(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043901
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240326BHJP
G01D 11/30 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01C15/00 105Z
G01C15/00 103C
G01D11/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149137
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】金田 泰久
(72)【発明者】
【氏名】青木 武夫
(57)【要約】
【課題】収納ケースから取り出し易く、腰痛などを予防できる測定装置を提供すること。
【解決手段】測定用のレーザ光を射出するレーザ光射出部を有する測定装置本体2と、測定装置本体2を水平方向に回転可能に支持する台座部と、測定装置本体2から突出したハンドル70,71とを備えた測定装置であって、ハンドル70,71は、握られた際に手首が曲がらないように、測定装置本体2の立てた状態における水平方向中心OPから左右にそれぞれ角度θ1,θ2が40~45度の範囲であって、水平方向中心OPからの径方向に沿って背面側に突出しており、測定装置本体2の前記ハンドル70,71とは反対側の正面側には、最も前方に膨出した膨出部80が形成され、立てた状態において、ハンドル70,71とレーザ光射出部に電圧を印加するバッテリー38,39とは、膨出部80を基準にして上下方向の位置が異なっている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定用のレーザ光を射出するレーザ光射出部を有する測定装置本体と、前記測定装置本体を水平方向に回転可能に支持する台座部と、前記測定装置本体から突出したハンドルとを備えた測定装置であって、
前記ハンドルは、前記測定装置本体の立てた状態における水平方向中心から左右にそれぞれ40~45度の範囲であって、前記水平方向中心からの径方向に沿って背面側に突出しており、
前記測定装置本体の前記ハンドルとは反対側の正面側には、最も前方に膨出した膨出部が形成され、
前記立てた状態において、前記ハンドルと前記レーザ光射出部に電圧を印加するバッテリーとは、前記膨出部を基準にして上下方向の位置が異なっている
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記ハンドルは前記膨出部から上面側に配置され、
前記測定装置本体は、前記立てた状態において、前記上面における前記正面側が、下に向って傾斜すると共に外側に凸状となる湾曲斜面とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記測定装置本体は、前記レーザ光射出部が配置された鏡筒部と、前記鏡筒部を垂直方向に回転可能に支持する托架部とを有し、
前記鏡筒部と前記托架部には、互いの境界周辺の正面側に連なった面を有し、
前記鏡筒部から前記托架部にわたって連続模様が施されている
ことを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記バッテリーは、前記立てた状態において、前記左右の前記ハンドルの夫々の直下に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
前記測定装置本体の左右側面には、前記ハンドルに手袋をした手を導くガイドとなる窪み部が形成されており、
前記窪み部は、前記立てた状態において、手袋をはめた親指以外の4本の指に対応した高さを有し、かつ、前記測定装置本体の中央部から上側にかけて配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル付き測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を利用した測定装置が知られており、射出したレーザ光の反射光を受光して対象物の空間位置情報を取得したり、レーザ光を対象物に当てて土木建築の基準面や基準線を定めたりする等、様々な場合で測定装置が利用されている。
この測定装置は水平・垂直レベルが重要なため、三脚を用いることが多く、測定者は測定装置に付けられたハンドルを持って三脚の上に載せ、三脚と測定装置とを固定して使用する。
【0003】
