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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043830
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149031
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岸脇 大介
(72)【発明者】
【氏名】茂野 幸英
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA28
2H197BA09
2H197BA19
2H197CA07
2H197CC05
2H197CD12
2H197CD18
2H197CD41
2H197CD43
2H197CD48
2H197DC06
2H197DC12
2H197EA11
2H197EA13
2H197EA30
2H197FB03
2H197FB04
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA10
(57)【要約】
【課題】露光動作の途中であっても、空間光変調器とマイクロレンズアレイとの間の位置ずれを検知できる技術の提供。
【解決手段】露光装置100は、複数の画素部を備える空間光変調器41と、複数のマイクロレンズ731を備え、複数のマイクロレンズ731の各々で複数の画素部の各々からの光を集光する、マイクロレンズアレイ部73と、マイクロレンズアレイ部73に設けられた反射領域732と、空間光変調器41の所定位置から発せられて反射領域732に入射した光が反射領域732で反射された反射光を検出するセンサ部74と、センサ部74での検出情報に基づいて、空間光変調器71とマイクロレンズアレイ部73との間の位置ずれを検知する位置ずれ検知部502と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素部を備える空間光変調器と、
複数のマイクロレンズを備え、前記複数のマイクロレンズの各々で前記複数の画素部の各々からの光を集光する、マイクロレンズアレイ部と、
前記マイクロレンズアレイ部に設けられた反射領域と、
前記空間光変調器の所定位置から発せられて前記反射領域に入射した光が前記反射領域で反射された反射光を検出するセンサ部と、
前記センサ部での検出情報に基づいて、前記空間光変調器と前記マイクロレンズアレイ部との間の位置ずれを検知する位置ずれ検知部と、
を備える、露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置であって、
前記反射領域が、凹面である、
露光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の露光装置であって、
前記センサ部が、そのセンサ領域の法線が前記反射領域の焦点を通過するような姿勢で設けられる、
露光装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の露光装置であって、
前記センサ部のセンサ領域が2次元領域であり、
前記センサ領域において前記反射光が受光される領域が、頂点を含む領域となるように、前記センサ部の位置が規定される、
露光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の露光装置であって、
前記空間光変調器と前記マイクロレンズアレイ部との間に位置ずれがない適正状態において前記頂点が現れる位置が、前記センサ領域の中心となるように、前記センサ部の位置が規定される、
露光装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の露光装置であって、
前記センサ部のセンサ領域が1次元領域であり、
前記センサ領域において前記反射光が受光される領域が、前記センサ領域の延在方向と非平行な辺との交差点を含む領域となるように、前記センサ部の位置が規定される、
露光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の露光装置であって、
前記空間光変調器と前記マイクロレンズアレイ部との間に位置ずれがない適正状態において前記交差点が現れる位置が、前記センサ領域の中心となるように、前記センサ部の位置が規定される、
露光装置。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載の露光装置であって、
前記複数のマイクロレンズの配列方向について、前記反射領域の寸法が、前記複数のマイクロレンズの配列間隔よりも、大きい、
露光装置。
【請求項9】
請求項1から3のいずれかに記載の露光装置であって、
前記複数の画素部の各々が、第1格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられており、
前記複数のマイクロレンズの各々が、前記第1格子パターンと対応する第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられており、
前記反射領域が、前記複数のマイクロレンズの配列領域の外側の領域において、前記第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられている、
露光装置。
【請求項10】
請求項1から3のいずれかに記載の露光装置であって、
前記空間光変調器でパターン光を形成させて該形成されたパターン光を前記マイクロレンズアレイ部を通じて処理対象物に照射する露光動作と、前記センサ部に前記反射光を検出させて前記位置ずれ検知部に前記位置ずれを検知させる位置ずれ検知動作と、を並行して行わせる動作制御部、
を備える、露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間変調によって形成されたパターン光を例えば感光材料に照射することによって、感光材料を所望の2次元のパターンで露光させるタイプの露光装置(いわゆる、直接描画装置)が知られている。
【0003】
このような露光装置において、パターン光の形成は、例えば空間光変調器を用いて行われる。一例として、空間光変調器の一種であるDMD(Digital Micromirror Device:デジタルマイクロミラーデバイス)は、複数のマイクロミラーが2次元状に配列されたデバイスであり、各マイクロミラーが入射光に対してなす角度が、描画するべきパターンに応じて制御されることによって、入射した光に空間変調が施されて、パターン光が形成される。
【0004】
ところで、空間光変調器を用いてパターン光を形成する露光装置においては、空間光変調器で形成されたパターン光の光路上に、複数のマイクロレンズが配列されてなるマイクロレンズアレイ(MLA)が設けられる場合がある(例えば、特許文献1,2参照)。空間光変調器で形成されたパターン光が、結像光学系などを通じて、マイクロレンズアレイ上に結像されると、空間光変調器の各画素部(具体的には例えば、DMDの各マイクロミラー)から各マイクロレンズに入射した光が、該マイクロレンズによって集光されて絞られて、1画素分の光のスポット(集光スポット)が形成される。つまり、空間光変調器で形成されたパターン光が、マイクロレンズアレイを通過することによって、複数の集光スポットで構成されるスポットアレイに成形される。パターン光をスポットアレイに成形した上で感光材料などに照射することで、広視野を維持しつつ、精細な描画性を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-34619号公報
【特許文献2】特開2004-296531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、空間光変調器で形成されたパターン光を、マイクロレンズアレイを通じてスポットアレイに成形するにあたっては、空間光変調器とマイクロレンズアレイとが適正な位置関係となっていることが重要である。適正な位置関係とは、具体的には、空間光変調器の各画素部とマイクロレンズアレイの各マイクロレンズとが1対1で対応しており、各画素部からの光が、対応するマイクロレンズに入射し、その隣のマイクロレンズには入射しないような位置関係である。すなわち、図16(a)に例示されるように、空間光変調器の各画素部からの光によってマイクロレンズアレイ上に形成される像(画素像)Aが、対応するマイクロレンズ91と重なり、かつ、対応しないマイクロレンズ91とは重ならないような位置関係である。空間光変調器とマイクロレンズアレイとの間に位置ずれが生じて、適正な位置関係でなくなると、空間光変調器の各画素部からの光の一部が、対応するマイクロレンズの隣のマイクロレンズに入射してしまう可能性がある。すなわち、位置ずれが生じると、図16(b)に例示されるように、画素像Aの一部分が、対応しないマイクロレンズ91に重なってしまう可能性がある。こうなると、消光比が低下し、描画(露光)の鮮明度が劣化してしまう。
【0007】
このような事態の発生を抑制するために、空間光変調器とマイクロレンズアレイとは、これらが適正な位置関係となるように、露光装置の組立て段階において十分な精度で位置合わせされている。ところが、組立て段階において空間光変調器とマイクロレンズアレイとが十分な精度で位置合わせされていたとしても、実際に露光装置が稼働されて露光動作が行われると、各種の要因(例えば、空間光変調器およびマイクロレンズアレイの各々を保持する保持部材の熱膨張(周囲の温度変化などに応じた熱膨張)、空間光変調器およびマイクロレンズアレイを組み付けた際の残留応力の経時的な開放、露光動作によって生じる振動、などといった各種の要因)のために、両者の相対的な位置関係が変化して、両者の間に位置ずれが生じてしまう可能性がある。
【0008】
そこで、例えば特許文献1では、DMDとマイクロレンズアレイとの間の位置ずれを検知して、位置ずれが低減されるように両者の相対的な位置関係を調整することが、提案されている。ここでは、DMDに調整用ミラーを、マイクロレンズアレイに調整用パターンを、それぞれ設けておき、調整用ミラーから発せられて調整用パターンを透過した透過光を、センサで受光する。そして、センサでの検出情報に基づいて、DMDとマイクロレンズアレイとの間の位置関係を特定して、位置ずれが生じている場合に、これが低減されるように両者の少なくとも一方を移動させる。
【0009】
このような構成においては、DMDに設けられた調整用ミラーから発せられて、マイクロレンズアレイに設けられた調整用パターンを透過した透過光を受光するために、センサが、DMDからマイクロレンズアレイを通じて処理対象物(例えば、感光材料の層が形成された基板)に照射される光の光路について、マイクロレンズアレイよりも下流側の位置、例えば露光ヘッドの真下に、配置される。ところがこの場合、例えば露光動作が行われる間は、露光ヘッドの真下には処理対象物が配置されるため、センサで透過光の検知を行うことが難しい。つまり、露光動作の途中に位置ずれの検知を行うことが難しい。
【0010】
本開示は、露光動作の途中であっても、空間光変調器とマイクロレンズアレイとの間の位置ずれを検知できる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様は、露光装置であって、複数の画素部を備える空間光変調器と、複数のマイクロレンズを備え、前記複数のマイクロレンズの各々で前記複数の画素部の各々からの光を集光する、マイクロレンズアレイ部と、前記マイクロレンズアレイ部に設けられた反射領域と、前記空間光変調器の所定位置から発せられて前記反射領域に入射した光が前記反射領域で反射された反射光を検出するセンサ部と、前記センサ部での検出情報に基づいて、前記空間光変調器と前記マイクロレンズアレイ部との間の位置ずれを検知する位置ずれ検知部と、を備える。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に係る露光装置であって、前記反射領域が、凹面である。
【0013】
第3の態様は、第2の態様に係る露光装置であって、前記センサ部が、そのセンサ領域の法線が前記反射領域の焦点を通過するような姿勢で設けられる。
【0014】
第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る露光装置であって、前記センサ部のセンサ領域が2次元領域であり、前記センサ領域において前記反射光が受光される領域が、頂点を含む領域となるように、前記センサ部の位置が規定される。
【0015】
第5の態様は、第4の態様に係る露光装置であって、前記空間光変調器と前記マイクロレンズアレイ部との間に位置ずれがない適正状態において前記頂点が現れる位置が、前記センサ領域の中心となるように、前記センサ部の位置が規定される。
【0016】
第6の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る露光装置であって、前記センサ部のセンサ領域が1次元領域であり、前記センサ領域において前記反射光が受光される領域が、前記センサ領域の延在方向と非平行な辺との交差点を含む領域となるように、前記センサ部の位置が規定される。
【0017】
第7の態様は、第6の態様に係る露光装置であって、前記空間光変調器と前記マイクロレンズアレイ部との間に位置ずれがない適正状態において前記交差点が現れる位置が、前記センサ領域の中心となるように、前記センサ部の位置が規定される。
【0018】
第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様に係る露光装置であって、前記複数のマイクロレンズの配列方向について、前記反射領域の寸法が、前記複数のマイクロレンズの配列間隔よりも、大きい。
【0019】
第9の態様は、第1から第8のいずれかの態様に係る露光装置であって、前記複数の画素部の各々が、第1格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられており、前記複数のマイクロレンズの各々が、前記第1格子パターンと対応する第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられており、前記反射領域が、前記複数のマイクロレンズの配列領域の外側の領域において、前記第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられている。
【0020】
第10の態様は、第1から第9のいずれかの態様に係る露光装置であって、前記空間光変調器でパターン光を形成させて該形成されたパターン光を前記マイクロレンズアレイ部を通じて処理対象物に照射する露光動作と、前記センサ部に前記反射光を検出させて前記位置ずれ検知部に前記位置ずれを検知させる位置ずれ検知動作と、を並行して行わせる動作制御部、を備える。
【発明の効果】
【0021】
第1の態様では、空間光変調器の所定位置から発せられてマイクロレンズアレイ部の反射領域に入射した光が該反射領域で反射された反射光を、センサ部で検出する。空間光変調器とマイクロレンズアレイ部との位置関係が変化すると、センサ部で反射光が受光される位置などに変化が生じる。つまり、センサ部において反射光が受光される位置などは、空間光変調器とマイクロレンズアレイ部との位置関係を反映しており、反射光が受光される位置の変化などを検知することで、空間光変調器とマイクロレンズアレイ部との間の位置ずれを検知することができる。ここでは、位置ずれの検知にあたって、マイクロレンズアレイ部で反射された反射光を利用するので、センサ部は、空間光変調器からマイクロレンズアレイ部を通じて処理対象物に照射される光の光路について、マイクロレンズアレイ部の上流側に配置されて、ここで反射光を検出する。したがって、該光路について、マイクロレンズアレイ部の下流側に配置される部材(例えば、処理対象物である基板が載置されるステージ)の位置がどのようなものであっても、位置ずれの検知を行うことが可能であり、露光動作の途中であっても、位置ずれを検知することができる。
【0022】
第2の態様によると、反射領域が凹面であるので、空間光変調器とマイクロレンズアレイ部との間の位置ずれ量が、凹面の曲率半径に応じた拡大率で拡大されて検出される。したがって、位置ずれの検知感度を十分に高めることができる。
【0023】
第3の態様によると、反射領域で反射された反射光を、センサ部のセンサ領域で有効に受光することができる。
【0024】
第4の態様によると、頂点の位置から、空間光変調器とマイクロレンズアレイ部との位置関係を簡易に特定することができる。
【0025】
第5の態様によると、適正状態において頂点が現れる位置がセンサ領域の中心であるので、360度全方向の位置ずれを検知することができる。
【0026】
第6の態様によると、交差点の位置から、空間光変調器とマイクロレンズアレイとの位置関係を簡易に特定することができる。
【0027】
第7の態様によると、適正状態において交差点が現れる位置がセンサ領域の中心であるので、正負両方向の位置ずれを検知することができる。
