(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043846
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240326BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20240326BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0606
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149052
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 直
(72)【発明者】
【氏名】神林 達也
(72)【発明者】
【氏名】堀米 孝宏
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC03
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE23
5H127EE25
5H127EE29
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】小型でありながら、外乱の影響を受けずに確実に凝縮水の処理と排水を行うことのできる凝縮水回収器を備えた燃料電池装置を提供すること。
【解決手段】凝縮水回収器4はイオン交換樹脂を備える処理室71と、凝縮水を貯留する貯留室72と、中和剤を備え余剰の凝縮水を排水する第1排水口61を有する中和室73と、を含む。処理室71と貯留室72とを連通する第1連通口75と、処理室71と中和室73とを連通する第2連通口76と、貯留室72と中和室73とを連通する第3連通口77を有し、処理室71、貯留室72、中和室73は、他の2室と連通口を介して連通している。例えば、外乱の影響を受けて処理室71の水位が急激に上昇した場合には、処理室71から中和室73へ凝縮水を流入させて排水することができるので、凝縮水の処理と排水を確実に機能させることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、原燃料を水蒸気改質する改質器とを有する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールから排出される排ガスに含まれる水を凝縮水として回収する凝縮水回収流路と、
前記凝縮水回収流路を流れた凝縮水を貯水する凝縮水回収器と、を備え、
前記凝縮水回収器は、
イオン交換樹脂を備える処理室と、凝縮水を貯留する貯留室と、中和剤を備えるとともに余剰の凝縮水を排水する第1排水口を有する中和室と、を含み、
前記処理室と前記貯留室とを連通する第1連通口と、
前記処理室と前記中和室とを連通する第2連通口と、
前記貯留室と前記中和室とを連通する第3連通口と、を有する燃料電池装置。
【請求項2】
前記凝縮水回収器には、複数の水抜流路が接続されており、
前記貯留室は、前記複数の水抜流路の一つと接続される第2排水口を有し、
前記中和室は、前記複数の水抜流路の他の一つと接続される第3排水口を有し、
前記第1排水口と前記第2排水口と前記第3排水口は、前記凝縮水回収器の同じ面に設けられる請求項1記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記凝縮水回収器は、短側面と長側面を備えた直方体形状あって、
前記第1排水口と前記第2排水口と前記第3排水口は、前記短側面に設けられる請求項2記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記凝縮水回収器は、前記中和室と連通するオーバーフロー室を備え、
前記オーバーフロー室は底面に第4排水口を有する請求項1記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記オーバーフロー室は、前記凝縮水回収器の底面から突出する突出部を有し、
筐体の底面には、前記突出部と嵌合する嵌合孔が設けられている請求項4記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記凝縮水回収器と前記凝縮水回収流路との間に介装される弾性変形可能な接続部材を備え、
前記凝縮水回収器の上面には流入孔が形成されており、
