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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043850
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0432 20160101AFI20240326BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20240326BHJP
【FI】
H01M8/0432
H01M8/2475
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149056
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】小栗 慎
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126FF10
5H127AB23
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127DB93
5H127DB95
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】温度センサの数を減らしてコストダウンができる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】装置内における所定部位の温度を測定する熱電対TC1、TC2と、熱電対の基準接点の温度を検知する基準温度検知手段18と、を有し、制御装置30は基準温度検知手段18が検知した温度を熱電対の接点温度補償以外にも利用する。これにより、温度センサの数を減らすこととなりコストダウンを図ることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、
装置内における所定部位の温度を測定する熱電対と、
前記熱電対の基準接点の温度を検知する基準温度検知手段と、
発電運転を制御する制御装置と、を備え
前記制御装置は、前記基準温度検知手段が検知した温度を前記熱電対の接点温度補償以外にも利用する燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記基準温度検知手段が検知した温度を外気温の代替値として利用する請求項1記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記燃料電池が収容される燃料電池モジュールを備え、
前記基準温度検知手段は、前記燃料電池モジュールとの間に隔壁を挟んで配置されている請求項2記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記燃料電池が収容される燃料電池モジュールを備え、
前記基準温度検知手段は、電子部品が実装される制御基板に取り付けられており、
前記制御基板は、前記基準温度検知手段の実装面を前記燃料電池モジュールとは反対側に向けて配置されている請求項2記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記基準温度検知手段は、筐体を構成する第1のパネルと対向して配置されており、
前記第1のパネルには、前記筐体内を換気または冷却するための吸気口および排気口のいずれも設けられていない請求項3または4記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を含有する燃料ガスと酸素含有ガス(空気)とを用いて発電を行ない、電気を外部に供給する燃料電池装置が知られている。このような燃料電池装置は、筐体の内部に複数の温度センサを備えて構成されており、温度センサが検知する温度に基づいて発電運転が制御される。
【0003】
たとえば特許文献1では、燃焼部の温度を検出する第1温度センサ、燃焼触媒の出口付近の温度を検出する第2温度センサ、セルスタックの中心付近の温度を検出する第3温度センサ、改質器の出口付近の温度を検出する第4温度センサが設けられている。また、特許文献2では、外気温を検知する外気温センサ34と、水循環ラインの水温を検知する水温センサ31、32、33が設けられている。これらの温度センサには、熱電対やサーミスタなどを用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-186009号公報
