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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043888
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】鉱石または石炭用水系分散体
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20240326BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20240326BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20240326BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20240326BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20240326BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240326BHJP
   C08L 79/02 20060101ALI20240326BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240326BHJP
   C21B 11/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C09K23/52
C08L101/02
C08K3/00
C08L33/02
C08L33/26
C08L71/02
C08L79/02
C22B1/00 101
C21B11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149118
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】今泉 洋平
(72)【発明者】
【氏名】正保 好啓
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和也
(72)【発明者】
【氏名】宮野 淳次
【テーマコード(参考)】
4J002
4K001
4K012
【Fターム(参考)】
4J002BC101
4J002BG011
4J002BG071
4J002BG121
4J002BH021
4J002BQ001
4J002CM012
4J002DD056
4J002DD066
4J002DE226
4J002DF006
4J002DG046
4J002FD202
4J002FD206
4J002GT00
4J002HA04
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA05
4K012CA00
(57)【要約】
【課題】本発明は、含水量の多い鉱石または石炭の運搬工程における搬送性に優れ、かつ燃焼時のCO2排出量低減に寄与し、幅広いpHの鉱石に対しても凝集力を発揮可能な鉱石または石炭用水系分散体を提供することを目的とする。
【解決手段】
アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する水溶性重合体と水を含む 鉱石または石炭用水系分散体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する水溶性重合体と水を含む、鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項2】
更に無機塩を含む請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項3】
前記アニオン性基含有単量体由来の構造単位が、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位を含む請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項4】
前記アニオン性基含有単量体由来の構造単位が、更に下記一般式(1)の構造単位を含む請求項3に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【化1】
(式中R1はH、メチル基又はカルボキシメチル基、AはSO3、C6H4SO3、CONHC(CH3)2CH2SO3、R2はH又はCOOY2、Y1或いはY2はH又は陽イオンをそれぞれ表わす。)
【請求項5】
前記水溶性重合体がアクリルアミド系単量体由来の構造単位を含む請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項6】
前記水溶性重合体100質量部あたりのアクリルアミド系単量体由来の構造単位の含有量が20質量部以上90質量部以下である請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項7】
前記水溶性重合体100質量部あたりのアニオン性基含有単量体由来の構造単位の含有量が5質量部以上50質量部以下である請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項8】
更に分散剤を含む請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項9】
前記分散剤がポリアルキレンイミン、ポリアルキレングリコール由来の構造単位のいずれかを含む請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項10】
前記水系分散体100質量部あたりの前記分散剤の含有量が1質量部以上10質量部以下である請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項11】
前記鉱石または石炭用水系分散体が製鉄原料用水系分散体である請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体。
【請求項12】
請求項11のいずれかに記載の製鉄原料用水系分散体と製鉄原料を含む組成物。
【請求項13】
請求項12に組成物を用いて得られた銑鉄。
【請求項14】
請求項1に記載の鉱石または石炭用水系分散体を、含水率が3質量部以上50質量%である鉱石または石炭へ添加して用いる鉱石または石炭水系分散体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱石または石炭用水系分散体に関する。ならびに当該鉱石または石炭用水系分散体と鉱石または石炭を含む組成物に関する。本発明の鉱石または石炭用水系分散体は、例えば、鉄鉱石などの製鉄原料を採掘場から製鉄炉へ運搬する際の製鉄原料用高分子凝集剤として好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄鋼の製造は、鉄鉱石から銑鉄を生産する高炉、転炉によるもの、鉄くずなどのスクラップを利用する電気炉による方法があるが、このうち、高炉、転炉による生産量が全体の多くを占めている。近年では、経済的な急成長などに伴って、世界における鉄鋼の生産量が増加し、鉄鉱石の採掘または収集は世界各国で進められてきた。
各国で採掘された製鉄原料は、貨物船等を用いて各地の港へ運ばれ、港から各製鉄所へ搬送された後に、各種処理をされて銑鉄へと変化する。製鉄原料は、バラ積み貨物船で製鉄所に輸送される際、船倉の床に溜まった水により、集積物の下部の製鉄原料がスラリー状態となったり、原料ヤードに野積みされた状態で保管される際も、雨や粉塵防止のための散水等の水により、スラリー状態となる場合がある。このようなスラリー状態となった製鉄原料等の鉱物原料スラリーは、水分が多い泥状の流動物であるため、船倉や原料ヤードからの搬出が困難であるなどの課題があり種々改善方法が検討されてきた。例えば特許文献1には、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーに、水溶性高分子化合物を添加し、混合することを特徴とする、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの改質方法が記載され、具体的にはアニオン性W/O型(油中水滴型)エマルジョンポリマーを添加することにより、スラリーの流動性を低下させることができ、得られた改質物は安定的に取り扱えることが記載されている。
