(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043841
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】鍵管理装置
(51)【国際特許分類】
E05B 19/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
E05B19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149043
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】307011510
【氏名又は名称】株式会社熊平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖野 淳志
(72)【発明者】
【氏名】渡部 文哉
(57)【要約】
【課題】シンプルかつコンパクトな構造としながら、鍵交換が可能な状態にある鍵ホルダの鍵交換ユニットからの取り外しを規制できるようにする。
【解決手段】鍵ホルダ4は、ホルダ側係止部10aが形成されたホルダ本体部12と、鍵を保持する保持部材13と、保持部材13を、鍵の取り外しが可能な取外可能状態と鍵の取り外しを不能にする取外不能状態とに切り替えるとともに取外不能状態にある保持部材13をホルダ本体部12に対してロックするロック部14とを有している。鍵交換ユニットは、ホルダ本体部12が差し込まれるシリンダ31と、シリンダ31に差し込まれたホルダ本体部12が回動した時点でホルダ側係止部10aに係止するユニット側係止部32aと、ホルダ本体部12が所定角度回動した時点でロック部14による保持部材13のロックを解除する解除部33とを有している。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵を保持する鍵ホルダと、前記鍵ホルダが着脱される鍵交換ユニットとを備えた鍵管理装置であって、
前記鍵ホルダは、外面にホルダ側係止部が形成されたホルダ本体部と、鍵を保持する保持部材と、前記保持部材を、鍵の取り外しが可能な取外可能状態と鍵の取り外しを不能にする取外不能状態とに切り替えるとともに前記取外不能状態にある前記保持部材を前記ホルダ本体部に対してロックするロック部と、を有し、
前記鍵交換ユニットは、前記ホルダ本体部が差し込まれた状態で回動操作されるシリンダと、前記シリンダに差し込まれた前記ホルダ本体部が差込初期位置から回動した時点で前記ホルダ側係止部に係止するユニット側係止部と、前記ホルダ本体部が所定角度回動した時点で前記ロック部による前記保持部材のロックを解除する解除部とを有している鍵管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鍵管理装置において、
前記鍵交換ユニットは、前記取外可能状態にある前記保持部材に当接して前記ホルダ本体部の前記差込初期位置への回動を阻止するストッパ部を有している鍵管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の鍵管理装置において、
前記保持部材は、前記取外可能状態にある時には前記取外不能状態にある時よりも反差込方向に向けて突出するように構成され、
前記ストッパ部は、前記取外不能状態にある前記保持部材には非当接とされる一方、前記反差込方向に突出した前記保持部材に当接するように構成されている鍵管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の鍵管理装置において、
前記保持部材は、前記ホルダ本体部が前記シリンダに差し込まれた状態で前記鍵交換ユニットの外面から突出するように配置され、
前記ストッパ部は、前記鍵交換ユニットの外面において前記シリンダが有する差込口から離れた部位に設けられている鍵管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の鍵管理装置において、
前記ロック部は、前記取外不能状態にある前記保持部材を前記ホルダ本体部に係止させる係止位置と、係止させない非係止位置とに切り替えられる磁性体からなるロックピンを有し、
前記解除部は、前記ホルダ本体部が差込初期位置から所定角度回動した時点で、前記ロックピンを前記係止位置から前記非係止位置に変位させるように当該ロックピンに対して磁力を作用させるユニット側磁石を含んでいる鍵管理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の鍵管理装置において、
前記ホルダ側係止部は、前記ホルダ本体部の外面における周方向の一部のみ切り欠くことによって形成された切欠部で構成され、
前記ユニット側係止部は、前記シリンダの内面から当該シリンダの径方向内方へ向けて前記切欠部内に達するまで突出する突起部を含んでいる鍵管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鍵を管理することにより鍵の不正使用を防止する鍵管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の鍵管理装置は、複数の錠機構が配設されており、鍵を保持している鍵ホルダが鍵機構に挿入され、鍵機構に対して脱着自在になっており、認証手段によって認証された者のみが鍵ホルダを鍵機構から外して使用可能にすることで、認証されていない者による鍵の不正使用を防止している。
【0003】
