(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043843
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電池複合部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/184 20210101AFI20240326BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/553 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/159 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/564 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/193 20210101ALN20240326BHJP
【FI】
H01M50/184 A
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/188
H01M50/55 101
H01M50/553
H01M50/533
H01M50/159
H01M50/534
H01M50/562
H01M50/564
H01M50/193
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149049
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC06
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG01
5H011HH02
5H043AA02
5H043BA16
5H043BA19
5H043CA04
5H043DA09
5H043EA22
5H043EA60
5H043JA01D
5H043JA01E
5H043JA22D
5H043JA22E
5H043KA08D
5H043KA08E
5H043KA09D
5H043KA09E
5H043KA22D
5H043KA22E
5H043KA23D
5H043KA23E
5H043KA24D
5H043KA24E
5H043KA29D
5H043KA29E
5H043KA30D
5H043KA30E
5H043LA02D
5H043LA02E
5H043LA22D
5H043LA22E
(57)【要約】
【課題】電池金属部材と電池樹脂部材との剥離が生じにくい電池複合部材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本開示技術に係る電池複合部材19では、電池金属部材13は、基材部15と、複数の突起部17が突出した形状の凹凸形状部16とを有し、基材部15と電池樹脂部材14との間に、凹凸形状部16の突出高さより薄い下地樹脂層18が設けられている。下地樹脂層18と電池樹脂部材14とを合わせた厚さは凹凸形状部16の突出高さより大きく、突起部17は、下地樹脂層18を貫通して電池樹脂部材14に食い込んでおり、下地樹脂層14は、基材部15における突起部17と突起部17との間の底の部分と、突起部17の側面の一部と、電池樹脂部材14における基材部15側の面とに接している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を構成する電池金属部材と、電池を構成する電池樹脂部材とを接合してなる電池複合部材であって、
前記電池金属部材は、
基材部と、
前記基材部の表面上から前記電池樹脂部材に向けて複数の突起部が突出した形状である凹凸形状部とを有し、
前記基材部と前記電池樹脂部材との間に、前記電池樹脂部材とは異なる樹脂種または同一の樹脂種で形成され前記凹凸形状部の突出高さより薄い下地樹脂層が設けられており、 前記下地樹脂層と前記電池樹脂部材とを合わせた厚さが前記凹凸形状部の突出高さより大きく、
前記突起部は、前記下地樹脂層を貫通して前記電池樹脂部材に食い込んでおり、
前記下地樹脂層は、
前記基材部における前記凹凸形状部が形成されている面のうち前記突起部以外の部分と、
前記突起部の側面の一部と、
前記電池樹脂部材における前記基材部側の面とに接している電池複合部材。
【請求項2】
請求項1に記載の電池複合部材であって、
前記電池金属部材は、
電池の発電要素に繋がる端子部材、
電池の外装部材のいずれか1つであり、
前記電池樹脂部材は、電池の端子部材と電池の外装部材とを絶縁する端子絶縁部材である電池複合部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池複合部材であって、
