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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043829
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】自律走行式床面清掃機
(51)【国際特許分類】
   A47L 11/283 20060101AFI20240326BHJP
   B08B 1/32 20240101ALI20240326BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A47L11/283
B08B1/04
A47L9/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149030
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】川口 靖博
【テーマコード(参考)】
3B057
3B116
【Fターム(参考)】
3B057DA09
3B116AA31
3B116AB52
3B116BA02
3B116BA13
3B116BA14
3B116BA35
3B116BB71
3B116CD42
3B116CD43
(57)【要約】
【課題】サイドブラシの動作異常に適切に対応して安全に床面を清掃することができる。
【解決手段】自律走行式床面清掃機(1)には、機体側面から突出したサイドブラシ(76)で床面を清掃するサイドブラシ装置(75)と、機体内側に設置されたメインブラシ(72)で床面を清掃するメインブラシ装置(71)と、床面の清掃中にサイドブラシを撮像して撮像画像を出力する撮像部(37b)と、撮像画像に基づいてサイドブラシの動作状況を監視する制御部と、が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体側面から突出したサイドブラシで床面を清掃するサイドブラシ装置と、
機体内側に設置されたメインブラシで床面を清掃するメインブラシ装置と、
床面の清掃中に前記サイドブラシを撮像して撮像画像を出力する撮像部と、
前記撮像画像に基づいて前記サイドブラシの動作状況を監視する制御部と、を備えていることを特徴とする自律走行式床面清掃機。
【請求項2】
前記撮像部が、撮像周期を前記サイドブラシの回転周期に同期させて前記サイドブラシを撮像し、
前記制御部が、前記サイドブラシの撓み形状に応じて前記サイドブラシの動作異常を判定することを特徴とする請求項1に記載の自律走行式床面清掃機。
【請求項3】
前記制御部には、正常時の前記サイドブラシに撓みが生じる撓み範囲及び撓みが生じない非撓み範囲が設定されており、
前記制御部が、前記サイドブラシの非撓み範囲で撓みが生じている場合に前記サイドブラシを動作異常と判定することを特徴とする請求項2に記載の自律走行式床面清掃機。
【請求項4】
前記制御部が、前記撮像画像を真上から見下ろした平面視画像に変換して、前記サイドブラシの動作異常を判定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の自律走行式床面清掃機。
【請求項5】
前記サイドブラシが、蛍光性又は蓄光性をもった材料で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自律走行式床面清掃機。
【請求項6】
前記制御部が、前記サイドブラシの動作異常と判定した場合に、前記サイドブラシの回転を停止して、前記サイドブラシを床面から持ち上げた状態で逆向きに低速回転させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自律走行式床面清掃機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行式床面清掃機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メインブラシ装置とサイドブラシ装置を備えた自律走行式床面清掃機が知られている。メインブラシ装置によって機体内側でメインブラシが床面に接触され、サイドブラシ装置によって機体外側でサイドブラシが床面に接触されて清掃幅が拡幅される。壁際の清掃時にはセンサの検出結果に基づいて壁面と機体の間隔が保持されつつ、機体が壁面に沿って走行してサイドブラシで床面が清掃される。このとき、機体が壁際に寄り過ぎると、サイドブラシ装置が壁面に強く衝突して、サイドブラシ装置が破損したり、壁面を傷つけたりする場合がある。
【0003】
そこで、サイドブラシ装置の破損等を抑えるために、回転バンパ付きのサイドブラシ装置を備えた自律走行式床面清掃機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このサイドブラシ装置の回転バンパは、サイドブラシと同軸かつサイドブラシの上方に位置付けられている。回転バンパは、サイドブラシと平行な円形プレートと、円形プレートの外周に支持された回転リングと、を有している。清掃中に回転バンパの回転リングが壁面等の障害物に接触すると、障害物からの反力を受けて回転リングが回転して、床面等の障害物から離反する方向に機体が誘導される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-045694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によれば、回転バンパによってサイドブラシ装置と障害物の衝突が回避されるが、回転バンパが接触する障害物が必ずしも剛体であるとは限らない。例えば、障害物が電源コードや防犯ネット等の場合には、サイドブラシ装置に回転バンパが設けられていても、サイドブラシに電源コードや防犯ネット等が絡まってサイドブラシに動作異常が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、サイドブラシの動作異常に適切に対応して安全に床面を清掃することができる自律走行式床面清掃機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自律走行式床面清掃機は、機体側面から突出したサイドブラシで床面を清掃するサイドブラシ装置と、機体内側に設置されたメインブラシで床面を清掃するメインブラシ装置と、床面の清掃中に前記サイドブラシを撮像して撮像画像を出力する撮像部と、前記撮像画像に基づいて前記サイドブラシの動作状況を監視する制御部と、を備えている。この構成によれば、床面の清掃中にサイドブラシの動作状況が監視されているため、サイドブラシの動作異常が生じた場合にも適切に対応することができる。特に、コードやネット等の障害物にサイドブラシが絡まった場合でも、サイドブラシの動作異常に適切に対応することで安全に清掃を継続することができる。
【0008】
