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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043886
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】タービン静翼及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
F01D9/02 102
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149115
(22)【出願日】2022-09-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮久 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】松尾 咲生
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】石山 渓也
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202GA08
3G202GB01
3G202JJ03
3G202JJ15
3G202JJ16
3G202JJ17
3G202JJ22
(57)【要約】
【課題】タービン静翼における冷却空気量を適切化する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン静翼は、翼形部の内部空間を仕切る第1隔壁及び第2隔壁と、翼形部を構成する翼壁を貫通する複数の貫通孔とを備える。第1隔壁は、翼形部の圧力面側の翼壁から翼形部の負圧面側の翼壁まで延在し、最も前縁に近い位置に設けられている。第2隔壁は、翼形部の前縁側の翼壁から第1隔壁まで延在して、内部空間を圧力面側前縁キャビティと負圧面側前縁キャビティとに隔てる。翼形部の翼高さ方向から見たときに、第1仮想直線と翼壁の延在方向との交差角度の内第1仮想直線に対して前縁側では、鈍角であり、後縁側では、鋭角である。貫通孔は、圧力面側前縁キャビティに開口する圧力面側貫通孔と、負圧面側前縁キャビティに開口する負圧面側貫通孔とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼形部の内部空間を仕切る第1隔壁及び第2隔壁と、
前記翼形部を構成する翼壁を貫通する複数の貫通孔と、
を備え、
前記第1隔壁は、前記翼形部の圧力面側の翼壁との接続位置である圧力面側接続位置から前記翼形部の負圧面側の翼壁との接続位置である負圧面側接続位置まで延在する隔壁であって、最も前記翼形部の前縁に近い位置に設けられており、
前記第2隔壁は、前記翼形部の前縁側の翼壁との接続位置である前縁側接続位置から前記第1隔壁との接続位置である後縁側接続位置まで延在して、前記内部空間を圧力面側前縁キャビティと負圧面側前縁キャビティとに隔て、
前記翼形部の翼高さ方向から見たときに、前記圧力面側接続位置と前記負圧面側接続位置とを通過する第1仮想直線と、前記負圧面側接続位置における前記翼壁の延在方向との交差角度の内、前記第1仮想直線に対して前記前縁側での交差角度は、鈍角であり、前記第1仮想直線に対して前記翼形部の後縁側での交差角度は、鋭角であり、
前記貫通孔は、前記圧力面側前縁キャビティに開口する圧力面側貫通孔と、前記負圧面側前縁キャビティに開口する負圧面側貫通孔と、を含む、
タービン静翼。
【請求項2】
前記翼高さ方向から見たときに、前記前縁側接続位置と前記後縁側接続位置とを通過する第2仮想直線と、前記前縁側接続位置における前記翼壁の延在方向との交差角度は、80度以上100度以下である、
請求項1に記載のタービン静翼。
【請求項3】
前記翼高さ方向から見たときに、前記前縁側接続位置と前記後縁側接続位置とを通過する第2仮想直線と、前記圧力面側接続位置と前記後縁側接続位置とを通過する第3仮想直線との交差角度の内、前記第2仮想直線に対して前記圧力面側、且つ、前記第3仮想直線に対して前記前縁側での交差角度は、80度以上100度以下である、
請求項1又は2に記載のタービン静翼。
【請求項4】
前記後縁側接続位置から前記後縁側に向かって延在し、前記内部空間を仕切る第3隔壁、
を備える、
請求項1又は2に記載のタービン静翼。
【請求項5】
前記翼高さ方向から見たときに、前記後縁側接続位置と前記第3隔壁の前記後縁側の端部とを結ぶ第4仮想直線と、前記第1仮想直線との交差角度の内、前記第4仮想直線に対して前記圧力面側、且つ、前記第1仮想直線に対して前記後縁側での交差角度は、鋭角であり、前記第4仮想直線に対して前記負圧面側、且つ、前記第1仮想直線に対して前記後縁側での交差角度は、鈍角である、
請求項4に記載のタービン静翼。
【請求項6】
前記翼高さ方向から見たときに、前記圧力面側接続位置における前記翼壁の延在方向と直交する方向に延在する第5仮想直線と前記負圧面側の翼壁との交点と、前記負圧面側接続位置との間に位置する前記負圧面側の翼壁の内壁面には、前記貫通孔の開口は、存在しない、
請求項1又は2に記載のタービン静翼。
【請求項7】
前記負圧面側前縁キャビティは、前記第1隔壁と前記第2隔壁と前記負圧面側の翼壁とによって囲まれた前記内部空間であり、
前記負圧面側貫通孔は、前記翼高さ方向に間隔を空けて配置された貫通孔列を形成し、
前記貫通孔列の列数は、2列である、
請求項1又は2に記載のタービン静翼。
【請求項8】
前記2列の前記貫通孔列の内、前記後縁側に近い方の前記貫通孔列は、前記翼高さ方向から見たときに前記第1仮想直線と交差する、
請求項7に記載のタービン静翼。
【請求項9】
前記第1隔壁は、前記翼高さ方向から見たときに前記第1仮想直線に沿って直線状に形成されている、
請求項1又は2に記載のタービン静翼。
【請求項10】
前記第1隔壁は、前記翼高さ方向から見たときに前記後縁側接続位置において屈曲しており、
前記後縁側接続位置は、前記第1仮想直線よりも前記後縁側に位置する、
請求項1又は2に記載のタービン静翼。
【請求項11】
前記第1隔壁は、前記翼高さ方向から見たときに前記圧力面側接続位置から前記後縁側接続位置まで延在する圧力面側領域と、前記翼高さ方向から見たときに前記後縁側接続位置よりも前記前縁側の位置で前記第2隔壁に接続される接続位置から前記負圧面側接続位置まで延在する負圧面側領域と、を含む、