前記接続部材は、前記凝縮水回収流路が挿入される第1筒部と、前記流入孔に挿入される第2筒部と、前記第2筒部の外周に形成された張出部を有する請求項1から5のいずれかに記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を含有する燃料ガスと酸素含有ガス(空気)とを用いて発電を行ない、電気を外部に供給する燃料電池装置が知られている。このような燃料電池装置においては、発電によって燃料電池から水蒸気を含んだ排ガスが排出される。そこで、燃料電池から排出される排ガスを冷却することで水蒸気を凝縮させて回収し、この回収した凝縮水を浄化処理した後、改質器に供給して水蒸気改質を行うための改質水として利用する、いわゆる水自立運転が一般的に行われている。
【0003】
回収された凝縮水は、イオン交換樹脂によって浄化処理されて水タンクに貯められる一方で、改質水として利用されなかった余剰の凝縮水は、排水として装置外に排出される。なお、凝縮水は、排ガスの一部である二酸化炭素等の気体が溶存しており、そのpH値が低下しているため、そのまま排水することができない。そこで、炭酸カルシウム等の中和剤によって中和処理を行い、pH値を上げてから排水される。したがって、水自立運転を行う燃料電池装置においては、凝縮水を浄化する浄化手段と、凝縮水を中和する中和手段とが必要となる。
【0004】
ところで、燃料電池装置には小型化が求められているが、凝縮水の浄化手段と中和手段をそれぞれ別の装置として設けると、筐体内には配置のためのスペースが必要になり、小型化が難しくなる。また、それぞれの装置を繋ぐための配管も必要になり、部品コストも上昇する。そこで、これらの問題を解決するため、一つの容器内に凝縮水の浄化手段と中和手段とを配設した凝縮水回収器が提案されている(例えば、特許文献1)。凝縮水回収器内に第1の隔壁と第2の隔壁を配置して、凝縮水処理室と、凝縮水貯留室と、凝縮水中和室とに区分している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、凝縮水回収容器内を、隔壁によって横方向に連なる3つのエリアに分割している。そのため、中央のエリアは左右両隣の2つのエリアと連通するが、右端と左端のエリアは中央のエリアとしか連通していない。燃料電池装置は屋外に配置されるものであるため、外乱の影響等も考慮すると、容器内部におけるそれぞれのエリアの区画配置に関しては改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、小型でありながら、外乱の影響を受けずに確実に凝縮水の処理と排水を行うことのできる凝縮水回収器を備えた燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、燃料電池と、原燃料を水蒸気改質する改質器とを有する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールから排出される排ガスに含まれる水を凝縮水として回収する凝縮水回収流路と、
前記凝縮水回収流路を流れた凝縮水を貯水する凝縮水回収器と、を備え、
前記凝縮水回収器は、
イオン交換樹脂を備える処理室と、凝縮水を貯留する貯留室と、中和剤を備えるとともに余剰の凝縮水を排水する第1排水口を有する中和室と、を含み、
前記処理室と前記貯留室とを連通する第1連通口と、
前記処理室と前記中和室とを連通する第2連通口と、
前記貯留室と前記中和室とを連通する第3連通口と、を有する燃料電池装置である。
【発明の効果】
【0009】
上述のように構成することにより、凝縮水回収器を小型に構成しつつ、確実に凝縮水の処理と排水を行うことができるため、信頼性の高い燃料電池装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。
【
図2】本実施形態の凝縮水回収器の外観斜視図である。
【
図3】本実施形態の凝縮水回収器における回収器本体の上面図である。
【
図8】凝縮水回収器が設置された筐体底面の断面図である。
【
図9】凝縮水回収器の設置位置を示す燃料電池装置の分解図である。
【
図10】凝縮水回収器と凝縮水回収流路との接続箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0012】
本発明は、燃料電池モジュールから排出される排ガスに含まれる水を凝縮水として回収する凝縮水回収器を有した燃料電池装置であって、凝縮水回収器はイオン交換樹脂を備える処理室と、凝縮水を貯留する貯留室と、中和剤を備えるとともに余剰の凝縮水を排水する第1排水口を有する中和室と、を含んでおり、処理室と貯留室とを連通する第1連通口と、処理室と中和室とを連通する第2連通口と、貯留室と中和室とを連通する第3連通口と、を有している。つまり、処理室、貯留室、中和室のそれぞれは、他の2室と連通口を介して連通している。これにより、例えば、外乱の影響を受けて処理室の水位が急激に上昇した場合には、処理室から中和室へ凝縮水を流入させて排水することができるので、凝縮水の処理と排水を確実に機能させることができる、信頼性の高い燃料電池装置となる。
【0013】
