(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043856
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電動式の鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62M 7/02 20060101AFI20240326BHJP
B62J 50/30 20200101ALI20240326BHJP
【FI】
B62M7/02 Z
B62J50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149063
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】宮代 幣彦
(57)【要約】
【課題】電気部品を収納するケースの内圧上昇及びケース内への浸水を抑制できる電動式の鞍乗型車両の提供。
【解決手段】電動式の鞍乗型車両は、電気部品と、ケースと、ブリーザホースと、キャップとを備える。ケースは、電気部品を収納する。ブリーザホースは、ケースに接続される第1端部と、第1端部と反対側の第2端部とを有する。キャップは、透湿防水性を有し、ブリーザホースの第2端部に装着される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品と、
前記電気部品を収納するケースと、
前記ケースに接続される第1端部と、前記第1端部と反対側の第2端部とを有するブリーザホースと、
前記ブリーザホースの前記第2端部に装着され、透湿防水性を有するキャップと、
を備える、電動式の鞍乗型車両。
【請求項2】
前記ブリーザホースの前記第2端部は、前記ケースよりも上方に配置されている、
請求項1に記載の電動式の鞍乗型車両。
【請求項3】
運転者が着座するシートをさらに備え、
前記ブリーザホースの前記第2端部は、前記シートの下端よりも上方に配置されている、
請求項1又は2に記載の電動式の鞍乗型車両。
【請求項4】
前輪をさらに備え、
前記ブリーザホースの前記第2端部は、前記前輪よりも上方に配置されている、
請求項1又は2に記載の電動式の鞍乗型車両。
【請求項5】
後輪をさらに備え、
前記ブリーザホースの前記第2端部は、前記後輪よりも上方に配置されている、
請求項1又は2に記載の電動式の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記電気部品は、電動モータと、減速機とを含むパワーユニットである、
請求項1又は2に記載の電動式の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記ケースは、防水性を有する、
請求項1又は2に記載の電動式の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記キャップは、
貫通孔を有し、前記ブリーザホースの前記第2端部に装着されるパイプと、
前記パイプの前記貫通孔を塞ぐ透湿防水性シートと、
前記パイプに固定され透湿防水性シートの少なくとも一部を覆う蓋部と、
を含む、
請求項1又は2に記載の電動式の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式の鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリを収納するケースと、ケースに空気を取り入れる吸入管と、ケース内のガスを排出する排出管とを備える電動式の鞍乗型車両が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている電動式の鞍乗型車両では、例えば、吸入管の開口部付近まで水没した場合に、吸入管の開口部からケースに水が入り込むおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、電気部品を収納するケースの内圧上昇及びケース内への浸水を抑制できる電動式の鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電動式の鞍乗型車両は、電気部品と、ケースと、ブリーザホースと、キャップとを備える。ケースは、電気部品を収納する。ブリーザホースは、ケースに接続される第1端部と、第1端部と反対側の第2端部とを有する。キャップは、透湿防水性を有し、ブリーザホースの第2端部に装着される。
【0007】
本態様に係る電動式の鞍乗型車両では、透湿防水性を有するキャップがブリーザホースに装着されるので、ブリーザホースによってケースの内圧上昇を抑制できるとともに、ブリーザホースからケース内に水が入り込むことを抑制できる。