【0028】
第8の態様によると、空間光変調器とマイクロレンズアレイ部との位置関係の変化を反映した反射光を十分に発生させることができる。
【0029】
第9の態様によると、各マイクロレンズと同様に、反射領域にも、空間光変調器のいずれかの画素部から発せられる光を入射させることができる。つまり、空間光変調器におけるパターン光の形成に用いられていない予備的な画素を利用して、反射光を形成することができる。
【0030】
第10の態様によると、例えば、露光動作の途中で、空間光変調器とマイクロレンズアレイ部との間に位置ずれが生じたとしても、これをリアルタイムで検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態に係る露光装置の概略構成を示す側面図である。
図2】露光装置の概略構成を示す平面図である。
図3】制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】露光ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図5】露光ヘッドの光学系を説明するための図である。
図6】DMDを模式的に示す平面図である。
図7】MLA部を模式的に示す平面図である。
図8】MLA部を模式的に示す断面図である。
図9】反射領域に入射した光がセンサ部で受光される態様を説明するための図である。
図10】反射領域に入射した光がセンサ部で受光される態様を説明するための図である。
図11】空間光変調器およびMLA部を保持する保持ユニットを模式的に示す側面図である。
図12】露光動作を説明するための図である。
図13】位置ずれ検知動作に係る処理の流れを示す図である。
図14】反射領域に入射した光が、変形例に係るセンサ部で受光される態様を説明するための図である。
図15】反射領域に入射した光が、変形例に係るセンサ部で受光される態様を説明するための図である。
図16】空間光変調器とMLA部との間に位置ずれが生じている状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本開示の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法または数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0033】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0034】
<1.露光装置の概略構成>
実施形態に係る露光装置100の概略構成について、図1図2を参照しながら説明する。図1は、露光装置100の概略構成を示す側面図である。図2は、露光装置100の概略構成を示す平面図である。以下において参照する各図には、説明の便宜上、副走査方向を「X方向」とし、主走査方向を「Y方向」とし、これらと直交する方向を「Z方向」とするXYZ座標系が示されている。また、以下において参照する各図において、図に現れる要素は、説明のために簡略化され、誇張されて示されており、その配置や形状なども模式的なものである。また、一部の要素の図示は省略されている。
【0035】
露光装置100は、直描型の露光装置であり、描画するべきパターンに応じて空間変調されたパターン光(描画光)を、処理対象物に照射して、パターンを描画(露光)する。このような露光装置は、直接描画装置、パターン露光装置、などとも呼ばれる。処理対象物は、具体的には例えば、レジストなどの感光材料の層Rが形成された基板Wであり、その上面(感光材料の層Rの上面)が露光対象面とされる(図12)。ここでいう基板Wには、半導体基板、プリント基板、液晶表示装置などに設けられるカラーフィルタ用基板、液晶表示装置またはプラズマ表示装置などに設けられるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、太陽電池パネル用基板、などが含まれる。基板Wの形状は、矩形状であってもよいし、円形状であってもよい。図においては、矩形状の基板Wが例示されている。
【0036】
露光装置100は、例えば、ステージ1、ステージ駆動機構2、ステージ位置計測部3、露光部4、および、制御部5、を備える。
【0037】
(ステージ1)
ステージ1は、処理対象物である基板Wを保持するための部分であり、基台101上に設けられる。ステージ1は、具体的には例えば、平板状の外形を有しており、その上面に、基板Wが、水平姿勢(主面が水平面に沿うような姿勢)で保持される。ステージ1の上面に複数の吸引孔(図示省略)が設けられて、該複数の吸引孔に負圧(吸引圧)が形成されることによって、ステージ1の上面に載置された基板Wが、該上面に対して固定された状態で、ステージ1に保持されてもよい。
【0038】
(ステージ駆動機構2)
ステージ駆動機構2は、ステージ1を基台101に対して移動させるための機構であり、基台101上に設けられる。ステージ駆動機構2は、具体的には例えば、ステージ1を回転方向(Z軸周りの回転方向)に回転させる回転機構21、ステージ1(具体的には、回転機構21を介してステージ1を支持する支持プレート201)を副走査方向(X方向)に移動させる副走査機構22、および、ステージ1(具体的には、副走査機構22を介して支持プレート201を支持するベースプレート202)を主走査方向(Y方向)に移動させる主走査機構23、を備える。
【0039】
回転機構21は、ステージ1を回転方向(Z軸周りの回転方向)に回転させる機構であり、支持プレート201上に配設される。つまり、ステージ1は、回転機構21を介して支持プレート201上に支持される。回転機構21は、具体的には例えば、ステージ1の上面の中心(ひいては、該上面に保持された基板Wの中心)を通り、該上面の法線方向(該上面に垂直な方向)に沿う回転軸Cの周りで、ステージ1を回転させる。回転機構21の具体的な構成はどのようなものであってもよいが、一例として、回転機構21は、軸線が回転軸Cと一致するように配置されるとともに上端においてステージ1に固定された回転軸部211と、回転軸部211の下端に接続されてこれを軸線の周りで回転させる回転駆動部(具体的には例えば、回転モータ)212と、を含んで構成することができる。
【0040】
副走査機構22は、支持プレート201(ひいては、ここに支持されているステージ1)を副走査方向(X方向)に移動させる機構であり、支持プレート201とベースプレート202の間に設けられる。つまり、ステージ1は、回転機構21、支持プレート201、および、副走査機構22を介して、ベースプレート202上に支持される。副走査機構22は、具体的には例えば、支持プレート201とベースプレート202との間に設けられた、副走査方向に延在するリニアモータ221を備える。リニアモータ221は、具体的には例えば、ベースプレート202の上面に敷設された固定子221aと、支持プレート201の下面に設けられた移動子221bと、を含んで構成される。さらに、副走査機構22は、支持プレート201とベースプレート202との間に設けられたガイドユニット222を備える。ガイドユニット222は、具体的には例えば、ベースプレート202の上面に敷設されて副走査方向に延在する一対のガイド部材222a,222aと、支持プレート201に対して固定されるとともに各ガイド部材222aに対して摺動自在に設けられた摺動部材(例えば、ボールベアリング)222bと、を含んで構成される。このような構成において、リニアモータ221が作動されると、支持プレート201が、ガイドユニット222に案内されつつ、ベースプレート202上で副走査方向に移動する。このとき、各摺動部材222bが各ガイド部材222aに対して摺動しつつ移動することで、支持プレート201は、副走査方向に滑らかに移動する。
【0041】
主走査機構23は、ベースプレート202(ひいては、副走査機構22および支持プレート201を介してベースプレート202に支持されているステージ1)を主走査方向(Y方向)に移動させる機構であり、ベースプレート202と基台101の間に設けられる。つまり、ステージ1は、回転機構21、支持プレート201、副走査機構22、ベースプレート202、および、主走査機構23を介して、基台101上に支持される。主走査機構23は、具体的には例えば、ベースプレート202と基台101との間に設けられた、主走査方向に延在するリニアモータ231を備える。リニアモータ231は、具体的には例えば、基台101の上面に敷設された固定子と、ベースプレート202の下面に設けられた移動子と、を含んで構成される。さらに、主走査機構23は、ベースプレート202と基台101との間に設けられたガイドユニット232を備える。ガイドユニット232は、具体的には例えば、基台101の上面に敷設されて主走査方向に延在する一対のガイド部材232a,232aと、ベースプレート202に対して固定されるとともに各ガイド部材232aに対して摺動自在に設けられた摺動部材(例えば、ボールベアリング)232bと、を含んで構成される。このような構成において、リニアモータ231が作動されると、ベースプレート202が、ガイドユニット232に案内されつつ、基台101上で主走査方向に移動する。このとき、各摺動部材232bが各ガイド部材232aに対して摺動しつつ移動することで、ベースプレート202は、主走査方向に滑らかに移動する。
【0042】
(ステージ位置計測部3)
ステージ位置計測部3は、ステージ1の位置を計測する。ステージ位置計測部3は、具体的には例えば、ステージ1の外からステージ1に向けてレーザ光を出射する出射部と、該出射されたレーザ光がステージ1によって反射された反射光を受光する受光部と、反射光と出射光との干渉に基づいてステージ1の位置(例えば、主走査方向に沿うステージ1の位置(Y位置))を計測する計測部と、を含んで構成される(いわゆる、干渉式のレーザ測長器)。もっとも、ステージ位置計測部3の具体的な構成はこれに限らない。すなわち、ステージ位置計測部3は、必ずしもレーザ測長器を用いて構成される必要はなく、例えばリニアスケールなどを用いて構成されてもよい。
【0043】
(露光部4)
露光部4は、描画(露光)するべきパターン(例えば、回路パターン)に応じて空間変調されたパターン光を形成し、これを基板Wに照射してパターンを描画(露光)する。露光部4は、基台101に設けられた支持フレーム102に支持される。すなわち、基台101の上方には、基台101を副走査方向(X方向)に沿って横断する門型の支持フレーム102が設けられており、露光部4は、この支持フレーム102に支持される。露光部4の構成については、後に詳述する。
【0044】
(制御部5)
制御部5は、露光装置100が備える各部の動作を制御するとともに、各種の演算処理を行う要素であり、例えば、電気回路を有する一般的なコンピュータ、あるいは、マイクロコンピュータ、などによって構成される。制御部5は、具体的には例えば、図3に示されるように、データ処理(演算回路としての機能)を担う中央演算装置としてのCPU(Central Processor Unit)51、基本プログラムなどが格納されるROM(Read Only Memory)52、CPU51がデータ処理を行う際の作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)53、フラッシュメモリ、ハードディスク装置、などの不揮発性記憶装置によって構成される記憶装置54、これらを相互に接続するバスライン55、などを含んで構成される。また、制御部5には、各種データや各種画像を表示する表示部56、および、オペレータからの各種指令の入力を受け付ける操作部57が接続されてもよい。表示部56は、例えば、一般的なCRTモニタ、液晶ディスプレイ、タッチパネル、などを用いて実現することができる。また、操作部57は、例えば、各種ボタン、各種キー、マウス、キーボード、タッチパネル、マイク、などを用いて実現することができる。また、ROM52(あるいは記憶装置54)には、制御部5が実行する処理を規定するプログラムPが格納されており、CPU51がこのプログラムPを実行することにより、制御部5がプログラムPによって規定された処理を実行することができる。もっとも、制御部5が実行する処理の一部または全部が、専用の論理回路などのハードウェア(例えば、専用プロセッサ)によって実行されてもよい。
【0045】
<2.露光部4>
<2-1.構成>
次に、露光部4の構成について、図1図2に加え、図4を参照しながら説明する。図4は、露光部4が備える露光ユニット40の概略構成を示す斜視図である。
【0046】
露光部4は、1個以上(図2の例では9個)の露光ユニット40を備える。各露光ユニット40は、光源部41と露光ヘッド42とを含んで構成される。ただし、露光部4が複数の露光ユニット40を備える場合、複数の露光ユニット40の各々に個別の光源部41が設けられてもよいし、2個以上の露光ユニット40の間で光源部41が共用されてもよい。すなわち、露光ヘッド42と一対一で対応する光源部41が設けられてもよいし、複数の露光ヘッド42の間で共用される光源部41が設けられてもよい。
【0047】
露光ユニット40は、支持フレーム102に支持される。具体的には例えば、光源部41が第1収容ボックス401に、露光ヘッド42が第2収容ボックス402に、それぞれ収容され、露光ヘッド42を収容した第2収容ボックス402が支持フレーム102に支持され、光源部41を収容した第1収容ボックス401が、第2収容ボックス402の上側(+Z側)に配置されて、第2収容ボックス402を介して、支持フレーム102に支持される。
【0048】
(光源部41)
光源部41は、パターン光の元となる光を発生させる。光源部41は、具体的には例えば、レーザ駆動部からの駆動信号を受けてレーザ光を出力するレーザ発振器と、レーザ発振器から出力された光(スポットビーム)を強度分布が均一な光とする照明光学系と、を備える(いずれも図示省略)。光源部41から出射された光(光ビーム)は、露光ヘッド42に入射するように導かれる。例えば、光源部41が収容される第1収容ボックス401が、露光ヘッド42が収容される第2収容ボックス402の上側に配置される場合、光源部41は下方(-Z方向)に向けて光を出射し、該出射された光が、ミラー411で反射されて、露光ヘッド42(具体的には、露光ヘッド42が備える空間光変調器71)に入射する。なお、1個の光源部41が複数の露光ヘッド42の間で共用される場合、光源部41から出射された光が、複数に分割されて、分割された各光が各露光ヘッド42に入射するように導かれる構成とすればよい。
【0049】
(露光ヘッド42)
露光ヘッド42は、光源部41から発せられた光に空間変調を施してパターン光を形成し、これを基板Wに照射する。露光ヘッド42は、具体的には例えば、空間光変調器71、第1結像光学系72、マイクロレンズアレイ部(以下「MLA部」ともいう)73、センサ部74、および、第2結像光学系75、を備える。また、露光ヘッド42は、測定器76をさらに備えるものであってもよい。
【0050】
露光ヘッド42においては、空間光変調器71でパターン光が形成され、該パターン光が、第1結像光学系72、MLA部73、および、第2結像光学系75を通じて、基板Wに照射される。図の例では、パターン光の光路が、L字状に折れ曲がったものとなっている。つまり、L字状に折れ曲がった経路上に、空間光変調器71、第1結像光学系72、MLA部73、および、第2結像光学系75が、この順で、配列されている。具体的には例えば、第1結像光学系72は、その光軸(第1光軸)K1を、所定方向(図の例ではY方向)に沿わせるような姿勢で配置されており、第1光軸K1に沿って、一方側(-Y側)に空間光変調器71が配置され、他方側(+Y側)にMLA部73が配置される。つまり、空間光変調器71、第1結像光学系72、および、MLA部73は、第1光軸K1に沿って一列に(一直線上に)配列される。一方、第2結像光学系75は、その光軸(第2光軸)K2を、第1光軸K1とは異なる所定方向(図の例では、Z方向)に沿わせるような姿勢で配置される。また、MLA部73と第2結像光学系75の間であって、第1光軸K1と第2光軸K2とが交差する位置には、第1光軸K1に沿って進行する光を第2光軸K2に導くミラー77が、設けられる。このように、L字状に折れ曲がった経路上に各部71,72,73,75が配列される構成によると、例えばZ方向に延在する直線状の経路上に各部71,72,73,75が配列される構成と比較して、露光ヘッド42の高さ(ひいては、露光装置100の高さ)を抑えることができる。
【0051】
なお、L字状に折れ曲がった経路上に各部71,72,73,75が配列される場合、露光ヘッド42が収容される第2収容ボックス402も、L字状に折れ曲がった形状とされる。具体的には例えば、第2収容ボックス402は、支持フレーム102の上側に配置されて、第1光軸K1の延在方向(Y方向)に延在する第1部分402aと、支持フレーム102の一方側(図の例では+Y側)に配置されて第2光軸K2の延在方向(Z方向)に延在する第2部分402bと、を含むものとされ、第1部分402aに、空間光変調器71、第1結像光学系72、MLA部73、および、センサ部74が収容され、第2部分402bに、第2結像光学系75、および、測定器76が収容される。
