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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043887
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】集積回路、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G01R19/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149116
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 基光
【テーマコード(参考)】
2G035
【Fターム(参考)】
2G035AA05
2G035AB04
2G035AC08
2G035AD10
2G035AD20
2G035AD28
2G035AD56
2G035AD65
(57)【要約】
【課題】センシングの精度を向上させる。
【解決手段】ブリッジ回路の一対の入力端子に第1入力電圧が印加される第1の場合に、一対の出力端子から出力される第1出力電圧を所定利得で増幅した電圧と、基準電圧と、に基づく第1電圧を出力し、前記一対の入力端子に前記第1入力電圧とは極性が逆の第2入力電圧が印加される第2の場合に、前記一対の出力端子から出力される第2出力電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、前記基準電圧と、に基づく第2電圧を出力する増幅回路と、前記第1の場合に、前記基準電圧のレベルを第1レベルとし、前記第2の場合に、前記基準電圧のレベルを第2レベルとする基準電圧出力回路と、を備え、前記第1レベルは、前記ブリッジ回路の前記一対の出力端子に発生するオフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、所定電圧との和に応じたレベルであり、前記第2レベルは、前記オフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、前記所定電圧との差に応じたレベルである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ回路の一対の入力端子に第1入力電圧が印加される第1の場合に、一対の出力端子から出力される第1出力電圧を所定利得で増幅した電圧と、基準電圧と、に基づく第1電圧を出力し、前記一対の入力端子に前記第1入力電圧とは極性が逆の第2入力電圧が印加される第2の場合に、前記一対の出力端子から出力される第2出力電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、前記基準電圧と、に基づく第2電圧を出力する増幅回路と、
前記第1の場合に、前記基準電圧のレベルを第1レベルとし、前記第2の場合に、前記基準電圧のレベルを第2レベルとする基準電圧出力回路と、
を備え、
前記第1レベルは、前記ブリッジ回路の前記一対の出力端子に発生するオフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、所定電圧との和に応じたレベルであり、
前記第2レベルは、前記オフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、前記所定電圧との差に応じたレベルである、
集積回路。
【請求項2】
請求項1記載の集積回路であって、
前記基準電圧出力回路は、
デジタルアナログコンバータである、
集積回路。
【請求項3】
請求項2に記載の集積回路であって、
前記第1および第2電圧のそれぞれをデジタル値に変換するアナログデジタルコンバータと、
前記デジタル値に基づいて、前記ブリッジ回路が計測する物理量を演算する処理回路と、
を備える集積回路。
【請求項4】
請求項3に記載の集積回路であって、
前記ブリッジ回路の温度と、前記オフセット電圧との関係を示す情報を記憶する記憶回路を備え、
前記処理回路は、前記ブリッジ回路の温度を検出する温度検出素子の検出結果と、前記情報とに基づいて、前記デジタルアナログコンバータに前記検出結果に応じた前記基準電圧を出力させる、
集積回路。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の集積回路であって、
前記増幅回路は、
反転入力端子と、非反転入力端子と有するオペアンプと、
前記ブリッジ回路の前記一対の出力端子の一方と、前記反転入力端子との間に接続された第1抵抗と、