また特許文献2には、湿潤な鉱物原料に高吸水性樹脂を接触させた原料混合物を移送設備にて移送し、前記鉱物原料の前記移送設備での付着及び詰まりを防止する、鉱物原料の付着及び詰まり防止方法が記載され、湿潤な鉱物原料が移送設備の接触面に付着することが抑制され、該移送設備での付着及び詰まりを簡便に防止することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-214292
【特許文献2】特開2018-058017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1記載のW/O型のエマルジョンポリマーは、高炉で燃焼する際にCO2を多く排出するため、環境保護の観点から課題を有している。また、特許文献2記載の高吸水性樹脂は粉体であることから添加方法に工夫が必要であった。
また、製鉄原料は鉄鉱石の成分によって含水時のpHに幅があり、幅広いpHの製鉄原料に使用可能な高分子凝集剤の必要性が判明した。
本発明の目的は、含水量の多い鉱石または石炭の運搬工程における搬送性に優れ、かつ燃焼時のCO2排出量低減に寄与し、幅広いpHの鉄鉱石などの鉱石に対しても凝集力を発揮可能な鉱石または石炭用高分子凝集剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、上記のような問題点に鑑み検討を行い、アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する水溶性重合体と水を含む鉱石または石炭用水系分散体が、含水量の多い鉱石または石炭の運搬工程における搬送性に優れ、かつ燃焼時のCO2排出量低減に寄与し、幅広いpHの鉱石に対しても凝集力を発揮可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、含水量の多い鉱石または石炭の運搬工程における搬送性に優れ、かつ燃焼時のCO2排出量低減に寄与し、幅広いpHの鉱石に対しても凝集力を発揮可能な鉱石または石炭用水系分散体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の鉱石または石炭用高分子凝集剤は、アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する水溶性重合体と水を含む高分子凝集剤用水系分散体である。
【0008】
<水溶性重合体>
本開示の水溶性重合体は、アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する。
本明細書における単量体由来の構造単位とは、不飽和二重結合部分を有する単量体由来の構造単位を意図し、単量体が有する不飽和二重結合部分(C=C)が、単結合(-C-C-)となった構造を意味する。当該構造は、各不飽和二重結合部分を有する単量体を重合してなる重合体だけでなく、他の単量体を重合してなる重合体の後変性によって、当該単量体由来の構造単位を形成しても良い。
本開示のアニオン性基含有単量体としては、アニオン性基を有する単量体である。単量体
中に含有するアニオン基は、カルボキシル基でもスルホン基でもさしつかえなく、両方を併用しても良い。
また、本開示の水溶性重合体としてはアニオン性基含有単量体由来の構造単位を有していれば特に制限はないが、本開示の水溶性重合体100質量部におけるポリアルキレングリコール由来の構造を有する単量体由来の構造単位の含有量は10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0質量部である(含まない)ことが特にアニオン性基含有単量体であることがより好ましい。
【0009】
本開示のアニオン性基がカルボキシル基を含む場合、アニオン性基含有単量体としては(メタ)アクリル酸(塩)、イタコン酸、マレイン酸、p-カルボキシスチレンなどが挙げられる。
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
本開示の(メタ)アクリル酸(塩)としては、具体的にはアクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸、メタクリル酸の塩が挙げられる。(メタ)アクリル酸塩とは、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基が中和された中和塩である。中和塩としては一価のカチオンとの塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、アルカリ金属塩であることがさらに好ましく、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種であることがよりさらに好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
本開示のアニオン性基がスルホン酸基を含む場合、アニオン性基含有単量体としては、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、高分子凝集剤として使用する観点から2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸を用いることが好ましい。
本開示のアニオン性基がスルホン酸基を含む場合、本開示の水溶性重合体においてアニオン性基含有単量体由来の構造単位100質量部におけるポリアルキレングリコール由来の構造を有する単量体由来の構造単位は10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0質量部である(含まない)ことが特にアニオン性基含有単量体であることがより好ましい。
本開示のアニオン性基がスルホン酸基である場合、アニオン性基含有単量体由来の構造単位としては、下記一般式(1)の構造単位であってもよい。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中R1はH、メチル基又はカルボキシメチル基、AはSO3、C6H4SO3、CONHC(CH3)2CH2SO3、R2はH又はCOOY2、Y1或いはY2はH又は陽イオンをそれぞれ表わす。)
本開示の水溶性重合体としては、アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する限り特に制限はないが、その他単量体由来の構造単位を有していても良い。
本開示のその他単量体としては、カチオン性単量体、非イオン性単量体などが挙げられる。
【0012】
本開示のカチオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルジアリルアミンなどが挙げられる。
本開示の非イオン性単量体としては、非イオン性単量体の例としては、アクリルアミド系単量、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、N-ビニルラクタム系単量体などが挙げられる。
本開示のアクリルアミド系単量体としては、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、n-プロピル(メタ)アクリルアミド、ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、イソブチル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチル(メタ)アクリルアミド、tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、n-ペンチル(メタ)アクリルアミド、ジ-n-ペンチル(メタ)アクリルアミド、n-へキシル(メタ)アクリルアミド、ジ-n-へキシル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられ、高分子凝集剤として用いる観点から、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、n-プロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリルアミドが好ましく、(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