また、凝縮水回収器は、余剰の水を排水する第1排水口に加えて、水抜流路と接続される第2排水口と第3排水口を有しており、これら3つの排水口は凝縮水回収器の同じ面に設けられている。燃料電池装置には、メンテナンスを行うためのメンテナンス面が設けられていて、凝縮水回収器の排水口にはメンテナンス面に向かって延びる配管が接続される。凝縮水回収器は、排水口が設けられた面を燃料電池装置のメンテナンス面に向けて配置することで、排水のための配管長を短くすることができ、コストダウンを図ることができる。また、配管引き回しのスペースを小さくすることができるため、燃料電池装置をより小型に構成することができる。
【0014】
また、凝縮水回収器は、短側面と長側面を備えた直方体形状あって、第1排水口と第2排水口と第3排水口は短側面に設けられている。凝縮水回収器は、短側面をメンテナンス面に向けて配置することで、メンテナンスを必要とする他の部品との干渉を抑えて配置することができるため、メンテナンス性が向上する。そして、狭いスペースであっても、凝縮水回収器を容易に配置することができる。
【0015】
また、凝縮水回収器は、中和室と連通するオーバーフロー室を備え、オーバーフロー室は底面に第4排水口を有している。何らかの理由によって、第1排出口から正常に排水させることができなくなった場合には、オーバーフロー室を介して排水することができるので、凝縮水回収器から水が溢れてしまうことが防止できる。
【0016】
また、オーバーフロー室は、凝縮水回収器の底面から突出する突出部を有し、筐体の底面には突出部と嵌合する嵌合孔が設けられている。オーバーフロー室に流入した余剰の凝縮水は、筐体内部を通ることなく速やかに筐体外に排出されるので、他の機器に悪影響を及ぼすことを回避することができる。
【0017】
また、凝縮水回収器と凝縮水回収流路とは弾性変形可能な接続部材を介して接続されるので、凝縮水回収器の着脱を容易に行うことができる。凝縮水回収器には、イオン交換樹脂や中和剤が収容されており、定期的なメンテナンスを必要とするが、着脱が容易になることでメンテナンス性が向上する。
【実施例0018】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0019】
図1は本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。燃料電池装置100は、燃料電池モジュール1を含み、燃料電池モジュール1を作動させるための、第1熱交換器2、蓄熱タンク3、凝縮水回収器4、放熱器5、空気供給装置14、燃料供給装置15、改質水供給装置16等の複数の補機が筐体50内に納められている。筐体50内には上述の装置全てが収められる必要はなく、例えば、第1熱交換器2や蓄熱タンク3を筐体50の外部に設けてもよい。また、上述の装置の一部を省略した燃料電池装置も可能である。
【0020】
燃料電池モジュール1は、箱状の収納容器10の内部に、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行なう燃料電池11と、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する改質器12と、を収容して構成される。
【0021】
燃料電池11の構成については特に限定はしないが、例えば、複数の燃料電池セルが配列されてなるセルスタック構造を有していてもよい。セルスタック構造の燃料電池11は、例えば、各燃料電池セルの下端を、ガラスシール材等の絶縁性接合材を用いて、マニホールドに固定することによって構成される。
【0022】
改質器12は、天然ガス、LPガス等の原燃料ガスを水蒸気改質し、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する。改質器12には、原燃料ガスを供給する燃料供給装置15と、改質水を供給する改質水供装置16が接続されており、原燃料ガスと改質水は加熱された改質器12で改質反応し、水素を含む燃料ガスが生成される。
【0023】
燃料電池11には、改質器12で生成された燃料ガスと、空気供給装置14によって導入された空気(酸素含有ガス)が供給される。燃料ガスは、燃料電池セル内を通過するときに酸素含有ガスと反応して発電が行われる。発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスは、燃料電池11の上部で合流して燃焼する。この燃料ガスの燃焼によって高温の排ガスが生成され、改質器12はこの熱によって加熱される。このようにして燃料電池モジュール1内で生じた排ガスは、第1熱交換器2に供給される。
【0024】