前記電池樹脂部材の樹脂種は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)のいずれか1つの絶縁性樹脂であり、
前記下地樹脂層の樹脂種は、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、パーフルオロアルコキシアルカン、エポキシ樹脂、イミド樹脂、トリアジン樹脂、シラン樹脂のいずれか1つの絶縁性樹脂である電池複合部材。
【請求項4】
電池を構成する電池金属部材と、電池を構成する電池樹脂部材とを接合してなる電池複合部材の製造方法であって、
前記電池金属部材として、
基材部と、
前記基材部の表面上から前記電池樹脂部材に向けて複数の突起部が突出した形状である凹凸形状部とを有するものを用い、
前記基材部における前記凹凸形状部が形成されている面における前記突起部以外の部分に、前記凹凸形状部の突出高さより薄い下地樹脂層を形成することにより、
前記突起部が前記下地樹脂層を貫通するとともに、
前記下地樹脂層は前記基材部における前記凹凸形状部が形成されている面のうち前記突起部以外の部分および前記突起部の側面の一部に接する状態とし、
前記下地樹脂層の表面上に前記電池樹脂部材を形成することにより、
前記下地樹脂層と前記電池樹脂部材とを合わせた厚さが前記凹凸形状部の突出高さより大きく、
前記突起部は前記電池樹脂部材に食い込んでおり、
前記下地樹脂層が前記電池樹脂部材における前記基材部側の面に接している状態とする電池複合部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電池複合部材の製造方法であって、
前記電池金属部材は、
電池の発電要素に繋がる端子部材、
電池の外装部材のいずれか1つであり、
前記電池樹脂部材は、電池の端子部材と電池の外装部材とを絶縁する端子絶縁部材である電池複合部材の製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電池複合部材の製造方法であって、
前記電池樹脂部材の樹脂種は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)のいずれか1つの絶縁性樹脂であり、
前記下地樹脂層の樹脂種は、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、パーフルオロアルコキシアルカン、エポキシ樹脂、イミド樹脂、トリアジン樹脂、シラン樹脂のいずれか1つの絶縁性樹脂である電池複合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、電池複合部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電池においては、金属部材と樹脂部材とを有する構成が多く採用されている。金属部材の例としては、発電要素に繋がる端子部材あるいは外装体を構成する外装部材が挙げられる。樹脂部材の例としては、端子部材と外装部材とを絶縁する端子絶縁部材が挙げられる。つまり電池においては、金属部材と樹脂部材とが密着する構造が使用されている。
【0003】
電池における金属部材と樹脂部材とが密着する構造を実現する技術の公知例として、特許文献1に記載されているものを挙げることができる。同文献の技術ではまず、外部端子(金属部材)の表面および基材(金属部材)の表面にそれぞれ接着層を形成する。その後に外部端子と基材との隙間を封止部材(樹脂部材)により封止する。これにより、外部端子と封止部材とが、また基材と封止部材とが、それぞれ接着層を介して接合された構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来の技術には、接合した金属部材と樹脂部材との間に剥離が生じやすいという問題点があった。金属部材と樹脂部材とでは熱膨張率が異なる。このため、電池のように使用時と休止時とで昇温降温を繰り返すような用途では長期的には剥離しやすいのである。特に前記文献の技術では、金属部材と樹脂部材との間に界面が2つある。金属部材と接着層との界面と、接着層と樹脂部材との間の界面である。このためさらに剥離が生じやすくなっている。