請求項1又は2に記載のタービン静翼。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のタービン静翼を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン静翼及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンのタービン静翼として、翼壁の貫通孔であるフィルム冷却孔を介して翼形部の内部空間から噴出される冷却空気で翼壁をフィルム冷却するように構成されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-140602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タービン静翼の前縁側の翼壁において、翼壁に作用する作動流体の圧力は、圧力面側と負圧面側とで大きく異なる。そのため、例えば特許文献1に記載のタービン静翼のように、前縁側の同じキャビティ内の冷却空気を圧力面側の翼壁に設けたフィルム冷却孔及び負圧面側の翼壁に設けたフィルム冷却孔から噴き出させると、負圧面側の翼壁に設けたフィルム冷却孔からの冷却空気の流量が過剰となる。その結果、ガスタービンの効率を低下させるおそれがある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、タービン静翼における冷却空気量を適切化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン静翼は、
翼形部の内部空間を仕切る第1隔壁及び第2隔壁と、
前記翼形部を構成する翼壁を貫通する複数の貫通孔と、
を備え、
前記第1隔壁は、前記翼形部の圧力面側の翼壁との接続位置である圧力面側接続位置から前記翼形部の負圧面側の翼壁との接続位置である負圧面側接続位置まで延在する隔壁であって、最も前記翼形部の前縁に近い位置に設けられており、
前記第2隔壁は、前記翼形部の前縁側の翼壁との接続位置である前縁側接続位置から前記第1隔壁との接続位置である後縁側接続位置まで延在して、前記内部空間を圧力面側前縁キャビティと負圧面側前縁キャビティとに隔て、
前記翼形部の翼高さ方向から見たときに、前記圧力面側接続位置と前記負圧面側接続位置とを通過する第1仮想直線と、前記負圧面側接続位置における前記翼壁の延在方向との交差角度の内、前記第1仮想直線に対して前記前縁側での交差角度は、鈍角であり、前記第1仮想直線に対して前記翼形部の後縁側での交差角度は、鋭角であり、
前記貫通孔は、前記圧力面側前縁キャビティに開口する圧力面側貫通孔と、前記負圧面側前縁キャビティに開口する負圧面側貫通孔と、を含む。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
上記(1)の構成のタービン静翼を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、タービン静翼における冷却空気量を適切化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ガスタービンの全体構成を表す概略図である。
図2】タービンのガス流路を表す断面図である。
図3】一実施形態に係るタービン1段静翼の翼形部において翼高さ方向に直交する断面に表れる断面図である。
図4図3のA部の拡大図であり、冷却空気の流れについて説明するための図である。
図5図3のA部の拡大図であり、翼形部の内部の隔壁について説明するための図である。
図6】他の実施形態に係るタービン1段静翼の翼形部の内部の隔壁について説明するための図である。
図7】さらに他の実施形態に係るタービン1段静翼の翼形部の内部の隔壁について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
図1は、ガスタービンの全体構成を表す概略図であり、図2は、タービンのガス流路を表す断面図である。
【0012】
本実施形態において、図1に示すように、ガスタービン10は、圧縮機11と燃焼器12とタービン13がロータ14により同軸上に配置されて構成され、ロータ14の一端部に発電機15が連結されている。なお、以下の説明では、ロータ14の軸線が延びる方向を軸方向Daとし、ロータ14の軸線Axに対して垂直な方向を径方向Drとする。なお、径方向Drを翼高さ方向hと呼ぶ。
【0013】
圧縮機11は、空気取入口から取り込まれた空気AIが複数の静翼及び動翼を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気ACを生成する。燃焼器12は、この圧縮空気ACに対して所定の燃料FLを供給し、燃焼することで高温・高圧の燃焼ガスFGが生成される。タービン13は、作動流体である燃焼器12で生成された高温・高圧の燃焼ガスFGが複数の静翼及び動翼を通過することでロータ14を駆動回転し、このロータ14に連結された発電機15を駆動する。
【0014】
また、図2に示すように、タービン13にて、タービン静翼(静翼)21は、翼形部23のハブ側(径方向Dr内側)が内側シュラウド25に固定され、先端側(径方向Dr外側)が外側シュラウド27に固定されて構成されている。タービン動翼(動翼)41は、翼形部43の基端部がプラットフォーム45に固定されて構成されている。そして、外側シュラウド27と動翼41の先端部側に配置される分割環51とが遮熱環53を介して車室(タービン車室)30に支持され、内側シュラウド25がサポートリング31に支持されている。そのため、燃焼ガスFGが通過する燃焼ガス流路32は、内側シュラウド25と、外側シュラウド27と、プラットフォーム45と、分割環51により囲まれた空間として軸方向Daに沿って形成される。
以下、軸方向Daに複数段配置されているタービン静翼21の内の軸方向Daの最も上流側に配置されたタービン1段静翼21Aについて、詳述する。
【0015】
図3は、一実施形態に係るタービン1段静翼21Aの翼形部23において翼高さ方向に直交する断面に表れる断面図である。
図4は、図3のA部の拡大図であり、冷却空気の流れについて説明するための図である。
図5は、図3のA部の拡大図であり、翼形部23の内部の隔壁について説明するための図である。
図6は、他の実施形態に係るタービン1段静翼21Aの翼形部23の内部の隔壁について説明するための図であり、図3のA部の拡大図に相当する図である。
図7は、さらに他の実施形態に係るタービン1段静翼21Aの翼形部23の内部の隔壁について説明するための図であり、図3のA部の拡大図に相当する図である。
なお、図3では、図示の便宜上、後述する貫通孔63及び後述するインサート部材80の冷却空気孔81の記載を省略している。
また、図3から図7では、図示の便宜上、一部又はすべてのインサート部材80の記載を省略している。
【0016】