前記ブリッジ回路の前記一対の出力端子の他方と、前記非反転入力端子との間に接続された第2抵抗と、
前記オペアンプの出力と前記反転入力端子の間に接続された第3抵抗と、
一端が前記非反転入力端子に接続され、他端に前記基準電圧が印加される第4抵抗と、
を有する集積回路。
【請求項6】
一対の入力端子および一対の出力端子を有するブリッジ回路と、
ブリッジ回路の前記一対の入力端子に第1入力電圧が印加される第1の場合に、前記一対の出力端子から出力される第1出力電圧を所定利得で増幅した電圧と、基準電圧と、に基づく第1電圧を出力し、前記一対の入力端子に前記第1入力電圧とは極性が逆の第2入力電圧が印加される第2の場合に、前記一対の出力端子から出力される第2出力電圧を前記所定利得で増幅した第2電圧と、前記基準電圧と、に基づく第2電圧を出力する増幅回路と、
前記第1の場合に、前記基準電圧のレベルを第1レベルとし、前記第2の場合に、前記基準電圧のレベルを第2レベルとする基準電圧出力回路と、
を備え、
前記第1レベルは、前記ブリッジ回路の前記一対の出力端子に発生するオフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、所定電圧との和に応じたレベルであり、
前記第2レベルは、前記オフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、前記所定電圧との差に応じたレベルである、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、圧力、重量、加速度などの物理量を検出するセンサとして、4個の抵抗を直列に接続(ブリッジ接続)したブリッジ回路が用いられており、ブリッジ回路の微小レベルの出力を差動増幅回路で増幅している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ブリッジ回路に交流電圧を印加し、その出力の差を演算することにより、差動増幅回路のノイズを除去できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-214024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブリッジ回路を構成する抵抗の抵抗値にばらつきがある場合など、ブリッジ回路からの出力にも誤差成分(オフセット電圧)が含まれることがある。特許文献1では、このようなブリッジ回路の誤差成分を除去できないため、物理量の検出精度(センシングの精度)が悪化するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的はセンシングの精度の向上を図ることのできる集積回路および半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する本発明の集積回路は、ブリッジ回路の一対の入力端子に第1入力電圧が印加される第1の場合に、一対の出力端子から出力される第1出力電圧を所定利得で増幅した電圧と、基準電圧と、に基づく第1電圧を出力し、前記一対の入力端子に前記第1入力電圧とは極性が逆の第2入力電圧が印加される第2の場合に、前記一対の出力端子から出力される第2出力電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、前記基準電圧と、に基づく第2電圧を出力する増幅回路と、前記第1の場合に、前記基準電圧のレベルを第1レベルとし、前記第2の場合に、前記基準電圧のレベルを第2レベルとする基準電圧出力回路と、を備え、前記第1レベルは、前記ブリッジ回路の前記一対の出力端子に発生するオフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、所定電圧との和に応じたレベルであり、前記第2レベルは、前記オフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、前記所定電圧との差に応じたレベルである。
【0007】