鍵管理装置の運用中、例えば今まで使用されていた施解錠部を交換した場合には、鍵が変わることになるので、鍵ホルダに保持されている鍵を交換する必要が生じる。この交換時に鍵の管理者以外の者が鍵ホルダから鍵を自由に取り外して交換可能になっていると、鍵の不正使用を防止するという目的が達成できないので、鍵ホルダに保持されている鍵を交換する場合にも所定の認証を行う必要がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の鍵ホルダは、ホルダ本体部と、ホルダ本体部に対して着脱自在とされたアームとで構成されており、アームをホルダ本体部に装着した状態で鍵が保持される一方、アームをホルダ本体部から外した状態で鍵の交換が可能となっている。また、鍵交換ユニットには、鍵の交換時にホルダ本体部が挿入される交換時挿入開口が形成されるとともに、開口に挿入されたホルダ本体部に係合する係合部材を駆動する駆動手段を備えている。駆動手段は、駆動モータ、駆動モータによって駆動される複数のリンク機構及び連結ピン等を有しており、交換時挿入開口に挿入されたホルダ本体部からアームを取り外した状態では当該ホルダ本体部を交換時挿入開口から引き抜くことができないようにし、一方、アームをホルダ本体部に取り付けた状態にすることでホルダ本体部を交換時挿入開口から引き抜くことができるようにしている。これにより、交換時挿入開口からホルダ本体部を引き抜いた状態で鍵の交換を行うことができず、鍵の交換が鍵交換ユニットの前でしか行われないようにして鍵の不正使用を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1では、交換時挿入開口に挿入されたホルダ本体部を引き抜くことができないようにするための駆動手段が、駆動モータ、複数のリンク機構及び連結ピン等を含む複数の可動部材の組み合わせによって構成されているとともに、駆動モータを制御する制御装置も必要になることから、駆動手段の構造が複雑化してコスト高を招くとともに駆動手段が大型化して鍵交換ユニットへの組み込み自由度が低下してしまう。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、シンプルかつコンパクトな構造としながら、鍵交換が可能な状態にある鍵ホルダの鍵交換ユニットからの取り外しを規制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、鍵を保持する鍵ホルダと、前記鍵ホルダが着脱される鍵交換ユニットとを備えた鍵管理装置を前提とすることができる。前記鍵ホルダは、外面にホルダ側係止部が形成されたホルダ本体部と、鍵を保持する保持部材と、前記保持部材を、鍵の取り外しが可能な取外可能状態と鍵の取り外しを不能にする取外不能状態とに切り替えるとともに前記取外不能状態にある前記保持部材を前記ホルダ本体部に対してロックするロック部と、を有している。また、前記鍵交換ユニットは、前記ホルダ本体部が差し込まれた状態で回動操作されるシリンダと、前記シリンダに差し込まれた前記ホルダ本体部が差込初期位置から回動した時点で前記ホルダ側係止部に係止するユニット側係止部と、前記ホルダ本体部が所定角度回動した時点で前記ロック部による前記保持部材のロックを解除する解除部とを有している。
【0009】
この構成によれば、鍵管理装置を利用する者(以下、利用者という)が鍵を交換する場合に、鍵ホルダのホルダ本体部を鍵交換ユニットのシリンダに差し込み、その差込位置から回動させると、ユニット側係止部がホルダ本体部のホルダ側係止部に係止するので、ホルダ本体部をシリンダから抜くことができなくなり、ホルダ本体部がシリンダに保持される。このように、鍵の交換中にホルダ本体部が鍵交換ユニットから抜けないようにするための構成として、利用者によるホルダ本体部の回動操作を用い、ユニット側係止部をホルダ側係止部に係止させる構成としているので、従来例のような駆動モータ、複数のリンク機構、連結ピン、制御部等は不要になり、シンプルかつコンパクトな構成になる。
【0010】
また、ホルダ本体部が所定角度回動すると、解除部により、ホルダ本体部のロック部が解除されるので、保持部材を取外可能状態にして、利用者が現在の鍵を取り外すことができるとともに、現在の鍵を取り外した後に別の鍵に変えて保持部材を取外不能状態にすることで、当該別の鍵が保持部材によって保持される。そして、鍵の交換後、利用者がホルダ本体部を差込初期位置へ回動させることにより、ユニット側係止部がホルダ本体部のホルダ側係止部から離れるので、ホルダ本体部をシリンダから抜くことができる。
【0011】
本開示の第2の態様に係る鍵交換ユニットは、前記取外可能状態にある前記保持部材に当接して前記ホルダ本体部の前記差込初期位置への回動を阻止するストッパ部を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、シリンダに差し込まれた鍵ホルダの保持部材が鍵の取外可能状態にあるときには、鍵交換ユニットのストッパ部に保持部材が当接して差込初期位置へ回動させることができなくなるので、ユニット側係止部がホルダ本体部のホルダ側係止部に係止したままになり、ホルダ本体部をシリンダから抜くことはできない。つまり、保持部材を鍵の取外不能状態にしなければホルダ本体部がシリンダから抜けないので、鍵の不正利用を抑制する効果がより一層高まる。
【0013】
本開示の第3の態様に係る保持部材は、前記取外可能状態にある時には前記取外不能状態にある時よりも前記反差込方向に向けて突出するように構成されていてもよい。この場合、前記ストッパ部は、前記取外不能状態にある前記保持部材には非当接とされる一方、前記反差込方向に突出した前記保持部材に当接するように構成されているので、取外可能状態と取外不能状態との保持部材の位置の変化を利用してホルダ本体部の差込初期位置への回動を阻止できる。
【0014】
本開示の第4の態様に係る保持部材は、前記ホルダ本体部が前記シリンダに差し込まれた状態で前記鍵交換ユニットの外面から突出するように配置されていてもよい。この場合、前記ストッパ部は、前記鍵交換ユニットの外面において前記シリンダが有する差込口から離れた部位に設けることができる。これにより、ホルダ本体部をシリンダの差込口へ差し込む際にストッパ部が邪魔になることはなく、差込時の作業性が良好になる。
【0015】
本開示の第5の態様に係るロック部は、前記取外不能状態にある前記保持部材を前記ホルダ本体部に係止させる係止位置と、係止させない非係止位置とに切り替えられる磁性体からなるロックピンを有していてもよい。この場合、前記解除部は、前記ホルダ本体部が差込初期位置から所定角度回動した時点で、前記ロックピンを前記係止位置から前記非係止位置に変位させるように当該ロックピンに対して磁力を作用させるユニット側磁石を含むように構成できる。従って、ロック部による保持部材のロックを磁力によって解除できるので、保持部材のロックを解除するための電動アクチュエータやその制御部が不要になり、鍵管理装置の構成がより一層シンプルになる。
【0016】