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aは、翼形部23の内部に内部空間61が形成されている。幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aは、内部空間61を仕切る第1隔壁71、第2隔壁72、及び第3隔壁73と、翼形部23を構成する翼壁23Wを貫通する複数の貫通孔63と、を備える。
【0017】
(第1隔壁71)
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、図5から図7に示すように、第1隔壁71は、翼形部23の圧力面23P側の翼壁23Wとの接続位置である圧力面側接続位置Ppcから翼形部23の負圧面23S側の翼壁23Wとの接続位置である負圧面側接続位置Pscまで延在する隔壁であって、最も翼形部23の前縁23Lに近い位置に設けられている。
幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71は、圧力面23P側の翼壁23Wと接続される圧力面側端部71pと、負圧面23S側の翼壁23Wと接続される負圧面側端部71sとを有する。
【0018】
図3図4、及び図5に示す一実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71は、翼高さ方向hから見たときに、圧力面側接続位置Ppcと負圧面側接続位置Pscとを通過す第1仮想直線Lv1に沿って直線状に形成されている。
【0019】
図6に示す他の実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71は、翼高さ方向hから見たときに、第1隔壁71と第2隔壁72との接続位置である後縁側接続位置Ptcにおいて屈曲しており、後縁側接続位置Ptcは、第1仮想直線Lv1よりも後縁23T側に位置する。すなわち、図6に示す他の実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71は、後縁23T側に向かって凸となるように屈曲している。
【0020】
図7に示すさらに他の実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71は、翼高さ方向hから見たときに圧力面側接続位置Ppcから後縁側接続位置Ptcまで延在する圧力面側領域711と、翼高さ方向hから見たときに後縁側接続位置Ptcよりも前縁23L側の位置で第2隔壁72に接続される接続位置Pcから負圧面側接続位置Pscまで延在する負圧面側領域712と、を含んでいる。すなわち、図7に示す他の実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71は、段違いとなるように形成されている。
【0021】
幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、図5から図7に示すように、翼高さ方向hから見たときに、第1仮想直線Lv1と、負圧面側接続位置Pscにおける翼壁23Wの延在方向Dwsとの交差角度の内、第1仮想直線Lv1に対して前縁23L側での交差角度θ1は、鈍角であり、第1仮想直線Lv1に対して後縁23T側での交差角度θ2は、鋭角である。
なお、本願では、翼壁23Wの延在方向Dwsとは、翼高さ方向hから見たときの翼壁23Wの厚さの中心線Cにおける接線の延在方向であるものとする。例えば、第1仮想直線Lv1等の直線と、延在方向Dwsとが交差する場合、該直線と延在方向Dwsとの交差位置における延在方向Dwsの延在方向は、該交差位置における翼壁23Wの厚さの中心線Cの接線の延在方向である。
【0022】
(第2隔壁72)
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第2隔壁72は、前縁23L側の翼壁23Wとの接続位置である前縁側接続位置Plcから第1隔壁71との接続位置である後縁側接続位置Ptcまで延在して、内部空間61を圧力面側前縁キャビティ61LPと負圧面側前縁キャビティ61LSとに隔てる。
なお、図5から図7に示すように、翼高さ方向hから見たときに、前縁側接続位置Plcと後縁側接続位置Ptcとを通過する仮想的な直線を第2仮想直線Lv2とする。第2仮想直線Lv2と、前縁側接続位置Plcにおける翼壁23Wの延在方向Dwsとの交差角度θ3(又は交差角度θ4)がタービン静翼21における冷却空気量に与える影響について、後で詳述する。
【0023】
(第3隔壁73)
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第3隔壁73は、後縁側接続位置Ptcから後縁23T側に向かって延在し、内部空間61を仕切る隔壁である。第3隔壁73によって仕切られる内部空間61の内、第3隔壁73よりも圧力面23P側の内部空間61は、圧力面側キャビティ611であり、第3隔壁73よりも負圧面23S側の内部空間61は、負圧面側キャビティ612である。
幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第3隔壁73を備えることで、第1隔壁71の強度増に寄与する。
【0024】
(貫通孔63)
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、図4から図7に示すように、貫通孔63は、圧力面側前縁キャビティ61LPに開口する圧力面側貫通孔63Pと、負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sと、を含む。
【0025】
幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、圧力面側貫通孔63Pは、翼高さ方向hに間隔を空けて配置された貫通孔列63Lを形成しているとよい。圧力面側貫通孔63Pによって構成される貫通孔列63Lの列数は、2列以上であるとよい。図4から図7に示す例では、貫通孔列63Lの列数は、例えば7列である。
圧力面側貫通孔63Pによって構成される複数列の貫通孔列63Lの内、後縁23Tに最も近い方の貫通孔列63Lは、翼高さ方向hから見たときに第1仮想直線Lv1と交差するとよい。
【0026】
幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、負圧面側貫通孔63Sは、翼高さ方向hに間隔を空けて配置された貫通孔列63Lを形成しているとよい。負圧面側貫通孔63Sによって構成される貫通孔列63Lの列数は、2列であるとよい。
これにより、負圧面23S側の翼壁23Wの内、前縁23L近傍の領域の全体を比較的少ない冷却空気量で効率的にフィルム冷却できる。
【0027】