また、上述した課題を解決する本発明の半導体装置は、一対の入力端子および一対の出力端子を有するブリッジ回路と、ブリッジ回路の前記一対の入力端子に第1入力電圧が印加される第1の場合に、前記一対の出力端子から出力される第1出力電圧を所定利得で増幅した電圧と、基準電圧と、に基づく第1電圧を出力し、前記一対の入力端子に前記第1入力電圧とは極性が逆の第2入力電圧が印加される第2の場合に、前記一対の出力端子から出力される第2出力電圧を前記所定利得で増幅した第2電圧と、前記基準電圧と、に基づく第2電圧を出力する増幅回路と、前記第1の場合に、前記基準電圧のレベルを第1レベルとし、前記第2の場合に、前記基準電圧のレベルを第2レベルとする基準電圧出力回路と、を備え、前記第1レベルは、前記ブリッジ回路の前記一対の出力端子に発生するオフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、所定電圧との和に応じたレベルであり、前記第2レベルは、前記オフセット電圧を前記所定利得で増幅した電圧と、前記所定電圧との差に応じたレベルである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、センシングの精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一般的な半導体装置100の構成を示す図である。
図2図2A図2Cは、一般的な半導体装置100におけるタイミングチャートを示す図である。
図3】ブリッジ回路20の出力電圧Woとオフセット電圧ΔSの説明図である。
図4】第1実施形態の半導体装置1の構成を示す図である。
図5図5A図5Cは、第1実施系形態の半導体装置1におけるタイミングチャートを示す図である。
図6】第2実施形態の半導体装置1Aの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
以下では、各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明を省略することがある。
【0012】
本実施形態で、「接続」とは、特段の言及がない限り電気的に接続されている状態をいう。このため「接続」には、2つの部品が配線のみならず、例えば、抵抗を介して接続されている場合も含む。
【0013】
=====第1実施形態=====
<<比較例>>
本実施形態について説明する前に比較例について説明する。
【0014】
図1は、一般的な半導体装置100の構成を示す図である。
【0015】
図1に示す半導体装置100は、交流電源回路10と、ブリッジ回路20と、集積回路(以下IC)300と、を備えている。なお、図において破線で囲まれた構成はチップ上に集積化されたIC300であり、交流電源回路10とブリッジ回路20は、外付けの構成となっている。但し、この構成には限られず、交流電源回路10やブリッジ回路20をIC300の内部に構成することも可能である(後述の実施形態においても同様)。
【0016】
交流電源回路10は、タイミング回路34(後述)から出力される信号(タイミング信号)に応じて交流電圧Vacを発生させる。なお、交流電圧Vacの波形は特に限定されず、例えば、正弦波でも矩形波でもよいが、ここでは矩形波として説明する。また、交流電源回路10の出力電圧の振幅E0は5Vとする(図2A参照)。交流電源回路10の出力の一方はブリッジ回路20のノードN1(後述)に印加され、他方はブリッジ回路20のノードN2(後述)に印加される。
【0017】
ブリッジ回路20は、4つの抵抗Ra,Rb,Rc,Rdを有しており、これら4つの抵抗Ra~Rdが直列に接続(ブリッジ接続)されて構成されている。
【0018】
なお、抵抗Raと抵抗Rdとの接続点(以下、ノードN1)、および抵抗Rbと抵抗Rcの接続点(以下、ノードN2)は、一対の入力端子を構成しており、それぞれ、交流電源回路10の出力(交流電圧)が印加される。以下、ノードN1の電圧をVaとし、ノードN2の電圧をVbとする。
【0019】
また、抵抗Raと抵抗Rbとの接続点(以下、ノードN3)、および抵抗Rcと抵抗Rdの接続点(以下、ノードN4)は、一対の出力端子を構成している。以下、ノードN3の電圧をVcとし、ノードN4の電圧をVdとする。
【0020】
ブリッジ回路20を構成する抵抗Ra~Rdの抵抗値(規格値)は全て同じとする。この場合、ブリッジ回路20の一対の出力端子(ノードN3,N4)の電圧Vcと電圧Vdの差は、理想的にはゼロであるが後述するように各抵抗の抵抗値による誤差が含まれる場合もある。ブリッジ回路20をセンサとして使用するとき、1つまたは複数の抵抗の値が、測定する特性の強度に応じて変化する(換言すると電圧Vc,Vdが変化する)。よって、電圧Vc,Vdの変化から圧力などの物理量を検出できることになる。
【0021】
IC300は、ブリッジ回路20の出力に基づいて、検出対象の物理量(例えば圧力)を求める回路である。IC300は、差動増幅回路31、アナログデジタルコンバータ(以下ADコンバータ)32、CPU33、タイミング回路34、および端子T1~T4を備えている。