【0052】
<2-2.露光ヘッド42が備える各部の構成>
次に、露光ヘッド42が備える各部の構成について、図4に加え、図5を参照しながらより詳細に説明する。図5は、露光ヘッド42の光学系を説明するための図である。図5では、説明の便宜上、第1光軸K1および第2光軸K2が、同一直線上に示されている。すなわち、説明の便宜上、ミラー77が省略されており、空間光変調器71、第1結像光学系72、MLA部73、および、第2結像光学系75が、同一直線上に配列されている。
【0053】
(空間光変調器71)
空間光変調器71は、光に空間変調を施してパターン光を形成する。具体的には例えば、空間光変調器71は、複数の画素部を備え、画素部ごとに、パターンの描画に寄与させる必要光としての属性と、パターンの描画に寄与させない不要光としての属性とが振り分けて与えられるように、光に空間変調を施す。
【0054】
空間光変調器71は、具体的には例えば、DMD(Digital Micromirror Device:デジタルマイクロミラーデバイス)710を備える。
【0055】
DMD710の構成について、図4図5に加え、図6を参照しながら説明する。図6は、DMD710を、ここから発せられるパターン光の光路に沿って該光路の下流側から見た図である。いうまでもなく、図6は説明のための模式図に過ぎず、DMD710が備えるマイクロミラー711の個数などを正確に表すものではない。なお、ある要素から光が「発せられる」という表現には、その要素が自発的に発光することによって光が発せられる場合だけでなく、該要素に入射した光が該要素で反射されることによって該要素から光が発せられる場合、該要素に入射した光が該要素を透過(通過)することによって該要素から光が発せられる場合、なども含まれる。
【0056】
DMD710は、複数のマイクロミラー711が、例えばメモリセル上に、2次元状に配列された構成を備え、複数のマイクロミラー711の配列面を、第1光軸K1の延在方向(Y軸方向)と直交する面(XZ面)に沿わせるような姿勢で設けられる。空間光変調器71がDMD710を備える場合、複数のマイクロミラー711の各々が、空間光変調器71における1個の画素部を形成する。
【0057】
複数のマイクロミラー711の各々は、具体的には例えば、所定の格子方向および所定の格子間隔を有する格子パターン(第1格子パターン)の格子点のいずれかに相当する位置に設けられる。具体的には例えば、各マイクロミラー711は、その中心(幾何学中心)が、第1格子パターンの格子点のいずれかに一致するような位置に設けられる。第1格子パターンは、具体的には例えば、一方の格子方向と他方の格子方向とが互いに直交するものである(図の例では、一方の格子方向がX軸方向に沿っており、他方の格子方向がZ軸に沿っている)。また、第1格子パターンは、各格子方向についての格子間隔が、該格子方向におけるマイクロミラー711の寸法とほぼ一致する。この場合、各格子方向について、隣り合う各マイクロミラー711が隙間なく接することになる。
【0058】
DMD710が備えるマイクロミラー711の個数はいくつであってもよい。一例として、一方の格子方向(例えばX方向)に1920個、他方の格子方向(例えばZ方向)に1080個のマイクロミラー711が配列されてもよい(すなわち、DMD710は1920×1080=19660個のマイクロミラー711を備えるものであってもよい)。
【0059】
各マイクロミラー711は、その角度が可変である可動ミラーであり、各マイクロミラー711の角度が、描画するべきパターンに応じて制御されることによって、入射した光に空間変調が施されて、パターン光が形成される。すなわち、パターン光の形成にあたっては、DMD710に入射した光のうち、パターンの描画に寄与させる必要光と、パターンの描画に寄与させない不要光とが、互いに異なる方向に反射されるように、描画するべきパターンに応じて各マイクロミラー711の角度が制御される。具体的には例えば、必要光が、第1結像光学系72に入射する方向に反射され、不要光が、第1結像光学系72に入射しない方向に反射されるように、各マイクロミラー711の角度が制御される。つまり、DMD710では、光を反射させる方向がマイクロミラー711ごとに切り替えられることで、各マイクロミラー711での反射光に、パターンの描画に寄与させる必要光としての属性と、パターンの描画に寄与させない不要光としての属性とが振り分けて与えられ、これによって、パターン光が形成される。なお、いうまでもなく、ここでいう「マイクロミラー711の角度」とは、各マイクロミラー711が、入射した光に対してなす角度であり、具体的には例えば、マイクロミラー711の対角線の周りでの角度である。
【0060】
ただし、ここでは、DMD710に設けられている複数のマイクロミラー711のうちの一部だけが、パターン光の形成に用いられる。別の言い方をすると、DMD710には、パターン光の形成に用いられるマイクロミラー711の個数よりも多い個数のマイクロミラー711が、設けられる。具体的には例えば、複数のマイクロミラー711の一方の配列方向(すなわち、第1格子パターンにおける一方の格子方向であり、図の例ではZ方向)の中央の領域71aに配列されている複数のマイクロミラー711が、通常において、パターン光の形成に用いられ、該配列方向の両端側の領域71b,71bに配列されている1以上のマイクロミラー711は、通常において、パターン光の形成に用いられない。以下において、パターン光の形成に用いられるマイクロミラー711とパターン光の形成に用いられないマイクロミラー711とを区別する場合には、前者を「有効マイクロミラー711a」とよび、後者を「予備マイクロミラー711b」とよぶ。また、有効マイクロミラー711aが配列されている領域71aを「有効領域71a」とよび、予備マイクロミラー711bが配列されている領域71bを「予備領域71b」とよぶ。
【0061】
(第1結像光学系72)
再び図4図5を参照する。第1結像光学系72は、空間光変調器71から発せられるパターン光(すなわち、空間光変調器71で形成されてここから到来するパターン光)を結像する光学系である。第1結像光学系72は、具体的には例えば、第1レンズ72aを保持する第1鏡筒721と、第2レンズ72bを保持する第2鏡筒722と、を備える。各レンズ72a,72bは、空間光変調器71から発せられるパターン光の光路上に配置される。第1レンズ72aおよび第2レンズ72bの各々は、1個のレンズで構成されてもよいし、複数のレンズで構成されてもよい。
【0062】
第1レンズ72aは、空間光変調器71からのパターン光を、光軸方向(Y軸方向)に沿った平行光に整えて第2レンズ72bに導く。一方、第2レンズ72bは、像側テレセントリックな光学系を形成するものであり、第1レンズ72aからのパターン光を、光軸方向(Y軸方向)と平行な状態でMLA部73に導く。なお、第1結像光学系72には、例えば、空間光変調器71で形成されたパターン光を、1倍を超える横倍率(例えば、約2倍の横倍率)で結像する拡大光学系が適用されてもよい。この場合、例えば、第2レンズ72bの半径は、第1レンズ72aの半径よりも大きなものとされる。
【0063】
(MLA部73)
MLA部73の構成について、図4図5に加え、図7図8を参照しながら説明する。図7は、MLA部73を、ここに入射するパターン光の光路に沿って該光路の上流側から見た図である。図8は、MLA部73を、図7の矢印B1方向から見た断面図(図8(a))、および、図7の矢印B2方向から見た断面図(図8(b))である。いうまでもなく、図7および図8はいずれも説明のための模式図に過ぎず、MLA部73が備えるマイクロレンズ731の個数などを正確に表すものではない。
【0064】
a.マイクロレンズ731
MLA部73は、複数のマイクロレンズ731を備え、複数のマイクロレンズ731の各々で、空間光変調器71の複数の画素部(空間光変調器71がDMD710を備える場合、複数のマイクロミラー711)の各々からの光を集光することによって、空間光変調器71で形成されたパターン光をスポットアレイに成形する。具体的には、パターン光がMLA部73を通過する際に、各有効マイクロミラー711aから発せられた光が、各マイクロレンズ731によって集光されて絞られて、1画素分の光のスポット(集光スポット)が形成され、これによって、パターン光が、複数の集光スポットで構成されるスポットアレイに成形される。パターン光をスポットアレイに成形した上で基板Wに投影することによって、広視野を維持しつつも、基板Wに投影される像の鮮鋭度を高く保つことが可能となり、精細な描画性が実現される。
【0065】
MLA部73は、具体的には例えば、複数のマイクロレンズ731が、基材(例えば、石英などによって形成される基材)730の主面上に、2次元状に配列された構成を備え、複数のマイクロレンズ731の配列面を、第1光軸K1の延在方向(Y軸方向)と直交する面(XZ面)に沿わせるような姿勢で設けられる。また、MLA部73は、複数のマイクロレンズ731の配列面が、第1結像光学系72の結像面と一致するような位置に、配置される。別の言い方をすると、第1結像光学系72は、空間光変調器71で形成されたパターン光を、MLA部73における複数のマイクロレンズ731の配列面上に、結像する。以下において、1個のマイクロミラー711で反射された光が、第1結像光学系72を通じてマイクロレンズ731上に結像された像(別の言い方をすると、1個のマイクロミラー711(すなわち、空間光変調器71における1個の画素部)からの光がMLA部73上に形成する像)を、「画素像A」とよぶ。
【0066】
複数のマイクロレンズ731の各々は、具体的には例えば、第1格子パターン(すなわち、複数のマイクロミラー711の配列パターンを規定する第1格子パターン)と対応する格子パターン(第2格子パターン)の格子点のいずれかに相当する位置に設けられる。具体的には例えば、各マイクロレンズ731は、その中心(幾何学中心)が、第2格子パターンの格子点のいずれかに一致するような位置に設けられる。例えば、第1格子パターンが、一方の格子方向と他方の格子方向とが互いに直交するものである場合、第2格子パターンも、一方の格子方向と他方の格子方向とが互いに直交するものとされる(図の例では、一方の格子方向がX軸方向に沿っており、他方の格子方向がZ軸に沿っている)。また、第1格子パターンが、各格子方向についての格子間隔が、該格子方向におけるマイクロミラー711の寸法とほぼ一致するものである場合、第2格子パターンは、各格子方向についての格子間隔が、該格子方向における画素像Aの寸法とほぼ一致するものとされる。すなわち、第2格子パターンは、一方の格子方向(X方向)の格子間隔(すなわち、該格子方向における複数のマイクロレンズ731の配列間隔)Exが、該格子方向における画素像Aの寸法Axとほぼ一致し(Ex=Ax)、他方の格子方向(Z方向)の格子間隔(すなわち、該格子方向における複数のマイクロレンズ731の配列間隔)Ezが、該格子方向における画素像Aの寸法Azとほぼ一致するものとされる(Ez=Az)。この場合、各格子方向について、隣り合う各マイクロレンズ731上に結像される画素像Aが隙間なく接することになる。ただし、各マイクロレンズ731(各マイクロレンズ731の周縁部分に後述する反射膜733が設けられる場合、反射膜733から露出する部分)は、画素像Aよりも小さなサイズとされる。
【0067】
MLA部73は、これが空間光変調器71に対して適正な位置関係となるように、露光装置100の組立て段階において、十分な精度で空間光変調器71に対して位置合わせされている。適正な位置関係とは、具体的には、DMD部710の各有効マイクロミラー711aとMLA部73の各マイクロレンズ731とが1対1で対応しており、各有効マイクロミラー711aからの光(各有効マイクロミラー711aで反射された光)が、対応するマイクロレンズ731に入射し、その隣のマイクロレンズ731には入射しないような位置関係である。すなわち、各有効マイクロミラー711aからの光によって形成される画素像Aが、該有効マイクロミラー711aと対応するマイクロレンズ731と重なり、かつ、対応しないマイクロレンズ731とは重ならないような位置関係である。MLA部73と空間光変調器71とがこのような適正な位置関係にある状態(以下「適正状態」ともいう)では、各有効マイクロミラー711aから発せられて、対応するマイクロレンズ731に入射した光が、該マイクロレンズ731によって集光されて絞られて、集光スポットが形成される際に、各有効マイクロミラー711aから発せられた光が、対応しないマイクロレンズ731にまで入射することがないので、消光比が低下することがなく、描画の鮮明度が十分に高く維持される。
【0068】
b.反射領域732
MLA部73は、複数のマイクロレンズ731が配列された領域(配列領域)73aの外側の領域に設けられた反射領域732を、さらに備える。反射領域732は、具体的には例えば、MLA部73の外縁領域73bに設けられる。ただし、「外縁領域73b」とは、DMD部710において予備マイクロミラー711bが配列されている領域である予備領域71bと対応するMLA部73上の領域である。すなわち、DMD部710の有効領域71aが、MLA部73の配列領域73aと対応し、DMD部710の予備領域71bが、MLA部73の外縁領域73bと対応する。
【0069】
例えば、DMD部710において、有効領域71aの+Z側および-Z側にそれぞれ予備領域71bが形成されている場合(図6)、MLA部73において、例えば、配列領域73aの+Z側および-Z側に外縁領域73bが形成され、これら2個の外縁領域73bの両方あるいは一方に、反射領域732が設けられる。図7においては、2個の外縁領域73bの両方に反射領域732が設けられているが、一方の外縁領域73bのみに反射領域732が設けられるものであってもよい。
【0070】
上記のとおり、複数のマイクロレンズ731の各々は、第1格子パターンと対応する第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられる。ここでは、反射領域732も、各マイクロレンズ731と同様、第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられる。具体的には例えば、反射領域732は、その中心(幾何学中心)が、第2格子パターンの格子点のいずれかに一致するような位置に設けられる。例えば、一方の格子方向(Z方向)に沿って配列領域73aと隣り合って外縁領域73bが形成されている場合、反射領域732は、該一方の格子方向(Z方向)についての反射領域732とマイクロレンズ731との間隔(中心の間隔)Fzが、該格子方向(Z方向)についての格子間隔(すなわち、該格子方向における複数のマイクロレンズ731の配列間隔)Ezの整数倍となるような位置に、設けられる(Fz=n×Ez、ただし「n」は整数)。また、反射領域732は、他方の格子方向(X方向)について、いずれかのマイクロレンズ731と同じ位置(すなわち、いずれかのマイクロレンズ731と同じX位置)に、設けられる。
【0071】
上記のとおり、配列領域73aにおいて第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられている各マイクロレンズ731には、有効領域71aにおいて第1格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられている各有効マイクロミラー711aからの光(各有効マイクロミラー711aで反射された光)が入射する。すなわち、各有効マイクロミラー711aからの光によって形成される画素像Aが、該有効マイクロミラー711aと対応するマイクロレンズ731と重なる。同様に、外縁領域73bにおいて第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられている反射領域732には、予備領域71bにおいて第1格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられている予備マイクロミラー711bからの光(予備マイクロミラー711bで反射された光)が入射する。すなわち、いずれかの予備マイクロミラー711bからの光によって形成される画素像Aが、反射領域732と重なる。以下において、反射領域732と対応する予備マイクロミラー711b(すなわち、反射領域732に光に入射させることができる位置にある予備マイクロミラー711b)を、「特定予備マイクロミラー711bt」ともよぶ。
【0072】
上記のとおり、各マイクロレンズ731(各マイクロレンズ731の周縁部分に後述する反射膜733が設けられる場合、反射膜733から露出する部分)は、画素像Aよりも小さなサイズとされる。これに対し、反射領域732は、画素像Aよりも大きなサイズとされる。具体的には例えば、反射領域732は、一方の格子方向(X方向)の寸法Dxが、該格子方向における画素像Aの寸法Axよりも大きく(Dx>Ax)、他方の格子方向(Z方向)の寸法Dzが、該格子方向の画素像Aの寸法Azよりも大きい(Dz>Az)。特に、各格子方向の寸法Dx,Dzは、該格子方向における画素像Aの寸法Ax,Azの1.5倍程度であることが好ましい(Dx=1.5×Ax、Dz=1.5×Az)。