負圧面側接続位置Pscの近傍の翼壁23Wは、第1隔壁71が存在することで翼壁23Wの内壁面23Wsをインピンジメント冷却し難い構造となっている。
そこで、幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、負圧面側貫通孔63Sによって構成される2列の貫通孔列63Lの内、後縁23T側に近い方の貫通孔列63Lは、翼高さ方向hから見たときに第1仮想直線Lv1と交差するとよい。
これにより、インピンジメント冷却し難い負圧面側接続位置Pscの近傍の翼壁23Wを、上記の後縁23T側に近い方の貫通孔列63Lを構成する複数の貫通孔63を通過する冷却空気によって対流冷却できる。
【0028】
(インサート部材80)
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、周面に複数の冷却空気孔81が設けられた筒状のインサート部材80を備えている。幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、インサート部材80は、少なくとも圧力面側前縁キャビティ61LP、負圧面側前縁キャビティ61LS、圧力面側キャビティ611、及び負圧面側キャビティ612に挿入されている。
インサート部材80は、翼高さ方向から見たときの各キャビティ61LP、61LS、611、612の形状に合わせて、各キャビティ61LP、61LS、611、612の内周面に沿うように形成されている。
【0029】
各キャビティ61LP、61LS、611、612に挿入されたインサート部材80の複数の冷却空気孔81を介してインサート部材80の内側から外側に向かって図4の矢印aで示すように冷却空気を噴き出すことで各キャビティ61LP、61LS、611、612を画定する翼壁23Wをインピンジメント冷却することができる。
【0030】
各キャビティ61LP、61LS、611、612において翼壁23Wの内壁面をインピンジメント冷却した後の冷却空気は、図4の矢印bで示すように複数の貫通孔63から翼形部23の外部に噴き出されて翼形部23の外表面をフィルム冷却する。
【0031】
(タービン静翼21における冷却空気量の適切化について)
タービン静翼21の前縁23L側の翼壁23Wにおいて、翼壁23Wに作用する燃焼ガスFGの圧力は、圧力面23P側と負圧面23S側とで大きく異なる。そのため、例えば従来のタービン静翼のように、前縁側の同じキャビティ内の冷却空気を圧力面側の翼壁に設けたフィルム冷却孔(貫通孔)及び負圧面側の翼壁に設けたフィルム冷却孔(貫通孔)から噴き出させると、負圧面側の翼壁に設けたフィルム冷却孔(貫通孔)からの冷却空気の流量が過剰となる。その結果、ガスタービン10の効率を低下させるおそれがある。
【0032】
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、タービン1段静翼21Aにおいて第2隔壁72によって内部空間61を圧力面側前縁キャビティ61LPと負圧面側前縁キャビティ61LSとに隔てられるとともに、タービン1段静翼21Aは、圧力面側前縁キャビティ61LPに開口する圧力面側貫通孔63Pと、負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sとを備える。これにより、圧力面側貫通孔63Pから噴き出される冷却空気の空気量を確保しつつ、負圧面側貫通孔63Sから噴き出される冷却空気の空気量を抑制し易くなる。よって、タービン1段静翼21Aにおける冷却空気量を適切化し易くなる。
【0033】
また、図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71及び第2隔壁72は、圧力面側前縁キャビティ61LPと負圧面側前縁キャビティ61LSとを画定する。
【0034】
負圧面23S側の翼壁23Wに作用する燃焼ガスFGの圧力は、前縁23Lに比較的近い領域において、前縁23L側から後縁23T側に向かうにつれて比較的急激に低下する。そのため、負圧面側接続位置Pscが前縁23Lから比較的離れている場合、例えば同じ負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sを翼壁23Wの延在方向に離間して複数設けた場合、比較的後縁23Tに近い位置に設けられた負圧面側貫通孔63Sから噴き出される冷却空気の流量が過剰となりがちになる。そのため、負圧面側接続位置Pscを前縁23Lに近づけて負圧面側前縁キャビティ61LSの大きさを小さくすることで、同じ負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sを設けることができる範囲を前縁23L側に向かって狭めるとよい。
【0035】
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aによれば、翼高さ方向hから見たときに第1仮想直線Lv1と、負圧面側接続位置Pscにおける翼壁23Wの延在方向Dwsとの交差角度θ1、θ2を上述のように設定することで、負圧面側接続位置Pscが前縁23L側に近づいて負圧面側前縁キャビティ61LSの大きさが小さくなる。そのため、同じ負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sを設けることができる範囲を前縁23L側に向かって狭めることができ、負圧面側貫通孔63Sから噴き出される冷却空気の流量を適切化できる。
【0036】
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aを備えるガスタービン10では、タービン静翼21における冷却空気量を適切化して、ガスタービン10の効率を向上できる。
【0037】
(タービン静翼21における冷却空気量の適切化について)
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、図5から図7に示すように、翼高さ方向hから見たときに第2仮想直線Lv2と、前縁側接続位置Plcにおける翼壁23Wの延在方向Dwsとの交差角度θ3(又は交差角度θ4)は、80度以上100度以下であるとよい。その理由を以下で説明する。
【0038】
上述したようにインサート部材80は、翼高さ方向hから見たときの圧力面側前縁キャビティ61LP及び負圧面側前縁キャビティ61LSの形状に合わせて圧力面側前縁キャビティ61LP及び負圧面側前縁キャビティ61LSの内周面に沿うように形成される。