本開示の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
本開示の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられ、具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
本開示のN-ビニルラクタム系単量体としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-5-メチルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム、1-(2-プロペニル)-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0013】
本開示の水溶性重合体100質量部におけるアニオン性基含有単量体由来の構造単位の含有量としては、5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水溶性重合体100質量部における(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位の含有量としては、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、7質量部以上がさらに好ましく、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水溶性重合体100質量部における一般式(1)の構造単位の含有量としては、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
【0014】
本開示の水溶性重合体100質量部における(メタ)アクリル酸(塩)および一般式(1)の構造単位の質量比((メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位の質量/一般式(1)の構造単位の質量)としては、3/1~30/20が好ましく、5/2~25/15がより好ましく、7/3~20/10がさらに好ましい。
本開示の水溶性重合体100質量部における(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸塩の質量比((メタ)アクリル酸由来の構造単位の質量/(メタ)アクリル酸塩由来の構造単位の質量)としては、1/1~20/20が好ましく、2/2~15/15がより好ましく、3/3~10/10がさらに好ましい。
本開示の水溶性重合体を重合する際に用いる(メタ)アクリル酸の中和塩の量(中和率)としては、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
本開示の水溶性重合体100質量部におけるカチオン性単量体由来の構造単位の含有量としては5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0質量部であってもよい。
本開示の水溶性重合体100質量部における非イオン性単量体由来の構造単位の含有量としては、60質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、75質量部以上がさらに好ましく、98質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましい。
非イオン性単量体としてアクリルアミド系単量体を用いる際には、本開示の水溶性重合体100質量部におけるアクリルアミド系単量体由来の構造単位の含有量としては、60質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、75質量部以上がさらに好ましく、98質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水溶性重合体は水溶性である。本明細書における水溶性とは、100gの水に1.0g以上溶解する事を意味する。
【0015】
<水系分散体>
本開示の水系分散体としては、アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する水溶性重合体を含む限り特に制限はない。
本開示の水系分散体100質量部におけるアニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する水溶性重合体の含有量としては、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体としては、アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する水溶性重合体以外に無機塩を含んでいても良い。
本開示の無機塩としては、水溶性無機塩を用いることが好ましい。
本開示の無機塩としては、無機金属塩又は無機アンモニウム塩であることが好ましい。
本開示の無機金属塩としては、例えば、金属塩化物、金属臭化物、金属硫酸塩、金属クロム酸塩等が挙げられ、より具体的には、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、硫酸カリウム、塩化マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸水素マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸水素アルミニウム等が挙げられる。上記無機アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム等が挙げられる。
本開示の無機塩としては、鉱石または石炭用として用いる観点から無機アンモニウム塩であることが好ましく、水系分散体の安定性の観点から硫酸アンモニウムがより好ましい。
本開示の水系分散体100質量部における無機塩の含有量としては、5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0016】
本開示の水系分散体としては、更に分散剤を含んでいても良い。
本開示の分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、イオン性高分子分散剤を用いることがより好ましい。
本開示の分散剤としては、カチオン性分散剤であっても良いし、アニオン性分散剤であってもよい。
本開示のカチオン性分散剤としては、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンイミン変性物が挙げられる。
本開示のポリアルキレンイミンとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミンなどが挙げられる。
本開示のポリアルキレンイミンの重量平均分子量Mwは、好ましくは100~150000であり、より好ましくは150~120000であり、さらに好ましくは200~100000であり、特に好ましくは250~80000である。
本開示のポリアルキレンイミン変性物としては、前述のポリアルキレンイミンの変性物が挙げられ、例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどで架橋により変性したポリアルキレンイミンも使用することができる。
本開示のアニオン性分散剤としては、アニオン性基含有単量体に由来する構造を有しており、アニオン性基としてカルボキシル基、スルホン基などが挙げられ、アニオン性基を複数種有していても良い。
本開示のアニオン性分散剤100質量部におけるアニオン性基含有単量体の含有割合としては、70質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、90質量部以上がさらに好ましく、99質量部以下が好ましく、98質量部以下がより好ましく、97質量部以下がさらに好ましい。
本開示のアニオン性基がカルボキシル基を有する際のアニオン性分散剤としては、ポリアクリル酸(塩)、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。
本開示のアニオン性基がスルホン基を有する際のアニオン性分散剤としては、下記一般式(1)の構造単位を有していてもよい。
【0017】
【化2】
【0018】