【0073】
また、上記のとおり、第2格子パターンにおける各格子方向の格子間隔(すなわち、各格子方向における複数のマイクロレンズ731の配列間隔)Ex,Ezは、該格子方向における画素像Aの寸法Ax,Azとほぼ一致する(Ex=Ax、Ez=Az)。したがって、別の言い方をすれば、反射領域732は、複数のマイクロレンズ731の一方の配列方向である一方の格子方向(X方向)の寸法Dxが、該格子方向のマイクロレンズ731の配列間隔Exよりも大きく(Dx>Ex)、複数のマイクロレンズ731の他方の配列方向である他方の格子方向(Z方向)の寸法Dzが、該格子方向のマイクロレンズ731の配列間隔Ezよりも大きい(Dz>Ez)。特に、各格子方向の寸法Dx,Dzは、該格子方向におけるマイクロレンズ731の配列間隔Ex,Ezの1.5倍程度であることが好ましい(Dx=1.5×Ex、Dz=1.5×Ez)。
【0074】
反射領域732の平面視における形状はどのようなものであってもよく、例えば、図示されるように、円形状であってもよい。この場合、マイクロミラー711(ひいては、画素像A)が矩形状であるとすると、反射領域732の半径は、画素像Aに外接する円(外接円)の半径以上であることが好ましい。また、反射領域732の半径は、画素像Aに内接する円(内接円)の半径の1.5倍程度であることも好ましい。
【0075】
反射領域732は、凹面である。つまり、反射領域732は、凹面鏡であり、光学的に凹レンズと同様の振る舞いをする。特定予備マイクロミラー711btから発せられて、第1結像光学系72を通じて反射領域732に入射する光は、実質的に平行光であるため、凹面である反射領域732で反射された反射光のほぼ全てが、焦点Foを通過することになる(図9図10参照)。
【0076】
凹面である反射領域732は、具体的には例えば、基材(例えば、石英などにより形成される基材)730に、凸状の形状部分を設けるとともに、該凸状の形状部分に反射膜733を設けることによって、形成することができる。反射膜733は、具体的には例えば、金属(例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、など)の薄膜を、マスクを用いた蒸着、スパッタリング、などといった適宜の手法を用いて成膜することによって得ることができる。なお、反射膜733は、反射領域732を形成するべき部分以外にも設けられてよい。例えば、反射膜733は、外縁領域73bの全体に設けられてもよい。また例えば、反射膜733は、配列領域73aにおいて、各マイクロレンズ731の周縁部分および隣り合うマイクロレンズ731の間の領域に設けられてもよい。このような領域に反射膜733が設けられることで、有効マイクロミラー711aからこれと対応するマイクロレンズ731に入射した光が、その隣のマイクロレンズ731に漏れ入ってしまう(ひいては、解像度が劣化してしまう)といった事態の発生が十分に抑制される。
【0077】
(センサ部74)
センサ部74について、図4図5に加え、図9図10を参照しながら説明する。図9および図10はいずれも、MLA部73に設けられた反射領域732に入射した光がセンサ部74で受光される態様を説明するための図であり、反射領域732を、ここに入射する光の光路に沿って該光路の上流側から見た図(図9(a)、図10(a))、反射領域732およびセンサ部74を、図7の矢印B2方向から見た断面図(図9(b)、図10(b))、および、センサ部74のセンサ領域Hを、その法線に沿って見た図(図9(c)、図10(c))である。いうまでもなく、図9および図10はいずれも説明のための模式図である。
【0078】
上記のとおり、MLA部73の反射領域732には、空間光変調器71の所定位置から発せられた光(具体的には、DMD710の特定予備マイクロミラー711btで反射された光)が入射する。センサ部74は、空間光変調器71の所定位置から発せられて反射領域732に入射してここで反射された反射光を、検出する。MLA部73に複数の反射領域732が設けられる場合、各反射領域732で反射された反射光を検出するセンサ部74が、個別に設けられる。
【0079】
センサ部74は、具体的には例えば、複数の受光素子が2次元に配列された2次元センサ(2次元受光センサ)である。受光素子としては、例えば、PSD、CMOSセンサ、などを用いることができる。以下において、センサ部74において、複数の受光素子が配列された2次元領域を、「センサ領域H」ともよぶ。
【0080】
上記のとおり、露光ヘッド42においては、空間光変調器71、第1結像光学系72、および、MLA部73が、第1光軸K1に沿って一列に配列されるところ、センサ部74は、第1光軸K1の延在方向(Y軸方向)について、MLA部73に対して、空間光変調器71の側(-Y側)に配置される。すなわち、センサ部74は、パターン光の光路(空間光変調器71から、第1結像光学系72、MLA部73、および、第2結像光学系75を通じて基板Wに照射されるパターン光の光路)について、MLA部73の上流側に配置される。また、センサ部74は、第1光軸K1から外れた位置(すなわち、パターン光の光路から離れた位置)に配置される。具体的には例えば、センサ部74は、第1光軸K1に沿って見て(すなわち、Y軸方向に沿って見て)、第1光軸K1上に配置される各種の部材(例えば、第1結像光学系72の各鏡筒721,722、など)よりも外方の位置に、配置される。
【0081】
センサ部74は、MLA部73の反射領域732に対して所定の姿勢とされ、反射領域732に対して所定の位置に配置されて、MLA部73に対して固定的に設けられる。
【0082】
具体的には、センサ部74は、センサ領域Hを、凹面である反射領域732の焦点Foに向けるような姿勢で、設けられる。すなわち、センサ部74は、センサ領域Hの法線が、反射領域732の焦点Foを通過するような姿勢で、設けられる。特に好ましくは、センサ部74は、センサ領域Hの中心(幾何学中心)Hoを通るセンサ領域Hの法線(中心法線)Hnが、反射領域732の焦点Foを通過するような姿勢で、設けられる。
【0083】
センサ部74は、反射領域732で反射された反射光の少なくとも一部を、センサ領域H内に捉えることができる位置、すなわち、センサ領域H内に、反射光が受光される領域(受光領域)Tが形成されるような位置に、配置される。図9図10においては、センサ領域Hの外側にも、これに捉えられない反射光が存在し得ることを示すために、センサ領域Hの外側に広がる仮想的なセンサ領域があるとしたときの受光領域が示されている。仮に、センサ領域Hの外側に広がる十分に広い仮想的なセンサ領域があるとすると、該仮想的なセンサ領域には、画素像Aに対応する形状の受光領域が形成されるところ、センサ部74は、該受光領域の少なくとも一部をセンサ領域H内に捉えることができる位置に配置される。
【0084】
空間光変調器71が備える各画素部(具体的には、DMD部710が備える各マイクロミラー711)の形状が多角形状であれば、画素像Aも同じ多角形状となり、仮想的なセンサ領域における受光領域は、複数の頂点Toを有する略多角形状となる。一例として、各画素部(具体的には、各マイクロミラー711)の形状が矩形状であれば、画素像Aも矩形状となり、仮想的なセンサ領域における受光領域は、4個の頂点Toを有する略矩形状となる。ここでは、センサ領域Hにおいて反射光が受光される受光領域Tが、少なくとも1個の頂点Toを含む領域となるように、センサ部74の位置が規定される。ただし、「頂点To」とは、互いに非平行である2個の辺が交わる箇所である。好ましくは、図9に示されるように、適正状態において、頂点Toが現れる位置が、センサ領域Hの中心Hoとなるように、センサ部74の位置が規定される。
【0085】
空間光変調器71とMLA部73との位置関係(すなわち、MLA部73に対する空間光変調器71の相対位置)が変化すると、特定予備マイクロミラー711btからの光によって反射領域732上に形成される画素像Aの位置が変化する(図9(a)、図10(a))。すると、反射領域732で反射される反射光が広がる方向などに変化が生じ(図9(b)、図10(b))、センサ部74で反射光が受光される位置、すなわち、受光領域Tの位置に、変化が生じる(図9(c)、図10(c))。つまり、受光領域Tの位置は、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を反映しており、受光領域Tの位置の変化を検知することで、空間光変調器71とMLA部73との間の位置関係の変化を検知することができる。空間光変調器71とMLA部73との位置関係が適正状態から変化したことを検知することで、両者の間の位置ずれを検知することができる。位置ずれを検知する態様については、後に、具体的に説明する。
【0086】
(第2結像光学系75)
再び図4図5を参照する。第2結像光学系75は、MLA部73から発せられるパターン光(すなわち、MLA部73を通じてスポットアレイに成形されたパターン光)を、処理対象物である基板W(より具体的には、基板Wに設けられた感光材料の層Rの上面)に結像する光学系である。第2結像光学系75は、具体的には例えば、第1レンズ75aを保持する第1鏡筒751と、第2レンズ75bを保持する第2鏡筒752と、を備える。各レンズ75a,75bは、MLA部73から発せられるパターン光の光路上に配置される。第1レンズ75aおよび第2レンズ75bの各々は、1個のレンズで構成されてもよいし、複数のレンズで構成されてもよい。
【0087】
第2結像光学系75は、例えば、両側テレセントリックな光学系を形成する。第2結像光学系75の像側がテレセントリックとされることで、仮に、基板W(より具体的には、基板Wに設けられた感光材料の層Rの上面)の位置が光軸方向にずれたとしても、基板Wに投影されるパターン光の像の大きさが変化しない。したがって、例えば、感光材料の層Rの厚みにばらつきなどがあっても露光精度が低下しにくい。また、第2結像光学系75の物体側がテレセントリックとされることで、第1結像光学系72の第2レンズ72b、MLA部73、などが光軸方向に移動されたとしても、第2結像光学系75の像側におけるパターン光の像の大きさが変化しない。なお、第2結像光学系75には、1倍を超える横倍率(例えば、約3倍の横倍率)でパターン光を拡大して結像する拡大光学系が適用されてもよい。この場合、例えば、第2レンズ75bの半径は、第1レンズ75aの半径よりも大きなものとされる。
【0088】
(測定器76)
測定器76は、露光ヘッド42と基板W(より具体的には、基板Wに設けられた感光材料の層Rの上面)との離間距離を測定する。測定器76は、具体的には例えば、基板Wに対して斜め方向から(基板Wの上面の法線方向に対して傾斜した軸に沿って)レーザ光を照射する照射器761と、該レーザ光が基板Wで反射された反射光を受光する受光器762と、を備える。このような構成において、受光器762における反射光の受光位置に基づいて、露光ヘッド42と基板Wの表面との離間距離を特定することができる。測定器76は、特定した離間距離を制御部5に通知する。制御部5は、例えば、該通知された離間距離に応じて、露光ヘッド42が備える各部の位置(例えば、第1光軸K1の延在方向(Y方向)に沿う、第1結像光学系72の第2鏡筒722(ひいては、第2レンズ722a)およびMLA部73の各位置(Y位置))を調整するなどして、パターン光の結像位置(ピント位置)を基板W(より具体的には、基板Wに設けられた感光材料の層Rの上面)に合わせ込む。なお、測定器76は、図4に示されるように、第2結像光学系75の第2鏡筒752の下端部に設けられてもよいし、第2結像光学系75から離間して設けられてもよい。
【0089】
<2-3.保持ユニット8>
次に、空間光変調器71およびMLA部73を保持する保持ユニット8について、図11を参照しながら説明する。図11は、空間光変調器71、MLA部73、および、これらを保持する保持ユニット8を、模式的に示す側面図である。
【0090】
保持ユニット8は、空間光変調器71を保持する第1保持部81と、MLA部73を保持する第2保持部82と、空間光変調器71とMLA部73との相対的な位置関係を変更する位置変更部83と、を含んで構成される。なお、保持ユニット8は、第1結像光学系72(具体的には、第1鏡筒721および第2鏡筒722)を保持する保持部をさらに含むものであってもよい。保持ユニット8の一部あるいは全体は、例えば、これが保持する各部とともに、第2収容ボックス402の第1部分402aに収容される。
【0091】
上記のとおり、第1結像光学系72は、その光軸(第1光軸)K1を、所定方向(図の例ではY方向)に沿わせるような姿勢で配置されている。第1保持部81は、空間光変調器71を、第1光軸K1に沿って第1結像光学系72の一方側(-Y側)に保持する。また第1保持部81は、複数のマイクロミラー711の配列面が、第1光軸K1と直交する平面(XZ面)に沿うような姿勢で、空間光変調器71を保持する。一方、第2保持部82は、MLA部73を、第1光軸K1に沿って第1結像光学系72の他方側(+Y側)に保持する。また第2保持部82は、複数のマイクロレンズ731の配列面が、第1光軸K1と直交する平面(XZ面)に沿うような姿勢で、MLA部73を保持する。
【0092】
第1保持部81は、具体的には例えば、一端側(図の例では+Z側)において空間光変調器71を保持するとともに、他端側(図の例では-Z側)において基準部80と連結される。同様に、第2保持部82は、一端側(図の例では+Z側)においてMLA部73を保持するとともに、他端側(図の例では-Z側)において基準部80と連結される。このような構成によると、空間光変調器71は、基準部80の上方において、第1保持部81によって片持ち状態で保持され、MLA部73は、基準部80の上方において、第2保持部82によって片持ち状態で保持されることになる。ただし、基準部80は、位置の基準を与える部材である。基準部80は、例えば、第2収容ボックス402とは別体に形成されて、第2収容ボックス402に対して固定される。もっとも、基準部80の構成はこれに限られるものではない。例えば、基準部80は、第2収容ボックス402の一部分によって形成されてもよいし、支持フレーム102の一部分によって形成されてもよい。
【0093】
位置変更部83は、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を変更する。具体的には例えば、位置変更部83は、第1保持部81に設けられ、空間光変調器71を、DMD710における複数のマイクロミラー711の配列面(XZ面)に沿う方向に移動させて、その位置を変更することによって、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を変更する。より具体的には、例えば、位置変更部83は、複数のマイクロミラー711の配列面を規定する直交2軸であるX軸方向およびZ軸方向(すなわち、複数のマイクロミラー711の各配列方向)の一方(例えばX軸方向)に空間光変調器71を並進移動させる機構(第1並進機構)と、他方(例えばZ軸方向)に空間光変調器71を並進移動させる機構(第2並進機構)と、Y軸の周りでの回転方向であるθ軸方向(すなわち、回転方向)に空間光変調器71を移動させる機構(回転機構)と、を備える。
【0094】
第1並進機構、第2並進機構、および、回転機構の具体的な構成はどのようなものであってもよい。一例として、第1並進機構および第2並進機構の各々は、直動機構とリニアガイドとを含んで構成することができる。この場合の直動機構としては、例えば、モータ、六角レンチなどで付与される回転力を直動成分の力に変換可能なボールねじ機構、ステッピングモータあるいは圧電素子などのように電気信号の付与に応じて自動的に直動成分の力を生じる機構、などを用いることができる。また、一例として、回転機構は、電気信号の付与に応じて自動的に回転力を生じる回転モータを含んで構成することができる。あるいは、回転機構は、直動機構と、該直動機構で付与される直動成分の力を回転力に変換する機構(具体的には例えば、ラック・平歯車方式、リンク機構方式、など)と、を含んで構成することもできる。あるいは、回転機構は、六角レンチなどで付与される回転力を利用して対象物を回転させる機構であってもよい。
【0095】
<3.機能部>
次に、制御部5が備える機能的な要素について説明する。制御部5には、例えばCPU51がプログラムPに従って動作することによって実現される機能的な要素として、動作制御部501、位置ずれ検知部502、位置補正部503、などが実現されている(図3)。もっとも、これら各部501,502,503の一部または全部は、専用の論理回路などといったハードウェアで実現されてもよい。
【0096】
(動作制御部501)