第1熱交換器2には配管を介して、蓄熱タンク3、熱媒ポンプP1および放熱器5が接続され、第1熱媒循環ラインHC1が形成されている。この第1熱媒循環ラインHC1には熱媒体が導入されており、第1熱交換器2ではこの熱媒体と前述の排ガスとで熱交換が行われて熱媒体が加熱される。熱媒体としては水などを用いることができ、蓄熱タンク3は熱交換により温度が上昇した熱媒体を蓄える。蓄熱タンク3に蓄えられた熱媒体は、放熱器5に送られて冷却され、再び第1熱交換器2で排ガスと熱交換を行った後、蓄熱タンク3に還流する。これにより、蓄熱タンク3には上部から温度の高い熱媒体が蓄えられ温度成層が形成される。
【0025】
また、第1熱交換器2には、凝縮水回収流路20を介して凝縮水回収器4が接続されている。燃料電池モジュール1で発生した排ガスが熱交換によって冷却されると、排ガス中に含まれる水蒸気が水と気体に分離され、分離された水は、凝縮水回収流路20を通って凝縮水回収器4に回収される。凝縮水回収器4の詳細な構造については後述するが、凝縮水回収器4では、イオン交換樹脂によって回収した凝縮水から不純物を取り除いて純水化し、純水化した水を貯留する。凝縮水回収器4に貯められた水は、水供給装置16により改質器12に供給され、改質水として使用される。一方で、水分が取り除かれた気体は、排気流路21を通ってから筐体50の外に排出される。
【0026】
凝縮水回収器4には、排水流路25と水抜流路26が接続されている。凝縮水の回収が過多になると、改質水として利用されなかった余剰の凝縮水は中和剤によって中和処理された後、凝縮水回収器4からオーバーフローし、排水流路25を通って筐体50の外に排出される。また、長期間にわたって燃料電池装置を運転しない場合などには、装置内部の水が凍結してしまうことを防止するため、水抜流路26を介して凝縮水回収器4内の凝縮水を筐体50の外部に排出することができるようになっている。水抜流路26には水抜栓26aが設けられており、水抜栓26aを開状態にすることで凝縮水回収器4の水抜きが行われる。
【0027】
改質器12に原燃料を供給する燃料供給装置15は、燃料の供給源から繋がる原燃料流路22上に、第1電磁弁V1、圧力センサPS、脱硫器DS、ガス流量計FM1、燃料ポンプB1、第2電磁弁V2等の補機が設けられている。改質器12に改質水を供給する改質水供給装置16は、凝縮水回収器4から繋がる改質水流路23上に改質水ポンプP3等の補機が設けられている。燃料電池モジュール1に酸素含有ガスを供給する空気供給装置14は、酸素含有ガス流路24上に、空気流量計FM2、ブロワB2等の補機が設けられている。なお、ここに挙げた補機は一例であって、この他の補機を備える構成としてもよい。
【0028】
さらに、燃料電池装置100には、各種機器の動作を制御する制御装置30が設けられているほか、燃料電池モジュール1にて発電された直流電力を交流電力に変換し、変換された電気の外部負荷への供給量を調整するための供給電力調整部(パワーコンディショナ)40を備えている。
【0029】
また、燃料電池装置100は、第2熱交換器6、蓄熱タンク3から熱媒を循環させる与熱ポンプP2およびこれらを繋ぐ配管を含む第2熱媒循環ラインHC2を備えていてもよい。第2熱媒循環ラインHC2では、外部から供給流路27を介して供給された水道水を、蓄熱タンク3に貯留された高温の熱媒体を用いて第2熱交換器6で加温する。加温された水を外部の給湯器等の再加熱装置に向けて送給流路28を介して送給することができる。燃料電池装置100は、外部への温水供給を行わない、いわゆるモノジェネレーションシステムであってもよい。
【0030】
図2は、本実施形態の凝縮水回収器の外観斜視図である。凝縮水回収器4は、上面が開口する有底箱状の回収器本体41と、回収器本体41の開口に着脱可能に取り付けられる回収器蓋42を備えている。回収器本体41は、横幅の短い短側面41a、41bと横幅の長い長側面41c、41dを備えた直方体形状であって、排水流路25が接続される第1排水口61と、水抜流路26が接続される第2排水口62および第3排水口63とが、同じ側面上に設けられている。本実施形態では、これら排水口が短側面41aに設けられた例を示している。
【0031】
回収器蓋42には、凝縮水回収流路20が接続される流入孔421が形成されている。燃料電池モジュール1で発生した排ガスを、第1熱交換器2で冷却することにより生成された凝縮水は、凝縮水回収流路20を流下し、この流入孔421から回収器本体41内に流入する。また、回収器蓋42には、回収器本体41内の所定位置の水位を検知するための水位センサ43、44が取り付けられている。水位センサ43はフロート式のセンサであり、水位センサ44は電極式のセンサである。なお、水位センサ43、44の取付位置は図示した位置に限らず、回収器本体41に取り付けられていてもよい。また、水位を検知する方式については、特定の方式に限定されるものではなく、種々のものを採用することができる。