【特許文献2】特開2007-294186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、様々な部位の温度を検知することで、燃料電池装置の動作を適切に制御することができる反面、センサの数が多くなることで部品コストが上昇してしまうことになる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、一つの温度センサが検知した温度を複数の用途に利用することで、センサの数を減らしてコストダウンができる燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、
装置内における所定部位の温度を測定する熱電対と、
前記熱電対の基準接点の温度を検知する基準温度検知手段と、
発電運転を制御する制御装置と、を備え
前記制御装置は、前記基準温度検知手段が検知した温度を前記熱電対の接点温度補償以外にも利用する燃料電池装置である。
【発明の効果】
【0008】
上述のように構成することにより、基準温度検知手段の検知した温度が複数の用途に利用されるため、センサの数を減らしてコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。
図2】本実施形態の制御装置の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態の燃料電池装置の筐体の分解図である。
図4】本実施形態の燃料電池装置における内部構成を説明する配置概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0011】
本発明の燃料電池装置は、装置内における所定部位の温度を測定する熱電対と、熱電対の基準接点の温度を検知する基準温度検知手段と、を有し、制御装置は基準温度検知手段が検知した温度を熱電対の接点温度補償以外にも利用する。熱電対により温度を検知する場合には、接点温度補償のために基準温度検知手段が必要となる。そこで、この基準温度検知手段が検知した温度を他の用途に利用して、他の温度センサの代用とすることで、温度センサの数を減らすこととなりコストダウンを図ることができる。
【0012】
また、基準温度検知手段が検知した温度を外気温の代替値として利用する。外気温は、発電運転を行うにあたり必要な温度の一つであるが、基準温度検知手段を発電によって発生する熱の影響を受けにくい位置に配置することで、基準温度検知手段に外気温との相関関係を持つ温度を検知させることができる。これにより、センサの数の削減と、燃料電池装置の適切な制御を両立することができる。
【0013】
また、燃料電池が収容される燃料電池モジュールを備え、基準温度検知手段は燃料電池モジュールとの間に隔壁を挟んで配置されている。これにより、燃料電池モジュールから発せられる熱が、基準温度検知手段の検知する温度に与える影響を緩和して、外気温との相関関係を維持することができる。
【0014】
また、燃料電池が収容される燃料電池モジュールを備え、基準温度検知手段は制御基板に取り付けられており、制御基板は基準温度検知手段の実装面を燃料電池モジュールとは反対側に向けて配置されている。これにより、燃料電池モジュールから発せられる熱が、基準温度検知手段の検知する温度に与える影響を緩和して、外気温との相関関係を維持することができる。
【0015】
また、基準温度検知手段は、筐体を構成する第1のパネルと対向して配置されており、第1のパネルには、筐体内を換気または冷却するための吸気口および排気口のいずれも設けられていない。これにより、基準温度検知手段の検知する温度が、吸気および排気の影響を受けることを抑制して外気温との相関関係を維持することができる。
【実施例0016】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0017】
図1は本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。燃料電池装置100は、燃料電池モジュール1を含み、燃料電池モジュール1を作動させるための、第1熱交換器2、蓄熱タンク3、凝縮水タンク4、放熱器5、空気供給装置14、燃料供給装置15、改質水供給装置16等の複数の補機が筐体50内に納められている。筐体50内には上述の装置全てが収められる必要はなく、例えば、第1熱交換器2や蓄熱タンク3を筐体50の外部に設けてもよい。また、上述の装置の一部を省略した燃料電池装置も可能である。
【0018】
燃料電池モジュール1は、箱状の収納容器10の内部に、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行なう燃料電池11と、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する改質器12と、を収容して構成される。
【0019】