動作制御部501は、露光装置100の動作を統括的に制御するものであり、露光装置100が備える各部を制御して、定められた一連の動作を実行させる。すなわち、制御部5は、例えば、ステージ駆動機構2(具体的には、回転機構21、副走査機構22、主走査機構23、など)、ステージ位置計測部3、露光部4(具体的には、光源部41、空間光変調器71、センサ部74、位置変更部83、など)と、バスライン55、ネットワーク回線、シリアル通信回線、などを介して接続されており、動作制御部501は、これら各部との間でデータの授受などを行いつつ、各部を制御して、定められた一連の動作を実行させる。
【0097】
動作制御部501は、露光装置100が備える各部を制御して、露光動作を実行させる。具体的には、動作制御部501は、空間光変調器71でパターン光を形成させて、該形成されたパターン光を、MLA部73を通じて、ステージ1に保持されている基板Wに照射させる。また、動作制御部501は、露光装置100が備える各部を制御して、露光動作と並行して、位置ずれ検知動作を実行させる。具体的には、動作制御部501は、センサ部74に反射光を検出させて、位置ずれ検知部502に位置ずれ(空間光変調器71と、MLA部73との間の位置ずれ)を検知させる。露光動作および位置ずれ検知動作の具体的な流れは、後に説明する。
【0098】
(位置ずれ検知部502)
位置ずれ検知部502は、センサ部74での反射光の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれを検知する。ただし、ここでいう「位置ずれ」とは、XZ面(すなわち、DMD710における複数のマイクロミラー711の配列面であり、MLA部73における複数のマイクロレンズ731の配列面である、XZ面)内における、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれである。
【0099】
具体的には例えば、位置ずれ検知部502は、センサ部74での反射光の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれ量(具体的には例えば、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)、Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)、複数の反射領域732が設けられている場合はさらにY軸の周りでの回転方向であるθ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ))を特定し、該特定された位置ずれ量が予め設定された許容範囲を超える場合に、両者の間に位置ずれが生じていると判断する。
【0100】
位置ずれ検知部502が、センサ部74での反射光の検出情報に基づいて位置ずれ量を特定する態様の一例を、図9および図10を参照しながら説明する。
【0101】
a.反射領域732が1個の場合
反射領域732が1個設けられている場合、位置ずれ検知部502は、該反射領域732からの反射光を取得するセンサ部74での反射光の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)およびZ軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)を特定する。
【0102】
具体的には例えば、位置ずれ検知部502は、まず、センサ部74の検出情報(具体的には例えば、センサ領域Hに配列されている各受光素子における受光量、すなわち、センサ領域H内の各位置での受光量)を解析して、反射光が受光されている領域(受光領域)Tを特定する。上記のとおり、ここでは、センサ領域Hに現れる受光領域Tが頂点Toを含む領域となるように、センサ部74の位置が規定されている。そこで、受光領域Tが特定されると、位置ずれ検知部502は、受光領域Tにおける頂点Toの位置を、さらに特定する。
【0103】
頂点Toの位置が特定されると、位置ずれ検知部502は、特定された頂点Toの位置の、適正位置(すなわち、空間光変調器71とMLA部73との間に位置ずれがない適正状態において、頂点Toが現れる位置であり、図9の例ではセンサ領域Hの中心Ho)からの変位量を、特定する。ただし、ここでは、センサ領域Hを規定する軸として、Y軸方向(複数のマイクロレンズ731の配列面(XZ面)の法線方向)に沿って見たときにX軸と平行な軸(Xp軸)と、Y軸方向に沿って見たときにZ軸と平行な軸(Zp軸)とが規定されており、位置ずれ検知部502は、Xp軸方向の頂点Toの変位量ΔT(Xp)と、Zp軸方向の頂点Toの変位量ΔT(Zp)とを特定する。
【0104】
上記のとおり、受光領域Tの位置(例えば頂点Toの位置)は、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を反映している。すなわち、Xp軸方向の頂点Toの変位量ΔT(Xp)は、空間光変調器71とMLA部73との間のX軸方向の位置ずれ量ΔG(X)に応じたものとなっている。同様に、Zp軸方向の変位量ΔT(Zp)は、空間光変調器71とMLA部73との間のZ軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)に応じたものとなっている。そこで、位置ずれ検知部502は、Xp軸方向の頂点Toの変位量ΔT(Xp)に基づいて、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)を算出し、Zp軸方向の頂点Toの変位量ΔT(Zp)に基づいて、Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)を算出する。
【0105】
ただし、受光領域Tは、凹面である反射領域732で反射された反射光によって形成される像に相当するものである。したがって、反射領域732上に形成される画素像Aの位置変化は、正負の方向が逆転されて、頂点Toの変位量として検出される。すなわち、X軸方向の画素像Aの位置変化は、正負の方向が逆転した形で、Xp軸方向の頂点Toの変位量ΔT(Xp)として検出される。同様に、Z軸方向の画素像Aの位置変化も、正負の方向が逆転した形で、Zp軸方向の頂点Toの変位量ΔT(Zp)として検出される。また、反射領域732上に形成される画素像Aの位置変化は、拡大されて、頂点Toの変位量として検出される。すなわち、X軸方向の画素像Aの位置変化は、拡大されて、Xp軸方向の頂点Toの変位量ΔT(Xp)として検出される。同様に、Z軸方向の画素像Aの位置変化も、拡大されて、Zp軸方向の頂点Toの変位量ΔT(Zp)として検出される。したがって、位置ずれ検知部502は、頂点Toの変位量ΔT(Xp),ΔT(Zp)に対して、正負の方向を逆転し、さらに、所定の縮小率で縮小する、などといった適宜の演算処理を行って、画素像Aの位置変化量、ひいては、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれ量ΔG(X),ΔG(Z)を、算出する。
【0106】
画素像Aの位置変化が頂点Toの変位量として検出される際の拡大率は、反射領域732の曲率、センサ部74と反射領域732との離間距離、などに応じて規定される。すなわち、反射領域732の曲率半径が小さいほど、拡大率は大きくなる。また、センサ部74と反射領域732との離間距離が大きいほど、拡大率は大きくなる。ただし、反射領域732の曲率半径が小さいほど、また、センサ部74と反射領域732との離間距離が大きいほど、反射光が広範囲に広がるため、センサ部74における受光光量が少なくなる。つまり、拡大率と受光光量とはトレードオフの関係にある。したがって、求められる拡大率(つまりは、位置ずれ量の検知感度)とセンサ部74において必要とされる受光光量とのバランスを加味して、反射領域732の曲率半径、または(および)、センサ部74と反射領域732との離間距離が規定されることが好ましい。ただし、センサ領域Hのサイズが同じであれば、拡大率が大きくなるほど、検知できる位置ずれ量の最大値が小さくなる。したがって、検知するべき位置ずれ量の最大値とセンサ領域Hのサイズから、求められる拡大率を決定し、これが達成されるように、反射領域732の曲率半径、センサ部74と反射領域732との離間距離、などを規定することも好ましい。
【0107】
b.反射領域732が複数個の場合
反射領域732が、複数個(例えば、2個)、設けられている場合、位置ずれ検知部502は、各反射領域732からの反射光を取得するセンサ部74での反射光の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)、Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)、および、θ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)を特定する。
【0108】
具体的には例えば、位置ずれ検知部502は、まず、上記と同様にして、一方の反射領域732で反射された反射光を検出するセンサ部74から取得した検出情報に基づいて、X軸方向およびZ軸方向の各位置ずれ量ΔG1(X),ΔG1(Z)を算出し、これを該反射領域732の形成位置(第1位置)における位置ずれ量ΔG1(X),ΔG1(Z)として記憶する。同様に、位置ずれ検知部502は、他方の反射領域732で反射された反射光を検出するセンサ部74から取得した検出情報に基づいて、X軸方向およびZ軸方向の各位置ずれ量ΔG2(X),ΔG2(Z)を算出し、これを該反射領域732の形成位置(第2位置)、における位置ずれ量ΔG2(X),ΔG2(Z)として記憶する。
【0109】
そして、位置ずれ検知部502は、得られた2組の位置ずれ量に基づいて、X軸およびZ軸の各方向についての、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれ量ΔG(X),ΔG(Z)を決定する。具体的には例えば、位置ずれ検知部502は、例えば、第1位置および第2位置のそれぞれにおけるX軸方向の位置ずれ量ΔG1(X),ΔG2(X)を平均した値を、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)に決定する(ΔG(X)=(ΔG1(X)+ΔG2(X))/2)。同様に、位置ずれ検知部502は、例えば、第1位置および第2位置のそれぞれにおけるZ軸方向の位置ずれ量ΔG1(Z),ΔG2(Z)を平均した値を、Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)に決定する(ΔG(Z)=(ΔG1(Z)+ΔG2(Z))/2)。
【0110】
さらに、位置ずれ検知部502は、得られた2組の位置ずれ量に基づいて、θ軸方向についての、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれ量ΔG(θ)を決定する。第1位置および第2位置がZ方向に対向する位置である場合(図7)、位置ずれ検知部502は、例えば、第1位置および第2位置のそれぞれにおけるX軸方向の位置ずれ量の差分を、Z方向についての両位置の離間距離Lzで割った値を、θ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)に決定する(ΔG(θ)=(ΔG1(X)-ΔG2(X))/Lz)。
【0111】
(位置補正部503)
位置補正部503は、位置ずれ検知部502が、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれを検知した場合に、位置変更部83を制御して、位置ずれが低減されるように、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を変更する。具体的には例えば、位置補正部503は、位置変更部83に、空間光変調器71の位置を変更させることによって、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を変更して、位置ずれを補正する。
【0112】
例えば、X軸方向の位置ずれが検知された場合(具体的には例えば、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)が所定の許容範囲内にない場合)、位置補正部503は、位置変更部83が備える第1並進機構を制御して、空間光変調器71を、X軸に沿って、位置ずれが低減される方向に、並進移動させることによって、位置ずれを補正する。また例えば、Z軸方向の位置ずれが検知された場合(具体的には例えば、Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)が所定の許容範囲内にない場合)、位置補正部503は、位置変更部83が備える第2並進機構を制御して、空間光変調器71を、Z軸に沿って、位置ずれが低減される方向に、並進移動させることによって、位置ずれを補正する。また例えば、θ軸方向の位置ずれが検知された場合(具体的には例えば、θ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)が所定の許容範囲内にない場合)、位置補正部503は、位置変更部83が備える回転機構を制御して、空間光変調器71を、θ軸に沿って、位置ずれが低減される方向に、回転させることによって、位置ずれを補正する。
【0113】
<4.動作の流れ>
次に、露光装置100で行われる動作の流れについて説明する。以下に説明する動作は、制御部5において実現される動作制御部501が、露光装置100が備える各部を制御することによって行われる。
【0114】
<4-1.露光動作>
露光装置100で行われる露光動作について、図1図2に加え、図12を参照しながら説明する。図12は、露光動作を説明するための図である。なお、露光動作は、通常は、反復して行われる。すなわち、1枚の基板Wに対する露光動作が終了すると、続いて別の新たな基板Wに対して同じ露光動作が行われる。
【0115】
処理対象となる基板W(すなわち、レジストなどの感光材料の層Rが形成された基板W)が露光装置100に搬入されてステージ1に保持されるとともに、ステージ1が所定の露光開始位置に配置されると、動作制御部501は、光源部41にレーザ光を出力させる。光源部41から出射された光(光ビーム)は、各露光ヘッド42に入射する。
【0116】
各露光ヘッド42に入射した光は、該露光ヘッド42が備える空間光変調器71(具体的には、DMD710)において、空間変調を施されて、パターン光とされる。具体的には、光源部41から出射された光が、DMD710の有効領域71aに配列されている一群の有効マイクロミラー711aに入射すると、動作制御部501は、パターンデータDに基づいて各有効マイクロミラー711aの角度を制御して、パターン光を形成させる。より具体的には、動作制御部501は、パターンデータDに基づいてデジタル信号を生成し、該デジタル信号を、DMD710に送出する。DMD710にて受信されたデジタル信号は、メモリセルに書き込まれる。すると、各有効マイクロミラー711aの角度が、該デジタル信号に応じた角度となる。このようにして、DMD710が備える一群の有効マイクロミラー711aの各々の角度が、パターンデータDに応じたものとなるように制御され、これによって、入射した光に空間変調が施されて、パターンデータDに応じたパターン光が形成される。ただし、「パターンデータD」とは、基板W(具体的には、感光材料の層Rの上)に描画するべきパターン(例えば、回路パターン)を記述したデータであり、例えば記憶装置54に格納される(図3)。一例として、パターンデータDは、CADソフトなどで作成されたベクトル形式のデータを、ラスター形式のデータに展開した画像データである。
【0117】
空間光変調器71で形成されたパターン光は、第1結像光学系72を通じてMLA部73に導かれ、MLA部73で複数のマイクロレンズ731を通過することによって、スポットアレイに成形される。スポットアレイに成形されたパターン光は、第2結像光学系75を通じて、ステージ1上の基板Wに照射される。1回の照射で1個の露光ヘッド42からパターン光が照射される基板W上の領域を「単位露光領域Qi」とよぶとすると、露光部4が備える1以上の露光ヘッド42の各々からパターン光が照射されることで、露光ヘッド42と同数個の単位露光領域Qiにパターン光が同時に照射されることになる。
【0118】