【0006】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、電池金属部材と電池樹脂部材との剥離が生じにくい電池複合部材を、その製造方法とともに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示技術の一態様における電池複合部材は、電池を構成する電池金属部材と、電池を構成する電池樹脂部材とを接合してなる複合部材であって、電池金属部材は、基材部と、基材部の表面上から電池樹脂部材に向けて複数の突起部が突出した形状である凹凸形状部とを有し、基材部と電池樹脂部材との間に、電池樹脂部材とは異なる樹脂種または同一の樹脂種で形成され凹凸形状部の突出高さより薄い下地樹脂層が設けられており、下地樹脂層と電池樹脂部材とを合わせた厚さが凹凸形状部の突出高さより大きく、突起部は、下地樹脂層を貫通して電池樹脂部材に食い込んでおり、下地樹脂層は、基材部における凹凸形状部が形成されている面のうち突起部以外の部分と、突起部の側面の一部と、電池樹脂部材における基材部側の面とに接しているものである。
【0008】
本開示技術の別の一態様における電池複合部材の製造方法では、電池を構成する電池金属部材と、電池を構成する電池樹脂部材とを接合してなる複合部材を製造するにあたり、電池金属部材として、基材部と、基材部の表面上から電池樹脂部材に向けて複数の突起部が突出した形状である凹凸形状部とを有するものを用い、基材部における凹凸形状部が形成されている面における突起部以外の部分に、凹凸形状部の突出高さより薄い下地樹脂層を形成することにより、突起部が下地樹脂層を貫通するとともに、下地樹脂層は基材部における凹凸形状部が形成されている面のうち突起部以外の部分および突起部の側面の一部に接する状態とし、下地樹脂層の表面上に電池樹脂部材を形成することにより、下地樹脂層と電池樹脂部材とを合わせた厚さが凹凸形状部の突出高さより大きく、突起部は電池樹脂部材に食い込んでおり、下地樹脂層が電池樹脂部材における基材部側の面に接している状態とする。
【0009】
上記による電池複合部材では、凹凸形状部および下地樹脂層の存在により、電池金属部材と電池樹脂部材とが、下地樹脂層を介しつつ気泡なく密着している。それでいて凹凸形状部の電池樹脂部材への食い込みにより、電池金属部材と電池樹脂部材とが直接に接触している。これにより、熱衝撃にも内外圧力差にも耐性があり、電池金属部材と電池樹脂部材との剥離が生じにくい電池複合部材が得られる。
【0010】
上記態様の電池複合部材またはその製造方法では、電池金属部材は、電池の発電要素に繋がる端子部材、電池の外装部材のいずれか1つであり、電池樹脂部材は、電池の端子部材と電池の外装部材とを絶縁する端子絶縁部材であることが望ましい。これにより、端子部材と端子絶縁部材との接合箇所もしくは外装部材と端子絶縁部材との接合箇所の耐久性、密閉性に優れた電池が得られる。
【0011】
上記のいずれかの態様の電池複合部材またはその製造方法では、電池樹脂部材の樹脂種は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)のいずれか1つの絶縁性樹脂であり、下地樹脂層の樹脂種は、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、パーフルオロアルコキシアルカン、エポキシ樹脂、イミド樹脂、トリアジン樹脂、シラン樹脂のいずれか1つの絶縁性樹脂であることが望ましい。電池樹脂部材と下地樹脂層とは、同一の樹脂種でもよいし異なる樹脂種でもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示技術によれば、電池金属部材と電池樹脂部材との剥離が生じにくい電池複合部材が、その製造方法とともに提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る電池複合部材を適用した電池の外観斜視図である。
【
図2】蓋体に発電要素を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図3】蓋体に発電要素を取り付けた状態を示す正面図である。
【
図4】蓋体に発電要素を取り付けた状態を示す側面図である。
【
図6】電池金属部材と電池樹脂部材との接合界面の構造を示す断面図である。
【
図8】下地樹脂層を形成した状態を示す断面図である。
【
図9】変形例に係る接合界面の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本形態は、
図1の電池1における電池複合部材として本開示技術を具体化したものである。電池1は、扁平な長方体状の角形の外装部材2(箱体4および蓋体5)に発電要素を収納したものである。電池1には、正負の外部端子8、9が設けられている。電池1の製造過程においては
図2~
図4に示すように、発電要素3はまず蓋体5に取り付けられる。その後、発電要素3を箱体4に収納し、蓋体5を箱体4の開口部に接合すると