燃料電池11の構成については特に限定はしないが、例えば、複数の燃料電池セルが配列されてなるセルスタック構造を有していてもよい。セルスタック構造の燃料電池11は、例えば、各燃料電池セルの下端を、ガラスシール材等の絶縁性接合材を用いて、マニホールドに固定することによって構成される。
【0020】
改質器12は、天然ガス、LPガス等の原燃料ガスを水蒸気改質し、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する。改質器12には、原燃料ガスを供給する燃料供給装置15と、改質水を供給する改質水供装置16が接続されており、原燃料ガスと改質水は加熱された改質器12で改質反応し、水素を含む燃料ガスが生成される。
【0021】
燃料電池11には、改質器12で生成された燃料ガスと、空気供給装置14によって導入された空気(酸素含有ガス)が供給される。燃料ガスは、燃料電池セル内を通過するときに酸素含有ガスと反応して発電が行われる。燃料電池11と改質器12の間の空間は燃焼部13であり、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスは燃焼部13で合流して燃焼する。この燃料ガスの燃焼によって高温の排ガスが生成され、改質器12はこの熱によって加熱される。このようにして燃料電池モジュール1内で生じた排ガスは、第1熱交換器2に供給される。
【0022】
第1熱交換器2には配管を介して、蓄熱タンク3、熱媒ポンプP1および放熱器5が接続され、第1熱媒循環ラインHC1が形成されている。放熱器5は放熱ファンを5aを備えている。この第1熱媒循環ラインHC1には熱媒体が導入されており、第1熱交換器2ではこの熱媒体と前述の排ガスとで熱交換が行われて熱媒体が加熱される。熱媒体としては水などを用いることができ、蓄熱タンク3は熱交換により温度が上昇した熱媒体を蓄える。蓄熱タンク3に蓄えられた熱媒体は、放熱器5に送られて冷却され、再び第1熱交換器2で排ガスと熱交換を行った後、蓄熱タンク3に還流する。これにより、蓄熱タンク3には上部から温度の高い熱媒体が蓄えられ温度成層が形成される。
【0023】
蓄熱タンク3には、水を補給するための補給流路25が接続されている。補給流路25は、外部の水供給源に接続された供給流路26から分岐して設けられ、途中に流路を開閉する給水弁25aを備えている。燃料電池装置100の設置時や、運転中に蓄熱タンク3内の水位が所定以下となったときには給水弁25aを開くことで補給流路25を通じて蓄熱タンク3に水道水が供給される。
【0024】
また、蓄熱タンク3には、蓄熱タンク3内の水量を監視するための水位検知手段7と、熱媒体を加熱するための加熱ヒータ8が設けられている。水位検知手段としては、フロートセンサや静電容量センサなど公知の水位センサを用いることができ、蓄熱タンク3内の水量が所定量以上であるときに水有を検知し、所定量を下回ったときに水無しを検知する。本実施形態においては、水位検知手段7が1箇所に設けられている例を示しているが、水位検知手段7を上下方向に複数設け、複数箇所における水位を検知するようにしてもよい。
【0025】
加熱ヒータ8は、蓄熱タンク3内に配設されて蓄熱タンク3内の水を加熱する。例えば、外気温が低く、燃料電池装置100内で水が凍結するおそれのあるときは、加熱ヒータ8に通電することで水温を上昇させて凍結を防止することができる。さらには、燃料電池11での発電量が需要家での消費電力量を超える場合には、余った電力(余剰電力)を消費させるために加熱ヒータ8に通電するようにしてもよい。
【0026】
また、第1熱交換器2には、凝縮水回収路20を介して凝縮水タンク4が接続されている。燃料電池モジュール1で発生した排ガスが熱交換によって冷却されると、排ガス中に含まれる水蒸気が水と気体に分離され、分離された水は、凝縮水回収流路20を通って凝縮水タンク4に回収される。凝縮水タンク4では、イオン交換器(図示せず)などを経て、回収した水から不純物を取り除いて純水化する。純水化した水は水供給装置16により改質器12に供給され、改質水として使用される。一方で、水分が取り除かれた気体は、排気流路21を通ってから筐体50の外に排出される。
【0027】
改質器12に原燃料を供給する燃料供給装置15は、燃料の供給源から繋がる原燃料流路22上に、第1電磁弁150、圧力センサ151、脱硫器152、ガス流量計153、燃料ポンプ154、第2電磁弁155等の補機が設けられている。改質器12に改質水を供給する改質水供給装置16は、凝縮水タンク4から繋がる改質水流路23上に改質水ポンプ160等の補機が設けられている。燃料電池モジュール1に酸素含有ガスを供給する空気供給装置14は、酸素含有ガス流路24上に、エアフィルタ140、空気流量計141、エアブロワ142等の補機が設けられている。なお、ここに挙げた補機は一例であって、この他の補機を備える構成としてもよい。