1回目の照射が行われて、1以上(露光ヘッド42と同数個)の単位露光領域Qiにパターン光が照射されると、動作制御部501は、主走査機構23を制御して、ステージ1を主走査方向(Y方向)に移動開始させる。ステージ1が移動することによって、ここに保持されている基板Wと露光ヘッド42との相対的な位置関係が変更される。そして、動作制御部501は、例えば主走査機構23のリニアモータ231から送られてくる信号(リニアスケール信号、エンコーダー信号、など)に基づいて、リセットパルスを生成してDMD710に送出する。DMD710においてリセットパルスが受信されると、ここで施される空間変調のパターン(具体的には、各有効マイクロミラー711aの角度)が、そのときの基板Wの位置に応じたものに変更される。つまり、ステージ1の移動に応じて次々とリセットパルスが送出され、リセットパルスが送出される毎に、基板Wの位置に応じたパターン光が露光ヘッド42から出力されて、ステージ1上の基板Wに照射される。n回目の照射は、(n―1)回目の照射でパターン光を照射された単位露光領域Qiと主走査方向に隣接する領域に対して行われる。このようにして、基板Wを保持したステージ1が、露光ヘッド42に対して主走査方向に移動されつつ、露光ヘッド42から複数回のパターン光の照射が繰り返して行われることで、基板W上における主走査方向に延在する帯状領域Qjにパターン光が照射されていく。主走査方向について、基板W上における露光するべき領域の一端側から他端側に亘ってパターン光が照射されると、1回の主走査動作が終了する。
【0119】
例えば、複数の露光ヘッド42が千鳥状に配列されている場合(すなわち、副走査方向(X方向)に配列された複数(図の例では、5個)の露光ヘッド42からなる1列目の露光ヘッド列と、同じく副走査方向(X方向)に配列された複数(図の例では、4個)の露光ヘッド42からなる2列目の露光ヘッド列とが、主走査方向(Y方向)に隣り合って設けられ、副走査方向に沿って見て、一列目の露光ヘッド列において隣り合う露光ヘッド42の間に、2列目の露光ヘッド列の露光ヘッド42が配列されている場合)、基板Wを保持したステージ1が、これら複数の露光ヘッド42に対して主走査方向に移動されつつ、各露光ヘッド42から複数回のパターン光の照射が繰り返して行われることで、隙間なく隣り合う複数の帯状領域Qjの各々に並行してパターン光が照射されていくことになる。つまり、1回の主走査動作によって、隣り合う複数の帯状領域Qjからなる幅広の領域に、パターン光が照射される。
【0120】
1回の主走査動作が終了すると、動作制御部501は、副走査機構22を制御して、ステージ1を副走査方向(X方向)に所定距離(1回の主走査動作でパターン光が照射された領域の幅(X方向の寸法))だけ移動させた上で(副走査動作)、もう一度、主走査動作を行わせる。
【0121】
その後、副走査方向について、基板W上における露光するべき領域の一端側から他端側に亘ってパターン光が照射されるまで(すなわち、露光するべき領域の全体にパターン光が照射されるまで)、副走査動作を挟んで主走査動作が繰り返して行われる。いうまでもなく、1回の主走査動作で、露光するべき領域の全体にパターン光が照射される場合、副走査動作を挟んで主走査動作を繰り返して行う必要はなく、この場合は副走査機構53を省略することができる。
【0122】
<4-2.位置ずれ検知動作>
露光装置100では、上記の露光動作が行われる間、これと並行して、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれを検知する動作(位置ずれ検知動作)が行われる。位置ずれ検知動作について、図1図2に加え、図13を参照しながら説明する。図13は、位置ずれ検知動作の流れを示す図である。なお、露光部4が複数の露光ユニット40(つまりは、複数の露光ヘッド42)を備える場合、複数の露光ヘッド42の各々について、該露光ヘッド42が備える空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれを検知する位置ずれ検知動作が並行して行われる。
【0123】
ステップS1
露光動作が開始されると(ステップS1でYES)、動作制御部501は、位置ずれ検知部502に、位置ずれ検知動作を開始させる旨の開始指示を送出する。
【0124】
ステップS2
動作制御部501から位置ずれ検知動作の開始指示を受けた位置ずれ検知部502は、まず、センサ部74から検出情報を取得する。上記のとおり、露光動作が開始されると、光源部41から光が出射される。該出射された光の一部は、DMD710の有効領域71aに配列されている一群の有効マイクロミラー711aに入射し、ここで空間変調を施されて、パターン光となる。その一方で、光源部41から出射された光の一部は、DMD710の予備領域71bに配列されている特定予備マイクロミラー711btに入射する。動作制御部501は、露光動作が開始された後、少なくともセンサ部74で検出情報を取得するべきタイミングにおいて、特定予備マイクロミラー711btに入射した光が、第1結像光学系72(ひいては、MLA部73の反射領域732)に入射する方向に反射されるように、特定予備マイクロミラー711btの角度を制御する。したがって、特定予備マイクロミラー711btで反射された光が、反射領域732に入射して、ここで反射される。反射領域732で反射された反射光は、センサ部74に入射して、ここで検出される。動作制御部501から位置ずれ検知動作の開始指示を受けた位置ずれ検知部502は、反射光の検出情報をセンサ部74から取得する。
【0125】
ステップS3
位置ずれ検知部502は、センサ部74から検出情報を取得すると、該取得した検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の、第1軸(ここでは例えばθ軸)方向の位置ずれ量ΔG(θ)を、特定する。位置ずれ検知部502が検出情報に基づいて位置ずれ量を特定する態様は、上記に説明したとおりである。
【0126】
ステップS4
続いて、位置ずれ検知部502は、ステップS3で特定されたθ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)が、予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する。
【0127】
ステップS5
θ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)が所定の許容範囲内でないと判定された場合(ステップS4でNO)、位置ずれ検知部502は、空間光変調器71とMLA部73との間に、θ軸方向の位置ずれが生じていると判断する。この場合、位置ずれ検知部502は、ステップS3で特定されたθ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)を、位置補正部503に通知する。この通知を受けると、位置補正部503は、θ軸方向についての位置ずれの補正を行う。例えば、空間光変調器71がMLA部73に対して+θ方向にΔG(θ)だけ位置ずれしているとの通知を受けた場合、位置補正部503は、位置変更部83が備える回転機構を制御して空間光変調器71を-θ方向にΔG(θ)だけ回転させて、位置ずれを補正する。
【0128】
θ軸方向についての位置ずれの補正が行われると、ステップS2に戻り、位置ずれ検知部502は、再び、センサ部74から検出情報を取得する。そして、位置ずれ検知部502は、該取得した最新の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間のθ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)を再び特定し(ステップS3)、該特定された位置ずれ量ΔG(θ)が許容範囲内であるか否かを再び判定する(ステップS4)。そして、位置ずれ量ΔG(θ)が許容範囲内でないと判定された場合(ステップS4でNO)、再び、θ軸方向についての位置ずれの補正が行われる(ステップS5)。つまり、θ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)が許容範囲内に収まるまで、ステップS2~ステップS5の処理が繰り返される。
【0129】
ステップS6
θ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)が許容範囲内であると判定された場合(ステップS4でYES)、位置ずれ検知部502は、空間光変調器71とMLA部73との間に、θ軸方向の位置ずれが生じていないと判断する。この場合、位置ずれ検知部502は、直近のステップS2でセンサ部74から取得した検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の、第2軸(ここでは例えばX軸)方向の位置ずれ量ΔG(X)を、特定する。
【0130】
ステップS7
続いて、位置ずれ検知部502は、ステップS6で特定されたX軸方向の位置ずれ量ΔG(X)が、予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する。
【0131】
ステップS8
X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)が所定の許容範囲内でないと判定された場合(ステップS7でNO)、位置ずれ検知部502は、空間光変調器71とMLA部73との間に、X軸方向の位置ずれが生じていると判断する。この場合、位置ずれ検知部502は、ステップS6で特定されたX軸方向の位置ずれ量ΔG(X)を、位置補正部503に通知する。この通知を受けると、位置補正部503は、X軸方向についての位置ずれの補正を行う。例えば、空間光変調器71がMLA部73に対して+X方向にΔG(X)だけ位置ずれしているとの通知を受けた場合、位置補正部503は、位置変更部83が備える第1並進機構を制御して空間光変調器71を-X方向にΔG(X)だけ並進移動させて、位置ずれを補正する。
【0132】
ステップS9
X軸方向についての位置ずれの補正が行われると、位置ずれ検知部502は、再び、センサ部74から検出情報を取得する。そして、位置ずれ検知部502は、該取得した最新の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間のX軸方向の位置ずれ量ΔG(X)を再び特定し(ステップS6)、該特定された位置ずれ量ΔG(X)が許容範囲内であるか否かを再び判定する(ステップS7)。そして、位置ずれ量ΔG(X)が許容範囲内でないと判定された場合(ステップS7でNO)、再び、X軸方向についての位置ずれの補正が行われる(ステップS8)。つまり、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)が許容範囲内に収まるまで、ステップS6~ステップS9の処理が繰り返される。
【0133】
ステップS10
X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)が許容範囲内であると判定された場合(ステップS7でYES)、位置ずれ検知部502は、空間光変調器71とMLA部73との間に、X軸方向の位置ずれが生じていないと判断する。この場合、位置ずれ検知部502は、直近のステップS9でセンサ部74から取得した検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の、第3軸(ここでは例えばZ軸)方向の位置ずれ量ΔG(Z)を、特定する。
【0134】
ステップS11
続いて、位置ずれ検知部502は、ステップS10で特定されたZ軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)が、予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する。
【0135】
ステップS12
Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)が所定の許容範囲内でないと判定された場合(ステップS11でNO)、位置ずれ検知部502は、空間光変調器71とMLA部73との間に、Z軸方向の位置ずれが生じていると判断する。この場合、位置ずれ検知部502は、ステップS10で特定されたZ軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)を、位置補正部503に通知する。この通知を受けると、位置補正部503は、Z軸方向についての位置ずれの補正を行う。例えば、空間光変調器71がMLA部73に対して+Z方向にΔG(Z)だけ位置ずれしているとの通知を受けた場合、位置補正部503は、位置変更部83が備える第2並進機構を制御して空間光変調器71を-Z方向にΔG(Z)だけ並進移動させて、位置ずれを補正する。
【0136】
ステップS13
Z軸方向についての位置ずれの補正が行われると、位置ずれ検知部502は、再び、センサ部74から検出情報を取得する。そして、位置ずれ検知部502は、該取得した最新の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間のZ軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)を再び特定し(ステップS10)、該特定された位置ずれ量ΔG(Z)が許容範囲内であるか否かを再び判定する(ステップS11)。そして、位置ずれ量ΔG(Z)が許容範囲内でないと判定された場合(ステップS11でNO)、再び、Z軸方向についての位置ずれの補正が行われる(ステップS12)。つまり、Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)が許容範囲内に収まるまで、ステップS10~ステップS13の処理が繰り返される。
【0137】
Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)が許容範囲内であると判定された場合(ステップS11でYES)、位置ずれ検知動作の終了指示が到来していなければ、すなわち、露光動作が終了していなければ(ステップS14でNO)、再びステップS3の処理が行われる。すなわち、位置ずれ検知部502は、直近のステップS13でセンサ部74から取得した検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の、θ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)を、特定する。その後、再びステップS4以降の処理が行われる。つまり、露光動作が行われる間、これと並行して、ステップS3~ステップS13の一連の処理が繰り返して行われる。
【0138】
ステップS14
露光動作が終了すると(ステップS14でYES)、動作制御部501は、位置ずれ検知部502に、位置ずれ検知動作を終了させる旨の終了指示を送出する。動作制御部501から位置ずれ検知動作の終了指示を受けた位置ずれ検知部502は、一連の処理を終了する。
【0139】
<5.効果>
上記の実施形態に係る露光装置100は、複数の画素部を備える空間光変調器71と、複数のマイクロレンズ731を備え、複数のマイクロレンズ731の各々で複数の画素部(空間光変調器71がDMD710を備える場合、複数のマイクロミラー711)の各々からの光を集光する、マイクロレンズアレイ部(MLA部)73と、MLA部73に設けられた反射領域732と、空間光変調器71の所定位置から発せられて反射領域732に入射した光が反射領域732で反射された反射光を検出するセンサ部74と、センサ部74での検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれを検知する位置ずれ検知部502と、を備える。
【0140】
この構成では、空間光変調器71の所定位置から発せられてMLA部73の反射領域732に入射した光が該反射領域732で反射された反射光を、センサ部74で検出する。空間光変調器71とMLA部73との位置関係が変化すると、センサ部74で反射光が受光される位置などに変化が生じる。つまり、センサ部74において反射光が受光される位置などは、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を反映しており、反射光が受光される位置の変化などを検知することで、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれを検知することができる。ここでは、位置ずれの検知にあたって、MLA部73で反射された反射光を利用するので、センサ部74は、空間光変調器71からMLA部73を通じて処理対象物に照射される光の光路について、MLA部73の上流側に配置されて、ここで反射光を検出する。したがって、該光路について、MLA部73の下流側に配置される部材(例えば、処理対象物である基板Wが載置されるステージ1)の位置がどのようなものであっても、位置ずれの検知を行うことが可能であり、露光動作の途中であっても、位置ずれを検知することができる。
【0141】
また、上記の実施形態に係る露光装置100においては、反射領域732が、凹面である。この構成によると、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれ量が、凹面の曲率半径に応じた拡大率で拡大されて検出される。したがって、位置ずれの検知感度を十分に高めることができる。
【0142】
また、上記の実施形態に係る露光装置100においては、センサ部74が、そのセンサ領域Hの法線が反射領域732の焦点Foを通過するような姿勢で設けられる。この構成によると、反射領域732で反射された反射光を、センサ部74のセンサ領域Hで有効に受光することができる。