【0032】
図3は、本実施形態の凝縮水回収器における回収器本体の上面図である。凝縮水回収器4は、回収器本体41内に配設された隔壁によって複数のエリアに区画されている。具体的には、一方の短側面41aと他方の短側面41bとを繋ぐ平板状の第1隔壁411と、短側面41aと第1隔壁411とを繋ぐ屈曲部を有した第2隔壁412とを備えており、第1隔壁411と第2隔壁412とによって、イオン交換樹脂45を備える処理室71と、凝縮水を貯留する貯留室72と、中和剤46を備えるとともに余剰の凝縮水を排水する第1排水口61を有する中和室73と、を備えて構成されている。そして、水抜流路26に接続される第2排水口62と第3排水口63は、それぞれ貯留室72と中和室73に設けられている。
【0033】
図3における矢印は、回収器本体41内の凝縮水の流れを示している。排ガスを冷却することで生成された凝縮水は、凝縮水回収流路20を流下し、回収器蓋42の流入孔421から処理室71内に流入する。そして、処理室71内に流入した凝縮水は、イオン交換樹脂45を通過することで不純物が取り除かれて純水化され、貯留室72に流入して貯められる。貯留室72は改質水流路23と接続されており、貯留室72に貯められた凝縮水は改質水ポンプP3の駆動によって改質器12に供給され、水蒸気改質のための改質水として使用される。改質水として利用されなかった余剰の凝縮水は、中和室73に流入し、中和剤46によって中和処理されたのち、第1排水口61から装置外部に排水される。
【0034】
次に、
図4から
図6を用いて、凝縮水回収器4についてさらに詳しく説明する。
図4は、
図3のA-A線に沿った断面斜視図であり、処理室71の断面を示している。
図5は、
図3のB-B線に沿った断面斜視図であり、貯留室72の断面を示している。
図6は、
図3のC-C線に沿った断面斜視図であり、中和室73の断面を示している。
【0035】
第1隔壁411の下部には、処理室71と貯留室72とを連通する第1連通口75が設けられており、第1隔壁411の上部には、処理室71と中和室73とを連通する第2連通口76が設けられている。そして、第2隔壁412の上部には、貯留室72と中和室73とを連通する第3連通口77が設けられている。つまり、処理室71、貯留室72、中和室73は、それぞれが他の2室と連通口を介して連通している。
【0036】
また、
図4に示すように、処理室71には、第1仕切壁711と第2仕切壁712が設けられており、この第1仕切壁711と第2仕切壁712とによって処理室71内に蛇行流路が形成されている。具体的には、第1仕切壁711は、第1隔壁411の上端とほぼ同じ高さを有していて、下端部には通水口713が設けられている。第2仕切壁712は、回収器本体41の底面から延びており、その高さは通水口713の上端よりも高く、かつ第1隔壁411よりも低く形成されていて、第2仕切壁712の上部空間を凝縮水が通過できるようになっている。凝縮水回収流路20から処理室71内に流入した凝縮水は、通水口713を通過して、第2仕切壁712の上部を通った後、第1連通口75から貯留室72に流入する。このように凝縮水の流れを蛇行させることで、凝縮水とイオン交換樹脂45とが接触する距離を長くしての凝縮水の浄化を効率よく行うことができる。
【0037】
第1隔壁411の上部には、第2連通口76が設けられている。処理室71内の水位が上昇した場合には、凝縮水は第2連通口76から中和室73に流入し、装置外に排水される。例えば、屋外で強い風が吹いたとき、排気流路21に風が吹き込むことがあるが、排気流路21は凝縮水回収流路20を介して凝縮水回収容器4と繋がっているため、排気流路21から吹き込んだ風の風圧によって処理室71内に圧力がかかると、凝縮水の水位を変動させてしまう。この水位変動によって処理室71内の第1仕切壁711の下流側の水位が上昇すると、押し上げられた凝縮水が凝縮水回収器4の上面からあふれ出してしまうおそれがある。凝縮水があふれ出ないようにするためには、凝縮水回収容器4を密閉状態にする必要があるが、密閉するためには回収器本体41と回収器蓋42とを確実にシールしなければならず、コストアップにつながってしまう。
【0038】
そこで、本実施形態においては第1隔壁411の上部に第2連通口76を設けており、処理室71内の水位が上昇した場合には、凝縮水を中和室73に流入させるようになっている。これにより、凝縮水を速やかに排水させることができるため、凝縮水回収器4の上面から凝縮水があふれ出すことが防止される。したがって、凝縮水回収器4は、コストの上昇を抑えつつ、外乱の影響を受けずに確実に凝縮水の処理と排水を行うことができる。
【0039】