本開示の第6の態様に係るホルダ側係止部は、前記ホルダ本体部の外面における周方向の一部のみ切り欠くことによって形成された切欠部で構成されていてもよい。この場合、前記ユニット側係止部は、前記シリンダの内面から当該シリンダの径方向内方へ向けて前記切欠部内に達するまで突出する突起部を含むように構成できる。これにより、切欠部と突起部によるシンプルな構造としながら、回動したホルダ本体部が確実に抜けないようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、利用者によるホルダ本体部の回動操作により、鍵の交換中にホルダ本体部が鍵交換ユニットから抜けないようにすることができるので、シンプルかつコンパクトな構造としながら、鍵交換が可能な状態にある鍵ホルダの鍵交換ユニットからの取り外しを規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態1に係る鍵管理装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る鍵管理装置の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態3に係る鍵管理装置の斜視図である。
【
図4】鍵交換ユニットの主要部分と鍵ホルダの斜視図である。
【
図7】
図5におけるVII-VII線断面図である。
【
図8】
図5におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図11】ホルダ本体部がシリンダに差し込まれた状態を示す
図4相当図である。
【
図12】ホルダ本体部がシリンダに差し込まれた鍵交換ユニットの主要部分の縦断面図である。
【
図13】ホルダ本体部が回動完了位置にある場合の
図11相当図である。
【
図14】ホルダ本体部が回動完了位置にある場合の
図12相当図である。
【
図15】リングを保持部材から取り外した状態を示す
図11相当図である。
【
図16】ホルダ本体部が差込初期位置にある場合の正面図である。
【
図18】ホルダ本体部が回動完了位置にあり、かつ、保持部材が鍵の取外不能状態にある場合の
図16相当図である。
【
図20】ホルダ本体部が回動完了位置にあり、かつ、保持部材が鍵の取外可能状態にある場合の
図16相当図である。
【
図23】実施形態4に係るホルダ本体部を差し込む前の状態を示す断面図である。
【
図24】実施形態4に係るホルダ本体部がシリンダに差し込まれた鍵交換ユニットの主要部分の縦断面図である。
【
図25】ホルダ本体部が差込初期位置にある時の第1可撓片及び第2可撓片とロッドとの位置関係を示す図である。
【
図26】実施形態4に係るホルダ本体部が回動完了位置にある時の
図24相当図である。
【
図27】ホルダ本体部が回動完了位置にある時の
図25相当図である。
【
図28】実施形態4に係る保持部材が鍵の取外可能状態に切り替わった時の
図24相当図である。
【
図29】保持部材が鍵の取外可能状態に切り替わった時の
図25相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態1に係る鍵管理装置1の一例を示すものである。実施形態1に係る鍵管理装置1は、例えば複数の鍵が収容可能な鍵収容庫2と、鍵交換ユニット3と、鍵交換ユニット3によって交換可能な鍵を保持する鍵ホルダ4とを備えている。鍵ホルダ4は鍵K(
図4に示す)を交換する際に、鍵交換ユニット3に着脱される。鍵Kを交換しない通常の使用時には、鍵交換ユニット3は使用されず、鍵ホルダ4は鍵収容庫2に収容される。尚、
図1に示す構造は一例であり、この構造に限定されるものではなく、鍵交換ユニット3は任意に設定できる。
【0021】
鍵収容庫2には、従来から周知の認証装置2aが設けられている。認証装置2aは、鍵収容庫2内の鍵Kの持ち出しが許可された者であるか否かを判定する部分であり、例えばその者が所持する認証カードによる認証、暗証番号の入力による認証、生体認証等の各種認証方法を用いて認証処理を行うことができるように構成されている。
【0022】
鍵収容庫2の側部には、扉5が設けられている。扉5によって覆われる部分に、鍵交換ユニット3が設けられており、鍵交換ユニット3を使用しないときには扉5を閉じておくことができる。尚、鍵交換ユニット3は、扉5によって覆われていなくてもよい。鍵交換ユニット3の使用、即ち、鍵Kの交換についても、認証装置2aによる認証が必要になっており、認証された者のみが鍵Kの交換を行うことができる。鍵Kの持ち出しが許可された者と、鍵Kの交換が許可された者とは異なっていてもよく、例えば、鍵Kの持ち出しは許可されるが、鍵Kの交換は許可されないといったセキュリティレベルの設定も認証装置2aで可能になっている。認証装置2aは、認証処理の結果、鍵Kの交換が許可された者であると認証された場合には、後述する制御部40(
図4に示す)に認証信号(許可信号)を送信する。
【0023】
図2は、本発明の実施形態2に係る鍵管理装置1を示すものである。実施形態2に係る鍵管理装置1は、鍵交換ユニット3が鍵収容庫2から離れた所に設置可能になっている点で実施形態1のものとは異なっている。実施形態2の鍵収容庫2には、通信ケーブル2bが接続可能になっており、この通信ケーブル2bを介して鍵交換ユニット3と鍵収容庫2との通信が可能になっている。例えば、認証装置2aによる認証結果等は、通信ケーブル2bを介して鍵交換ユニット3に送信することが可能である。また、後述するが、鍵交換ユニット3が有する制御部40を鍵収容庫2側に設けることもでき、その制御部40による制御信号が通信ケーブル2bを介して鍵交換ユニット3に送信される。
【0024】
図3は、本発明の実施形態3に係る鍵管理装置1を示すものである。実施形態3に係る鍵管理装置1は、鍵交換ユニット3及び鍵ホルダ4の他に、パーソナルコンピュータ6、モニタ7及びキーボード8(図示しないマウスも含む)を備えているが、実施形態1、2の鍵収容庫2は備えていない。パーソナルコンピュータ6、モニタ7及びキーボード8は汎用のものを用いることができ、パーソナルコンピュータ6に所定のプログラムをインストールすることで鍵管理装置1の一部として動作させることができる。また、パーソナルコンピュータ6は認証装置として利用し得るものである。
【0025】