(式中R1はH、メチル基又はカルボキシメチル基、AはSO3、C6H4SO3、CONHC(CH3)2CH2SO3、R2はH又はCOOY2、Y1或いはY2はH又は陽イオンをそれぞれ表わす。)
本開示の分散剤としては、ポリアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリル酸エステル(ポリアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリレート)由来の構造単位を有することが好ましい。
本開示のポリアルキレングリコール基含有単量体由来の構造単位としては、例えば下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R6は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。BOは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を表す。なお、BOで表されるオキシアルキレン基が2種以上ある場合、当該基は、ブロック状に導入されていてもよく、ランダム状に導入されていてもよい。yは、0~2の整数である。zは、0又は1である。rは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~300の数である。)
本開示のポリアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、又はブチレンオキサイド鎖を持ち、その繰り返し数が2から30である(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
本開示のポリエチレンオキサイド鎖を有するポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本開示のポリプロピレンオキサイド鎖を有するポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げられる。
本開示のポリブチレンオキサイド鎖を有するポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、メトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、ポリエチレンオキサイド鎖と、ポリプロピレンオキサイド鎖の両方を有するポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
市販のポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社の商品名としては、NKエステルAM30G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリアルキレンオキサイド鎖の繰り返し数:n=3)、NKエステルM40G(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=4)、NKエステルAM90G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=9)、NKエステルM90G(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=9)、NKエステルAM130G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=13)、NKエステルAM230G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=23)などが挙げられる。
また、共栄社化学株式会社の商品名としては、ライトアクリレートMTG-A(メトキシトリエチレングリコールアクリレート,n=3)、ライトアクリレート130A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=9)などが挙げられる。
また、日油株式会社の商品名としては、ブレンマーAE-200(ポリエチレングリコールアクリレート、n=4.5)、ブレンマーAE-350(ポリエチレングリコールアクリレート、n=8)、ブレンマーAE-400(ポリエチレングリコールアクリレート、n=10)、ブレンマーPE-200(ポリエチレングリコールメタクリレート、n=4.5)、ブレンマーPE-350(ポリエチレングリコールメタクリレート、n=8)、ブレンマーAP400(ポリプロピレングリコールアクリレート、n=6)、ブレンマーAP550(ポリプロピレングリコールアクリレート、n=9)、ブレンマーPP-500(ポリプロピレングリコールメタクリレート、n=9)、ブレンマーPP-800(ポリプロピレングリコールメタクリレート、n=13)、ブレンマーPP-1000(ポリプロピレングリコールメタクリレート、n=16)、ブレンマーAME-400(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=9)、ブレンマーPME-200(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=4)、ブレンマーPME-400(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=9)、ブレンマーPME-1000(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=23)などが挙げられる。
また、大阪有機化学工業株式会社の商品名としては、MPE400A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=約7)、MPE550A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=約9)などが挙げられる。
【0021】
本開示の分散剤100質量部におけるポリアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位の含有量としては、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
本開示のアニオン性分散剤としては、ポリアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位と共にアニオン性基含有単量体由来の構造単位を有することが好ましく、アニオン性分散剤100質量部におけるポリアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位とアニオン性基含有単量体由来の構造単位の合計量としては、80質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましく、95質量部以上がさらに好ましく、100質量部が特に好ましい。
本開示の水系分散体100質量部における分散剤の含有量としては、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましく、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体としては、アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する水溶性重合体以外に分子量200以下のジカルボン酸を含んでいても良い。
本開示の分子量200以下のジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
【0022】
本開示の水性分散体100質量部における分子量200以下のジカルボン酸の含有量としては、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.08質量部以上がさらに好ましく、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体100質量部における不揮発分としては、取り扱い性の観点から10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、45質量部以下がさらに好ましい。
【0023】