【0143】
また、上記の実施形態に係る露光装置100においては、センサ部74のセンサ領域Hが2次元領域であり、センサ領域Hにおいて反射光が受光される領域(受光領域)Tが、頂点Toを含む領域となるように、センサ部74の位置が規定される。この構成によると、頂点Toの位置から、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を簡易に特定することができる。特に、空間光変調器71とMLA部73との間に位置ずれがない適正状態において頂点Toが現れる位置が、センサ領域Hの中心となるように、センサ部74の位置が規定されていれば、360度全方向の位置ずれを検知することができる。
【0144】
また、上記の実施形態に係る露光装置100においては、複数のマイクロレンズ731の配列方向(例えばX方向)について、反射領域732の寸法Dxが、複数のマイクロレンズ731の配列間隔Exよりも、大きい。例えば、該配列方向について、複数のマイクロレンズ731の配列間隔Exが画素像Aの寸法Axとほぼ一致する場合、反射領域732の寸法Dxがマイクロレンズ731の配列間隔Exよりも大きいということは、反射領域732が画素像Aよりも大きいことを意味する(Dx>Ex=Ax)。上記のとおり、空間光変調器71とMLA部73との位置関係が変化すると、反射領域732上に形成される画素像Aの位置が変化するところ、反射領域732が画素像Aよりも大きい場合、画素像Aの位置が変化しても反射光を十分に発生させることができる。すなわち、空間光変調器71とMLA部73との位置関係の変化を反映した反射光を十分に発生させることができる。
【0145】
また、上記の実施形態に係る露光装置100においては、複数の画素部(空間光変調器71がDMD710を備える場合、複数のマイクロミラー711)の各々が、第1格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられており、複数のマイクロレンズ731の各々が、第1格子パターンと対応する第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられており、反射領域732が、複数のマイクロレンズ731の配列領域73aの外側の領域である外縁領域73bにおいて、第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設けられている。この構成によると、各マイクロレンズ731と同様に、反射領域732にも、空間光変調器71のいずれかの画素部(空間光変調器71がDMD710を備える場合、いずれかのマイクロミラー711)から発せられる光を入射させることができる。つまり、空間光変調器71におけるパターン光の形成に用いられていない予備的な画素部(予備マイクロミラー711b)を利用して、反射光を形成することができる。
【0146】
また、上記の実施形態に係る露光装置100は、動作制御部501を備え、動作制御部501が、空間光変調器71でパターン光を形成させて該形成されたパターン光をMLA部73を通じて処理対象物である基板Wに照射する露光動作と、センサ部74に反射光を検出させて位置ずれ検知部502に位置ずれを検知させる位置ずれ検知動作とを、並行して行わせる。この構成によると、例えば、露光動作の途中で、空間光変調器71とMLA部73との間に位置ずれが生じたとしても、これをリアルタイムで検知することができる。
【0147】
<6.変形例>
<6-1.センサ部に係る変形例>
センサ部に係る変形例について、図14および図15を参照しながら説明する。図14および図15は、図9および図10と同様、MLA部73に設けられた反射領域732に入射した光が、変形例に係るセンサ部74a,74bで受光される態様を説明するための図であり、反射領域732を、ここに入射する光の光路に沿って該光路の上流側から見た図(図14(a)、図15(a))、反射領域732およびセンサ部74a,74bを、図7の矢印B2方向から見た断面図(図14(b)、図15(b))、および、センサ部74a,74bのセンサ領域Lを、その法線に沿って見た図(図14(c)、図15(c))である。いうまでもなく、図14および図15はいずれも説明のための模式図である。
【0148】
この変形例に係る露光装置100は、上記の実施形態に係るセンサ部74に代えて、一対のセンサ部74a,74bを備える。
【0149】
上記のとおり、MLA部73の反射領域732には、空間光変調器71の所定位置から発せられた光(具体的には、DMD710の特定予備マイクロミラー711btで反射された光)が入射する。一対のセンサ部74a,74bは、空間光変調器71の所定位置から発せられて反射領域732に入射してここで反射された反射光を、検出する。MLA部73に複数の反射領域732が設けられる場合、各反射領域732で反射された反射光を検出する一対のセンサ部74a,74bが、個別に設けられる。
【0150】
一対のセンサ部74a,74bの各々は、いわゆるラインセンサであり、複数の受光素子が1次元(ライン状)に配列された1次元センサ(1次元受光センサ)である。受光素子としては、例えば、PSD、CMOSセンサ、などを用いることができる。以下において、各センサ部74a,74bにおいて、複数の受光素子が配列された1次元領域を、「センサ領域L」ともよぶ。
【0151】
上記のとおり、露光ヘッド42においては、空間光変調器71、第1結像光学系72、および、MLA部73が、第1光軸K1に沿って一列に配列されるところ、一対のセンサ部74a,74bは、上記の実施形態に係るセンサ部74と同様、第1光軸K1の延在方向(Y軸方向)について、MLA部73に対して、空間光変調器71の側(-Y側)に配置される。すなわち、一対のセンサ部74a,74bは、パターン光の光路についてMLA部73の上流側に配置される。また、一対のセンサ部74a,74bは、第1光軸K1から外れた位置に、配置される。
【0152】
一対のセンサ部74a,74bの各々は、MLA部73の反射領域732に対して所定の姿勢とされ、反射領域732に対して所定の位置に配置されて、MLA部73に対して固定的に設けられる。
【0153】
具体的には、一対のセンサ部74a,74bの各々は、センサ領域Lを、凹面である反射領域732の焦点Foに向けるような姿勢で、設けられる。すなわち、各センサ部74a,74bは、センサ領域Lの法線が、反射領域732の焦点Foを通過するような姿勢で、設けられる。特に好ましくは、各センサ部74a,74bは、センサ領域Lの中心(幾何学中心)Loを通るセンサ領域Lの法線(中心法線)Lnが、反射領域732の焦点Foを通過するような姿勢で、設けられる。
【0154】
また、一対のセンサ部74a,74bは、互いに非平行となる姿勢で配置される。具体的には例えば、一方のセンサ部(第1センサ部)74aは、そのセンサ領域Lが、Y軸方向(複数のマイクロレンズ731の配列面(XZ面)の法線方向)に沿って見たときにX軸と平行な軸(Xp軸)に沿って延在するような姿勢で配置される。また、他方のセンサ部(第2センサ部)74bは、そのセンサ領域Lが、Y軸方向沿って見たときにZ軸と平行な軸(Zp軸)に沿って延在するような姿勢で配置される。
【0155】
各センサ部74a,74bは、反射領域732で反射された反射光の少なくとも一部を、センサ領域L内に捉えることができる位置、すなわち、センサ領域L内に、反射光が受光される領域(受光領域)Tが形成されるような位置に、配置される。図14図15においては、各センサ領域Lの外側にも、これに捉えられない反射光が存在し得ることを示すために、各センサ領域Lの外側に広がる仮想的なセンサ領域があるとしたときの受光領域が示されている。仮に、各センサ領域Lの外側に広がる十分に広い仮想的なセンサ領域があるとすると、該仮想的なセンサ領域には、画素像Aに対応する形状の受光領域が形成されるところ、各センサ部74a,74bは、該受光領域の少なくとも一部をセンサ領域L内に捉えることができる位置に配置される。
【0156】
上記のとおり、空間光変調器71が備える各画素部(具体的には、DMD部710が備える各マイクロミラー711)の形状が多角形状であれば、画素像Aも同じ多角形状となり、仮想的なセンサ領域における受光領域は、複数の辺を有する略多角形状となる。一例として、各画素部(具体的には、各マイクロミラー711)の形状が矩形状であれば、画素像Aも矩形状となり、仮想的なセンサ領域における受光領域は、4個の辺を有する略矩形状となる。ここでは、第1センサ部74aのセンサ領域Lにおいて反射光が受光される受光領域Tが、少なくとも1個の辺(すなわち、該4個の辺の少なくとも1個であって、センサ領域Lの延在方向(Xp軸)と非平行な辺、好ましくは、直交する辺)との交差点Tiを含む領域となるように、第1センサ部74aの位置が規定される。好ましくは、図14に示されるように、適正状態において、交差点Tiが現れる位置が、センサ領域Lの中心Loとなるように、第1センサ部74aの位置が規定される。同様に、第2センサ部74bのセンサ領域Lにおいて反射光が受光される受光領域Tが、少なくとも1個の辺(すなわち、該4個の辺の少なくとも1個であって、センサ領域Lの延在方向(Zp軸)と非平行な辺、好ましくは、直交する辺)との交差点Tjを含む領域となるように、第2センサ部74bの位置が規定される。好ましくは、図14に示されるように、適正状態において交差点Tjが現れる位置が、センサ領域Lの中心Loとなるように、第2センサ部74bの位置が規定される。
【0157】
上記のとおり、空間光変調器71とMLA部73との位置関係が変化すると、特定予備マイクロミラー711btからの光によって反射領域732上に形成される画素像Aの位置が変化する(図14(a)、図15(a))。すると、反射領域732で反射される反射光が広がる方向などに変化が生じ(図14(b)、図15(b))、各センサ部74a,74bで反射光が受光される位置、すなわち、受光領域Tの位置に、変化が生じる(図14(c)、図15(c))。つまり、受光領域Tの位置は、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を反映しており、受光領域Tの位置の変化を検知することで、空間光変調器71とMLA部73との間の位置関係の変化(ひいては、両者の間の位置ずれ)を検知することができる。
【0158】
センサ部74に代えて、一対のセンサ部74a,74bが設けられる場合、位置ずれ検知部502は、一対のセンサ部74a,74bでの反射光の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれを検知する。具体的には例えば、位置ずれ検知部502は、各センサ部74a,74bでの反射光の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれ量(具体的には例えば、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)、Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)、複数の反射領域732が設けられている場合はさらにθ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ))を特定し、該特定された各位置ずれ量が予め設定された許容範囲を超える場合に、両者の間に位置ずれが生じていると判断する。
【0159】
a.反射領域732が1個の場合
反射領域732が1個設けられている場合、位置ずれ検知部502は、該反射領域732からの反射光を取得する一対のセンサ部74a,74bでの反射光の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)およびZ軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)を特定する。
【0160】
具体的には例えば、位置ずれ検知部502は、第1センサ部74aの検出情報を解析して、反射光が受光されている領域(受光領域)Tを特定する。上記のとおり、ここでは、センサ領域Lに現れる受光領域Tが交差点Tiを含む領域となるように、第1センサ部74aの位置が規定されている。そこで、受光領域Tが特定されると、位置ずれ検知部502は、受光領域Tにおける交差点Tiの位置を、さらに特定する。交差点Tiの位置が特定されると、位置ずれ検知部502は、特定された交差点Tiの位置の、適正位置(すなわち、空間光変調器71とMLA部73との間に位置ずれがない適正状態において、交差点Tiが現れる位置であり、図14の例ではセンサ領域Lの中心Lo)からの変位量ΔT(Xp)を、特定する。同様に、位置ずれ検知部502は、第2センサ部74bの検出情報を解析して、受光領域Tを特定し、受光領域Tにおける交差点Tjの位置を、さらに特定する。交差点Tjの位置が特定されると、位置ずれ検知部502は、特定された交差点Tjの位置の、適正位置からの変位量ΔT(Zp)を、特定する。
【0161】
上記のとおり、受光領域Tの位置(例えば交差点Ti,Tjの位置)は、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を反映している。すなわち、Xp軸方向に延在するセンサ領域Lにおける交差点Tiの変位量ΔT(Xp)は、空間光変調器71とMLA部73との間のX軸方向の位置ずれ量ΔG(X)に応じたものとなっており、Zp軸方向に延在するセンサ領域Lにおける交差点Tjの変位量ΔT(Zp)は、空間光変調器71とMLA部73との間のZ軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)に応じたものとなっている。そこで、位置ずれ検知部502は、第1センサ部74aの検出情報から得られた交差点Tiの変位量ΔT(Xp)に基づいて、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)を算出し、第2センサ部74bの検出情報から得られた交差点Tjの変位量ΔT(Zp)に基づいて、Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)を算出する。
【0162】
b.反射領域732が複数個の場合
反射領域732が、複数個(例えば、2個)、設けられている場合、位置ずれ検知部502は、各反射領域732からの反射光を取得する一対のセンサ部74a,74bでの反射光の検出情報に基づいて、空間光変調器71とMLA部73との間の、X軸方向の位置ずれ量ΔG(X)、Z軸方向の位置ずれ量ΔG(Z)、および、θ軸方向の位置ずれ量ΔG(θ)を特定する。
【0163】
具体的には例えば、位置ずれ検知部502は、上記と同様にして、一方の反射領域732で反射された反射光を検出する一対のセンサ部74a,74bから取得した検出情報に基づいて、該反射領域732の形成位置におけるX軸方向およびZ軸方向の各位置ずれ量ΔG1(X),ΔG1(Z)を算出し、さらに、他方の反射領域732で反射された反射光を検出する一対のセンサ部74a,74bから取得した検出情報に基づいて、該反射領域732の形成位置におけるX軸方向およびZ軸方向の各位置ずれ量ΔG2(X),ΔG2(Z)を算出する。そして、位置ずれ検知部502は、得られた2組の位置ずれ量に基づいて、X軸、Z軸、および、θ軸の各方向についての、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれ量ΔG(X),ΔG(Z),ΔG(θ)を決定する。
【0164】
この変形例に係る露光装置100においては、センサ部74a,74bのセンサ領域Lが1次元領域であり、センサ領域Lにおいて反射光が受光される領域(受光領域)Tが、センサ領域Lの延在方向と非平行な辺との交差点Ti,Tjを含む領域となるように、各センサ部74a,74bの位置が規定される。この構成によると、交差点Ti,Tjの位置から、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を簡易に特定することができる。特に、適正状態において交差点Ti,Tjが現れる位置が、センサ領域Lの中心Loとなるように、各センサ部74a,74bの位置が規定されていれば、正負両方向の位置ずれを検知することができる。
【0165】
<6-2.他の変形例>
上記の実施形態において、MLA部73に設けられる反射領域732が個数は、1個あるいは2個であってもよいし、3個以上であってもよい。反射領域732の個数が多いほど、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれ量を精度よく特定することが可能となる。逆に、反射領域732の個数が少ないほど、装置構成を簡素化することができる。ただし、並進方向(X軸およびZ軸に沿う方向)の位置ずれ量ΔG(X),ΔG(Z)に加えて、回転方向(θ軸方向)の位置ずれ量ΔG(θ)を算出するためには、反射領域732を2個以上設けることが好ましい。いうまでもなく、回転方向の位置ずれ量ΔG(θ)を算出する必要がない場合(例えば、位置変更部83が回転機構を備えない場合)は、反射領域732を1個だけ設ける構成としてもよい。