パーソナルコンピュータ6には、通信ケーブル6aが接続されており、この通信ケーブル6aを介して鍵交換ユニット3とパーソナルコンピュータ6との通信が可能になっている。例えば、パーソナルコンピュータ6による認証結果等は、通信ケーブル6aを介して鍵交換ユニット3に送信することが可能である。また、後述するが、鍵交換ユニット3が有する制御部40をパーソナルコンピュータ6側に設けることもでき、この場合には、その制御部40による制御信号が通信ケーブル6aを介して鍵交換ユニット3に送信される。
【0026】
以下、
図4~
図9に基づいて、鍵交換ユニット3及び鍵ホルダ4の構成について説明するが、鍵交換ユニット3及び鍵ホルダ4は実施形態1~3で共通している。よって、以下の説明は、実施形態1~3の全てに適用され得るものである。尚、実施形態ごとに鍵交換ユニット3及び鍵ホルダ4の形状や構造を変更してもよい。
【0027】
図4は、鍵交換ユニット3の主要部分と、鍵交換ユニット3に差し込まれる前の鍵ホルダ4とを示す斜視図である。この実施形態の説明では、はじめに鍵ホルダ4の構成について説明する。
図5にも示すように、鍵ホルダ4は鍵Kを保持するためものであり、キーホルダと呼ぶこともできる。尚、
図6~
図8では鍵Kを省略しているが、
図5等に示すように鍵Kを保持することができる。
【0028】
鍵ホルダ4は全体として板状をなしており、長手方向の一端部に鍵KがリングRによって保持されるようになっている。
図6に示すように、鍵ホルダ4は、アウタケース10及びインナ部材11を有するホルダ本体部12と、鍵Kを保持する保持部材13と、ロックピン(ロック部)14と、コイルバネ15とを有している。アウタケース10、インナ部材11及び保持部材13は、例えば樹脂材等で構成されている。一方、ロックピン14は、例えば鉄等の磁性体で構成されている。
【0029】
尚、詳細は後述するが、鍵Kを交換する際には、鍵ホルダ4のホルダ本体部12が鍵交換ユニット3のシリンダ31(
図4に示す)に差し込まれる。従って、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、シリンダ31への差込方向と、シリンダ31への差込方向とは反対の反差込方向とを定義する。また、ホルダ本体部12の差込方向の端部を先端部ともいい、また、ホルダ本体部12の反差込方向の端部を基端部ともいう。
【0030】
図8に示すように、アウタケース10は、差込方向に長い中空板状とされている。
図9に示すように、アウタケース10の差込方向が長手方向であり、長手方向と直交する方向が短手方向(幅方向)である。また、
図7に示すように、長手方向及び短手方向の両方向に直交する方向が厚み方向である。アウタケース10の差込方向の端部(先端部)は閉塞される一方、反差込方向の端部(基端部)は開放されており、全体として筒状をなしている。
【0031】
図6に示すように、アウタケース10の長手方向に延びる一縁部(
図6における上側の縁部)には、当該一縁部の長手方向中間部に切欠部10aが形成されている。この切欠部10aは、本発明のホルダ側係止部を構成する部分である。図示しないが、切欠部はアウタケース10の他縁部(
図6における下側の縁部)に形成されていてもよい。
【0032】
アウタケース10の外面は、ホルダ本体部12の外面を構成しており、従って、切欠部10aは、ホルダ本体部12の外面に形成されることになる。また、アウタケース10は略角筒状をなしていることから、切欠部10aが形成されている箇所は、アウタケース10の外面における周方向の一部のみとなる。
【0033】
図9に示すように、アウタケース10には、ICチップ9が内蔵されている。このICチップ9には、鍵ホルダ4を特定するための情報が記録されている。すなわち、1つの鍵管理装置1では、複数の鍵ホルダ4を管理している。どの鍵ホルダ4の鍵Kが交換されたのかを識別する方法として、本形態では、鍵ホルダ4ごとに異なる識別情報が記録されたICチップ9を用いている。後述するリーダによってICチップ9に記録された情報を読み取ることができるようになっている。
【0034】
尚、アウタケース10には、ICチップ9が内蔵されていないこともある。この場合、どの鍵ホルダ4の鍵Kが交換されたのかを識別する方法として、鍵管理装置1で管理している複数の鍵ホルダ4のうち、錠機構から外して使用中の鍵ホルダ4が1つのみの場合に鍵交換ユニット3を利用可能に制御し、当該使用中の鍵ホルダ4の鍵Kが交換されると判断する。
【0035】
図6に示すように、インナ部材11は、アウタケース10にその開口側から挿入される板状部11aと、アウタケース10の開口から反差込方向に突出する突出部11bとを有している。板状部11aは、アウタケース10に挿入された状態で当該アウタケース10に固定されており、当該アウタケース10と一体化されている。
【0036】
図8に示すように、インナ部材11には、保持部材13が挿入される挿入孔11cが形成されている。挿入孔11cは、インナ部材11の反差込方向に開口している。挿入孔11cの最も奥側には、コイルバネ15が収容されている。コイルバネ15の伸縮方向はアウタケース10の長手方向、即ち差込方向及び反差込方向である。また、インナ部材11の挿入孔11cを形成している壁部11dには、幅方向両側にそれぞれ貫通孔11eが形成されている。
【0037】
図6に示すように、保持部材13は、インナ部材11の挿入孔11cに対して長手方向にスライド可能に挿入されるスライド板部13aと、インナ部材11の挿入孔11cから反差込方向に突出する封緘部13bとを備えている。スライド板部13aの挿入孔11cへの挿入方向先端部(スライド板部13aの先端部)と、インナ部材11の挿入孔11cの底部との間にコイルバネ15が介在している。このコイルバネ15により、保持部材13に対して反差込方向への付勢力が常時作用するようになっている。
【0038】
スライド板部13aの挿入孔11cへの挿入方向中間部には、ロックピン14が挿入されるピン挿入孔13dが形成されている。ピン挿入孔13dは、スライド板部13aのスライド方向と直交する方向に延びており、互いに反対方向に開口している。各ロックピン14が各ピン挿入孔13dに挿入された状態で、各ロックピン14の中心軸と各ピン挿入孔13dの中心軸とは一致するようになっている。各ロックピン14は、各ピン挿入孔13d内を中心軸方向に移動可能に、当該ピン挿入孔13dの内面によって支持されている。
【0039】