上記の自律走行式床面清掃機において、前記撮像部が、撮像周期を前記サイドブラシの回転周期に同期させて前記サイドブラシを撮像し、前記制御部が、前記サイドブラシの撓み形状に応じて前記サイドブラシの動作異常を判定する。この構成によれば、サイドブラシが回転していても、撮像画像内のサイドブラシが静止されてサイドブラシの動作状況が精度よく監視される。清掃中のサイドブラシの撓み形状が明確になって、撓み形状に応じてサイドブラシの動作異常が精度よく判定される。
【0009】
上記の自律走行式床面清掃機において、前記制御部には、正常時の前記サイドブラシに撓みが生じる撓み範囲及び撓みが生じない非撓み範囲が設定されており、前記制御部が、前記サイドブラシの非撓み範囲で撓みが生じている場合に前記サイドブラシを動作異常と判定する。この構成によれば、サイドブラシに撓みが生じている範囲からサイドブラシの動作異常を判定することができる。
【0010】
上記の自律走行式床面清掃機において、前記制御部が、前記撮像画像を真上から見下ろした平面視画像に変換して、前記サイドブラシの動作異常を判定する。この構成によれば、サイドブラシの撓み形状を真上から見た状態で確認することができ、サイドブラシの動作異常がより精度よく判定される。
【0011】
上記の自律走行式床面清掃機において、前記サイドブラシが、蛍光性又は蓄光性をもった材料で形成されている。この構成によれば、夜間の清掃時においてもサイドブラシを適切に撮像することができる。
【0012】
上記の自律走行式床面清掃機において、前記制御部が、前記サイドブラシの動作異常と判定した場合に、前記サイドブラシの回転を停止して、前記サイドブラシを床面から持ち上げた状態で逆向きに低速回転させる。この構成によれば、サイドブラシの動作異常が生じても自動的に動作異常を解消することができる。特に、コードやネット等の障害物にサイドブラシが絡まった場合でも、障害物を解いて自律走行式床面清掃機に清掃作業を継続させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サイドブラシの動作異常に適切に対応して安全に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の自律走行式床面清掃機の斜視図である。
図2】本実施形態の自律走行式床面清掃機の平面図である。
図3】本実施形態の自律走行式床面清掃機の正面図である。
図4】本実施形態の自律走行式床面清掃機の側面図である。
図5】本実施形態の自律走行式床面清掃機の制御ブロック図である。
図6】実施形態のサイドブラシ装置の斜視図である。
図7】本実施形態のサイドブラシ装置の平面図である。
図8】本実施形態のサイドブラシ装置の側面図である。
図9】本実施形態の制御部及び記憶部の制御ブロック図である。
図10】本実施形態の自律走行式床面清掃機の走行動作の一例を示す図である。
図11】本実施形態のサイドブラシの撮像画像の一例を示す図である。
図12】本実施形態の動作異常の判定処理の説明図である。
図13】本実施形態の再現モード中のサイドブラシの制御フローである。
図14】本実施形態のサイドブラシの監視処理の制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の自律走行式床面清掃機について説明する。図1は本実施形態の自律走行式床面清掃機の斜視図である。図2は本実施形態の自律走行式床面清掃機の平面図である。図3は本実施形態の自律走行式床面清掃機の正面図である。図4は本実施形態の自律走行式床面清掃機の側面図である。図5は本実施形態の自律走行式床面清掃機の制御ブロック図である。なお、図2(A)はサイドブラシの格納状態を示し、図2(B)はサイドブラシの使用状態をそれぞれ示している。
【0016】
図1に示すように、自律走行式床面清掃機1(以下、単に床面清掃機という)は、床面を自律走行しながら乾式清掃する清掃機であり、商業施設、製造工場、鉄道駅、空港、ホテル、オフィス、病院、学校等に使用される。床面清掃機1の機体2の下部には、駆動輪としての前輪3と補助輪としての一対の後輪4が設けられている。前輪3の左右側方には左右一対のサイドブラシ装置75が設けられており、前輪3の後方にはメインブラシ装置71が設けられている。各サイドブラシ装置75には回転軸が略縦向きのサイドブラシ76が装着されており、メインブラシ装置71には回転軸が横向きのメインブラシ(ロールブラシ)72が装着されている。
【0017】
一対のサイドブラシ76が床面FL(図3参照)に回転接触して装置内側に塵埃が掻き寄せられ、装置内側でメインブラシ72が床面FLに回転接触して吸引口(不図示)に塵埃が送られる。メインブラシ72による清掃幅がサイドブラシ76によって拡幅されている。メインブラシ72の後方には塵埃を溜めるバケット5が設けられており、バケット5の上方には吸引ブロア(不図示)を駆動するブロアモータ25が設けられている。機体2の上部後側にはハンドル11及びアクセルグリップ12が設けられ、ハンドル11の前側には操作パネル13が設けられている。機体2の下部前側には緩衝装置としてバンパ7が設けられている。
【0018】
機体外面には各種カメラやセンサ等が設けられている。機体前面には前方カメラ37a、段差センサ44、超音波センサ45aが設けられ、機体両側面には左右一対の側方カメラ37b、超音波センサ45bが設けられ、機体後面には後方カメラ37c(図5参照)が設けられている。機体前面のバンパ7の上方が窪んでおり、機体前面の窪みにはLRF(Laser Range Finder)42(図3参照)、コーナセンサとしての左右一対の超音波センサ45cが設けられている。これらカメラやセンサによって床面清掃機1の周辺環境を認識すると共に障害物を検出することが可能になっている。
【0019】
図2(A)、(B)に示すように、床面清掃機1の前部には左右一対のサイドブラシ装置75が設けられており、左右一対のサイドブラシ76の格納状態と使用状態が切替えられている。各サイドブラシ76のブラシ円板77がサイドブラシモータ28の下面に取り付けられており、ブラシ円板77から無数のブラシ毛79が放射状に延びている。サイドブラシ76の格納状態ではブラシ円板77が機体内側に位置付けられ、ブラシ毛79の一部だけが機体側面から露出している。サイドブラシ76の使用状態ではブラシ円板77が機体外側に位置付けられ、ブラシ毛79の大部分が機体側面から露出している。
【0020】
図3に示すように、サイドブラシ76の使用状態を正面から見たときには、床面FLの垂線Zに対してサイドブラシ76の回転軸Cが僅かに外向きに傾けられている。正面視にてサイドブラシ76の外側のブラシ毛79が床面FLに接しており、サイドブラシ76の内側のブラシ毛79が床面FLから離れている。図4に示すように、サイドブラシ76の使用状態を側方から見たときには、床面FLの垂線Zに対してサイドブラシ76の回転軸Cが僅かに前方に傾けられている。側面視にてサイドブラシ76の前側のブラシ毛79が床面FLに接しており、サイドブラシ76の後側のブラシ毛79が床面FLから離れている。
【0021】
