(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043836
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】集合住宅建築物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240326BHJP
E04B 1/18 20060101ALI20240326BHJP
E04H 1/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E04H9/02 321A
E04B1/18 A
E04H1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149038
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】522371754
【氏名又は名称】TUS都市開発株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514158431
【氏名又は名称】ファーストコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】小田 稔
(72)【発明者】
【氏名】中村 利秋
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC03
2E139AC26
2E139AC27
2E139AC62
2E139AC72
2E139AD01
2E139AD07
2E139AD10
(57)【要約】
【課題】建築コストの増大を抑制するとともに、アスペクト比を大きくすることのできる集合住宅建築物を提供する。
【解決手段】複数の階層を有する集合住宅建築物1であって、梁間方向の両端側のそれぞれにおいて互いに対向するように配置され、それぞれ桁行方向の全体にわたって構成された一対のラーメン架構10と、各階層において、梁間方向に延在することで、梁間方向の水平力に対して抵抗する少なくとも1つの耐震壁20と、を備え、各階層に配置される耐震壁20の数は、下側に隣接する階層に配置される耐震壁20の数以下であり、最上階層に配置される耐震壁20の数は、最下階層に配置される耐震壁20の数よりも少ない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階層を有する集合住宅建築物であって、
梁間方向の両端側のそれぞれにおいて互いに対向するように配置され、それぞれ桁行方向の全体にわたって構成された一対のラーメン架構と、
各階層において梁間方向に延在することで、梁間方向の水平力に対して抵抗する少なくとも1つの梁間方向耐力部と、を備え、
各階層に配置される前記梁間方向耐力部の数は、下側に隣接する階層に配置される前記梁間方向耐力部の数以下であり、
最上階層に配置される前記梁間方向耐力部の数は、最下階層に配置される前記梁間方向耐力部の数よりも少ない
集合住宅建築物。
【請求項2】
下側に隣接する階層における前記梁間方向耐力部の数よりも前記梁間方向耐力部の数が少くなる階層における、少なくとも一部の前記梁間方向耐力部は、下側に隣接する階層に配置された前記梁間方向耐力部と上下に連続しない位置に配置される
請求項1に記載の集合住宅建築物。
【請求項3】
各階層における前記梁間方向耐力部は、桁行方向の中央部に関して対称となる桁行方向の位置に配置されている
請求項1に記載の集合住宅建築物。
【請求項4】
前記梁間方向耐力部は、耐震壁または梁である
請求項1に記載の集合住宅建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の階層を有する集合住宅建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の集合住宅建築物としては、複数の階層を有し、各階において桁行方向に複数の住戸が形成された、所謂、板状住宅が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の板状住宅は、梁間方向両側のそれぞれにおいて互いに対向するように配置され、それぞれ桁行方向の全体にわたって構成される一対のラーメン架構と、互いに対向する一対のラーメン架構の間を梁間方向に延在し、各階層において隣り合う住戸を仕切る耐震壁と、を備えている。
【0004】