【0028】
また、燃料電池装置100は、第2熱交換器6、蓄熱タンク3から熱媒を循環させる与熱ポンプP2およびこれらを繋ぐ配管を含む第2熱媒循環ラインHC2を備えていてもよい。第2熱媒循環ラインHC2では、外部から供給流路25を介して供給された水道水を、蓄熱タンク3に貯留された高温の熱媒体を用いて第2熱交換器6で加温する。加温された水を外部の給湯器等の再加熱装置に向けて送給流路26を介して送給することができる。燃料電池装置100は、外部への温水供給を行わない、いわゆるモノジェネレーションシステムであってもよい。
【0029】
さらに燃料電池装置100は、筐体50内外の各部の温度を計測するための、温度センサやサーミスタ等の温度検知手段を複数備える。
【0030】
第1熱媒循環ラインHC1や第2熱媒循環ラインHC2のように熱媒体が流れる流路には、熱媒体の温度を計測するため温度検知手段TH1~TH6が設けられている。
【0031】
例えば、蓄熱タンク3内の熱媒体の温度を検知する手段として、タンク低サーミスタTH1、タンク高サーミスタTH2を有している。タンク低サーミスタTH1は、蓄熱タンク3内の比較的低温の熱媒体の温度を検知するものであり、蓄熱タンク3の下部に設けられている。タンク高サーミスタTH2は、蓄熱タンク3内の比較的高温の熱媒体の温度を検知するものであり、蓄熱タンク3近傍の第2熱媒循環ラインHC2上に設けられている。また、第1熱媒循環ラインHC1を流れる熱媒体の温度を検知する手段として、熱媒低サーミスタTH3、熱媒高サーミスタTH4を有している。熱媒低サーミスタTH3は熱媒ポンプP1と第1熱交換器2の間に設けられ、放熱器5で冷却されて第1熱交換器2に流入する熱媒体の温度を検知する。熱媒高サーミスタTH4は第1熱交換器2と蓄熱タンク3との間に設けられ、第1熱交換器2を通過した後の熱媒体の温度を検知する。さらに、供給流路26には外部から供給される水の温度を検知する入水サーミスタTH5、送給流路27には第2熱交換器6により加温された水の温度を検知する出湯サーミスタTH6が設けられる。
【0032】
燃料電池モジュール1内には、燃料電池11の中心部の温度を検知する中心部温度センサTC1と、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスが燃焼する燃焼部13の温度を検知する燃焼部温度センサTC2が配設されている。中心部温度センサTC1と燃焼部温度センサTC2は熱電対である。このように、高温となる領域の温度を計測する際には一般的に熱電対が用いられる。
【0033】
なお、上述のサーミスタや温度センサは温度検知手段の一例であって、検知する温度や配置場所は本実施形態に限らない。また、これ以外の温度検知手段を備えていてもよい。
【0034】
さらに、燃料電池装置100には、各種機器の動作を制御する制御装置30が設けられているほか、燃料電池モジュール1にて発電された直流電力を交流電力に変換し、変換された電気の外部負荷への供給量を調整するための供給電力調整部(パワーコンディショナ)40、筐体50内に換気用の空気を取り入れる換気ファン17を備えている。
【0035】
制御装置30は、燃料電池装置100を構成する補機や各種センサに接続されており、各種センサが検知する値や図示しないリモコンからの指示に基づいて燃料電池装置100の動作を制御する。
【0036】
図2は、本実施形態の制御装置の一例を示すブロック図である。熱電対は、温度差によって生じる起電力を測定して温度を計測する温度センサであり、本実施形態では、中心部温度センサTC1および燃焼部温度センサTC2は熱電対から構成されている。熱電対を用いて正確な温度を測定するためには、冷接点の温度を補償する回路が必要となるため、制御装置30は接点温度補償回路31を備えている。図に示すように、接点温度補償回路31には、中心部温度センサTC1と、燃焼部温度センサTC2と、基準温度検知手段18が接続されている。
【0037】
基準温度検知手段18は、温度補償のための基準温度を検知するサーミスタである。制御装置30は、この基準温度検知手段18が検知した温度を接点温度補償以外にも利用して、他のサーミスタで検知される温度の代替値として燃料電池装置100の動作を制御する。
【0038】
燃料電池装置100を適切に制御するためには、様々な温度情報を必要とするため、装置内の各所に温度検知手段が設けられている。前述のサーミスタTH1~TH6はその一例である。基準温度検知手段18が検知する温度を他のサーミスタの代替値として利用することで、サーミスタの数を減らすことができる。