【0008】
ブリーザホースの第2端部は、ケースよりも上方に配置されてもよい。この場合は、ケースが水没した場合や、高圧洗車の際に、キャップが被水することを抑制できるので、ブリーザホースの第2端部からケースに水が入り込むことを抑制できる。また、走行時にキャップが泥水に浸かることを抑制できるので、キャップの透水性が損なわれることを抑制できる。
【0009】
電動式の鞍乗型車両は、運転者が着座するシートをさらに備えてもよい。ブリーザホースの第2端部は、シートの下端よりも上方に配置されてもよい。この場合は、ケースが水没した場合や、高圧洗車の際に、キャップが被水することを抑制できるので、ブリーザホースの第2端部からケースに水が入り込むことを抑制できる。また、走行時にキャップが泥水に浸かることを抑制できるので、キャップの透水性が損なわれることを抑制できる。
【0010】
電動式の鞍乗型車両は、前輪をさらに備えてもよい。ブリーザホースの第2端部は、前輪よりも上方に配置されてもよい。この場合は、ケースが水没した場合や、高圧洗車の際に、キャップが被水することを抑制できるので、ブリーザホースの第2端部からケースに水が入り込むことを抑制できる。また、走行時にキャップが泥水に浸かることを抑制できるので、キャップの透水性が損なわれることを抑制できる。
【0011】
電動式の鞍乗型車両は、後輪をさらに備えてもよい。ブリーザホースの第2端部は、後前輪よりも上方に配置されてもよい。この場合は、ケースが水没した場合や、高圧洗車の際に、キャップが被水することを抑制できるので、ブリーザホースの第2端部からケースに水が入り込むことを抑制できる。また、走行時にキャップが泥水に浸かることを抑制できるので、キャップの透水性が損なわれることを抑制できる。
【0012】
電気部品は、モータと、減速機とを含むパワーユニットであってもよい。この場合は、高電圧部品が収納されるケースにおいて内圧上昇を抑制できるとともに、高電圧部品が浸水することを抑制できる。
【0013】
ケースは、防水性を有してもよい。この場合は、ケースに水が入り込むことを抑制できる。
【0014】
キャップは、貫通孔を有し、ブリーザホースの第2端部に装着されるパイプと、パイプの貫通孔を塞ぐ透湿防水性シートと、パイプに固定され透湿防水性シートの少なくとも一部を覆う蓋部と、を含んでもよい。この場合は、簡単な構成で、電気部品を収納するケースの内圧上昇及びケース内への浸水を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電動式の鞍乗型車両において、電気部品を収納するケースの内圧上昇及びケース内への浸水を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】キャップ周辺の断面を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施形態に係る電動式の鞍乗型車両について説明する。
図1に示すように、鞍乗型車両1は、オフロード型の鞍乗型車両である。なお、以下の説明において、「前後」、「上下」、「左右」等の方向を示す用語は、鞍乗型車両を運転する時のライダーから見た方向を基準として説明する。例えば、本実施形態では、左右方向は、鞍乗型車両の車幅方向と一致する。
【0018】
鞍乗型車両1は、車体フレーム2と、ステアリング装置3と、シート4と、前輪5と、後輪6と、パワーユニット7と、バッテリ8と、モータ制御ユニット9とを備えている。
【0019】
車体フレーム2は、ヘッドパイプ11と、メインフレーム12とを含む。ヘッドパイプ11は、車両側面視で上端から下端に向かって前方かつ下方に延びている。ヘッドパイプ11は、車幅方向における車両中央に配置されている。メインフレーム12は、ヘッドパイプ11に接続されている。メインフレーム12は、ヘッドパイプ11から後方に延びている。
【0020】
ステアリング装置3は、ヘッドパイプ11に回転可能に支持されている。ステアリング装置3は、前輪5を回転可能に支持している。ステアリング装置3は、ステアリングシャフト15と、ハンドル部材16と、フロントフォーク17とを含む。ステアリングシャフト15は、ヘッドパイプ11に挿入されている。ハンドル部材16は、ヘッドパイプ11よりも上方に配置され、ステアリングシャフト15に接続されている。フロントフォーク17は、ステアリングシャフト15に接続されている。フロントフォーク17は、前輪5を回転可能に支持している。
【0021】