従来の板状住宅は、梁間方向の両端部に設けられ、一対のラーメン架構の下方に配置されたフーチングと、梁間方向および桁行方向に隣り合うフーチングの間を連結する基礎梁と、フーチングの下面側から下方に延びる杭と、を形成することによって基礎を構成している。
【0005】
従来の板状住宅では、梁間方向に地震の水平力が作用する場合に、梁間方向の一方の杭に圧縮力が作用し、他方の杭に引抜力が作用する。従来の板状住宅は、各階層において隣り合う住戸を仕切る戸境壁の全てを耐震壁としているため、杭に作用する引き抜き力が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の板状住宅は、梁間方向の大きさに対する高さ方向の大きさの比率であるアスペクト比が所定値よりも大きくなると、梁間方向に地震の水平力が作用する場合に杭に作用する引抜力が過大となるため、通常、アスペクト比が所定値以下となる高さに制限されることになる。また、従来の板状住宅では、作用する引抜力を許容する杭の長さとすることによって、アスペクト比を所定値よりも大きくすることが考えられるが、建築コストが増加することになる。
【0008】
本発明の目的とするところは、建築コストの増大を抑制するとともに、アスペクト比を大きくすることのできる集合住宅建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る集合住宅建築物は、複数の階層を有する集合住宅建築物であって、梁間方向の両端側のそれぞれにおいて互いに対向するように配置され、それぞれ桁行方向の全体にわたって構成された一対のラーメン架構と、各階層において梁間方向に延在することで、梁間方向の水平力に対して抵抗する少なくとも1つの梁間方向耐力部と、を備え、各階層に配置される前記梁間方向耐力部の数は、下側に隣接する階層に配置される前記梁間方向耐力部の数以下であり、最上階層に配置される前記梁間方向耐力部の数は、最下階層に配置される前記梁間方向耐力部の数よりも少ない。
【0010】
また、本発明に係る集合住宅建築物は、好ましくは、下側に隣接する階層における前記梁間方向耐力部の数よりも前記梁間方向耐力部の数が少くなる階層における、少なくとも一部の前記梁間方向耐力部が、下側に隣接する階層に配置された前記梁間方向耐力部と上下に連続しない位置に配置される。
【0011】
また、本発明に係る集合住宅建築物は、好ましくは、各階層における前記梁間方向耐力部が、桁行方向の中央部に関して対称となる桁行方向の位置に配置されている。
【0012】
また、本発明に係る集合住宅建築物は、好ましくは、前記梁間方向耐力部が、耐震壁または梁である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、梁間方向に地震の水平力が作用する場合に杭に作用する引抜力を抑制することが可能となるので、建築コストの増大を抑制するとともに、梁間方向の大きさに対する高さ方向の大きさの比率であるアスペクト比を所定値よりも大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る集合住宅建築物の構造を示す概略側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る集合住宅建築物の耐震壁の配置を示す概略正面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る集合住宅建築物の耐震壁の配置を示す概略平面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る集合住宅建築物の耐震壁の配置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1乃至
図3は、本発明の第1実施形態を示すものである。
図1は集合住宅建築物の構造を示す概略側面図であり、
図2は集合住宅建築物の耐震壁の配置を示す概略正面図であり、
図3は集合住宅建築物の耐震壁の配置を示す概略平面図である。
【0016】
本実施形態の集合住宅建築物1は、例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の所謂、板状住宅である。
【0017】
集合住宅建築物1は、複数の階層を有し、各階層において桁行方向(長手方向)に複数の住戸が配置される。
【0018】
集合住宅建築物1は、
図1に示すように、梁間方向の両端側のそれぞれにおいて互いに対向するように配置され、それぞれ桁行方向の全体にわたって構成された一対のラーメン架構10と、各階層において一対のラーメン架構10の間を梁間方向に延在することで、梁間方向の水平力に対して抵抗する梁間方向耐力部としての複数の耐震壁20と、地中部分に形成された基礎30と、を備えている。