本明細書において、水系分散体の不揮発分量は、水系分散体全質量から、重合体、及び各種添加剤に含まれる揮発成分質量を除く質量として、実施例記載の通り算出して求めてもよいし、水系分散体1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔水系分散体における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔水系分散体1g〕)×100
に基づいて求められた値であっても良い。
【0024】
<水系分散体の製造方法>
本開示の水系分散体の製造方法としては、沈澱重合法、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、何らかの重合溶媒を用いる公知の各種重合方法を用いることができ、適宜選択すればよいが、凝集剤としての取り扱い性の観点から分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法が好ましく、分散重合法、懸濁重合法がよりこのましく、水溶性重合体を含む点において懸濁重合用がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法としては、水性媒体を仕込んだ反応容器へ単量体を添加し重合することにより得ることができる。
本開示の水性媒体としては、例えば、水、メタノールなどの低級アルコールなどが挙げられるが、凝集剤として使用する作業環境の観点から水を用いることが好ましい。
本開示の水性媒体100質量部における水の含有量としては、90質量部以上が好ましく、95質量部以上がより好ましく、100質量部がさらに好ましい。
本開示の水性分散体の製造方法としては、水溶性重合体を構成する全単量体成分(以下単量体成分Aとも言う)を重合する工程を含む。
単量体成分Aの種類としては、アニオン性基含有単量体やその他単量体が挙げられ、当該単量体は前述の通りであり、本開示のアニオン性基がスルホン酸基である場合、アニオン性基含有単量体としては、下記一般式(3)の化合物が挙げられる。
【0025】
【化4】
【0026】
(式中R1はH、メチル基又はカルボキシメチル基、AはSO3、C6H4SO3、CONHC(CH3)2CH2SO3、R2はH又はCOOY2、Y1或いはY2はH又は陽イオンをそれぞれ表わす。)
本開示の水系分散体の製造方法において、単量体成分Aを重合する際に用いるアニオン性基含有単量体の使用量としては、単量体成分A100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法において、単量体成分Aを重合する際に用いる(メタ)アクリル酸(塩)の使用量としては、単量体成分A100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、8質量部以上がさらに好ましく、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法において、単量体成分Aを重合する際に用いる一般式(3)の化合物の使用量としては、単量体成分A100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
【0027】
本開示の単量体成分Aにおける(メタ)アクリル酸(塩)および一般式(3)の化合物の質量比((メタ)アクリル酸(塩)の質量/一般式(3)の化合物の質量)としては、3/1~40/20が好ましく、5/2~30/15がより好ましく、8/3~20/10がさらに好ましい。
本開示の単量体成分Aにおける(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸塩の質量比((メタ)アクリル酸の質量/(メタ)アクリル酸塩の質量)としては、1/1~20/20が好ましく、2/2~15/15がより好ましく、3/3~10/10がさらに好ましい。
本開示の単量体成分Aにおける(メタ)アクリル酸の中和塩の量(中和率)としては、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
本開示の単量体成分Aにおけるその他単量体の使用量としては、単量体成分A100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
本開示の単量体成分Aにおけるカチオン性単量体の使用量としては、単量体成分A100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0質量部であってもよい。
本開示の単量体成分Aにおける非イオン性単量体としては、単量体成分A100質量部に対して、60質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、75質量部以上がさらに好ましく、98質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましい。
非イオン性単量体としてアクリルアミド系単量体を用いる際には、本開示の単量体成分Aにおけるアクリルアミド系単量体の使用量としては、単量体成分A100質量部に対して、60質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、75質量部以上がさらに好ましく、98質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましい。
【0028】
水性媒体に単量体成分および重合開始剤を添加し、重合する工程を有し、分散剤の存在下で水溶性重合体を重合する工程を含むことが好ましい。本開示の水溶性重合体の製造方法に用いる単量体成分(単量体成分A)および組成としては、前述の通りである。
本開示の水溶性重合体の製造方法に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス[-(2-(カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン)テトラヒドレート、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、4,4’-アゾビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル4-シアノペンタノエート)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウムなどの亜硫酸水素塩等などが挙げられ、分散安定性の観点からアゾ化合物を用いることが好ましく、水系分散体を製造する観点から、2,2’-アゾビス[-(2-(カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン)テトラヒドレート、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などの水溶性アゾ化合物を用いることが好ましい。
【0029】
本開示の水溶性重合体の製造方法で用いる重合開始剤の使用量としては、単量体成分A100質量部に対して0.005質量部以上が好ましく、0.008質量部以上がより好ましく、0.01質量部以上がさらに好ましく、0.3質量部以下が好ましく、0.2質量部以下がより好ましく、0.1質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水溶性重合体の製造方法で用いる重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよいが、水溶性重合体を構成する単量体成分Aの添加を開始する前に添加することが好ましく、水溶性重合体の重合に用いる重合開始剤の全量を水溶性重合体を構成する単量体成分Aの添加を開始する前に添加することがより好ましい。
本開示の水溶性重合体の製造方法としては、分子量調節のためにアルコールやメルカプタン等の連鎖移動剤を添加することも任意に選択することができる。
本開示の分子量調節に用いるアルコールとしては、イソプロピルアルコール等の2級アルコール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、および1,4-シクロヘキサンジエタノール等の2価のアルコールなどが挙げられる。
本開示の連鎖移動剤としてアルコールを用いる際には、1価のアルコールでもよいし、多価アルコールでもよいが、連鎖移動能の観点から多価アルコールが好ましく、2価のアルコールがより好ましく、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールがさらに好ましい。