このように、重い測定装置を背の高い三脚上に固定する必要があることから、持ち易い測定装置が提案されている。例えば、特許文献1の測定装置のハンドルは、手指で把持されるグリップ部と、グリップ部をハウジングに付けて支持する支持アーム部とから構成され、支持アーム部の上面には親指の腹の形状にあった湾曲部が形成されている。そうすると、ハンドルを、親指を除く4本の指で握ると共に、支持アーム部の下面に人差し指を当接させて人差し指で支持アーム部を下支えすると共に、水平方向についてグリップ部よりも重心に近い支持アーム部を人差し指と親指で挟持して、測量機を容易に持つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、測定者が起立した状態で測定装置を持つには優れているが、この特許文献1の測定装置に限らず従来の測定装置は、床等においた収納ケースから測定装置を取り出す瞬間の体への負担までは考慮しきれていない。即ち、例えばギックリ腰は、急に姿勢を変えたときや、前かがみで物を持った時に起きやすく、そうすると、測定装置を持ち上げようとする瞬間が腰痛を招く起因になり得る。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するものであり、収納ケースから取り出し易く、例えば腰痛の原因など、身体に与える負荷を軽減する測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、測定用のレーザ光を射出するレーザ光射出部を有する測定装置本体と、前記測定装置本体を水平方向に回転可能に支持する台座部と、前記測定装置本体から突出したハンドルとを備えた測定装置であって、前記ハンドルは、前記測定装置本体の立てた状態における水平方向中心から左右にそれぞれ40~45度の範囲であって、前記水平方向中心からの径方向に沿って背面側に突出しており、前記測定装置本体の前記ハンドルとは反対側の正面側には、最も前方に膨出した膨出部が形成され、前記立てた状態において、前記ハンドルと前記レーザ光射出部に電圧を印加するバッテリーとは、前記膨出部を基準にして上下方向の位置が異なっている測定装置により解決される。
【0008】
上記発明によれば、レーザ光を用いて測定する測定装置において、ハンドルは、測定装置本体を立てた状態において、その水平方向中心からの径方向に沿って背面側に突出している。そうすると、正面側を下にして収納ケースに寝かした状態で収納ケースの蓋を開けると、ハンドルは上側に出ている。このため、収納ケースから測定装置を取り出すためにハンドルを把持する際、ハンドルが上にある分、深く前屈しなくても把持できる。したがって、前屈の際の腰への負担を軽減できる。即ち、ここに言う「背面」とは、正面を下に寝かした状態で、上から見て視認可能な面を意味する。
しかも、このハンドルは、測定装置本体の中心から左右にそれぞれ40~45度の範囲に配置されている。そうすると、一般的に肩幅より小さい測定装置のハンドルを握った際、手首が曲がり難くなって掌屈や背屈を防止する要素になり、握る力を効果的に発揮できる。
更に、測定装置本体のハンドルとは反対側の正面側には、最も前方に膨出した膨出部が形成され、そして、立てた状態において、ハンドルとバッテリーとは膨出部を基準にして相対的に上下逆に配置されている。そうすると、正面側を下にして寝かした状態で、測定装置をケースから取り出す際、ハンドルを持ちあげると、重いバッテリー側が下向きに力が働き、膨出部が支点となって梃子の原理でハンドル側が上向きに回動して持ち上げ易くなり、前屈状態での力を抑えることができる。
【0009】
また好ましくは、前記測定装置本体は、前記立てた状態において、前記上面における前記正面側が、下に向って傾斜すると共に外側に凸状となる湾曲斜面とされていることを特徴とする。
そうすると、正面側を下にして収納ケースに寝かせた測定装置を収納ケースから取り出すために、上述のように膨出部を支点にしてハンドル側(上面側)を上向きに回動させる際、収納ケースに測定装置本体が引っかかることを防止して、円滑に測定装置を収納ケースから取り出せる。
【0010】
また好ましくは、前記測定装置本体は、前記レーザ光射出部が配置された鏡筒部と、前記鏡筒部を垂直方向に回転可能に支持する托架部とを有し、前記鏡筒部と前記托架部には、互いの境界周辺の正面側に連なった面を有し、前記鏡筒部から前記托架部にわたって連続模様が施されていることを特徴とする。
そうすると、鏡筒部及び托架部は、互いの境界周辺の正面側に連なった面を有するため、本体がケース内で他の部材に引っかかる事態を防止できる。
この点、このような形状であると、遠隔操作などで遠くから装置を見る際、鏡筒部と托架部との境界が視認し難くなり、鏡筒部の動きが分かり難くなるが、本発明では鏡筒部から托架部にわたって連続模様が施されているため、鏡筒が回転すると連続模様が位置ずれして、動きが分かり易くなる。