図1の電池1が得られる。
【0015】
図2~
図4に示す蓋体5および発電要素3についてさらに説明する。これらの図に見られるように、箱体4に収納される前の時点での発電要素3は、端子部材6、7により蓋体5にぶら下げられている状態にある。端子部材6、7の一方が発電要素3の正極板に繋がっており、もう一方が負極板に繋がっている。端子部材6、7は蓋体5を貫通して設けられている。端子部材6、7の一部が、蓋体5の上側に外部端子8、9として露出している。
【0016】
端子部材6、7は金属(合金を含むものとする。)部材である。端子部材6、7に使用される主な金属種としてはアルミ、銅等が挙げられる。外装部材2も金属部材である。外装部材2に使用される主な金属種としてはアルミ、ステンレス鋼等が挙げられる。端子部材6、7と外装部材2とを総称して電池金属部材と呼ぶ。
【0017】
図2に示されるように蓋体5と外部端子8、9との間には、端子絶縁部材10、11が設けられている。端子絶縁部材10により、蓋体5と端子部材6とが絶縁されている。同様に端子絶縁部材11により、蓋体5と端子部材7とが絶縁されている。端子絶縁部材10、11は合成樹脂で形成されている。端子絶縁部材10、11を電池樹脂部材と呼ぶ。
【0018】
蓋体5における外部端子8の箇所には、
図5の断面図に示されるように、端子穴12が形成されている。端子穴12は貫通穴である。端子部材6は蓋体5に対して、外部端子8の面が端子穴12を通して上方に突出するように配置されている。その状態で、端子部材6と蓋体5との間の隙間が端子絶縁部材10で充填されている。これにより、端子部材6と蓋体5とが絶縁されている。また、電池1における外装部材2の内部と外部とが分離されている。
図5では外部端子8の箇所を示しているが、この構造は外部端子9の箇所でも同様である。
【0019】
図5に示した構造は、蓋体5に対して端子部材6を同図中のように配置した状態で、端子絶縁部材10の原料樹脂を溶融状態で供給して固形化させることで実現される。この構造における本開示技術としての特徴点は、端子部材6と端子絶縁部材10との接合箇所、および、蓋体5と端子絶縁部材10との接合箇所にある。例えば
図5中に範囲Aあるいは範囲Bとして示した箇所における端子絶縁部材10(電池樹脂部材)と電池金属部材との界面がその適用箇所である。
【0020】
図6に、電池1における電池金属部材13と電池樹脂部材14との接合界面の構造を拡大して示す。上記より、電池金属部材13とは、蓋体5、端子部材6、端子部材7のいずれかである。電池樹脂部材14とは、端子絶縁部材10、端子絶縁部材11のいずれかである。接合されている電池金属部材13と電池樹脂部材14とを合わせて電池複合部材19と呼ぶ。電池複合部材19は、蓋体5と端子絶縁部材10、11との組み合わせ、端子部材6と端子絶縁部材10との組み合わせ、端子部材7と端子絶縁部材11との組み合わせ、蓋体5と端子部材6、7と端子絶縁部材10、11との組み合わせ、のいずれかである。以下の説明で電池複合部材19といえば主として、蓋体5と端子部材6、7と端子絶縁部材10、11との組み合わせを指すものとする。
【0021】
図6中の電池金属部材13は、基材部15と、凹凸形状部16とを有している。基材部15は、電池金属部材13における主たる形状をなす部分である。凹凸形状部16は、基材部15の表面上から電池樹脂部材14に向けて複数の突起部17が突出した形状の部分である。
【0022】
基材部15と電池樹脂部材14との間には、下地樹脂層18が設けられている。下地樹脂層18は、基材部15と、突起部17と、電池樹脂部材14とのいずれにも接している。基材部15において下地樹脂層18に接しているのは、凹凸形状部16が形成されている面のうち突起部17以外の部分である。突起部17において下地樹脂層18に接しているのは、その側面の一部、より具体的には基材部15寄りの部分である。電池樹脂部材14において下地樹脂層18に接しているのは、その基材部15側の面である。下地樹脂層18も絶縁性である。
【0023】
下地樹脂層18は、基材部15の表面からの凹凸形状部16の突出高さより薄い。このため突起部17は、下地樹脂層18を貫通して電池樹脂部材14に食い込んでいる。このため、電池金属部材13と電池樹脂部材14とは、間に下地樹脂層18を挟み込みつつも、直接に接している部分もある。電池金属部材13のうち電池樹脂部材14に直接に接しているのは、突起部17の先端寄りの部分である。凹凸形状部16の突出高さは下地樹脂層18の厚さより大きい。下地樹脂層18と電池樹脂部材14との合計の厚さは、突起部17の突出高さよりさらに大きい。このため電池樹脂部材14の表面から突起部17が突出していることはない。