したがって、圧力面側前縁キャビティ61LPを画定する壁面である翼壁23Wの内壁面23Wsと第2隔壁72の圧力面23P側の壁面72Psとにおいて(図5参照)、この2つの壁面がなす角度θ5が小さくなるほど、翼壁23Wの内壁面23Wsに沿ったインサート部材80の壁部と、第2隔壁72の圧力面23P側の壁面72Psに沿ったインサート部材80の壁部とがなす角度も小さくなる。そのため、翼壁23Wの内壁面23Wsに沿ったインサート部材80の壁部における冷却空気孔81の位置を前縁23Lに近づけることが難しくなり、翼壁23Wの内壁面23Wsの内、前縁23Lに近い領域をインピンジメント冷却し難くなる。
【0039】
また、翼壁23Wの内壁面23Wsに沿ったインサート部材80の壁部から第2隔壁72の圧力面23P側の壁面72Psに沿ったインサート部材80の壁部に至る曲げ部R(図4参照)にはある程度大きさの曲率半径を持たせることになる。したがって、上述した角度θ5が小さくなるほど、曲げ部Rの位置が前縁23Lから離れてしまう。そのため、冷却空気孔81の位置を前縁23Lに近づけることが難しくなり、翼壁23Wの内壁面23Wsの内、前縁23Lに近い領域をインピンジメント冷却し難くなる。
よって、上述した角度θ5はある程度以上の大きさを有することが望ましい。
【0040】
同様に、負圧面側前縁キャビティ61LSを画定する壁面である翼壁23Wの内壁面23Wsと第2隔壁72の負圧面23S側の壁面72Ssとにおいて(図5参照)、この2つの壁面がなす角度θ6が小さくなるほど、翼壁23Wの内壁面23Wsに沿ったインサート部材80の壁部と、第2隔壁72の負圧面23S側の壁面72Ssに沿ったインサート部材80の壁部とがなす角度も小さくなる。そのため、翼壁23Wの内壁面23Wsに沿ったインサート部材80の壁部における冷却空気孔81の位置を前縁23Lに近づけることが難しくなり、翼壁23Wの内壁面23Wsの内、前縁23Lに近い領域をインピンジメント冷却し難くなる。
また、翼壁23Wの内壁面23Wsに沿ったインサート部材80の壁部から第2隔壁72の負圧面23S側の壁面72Ssに沿ったインサート部材80の壁部に至る曲げ部Rにはある程度大きさの曲率半径を持たせることになる。したがって、上述した角度θ6が小さくなるほど、曲げ部Rの位置が前縁23Lから離れてしまう。そのため、冷却空気孔81の位置を前縁23Lに近づけることが難しくなり、翼壁23Wの内壁面23Wsの内、前縁23Lに近い領域をインピンジメント冷却し難くなる。
よって、上述した角度θ6はある程度以上の大きさを有することが望ましい。
【0041】
しかし、上述した角度θ5と角度θ6とは、互いに補角の関係、すなわち角度θ5と角度θ6との和が180度となるため、角度θ5と角度θ6との内の一方を大きくすると他方が小さくなってしまう。したがって角度θ5と角度θ6とは同程度の大きさであるとよい。
【0042】
ここで、上述したように、図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aにおいて、交差角度θ3(又は交差角度θ4)を例えば80度以上100度以下とすれば、上述した角度θ5と角度θ6とを同程度の大きさにすることができるので、翼壁23Wの内壁面23Wsの内、前縁23Lに近い領域をインピンジメント冷却し易くなる。
【0043】
(交差角度θ7について)
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aにおいて、圧力面側接続位置Ppcと後縁側接続位置Ptcとを通過する仮想的な直線を第3仮想直線Lv3とする。
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、翼高さ方向hから見たときに、第2仮想直線Lv2と第3仮想直線Lv3との交差角度の内、第2仮想直線Lv2に対して圧力面23P側、且つ、第3仮想直線Lv3に対して前縁23L側での交差角度θ7(図5参照)は、80度以上100度以下であるとよい。
第2隔壁72の厚さ方向への倒れ等のような、第2隔壁72の変形は、交差角度θ7が90度に近くなるほど、第1隔壁71が効率的に抑制できるようになる。したがって、図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aによれば、第2隔壁72の厚さ方向への倒れ等のような、第2隔壁72の変形を抑制し易くなる。
【0044】
(交差角度θ8、θ9について)
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aにおいて、翼高さ方向hから見たときに、後縁側接続位置Ptcと第3隔壁73の後縁側の端部73T(図3参照)とを結ぶ第4仮想直線Lv4と、第1仮想直線Lv1との交差角度の内、第4仮想直線Lv4に対して圧力面23P側、且つ、第1仮想直線Lv1に対して後縁23T側での交差角度θ8(図5参照)は、鋭角であり、第4仮想直線Lv4に対して負圧面23S側、且つ、第1仮想直線Lv1に対して後縁23T側での交差角度θ9は、鈍角であるとよい。
これにより、第3隔壁73の延在方向が翼形部23のキャンバーラインCL(図3参照)に沿うようになるので、第3隔壁73で隔てられる圧力面23P側の内部空間61(圧力面側キャビティ611)と負圧面23S側の内部空間61(負圧面側キャビティ612)の双方の大きさを確保し易くなる。
【0045】
(第5仮想直線Lv5と貫通孔63の位置関係について)
図3から図7に示す幾つかの実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、図5から図7に示すように、翼高さ方向hから見たときに、圧力面側接続位置Ppcにおける翼壁23Wの延在方向Dwsと直交する方向に延在する第5仮想直線Lv5と負圧面23S側の翼壁23Wとの交点Pと、負圧面側接続位置Pscとの間に位置する負圧面23S側の翼壁23Wの内壁面23Wsには、貫通孔63の開口63iは、存在しないとよい。
これにより、比較的熱負荷の小さい領域をフィルム冷却する冷却空気量を削減でき、タービン静翼21における冷却空気量を適切化できる。
【0046】
(第1隔壁71の形状が及ぼす影響について)
内部空間には比較的高い圧力の冷却空気が供給されるため、翼形部には、圧力面側の翼壁と負圧面側の翼壁とが離間するように膨らむ現象が現れる。
上述したように、図3図4、及び図5に示す一実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71は、翼高さ方向hから見たときに、圧力面側接続位置Ppcと負圧面側接続位置Pscとを通過す第1仮想直線Lv1に沿って直線状に形成されている。
これにより、第1仮想直線Lv1に沿って直線状に形成されている第1隔壁71が圧力面23P側の翼壁23Wと負圧面23S側の翼壁23Wとが離間するように膨らむ現象を抑制するので、翼形部23の変形を抑制できる。
【0047】