左側のサイドブラシ76は時計回りに回転し、右側のサイドブラシ76は反時計回りに回転する(図2(B)参照)。すなわち、左右のサイドブラシ76は床面FLの塵埃を機体側部前方から内部に掻き寄せるよう互いに逆方向に回転する。サイドブラシ76のブラシ毛79の前部外側が床面FLに強く接しており、サイドブラシ76の前部の内向き回転によって機体内側に塵埃が集められる。一方で、サイドブラシ76のブラシ毛79の後部内側が床面FLから離れているため、サイドブラシ76の後部の外向きの回転によって機体外側に塵埃が掃き出され難くなっている。ブラシ毛79は可撓性を持った線材によって形成されており、ブラシ毛79が床面FLに接触することで床面FLに沿うようにブラシ毛79が撓んでいる。
【0022】
図5に示すように、床面清掃機1には、走行部15、走行操作部21、清掃部24、操作表示部31、マイク32、スピーカ33、通信部34、電源部35、撮像部36、計測部41、制御部51、記憶部61が設けられている。走行部15、走行操作部21、清掃部24、操作表示部31、マイク32、スピーカ33、通信部34、電源部35、撮像部36、計測部41にはインターフェース67及びバス68を介して制御部51及び記憶部61が電気的に接続されている。制御部51にはバス68を介して記憶部61が電気的に接続されている。制御部51と機体各部の間で電気信号が送受信されている。
【0023】
走行部15は、駆動モータ16、駆動エンコーダ17、操舵モータ18、操舵センサ19を有している。駆動モータ16によって前輪3(図1参照)が回転されて床面清掃機1が走行される。左右一対の後輪4に連結した駆動エンコーダ17によって走行量と走行方向が検出される。操舵モータ18によって前輪3が水平回りに操舵され、操舵センサ19によって前輪3の操舵角が検出される。走行操作部21は、ハンドルセンサ22、アクセルセンサ23を有している。ハンドルセンサ22によってハンドル11(図1参照)の揺動角が検出され、アクセルセンサ23によってアクセルグリップ12(図1参照)の回転角が検出される。
【0024】
清掃部24は、ブロアモータ25、メインブラシモータ26、メインブラシシリンダ27、左右一対のサイドブラシモータ28、左右一対のサイドブラシシリンダ29を有している。ブロアモータ25によって吸引ブロア(不図示)が駆動される。メインブラシモータ26によってメインブラシ72(図1参照)が回転され、メインブラシシリンダ27によってメインブラシ72が昇降される。サイドブラシモータ28によってサイドブラシ76(図1参照)が回転され、サイドブラシシリンダ29によって後述するワイヤ98(図6参照)を介してサイドブラシ76が昇降されると共に機体2の内外方向に揺動される。なお、サイドブラシモータ28は左右のサイドブラシ76に対応して、右側のサイドブラシモータ28a、左側のサイドブラシモータ28bで構成される。
【0025】
操作表示部31は、操作パネル13にオペレータの操作を受け付ける操作画面等を表示させる。操作画面によって床面清掃機1の動作モードが選択され、床面清掃機1に対して各種設定が入力される。マイク32は床面清掃機1の周囲の音声を集音し、スピーカ33は床面清掃機1の警報音を放音する。通信部34は、床面清掃機1と外部端末を無線通信する。なお、床面清掃機1に着脱可能なスマートフォン等の携帯端末を、操作表示部31、マイク32、スピーカ33、通信部34として機能させてもよい。電源部35はバッテリ(不図示)及び充電回路等を有し、電源部35から装置各部に電力が供給される。
【0026】
撮像部36は、前方カメラ37a、左右一対の側方カメラ37b、後方カメラ37cを有している。前方カメラ37aによって床面清掃機1の前方が撮像され、左右一対の側方カメラ37bによって床面清掃機1の左右側方が撮像され、後方カメラ37cによって床面清掃機1の後方が撮像される。各カメラ37a-37cによって床面清掃機1の周囲画像が撮像されて、ドライブレコーダ等によって床面清掃機1の清掃状況が記録される。また、カメラ37a-37cの撮像画像が解析されて床面清掃機1の周辺環境や立入禁止エリアや障害物等が画像認識されてもよい。
【0027】
計測部41は、LRF42、バンパセンサ43、段差センサ44、超音波センサ45a-45cを有している。LRF42によって床面清掃機1から壁や障害物までの距離及び角度が計測される。バンパセンサ43によってバンパ7(図1参照)と壁や障害物の接触が検出される。段差センサ44によって床面FLの段差が検出される。超音波センサ45a-45cによって床面清掃機1から近距離の範囲で、床面清掃機1の前方の障害物、左右側方の障害物、斜め前方の障害物が検出される。これら各種センサによって床面清掃機1の周辺環境が検出される。
【0028】
記憶部61には、走行経路の各地点に清掃条件を設定した清掃プランや、その他のパラメータが記憶されている。清掃プランには、走行経路の他、ブロアモータ25等の各モータに関する清掃条件、メインブラシ装置71に関する清掃条件、サイドブラシ装置75に関する清掃条件等が設定されている。メインブラシ装置71に関する清掃条件としては、メインブラシ72の回転数や床面FLへの圧接の有無及び強さ等が設定されている。サイドブラシ装置75に関する清掃条件としては、サイドブラシ76の回転数の他、サイドブラシ76の格納状態と使用状態の切替タイミング等が設定されている。
【0029】
制御部51は、装置各部を統括制御している。制御部51によって清掃プランに従って自律走行しながら床面FLの清掃が制御されている。制御部51はプロセッサによって構成され、記憶部61は各種記憶媒体によって構成されている。プロセッサによって記憶媒体からプログラムや各種データが読み出されて各種処理が実施される。プロセッサとしては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等が使用される。記憶媒体としては、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等が使用される。
【0030】
この床面清掃機1には、手動モード、学習モード、再現モードの3つの動作モードが用意されている。手動モードは、オペレータが床面清掃機1を手動操作して床面FLを清掃するモードである。学習モードは、オペレータが床面清掃機1を手動操作して床面清掃機1に清掃プランを学習させるモードである。再現モードは、清掃プランを再現するように、床面清掃機1が床面FL上を自律走行しながら清掃するモードである。また、床面清掃機1は、学習モードで学習された清掃プランに従って清掃する他、事前に作成された清掃プランに従って清掃することも可能である。
【0031】
上記したように、床面清掃機1には、機体両側面から略縦向きの回転軸で回転する左右一対のサイドブラシ76を突出して清掃幅を拡幅する左右一対のサイドブラシ装置75が設けられている。サイドブラシ76によって清掃幅が拡幅されるが、サイドブラシ76が床面清掃機1の側方の障害物に接触し易くなる。剛体物だけが障害物になるとは限らず、壁際に這わせられた電源コード等が障害物となってサイドブラシ76に絡まる場合がある。電源コード等のコード類がサイドブラシモータ28に巻き付くとサイドブラシ装置75が動作不能になるおそれがある。