【0022】
差動増幅回路31は、ブリッジ回路20の一対の出力端子(ノードN3,N4)の微小な電圧の差を増幅する回路である。差動増幅回路31には、ノードN3の電圧Vcが端子T1を介して入力され、ノードN4の電圧Vdが端子T2を介して入力される。そして、差動増幅回路31は、電圧Vcと電圧Vdの差(ブリッジ回路20の出力電圧Wo)を所定の増幅率Gw(ここでは10倍)で増幅した電圧と、基準電圧Vrefとに基づく電圧Viを出力する(詳細は後述)。なお、比較例では基準電圧Vrefは一定(ここでは2.5V)である。また、差動増幅回路31は、5Vの電源電圧Vdd(不図示)に基づいて動作しており、差動増幅回路31の出力(電圧Vi)の最大値は5V、最小値は0Vである。
【0023】
ADコンバータ32は、差動増幅回路31から出力される電圧Viをデジタル信号Voに変換する。
【0024】
CPU33は、各種の演算処理を行う回路である。例えば、CPU33は、ADコンバータ32の出力(デジタル信号Vo)に基づいてブリッジ回路20によるセンシングの検出結果(圧力など)を演算し、端子T4を介して外部に出力する。また、CPU33は、タイミング回路34を制御することにより、装置全体の動作を制御する。
【0025】
タイミング回路34は、CPU33からの指示に基づいて、タイミング信号を生成し、ADコンバータ32、及び端子T3を介して交流電源回路10に出力する。
【0026】
図2A図2Cは、一般的な半導体装置100におけるタイミングチャートを示す図である。図2Aは、ブリッジ回路20の入力端子(ノードN1,N2)の電圧Va,Vbを示す図である。図2Aにおいて、電圧Vaは実線で、電圧Vbは破線で示されている。また、図2Bは、差動増幅回路31の入力(換言するとブリッジ回路20の出力端子(ノードN3,N4)の電圧Vc,Vd)と、基準電圧Vrefを示す図である。図2Bにおいて、電圧Vcは破線で、電圧Vdは実線で、基準電圧Vrefは一点鎖線で示されている。また、図2Cは、差動増幅回路31の出力(電圧Vi)を示す図である。各図の横軸は時間であり、縦軸は電圧である。なお、都合上、各図の縦軸のスケールは異なっている。また、この比較例では、ブリッジ回路20に交流電圧を印加することにより、差動増幅回路31の誤差(オフセット)成分を除去できることについて説明する(後述するブリッジ回路20のオフセット等については考慮していない)。
【0027】
交流電源回路10は、ブリッジ回路20のノードN1,N2間に振幅E0の矩形波を印加する。ここでは前述したように振幅E0は5Vとする。
【0028】
時刻t0~t1では、ブリッジ回路20のノードN1の電圧Vaは0V、ノードN2の電圧Vbは5Vである。このとき、図2Bに示すように、ノードN3の電圧Vcは、基準電圧Vref(2.5V)よりも低く、ノードN4の電圧Vdは、基準電圧Vrefよりも高くなっている。また、図2Cに示すように、差動増幅回路31から出力される電圧Viは基準電圧Vrefよりも低い電圧V1となる。なお、電圧Vi(ここでは電圧V1)の算出等については後述する。
【0029】
時刻t1でタイミング回路34からのタイミング信号によって交流電源回路10の極性が逆になる。すなわち、ブリッジ回路20のノードN1の電圧Vaが5V、ノードN2の電圧が0Vになる。このとき図2Bに示すように、ノードN3の電圧Vcは、基準電圧Vref(2.5V)よりも高く、ノードN4の電圧Vdは、基準電圧Vrefよりも低くなる。また、図2Cに示すように、差動増幅回路31の出力Viは電圧V2になる。
【0030】
時刻t2でタイミング回路34からのタイミング信号によって交流電源回路10の極性が逆になり、電圧Va,Vb(および電圧Vc,Vd)は時刻t0~t1と同じ関係になる。また、差動増幅回路31の出力Viが電圧V1になる。以下、同様に、電圧Va,Vb、電圧Vc,Vdおよび電圧Viの値が変化していく。
【0031】
差動増幅回路31にオフセット(Δeとする)がある場合、差動増幅回路31から出力される電圧Viは、次式(1)で表される。
Vi=Vref+Gw(±Wo+Δe) ・・・・(1)
ここで、Gwは、差動増幅回路31の増幅率(利得)であり、Woは、ブリッジ回路20の出力電圧(電圧Vcと電圧Vdの差電圧)である。
【0032】
なお、出力電圧Woは、電圧Vc電位を基準としており、式(1)における±は、ブリッジ回路20に交流電圧を印加していることによりWoの符号が一定時間で反転することを意味している(図3参照)。
【0033】