通水口713と第1連通口75には、イオン交換樹脂45の流出を防止するための流出防止部材(図示せず)が設けられる。排気流路21から風が吹き込むと、その風圧によってイオン交換樹脂45が流されて後段の室に移動してしまうおそれがある。イオン交換樹脂が移動すると、凝縮水との接触距離が短くなるので処理不良となり、その結果として燃料電池の性能低下を招くことになる。これに対して、流出防止部材を設けることで、イオン交換樹脂の移動を防止し、燃料電池の性能低下を抑制している。なお、流出防止部材の材質は、特に限定されるものではなく、不織布やメッシュフィルタなど、種々の部材を用いることができる。
【0040】
第2連通口76は、高い位置に配置するのがよい。本実施形態では、第1隔壁411の上端を切り欠いて第2連通口76が形成されている。風圧によって変動した水位は、風の吹き込みがなくなれば通常に戻る。よって、必要以上に凝縮水を排水してしまうことを抑えるため、第2連通口76は高い位置に配置される。
【0041】
イオン交換樹脂45を通って浄化された凝縮水は、貯留室72に貯留される。貯留室72には、改質水流路23が接続されており、貯留室72内の凝縮水は改質器12に供給されて水蒸気改質のための改質水として使用される。貯留室72の水位が所定量以下になると、改質器12に改質水を供給することができなくなるため、水位センサ43は貯留室72内の水位を検知し、水位が所定量以下にならないように発電運転が制御される。また、発電運転を制御しても、貯留室72の水位が上昇しない場合は外部から水を補水する。
【0042】
図5に示すように、第2隔壁412の上部には第3連通口77が設けられている。回収される凝縮水の量が多くなり、貯留室72の水位が第3連通口77の高さを超えると、余剰の凝縮水は中和室73に流入する。中和室73に流入した凝縮水は、中和剤46によって中和処理された後、第1排水口61から装置外部に排水される。第1排水口61は、第3連通口77の下端よりも低い位置に設けられている。
【0043】
また、
図6に示すように、中和室73には、第3仕切壁731が立設されており、第3仕切壁731の下端部には通水口732が設けられている。この第3仕切壁731によって中和室内に蛇行流路が形成されている。これにより、凝縮水と中和剤46とが接触する距離を長くして、中和処理を確実に行うことができる。中和室73の水位は、水位センサ44によって検知されており、水位が所定値を超えると、排水に異常があるとして報知するようにしてもよい。
【0044】
中和室73には、中和剤46が流出するのを防止するための流出防止部材を設けることができる。流出防止部材としては、第1排水口に不織布やメッシュフィルタなどを設けてもよいし、中和剤46の上面を押さえる金属網や樹脂パーツ等を中和室内に配設してもよい。
【0045】
なお、凝縮水回収器4における、処理室71、貯留室72、中和室73の配置は上述した構成に限らない。例えば、
図7(A)、
図7(B)は、回収器本体の他の一例を示す上面図である。いずれの例においても、処理室71、貯留室72、中和室73は、それぞれが他の2室と隔壁を挟んで隣り合っており、隔壁には各室を連通する連通口が設けられる。また、第1排水口61、第2排水口62、第3排水口63は、回収器本体41の短側面41aに設けられる。
【0046】
凝縮水回収器4には、さらに第3隔壁413を設置してオーバーフロー室74を設けることができる。オーバーフロー室74は第4連通口78を介して中和室73と連通し、底面には第4排水口64を有している。通常、凝縮水回収器4内の余剰の凝縮水は、第1排水口61から排水されるようになっているが、何らかの理由によって第1排水口61から正常に排水させることができなくなった場合には、オーバーフロー室74を介して凝縮水回収器4の底面から排水することができる。これにより、第1排水口61に異常が発生した場合でも、凝縮水回収器4から水が溢れてしまうことが防止される。なお、オーバーフロー室74は中和室73とのみ連通し、処理室71および貯留室72とは連通していない。
【0047】
第4連通口78は、第3連通口77よりも低い位置に設けられる。中和室73の水位が上昇して第4連通口78の高さを超えると、凝縮水はオーバーフロー室74から排水されるので、中和剤を含んだ凝縮水が貯留室72に逆流することが防止される。
【0048】
図8は、凝縮水回収器が設置された筐体底面の断面図である。オーバーフロー室74は、凝縮水回収器4の底面から突出する突出部741を有しており、この突出部741の先端に第4排水口64が設けられている。そして、凝縮水回収器4が設置される筐体50の底板51には、この突出部741と嵌合する嵌合孔51aが設けられていて、嵌合孔51aに突出部741が嵌め込まれることで、第4排水口64は筐体50外に開口している。この構成により、オーバーフロー室74に流入した余剰の凝縮水は、筐体50内部を通ることなく速やかに筐体50外に排出されるので、余剰の凝縮水が他の機器に悪影響を及ぼすことを回避することができる。また、凝縮水回収器4は、嵌合孔51aに突出部741を挿入することで容易に位置決めをすることもできる。