図6に示す他の実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71は、翼高さ方向hから見たときに、第1隔壁71と第2隔壁72との接続位置である後縁側接続位置Ptcにおいて屈曲しており、後縁側接続位置Ptcは、第1仮想直線Lv1よりも後縁23T側に位置する。
これにより、負圧面側接続位置Pscが一層前縁23L側に近づいて負圧面側前縁キャビティ61LSの大きさが一層小さくなる。そのため、同じ負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sを設けることができる範囲を前縁23L側に向かって一層狭めることができ、負圧面側貫通孔63Sから噴き出される冷却空気の流量をより適切化できる。
【0048】
図7に示すさらに他の実施形態に係るタービン1段静翼21Aでは、第1隔壁71は、翼高さ方向hから見たときに圧力面側接続位置Ppcから後縁側接続位置Ptcまで延在する圧力面側領域711と、翼高さ方向hから見たときに後縁側接続位置Ptcよりも前縁23L側の位置で第2隔壁72に接続される接続位置Pcから負圧面側接続位置Pscまで延在する負圧面側領域712と、を含んでいる。
これにより、負圧面側接続位置Pscが一層前縁23L側に近づいて負圧面側前縁キャビティ61LSの大きさが一層小さくなる。そのため、同じ負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sを設けることができる範囲を前縁23L側に向かって一層狭めることができ、負圧面側貫通孔63Sから噴き出される冷却空気の流量をより適切化できる。
【0049】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述の説明では、タービン静翼21の内部の構造として、タービン1段静翼21Aの構造を説明したが、上述したタービン1段静翼21Aの構造は、タービン1段静翼21A以外のタービン静翼21に適用してもよい。
【0050】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン静翼21は、翼形部23の内部空間61を仕切る第1隔壁71及び第2隔壁72と、翼形部23を構成する翼壁23Wを貫通する複数の貫通孔63と、を備える。第1隔壁71は、翼形部23の圧力面23P側の翼壁23Wとの接続位置である圧力面側接続位置Ppcから翼形部23の負圧面23S側の翼壁23Wとの接続位置である負圧面側接続位置Pscまで延在する隔壁であって、最も翼形部23の前縁23Lに近い位置に設けられている。第2隔壁72は、翼形部23の前縁23L側の翼壁23Wとの接続位置である前縁側接続位置Plcから第1隔壁71との接続位置である後縁側接続位置Ptcまで延在して、内部空間61を圧力面側前縁キャビティ61LPと負圧面側前縁キャビティ61LSとに隔てる。翼形部23の翼高さ方向hから見たときに、圧力面側接続位置Ppcと負圧面側接続位置Pscとを通過する第1仮想直線Lv1と、負圧面側接続位置Pscにおける翼壁23Wの延在方向Dwsとの交差角度の内、第1仮想直線Lv1に対して前縁23L側での交差角度θ1は、鈍角であり、第1仮想直線Lv1に対して翼形部23の後縁23T側での交差角度θ2は、鋭角である。貫通孔63は、圧力面側前縁キャビティ61LPに開口する圧力面側貫通孔63Pと、負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sと、を含む。
【0051】
上記(1)の構成によれば、タービン静翼21において第2隔壁72によって内部空間61を圧力面側前縁キャビティ61LPと負圧面側前縁キャビティ61LSとに隔てられるとともに、タービン静翼21は、圧力面側前縁キャビティ61LPに開口する圧力面側貫通孔63Pと、負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sとを備える。これにより、圧力面側貫通孔63Pから噴き出される冷却空気の空気量を確保しつつ、負圧面側貫通孔63Sから噴き出される冷却空気の空気量を抑制し易くなる。よって、タービン静翼21における冷却空気量を適切化し易くなる。
【0052】
上記(1)の構成によれば、第1隔壁71及び第2隔壁72は、圧力面側前縁キャビティ61LPと負圧面側前縁キャビティ61LSとを画定する。
【0053】
上記(1)の構成によれば、翼高さ方向hから見たときの第1仮想直線Lv1と、負圧面側接続位置Pscにおける翼壁23Wの延在方向Dwsとの交差角度θ1、θ2を上述のように設定することで、負圧面側接続位置Pscが前縁23L側に近づいて負圧面側前縁キャビティ61LSの大きさが小さくなる。そのため、同じ負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sを設けることができる範囲を前縁23L側に向かって狭めることができ、負圧面側貫通孔63Sから噴き出される冷却空気の流量を適切化できる。
【0054】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、翼高さ方向から見たときに、前縁側接続位置Plcと後縁側接続位置Ptcとを通過する第2仮想直線Lv2と、前縁側接続位置Plcにおける翼壁23Wの延在方向Dwsとの交差角度θ3(又は交差角度θ4)は、80度以上100度以下であるとよい。
【0055】
上記(2)の構成によれば、圧力面側前縁キャビティ61LPにおける角度θ5と、負圧面側前縁キャビティ61LSにおける角度θ6とを同程度にすることができるので、翼壁23Wの内壁面23Wsの内、前縁23Lに近い領域をインピンジメント冷却し易くなる。
【0056】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、翼高さ方向hから見たときに、前縁側接続位置Plcと後縁側接続位置Ptcとを通過する第2仮想直線Lv2と、圧力面側接続位置Ppcと後縁側接続位置Ptcとを通過する第3仮想直線Lv3との交差角度の内、第2仮想直線Lv2に対して圧力面23P側、且つ、第3仮想直線Lv3に対して前縁23L側での交差角度θ7は、80度以上100度以下であるとよい。
【0057】
上記(3)の構成によれば、第2隔壁72の厚さ方向への倒れ等のような、第2隔壁72の変形を抑制し易くなる。
【0058】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、後縁側接続位置Ptcから後縁23T側に向かって延在し、内部空間61を仕切る第3隔壁73を備えていてもよい。
【0059】
上記(4)の構成によれば、第1隔壁71の強度増に寄与する。