また、Δeは、差動増幅回路31の内部のオペアンプ(不図示)のオフセット電圧であり、後段のCPU33等で補正することが難しい。しかし、ブリッジ回路20の入力を交流電圧とすることで、Δeを除去することが可能である。具体的には、時刻t0~t1の電圧viをV1、つまり、そのときのブリッジ回路20の出力電圧を-Wo)とし、時刻t1~t2の電圧viをV2、つまりそのときのブリッジ回路20の出力電圧を+Woとすると、
V1=Vref+Gw×Δe-Gw×Wo ・・・・(2)
V2=Vref+Gw×Δe+Gw×Wo ・・・・(3)
となり、式(3)から式(2)を減算することにより、
V2-V1=2(Gw×Wo) ・・・・(4)
となる。例えば、CPU33が上記の演算を行うことにより、差動増幅回路31のオフセット電圧Δeを除去することができる。なお、ここでは差動増幅回路31における誤差をオフセット電圧Δeとしているが、差動増幅回路31の誤差には、フリッカーノイズなども含まれる。これらの誤差(ノイズ等)も同様に上記の演算で除去される。
【0034】
ところで、ブリッジ回路20を構成する各抵抗(R1~R4)の製造ばらつきなどにより、ブリッジ回路20の出力電圧Woにも誤差成分(以下、オフセット電圧)が含まれていることがある。
【0035】
図3は、ブリッジ回路20の出力電圧Woとオフセット電圧ΔSの説明図である。図3において、出力電圧Woに含まれる実際のセンサ出力の信号成分(以下、検出電圧)をSaとし、オフセット電圧をΔSとする。
【0036】
図3の左側は、電圧Vcと電圧Vdの関係と、それぞれに含まれるオフセット電圧を示す図であり、電圧Vc及び電圧Vdは実線で、オフセット電圧は一点鎖線で示されている。電圧Vcと電圧Vdは、極性が逆の矩形波(例えば150mVの振幅の矩形波)となっており、電圧Vcと電圧Vdには、それぞれ、例えば100mVのオフセット電圧(ΔS/2)が含まれている。また、実線と一点鎖線の差分(例えば50mV)が、センサの信号成分(Sa/2)となる。
【0037】
また、図3の右側は、左側の電圧Vcと電圧Vdのときのブリッジ回路20の出力電圧Wo(Vc電位を基準とした電圧)とオフセット電圧ΔSを示す図であり、出力電圧Woは実線で、オフセット電圧ΔSは一点鎖線で示されている。図3に示すように、ブリッジ回路20の出力電圧Woは、Vc電位を基準とした場合、Vc電位を中心に、例えば300mVの振幅の矩形波となっており、この振幅に検出電圧Sa(100mV)とオフセット電圧ΔS(200mV)が含まれている。上記の式(2)~(4)の演算では、ブリッジ回路20の出力電圧Woに含まれるオフセット電圧ΔSを除去することはできない。
【0038】
また、差動増幅回路31の増幅率Gwは10倍である。図3のように、仮にブリッジ回路20の出力電圧Woが300mVの振幅となる場合、差動増幅回路31から出力される電圧Viは、基準電圧Vref(2.5V)を中心に、300mV×10=3Vの振幅(-0.5V~5.5V)となる。しかし、差動増幅回路31の電源電圧Vddは前述したように5Vなので、5V以上の電圧を出力することはできない。
【0039】
また、差動増幅回路31は、接地電位(0V)未満の電圧も出力できない。このため、図2Cに示すように、差動増幅回路31の出力の低い側は0Vに、高い側は5Vにクランプされる。このように差動増幅回路31の出力電圧がクランプされると、AD変換後にCPU33でブリッジ回路20のオフセット電圧ΔSを除去する補正をしようとしても完全に補正できないという問題が生じる。
【0040】
そこで、本実施形態では、後述するように、基準電圧Vrefのレベルを変化させることにより、ブリッジ回路20の出力電圧Woに含まれるオフセット電圧を除去できるとともに、差動増幅回路31の出力が飽和することを防ぐことが可能となる。
【0041】
<<本実施形態>>
図4は、第1実施形態の半導体装置1の構成を示す図である。
図4に示すように、半導体装置1は、交流電源回路10と、ブリッジ回路20と、集積回路(IC)30とを備えている。
【0042】
IC30は、差動増幅回路31、ADコンバータ32、CPU33、タイミング回路34、デジタルアナログコンバータ(以下DAコンバータ)35、及び端子T1~T4を備えている。なお、差動増幅回路31は、「増幅回路」に相当し、CPU33は、「処理回路」に相当し、DAコンバータ35は、「基準電圧出力回路」に相当する。
【0043】
差動増幅回路31は、オペアンプ31aと抵抗R1~R4を備えている。
【0044】
オペアンプ31aは、入力端子として、-端子(反転入力端子)と、+端子(非反転入力端子)と有し、この入力端子間の電圧の差を、基準電圧Vrefと、抵抗R1~R4で定まる増幅率Gw(本実施形態では10倍)に応じた電圧Viを出力する。なお、増幅率Gwは「所定利得」に相当する。