【0166】
また、反射領域732を形成する位置も、適宜に変更することができる。例えば、反射領域732を2個設ける場合、該2個の反射領域732は、配列領域73aを挟んでZ方向に対向する位置に設けられてもよいし(例えば図7)、配列領域73aを挟んでX方向に対向する位置に設けられてもよいし、配列領域73aをその対角方向から挟んで対向する位置に設けられてもよい。また、1個、2個、3個、あるいは、4個の反射領域732の各々が、配列領域73aの角部分の近傍に設けられてもよい。
【0167】
また、反射領域732のサイズも、適宜に変更することができる。例えば、検知するべき位置ずれ量の最大値に基づいて、反射領域732のサイズが規定されることも、好ましい。具体的には例えば、空間光変調器71とMLA部73との間に該最大値に相当する位置ずれが生じている状態において、反射領域732内に画素像Aが捉えられるように、反射領域732のサイズが規定されることも好ましい。一例として、空間光変調器71とMLA部73との間に+X方向について該最大値に相当する位置ずれが生じている状態において、画素像Aが+X方向にΔA(X)だけ変位し、空間光変調器71とMLA部73との間に-X方向について、該最大値に相当する位置ずれが生じている状態において、画素像Aが-X方向にΔA(X)だけ変位するとする。この場合、X方向における反射領域732の寸法Dxを、該格子方向における画素像Aの寸法Axに、+X方向および-X方向の各々における画素像Aの最大の変位量ΔA(X)を加えた値とされることも好ましい(Dx=Ax+2ΔA(X))。他方の格子方向(Z方向)についても同様である。
【0168】
また、反射領域732の形状も、適宜に変更することができる。例えば、上記の実施形態においては、反射領域732は凹面であるとしたが、反射領域732は凹面に限られるものではない。ただし、反射領域732は、複数のマイクロレンズ731の配列面(XZ面)の法線方向(すなわち、第1光軸K1の延在方向(Y軸方向)であり、空間光変調器71の所定位置から発せられた光(具体的には、DMD710の特定予備マイクロミラー711btで反射された光)の入射方向)に対して、非垂直な面であることが好ましい。例えば、反射領域732は、複数のマイクロレンズ731の配列面の法線方向に対して非垂直に傾斜した平坦な傾斜面、凸面、などであってもよい。
【0169】
上記の実施形態において、反射領域732には、DMD710が備える複数の予備マイクロミラー711bの一つである特定予備マイクロミラー711btからの光が入射するものとした。すなわち、DMD710が備える予備マイクロミラー711bを利用して反射光を形成していた。しかしながら、反射光は、必ずしも予備マイクロミラー711bを利用して形成しなくともよい。例えば、DMD710の所定位置に、反射光を形成するための専用のマイクロミラー、あるいは、専用の発光部、などを設けておき、これからの光を反射領域732に入射させて、反射光を得るものであってもよい。いうまでもなく、この場合は、反射領域732を第2格子パターンの格子点のいずれかに相当する位置に設ける必要はない。
【0170】
上記の実施形態において、反射領域732を形成する態様は、どのようなものであってもよい。例えば、上記のとおり、光を透過させる材料で形成された基材730に、凸状の形状部分を設けて、そこに反射膜733を設けることによって、反射領域732を形成してもよい。また例えば、金属板などを凹状に形成することによって、反射領域732を形成してもよい。
【0171】
上記の実施形態において、MLA部73は、複数のマイクロレンズ731と反射領域732とが共通の基材730上に設けられた構成であるとしたが、MLA部73の構成はこれに限られるものではない。例えば、MLA部73は、基材上に複数のマイクロレンズ731が配列されてなる部材(MLA本体部)に、反射領域732が設けられた部材が取り付けられた構成であってもよい。
【0172】
上記の実施形態において、センサ部74は、MLA部73に対して固定的に設けられるものとしたが、センサ部74は、空間光変調器71に対して固定的に設けられてもよい。あるいは、センサ部74は、位置の基準を与えることができる基準部(例えば、保持ユニット8の基準部80)などに設けられてもよい。なお、センサ部74がMLA部73あるいは空間光変調器71に対して固定的に設けられない場合、例えば、位置ずれ量を特定するにあたって、その時点における、センサ部74とMLA部73との相対的な位置関係などを加味して、センサ領域Hにおける頂点Toの適正位置を算出し、最新の適正位置を用いて、位置ずれ量を特定すればよい。
【0173】
上記の実施形態において、センサ部74が反射光を受光する受光時間は適宜に規定することが可能であり、例えば、受光時間を延長することで、拡大率を維持したまま、受光光量を増大させることができる。
【0174】
上記の実施形態においては、MLA部73に設けられる1以上の反射領域732の各々について、該反射領域732で反射された反射光を受光するセンサ部74が1個設けられるものとしたが、各反射領域732で反射された反射光を検出するセンサ部74が、複数個、設けられてもよい。同様に、上記の変形例において、各反射領域732で反射された反射光を検出する一対のセンサ部74a,74bが、複数組、設けられてもよい。
【0175】
上記の実施形態において、空間光変調器71の複数の画素部(空間光変調器71がDMD部710を備える場合、複数のマイクロミラー711)が配列される第1格子パターン(ひいては、これと対応する第2格子パターン)は、格子方向が直交するものである必要はない。例えば、第1格子パターンは、格子方向が60度の角度をなすものであってもよい。いうまでもなく、この場合は、MLA部73において複数のマイクロレンズ731が配列される第2格子パターンも、格子方向が60度の角度をなすものとされる。
【0176】
上記の実施形態において、空間光変調器71における各画素部(空間光変調器71がDMD部710を備える場合、各マイクロミラー711)の形状は、どのようなものであってもよい。例えば、各マイクロミラー711は、矩形状(長方形状、あるいは、正方形状)であってもよいし、矩形状以外の多角形状であってもよい。一例として、各マイクロミラー711は、一辺のサイズが約10.8μm程度の正方形状とすることができる。
【0177】
上記の実施形態において、空間光変調器71はDMD710を備えるとしたが、空間光変調器71の構成はこれに限られるものではない。例えば、空間光変調器71は、DMD710に変えて、平面ライトバルブ(PLV:Planar Light Valve)、グレーティングライトバルブ(GLV:Grating Light Valve)、あるいは、エルコス(LCOS:Liquid Crystal On Silicon)、などを備えてもよい。例えば、空間光変調器71は、バックライトから発せられる光の透過と遮蔽を、画素部ごとに切り換え可能な透過型の液晶を含んで構成されるものであってもよい。すなわち、空間光変調器71は、画素部ごとに光の透過と遮蔽を切り替えることで、光に空間変調を施してパターン光を形成するものであってもよい。
【0178】
なお、空間光変調器71が例えばDMD710を備える場合、上記のとおり、複数のマイクロミラー711の各々が、光源部41から発せられた光を反射することで、パターン光が発せられる。この構成において、DMD710は、光を発する発光部と捉えることができ、各マイクロミラー711は、発光部における単位発光領域と捉えることができる。いうまでもなく、空間光変調器71は、複数の単位発光領域の各々で光を反射することで光を発するものに限られるものではない。すなわち、空間光変調器71が備える複数の単位発光領域の各々は、マイクロミラー711のように光の反射によって光を発するものに限られるものではなく、例えば、自発的に発光することによって(自発光によって)光を発するものであってもよいし、光を透過させることによって光を発するものであってもよい。
【0179】
上記の実施形態において、位置変更部83は、空間光変調器71を移動させて、その位置を変更することによって、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を変更するものであったが、位置変更部83の構成はこれに限られるものではない。すなわち、位置変更部83は、空間光変調器71の位置を変更する第1の位置変更部と、MLA部73の位置を変更する第2の位置変更部との少なくとも一方を含むものであればよい。別の言い方をすると、位置変更部83は、空間光変調器71とMLA部73の少なくとも一方を、X軸方向、Z軸方向、および、θ方向の少なくとも一方に移動させることによって、空間光変調器71とMLA部73との位置関係を変更するものであればよい。また、位置変更部83は、第1並進機構、第2並進機構、および、回転機構の全てを有するものでなくともよく、例えば、回転機構が省略されてもよい。
【0180】
位置変更部83が、空間光変調器71の位置を変更する第1の位置変更部と、MLA部73の位置を変更する第2の位置変更部との少なくとも一方を含むものである場合、位置補正部503は、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれが検知された場合に、一方あるいは両方の位置変更部を制御して、該位置ずれが低減されるように空間光変調器71およびMLA部73の一方あるいは両方の位置を変更させることで、位置ずれを補正すればよい。つまり、位置ずれを補正するにあたっては、空間光変調器71とMLA部73のどちらの位置が変更されてもよいし、両方の位置が変更されてもよい。例えば、位置ずれが生じた原因が、空間光変調器71とMLA部73のどちらにあるかが判明している場合には、該原因となった部材の位置を変更するようにしてもよい。もっとも、基板Wに対するパターン光の照射位置が変更されることがないという点において、MLA部73の位置を変更せずに、空間光変調器71の位置を変更することが特に好ましい。
【0181】
上記の実施形態において、位置補正部503は必須の要素ではなく、これが省略されてもよい。例えば、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれが検知された場合に、例えば、表示部56に、検知された位置ずれ量が表示されるものとし、これを見たオペレータが、必要に応じて、空間光変調器71(または/および、MLA部73)を移動させるべき方向と移動量を、操作部57を介して入力し、該入力に応じて、位置変更部83が、空間光変調器71(または/および、MLA部73)を移動させることで、位置ずれを補正するものであってもよい。もっとも、位置変更部83も必須の要素ではなく、これが省略されてもよい。例えば、空間光変調器71とMLA部73との間の位置ずれが検知された場合に、その旨をオペレータに報知する処理が行われるものとしてもよい。
【0182】
上記の実施形態に係る保持ユニット8において、空間光変調器71を保持する第1保持部81、または(および)、MLA部73を保持する第2保持部82を、基準部80に対して、第1光軸K1の延在方向(Y軸方向)に移動させる機構がさらに設けられてもよい。また、保持ユニット8が第1結像光学系72の各鏡筒721,722を保持する保持部を備える場合、各保持部を、基準部80に対して、第1光軸K1の延在方向(Y軸方向)に移動させる機構がさらに設けられてもよい。この場合、空間光変調器71、MLA部73、または(および)、第1結像光学系72の各鏡筒721,722の、各Y位置を変更することができる。例えば、測定器76で測定された離間距離(露光ヘッド42と基板Wとの離間距離)に応じて、MLA部73および第2鏡筒722(ひいては、第2レンズ722a)の少なくとも一方のY位置を調整して、パターン光の結像位置(ピント位置)を基板W(より具体的には、基板Wに設けられた感光材料の層Rの上面)に合わせ込むようにしてもよい。
【0183】
上記の実施形態においては、並進方向であるX軸方向およびZ軸方向の各々について、位置ずれ量の検知および位置ずれの補正が個別に行われていた(図13のステップS6~ステップS9、および、ステップS10~ステップS13)が、X軸方向およびZ軸方向の位置ずれ量の検知は、一度に行われてもよく、X軸方向およびZ軸方向の位置ずれの補正も、一度に行われてもよい。
【0184】
上記の実施形態において、位置ずれ検知動作が行われるタイミング、位置ずれ検知動作が継続される時間、などは適宜に変更することができる。例えば、露光動作が開始されてから終了するまでの間、所定時間毎に、ステップS2~ステップS13の一連の処理(図13)が1回行われるものであってもよい。また、位置ずれ検知動作は、必ずしも露光動作と並行して行われなくともよく、例えば、露光動作が行われていないタイミングで位置ずれ検知動作が行われてもよい。
【0185】
上記の実施形態において、露光部4が備える露光ユニット40の個数(すなわち、露光ヘッド42の個数)は、何個であってもよい。例えば、露光部4が備える露光ユニット40の個数は、1個であってもよい。また、露光部4が複数の露光ユニット40(すなわち、複数の露光ヘッド42)を備える場合、複数の露光ヘッド42の配列態様はどのようなものであってもよい。例えば、複数の露光ヘッド42が、副走査方向(X方向)に、帯状領域Qjの幅(X方向の寸法)の自然数倍に相当する隙間を設けつつ、配列されてもよい。この場合、副走査動作において、ステージ1を帯状領域Qjの幅だけ移動させればよい。
【0186】
上記の実施形態では、露光ヘッド42において、空間光変調器71、第1結像光学系72、MLA部73、および、第2結像光学系75が、L字状に折れ曲がった経路上に配列されるものとしたが、これら各部71,72,73,75は、例えばZ方向に延在する直線状の経路上に配列されてもよい。また、上記の実施形態においては、露光ヘッド42が測定器76を備えるものとしたが、測定器76は省略されてもよい。
【0187】
上記の実施形態においては、ステージ駆動機構2は回転機構21を備えるものとしたが、回転機構21は省略されてもよい。この場合、例えば、ステージ1を回転させることによってなされる回転方向の位置合わせが、パターンデータDにアフィン変換などの公知の回転補正を施すことで代替されてもよい。
【0188】
上記の実施形態において、副走査機構22および主走査機構23の各々が備えるガイドユニット222,232の一方あるいは両方は、機械の直線運動部を「転がり」を用いてガイドを行う機械要素部品としてのLMガイド(登録商標)を用いて構成されてもよい。また、各ガイドユニット222,232が備える摺動部材222b,232bの一方あるいは両方は、エアベアリングを用いて構成されてもよい。
【0189】
上記の実施形態においては、露光動作において、ステージ1を露光部4に対して相対的に移動させるものであったが、ステージ1に対して露光部4を相対的に移動させるものであってもよい。すなわち、露光装置100は、ステージ1と露光部4とを相対的に移動させる駆動機構を有していればよい。
【0190】
上記の実施形態において、パターンデータDとして、基板Wの全面に形成するべきパターンを示す単一の画像データが保持されてもよいし、該単一の画像データが、各露光ヘッド42が描画を担当する部分毎に分割された形で保持されてもよい。
【0191】
上記の実施形態においては、空間光変調器71とMLA部73との位置ずれを検知する態様が、感光材料の層Rが形成された基板Wにパターン光を照射する露光装置100に適用された場合が例示されていたが、該位置ずれを検知する態様は、パターン光を処理対象物に照射する各種の装置(例えば、金属粉体にパターン光を照射して、金属粉体を所望の形状に固めることで三次元造形物を形成する装置、など)に適用されてもよい。
【0192】
以上のように、露光装置は詳細に説明されたが、上記の説明は、全ての局面において、例示であって、これらがそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記の実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り、適宜に組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0193】
100 露光装置
1 ステージ
2 ステージ駆動機構
3 ステージ位置計測部
4 露光部
41 光源部
42 露光ヘッド
71 空間光変調器
711 マイクロミラー
72 第1結像光学系
73 マイクロレンズアレイ部(MLA部)73
731 マイクロレンズ
732 反射領域
74,74a,74b センサ部
75 第2結像光学系
5 制御部
501 動作制御部
502 位置ずれ検知部
503 位置補正部
8 保持ユニット
81 第1保持部
82 第2保持部
83 位置変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16