シート4は、ヘッドパイプ11の後方かつメインフレーム12の上方に配置されている。前輪5は、フロントフォーク17に回転可能に支持されている。後輪6は、スイングアーム18を介して、メインフレーム12に回転可能に支持されている。後輪6は、パワーユニット7からの駆動力によって回転する。
【0022】
パワーユニット7は、電気部品の一例である。パワーユニット7は、車体フレーム2に取り付けられている。パワーユニット7は、例えば、チェーンを介して、後輪6を駆動する。パワーユニット7は、電動モータ20と、減速機21とを含む。電動モータ20は、電気部品の一例である。電動モータ20は、バッテリ8から供給される電力によって駆動される。減速機21は、電動モータ20の回転を減速させる。
【0023】
バッテリ8は、パワーユニット7の上方に配置されている。バッテリ8は、電動モータ20に電力を供給する。バッテリ8は、パワーユニット7の上方に配置されるバッテリケース24に収納されている。
【0024】
モータ制御ユニット9は、車体フレーム2に取り付けられている。モータ制御ユニット9は、電動モータ20に電気的に接続され、電動モータ20を制御する。モータ制御ユニット9は、例えば、プロセッサやメモリなどを含む図示しない回路基板を含む。
【0025】
鞍乗型車両1は、第1ケース26と、第2ケース28と、ブリーザホース30と、キャップ40とをさらに備えている。
【0026】
第1ケース26は、電動モータ20及び減速機21を収納する。第1ケース26は、防水性を有している。第2ケース28は、モータ制御ユニット9を収納する。第2ケース28は、防水性を有している。第2ケース28は、第1ケース26の前方に配置されている。なお、第1ケース26及び第2ケース28のそれぞれは、ケースの一例である。
【0027】
ブリーザホース30は、管形状を有している。ブリーザホース30は、車両側面視で略上下方向に延びている。ブリーザホース30は、第1ケース22に接続されている。ブリーザホース30は、第1ケース22の上部からヘッドパイプ11に向かって延びている。ブリーザホース30の少なくとも一部は、バッテリケース24よりも前方に配置されている。ブリーザホース30は、ホースクランプなどを介して例えば車体フレーム2に支持されている。
【0028】
ブリーザホース30は、第1端部30aと、第2端部30bとを含む。第1端部30aは、第1ケース22に接続されている。第2端部30bは、第1端部30aと反対側の端部である。第2端部30bは、第1端部30aよりも上方に配置されている。第2端部30bは、第1端部30aよりも前方に配置されている。
【0029】
第2端部30bは、ヘッドパイプ11よりも後方かつシート4よりも前方に配置されている。第2端部30bは、第1ケース22よりも上方に配置されている。第2端部30bは、バッテリケース24よりも上方に配置されている。第2端部30bは、第2ケース28よりも上方に配置されている。第2端部30bは、シート4の下端4aよりも上方に配置されている。第2端部30bは、前輪5よりも上方に配置されている。第2端部30bは、後輪6よりも上方に配置されている。
【0030】
キャップ40は、透湿防水性を有している。キャップ40は、ブリーザホース30の第2端部30bに装着されている。キャップ40は、車両平面視でステアリング装置3と重なる。キャップ40は、ステアリング装置3よりも後方に配置されてもよいし、ハンドリバーよりも後方に配置されてもよい。
【0031】
キャップ40は、ヘッドパイプ11よりも後方かつシート4よりも前方に配置されている。キャップ40は、第1ケース22よりも上方に配置されている。キャップ40は、バッテリケース24よりも上方に配置されている。キャップ40は、シート4の下端4aよりも上方に配置されている。キャップ40は、前輪5よりも上方に配置されている。キャップ40は、後輪6よりも上方に配置されている。
【0032】
図3に示すように、キャップ40は、パイプ41と、透湿防水性シート42と、蓋部43と、通気口44を含む。パイプ41は、管形状を有しており、例えば樹脂材で形成されている。パイプ41は、ブリーザホース30の第2端部30bに装着されている。パイプ41は、貫通孔41aと、固定部41bとを含む。貫通孔41aは、パイプ41の一端に形成されており、固定部41bは、パイプ41の他端に形成されている。貫通孔41aは、上方に向けて開口している。固定部41bの外径は、貫通孔41aの内径よりも小さい。固定部41bの外径は、ブリーザホース30の第2端部30bの内径よりも小さい。固定部41bは、ブリーザホース30の第2端部30bの内周部に挿入され、バンド部材45によってブリーザホース30に固定されている。なお、ブリーザホース30の第2端部30bが固定部41bの内周部に挿入されて固定されるような構成であってもよい。