【0045】
抵抗R1は、ブリッジ回路20のノードN3と、オペアンプ31aの-端子との間に接続されている。抵抗R2は、ブリッジ回路20のノードN4と、オペアンプ31aの+端子との間に接続されている。抵抗R3は、オペアンプ31aの出力とオペアンプ31aの-端子との間に接続された帰還抵抗である。抵抗R4は、一端がオペアンプ31aの+端子に接続されており、他端がDAコンバータ35に接続されている。そして抵抗R4の他端には基準電圧Vrefが印加される。なお、抵抗R1は「第1抵抗」、抵抗R2は「第2抵抗」、抵抗R3は「第3抵抗」、抵抗R4は「第4抵抗」に相当する。
【0046】
本実施形態において抵抗R1と抵抗R2の抵抗値は10kΩであり、抵抗R3と抵抗R4の抵抗値は100kΩである。この構成により、差動増幅回路31は、+端子の入力(電圧Vd)と-端子の入力(電圧Vc)の微小レベルの差電圧を、基準電圧Vrefを基準として、抵抗R1(=R2)と抵抗R3(=R4)の比(10倍)で増幅する(式1参照)。
Vi=Vref+Gw(±Wo+Δe) ・・・・(1)
=Vref+Gw{±(Sa+ΔS)+Δe}・・・・(1a)
【0047】
DAコンバータ35は、CPU33からの指示に応じたレベルの基準電圧Vrefを出力する。具体的には、ブリッジ回路20のオフセット電圧ΔS(ここでは200mV)を差動増幅回路31の増幅率Gw倍(ここでは10倍)した電圧と、基準となる電圧(ここでは2.5V)との和、および差に応じて2つのレベル(2.5V±200mV×10)が設定される。この2つのレベルは、タイミング回路34からのタイミング信号によって切り替えられる。
【0048】
例えば、ΔSが負の場合、DAコンバータ35は、元の基準電圧Vrefを基準として、Gw×(-ΔS)を打ち消すレベルの電圧(Vref1とする)を出力する。Vref1は次式(5)で求められる。
Vref1=Vref+ΔS×Gw・・・・・(5)
【0049】
また、例えば、ΔSが正の場合、DAコンバータ35は、元の基準電圧Vrefを基準として、Gw×ΔSを打ち消すレベルの電圧(Vref2とする)を出力する。Vref2は次式(6)で求められる。
Vref2=Vref-ΔS×Gw・・・・・(6)
【0050】
なお、本実施形態では、ブリッジ回路20のオフセット電圧ΔSを予めキャリブレーションにより測定しており、CPU33等に記憶させている。そして、CPU33は、記憶されたオフセット電圧ΔS(200mv)に基づいて、DAコンバータ35で2つのレベルの基準電圧Vrefを生成させるとともに、タイミング回路34を制御して、交流電源回路10の極性を切り替えるタイミングで基準電圧VrefのレベルをVref1とVref2に切り替える。
【0051】
図5A図5Cは、第1実施形態の半導体装置1におけるタイミングチャートを示す図である。図5Aは、ブリッジ回路20の入力端子(ノードN1,N2)の電圧Va,Vbを示す図である。図5Aにおいて、電圧Vaは実線で、電圧Vbは破線で示されている。また、図5Bは、差動増幅回路31の入力(換言するとブリッジ回路20の出力端子(ノードN3,N4)の電圧Vc,Vd)と、基準電圧Vrefを示す図である。図5Bにおいて、電圧Vcは破線で、電圧Vdは実線で、基準電圧Vrefは一点鎖線で示されている。また、図5Cは、差動増幅回路31の出力(電圧Vi)を示す図である。各図の横軸は時間であり、縦軸は電圧である。本実施形態においても差動増幅回路31の増幅率Gwは10倍である。
【0052】
また、本実施形態において、ブリッジ回路20の電圧Va,Vb、及び電圧Vc,Vdは比較例と同じである。ただし、本実施系形態では、図5Bに示すように基準電圧Vrefのレベルが比較例(図2B)と異なっている。
【0053】
本実施形態のCPU33は、交流電源回路10の極性(換言すると電圧Vaと電圧Vbの大小)を切り替えるタイミングで、DAコンバータ35から出力される基準電圧Vrefのレベルを切り替える。
【0054】
例えば、図5AにおいてVa<Vbの場合(時刻t0~t1、時刻t2~t3、t4~t5など)、図5Bに示すようにVd<Vcである。また、図3よりVd<VcのときΔSは負である。この場合、CPU33は、DAコンバータ35から出力される基準電圧Vrefのレベルを、Vref1とする。具体的には、オフセット電圧ΔS(200mV)と差動増幅回路31の増幅率Gw(10倍)を用いて式(5)より4.5V(=2.5V+200mV×10)とする。