【0039】
例えば、基準温度検知手段18を、外気温を検知する外気温センサの代替として利用してもよい。外気温は、発電運転を行うにあたり必要な温度の一つであり、凍結防止運転の要否を判断する際などに用いられる。基準温度検知手段18は、燃料電池装置100内の任意の位置に設けることができるが、発電運転によって発生する熱の影響を受けにくい位置に配置することで、基準温度検知手段18に外気温との相関関係を持つ温度を検知させることができる。これにより、外気温センサを廃止することができる。
【0040】
以下、基準温度検知手段18を外気温の代替値として利用する例について説明する。
【0041】
(凍結防止運転制御)
外気温が低く、燃料電池装置100内の水が凍結するおそれがあると予測される場合には、凍結防止運転を実行する。制御装置30は、凍結防止運転が必要と判断すると、加熱ヒータ8に通電することによって蓄熱タンク3内の水の温度を上昇させるとともに、熱媒ポンプP1、与熱ポンプP2、を駆動して第1熱媒循環ラインHC1と第2熱媒循環ラインHC2内の水を流動させる。加熱ヒータ8は、水の温度に応じてON/OFFを制御してもよく、例えば、熱媒低サーミスタTH3が検知する温度が30℃以下の場合に通電し、40℃を超える場合に通電を停止することができる。また、水が流通する経路には、加熱ヒータ8の他にヒータを設けてもよい。
【0042】
この凍結防止運転の判断材料として、外気温が用いられる。例えば、外気温が4℃以下のときに凍結防止運転を実行し、外気温が6℃以上となったときに凍結防止運転を解除する。外気温と基準温度検知手段18の検知温度Tsとの関係から、外気温4℃に相当する検知温度Tsが6℃、外気温6℃に相当する検知温度Tsが10℃である場合には、制御装置30はTsが6℃以下となったときに凍結防止運転を実行し、Tsが10℃以上となったときに凍結防止運転を解除する。
【0043】
(自立運転制御)
燃料電池装置100では、燃料電池モジュール1から排出される排ガスから凝縮水を回収し、この凝縮水を水蒸気改質に用いることで、いわゆる水自立運転が行われる。排ガスを第1熱交換器2に導入し、第1熱媒循環ラインHC1を流れる熱媒体と熱交換することで排ガスが冷却されると、排ガスに含まれる水蒸気が凝縮されて凝縮水が生成される。この凝縮水の回収量が消費量(水蒸気改質に利用される量)を上回る場合は水自立運転を継続することができるが、消費量が回収量を上回ると水自立運転を継続することができなくなってしまう。外気温が低ければ放熱器5を通過した際に熱媒体の温度が低下するので、排ガスとの熱交換を効率よく行うことができ、凝縮水を回収することができる。しかしながら、外気温が高くなると熱媒体の温度が低下せず排ガスの冷却効率が低下するため、凝縮水の回収量が低減することとなる。このように、凝縮水の回収量には外気温が大きく影響している。
【0044】
そこで制御装置30は、凝縮水の量が下限水位以下を検知したとき、外気温が所定温度以上のときには、凝縮水の回収量の回復が見込めないため発電運転を継続することができないと判断し、発電運転を停止する。所定温度としては40℃を設定することができる。外気温と基準温度検知手段18の検知温度Tsとの関係から、外気温40℃に相当する検知温度Tsが50℃である場合には、制御装置30は凝縮水の量が下限水位以下で、かつ検知温度Tsが50℃以上のときには発電運転を停止する。
【0045】
(水張り判定制御)
燃料電池11の発電を開始する前に、蓄熱タンク3に水を張る「水張り」を行う。外気温が低い場合に水張りを実行してしまうと、燃料電池装置100内部の配管で凍結が発生することが考えられるため、制御装置30は水張りを行う前に、水張りが実行可能かどうかを判断する水張り判定を行う。
【0046】
水張判り判定では、外気温に基づいて凍結の可能性があるかを判断する。例えば、外気温が5℃以上のときは水張りを実行し、外気温が2℃未満のときは水張りを実行しない。そして外気温が2℃以上5℃未満のときは、他のサーミスタが検知する温度に基づき水張りの実行が可能かを判断する。外気温と基準温度検知手段18の検知温度Tsとの関係から、外気温5℃に相当する検知温度Tsが7℃、外気温2℃に相当する検知温度Tsが4℃である場合には、制御装置30は検知温度Tsが7℃以上のときは水張りを実行し、検知温度Tsが4℃未満のときは水張りを実行しない。そして、検知温度Tsが4℃以上7℃未満のときは、他のサーミスタが検知する温度に基づき水張りの実行が可能かを判断する。
【0047】
燃料電池装置100は、上記以外にも外気温に基づいて実行される制御を備えていてもよい。また、上記制御は一例であって、具体的な動作や数値等は本実施形態に限るものではない。
【0048】