本開示の連鎖移動剤としてメルカプタンとしては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤が挙げられる。
本開示の水溶性重合体の製造方法で用いる連鎖移動剤の使用量としては、単量体成分A100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法として、連鎖移動剤の添加方法としては、全量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよいし、連続して滴下してもよいが、分散安定性の観点から分割して添加するまたは滴下することが好ましい。
本開示の連鎖移動剤の添加開始から添加終了までに有する時間としては、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、1~9時間程度であり、1.5時間~4時間程度がより好ましい。
【0030】
本開示の水系分散体の製造方法としては、分散剤の存在下で水溶性重合体を重合する工程を含むことが好ましく、単量体成分Aを添加する際に分散剤の一部を添加する工程を含むことがより好ましい。本明細書において単量体成分Aの添加前に反応容器に含まれる分散剤を初期分散剤と称し、単量体成分Aの添加と同時または単量体成分Aの添加開始後に添加する分散剤を添加分散剤と称することがある。
本開示の水系分散体の製造方法としては、水溶性重合体を重合する際の初期分散剤と添加分散剤の質量比(初期分散剤の質量/添加分散剤の質量)としては、30/70~95/5が好ましく、40/60~92/8がより好ましく、50/50~90/10がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法としては、分散剤100質量部における初期分散剤の含有量としては、30質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、95質量部以下が好ましく、92質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法として、水溶性重合体を重合する際の添加分散剤の添加方法としては分割添加でも滴下でもよいが、滴下することが好ましい。
本開示の添加分散剤の添加開始から添加終了までに有する時間としては、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、1~9時間程度であり、1.5時間~4時間程度がより好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法として、水溶性重合体を重合する際の単量体成分Aの添加方法としては、全量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよいし、連続して滴下してもよいが、分散安定性の観点から分割して添加するまたは滴下することが好ましい。
本開示の単量体成分Aの添加開始から添加終了までに有する時間としては、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、1~9時間程度であり、1.5時間~4時間程度がより好ましい。
【0031】
本開示の水系分散体の製造方法としては、単量体成分Aに含まれるアクリルアミド系単量体およびアニオン性基含有単量体は混合した状態で添加してもよいし、別々に添加しても良いが、分散安定性の観点から混合した状態で添加することが好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法としては、水溶性重合体を重合する際に、無機塩の存在下で水溶性重合体を重合する工程を含むことがより好ましく、単量体成分Aを添加する際に無機塩の一部を添加する工程を含むことがより好ましい。本開示の無機塩としては前述の通りである。本明細書において単量体成分Aの添加前に反応容器に含まれる無機塩を初期無機塩と称し、単量体成分Aの添加と同時または単量体成分Aの添加開始後に添加する無機塩を添加無機塩と称することがある。
本開示の水系分散体の製造方法としては、水溶性重合体を重合する際の初期無機塩と添加無機塩の質量比(初期重無機塩の質量/添加無機塩の質量)としては、90/10~50/50が好ましく、80/20~60/40がより好ましく、70/30がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法としては、無機塩100質量部における初期無機塩の含有量としては、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がさらに好ましく、98質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法として、水溶性重合体を重合する際の添加無機塩の添加方法としては分割添加でも滴下でもよいが、滴下することが好ましく、水性媒体と共に添加することがより好ましい。
【0032】
本開示の水系分散体の製造方法における無機塩の濃度としては、単量体Aの添加以前に反応容器内に含まれる全化合物100質量部に対して10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法における無機塩の濃度としては、単量体Aの添加終了時に反応容器内に含まれる全化合物100質量部に対して5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
本開示の添加無機塩の添加開始から添加終了までに有する時間としては、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、1~9時間程度であり、1.5時間~4時間程度がより好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法としては、水溶性重合体を重合する際に、分子量200以下のジカルボン酸と共に水溶性重合体を重合する工程を含むことがより好ましく、単量体成分Aを添加する際に分子量200以下のジカルボン酸の一部または全部を添加する工程を含むことがより好ましい。本開示の分子量200以下のジカルボン酸としては前述の通りである。本明細書において単量体成分Aの添加前に反応容器に含まれる分子量200以下のジカルボン酸を初期ジカルボン酸と称し、単量体成分Aの添加と同時または単量体成分Aの添加開始後に添加する分子量200以下のジカルボン酸を添加ジカルボン酸と称することがある。
【0033】
本開示の水系分散体の製造方法としては、水溶性重合体を重合する際の初期ジカルボン酸と添加ジカルボン酸の質量比(初期重ジカルボン酸の質量/添加ジカルボン酸の質量)としては、0/100~30/70が好ましく、0/100~10/90がより好ましく、0/100~5/95がさらに好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法としては、分子量200以下のジカルボン酸100質量部における初期ジカルボン酸の含有量としては、分散安定性の観点から、30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、0質量部が特に好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法として、水溶性重合体を重合する際の添加ジカルボン酸の添加方法としては分割添加でも滴下でもよいが、滴下することが好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法における分子量200以下のジカルボン酸の濃度としては、単量体成分Aの添加以前に反応容器内に含まれる全化合物100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0質量部以下が特に好ましい。
本開示の水系分散体の製造方法における分子量200以下のジカルボン酸の濃度としては、単量体成分Aの添加終了時に反応容器内に含まれる全化合物100質量部に対して0.005質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、1質量部以下が好ましく、0.8質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。