【0033】
透湿防水性シート42は、パイプ41の貫通孔41aを塞ぐ。透湿防水性シート42は、透湿性と、防水性とを兼ね備えている。透湿防水性シート42は、例えば、微小な細孔が多数形成されたフィルム状の部材である。
【0034】
蓋部43は、例えば樹脂材で形成されている。蓋部43は、パイプ41の一端に固定されている。蓋部43は、パイプ41の一端の外周面41cを覆う。蓋部43は、パイプ41の外周面41cに固定されている。
図3に示すように、パイプ41の外周面41cに対向する蓋部43の内周面43aの一部は、パイプ41の外周面41cから離れている。蓋部43は、透湿防水性シート42の少なくとも一部を覆う。本実施形態では、蓋部43は、透湿防水性シート42の全体を覆う。蓋部43と透湿防水性シート42との間には、隙間が設けられている。
【0035】
通気口44は、パイプ41の外周面41cと蓋部43の内周面43aとの間に形成される隙間によって構成されている。通気口44は、キャップ40の内部とキャップ40の外部とを連通する。
【0036】
鞍乗型車両1は、ブリーザホース50と、キャップ60とをさらに備えている。ブリーザホース50は、第2ケース28に接続されている。ブリーザホース50は、第1端部50aと、第2端部50bとを含む。ブリーザホース50は、第2ケース28に接続されることを除いて、ブリーザホース30と同様の構成であるため、ブリーザホース50の詳細な説明は省略する。
【0037】
キャップ60は、ブリーザホース30の第2端部30bに装着されている。キャップ60は、キャップ40と左右方向に並んでいる。キャップ60は、ブリーザホース30の第2端部30bに装着されることを除いて、キャップ40と同様の構成であるため、キャップ60の詳細な説明は省略する。
【0038】
本態様に係る鞍乗型車両1では、透湿防水性を有するキャップ40がブリーザホース30に装着されるので、高電圧部品であるモータ制御ユニット9が格納される第1ケース22の内圧上昇をブリーザホース30によって抑制できるとともに、ブリーザホース30から第1ケース22内に水が入り込むことを抑制できる。
【0039】
ブリーザホース30の第2端部30bは、第1ケース22、シート4の下端4a、前輪5及び後輪6よりも上方に配置されているので、第1ケース22が水没した場合や、高圧洗車の際に、キャップ40が被水することを抑制できる。これにより、ブリーザホース30の第2端部30bから第1ケース22に水が入り込むことを抑制できる。また、走行時おいて、キャップ40が泥水に浸かることを抑制できるので、キャップ40の透湿防水性シート42が泥水で目詰まりして、キャップ40の透水性が損なわれることを抑制できる。
【0040】
なお、ブリーザホース50に装着されるキャップ60によっても第2ケース28の内圧上昇を抑制できるともに、ブリーザホース50の第2端部50bから第2ケース28に水が入り込むことを抑制できる。また、走行時において、キャップ60が泥水に浸かることを抑制できる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
前記実施形態において、ブリーザホース30,50及びキャップ40,60のうち、ブリーザホース30及びキャップ40が省略されてもよいし、ブリーザホース30,50及びキャップ40,60のうち、ブリーザホース50及びキャップ60が省略されてもよいし。
【0043】
バッテリケース24にブリーザホース30とキャップ40に相当する構成を設けてもよい。この場合、バッテリ8は、電気部品の一例である。
【0044】
ブリーザホース30の第2端部30bの配置は、変更されてもよい。ブリーザホース30の第2端部30bは、上下方向において、第1ケース26と同程度の高さに配置されてもよい。ブリーザホース30の第2端部30bは、シート4の下端4aよりも下方に配置されてもよい。ブリーザホース50の第2端部50bについて、同様に配置が変更されてもよい。
【0045】
キャップ40,60の形状は変更されてもよい。蓋部43は、省略されてもよい。通気口44の形状や配置は、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 鞍乗型車両
4 シート
5 前輪
6 後輪
7 パワーユニット
20 電動モータ
21 減速機
26 第1ケース(ケースの一例)
28 第2ケース(ケースの一例)
30,50 ブリーザホース
30a,50a 第1端部
30b,50b 第2端部
40,60 キャップ
41 パイプ
41a 貫通孔
42 透湿防水シート
43 蓋部