【0024】
図6の電池複合部材19の電池複合部材19において、凹凸形状部16の各突起部17の形状は、壁状でもよいし棒状でもよい。凹凸形状部16および下地樹脂層18の各部の寸法の適切な範囲は、例えば、次のように挙げられる。
下地樹脂層18の厚さ:0.005~7μm
突起部17の突出高さ:0.01~10μm
突起部17の厚さまたは太さ:0.001~1μm
突起部17と突起部17との間隔:0.001~1μm
【0025】
図6の電池複合部材19は、以下の製造手順で製造される。電池複合部材19の製造に用いる電池金属部材13は、
図7に示されるものである。
図7の電池金属部材13は、基材部15と、凹凸形状部16とを有している。これは、
図6中の電池金属部材13と同じ形状のものである。より具体的には、蓋体5、端子部材6、端子部材7であって、
図5中にて端子絶縁部材10(もしくは端子絶縁部材11)と接触することとなる部分の一部(例えば範囲Aあるいは範囲B)または全部に凹凸形状部16を形成したものである。
【0026】
図7の電池金属部材13に対して、電池樹脂部材14を形成する前にまず、下地樹脂層18を形成する(
図8)。下地樹脂層18は、その原料樹脂を電池金属部材13にコーティングすることで形成される。形成の対象箇所は、凹凸形状部16における突起部17と突起部17との間の底における基材部15の表面である。
【0027】
下地樹脂層18を形成したらその後で電池樹脂部材14を形成する。電池樹脂部材14の形成は、下地樹脂層18の上に電池樹脂部材14の原料樹脂を供給して充填することで行う。供給した原料樹脂が固形化すると
図6に示した状態となる。この工程は前述の、「蓋体5に対して端子部材6を同図中のように配置した状態で、端子絶縁部材10の原料樹脂を溶融状態で供給して固形化させる」に相当する。これにより電池複合部材19が得られる。
【0028】
このようにして、蓋体5と端子部材6、7と端子絶縁部材10、11とを一体化したものである電池複合部材19を得ることができる。これは、
図2~
図4に示したもののうち発電要素3を除いた部分に相当する。その後にこれに発電要素3を取り付け、箱体4に収納して封止することで
図1の電池1が得られる。
【0029】
上記のようにして製造された
図6の電池複合部材19は、次のような利点を有している。第1に、電池金属部材13と電池樹脂部材14との間に気泡がほとんど存在しないことが挙げられる。より詳細には、電池金属部材13と下地樹脂層18との間、下地樹脂層18と電池樹脂部材14との間のいずれの箇所にも気泡がほとんど存在しない、ということである。電池金属部材13と電池樹脂部材14との間に気泡がほとんど存在しないということは、
図6の電池複合部材19を用いている電池1では、外装部材2の内部と外部との間の密閉性が著しく高いということである。
【0030】
電池金属部材13と下地樹脂層18との間に気泡が残りにくい理由は、下地樹脂層18が、電池金属部材13の表面上にコーティングされている薄層だからである。下地樹脂層18と電池樹脂部材14との間に気泡が残りにくい理由は、電池樹脂部材14の成形時に下地樹脂層18が実質的に断熱材として作用することにある。下地樹脂層18が存在していることにより、溶融している電池樹脂部材14の原料樹脂から電池金属部材13への奪熱が抑制される。このため、原料樹脂が早期に流動性を失うことがない。したがって、下地樹脂層18と原料樹脂との間に空気が残ったまま電池樹脂部材14が固形化してしまうことがないのである。さらに、電池樹脂部材14と下地樹脂層18とはいずれも合成樹脂であるため、熱融着により融合して密着しやすい。
【0031】
もし、下地樹脂層18を形成せず電池金属部材13に直接に電池樹脂部材14を形成すると、溶融している電池樹脂部材14の原料樹脂の一部が早期に固形化してしまう。原料樹脂から電池金属部材13への奪熱が激しいからである。このため、電池金属部材13と原料樹脂との間の空気が脱出しないうちに電池樹脂部材14の固形化が始まってしまう箇所がありうる。そのような箇所に気泡が残ってしまうのである。本形態では下地樹脂層18を形成してから電池樹脂部材14を形成するので、気泡が残りにくい。
【0032】
下地樹脂層18の断熱性は、電池樹脂部材14の形成時に電池金属部材13を予熱しておく必要性を低下させているという点でも利点がある。同様に、電池樹脂部材14の原料樹脂および金型を過度に高温に加熱しておく必要もない。これらのことは、電池樹脂部材14の原料樹脂が行き渡った後における固形化の所要時間が短いということを意味する。また、成形時における電池樹脂部材14の原料樹脂の射出圧力も過度に高圧である必要はない。