【0032】
特に、大型ショッピングセンタ内の個別の店舗のように、営業時間後に商品や陳列棚に防犯ネットが被せられる場合がある。防犯ネットの縁が通路上まで広がっていると、暗闇の中で床面清掃機1が清掃作業を行ったときに防犯ネットがサイドブラシ76に絡まって清掃動作が継続不能になるおそれがある。そこで、本実施形態の床面清掃機1では、床面FLの清掃中に撮像部36によってサイドブラシ76の動作状況が監視されている。コード類や防犯ネットがサイドブラシ76に絡まった場合等に、サイドブラシ76が逆回転されて絡まりが解かれることで動作異常に適切に対応可能になっている。
【0033】
以下、サイドブラシ装置の詳細構成について説明する。図6は本実施形態のサイドブラシ装置の斜視図である。図7は本実施形態のサイドブラシ装置の平面図である。図8は本実施形態のサイドブラシ装置の側面図である。なお、図6(A)から図8(A)はサイドブラシの格納状態を示し、図6(B)から図8(B)はサイドブラシの使用状態をそれぞれ示している。なお、以下の説明では右側のサイドブラシ装置について説明するが、左側のサイドブラシ装置も同様に(左右対称形状で)構成されている。
【0034】
図6(A)及び図6(B)に示すように、サイドブラシ装置75は機体2のシャーシ81に取り付けられている。シャーシ81は縦フレーム82と横フレーム83によって上面視略L字状に形成されており、縦フレーム82と横フレーム83の内側にサイドブラシ装置75の格納エリアが確保されている。縦フレーム82は断面視逆L字状に形成され、横フレーム83は断面視角C字状に形成されている。縦フレーム82の上板の一部は、格納エリア内のサイドブラシ装置75(サイドブラシモータ28)を避けるように切り欠かれている。横フレーム83の先端側の上板と下板には揺動軸84を介して揺動アーム85が支持されている。
【0035】
揺動アーム85の一端側は揺動軸84から機体内側に延びており、揺動アーム85の一端側の先端には引掛け部86が形成されている。揺動アーム85の引掛け部86にはスプリング87を介して縦フレーム82が接続されている。揺動アーム85の他端側は揺動軸84から後方に突出しており、揺動アーム85の他端側の先端には平行リンク機構88を介してブラケット89が上下動可能に連結されている。横フレーム83の先端側の側板には板状のストッパ91が設けられており、揺動アーム85の他端側がストッパ91に突き当たることでサイドブラシ76の揺動が規制されている。
【0036】
ブラケット89にはサイドブラシモータ28が取り付けられており、サイドブラシモータ28の回転軸(図示せず)にはサイドブラシ76のブラシ円板77が固定されている。このように、揺動アーム85の他端側のブラケット89にサイドブラシ76が保持され、揺動アーム85によって揺動軸84を中心にしてサイドブラシ76が機体2の内外方向に揺動される。また、スプリング87によって揺動アーム85の一端側が引っ張られて、揺動アーム85の他端側のサイドブラシ76が機体外側に押し出され、ストッパ91が揺動アーム85の他端に突き当たってサイドブラシ76の機体外側への揺動限界が規定される。
【0037】
横フレーム83の上板には支持台93が設けられており、支持台93上にはスライダ94が設置されている。支持台93の上面にはスライダ94の進退方向に一対のスリット95が形成されており、支持台93の一対のスリット95にスライダ94の一対の突起106が挿し込まれている。支持台93の一対のスリット95は進出方向に向かって幅広に形成されており、スライダ94の進出方向へのスライドに遊びが持たせられている。スライダ94の先端側には連結軸96を介して傾動リンク97が上下に揺動可能に連結され、このスライダ94と傾動リンク97の連結軸96にはワイヤ98の先端が連結されている。
【0038】
傾動リンク97には進退方向に長孔99が形成されており、長孔99には横向きの連結軸96が挿し込まれている。傾動リンク97の先端側には連結部材101を介してブラケット89の上面に連結されている。連結部材101は断面視角U字状の板材によって形成されており、連結部材101の一対の縦板には連結軸102を介して傾動リンク97の先端側が連結されている。連結部材101の底板は鉛直軸(不図示)を介してブラケット89の上面に回転可能に支持されている。また、横フレーム83の上板には、傾動リンク97の進退動作を下側から支持するガイドローラ(ガイド)103が設けられている。
【0039】
これら支持台93、スライダ94、傾動リンク97、連結部材101、ガイドローラ103等によってワイヤ98の牽引力をブラケット89の引き上げ力に変換する変換機構92が形成されている。ワイヤ98によって変換機構92を介してブラケット89と一体にサイドブラシ76が床面FLから離れた上昇位置と床面FLに接した下降位置の間で昇降される。また、ワイヤ98によってブラケット89と一体にサイドブラシ76が機体内側の格納位置と機体外側の使用位置との間で揺動される。サイドブラシ装置75は、ワイヤ98によってサイドブラシ76の格納状態と使用状態が切替可能に構成されている。
【0040】
図7(A)に示すように、ブラケット89には揺動アーム85を介してスプリング87が連結されている。スプリング87の引張力F1によって揺動アーム85の揺動軸84を支点にしてブラケット89には機体外側にモーメントM1が作用している。一方で、ブラケット89には傾動リンク97等を介してワイヤ98が連結されている。ワイヤ98の牽引力F2によって揺動アーム85の揺動軸84を支点にしてブラケット89には機体内側にモーメントM2が作用している。このように、スプリング87の反力に抗してワイヤ98によってブラケット89が牽引されている。
【0041】
サイドブラシ76の格納状態ではワイヤ98が強く牽引されており、ブラケット89に作用する機体外側のモーメントM1よりも機体内側のモーメントM2が大きくなっている。このため、ワイヤ98によってブラケット89を介してサイドブラシ76が機体内側に引き込まれて、サイドブラシ76のブラシ円板77が機体内側に格納されている。このとき、揺動アーム85の揺動軸84よりも床面清掃機1の進行方向後側にブラシ円板77が位置している。また、サイドブラシ76のブラシ毛79が描く外縁よりも内側に揺動アーム85の揺動軸84が位置している。
【0042】
図7(A)及び図8(A)に示すように、ワイヤ98が強く牽引されると、スライダ94と傾動リンク97の連結軸96がガイドローラ103よりも退避方向に位置付けられる。このため、スライダ94が支持台93に下側から支えられると共に、傾動リンク97が支持台93及びガイドローラ103に下側から支えられている。傾動リンク97が水平姿勢になるため、ブラケット89が上昇位置に位置付けられて、ブラケット89に保持されたサイドブラシ76が床面FLから上方に持ち上げられている。このように、ワイヤ98の牽引によってサイドブラシ76が上昇すると共に機体内側に格納されている。
