルを出力する。
【0042】
判定部145は、排他的論理和演算回路144の2つの入力の不一致の期間が閾値以下であれば正常であることを示すLレベルを出力し、不一致の期間が閾値より大きければ異常と判定してHレベルの異常判定信号を生成する。異常監視部140は、判定部145からHレベルの異常判定信号が出力された場合、予め定められた通知先に異常判定信号Errを出力する。
【0043】
レゾルバ信号の位相と基準信号の位相とを比較した場合、レゾルバ/デジタル変換部110が正常に動作している場合は、φ=θとなり、レゾルバ信号の位相は基準信号の位相と同じになる。一方、レゾルバ/デジタル変換部110が異常である場合には、レゾルバ/デジタル変換部110においてレゾルバ10の回転角度に一致する検出角度φが得られなくなる。この結果、レゾルバ信号と基準信号とは位相差を生じることとなる。
従って、異常監視部140において、上記の位相差を検出し、予め設定した閾値を超えて位相がずれた場合をレゾルバ/デジタル変換部110の異常状態と判定する。これにより、レゾルバ/デジタル変換部110が正常であるか異常であるかを検出し、健全性を監視することができる。
【0044】
[実施の形態により得られる効果]
実施の形態1及び2によれば、以下のような効果を得ることができる。
2相励磁/2相出力または2相励磁/1相出力の位相変調方式のレゾルバ10から出力されるレゾルバ信号をレゾルバ/デジタル変換部110において処理し、レゾルバ10の回転角度θに応じた検出角度φを生成する際に、基準信号の位相とレゾルバ信号の位相とを、異常監視部140により比較し、位相差が閾値を超えた場合、レゾルバ/デジタル変換部110が異常であると判定する。
これにより、回路構成及び信号線取り回しを複雑にすることなく、位相変調方式のレゾルバ10を用いた角度検出装置100におけるレゾルバ/デジタル変換部110の異常を判定することができる。
【0045】
2相励磁/2相出力の位相変調方式のレゾルバ10から第1相のレゾルバ信号と第2相のレゾルバ信号とを出力する場合、基準信号と第1相のレゾルバ信号との位相を異常監視部140により比較し、基準信号に対して+90°位相をずらした第2相の基準信号と第2相のレゾルバ信号との位相を異常監視部140により比較する。
これにより、回路構成及び信号線取り回しを複雑にすることなく、2相励磁/2相出力の位相変調方式のレゾルバ10を用いた角度検出装置100におけるレゾルバ/デジタル変換部110の異常を判定することができる。
【0046】
基準信号を構成するデジタルデータの最上位ビットの反転データと、レゾルバ信号の2値データとの排他的論理和を排他的論理和演算回路により求め、排他的論理和演算回路の2つの入力が不一致の期間が閾値より大きい場合、判定部により異常と判定して異常判定信号を生成する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10を用いた角度検出装置100におけるレゾルバ/デジタル変換部110の異常を、簡素な回路構成及び信号線取り回しにより、デジタル的に高精度に判定することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 レゾルバ、100 角度検出装置、110 レゾルバ/デジタル変換部、111a 第1の乗算器、111b 第2の乗算器、112 減算器、113 A/D変換部、114 制御則、115 アキュムレータ、116 加算器、120 基準信号生成部、130 励磁部、140 異常監視部、141 移相部、142,142a,142b 反転部、143 コンパレータ、143a 第1のコンパレータ、143b 第2のコンパレータ、144 排他的論理和演算回路、144a 第1の排他的論理和演算回路、144b 第2の排他的論理和演算回路、145 判定部、145a 第1の判定部、145b 第2の判定部、146 論理和演算回路、DR レゾルバ信号2値データ、DR1 第1相レゾルバ信号2値データ、DR2 第2相レゾルバ信号2値データ、Dε デジタル化差分、θ 回転角度、φ 検出角度、ε 第1中間信号と第2中間信号との差分、ω 角速度信号。
図1
図2
図3