本開示の添加ジカルボン酸の添加開始から添加終了までに有する時間としては、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、1~9時間程度であり、1.5時間~4時間程度がより好ましい。
【0034】
本開示の水系分散体の製造方法としては、水溶性重合体を重合するにあたり、重合温度は特に限定はなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体に製造方法としては、水溶性重合体を重合するにあたり、単量体成分Aの添加完了後に昇温工程を有することが好ましい。本開示の昇温工程としては、単量体成分Aを重合した際の重合温度よりも高温にて熟成させる工程を意図し、重合温度に対して0℃以上40℃以下が好ましく、0℃以上30℃以下がより好ましく、0℃以上20℃以下がさらに好ましい。
本開示の水系分散体は、上記製造方法を用いることにより、重合時の分散安定性および貯蔵安定性が良好な水系分散体を得ることができる。
【0035】
<凝集物>
本開示の水系分散体は、鉱石または石炭用高分子凝集剤として用いることができる。具体的には本開示の水系分散体を、水を含む鉱石または石炭に添加することにより良好な凝集性を発現することができ、野積みされた堆積物からの粉塵飛散を抑制したり、当該堆積物の崩れや留出の防止することが期待できる。また、貨物船への搬入または貨物船からの搬出、その後各製鉄所内の運搬に利用されるベルトコンベアの接続部分(シュート)等に鉱石または石炭が付着することを抑制することが期待できる。添加するとは、散布もしくは混合することにて行うことができる。
本開示の鉱石としては、鉄鉱石、ニッケル酸化鉱石 亜鉛鉱石、金鉱石、銀鉱石、鉛鉱石、ビスマス鉱石、スズ鉱石、アンチモン鉱石、クロム鉱石、マンガン鉱石、モリブデン鉱石、コバルト鉱石、チタン鉱石、リン鉱石、バリウム鉱石、カルシウム鉱石、マグネシウム鉱石などが挙げられる。
本開示の水系分散体としては、鉱石または石炭用高分子凝集剤として用いることができるが、鉄鉱石または石炭などの製鉄原料用高分子凝集剤として用いることがより好ましい。
本開示の製鉄原料としては、石炭や鉄鉱石などが挙げられる。
水を含む鉱石または石炭とは、例えば鉱石または石炭100質量部中の水の含有割合が5質量部以上であってよく、10質量部以上であってよく、15質量部以上であってよい。
本開示の水溶性重合体または本開示の水系分散体を鉱石または石炭用高分子凝集剤として用いた態様は、鉱石または石炭用高分子凝集剤と鉱石または石炭と水を含む組成物である。
【0036】
本開示の組成物100質量部中の重合体の含有割合は、凝集性等の観点から0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、コストや環境負荷等の観点から30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
本開示の組成物100質量部中の鉱石または石炭の含有割合は、経済性の観点から10質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましい。
本開示の組成物100質量部中の水の含有割合は、本特許の高分子凝集剤の凝集力の観点から10質量部以上であってよく、15質量部以上であってよく、20質量部以上であってよく、特に水の含有割合に上限はないが、生産性の観点から60質量部以下であってよく、50質量部以下であってよく、40質量部以下であってよい。水の含有割合が高い場合には、十分な凝集力を発揮するために添加する高分子凝集剤量を増量する必要がある。
【0037】
<凝集物の製造方法>
本開示の凝集物は、本開示の水溶性重合体または本開示の水系分散体を、水を含む製鉱石または石炭に散布もしくは混合等することにより、得ることができる。すなわち、水を含む鉱石または石炭に添加して用いる使用方法も包含する。
本開示の水溶性重合体または本開示の水系分散体を、水を含む鉱石または石炭に散布する方法としては、特に限定されないが、例えば、散水車、スプレー、シャワーノズル、塩化ビニルパイプ、スプリンクラー等の各種(滴下)散布装置を使用してもよい。
散布方法としては、吐出口から棒状に散布(ベタ掛け)してもよく、水を含む鉱石または石炭に対する付着効率が高まり、粉塵抑制効果が高まる等の観点から、細かいシャワーリングを好適に使用してもよい。また、散布時に塩基と混合して、散布してもよい。
本開示の水溶性重合体または本開示の水系分散体を堆積成分に散布するタイミングとしては、如何なるタイミングでも良く、貨物船への搬入前、貨物船からの荷揚げ前、製鉄炉へ運搬するためのベルトコンベアで輸送する前などに散布してもよい。
【0038】
<銑鉄>
本開示の水溶性重合体または本開示の水系分散体を用いた鉱石または石炭用高分子凝集剤と鉱石または石炭と水を含む組成物は、製鉄炉にて各種処理をされて銑鉄となる。
本開示の水溶性重合体または本開示の水系分散体を用いることにより、含水量が多い鉱石または石炭であっても、貨物船への搬入または貨物船から搬出し、その後各製鉄所内を運搬するにあたり、運搬に利用されるベルトコンベアの接続部分(シュート)等への鉱石または石炭の搬送性が期待できることから、銑鉄の生産性向上に有用な鉱石または石炭用高分子凝集剤として有効なものである。
【実施例0039】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0040】
<水系分散体の粘度>
B型粘度計(東機産業社製:Viscosity TVB-10M)にて30rpm粘度を計測した。
<水系分散体の稀釈液粘度>
水系分散体を、水溶性重合体の濃度が2.5質量%になるように純水で稀釈し、総量が約60g程度となるよう希釈液を調整する。
B型粘度計(東機産業社製:Viscosity TVB-10M)にて30rpm粘度を計測した。
<水系分散体の不揮発分>
水系分散体全質量から、重合体、及び各種添加剤に含まれる揮発成分質量を除く質量として以下の式の通り算出して求めた。
式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔水系分散体全質量-揮発成分質量〕÷〔水系分散体全質量〕)×100
【0041】
<凝集力評価>
酸化鉄(III)(富士フィルム和光純薬(株)から購入)の粉末75部に水を25部添加して含水率25%の酸化鉄(III)のスラリーを調製し、そこから30部を取り出した。各試料(エマルション又は粉体)を固形分として0.02部となるように添加して、よく掻き混ぜた。
【0042】
得られた混合物を以下基準で評価した。
(評価基準)
◎:スラリーが乾燥しており、細かい粉末となった。
○:スラリーが凝集して団子状の塊となった。
△:スラリーに少し水浮きが見られるが増粘、凝集した。
×:スラリーが凝集せず低粘度溶液のまま。
<環境負荷性>
試料有姿1gを燃焼させ、発生した気体を濃度既知の水酸化バリウム水溶液に通過させた。気体の発生がなくなった後、生じた沈殿物を濾過し、濾液を濃度既知の塩酸による中和滴定を行うことで、発生した二酸化炭素量を計算した。
二酸化炭素量(g)
={水酸化バリウム水溶液の濃度(moL/L)×水酸化バリウム水溶液量(L)-中和に要した塩酸量(L)×塩酸の濃度(moL/L)×1/2×(水酸化バリウム水溶液量(L)/中和滴定に使用した濾液(L))}×44(g/moL)×100
得られた値を以下基準で評価した。
(評価基準)
◎:50以下
〇:50超75以下
△:75超100以下
×:100超
【0043】