【0019】
ラーメン架構10は、梁間方向の両端側において、それぞれ桁行方向に間隔をおいて配置され、それぞれ上下方向に延びる複数の柱と、それぞれ上下方向に間隔をおいて配置され、それぞれ桁行方向に隣り合う柱同士を接続する複数の梁と、を剛接合することによって形成されている。
【0020】
耐震壁20は、集合住宅建築物1に作用する水平力に対する耐力を向上させるものであり、互いに対向する一対のラーメン架構10の柱の間を梁間方向に延びる鉄筋コンクリート造の壁である。耐震壁20は、隣り合う住戸と住戸とを仕切る戸境壁や、外壁として用いられる。
【0021】
各階層に配置される耐震壁20の数は、
図2および
図3に示すように、下側に隣接する階層に配置される耐震壁20の数以下であり、最上階層に配置される耐震壁20の数は、最下階層に配置される耐震壁20の数よりも少ない。下側に隣接する階層における耐震壁20の数よりも耐震壁20の数が少くなる階層における、少なくとも一部の耐震壁20は、下側に隣接する階層に配置された耐震壁20と上下に連続しない位置に配置される。ここで、耐震壁20が形成されない戸境壁については、石膏ボードおよびグラスウール等からなる乾式壁40によって構成される。
【0022】
具体的に説明すると、
図3(a)に示す集合住宅建築物1の高層階(
図2における13階~15階)では、耐震壁20が4枚であり、乾式壁40が3枚である。また、
図3(b)に示す集合住宅建築物1の中層階(
図2における7階~12階)では、耐震壁20が5枚であり、乾式壁40が2枚である。さらに、
図3(c)に示す集合住宅建築物1の低層階(
図2における1階~6階)では、耐震壁20が6枚であり、乾式壁40が1枚である。
【0023】
また、各階層における複数の耐震壁20は、桁行方向の中央部に関して対称となる桁行方向の位置に配置されている。
【0024】
基礎30は、一対のラーメン架構10のそれぞれの柱の下端部に連結されたフーチング31と、それぞれのフーチング31の下面側から下方に延びるように形成された杭32と、桁行方向および梁間方向に隣り合うフーチング31同士を接続する基礎梁33と、を有している。
【0025】
フーチング31は、桁行方向および梁間方向の大きさが、基礎梁33の幅寸法よりも大きく形成され、集合住宅建築物1の荷重の大部分が作用する。
【0026】
杭32は、円柱状の部材であり、上端部がフーチング31の下面に連結され、下端側を地盤の強度が高い支持層に到達させることによって、集合住宅建築物1を支持層に支持させるようになっている。
【0027】
基礎梁33は、角柱状に形成され、桁行方向または梁間方向に延在している。
【0028】
以上のように構成された集合住宅建築物1は、梁間方向の両端側に配置され、支持層に打ち込まれた杭32によって支持される。また、集合住宅建築物1は、各階層に配置される耐震壁20の数が、下側に隣接する階層に配置される耐震壁20の数以下であり、最上階層に配置される耐震壁20の数が、最下階層に配置される耐震壁20の数よりも少ないため、梁間方向に地震の水平力が作用する場合に、各ラーメン架構10に作用する引抜力が小さくなる。
【0029】
このように、本実施形態の集合住宅建築物によれば、複数の階層を有する集合住宅建築物1であって、梁間方向の両端側のそれぞれにおいて互いに対向するように配置され、それぞれ桁行方向の全体にわたって構成された一対のラーメン架構10と、各階層において、梁間方向に延在することで、梁間方向の水平力に対して抵抗する少なくとも1つの耐震壁20と、を備え、各階層に配置される耐震壁20の数は、下側に隣接する階層に配置される耐震壁20の数以下であり、最上階層に配置される耐震壁20の数は、最下階層に配置される耐震壁20の数よりも少ない。
【0030】
これにより、梁間方向に地震の水平力が作用する場合に杭32に作用する引抜力を抑制することが可能となるので、建築コストの増大を抑制するとともに、梁間方向の大きさに対する高さ方向の大きさの比率であるアスペクト比を所定値よりも大きくすることが可能となる。
【0031】
また、下側に隣接する階層における耐震壁20の数よりも耐震壁20の数が少くなる階層における、少なくとも一部の耐震壁20は、下側に隣接する階層に配置された耐震壁20と上下に連続しない位置に配置される、ことが好ましい。
【0032】