【0049】
図9は、凝縮水回収器の設置位置を示す燃料電池装置の分解図であって、筐体50内に配置される燃料電池モジュール1や凝縮水回収器4以外の補機は図示を省略している。燃料電池装置100の筐体50は、直方体形状であって、凝縮水回収器が設置される底板51と、上面パネル52と、複数の側面パネル53~56を備えている。側面パネルは、左側面パネル53、右側面パネル54、正面パネル55、背面パネル56を備えており、底板51および各パネル52~56は、板金部材を折り曲げ加工して成型される。
【0050】
燃料電池装置100には、メンテナンスを行うメンテナンス面があらかじめ設定されている。上面パネル52と、複数の側面パネル53~56の一部は、メンテナンス時に取り外されるメンテナンスパネルである。
【0051】
本実施形態において、右側面パネル54は、メンテナンス時に取り外すメンテナンスパネルであって、分割可能な上下2つのパネルから構成されている。右側面パネル54は、上部パネル541と下部パネル542から構成されている。上部パネル541は、開閉可能なカバー部541aを備えていて、このカバー部541aを外すと燃料電池装置100の電源スイッチやブレーカスイッチを操作することができるようになっている。そして、メンテナンスの際には下部パネル542は取り付けたまま、上部パネル541だけを取り外すことができるようになっている。メンテナンス時に取り外しのできるパネルは、上述の上部パネル541に限らず、他のパネルも取り外しできるように設計することができる。また、下部パネル542には、燃料や水等の配管が継手を介して接続される。
【0052】
凝縮水回収器4は、凝縮水を排出するための排水口として、余剰の凝縮水を排水する第1排水口61、水抜きの実行時に凝縮水が排水される第2排水口62と第3排水口63を有しており、これら3つの排水口は凝縮水回収器4の同じ面に設けられている。そして、これら排水口にはメンテナンス面に向かって延びる配管(図示せず)が接続される。凝縮水回収器4は、排水口が設けられた面を燃料電池装置100のメンテナンス面に向けて配置することで、排水のための配管長を短くすることができ、コストダウンを図ることができる。また、配管引き回しのスペースを小さくすることができるため、燃料電池装置100をより小型に構成することができる。
【0053】
また、本実施形態では凝縮水回収器4の短側面41aに排水口が設けられている。メンテナンス面に対向する容器幅が狭いため、メンテナンスを必要とする他の部品との干渉を抑えて配置することができ、メンテナンス性が向上する。そして、狭いスペースであっても、凝縮水回収器4を容易に配置することができる。
【0054】
図10は、凝縮水回収器と凝縮水回収流路との接続箇所の断面図である。凝縮水回収流路20の下端と回収器蓋42との間には空間が設けられており、この空間に接続部材47を介装して、凝縮水回収流路20と回収器蓋42とが接続されている。
【0055】
接続部材47は、例えばゴム等の弾性変形可能な材料からなり、水平方向に延びるフランジ部471と、このフランジ部471の上方に設けられた第1筒部472と、フランジ部471の下方に設けられた第2筒部473とを備えている。さらに第2筒部473の下端部には、外方に張り出す張出部474が形成されている。第1筒部472には凝縮水回収流路20が挿入され、第2筒部473は回収器蓋42に設けられた流入孔421に挿入され、フランジ部471は流入孔421をシールする。また、回収器蓋42の流入孔421からは、凝縮水回収容器4内に凸となる凸部422が延出しており、この凸部422に張出部474が係止することで、回収器蓋42から接続部材47が外れてしまうことを防止している。
【0056】
凝縮水回収器4と凝縮水回収流路20とは、弾性変形可能な接続部材47を介して接続されるため、接続部材47を変形させることで凝縮水回収器4を着脱することができる。凝縮水回収器4を取り外す場合は、そのまま引き抜くだけでよい。接続部材47と回収器蓋42との間には抜け止めの構造が設けられているので、接続部材47は回収器蓋42とともに取り外される。また、凝縮水回収器4を取り付ける場合は、凝縮水回収器4を少し傾斜させて、接続部材47の第1筒部472の先端を凝縮水回収流路20に当接させ、第1筒部472を凝縮水回収流路20に押し込んで変形させながら、凝縮水回収器4を設置位置に合わせる。このように、凝縮水回収器4の着脱を容易に行うことができる。凝縮水回収器4には、イオン交換樹脂45や中和剤46が収容されているため、定期的なメンテナンスを必要とするが、着脱が容易になることでメンテナンス性が向上する。