【0011】
また好ましくは、前記バッテリーは、前記立てた状態において、前記左右の前記ハンドルの夫々の直下に配置されていることを特徴とする。
従って、重心をハンドル側に寄せて、測定装置を持ち易くすることができる。
【0012】
また好ましくは、前記測定装置本体の左右側面には、前記ハンドルに手袋をした手を導くガイドとなる窪み部が形成されており、前記窪み部は、前記立てた状態において、前記手袋をはめた親指以外の4本の指に対応した高さを有し、かつ、前記測定装置本体の中央部から上側にかけて配置されていることを特徴とする。
そうすると、測定者は、スペース的に余裕のある窪み部に導かれて、ハンドルの中央部から上側(即ち、バッテリーから相当に離れた位置)を把持するようになる。従って、上述のように収納ケースから寝ている測定装置を取り出す際、膨出部が支点となって、ハンドルの側を梃子の原理で更に上向きに回動させ易くなる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、収納ケースから取り出し易く、たとえば腰痛の原因など、身体に与える負荷を軽減する測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る測定装置の使用状態を示す模式的正面図。
【
図4】
図2の測定装置の平面図であり、一点鎖線は仮想線を示す。
【
図5】
図2の測定装置の底面図であり、一点鎖線は仮想線を示す。
【
図8】
図2の測定装置の正面、平面及び右側面を表す斜視図。
【
図9】
図2の測定装置の背面、底面及び左側面を表す斜視図。
【
図10】収納ケースの蓋を開けて、測定装置を露出させた状態の例を示す図。
【
図11】
図10の測定装置を収納ケースから取り出そうとしている図。
【
図12】拳状態の手首の可動範囲を示す図であり、(a)は掌屈の図、(b)は手首が曲げられていない図、(c)は背屈の図。
【
図13】
図10の収納ケース内の横になっている測定装置の図。
【
図14】連続模様を説明するための図であり(A)は駆動していない状態の図、(B)は鏡筒部50が下回転した図。
【
図15】
図2の測定装置について、変更可能な部分例を破線で示した正面図。
【
図21】
図15の測定装置の正面、平面及び右側面を表す斜視図。
【
図22】
図15の測定装置の背面、底面及び左側面を表す斜視図。
【
図23】本発明の実施形態の変形例に係る測定装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図において付した同じ符号は同様の構成を有している。
【0016】
図1~
図9は本発明の実施形態に係る測定装置1であり、先ずは、使用状態を示す模式的正面図である
図1を中心に、適宜、
図2~
図9を参照して測定装置1を説明する。なお、以下にいう「正面」とは、本実施形態では
図1の広角カメラ19が位置する面、或いは、駆動していない状態における窓部28が位置する面である。
図の測定装置1は出射したレーザ光により対象物の空間位置情報を取得する装置であり、特に建築物の三次元形状を測定するのに優れており、レーザースキャナー等とも呼ばれる。なお、本発明の測定装置10はレーザースキャナーに限られるものではなく、例えば土木・建築時の基準面や基準線を定めるためのレーザ墨出器・ローテーティングレーザ、或いは、距離や角度を測定するセオドライトやトータルステーション等の測量機であってもよい。
【0017】
測定装置1は全体が略円筒状、立てた状態(すなわち三脚上に据え置いての使用時と同じ向きになること)で平面視がハンドル70,71及びバッテリー38,39を除き略真円状であり、三脚上に据え置いて使用可能にするため、概ねの大きさが定まっており、
図4に示す平面から見た直径Lは少なくとも20歳以上の男性の平均肩幅(約39.7cm)より小さく、好ましくは該平均肩幅の40~50%、本実施形態の直径Lは該平均肩幅の約46%の18.3cmである。なお、
図1のアンテナ7を除く高さH1は29~30cmであるのが好ましく、本実施形態の高さH1は29.8cmである。
【0018】
図1に示すように、測定装置1は、整準台4、台座部3、測定装置本体2、リモートコントローラ5を有している。
〔整準台について〕
整準台4は三脚6の上に固定され、本実施形態の場合は自動整準可能となっている。即ち、整準台4は3個の整準ネジ4aを有し、自動整準スイッチ21(
図2参照)のONにより、既知のプログラムが働いて整準ネジ4aは回転し、自動で調節して任意の方向に傾斜するようになっている。
【0019】
〔台座部について〕