ロックピン14は共に磁石で構成されている。ロックピン14の端部同士が対向するように配置された状態で、互いに反発するように両磁石の極性が設定されている。すなわち、ロックピン14同士は、ピン挿入項13dから突出する方向の磁力を作用させるように構成されており、
図8に示すように、インナ部材11の貫通孔11eがピン14の先端部と一致していると、ロックピン14が貫通孔11e内へ進出する。
【0040】
封緘部13bは、リングRを封緘する部分である。すなわち、
図6に示すように、リングRは、例えば金属製の線材を環状に成形してなる部材であり、両端部にはそれぞれ径方向内方へ向けて突出する被封緘部R1が設けられている。封緘部13bには、両被封緘部R1を入れるための溝13eと、溝13eから入った両被封緘部R1を収容する収容部13fとが設けられている。両被封緘部R1を収容部13fに収容することで、両被封緘部R1が互いに閉じた状態で封緘部13bによって保持され、これにより、リングRが封緘される。
【0041】
図6に示すように、インナ部材11の突出部11bには、封緘部13bの溝13eを閉じるための閉鎖部11fが設けられている。
図9に示すように、保持部材13のスライド板部13aを挿入孔11cの最も奥までスライドさせると、閉鎖部11fが封緘部13bの溝13eを閉じた状態になる。これにより、リングRの両被封緘部R1を収容部13fから出すことができなくなり、リングRの封緘状態を維持できる。保持部材13のスライド板部13aを挿入孔11cの最も奥までスライドさせる際には、コイルバネ15の付勢力に抗してスライドさせることになるが、コイルバネ15は、一般的な利用者が指等で押圧すると容易に圧縮変形する程度のバネ力しか持っていないので、スライド操作することは問題とならない。
【0042】
一方、保持部材13のスライド板部13aを反差込方向にスライドさせると、閉鎖部11fが封緘部13bから離れて溝13eが開放されるので、リングRの両被封緘部R1を収容部13fから溝13eを介して出すことができる。これにより、リングRを開いて鍵Kの取り外しが可能になる。
【0043】
保持部材13のスライド板部13aを挿入孔11cの最も奥までスライドさせると、保持部材13は鍵Kの取り外しを不能にする取外不能状態になる一方、保持部材13のスライド板部13aを反差込方向にスライドさせると、保持部材13は鍵Kの取り外しが可能な取外可能状態になる。保持部材13が取外不能状態にあるときには、インナ部材11の貫通孔11eがロックピン14の先端部と一致するように、両者の相対的な位置関係が設定されている。従って、ロックピン14が貫通孔11e内へ進出し、取外不能状態にある保持部材13をホルダ本体部12に係止させる係止位置になる。ロックピン14が係止位置にあると、コイルバネ15の付勢力が保持部材13に作用していても、保持部材13が取外可能状態に切り替わることはない。つまり、保持部材13がロックピン14によって取外不能状態でロックされる。
【0044】
ロックピン14を後退させてピン挿入孔13dに完全に入り込ませることで、貫通孔11eから出た状態になり、取外不能状態にある保持部材13をホルダ本体部12に係止させない非係止位置になる。ロックピン14が非係止位置にあると、コイルバネ15の付勢力によって保持部材13が反差込方向に自然にスライドし、取外可能状態に切り替わる。つまり、保持部材13は、取外可能状態にある時には取外不能状態にある時よりも反差込方向に向けて突出するように構成されている。
【0045】
このように、ロックピン14は、保持部材13を、鍵Kの取り外しが可能な取外可能状態と、鍵Kの取り外しを不能にする取外不能状態とに切り替えるとともに取外不能状態にある保持部材13をホルダ本体部12に対してロックするための部材である。また、ロックピン14は、取外不能状態にある保持部材13をホルダ本体部12に係止させる係止位置と、保持部材13をホルダ本体部12に係止させない非係止位置とに切り替え可能な部材である。
【0046】
この実施形態の説明では、一対のロックピン14を対向する位置に設けているが、本発明をこれに限定するものではなく、ロックピン14の数や位置は適宜変更することができる。貫通孔11eやピン挿入孔13dの位置や数は、ロックピン14に合わせて適宜設定される。
【0047】
尚、
図10に示す別形態のように、鍵ホルダ4は、鍵収容庫2等に保持される第1部分4Aと、封緘部を有する第2部分4Bとで構成されていてもよい。この形態では、第2部分4Bが上述したホルダ本体部12、保持部材13、ロックピン、コイルバネを有している。
【0048】
次に、鍵交換ユニット3の構成について説明する。
図11や
図12等にも示すように、鍵交換ユニット3は、前面パネル部30と、鍵ホルダ4のホルダ本体部12が差し込まれた状態で回動操作される円筒状のシリンダ31とを備えている。前面パネル部30は上下方向に延びており、この前面パネル部30に開口部30aが形成されている。シリンダ31は、前面パネル部30の背面側に設けられている。
図4に示すように、シリンダ31には、ホルダ本体部12が差し込まれる差込口31aが形成されている。差込口31aの形状は、ホルダ本体部12の外形状に対応しており、所定方向に長い矩形状を有している。シリンダ31の中心軸上に差込口31aの中心が位置するようになっている。
図12に示すように、シリンダ31の前面パネル部30側の端部には、フランジ部31bが形成されている。各図における「右」は利用者が前面パネル部30に向かった時に右となる側であり、各図における「左」は利用者が前面パネル部30に向かった時に左となる側である。この方向の定義は実施形態の説明の便宜を図るためだけであり、本発明を限定するものではなく、左右対称に構成されていてもよい。
【0049】
図11及び
図12に示すように、ホルダ本体部12がシリンダ31に差し込まれると、保持部材13の封緘部13bと、インナ部材11の閉鎖部11fとが、鍵交換ユニット3の外面、即ち、前面パネル部30の表面から突出するように配置される。ホルダ本体部12をシリンダ31に差し込んだ状態で回動させる際には、保持部材13の封緘部13bないしインナ部材11の閉鎖部11fを利用者が摘まむようにして持つことで、容易に回動させることができる。
【0050】
図4に示すように、前面パネル部30の背面側には、シリンダ31をその中心軸周りに回転可能に支持する円筒状の支持部材32が固定されている。