[実施例1]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器内に脱イオン水40部、メタクリル酸ポリオキシエチレングリコ-ル(PEO鎖分子量約400)/アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム=5/95(重量質量比)の共重合体(分散剤1)の15質量%水溶液を53.7部、硫酸アンモニウムを41.2部仕込み、室温、窒素雰囲気下で20分攪拌した。続いて反応容器内温が32℃になるようにウォーターバスで昇温後、5質量%の2,2’-ビス(2-イミダゾリン-2-イル)[2,2’-アゾビスプロパン]-2塩酸塩水溶液0.31部を反応容器内に投入し20分攪拌した。続いて滴下ロートに脱イオン水49.9部、メタクリル酸ポリオキシエチレングリコ-ル(PEO鎖分子量約400)/アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム=5/95(質量比)の共重合体の15質量%水溶液を9.3部、硫酸アンモニウムを16.5部、アクリルアミド26.5部、1,4ブタンジオール0.3部、アジピン酸0.3部仕込み、さらにアクリル酸50質量%水溶液6.2部を25質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した中和率45mol%の水溶液9.3部、及びアクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸20質量%水溶液7.7部を25質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した中和率100mol%の水溶液8.8部、の混合物を滴下ロートに加え、滴下ロート内の混合物を2時間かけて反応容器内に攪拌しながら投入した。投入完了後反応容器内温が45℃になるようにゆっくり昇温し40分攪拌した後、反応容器内温を55℃に昇温した後10時間攪拌しメトキノンを0.1部添加することで実施例1の懸濁粒子ポリマーの塩水分散体を取得した。取得したポリマーの製鉄原料への凝集力の評価、及び貯蔵安定性の結果を表1に示した。
【0044】
[実施例2]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器内に脱イオン水33.7部、メタクリル酸ポリオキシエチレングリコ-ル(PEO鎖分子量約400)/アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム=5/95(質量比)の共重合体(分散剤1)の15質量%水溶液を46.6部、硫酸アンモニウムを29.7部仕込み、室温、窒素雰囲気下で20分攪拌した。続いて反応容器内温が32℃になるようにウォーターバスで昇温後、5質量%の2,2’-ビス(2-イミダゾリン-2-イル)[2,2’-アゾビスプロパン]-2塩酸塩水溶液0.37部を反応容器内に投入し20分攪拌した。続いて滴下ロートに脱イオン水46.5部、メタクリル酸ポリオキシエチレングリコ-ル(PEO鎖分子量約400)/アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム=5/95(質量比)の共重合体の15質量%水溶液を19.4部、硫酸アンモニウムを20.4部、アクリルアミド33.0部、1,4ブタンジオール0.4部、アジピン酸0.4部仕込み、さらにアクリル酸50質量%水溶液6.8部を25質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した中和率45mol%の水溶液10.2部及びアクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸20質量%水溶液8.7部を25質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した中和率100mol%の水溶液9.9部の混合物を滴下ロートに加え、滴下ロート内の混合物を2時間かけて反応容器内に攪拌しながら投入した。投入完了後反応容器内温が40℃になるようにゆっくり昇温し60分攪拌した後、反応容器内温を55℃に昇温した後10時間攪拌し、メトキノンを0.1部添加することで実施例2の懸濁粒子ポリマーの塩水分散体を取得した。取得したポリマーの製鉄原料への凝集力の評価、及び貯蔵安定性の結果を表1に示した。
【0045】
[実施例3]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器内に脱イオン水56.5部、メタクリル酸ポリオキシエチレングリコ-ル(PEO鎖分子量約400)/アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム=5/95(質量比)の共重合体(分散剤1)の15質量%水溶液を60.0部、硫酸アンモニウムを45.0部仕込み、室温、窒素雰囲気下で20分攪拌した。続いて反応容器内温が52℃になるようにウォーターバスで昇温後、5質量%の2,2’アゾビス(2-メチルプロパンアミジン)-2塩酸塩水溶液0.45部を反応容器内に投入し20分攪拌した。続いて滴下ロートに脱イオン水24.9部、メタクリル酸ポリオキシエチレングリコ-ル(PEO鎖分子量約400)/アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム=5/95(質量比)の共重合体の15質量%水溶液を9.5部、硫酸アンモニウムを16.0部、アクリルアミド25.5部、1,4ブタンジオール0.4部、アジピン酸0.4部仕込み、さらにアクリル酸50質量%水溶液8.9部を25質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した中和率45mol%の水溶液13.4部及びアクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸20質量%水溶液11.1部を25質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した中和率100mol%の水溶液12.6部混合物を滴下ロートに加え、滴下ロート内の混合物を2時間かけて反応容器内に攪拌しながら投入した。投入完了後反応容器内温が55℃になるようにゆっくり昇温し60分攪拌した後、反応容器内温を55℃に昇温した後10時間攪拌し、メトキノンを0.1部添加することで実施例3の懸濁粒子ポリマーの塩水分散体を取得した。取得したポリマーの製鉄原料への凝集力の評価、及び貯蔵安定性の結果を表1に示した。
【0046】
[比較例1](油中水型(W/O)エマルション)
攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に炭化水素系溶剤[(株)エクソンモービル製、アイソパーM]140部、ソルビタンモノステアレート9部を仕込んだ。
次に、脱イオン水200部、アクリル酸12部およびアクリルアミド170部からなる単量体溶液を調製し、単量体溶液に水酸化ナトリウム11.5部加えてpH8.5に調整した。単量体溶液を急速にかき混ぜながら有機相に添加した。ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら60℃まで昇温し、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.35部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。
次に、フラスコの内容物を60℃で150分間維持し、冷却して重合反応を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分量が40質量%であるエマルションを得た。当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、平均粒子径が3μmでエマルション粒子全体のガラス転移温度は140℃であった。その他、エマルションについて、その性質等を含めて記載したものを表2に示す。
【0047】
[比較例2](ポリアクリルアミド)
粉体のポリアクリルアミド(アクリルアミド100mol%の単独重合体、Mw500~600万、Polyscience,Incより入手)を用いた。この粉体ポリマーについて、その性質等を含めて記載したものを表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
Aam:アクリルアミド
AA:アクリル酸
AANa:アクリル酸ナトリウム
AMPS:アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸
AMPSNa:アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム
IPA:イソプロピルアルコール
表1、表2の単量体成分AにおけるAANaおよびAMPSNaの質量部は、水酸化ナトリウムにて中和された中和塩の量であり、AAおよびAMPSの質量部は添加した各単量体の質量部より中和された量を差し引いた値である。
なお、実施例および比較例における揮発成分は水であり、水を揮発成分として実施例および比較例の不揮発分量を算出した。