これにより、一対のラーメン架構10のそれぞれに作用する引抜力を、ラーメン架構10を構成する複数の柱のそれぞれに分散させることが可能となり、特定の杭に対する引抜力の集中を抑制することが可能となる。
【0033】
また、各階層における耐震壁20は、桁行方向の中央部に関して対称となる桁行方向の位置に配置されている、ことが好ましい。
【0034】
これにより、一対のラーメン架構10のそれぞれに作用する引抜力を、桁行方向の全体にわたって均一に作用させることが可能となる。
【0035】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態を示すものであり、集合住宅建築物の耐震壁の配置を示す概略平面図である。前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0036】
本実施形態の集合住宅建築物1は、
図4に示すように、一対のラーメン架構10の間において、梁間方向に延在する耐震壁20と、桁行方向に延在する耐震壁21と、を有している。
【0037】
各階層に配置される耐震壁20は、第1実施形態と同様に、下側に隣接する階層に配置される耐震壁20の数以下であり、最上階層に配置される耐震壁20の数は、最下階層に配置される耐震壁20の数よりも少ない。耐震壁20は、各階層に配置される耐震壁20の数が、下側に隣接する階層に配置される耐震壁20の数よりも小さい場合に、少なくとも一部の耐震壁20が、下側に隣接する階層に配置される耐震壁20と異なる位置に配置されている。
【0038】
具体的に説明すると、
図4(a)に示す集合住宅建築物1の高層階では、桁行方向の両端部において一対のラーメン架構10のそれぞれと桁行方向に延在する耐震壁21とを連結する4枚の耐震壁20と、桁行方向の中央部側において一端が一方のラーメン架構10に接続され、他端が耐震壁21に接続される1枚の耐震壁20と、を有している。また、
図4(b)に示す集合住宅建築物1の中層階では、桁行方向の両端部において一対のラーメン架構10のそれぞれと桁行方向に延在する耐震壁21とを連結する4枚の耐震壁20と、桁行方向の中央部側において一端が一方のラーメン架構10に接続され、他端が耐震壁21に接続される5枚の耐震壁20と、を有している。さらに、
図4(c)に示す集合住宅建築物1の低層階では、桁行方向の両端部において一対のラーメン架構10のそれぞれと桁行方向に延在する耐震壁21とを連結する4枚の耐震壁20と、桁行方向の中央部側において一端が一方のラーメン架構10に接続され、他端が耐震壁21に接続される5枚の耐震壁20と、を有している。
【0039】
以上のように構成された集合住宅建築物1は、第1実施形態と同様に、梁間方向の両端側に配置され、支持層に打ち込まれた杭32によって支持される。また、集合住宅建築物1は、耐震壁20が、各階層に配置される耐震壁20の数が、下側に隣接する階層に配置される耐震壁20の数以下であり、最上階層に配置される耐震壁20の数が、最下階層に配置される耐震壁20の数よりも少ないため、梁間方向に地震の水平力が作用する場合に、各ラーメン架構10に作用する引抜力が小さくなる。
【0040】
このように、本実施形態の集合住宅建築物によれば、前記第1実施形態と同様に、梁間方向に地震の水平力が作用する場合に杭に作用する引抜力を抑制することが可能となるので、建築コストの増大を抑制するとともに、梁間方向の大きさに対する高さ方向の大きさの比率であるアスペクト比を所定値よりも大きくすることが可能となる。
【0041】
また、下側に隣接する階層における耐震壁20の数よりも耐震壁20の数が少くなる階層における、少なくとも一部の耐震壁20は、下側に隣接する階層に配置された耐震壁20と上下に連続しない位置に配置される、ことが好ましい。
【0042】
これにより、一対のラーメン架構10のそれぞれに作用する引抜力を、ラーメン架構10を構成する複数の柱のそれぞれに分散させることが可能となり、特定の杭に対する引抜力の集中を抑制することが可能となる。
【0043】
尚、前記実施形態では、梁間方向の水平力に対して抵抗する梁間方向耐力部として、耐震壁20を示したが、耐震壁20に限られるものではない。梁間方向耐力部としては、梁間方向の水平力に対して抵抗する構造体であれば、一対のラーメン架構10の間を梁間方向に延在する梁であってもよい。即ち、梁間方向耐力部は、耐震壁20または梁である、ことが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1 集合住宅建築物
10 ラーメン架構
20,21 耐震壁