図12に示すように、支持部材32と前面パネル部30の裏面とにより、シリンダ31のフランジ部31bが挟まれるようになっている。これにより、シリンダ31はその中心軸方向への移動が規制された状態で当該中心軸周りに回動可能になる。
【0051】
図4及び
図11に示すように、本実施形態では、差込口31aの長手方向が横向きとなる回動位置がシリンダ31の初期位置であり、初期位置にあるシリンダ31の差込口31aに差し込まれたホルダ本体部12は差込初期位置となる。差込初期位置では、ホルダ本体部12の幅方向が水平方向に向くことになり、また、切欠部10aは、利用者がシリンダ31の差込口31aに向かった状態でホルダ本体部12の右に位置することになる。シリンダ31の回動方向は、右周り(時計回り)となるように設定されている。利用者が左回りに回動させようとしても、左周りの回動が図示しないストッパによって阻止されるように構成されている。また、前面パネル部30にはホルダ本体部12の回動可能な方向を示す指示部30bが設けられている。尚、シリンダ31の初期位置はこれに限定されず、例えば差込口31aの長手方向が縦向きとなる回動位置や斜め向きとなる回動位置を初期位置に設定してもよい。
【0052】
シリンダ31に差し込まれたホルダ本体部12は、差込初期位置(
図11及び
図12)から所定角度回動させて回動完了位置(
図13及び
図14)とすることが可能になっている。本実施形態では、上記所定角度が90度であり、よって、回動完了位置にあるホルダ本体部12の幅方向は鉛直方向に向くことになり、また、切欠部10aは、ホルダ本体部12の下部に位置することになる。上記所定角度は、90度に限られるものではなく、例えば30度~150度の範囲で設定することができ、特に限定されるものではない。
【0053】
支持部材32の下部には、シリンダ31に差し込まれたホルダ本体部12が差込初期位置から回動した時点で切欠部10aに係止する突起部32aが設けられている。
図14に示すように、シリンダ31には、上記所定角度回動した状態で下に位置する部分に開口部31cが形成されている。支持部材32の突起部32aは、シリンダ31の開口部31cを介して当該シリンダ31の内面から当該シリンダ31の径方向内方へ向けて切欠部10a内に達するまで突出している。突起部32aは、本発明のユニット側係止部に相当する部分であり、突起部32aが切欠部10a内に位置していることで、切欠部10aの内面に係止可能に配置される。これにより、差込初期位置から回動した状態のホルダ本体部12がシリンダ31から抜き方向に移動しようとした際に、突起部32aが切欠部10aの内面に係止してホルダ本体部12の抜けが阻止される。抜けが阻止される回動角度は、特に限定されるものではなく、任意の角度に設定することができ、例えば差込初期位置から僅かでも回動すると抜けが阻止されるように設定してもよい。
【0054】
支持部材32の上部及び下部には、それぞれユニット側磁石33が設けられている。ホルダ本体部12が、
図11及び
図12に示す差込初期位置にあるときには、ロックピン14が水平方向に延びる姿勢となるとともに、上側のユニット側磁石33及び下側のユニット側磁石33から最も離れた所に配置される。このため、ユニット側磁石33の磁力よりも、上側のロックピン14と下側のロックピン14の磁石の反発力が勝り、ロックピン14が貫通孔11e内に進出した係止位置となっている。
【0055】
一方、ホルダ本体部12が、
図13及び
図14に示す回動完了位置にあるときには、ロックピン14が上と下にそれぞれ位置するとともに、上下方向に延びる姿勢となる。上側のユニット側磁石33は、上側のロックピン14の真上に配置されており、上側のロックピン14に対して反発力を作用させる。この反発力の大きさは、上側のロックピン14と下側のロックピン14の磁石の反発による磁力よりも大きく設定されており、これにより、上側のロックピン14が下へ変位して、上側の貫通孔11eから抜ける。また、下側のユニット側磁石33は、下側のロックピン14の真下に配置されており、下側のロックピン14に対して反発力を作用させる。この反発力の大きさは、上側のロックピン14と下側のロックピン14の磁石の反発による磁力よりも大きく設定されており、これにより、下側のロックピン14が上へ変位して、下側の貫通孔11eから抜ける。上下のロックピン14が貫通孔11eから抜けると、コイルバネ15の付勢力によって保持部材13が鍵の取外可能状態に切り替わる。上下のユニット側磁石33は、ホルダ本体部12が差込初期位置から所定角度回動した時点で、ロックピン14を係止位置から非係止位置に変位させるように当該ロックピン14に対して磁力を作用させるものであり、ロックピン14による保持部材13のロックを解除する解除部に含まれる。
【0056】
図16~
図21に示すように、鍵交換ユニット3は、鍵の取外可能状態にある保持部材13に当接してホルダ本体部12の差込初期位置への回動を阻止するストッパ部36を有している。上述したように、保持部材13は、鍵の取外可能状態にある時には鍵の取外不能状態にある時よりも反差込方向に向けて突出するように構成されており、このことを利用して、保持部材13が鍵の取外可能状態にある場合にホルダ本体部12が差込初期位置へ回動しないように規制している。
【0057】
すなわち、ストッパ部36は、鍵交換ユニット3の外面を構成している前面パネル部30においてシリンダ31の差込口31aから離れた部位に設けられている。ストッパ部36は、鍵の取外不能状態にある保持部材13には非当接とされて鍵ホルダ4の回動を可能にする。一方、ストッパ部36は、鍵の取外可能状態となって反差込方向に突出した保持部材13には当接するように構成されており、鍵ホルダ4の差込初期位置への回動を阻止する。
【0058】
より具体的には、
図16及び
図17に示すように、ストッパ部36は前面パネル部30から反差込方向へ突出するように形成されている。
図16及び
図17に示すように、ストッパ部36の上面36aは、シリンダ31へ差し込み可能な姿勢とされた鍵ホルダ4の下面よりも下に位置している。また、
図18及び
図19に示すように、ストッパ部36の左側面36bの上部は、回動完了位置にある鍵ホルダ4の下面よりも上に位置している。
【0059】
ストッパ部36には、下方に窪む凹面36cが形成されている。凹面36cは上方及び左側方に開放されている。