【0055】
なお、この4.5Vの基準電圧Vref(Vref1)は「第1レベル」に相当し、この基準電圧Vrefが出力される期間(ブリッジ回路20の入力電圧がVb>Vaの場合)は「第1の場合」に相当する。また、このときのブリッジ回路20の一対の入力端子(ノードN1,N2)への入力電圧(Vb基準で-5V)は「第1入力電圧」に相当する。また、基準となる2.5Vは「所定電圧」に相当する。
【0056】
また、図5AにおいてVa>Vbの場合(時刻t1~t2、時刻t3~t4、t5~t6など)、図5Bに示すようにVd>Vcである。また、図3よりVd>VcのときΔSは正である。この場合、CPU33は、DAコンバータ35から出力される基準電圧Vrefのレベルを、Vref2とする。具体的には、オフセット電圧ΔS(200mV)と差動増幅回路31の増幅率Gw(10倍)を用いて、式(6)より0.5V(=2.5V-200mV×10)とする。
【0057】
なお、この0.5Vの基準電圧Vref(Vref2)は「第2レベル」に相当し、この基準電圧Vrefが出力される期間(ブリッジ回路20の入力電圧がVa>Vbの場合)は「第2の場合」に相当する。また、このときのブリッジ回路20の一対の入力端子(ノードN1,N2)への入力電圧(Vb基準で5V)は「第2入力電圧」に相当する。
【0058】
時刻t0~t1では、ブリッジ回路20の出力電圧Woは-300mV、基準電圧Vref1は4.5Vなので、そのとき差動増幅回路31から出力される電圧ViをV1とするとV1は、
V1=-300(mV)×10+4.5(V)=1.5(V)
となる。なお、このときのブリッジ回路20の出力電圧Wo(-300mV)は「第1出力電圧」に相当し、電圧V1は、「第1電圧」に相当する。
【0059】
また、時刻t1~t2では、ブリッジ回路20の出力電圧Woは300mV、基準電圧Vref2は0.5Vなので、そのとき差動増幅回路31から出力される電圧ViをV2とするとV2は、
V2=300(mV)×10+0.5(V)=3.5(V)
となる。なお、このときのブリッジ回路20の出力電圧Wo(300mV)は「第2出力電圧」に相当し、電圧V2は「第2電圧」に相当する。
【0060】
以降、同様の処理を繰り返し行う。ここで、上記2つの電圧の差(V2-V1)を2で除算すると、
(V2-V1)/2=1(V)
となる。これは、ブリッジ回路20の検出電圧Sa(100mV)を、差動増幅回路31の増幅率Gw倍(10倍)した値と等しい。よって、ブリッジ回路20のオフセット電圧ΔS(200mV)を除去出来ていることがわかる。
【0061】
また、上記では記載を省略しているが、V2とV1の差を計算しているため、比較例と同様に、差動増幅回路31の誤差(オフセット電圧Δe)も除去できる。さらに、本実施形態では、基準電圧Vrefのレベルを変えることによって、電圧V1と電圧V2は、ともに差動増幅回路31の動作電圧(0~5V)の範囲内にある。よって、差動増幅回路31の出力が飽和することを抑制できる(クランプしないようにできる)。
【0062】
=====第2実施形態=====
図6は、第2実施形態の半導体装置1Aの構成を示す図である。第2実施形態では、ブリッジ回路20の誤差(オフセット電圧ΔS)が温度によって変動する場合でも、誤差を補正できるようにしている。
【0063】
第2実施形態の半導体装置1Aは、IC30Aと温度センサ40を備えている。
【0064】
温度センサ40は、ブリッジ回路20の温度を検出するための温度検出素子(例えばサーミスタ)であり、ブリッジ回路20の近傍に配置されている。なお、温度センサ40はサーミスタには限られず、サーミスタ以外の素子を用いても良い。
【0065】
IC30Aは、差動増幅回路31、ADコンバータ32、CPU33、タイミング回路34、DAコンバータ35、記憶回路36、及び端子T1~T5を有している。
【0066】
記憶回路36は、各種データや各種プログラムなどを記憶する回路であり、例えば、不揮発性メモリ(例えば、EPROM、フラッシュメモリ等)を有している。また、本実施形態の記憶回路36には、ブリッジ回路20の温度と、オフセット電圧ΔSとの関係を示す情報を示すルックアップテーブル(以下、単にテーブルともいう)が記憶されている。テーブルには、複数の温度と各温度に対するオフセット電圧ΔSとが対応付けられている。
【0067】