【0043】
図7(B)に示すように、サイドブラシ76の使用状態ではワイヤ98の牽引が緩められ、ブラケット89に作用する機体外側のモーメントM1よりも機体内側のモーメントM2が小さくなっている。このため、スプリング87の引張力F1によってブラケット89を介してサイドブラシ76が機体外側に押し出されて、サイドブラシ76のブラシ円板77が機体外側に突出される。サイドブラシ76が機体側面から突出されることで床面清掃機1の清掃幅が拡幅される。揺動アーム85がストッパ91に突き当たって、ストッパ91によってサイドブラシ76の揺動が規制される。
【0044】
このとき、揺動アーム85の揺動軸84よりも床面清掃機1の進行方向後側にブラシ円板77が位置している。また、サイドブラシ76のブラシ毛79が描く外縁よりも内側に揺動アーム85の揺動軸84が位置している。揺動アーム85の揺動軸84よりも進行方向後側でサイドブラシ76が揺動されるように、ストッパ91によってサイドブラシ76の揺動が規制されている。サイドブラシ76の揺動によって、サイドブラシ76が硬い障害物に衝突してもサイドブラシ76が機体内側に逃がされる。また、揺動アーム85の揺動軸84がバンパ7の内側に位置しており(図10参照)、揺動軸84が硬い障害物に衝突することが防止されている。
【0045】
サイドブラシ76の使用状態では、床面清掃機1の走行によってサイドブラシ76に対して走行方向とは逆向きに走行負荷R1が作用する。ブラケット89には走行負荷R1によって機体内側のモーメントM2が増大されるため、機体外側のモーメントM1を大きくするためにはスプリング87の引張力F1を強くする必要がある。ところで、サイドブラシ76の回転によってサイドブラシ76と床面FLの接触箇所に回転負荷R2が作用する。回転負荷R2によって機体外側のモーメントM1が増大されるため、床面清掃機1が停止若しくは低速で走行している場合にはスプリング87の引張力F1を過度に強くする必要がない。なお、回転負荷R2は床面FLとの摩擦に応じて変化する。
【0046】
図7(B)及び図8(B)に示すように、ワイヤ98の牽引が緩められると、スライダ94と傾動リンク97の連結軸96がガイドローラ103よりも相対的に進出方向に位置付けられる。スライダ94は支持台93に下側から支えられるが、傾動リンク97が支持台93及びガイドローラ103から外れる。傾動リンク97が傾斜姿勢になるため、ブラケット89が下降位置に位置付けられて、ブラケット89に保持されたサイドブラシ76が床面FLに部分的に接触する。このとき、ブラケット89に保持されたサイドブラシ76とサイドブラシモータ28とブラケット89自体等の重量がワイヤ98に作用しており、このように、ワイヤ98の牽引が緩められることで、サイドブラシ76が下降すると共に機体外側に突出される。また、サイドブラシ76のブラシ毛79が床面FLに接触して適度に撓むように、ブラケット89の下降位置は図示しない下側ストッパで規定されている。下側ストッパはブラシ毛79の摩耗による短縮化に適応すべく、手動により上下位置を調整できるようになっている。
【0047】
支持台93のスリット95が進出方向に向かって幅広に形成されているため、スライダ94の進出方向へのスライドに伴ってスライダ94及び傾動リンク97が機体外側に僅かに揺動可能に形成されている。サイドブラシ76とブラケット89が機体外側に揺動すると、スライダ94及び傾動リンク97が進出方向にスライドして、ブラケット89によってスライダ94と傾動リンク97が機体外側に連れ動かされる。サイドブラシ76とブラケット89の揺動がスライダ94と傾動リンク97によって規制されることがなく、サイドブラシ76とブラケット89の機体2の内外方向への揺動が許容されている。
【0048】
サイドブラシ装置75がワイヤ98を用いた簡易な構成でサイドブラシ76を昇降させると共に機体2の内外方向に揺動させている。ワイヤ98の牽引力が変換機構92を介してブラケット89の引き上げ力に変換されており、ワイヤ98の牽引力によってブラケット89が上昇し、サイドブラシ76(及びその周辺の部材を含む)の自重によってブラケット89が下降されている。このため、ブラケット89と共にサイドブラシ76を昇降させるための駆動源が不要になってサイドブラシ装置75の薄型化を図ることができ、サイドブラシ装置75の周辺部材のレイアウトの自由度を確保することができる。
【0049】
特に、図8(A)及び図8(B)に示すように、機体側面には超音波センサ45cが設けられている。本実施形態のサイドブラシ装置75が薄型に形成されているため、超音波センサ45cの検出範囲に入ることなく、サイドブラシ装置75によってサイドブラシ76の格納状態と使用状態が切替えられている。床面清掃機1を自律走行させながら清掃している場合に、サイドブラシ76の格納状態と使用状態が切替られても超音波センサ45cの検出状態に影響を及ぼすことがない。すなわち、超音波センサ45cによってサイドブラシ76が障害物であると誤検出されることがない。
【0050】
図8(B)に示すように、スライダ94は傾動リンク97の長孔99に連結軸96を介して連結されている。このため、サイドブラシ76が硬い障害物に衝突して機体内側に押し込まれても、スライダ94と傾動リンク97の相対的な傾きと連結位置が変化することで、サイドブラシ76を下降させておくことができる。すなわち、ワイヤ98が強く牽引されたときとは異なり、サイドブラシ76が硬い障害物に衝突してブラケット89が機体内側に揺動されても、サイドブラシ76が床面FLから上方に離間することがなく、サイドブラシ76を床面FLに接触させ続けて清掃を継続することができる。
【0051】
なお、サイドブラシ76の下降位置が安定しない場合、サイドブラシ76を床面FLに強制的に接触させるため、ブラケット89に下降力を付加するスプリング等を別途設けることも可能である。逆にサイドブラシ76の自重が大きい場合は、常時上昇力を付加するダンパ等を設けても良い。
【0052】
続いて、装置本体の制御部及び記憶部の詳細構成について説明する。図9は本実施形態の制御部及び記憶部の制御ブロック図である。なお、ここでは、図1から図4の符号を適宜使用して説明する。
【0053】
図9に示すように、制御部51には、清掃制御部52、走行制御部53、SLAM制御部54、走行経路作成部55、環境地図作成部56、清掃プラン作成部57、動作状況監視部58、復帰動作制御部59が設けられている。記憶部61には、清掃条件記憶部62、走行経路記憶部63、環境地図記憶部64、清掃プラン記憶部65が設けられている。なお、清掃制御部52では、サイドブラシ装置75によるサイドブラシ76の床面FLへの圧接動作及び回転動作と、メインブラシ装置71によるメインブラシ72の床面FLへの圧接動作及び回転動作と、が別々に制御される。これにより、オペレータが清掃状況等に応じてサイドブラシ76の拡幅タイミング等を任意に設定可能である。
【0054】