台座部3は整準台4の上に接続され、測定装置本体2を水平方向に回転可能に支持する。本実施形態の場合、台座部3はモータ31とこのモータ31で駆動する駆動ギア32を有している。そして、駆動ギア32と測定装置本体2の下面から突設した水平回転軸33とが噛合し、これにより、測定装置本体2は水平方向(測定装置本体2の左右方向)に回転自在となる。
また、台座部3内には、水平回転軸33の回転角度を検出する水平角検出器35(エンコーダ等)が設けられ、これにより、測定装置本体2の水平方向の相対回転角が検出される。
【0020】
台座部3には、
図2に示すように、操作部20とバッテリー38,39も設けられている。
操作部20は
図2の右から順に、装置全体の電源スイッチ23、レーザー求心スイッチ22、自動整準スイッチ21を有する。レーザー求心スイッチ22は求心作業の際に用いられ、ONにすると整準台4の底面からレーザ光が床面等に向かって照射され、これを目安に位置調整できる。自動整準スイッチ21は上述した自動整準を行うためのスイッチである。
バッテリー38,39は、後述するレーザ光射出部52に電圧を印加し、また、各部品に電源を供給する駆動用電源で、本実施形態の場合は着脱可能であるが、台座部3に固定されたまま充電するタイプであってもよい。バッテリー38,39については後述する。
【0021】
〔測定装置本体について〕
測定装置本体2は、
図1に示すように、レーザ光射出部52が内蔵された鏡筒部50と、全体がU字状であり、その内側で鏡筒部50を回転自在に支持する托架部10とを有する。
托架部10は、内部に駆動ギア12と、この駆動ギア12を駆動させるモータ14を有する。駆動ギア12は鏡筒部50と托架部10とをつなぐ垂直回転軸16と噛合し、これにより、鏡筒部50は垂直方向(鏡筒部50の上下方向)に回転自在となる。
【0022】
また、托架部10内には、垂直回転軸16の回転角度を検出する垂直角検出器18(エンコーダ等)が設けられ、これにより、鏡筒部50の垂直方向の相対回転角が検出される。
このように各回転軸16,33、各駆動ギア12,32、モータ14,31が協働して、鏡筒部50を所望の水平及び垂直方向へ向けることができる。また、各回転角検出器18,35により鏡筒部50の水平及び垂直方向に回転した回転角を検出できる。
【0023】
なお、托架部10には広角カメラ19が設けられている。広角カメラ19は主に観察用であり、広角カメラ19で取得された画像はリモートコントローラ5の表示部5aに表示される。これにより、測定者は表示部5aから測定対象物を探して、リモートコントローラ5で測定対象物を選択できる。この広角カメラ19は例えば30゜の広画角を有する。
また、測定装置本体2の一部である托架部3の外面からは一対のハンドル70,71が突出している。ハンドル70,71は測定装置1を持ち上げたり動かしたりする手段であり、剛性と耐水性の高いABS樹脂などのプラスチック材料からなる。ハンドル70,71は固定式でも着脱式でもよい。このハンドル70,71については後述する。
【0024】
鏡筒部50は、測距部を構成するレーザ光射出部52とレーザ光受光部54を内部に有する。
レーザ光射出部52は発光素子と投光レンズ・偏向プリズム(不図示)を有する。発光素子はレーザ光を発する例えばレーザダイオードを利用でき、射出したレーザ光は内部にある投光レンズや偏向プリズム、そして、レーザ光の光軸上にある透明な窓部28を透過して測定対象物に照射される。
レーザ光受光部54は受光素子と反射偏向プリズムや結像レンズ(不図示)を有する。受光素子は例えばフォトダイオードであり、測定対象物で反射した反射光が、反射偏向プリズムや結像レンズを介して受光素子に集光される。受光素子は受光すると、それを信号にして演算処理部56に送信し、演算処理部56はレーザ光が返ってくるまでの時間を測定して、既知の演算により測距を行う。
【0025】
このような鏡筒部50は、上述した広角カメラ19よりも狭い画角の狭角カメラ58も有している。狭角カメラ58は、広角カメラ19で選択した測定対象物を捕捉するものであり、狭角カメラ58で取得された画像は表示部5aに表示される。この狭角画像は測定装置1の測定範囲と一致するので、測定者は表示部5aによって容易に測定範囲を特定できるし、鏡筒部50を所望の測定対象物へ向けることができる。この狭角カメラ49は例えば5゜の狭い画角を有する。
なお、レーザ光を水平に射出する場合、本実施形態の広角カメラ19、狭角カメラ58、及び窓部28は装置の上下方向に沿って一列に並んでいる。
【0026】
狭角カメラ58の光軸とレーザ光射出部52から出射されたレーザ光軸とは平行であり、既知の演算により、狭角カメラ58による画像の中心とレーザ光軸とを一致させている。