【0060】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、翼高さ方向hから見たときに、後縁側接続位置Ptcと第3隔壁73の後縁23T側の端部73Tとを結ぶ第4仮想直線Lv4と、第1仮想直線Lv1との交差角度の内、第4仮想直線Lv4に対して圧力面23P側、且つ、第1仮想直線Lv1に対して後縁23T側での交差角度θ8は、鋭角であり、第4仮想直線Lv4に対して負圧面23S側、且つ、第1仮想直線Lv1に対して後縁23T側での交差角度θ9は、鈍角であるとよい。
【0061】
上記(5)の構成によれば、第3隔壁73の延在方向が翼形部23のキャンバーラインCLに沿うようになるので、第3隔壁73で隔てられる圧力面23P側の内部空間61(圧力面側キャビティ611)と負圧面23S側の内部空間61(負圧面側キャビティ612)の双方の大きさを確保し易くなる。
【0062】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、翼高さ方向hから見たときに、圧力面側接続位置Ppcにおける翼壁23Wの延在方向Dwsと直交する方向に延在する第5仮想直線Lv5と負圧面23S側の翼壁23Wとの交点Pと、負圧面側接続位置Pscとの間に位置する負圧面23S側の翼壁23Wの内壁面23Wsには、貫通孔63の開口63iは、存在しないとよい。
【0063】
上記(6)の構成によれば、比較的熱負荷の小さい領域をフィルム冷却する冷却空気量を削減でき、タービン静翼21における冷却空気量を適切化できる。
【0064】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、負圧面側前縁キャビティ61LSは、第1隔壁71と第2隔壁72と負圧面23S側の翼壁23Wとによって囲まれた内部空間61であるとよい。負圧面側貫通孔63Sは、翼高さ方向hに間隔を空けて配置された貫通孔列63Lを形成しているとよい。上記貫通孔列63Lの列数は、2列であるとよい。
【0065】
上記(7)の構成によれば、負圧面23S側の翼壁23Wの内、前縁23L近傍の領域の全体を比較的少ない冷却空気量で効率的にフィルム冷却できる。
【0066】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、2列の上記貫通孔列63Lの内、後縁23T側に近い方の貫通孔列63Lは、翼高さ方向hから見たときに第1仮想直線Lv1と交差するとよい。
【0067】
上記(8)の構成によれば、インピンジメント冷却し難い負圧面側接続位置Pscの近傍の翼壁23Wを、上記の後縁23T側に近い方の貫通孔列63Lを構成する複数の貫通孔63を通過する冷却空気によって対流冷却できる。
【0068】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、第1隔壁71は、翼高さ方向hから見たときに第1仮想直線Lv1に沿って直線状に形成されているとよい。
【0069】
上記(9)の構成によれば、第1仮想直線Lv1に沿って直線状に形成されている第1隔壁71が圧力面23P側の翼壁23Wと負圧面23S側の翼壁23Wとが離間するように膨らむ現象を抑制するので、翼形部23の変形を抑制できる。
【0070】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、第1隔壁71は、翼高さ方向hから見たときに後縁側接続位置Ptcにおいて屈曲していてもよい。後縁側接続位置Ptcは、第1仮想直線Lv1よりも後縁23T側に位置するとよい。
【0071】
上記(10)の構成によれば、負圧面側接続位置Pscが一層前縁23L側に近づいて負圧面側前縁キャビティ61LSの大きさが一層小さくなる。そのため、同じ負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sを設けることができる範囲を前縁23L側に向かって一層狭めることができ、負圧面側貫通孔63Sから噴き出される冷却空気の流量をより適切化できる。
【0072】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、第1隔壁71は、翼高さ方向hから見たときに圧力面側接続位置Ppcから後縁側接続位置Ptcまで延在する圧力面側領域711と、翼高さ方向hから見たときに後縁側接続位置Ptcよりも前縁23L側の位置で第2隔壁72に接続される接続位置Pcから負圧面側接続位置Pscまで延在する負圧面側領域712と、を含んでいてもよい。
【0073】
上記(11)の構成によれば、負圧面側接続位置Pscが一層前縁23L側に近づいて負圧面側前縁キャビティ61LSの大きさが一層小さくなる。そのため、同じ負圧面側前縁キャビティ61LSに開口する負圧面側貫通孔63Sを設けることができる範囲を前縁23L側に向かって一層狭めることができ、負圧面側貫通孔63Sから噴き出される冷却空気の流量をより適切化できる。
【0074】
(12)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン10は、上記(1)乃至(11)の何れかの構成のタービン静翼21を備える。
【0075】
上記(12)の構成によれば、タービン静翼21における冷却空気量を適切化して、ガスタービン10の効率を向上できる。
【符号の説明】
【0076】
10 ガスタービン
13 タービン
21 タービン静翼(静翼)
21A タービン1段静翼
23 翼形部
23L 前縁
23P 圧力面
23S 負圧面
23T 後縁
23W 翼壁
61 内部空間
61LP 圧力面側前縁キャビティ
61LS 負圧面側前縁キャビティ
63 貫通孔
63L 貫通孔列
63P 圧力面側貫通孔
63S 負圧面側貫通孔
71 第1隔壁
72 第2隔壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼形部の内部空間を仕切る第1隔壁及び第2隔壁と、
前記翼形部を構成する翼壁を貫通する複数の貫通孔と、
を備え、
前記第1隔壁は、前記翼形部の圧力面側の翼壁との接続位置である圧力面側接続位置から前記翼形部の負圧面側の翼壁との接続位置である負圧面側接続位置まで延在する隔壁であって、最も前記翼形部の前縁に近い位置に設けられており、
前記第2隔壁は、前記翼形部の前縁側の翼壁との接続位置である前縁側接続位置から前記第1隔壁との接続位置である後縁側接続位置まで延在して、前記内部空間を圧力面側前縁キャビティと負圧面側前縁キャビティとに隔て、
前記翼形部の翼高さ方向から見たときに、前記圧力面側接続位置と前記負圧面側接続位置とを通過する第1仮想直線と、前記負圧面側接続位置における前記翼壁の延在方向との交差角度の内、前記第1仮想直線に対して前記前縁側での交差角度は、鈍角であり、前記第1仮想直線に対して前記翼形部の後縁側での交差角度は、鋭角であり、