CPU33は、端子T5を介して温度センサ40に接続されている。そして、CPU33は、温度センサ40の検出結果(検出温度)に対応するオフセット電圧ΔSを、記憶回路36のテーブルから読み出して基準電圧Vrefの演算に用いる。これにより、ブリッジ回路20のオフセット電圧ΔSの温度依存性を補正することができる。なお、複数の温度と、2つのレベルの基準電圧Vrefとを予めテーブルに対応付けておいてもよい。この場合、CPU33は、検出された温度に対応する基準電圧Vrefを読み出せばよいので、基準電圧Vrefの演算(オフセット電圧ΔSと差動増幅回路31の増幅率Gwを用いた演算)をしなくてもよくなる。
【0068】
この第2実施形態では、ブリッジ回路20のオフセット電圧ΔSが、温度によって変動しても、補正することが可能である。よって、センシングの精度をより向上させることができる。
【0069】
=====まとめ=====
以上、本実施形態のIC30について説明した。IC30は、差動増幅回路31とDAコンバータ35を備えている。差動増幅回路31は、ブリッジ回路20の一対の入力端子(ノードN1,N2)に印加される電圧Va,Vb(交流電圧)に応じて、一対の出力端子(ノードN3,N4)から出力される出力電圧Woを増幅率Gwで増幅した電圧と、基準電圧Vrefとに基づく電圧Viを出力する。DAコンバータ35は、Va<Vbの場合に基準電圧Vref(Vref1)を4.5V(=2.5V+200mV×10)とし、Va>Vbの場合に基準電圧Vref(Vref2)を0.5V(=2.5V-200mV×10)とする。
【0070】
これにより、ブリッジ回路20のオフセット電圧ΔSを除去することができ、センシングの精度を向上させることができる。
【0071】
また、基準電圧Vrefを出力する回路としてDAコンバータ35を用いている。
【0072】
これにより、基準電圧Vrefを所望のレベルに設定(変更)することができる。
【0073】
また、差動増幅回路31から出力される電圧Vi(電圧V1,V2)のそれぞれをデジタル値に変換するADコンバータと、デジタル値に基づいて、ブリッジ回路20が計測する物理量(圧力等)を演算するCPU33を備えている。
【0074】
これにより、ブリッジ回路20の検出結果を精度よく求めることができる。
【0075】
また、第2実施形態のIC30Aは、ブリッジ回路20の温度と、オフセット電圧ΔSとの関係を示す情報を記憶する記憶回路36を備えている。そして、CPU33は、ブリッジ回路20の温度を検出する温度センサ40の検出結果と、上記情報とに基づいて、DAコンバータ35に上記検出結果に応じた基準電圧Vrefを出力させている。
【0076】
これにより、ブリッジ回路20のオフセット電圧ΔSの温度依存性に対応することができ、温度が変化した場合でも、センシングの精度を向上させることができる。
【0077】
また、差動増幅回路31は、反転入力端子(-端子)と非反転入力端子(+端子)を有するオペアンプ31aと、抵抗R1~R4とを備えている。
抵抗R1は、ブリッジ回路20の出力端子(ノードN3)と、オペアンプ31aの-端子との間に接続され、抵抗R2は、ブリッジ回路20の出力端子(ノードN4)と、オペアンプ31aの+端子との間に接続されている。また、抵抗R3は、オペアンプ31aの出力と-端子の間に接続された帰還抵抗であり、抵抗R4の一端は、オペアンプ31aの+端子に接続され、抵抗R4の他端には基準電圧Vrefが印加される。
【0078】
これにより、基準電圧vrefを基準として、抵抗R1~R4の抵抗の値に応じた増幅率Gwで微小レベルの信号(ブリッジ回路20の出力)を増幅することが出来る。
【0079】
=====その他の実施形態=====
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0080】
前述の実施形態では、CPU33の指示に基づいて、DAコンバータ35が基準電圧Vrefを2つレベル(4.5Vと1.5V)に切り替えていたが、これには限られない。例えば、2つの電圧源と、スイッチで構成してもよい。そして、スイッチの切り替えによって、2つの電圧源の何れかの電圧が差動増幅回路31(具体的には抵抗R4)に印加されるようしにてもよい。この場合、2つの電圧源とスイッチが「基準電圧出力回路」に相当する。
【符号の説明】
【0081】
1,1A,100 半導体装置
10 交流電源回路
20 ブリッジ回路
30,30A,300 集積回路
31 差動増幅回路
31a オペアンプ
32 ADコンバータ
33 CPU
34 タイミング回路
35 DAコンバータ
36 記憶回路
40 温度センサ
Ra~Rd,R1~R4 抵抗
N1~N4 ノード
T1~T5 端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6