図16~
図19では、保持部材13が鍵の取外不能状態にある場合を示しており、保持部材13が鍵の取外不能状態にある場合には、鍵ホルダ4を差込初期位置(
図16及び
図17に示す)から回動完了位置(
図18及び
図19に示す)まで回動させても保持部材13が凹面36cに当接しないように、凹面36cの形状が設定されている。
【0060】
一方、
図20及び
図21に示すように、保持部材13が鍵の取外可能状態にある場合には、回動完了位置にある鍵ホルダ4を差込初期位置まで回動させようとした際に、保持部材13の右側面がストッパ部36の左側面36bの上部に当接するように、当該左側面36bが形成されている。これにより、鍵ホルダ4が差込初期位置へ回動しなくなるので、鍵ホルダ4がシリンダ31から抜けなくなる。
【0061】
図4に示すように、鍵交換ユニット3は、シリンダ31の回転を規制するためのロック部材37と、ロック部材37を支持する支持部材38とを備えている。支持部材38は、鍵交換ユニット3の内部において筐体やフレーム(図示せず)に固定されている。支持部材38には、ロック部材37を上下方向に揺動自在に支持する支軸38aが設けられている。支軸38aは、シリンダ31よりも奥の方に位置付けられている。ロック部材37の奥側部分は、支軸38aに支持されている。ロック部材37の手前側部分は、シリンダ31の外面に形成されたロック溝31dに差し込み可能に形成されている。ロック溝31dは、シリンダ31の軸線方向に延びるとともに、当該シリンダ31の外面に開口している。差込口31aの長手方向が左右方向に向くようにシリンダ31が回動した時、ロック溝31dの開口が真上に向くようになっている。ロック溝31dの開口が真上に向いた時には、ロック部材37の手前側部分がロック溝31dに差し込み可能である。一方、シリンダ31が右周りに90度回動した時には、ロック溝31dの開口が右に向くようになっている。ロック溝31dの開口が右に向いた時には、ロック部材37の手前側部分をロック溝31dに差し込むことはできない位置関係となる。
【0062】
鍵交換ユニット3は、制御部40と、ソレノイド41と、光電センサ42と、リーダ43とを有している。ソレノイド41は、ロック部材37を支軸38a周りに揺動させるための揺動力発生部であり、制御部40によって制御される。制御部40は、認証装置2aから認証信号を受信するまでは、ロック部材37がロック溝31dに差し込まれたままとなるように、ソレノイド41を制御する。これにより、シリンダ31がロックされるので、認証された者以外の者がシリンダ31を回動させることはできなくなる。一方、制御部40は、認証装置2aから認証信号を受信すると、ソレノイド41を制御し、ロック部材37がロック溝31dから出るまで当該ロック部材37を揺動させる。これにより、シリンダ31のロックが解除されてシリンダ31が回動可能になる。鍵交換ユニット3が有するリミットスイッチ44により、ロック部材37が上位置にあるか、下位置にあるかを制御部40が検出できるようになっている。
【0063】
光電センサ42は、ロック溝31dの開口が真上に向いているか否か、即ち、シリンダ31が、ロック部材37をロック溝31dに差し込み可能な回動角度であるか否かを検出するためのセンサである。例えば、シリンダ31の回動角度が、ロック部材37のロック溝31dへの差し込みが可能な回動角度である場合には、光電センサ42がON信号を制御部40へ出力する一方、ロック部材37をロック溝31dに差し込むことができない回動角度である場合には、光電センサ42がOFF信号を制御部40へ出力する。
【0064】
制御部40は、認証信号の受信後、光電センサ42からON信号を受信した後、OFF信号を受信し、再びON信号を受信すると、ロック部材37がロック溝31dに差し込まれるように、ソレノイド41を制御する。これにより、シリンダ31がロックされるので、別の鍵を連続して交換することができず、別の鍵を交換しようとすると、新たな認証が必要になる。尚、シリンダ31に差し込まれた鍵ホルダ4が鍵交換され、回動完了位置から差込初期位置に戻されたときにシリンダ31がロックされるように、マイクロスイッチ等、他のセンサやスイッチでシリンダ31の回動角度を検出してもよい。
【0065】
また、リーダ43は、
図14に示すように、鍵交換ユニット3に鍵ホルダ4が挿入された際にICチップ9の情報を読み取ることができる位置に設けられている情報読取部である。リーダ43で読み取られた情報は制御部40を介して認証装置2aへ出力される。これにより、どの鍵ホルダ4の鍵Kが交換されたのかを認証装置2aで記録・管理することができる。
【0066】
(実施形態の作用効果)
本実施形態に係る鍵管理装置1で鍵Kを交換する場合には、まず、利用者が、鍵ホルダ4のホルダ本体部12を鍵交換ユニット3のシリンダ31の差込口31aに差し込むとともに、認証装置2aで認証処理を実行する。制御部40は、認証装置2aから認証信号を受信すると、ソレノイド41を制御してシリンダ31のロックを解除するので、利用者は、差込初期位置にあるホルダ本体部12を右方向に回動させて回動完了位置にすることができる。
【0067】
ホルダ本体部12が差込初期位置から回動すると、突起部32aがホルダ本体部12の切欠部10aに係止するので、ホルダ本体部12をシリンダ31から抜くことができなくなり、ホルダ本体部12がシリンダ31に保持される。このように、鍵Kの交換中にホルダ本体部12が鍵交換ユニット3から抜けないようにするための構成として、利用者によるホルダ本体部12の回動操作を用い、突起部32aを切欠部10aに係止させる構成としているので、従来例のような駆動モータ、複数のリンク機構、連結ピン、制御部等は不要になり、シンプルかつコンパクトな構成になる。
【0068】
また、ホルダ本体部12が回動完了位置まで回動すると、上下のユニット側磁石33の磁力により、ホルダ本体部12のロックピン14が後退して貫通孔11eから抜けて非係止位置まで移動する。すると、コイルバネ15の付勢力によって保持部材13が反差込方向に自然にスライドし、鍵Kの取外可能状態に切り替わる。
【0069】