清掃制御部52は、学習モード中にオペレータによる床面清掃機1の手動操作を制御する。清掃制御部52による制御内容は、ティーチングデータとして清掃条件記憶部62に記憶される。このティーチングデータには、吸引ブロアの吸引力、メインブラシ72の回転数、サイドブラシ76の回転数、サイドブラシ76による拡幅タイミング等が含まれている。走行制御部53は、学習モード中にオペレータによる床面清掃機1の手動走行を制御する。走行制御部53による制御内容は、ティーチングデータとして清掃条件記憶部62に記憶される。このティーチングデータには、走行速度等が含まれている。
【0055】
SLAM制御部54は、リアルタイムでSLAMを実行して、LRF42に計測された床面清掃機1の周囲の障害物からの距離及び角度に基づいて、床面清掃機1の自己位置を推定すると共に局所地図を作成する。走行経路作成部55は、時系列に並んだ複数の自己位置を繋ぎ合わせて床面清掃機1の走行経路を作成する。環境地図作成部56は、時系列に並んだ複数の局所地図を繋ぎ合わせて環境地図を作成する。走行経路はティーチングデータとして走行経路記憶部63に記憶され、環境地図はティーチングデータとして環境地図記憶部64に記憶される。
【0056】
なお、LRF42としては2次元タイプのLRFが用いられてもよいし、3次元タイプのLRFが用いられてもよい。2次元タイプのLRFによって2次元データが取得されてもよいし、3次元タイプのLRF又は2次元タイプのLRFの上下揺動によって3次元データが取得されてもよい。すなわち、走行経路作成部55によって2次元の走行経路が作成されてもよいし、走行経路作成部55によって3次元の走行経路が作成されてもよい。また、環境地図作成部56によって2次元の環境地図が作成されてもよいし、環境地図作成部56によって3次元の環境地図が作成されてもよい。
【0057】
清掃プラン作成部57は、各種ティーチングデータを学習モードの開始から終了までの所定時間間隔のステップ毎に関連付けて清掃プランを作成する。この場合、環境地図に床面清掃機1の走行経路が反映されて、走行経路の開始地点から終了地点までの各地点における吸引ブロアの吸引力、メインブラシ72の回転数、サイドブラシ76の回転数、サイドブラシ76による拡幅タイミング等が設定されて清掃プランが作成される。清掃プランは清掃プラン記憶部65に記憶される。清掃プラン記憶部65には、学習モードで学習された清掃プランの他にも、事前に作成された清掃プランが記憶されている。
【0058】
また、学習モードから再現モードに変更されると、清掃制御部52は、再現モード中に清掃プラン記憶部65から清掃プランを読み込み、清掃プランに従って床面清掃機1の自律清掃を制御している。走行制御部53は、再現モード中に清掃プラン記憶部65から清掃プランに含まれる走行経路を読み込み、走行経路に従って床面清掃機1の自律走行を制御している。床面清掃機1が走行経路に沿って自律走行しながら、メインブラシ72及びサイドブラシ76によって床面FLを清掃している。このように、清掃制御部52及び走行制御部53によって床面清掃機1が制御されることで、清掃プラン記憶部65から読み込まれた清掃プランが再現される。
【0059】
動作状況監視部58は、清掃中に撮像部36から出力された撮像画像に基づいてサイドブラシ76の動作状況(回転状況)を監視する。この場合、床面FLの清掃中に撮像部36の側方カメラ37bによってサイドブラシ76が撮像されており、側方カメラ37bから動作状況監視部58に撮像画像が出力されている。動作状況監視部58によって撮像画像からサイドブラシ76の撓み形状が解析されて、サイドブラシ76の撓み形状から電源コードや防犯ネット等の絡まりによる動作異常が判定される。復帰動作制御部59は、サイドブラシ76を低速で逆回転させて動作異常からの復帰動作を試行する。なお、動作異常の判定処理及び動作異常からの復帰動作の詳細については後述する。
【0060】
床面清掃機の走行動作について説明する。図10は本実施形態の床面清掃機の走行動作の一例を示す図である。図10(A)は正常時の走行状態、図10(B)は動作異常時の走行状態をそれぞれ示している。
【0061】
図10(A)に示すように、床面清掃機1の進行方向前方には、壁面104(境界)の一部が室内側へ突出している。学習走行で床面清掃機1に壁面104に沿った清掃を学習させることで、再現走行でも床面清掃機1によって壁面104に沿った清掃が再現される。このとき、サイドブラシ76による清掃幅の拡幅状態も再現される。LRF42(図5参照)の測距によって壁面から一定距離を維持しながら、メインブラシ72(図1参照)及びサイドブラシ76によって床面FLが清掃される。壁面104の一部が室内側に突出していても、サイドブラシ76が壁面の突出部分を避けるように床面清掃機1が走行される。
【0062】
図10(B)に示すように、床面清掃機1の進行方向前方には、防犯ネット108が被せられた陳列棚107が設置されている。学習走行では床面清掃機1に陳列棚107の存在が学習されているものの、学習走行時に陳列棚107に被されていなかった防犯ネット108までは学習されていない。また、再現走行ではLRF42や超音波センサ45c(図5参照)等の検出範囲に防犯ネット108が含まれているが、防犯ネット108の網目や糸の太さによっては、LRF42や超音波センサ45cで検出できない。このため、左側のサイドブラシ76が防犯ネット108に引っ掛かるおそれがある。サイドブラシ76の動作状況が監視されており、サイドブラシ76が防犯ネット108に引っ掛かったときには動作異常と判定されて、復帰動作が試行されることでサイドブラシ装置75の破損等が抑えられている。
【0063】
動作異常の判定処理及び動作異常からの復帰動作について説明する。図11は本実施形態のサイドブラシの撮像画像の一例を示す図である。図12は本実施形態の動作異常の判定処理の説明図である。
【0064】
図11に示すように、撮像部36の側方カメラ37b(図5参照)には広角レンズ又は魚眼レンズが使用されている。このため、側方カメラ37bによって機体側方だけでなく機体下側のサイドブラシ76も撮像される。撮像画像の中央の歪みが小さいが、撮像画像の中央から離れるにつれて歪みが大きくなっている。また、側方カメラ37bが撮像周期(フレームレート)をサイドブラシ76の回転周期(回転数)に同期させてサイドブラシ76を撮像している。これにより、サイドブラシ76が回転していても、撮像画像内のサイドブラシ76が静止されてサイドブラシ76の動作状況が精度よく監視される。なお、サイドブラシ76の回転周期の整数倍に、撮像周期を同期させてもよい。すなわち、サイドブラシ76の回転数よりも、N倍早い周期で撮像画像を表示するようにして、後述するブラシ毛79の状態を監視してもよい。
【0065】