前記貫通孔は、前記圧力面側前縁キャビティに開口する圧力面側貫通孔と、前記負圧面側前縁キャビティに開口する負圧面側貫通孔と、を含み、
前記翼高さ方向から見たときに、前記前縁側接続位置と前記後縁側接続位置とを通過する第2仮想直線と、前記圧力面側接続位置と前記後縁側接続位置とを通過する第3仮想直線との交差角度の内、前記第2仮想直線に対して前記圧力面側、且つ、前記第3仮想直線に対して前記前縁側での交差角度は、80度以上100度以下である
ービン静翼。
【請求項2】
翼形部の内部空間を仕切る第1隔壁及び第2隔壁と、
前記翼形部を構成する翼壁を貫通する複数の貫通孔と、
を備え、
前記第1隔壁は、前記翼形部の圧力面側の翼壁との接続位置である圧力面側接続位置から前記翼形部の負圧面側の翼壁との接続位置である負圧面側接続位置まで延在する隔壁であって、最も前記翼形部の前縁に近い位置に設けられており、
前記第2隔壁は、前記翼形部の前縁側の翼壁との接続位置である前縁側接続位置から前記第1隔壁との接続位置である後縁側接続位置まで延在して、前記内部空間を圧力面側前縁キャビティと負圧面側前縁キャビティとに隔て、
前記翼形部の翼高さ方向から見たときに、前記圧力面側接続位置と前記負圧面側接続位置とを通過する第1仮想直線と、前記負圧面側接続位置における前記翼壁の延在方向との交差角度の内、前記第1仮想直線に対して前記前縁側での交差角度は、鈍角であり、前記第1仮想直線に対して前記翼形部の後縁側での交差角度は、鋭角であり、
前記貫通孔は、前記圧力面側前縁キャビティに開口する圧力面側貫通孔と、前記負圧面側前縁キャビティに開口する負圧面側貫通孔と、を含み、
前記後縁側接続位置から前記後縁側に向かって延在し、前記内部空間を仕切る第3隔壁、
を備える
ービン静翼。
【請求項3】
前記翼高さ方向から見たときに、前記後縁側接続位置と前記第3隔壁の前記後縁側の端部とを結ぶ第4仮想直線と、前記第1仮想直線との交差角度の内、前記第4仮想直線に対して前記圧力面側、且つ、前記第1仮想直線に対して前記後縁側での交差角度は、鋭角であり、前記第4仮想直線に対して前記負圧面側、且つ、前記第1仮想直線に対して前記後縁側での交差角度は、鈍角である、
請求項に記載のタービン静翼。
【請求項4】
翼形部の内部空間を仕切る第1隔壁及び第2隔壁と、
前記翼形部を構成する翼壁を貫通する複数の貫通孔と、
を備え、
前記第1隔壁は、前記翼形部の圧力面側の翼壁との接続位置である圧力面側接続位置から前記翼形部の負圧面側の翼壁との接続位置である負圧面側接続位置まで延在する隔壁であって、最も前記翼形部の前縁に近い位置に設けられており、
前記第2隔壁は、前記翼形部の前縁側の翼壁との接続位置である前縁側接続位置から前記第1隔壁との接続位置である後縁側接続位置まで延在して、前記内部空間を圧力面側前縁キャビティと負圧面側前縁キャビティとに隔て、
前記翼形部の翼高さ方向から見たときに、前記圧力面側接続位置と前記負圧面側接続位置とを通過する第1仮想直線と、前記負圧面側接続位置における前記翼壁の延在方向との交差角度の内、前記第1仮想直線に対して前記前縁側での交差角度は、鈍角であり、前記第1仮想直線に対して前記翼形部の後縁側での交差角度は、鋭角であり、
前記貫通孔は、前記圧力面側前縁キャビティに開口する圧力面側貫通孔と、前記負圧面側前縁キャビティに開口する負圧面側貫通孔と、を含み、
前記第1隔壁は、前記翼高さ方向から見たときに前記第1仮想直線に沿って直線状に形成されている
ービン静翼。
【請求項5】
翼形部の内部空間を仕切る第1隔壁及び第2隔壁と、
前記翼形部を構成する翼壁を貫通する複数の貫通孔と、
を備え、
前記第1隔壁は、前記翼形部の圧力面側の翼壁との接続位置である圧力面側接続位置から前記翼形部の負圧面側の翼壁との接続位置である負圧面側接続位置まで延在する隔壁であって、最も前記翼形部の前縁に近い位置に設けられており、
前記第2隔壁は、前記翼形部の前縁側の翼壁との接続位置である前縁側接続位置から前記第1隔壁との接続位置である後縁側接続位置まで延在して、前記内部空間を圧力面側前縁キャビティと負圧面側前縁キャビティとに隔て、
前記翼形部の翼高さ方向から見たときに、前記圧力面側接続位置と前記負圧面側接続位置とを通過する第1仮想直線と、前記負圧面側接続位置における前記翼壁の延在方向との交差角度の内、前記第1仮想直線に対して前記前縁側での交差角度は、鈍角であり、前記第1仮想直線に対して前記翼形部の後縁側での交差角度は、鋭角であり、
前記貫通孔は、前記圧力面側前縁キャビティに開口する圧力面側貫通孔と、前記負圧面側前縁キャビティに開口する負圧面側貫通孔と、を含み、
前記第1隔壁は、前記翼高さ方向から見たときに前記後縁側接続位置において屈曲しており、
前記後縁側接続位置は、前記第1仮想直線よりも前記後縁側に位置する
ービン静翼。
【請求項6】
前記翼高さ方向から見たときに、前記前縁側接続位置と前記後縁側接続位置とを通過する第2仮想直線と、前記前縁側接続位置における前記翼壁の延在方向との交差角度は、80度以上100度以下である、
請求項1乃至5の何れか一項に記載のタービン静翼。
【請求項7】
前記翼高さ方向から見たときに、前記圧力面側接続位置における前記翼壁の延在方向と直交する方向に延在する第5仮想直線と前記負圧面側の翼壁との交点と、前記負圧面側接続位置との間に位置する前記負圧面側の翼壁の内壁面には、前記貫通孔の開口は、存在しない、
請求項1乃至5の何れか一項に記載のタービン静翼。
【請求項8】
前記負圧面側前縁キャビティは、前記第1隔壁と前記第2隔壁と前記負圧面側の翼壁とによって囲まれた前記内部空間であり、
前記負圧面側貫通孔は、前記翼高さ方向に間隔を空けて配置された貫通孔列を形成し、
前記貫通孔列の列数は、2列である、
請求項1乃至5の何れか一項に記載のタービン静翼。
【請求項9】
前記2列の前記貫通孔列の内、前記後縁側に近い方の前記貫通孔列は、前記翼高さ方向から見たときに前記第1仮想直線と交差する、
請求項に記載のタービン静翼。
【請求項10】
前記第1隔壁は、前記翼高さ方向から見たときに前記圧力面側接続位置から前記後縁側接続位置まで延在する圧力面側領域と、前記翼高さ方向から見たときに前記後縁側接続位置よりも前記前縁側の位置で前記第2隔壁に接続される接続位置から前記負圧面側接続位置まで延在する負圧面側領域と、を含む、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のタービン静翼。
【請求項11】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のタービン静翼を備えるガスタービン。