これにより、利用者が現在の鍵Kをホルダ本体部12から取り外すことができるとともに、現在の鍵Kを取り外した後に別の鍵に変えてから、保持部材13を押して鍵の取外不能状態にすることで、当該別の鍵が保持部材13によって保持される。そして、利用者がホルダ本体部12を差込初期位置へ回動させることにより、ロックピン14が磁力によって突出方向に付勢されて貫通孔11e内へ進出して係止位置まで移動する。これにより、鍵Kを保持部材13から取り外すことはできなくなる。
【0070】
また、利用者がホルダ本体部12を差込初期位置へ回動させると、突起部32aが切欠部10aから抜けるので、ホルダ本体部12をシリンダ31から抜くことができる。制御部40は、ソレノイド41を制御してシリンダ31をロックする。
【0071】
シリンダ31に差し込まれた保持部材13が鍵Kの取外可能状態にあるときには、鍵交換ユニット3のストッパ部36に保持部材13の一部が当接してホルダ本体部12を差込初期位置へ回動させることができなくなる。このため、突起部32aが切欠部10aに係止したままになり、ホルダ本体部12をシリンダ31から抜くことはできない。つまり、保持部材13を鍵Kの取外不能状態にしなければホルダ本体部12がシリンダ31から抜けないので、鍵Kの不正利用を抑制する効果がより一層高まる。
【0072】
(実施形態4)
図22は、本発明の実施形態4に係る鍵ホルダ4の分解図であり、この実施形態4では、磁力を用いることなく封緘を解除して鍵Kの取り外しを可能にする点で実施形態1~3のものと相違しており、他の部分は実施形態1~3と同じであるため、以下、実施形態1~3と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0073】
保持部材13には、第1可撓片131と第2可撓片132とが設けられている。第1可撓片131及び第2可撓片132は、共に差込方向へ突出するとともに、互いに保持部材13の幅方向に間隔をあけて配置されている。第1可撓片131と第2可撓片132は互いに接近する方向及び離れる方向に撓み変形可能になっている。このような可撓性は、保持部材13を構成している樹脂の特性(弾性)によって付与できる。
【0074】
第1可撓片131の先端部には、爪部131aが第2可撓片132側(
図22の下側)へ向けて突出するように形成されている。第1可撓片131における爪部131aよりも基端側には、突起131bが第2可撓片132側へ向けて突出するように形成されている。
【0075】
第2可撓片132は、第1可撓片131よりも短く形成されている。第2可撓片132の先端部には、第1突起132a及び第2突起132bが互いに反対方向に突出するように形成されている。第1突起132aは第1可撓片131側(
図22の上側)へ向けて突出する一方、第2突起132bは第1可撓片131と反対側(
図22の下側)へ向けて突出している。
【0076】
インナ部材11には、第1可撓片131の爪部131aに係止する第1係止部110aが形成されている。保持部材13を鍵の取外不能状態にすると、第1係止部110aが爪部131aに係止して保持部材13が鍵の取外不能状態で保持される。また、インナ部材11には、第2係止部110bが形成されている。保持部材13を鍵の取外不能状態にすると、第2係止部110bが第2可撓片132の第1突起132aに係止する。実施形態4のロック部は、第1係止部110a及び第2係止部110bで構成されている。
【0077】
さらに、インナ部材11には、第3係止部110cが形成されている。保持部材13を鍵の取外可能状態にして反差込方向にスライドさせると、第3係止部110cが第2可撓片132の第2突起132bに係止するようになっており、保持部材13の脱落が抑制される。
【0078】
図23に示すように、シリンダ31の内部には、第1可撓片131及び第2可撓片132よりも高剛性な部材からなるロッド310が設けられている。ロッド310は、シリンダ31の奥側から手前側へ向けて突出しており、その中心線は、シリンダ31の中心と一致している。
図24に示すように、ロッド310の反差込方向側の先端には第1操作突起310aが形成されている。また、ロッド310における第1操作突起310aよりも差込方向寄りには、第2操作突起310bが形成されている。第1操作突起310aと第2操作突起310bの突出方向は互いに反対である。
【0079】
図25に示すように、ホルダ本体部12がシリンダ31の差込口31aに差し込まれると、ロッド310の先端部は、インナ部材11の第2係止部110bに当接するように当該ロッド310の長さが設定されている。また、ホルダ本体部12が差込初期位置にある時には、第1操作突起310a及び第2操作突起310bが、第1可撓片131の突起131b及び第2可撓片132の第1突起132aを押圧しないように配置される。
【0080】
図26及び
図27は、ホルダ本体部12が回動完了位置まで回動した場合を示している。ロッド310に対してホルダ本体部12が相対的に回動することになり、ロッド310の第1操作突起310aが第2可撓片132の第1突起132aを押圧して第2可撓片132を撓ませ、これにより、第1突起132aが第2係止部110bから離脱する。同時に、ロッド310の第2操作突起310bが第1可撓片131の突起131bを押圧して第1可撓片131を撓ませ、これにより、第1可撓片131の爪部131aが第1係止部110aから離脱する。すると、
図28及び
図29に示すように、コイルバネ15の付勢力によって保持部材13がスライドして鍵の取外可能状態になる。
【0081】
実施形態4の場合も、実施形態1~3と同様にシンプルかつコンパクトな構成としながら、鍵交換が可能な状態にある鍵ホルダ4の鍵交換ユニット3からの取り外しを規制することができる。また、磁力を用いることなく、部材を撓み変形させることによって保持部材13を鍵の取外可能状態にすることができる。
【0082】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本開示に係る鍵管理装置は、例えば鍵を管理することにより鍵の不正使用の防止を図る場合に利用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 鍵管理装置
3 鍵交換ユニット
4 鍵ホルダ
10a 切欠部(ホルダ側係止部)
12 ホルダ本体部
13 保持部材
14 ロックピン(ロック部)
31 シリンダ
31a 差込口
32a 突起部(ユニット側係止部)
33 ユニット側磁石(解除部)
36 ストッパ部