側方カメラ37bから動作状況監視部58(図9参照)に撮像画像が出力されて、動作状況監視部58によってサイドブラシ76の動作状況が監視されている。この場合、動作状況監視部58によってサイドブラシ76の撓み形状に応じてサイドブラシ76の動作異常が判定される。斜め上方から見たサイドブラシ76では撓み形状が分かり難いため、動作状況監視部58によって撮像画像が真上から見下ろした平面視画像に変換される。具体的には、動作状況監視部58には機体2の形状や側方カメラ37bの設置位置に応じた歪補正パラメータが事前に設定され、歪補正パラメータによって撮像画像が座標変換されると共に形状の歪が補正されて平面視画像が生成される。
【0066】
図12(A)に示すように、動作状況監視部58には、正常時のサイドブラシ76に撓みが生じる撓み範囲A1と撓みが生じない非撓み範囲A2が設定されている。機体2の外側から露出したサイドブラシ76の外縁のうち、床面FLに接する前側2/3の範囲が撓み範囲A1に設定され、床面FLから離間する後側1/3の範囲が非撓み範囲A2に設定されている。サイドブラシ76の非撓み範囲A2で撓みが生じている場合に、動作状況監視部58によってサイドブラシ76が動作異常と判定される。これにより、サイドブラシ76に撓みが生じている範囲からサイドブラシ76の動作異常を判定することができる。
【0067】
図12(A)に示す撮像画像では、撓み範囲A1にてサイドブラシ76のブラシ毛79が撓んでおり、床面FLとブラシ毛79の接触による正常な撓み状態であるため、動作状況監視部58によってサイドブラシ76の動作状況が正常であると判定される。一方で、図12(B)に示す撮像画像では、非撓み範囲A2においてもサイドブラシ76のブラシ毛79が撓んでおり、床面FLとブラシ毛79の接触以外の撓み状態であるため、動作状況監視部58によってサイドブラシ76の動作異常であると判定される。なお、ブラシ毛79の撓みは、例えば画像解析を用いた形状認識等を利用して検出される。
【0068】
なお、ブラシ毛79の撓み量の変化の仕方も考慮して、サイドブラシ76の動作異常が判定されてもよい。例えば、図12(A)に示す撮像画像では、サイドブラシ76のブラシ毛79が撓んでいるが、サイドブラシ76の回転方向に並んだ無数のブラシ毛79の撓み量が徐々に変化している。一方で、図12(B)に示す撮像画像では、サイドブラシ76の回転方向に並んだ無数のブラシ毛79の撓み量に規則性がない。このように、ブラシ毛79が連続的に変化している場合にサイドブラシ76の動作状況が正常と判定され、ブラシ毛79が連続的に変化していない場合にサイドブラシ76の動作異常と判定される。なお、ブラシ毛79の撓み量も画像解析を用いた形状認識等を利用して検出される。
【0069】
このようにして、動作状況監視部58によって撮像画像に基づいてサイドブラシ76の動作異常が判定されている。上記したように、サイドブラシ76が回転されていても、撮像画像内のサイドブラシ76が静止されているため、サイドブラシ76(ブラシ毛79)の撓み形状が明確になっている。また、撮像画像が平面視画像に変換されているため、サイドブラシ76の撓み形状を真上から見た状態で確認することができる。よって、平面視画像内のサイドブラシ76の撓み形状に応じて、サイドブラシ76が電源コードや防犯ネットに絡まった動作異常が精度よく判定される。なお平面視画像は、サイドブラシ76の使用状態における回転軸Cに沿って見た状態の画像でもよい。
【0070】
そして、動作状況監視部58によってサイドブラシ76の動作異常と判定された場合には、復帰動作制御部59(図9参照)によってサイドブラシ76の回転が停止されて、サイドブラシ76が床面FLから持ち上げられた状態で逆向きに低速回転される。サイドブラシ76に防犯ネット等が絡まった状態で、サイドブラシ76が逆向きに低速回転されることで防犯ネット等の振り解きが試される。動作状況監視部58によってサイドブラシ76の動作状況が監視された状態で、復帰動作制御部59によってサイドブラシ76の復帰動作が繰り返される。
【0071】
このとき、復帰動作制御部59によってワイヤ98(図7参照)が牽引されることで、サイドブラシ76が床面FLから持ち上げられるが、サイドブラシ76が機体内側に格納されない程度にワイヤ98の牽引力が抑えられている。これにより、サイドブラシ76に絡まった防犯ネット等が機体内側に入り込むことがなく、機体外側でサイドブラシ76から防犯ネット等を振り解くことができる。このように、サイドブラシ76の動作異常が生じても、自動的にサイドブラシ76の動作異常が解消されて、床面清掃機1に清掃作業を継続させることができる。
【0072】
ところで、防犯ネット等は店舗等が営業時間外となる夜間に使用され、床面清掃機1が清掃作業を行うもの夜間が多い。そこで、サイドブラシ76のブラシ毛79は、店舗照明が点灯されていない夜間でも撮像され易い材料で形成されている。例えば、ブラシ毛79には、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリカーボネイト系繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維、ウレタンゴム系繊維、アクリル系繊維、熱可塑性ポリビニルアルコール系繊維、熱可塑性フッ素系樹脂繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維等に蛍光性、蓄光性の特殊機能性素材を混ぜた材料、特殊機能性素材を塗装した材料、表面処理を施した材料が用いられる。
【0073】
撮像部36の側方カメラ37b(図1参照)に赤外線を含む照明が使用されてもよい。夜間の営業時間外に店舗照明が点灯されていても、店舗照明の光量は当然絞られるが、側方カメラ37bの補助光として赤外線が使用されることで、サイドブラシ76のブラシ毛79が撮像され易くなる。このように、店舗照明が点灯されていない状況や、店舗照明の光量が絞られている状況であっても、床面清掃機1による床面FLの清掃中にサイドブラシ76の動作状況(撓み状態)を適切に監視することができる。
【0074】
再現モード中のサイドブラシの制御について説明する。図13は本実施形態の再現モード中のサイドブラシの制御フローである。図14は本実施形態のサイドブラシの監視処理の制御フローである。なお、説明の便宜上、図9図11及び図12の符号を利用して説明する。
【0075】
図13に示すように、床面FLの清掃処理が開始されると、サイドブラシモータ28が定速回転され始めて(ステップS01)、サイドブラシ76が床面FLに降ろされる(ステップS02)。動作状況監視部58によってサイドブラシ76の動作状況の監視が開始され(ステップS03)、床面清掃機1が清掃終了地点に向かって走行し始める(ステップS04)。床面清掃機1が清掃終了地点に到達すると(ステップS05でYes)、サイドブラシ76の動作状況の監視が停止される(ステップS06)。そして、サイドブラシモータ28が停止され(ステップS07)、サイドブラシ76が床面FLから持ち上げられて清掃処理が終了する(ステップS08)。
【0076】