【0033】
図6の電池複合部材19の第2の利点は、電池金属部材13と電池樹脂部材14との一体性が強いということである。電池金属部材13の突起部17が下地樹脂層18を貫通して電池樹脂部材14に食い込んでおり、アンカー構造を構成しているからである。このように電池複合部材19では、下地樹脂層18を有しつつも、電池金属部材13と電池樹脂部材14とが直接に接している箇所も存在している。このように、金属部材と樹脂部材との間に必ず2つの界面がある従来の構造とは異なっている。このため電池複合部材19は、電池1のように使用時に昇温降温を繰り返すような用途に使用しても耐久性が高い。また、使用時に内外の圧力差が生じるような用途に使用しても耐久性が高い。したがって電池複合部材19は、電池金属部材13と電池樹脂部材14との剥離に至るようなことはほとんどない。
【0034】
次に、電池樹脂部材14および下地樹脂層18の樹脂種について述べる。電池樹脂部材14として使用できる絶縁性樹脂の樹脂種としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を挙げることができる。これらのうち、いずれか1つを単独で用いてもよいし、2以上を混合して用いてもよい。下地樹脂層18として使用できる絶縁性樹脂の樹脂種としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、パーフルオロアルコキシアルカン、エポキシ樹脂、イミド樹脂、トリアジン樹脂、シラン樹脂を挙げることができる。これらのうち、いずれか1つを単独で用いてもよいし、2以上を混合して用いてもよい。
【0035】
下地樹脂層18として使用できる樹脂種のうちエポキシ樹脂およびイミド樹脂は、接着性のある樹脂である。これらの樹脂を下地樹脂層18として使用する場合には、電池金属部材13と下地樹脂層18との間に、また下地樹脂層18と電池樹脂部材14との間に、強い接着性が発揮される。このため、電池金属部材13と電池樹脂部材14との接合強度がより高い。
【0036】
電池樹脂部材14として使用できる樹脂種および下地樹脂層18として使用できる樹脂種として上記で挙げたものには、共通する樹脂種もある。つまり、電池樹脂部材14と下地樹脂層18とは、同一の樹脂種であってもよいし異なる樹脂種であってもよい。異なる樹脂種とする場合、電池樹脂部材14の方が下地樹脂層18よりも高硬度の固形体となるように樹脂種を選ぶことが好ましい。同一の樹脂種の場合でも、分子量あるいは添加剤成分といった詳細な仕様による差異を付けることができる。その場合、電池樹脂部材14の方が下地樹脂層18よりも高硬度の固形体となるように詳細な仕様を選ぶことが好ましい。
【0037】
図6中での凹凸形状部16では、各突起部17がいずれもほぼ同一の突出高さとなっている。しかしこれに限らず、
図9に示すように突出高さの異なる突起部17が混在しているものであってもよい。
図9では突出高さの高い方の突起部17のみが電池樹脂部材14に食い込んでいるが、突出高さの低い方の突起部17も電池樹脂部材14に食い込む構造であってもよい。
【0038】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、凹凸形状部16と下地樹脂層18とを用いることにより、電池金属部材13と電池樹脂部材14とが気泡なく確実に結合した電池複合部材19が製造されるようにしている。これにより、熱衝撃にも内外圧力差にも耐え、電池金属部材13と電池樹脂部材14との剥離が生じにくい電池複合部材19が、その製造方法とともに実現されている。
【0039】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、対象とする電池1の電池種(リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の種別)には特段の限定はない。外装部材2の外形としては、図示した扁平角形に限らず円筒形でも適用可能である。正極端子と負極端子とのいずれか一方のみに本開示技術を適用することもできる。外装部材2と電池樹脂部材14との接合箇所と、端子部材6(または7)と電池樹脂部材14との接合箇所とのいずれか一方のみに本開示技術を適用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 電池 10 端子絶縁部材
2 外装部材 11 端子絶縁部材
3 発電要素 13 電池金属部材
4 箱体 14 電池樹脂部材
5 蓋体 15 基材部
6 端子部材 16 凹凸形状部
7 端子部材 17 突起部
8 外部端子 18 下地樹脂層
9 外部端子 19 電池複合部材