次に、燃料電池装置の詳細構造について説明する。図3は、本実施形態の燃料電池装置の筐体の分解図である。なお、図3においては、筐体50内に収められている燃料電池モジュール1および補機等は省略している。
【0049】
燃料電池装置100の筐体50は、直方体形状であって、ベースパネル51と、上面パネル52と、複数の側面パネル53~56を備えている。側面パネルは、左側面パネル53、右側面パネル54、正面パネル55、背面パネル56を備えており、各パネル51~56は、板金部材を折り曲げ加工して成型される。
【0050】
燃料電池装置100には、メンテナンスを行うメンテナンス面があらかじめ設定されている。例えば、上面パネル52と、複数の側面パネル53~56の一部をメンテナンス時に取り外されるメンテナンスパネルに設定することができる。なお、本実施形態においては、上面パネル52、右側面パネル54、正面パネル55の3つのパネルがメンテナンスパネルになっている。
【0051】
右側面パネル54は、分割可能な上下2つのパネルから構成されている。右側面パネル54は、上部パネル541と下部パネル542から構成されている。上部パネル541は、開閉可能なカバー部541aを備えていて、このカバー部541aを外すと燃料電池装置100の電源スイッチやブレーカスイッチを操作することができるようになっている。そして、メンテナンスの際には下部パネル542は取り付けたまま、上部パネル541だけを取り外すことができるようになっている。メンテナンス時に取り外しのできるパネルは、上述の上部パネル541に限らず、他のパネルも取り外しできるように設計することができる。また、下部パネル542には、継手が取り付けられる開口が複数設けられており、燃料や水等の配管が継手を介して接続される。
【0052】
背面パネル56には、換気用空気の吸気口60と、放熱器5に導入される冷却用空気の吸気口61が設けられている。また、正面パネル55には、換気用空気の排気口62と、放熱器5を通過した冷却用空気の排気口63が設けられている。
【0053】
図4は、本実施形態の燃料電池装置における内部構成を説明する配置概要図である。筐体50を構成するパネルを破線で表し、筐体50内を透視した状態を示している。筐体50内のほぼ中央部分には燃料電池11を収容した燃料電池モジュール1が配置されていて、この燃料電池モジュール1と左側面パネル53の間に蓄熱タンク3、燃料電池モジュール1の下方に放熱器5、燃料電池モジュール1と右側面パネル54の間に制御基板32が配置されている。なお、その他の補機やこれらを接続する配管および配線等は図示を一部省略しているが、これらは筐体50内の空きスペースに配設されている。
【0054】
制御基板32は、マイコンなどの電子部品が実装されて制御装置30を構成しており、基準温度検知手段18は制御基板32に取り付けられている。そして制御基板32は、基準温度検知手段18が実装されている実装面を燃料電池モジュール1とは反対側に向けて配置されている。これにより、燃料電池モジュール1から発せられる熱が、基準温度検知手段18の検知する温度に与える影響を緩和されるので、基準温度検知手段18の検知する温度と外気温との相関関係を維持することができる。
【0055】
また、制御基板32は支持台33に載置されており、基準温度検知手段18は燃料電池モジュール1との間に隔壁となる支持台33を挟んで配置されている。このように、隔壁を設けることによっても、燃料電池モジュール1から発せられる熱が基準温度検知手段18の検知する温度に与える影響を緩和することができる。
【0056】
基準温度検知手段18は、右側面パネル54に対向して設けられている。右側面パネル54には、筐体50内を換気または冷却するための吸気口60、61および排気口62、63のいずれも設けられていないため、右側面パネル54の近傍は空気流や筐体50内にこもる熱等の影響を受けにくくなっている。よって、基準温度検知手段18の検知する温度が、吸気および排気の影響を受けることが抑制されて外気温との相関関係を維持することができる。本実施形態では、基準温度検知手段18を右側面パネル54に対向して設けた例を示したが、吸気口および排気口が設けられていないパネルは右側面パネル54に限らないから、左側面パネル53または、上面パネル52に対向して設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 燃料電池モジュール
11 燃料電池
18 基準温度検知手段
30 制御装置
32 制御基板
33 支持台(隔壁)
54 右側面パネル(第1のパネル)
60 吸気口
61 吸気口
62 排気口
63 排気口
TC1 中心部温度センサ(熱電対)
TC2 燃焼部温度センサ(熱電対)
図1
図2
図3
図4