図14に示すように、サイドブラシ76の動作状況の監視が開始されると、側方カメラ37bによってサイドブラシ76が撮像される(ステップS11)。側方カメラ37bから動作状況監視部58にサイドブラシ76の撮像画像が出力され、動作状況監視部58によって撮像画像の撓み形状等からサイドブラシ76の動作異常か否かが判定される(ステップS12)。このとき、側方カメラ37bの撮像周期とサイドブラシ76の回転周期が同期しており、サイドブラシ76が静止したような撮像画像が出力されている。撮像画像が平面視画像に変換されており、非撓み範囲A2におけるブラシ毛79の撓みの有無から動作異常が判定される。
【0077】
動作状況監視部58にサイドブラシ76が動作異常と判定されると(ステップS12でYes)、復帰動作制御部59によってサイドブラシモータ28が停止される(ステップS13)。復帰動作制御部59によってサイドブラシ76が床面FLから持ち上げられ(ステップS14)、復帰動作制御部59によってサイドブラシモータ28が低速で逆回転される(ステップS15)。このときも、側方カメラ37bによってサイドブラシ76が撮像されており、動作状況監視部58によってサイドブラシ76が動作異常のままか否かが判定される(ステップS16)。
【0078】
動作状況監視部58によってサイドブラシ76が正常と判定されると(ステップS16でNo)、復帰動作制御部59によってサイドブラシモータ28が停止される(ステップS17)。そして、サイドブラシ76の動作異常が生じた現在地点が記憶されると共に現在地点から床面清掃機1が退避されて(ステップS18)、図13のステップS01に処理が戻される。動作状況監視部58によってサイドブラシ76が動作異常と判定され(ステップS16でYes)、サイドブラシモータ28の逆回転開始直後から所定時間が経過していない場合にステップS16に処理が戻される(ステップS19でNo)。
【0079】
サイドブラシ76が動作異常と判定されたまま、サイドブラシモータ28の逆回転開始直後から所定時間が経過すると(ステップS19でYes)、復帰動作制御部59によってサイドブラシモータ28が停止される(ステップS20)。そして、スピーカ33からエラー警報が出力されて床面清掃機1の清掃作業が中断される(ステップS21)。なお、清掃動作後に完了レポートが作成され、完了レポートに異常発生位置が環境地図等にポイント等で示されてもよい。完了レポートによって防犯ネットの設置が雑な店舗等に再発防止を促すことができる。また、数週間の期間中におけるサイドブラシ76の動作異常の発生頻度をまとめて報告する等の活用が可能である。
【0080】
以上、本実施形態によれば、床面FLの清掃中にサイドブラシ76の動作状況が監視されているため、サイドブラシ76の動作異常が生じた場合にも適切に対応することができる。特に、コードやネット等の障害物にサイドブラシ76が絡まった場合でも、サイドブラシ76の動作異常に適切に対応することで安全に清掃を継続することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、床面清掃機に左右一対のサイドブラシ装置が設けられているが、床面清掃機には単一のサイドブラシ装置が設けられていてもよい。また、左右一対のサイドブラシ装置の夫々の動作状況を監視してもよいが、左右のいずれかのサイドブラシ装置にのみ、動作状況監視部が機能するようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、床面清掃機が学習プランに従って自律走行する機能を有しているが、床面清掃機が自律走行する機能を有していなくてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、SLAMによって環境地図が作成される構成にしたが、V-SLAMやLiDAR-SLAMによって環境地図が作成されてもよいし、オペレータによって事前に環境地図が用意されてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、オペレータが清掃装置のハンドルを持って手動操作しているが、オペレータが表示端末によって清掃装置を遠隔手動操作してもよい。
【0085】
また、本実施形態では、壁面付近におけるサイドブラシの動作異常が判定されているが、壁面から離れた位置でサイドブラシの動作異常と判定された場合には、サイドブラシと床面の摩擦状態が異常であると認識されてもよい。すなわち、サイドブラシの動作異常とは、電源コードや防犯ネット等にサイドブラシが引っ掛かった場合だけでなく、サイドブラシと床面の摩擦状態が異常である場合等も含んでいる。
【0086】
また、本実施形態では、サイドブラシの動作異常と判定されると、動作異常に対して床面清掃機が自動で対応しているが、サイドブラシの動作異常を認識したオペレータが動作異常に対して対応してもよい。
【0087】
また、本実施形態では、床面清掃機の周囲を撮像する側方カメラによってサイドブラシが撮像されたが、サイドブラシを撮像するための専用のカメラが床面清掃機に設けられていてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、床面清掃機のサイドブラシ装置とメインブラシ装置は上記の構成に限定されない。サイドブラシ装置は機体側面から突出したサイドブラシで床面を清掃するように構成されていれば、サイドブラシ装置の構成は特に限定されない。メインブラシ装置は機体内側に設置されたメインブラシで床面を清掃するように構成されていれば、メインブラシ装置の構成は特に限定されない。
【0089】
また、本実施形態において、床面清掃機にプログラムをインストールすることによって、サイドブラシの動作状況を監視する機能等が追加されてもよい。これらのプログラムは記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体であってもよい。
【0090】
また、本実施形態では、乾式の床面清掃機に搭載されたサイドブラシ装置を説明したが、清掃機の構成はこれに限定されない。例えば湿式の床面洗浄装置(スクラバー)や路面清掃機のサイドブラシ装置に、本発明の技術内容を活用してもよい。
【0091】
なお、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0092】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明の技術は商業施設、製造工場、鉄道駅、空港、ホテル、オフィス、病院、学校等の広い作業エリアの清掃に用いる床面清掃機や、自律走行式の洗浄装置等の作業エリアの自動作業に好適な産業用ロボットに有用である。
【符号の説明】
【0094】
1 :自律走行式床面清掃機(床面清掃機)
36 :撮像部
37b:側方カメラ(撮像部)
51 :制御部
58 :動作状況監視部(制御部)
59 :復帰動作制御部(制御部)
71 :メインブラシ装置
72 :メインブラシ
75 :サイドブラシ装置
76 :サイドブラシ
108:防犯ネット(障害物)
A1 :撓み範囲
A2 :非撓み範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14