そして、演算処理部56と電気的に接続された制御部(不図示)は、垂直角検出器18と水平角検出器35の検出結果に基づきレーザ光(測距光)の射出方向角を特定すると共に、上記測距の結果に基づいて、既知のプログラムにより測定対象物の3次元データ(X,Y,Z)を算出する。そして、測定点の3次元データと狭角画像の関連付けを行い、狭角カメラ58で取得した狭角画像を3次元データ付きの画像としてリモートコントローラ5の表示部5aに表示させることができる。
【0027】
〔リモートコントローラについて〕
リモートコントローラ5は測定装置本体2との間でアンテナ7を介して無線LAN等の手段で通信を行い、測定装置1を遠隔操作することができ、既知のプログラムを格納した専用端末やスマートフォンが利用される。本実施形態のリモートコントローラ5の表示部5aには上述の広角カメラ19や挟角カメラ58で撮像した画像が表示されるが、表示部5aはタッチセンサ機能を有するため、その画像を確認しながら画面に触れて鏡筒部50や托架部10を動かし、そして、測定対象物を選択したり捕捉したりできる。
【0028】
以上のレーザ製品である測定装置1は精密機器であり、不使用時は、例えば
図10に示される収納ケース60に収納される。収納ケース60はケース本体61と、ケース本体61に比べて高さの低い蓋体62を有する(
図11も参照)。ケース本体61及び蓋体62の内側には、測定装置1の外形に対応した凹部40が形成されたクッション材などの保護部材63が設けられている。図の場合、ケース本体61の凹部40aは測定装置1の正面側の半体に対応し、蓋体62の凹部40bは測定装置1の背面側の半体に対応した形状である。これにより、閉蓋状態において、ケース本体61の凹部40aの内面と蓋体62の凹部40bの内面が測定装置1に密着して、測定装置1を保護している。
なお、通常、図のように、傷つきが致命的な欠陥になる窓部28や各レンズ19,58が配置された正面(
図2の面)を下向きにし、蓋体62に比べて保護部材63の厚いケース本体61の方で、測定装置1の窓部28や各レンズ19,58のある正面側を保護している。このため、図示するように、蓋体62を開けて測定装置1を取り出す際、正面とは反対の背面が露出する。
【0029】
本実施形態の測定装置1は以上のように構成され、更に以下の特徴を有する。
〔ハンドルについて〕
各ハンドル70,71は配置を除けば同じ構成であるため、特段の言及がない限り、ここではハンドル71の構成についてのみ説明する。
図8・9に示すように、ハンドル71は、全体が2カ所の屈曲部71a,71bを有する略コの字状の縦型ハンドルであり、手指で把持されるグリップ部72と、グリップ部72を測定装置本体2に支持させる上下の支持アーム部73,74とを有している。
また、グリップ部72は背面中心よりも外側に出ない出幅D1である。即ち、グリップ部72が測定装置1の重心から離れて持ち難くならないように、平面視が略円形である測定装置1において、グリップ部72は背面中心の接線TA(
図5参照)よりも正面側に位置する。図の出幅D1は5.3cmである。
【0030】
グリップ部72と測定装置本体2のハウジングとの間には、手袋をはめた手指を挿入可能な挿入空間Sを有する。また、グリップ部72は親指を除く指の根元の関節MP(metacarpal phalangeal joint)と指の先端から2番目の関節PIP(proximal interphalangeal joint)の間の寸法に対応した幅寸法W1を有し(関節位置については
図12参照)、これにより、上記指の関節を曲げて手袋を介してグリップ部72を把持できる。
【0031】
図2~
図4に示すように、ハンドル70,71は、測定装置本体2を立てた状態において、その水平方向中心OPからの径方向に沿って広角カメラ19とは反対の背面側に、互いに離間するようにして突出している。そうすると、
図10のように、窓部28や各レンズ19,58を保護するために正面側を下にして収納ケース60に寝かした状態で、ハンドル70,71は上に位置する。このため、前屈して測定装置1を収納ケース60から取り出そうとする際(
図11参照)、ハンドル70,71が上にある分、浅い前屈でハンドル70,71を把持でき、前屈の際の腰への負担を軽減できる。
【0032】
更に、ハンドル70,71は、全体が円筒状の測定装置1を立てた状態において、
図4に示すように、測定装置本体2の水平方向中心OPから左右にそれぞれ40~45度の範囲に配置されている。具体的には、
図4に示す平面視において、水平方向中心OPと、窓部28とは真反対の背面の部分29(即ち背面の中心)を通る中心線CLを基準に、一方のハンドル70は40~45度の中心角θ2で、他方のハンドル71も40~45度の中心角θ1で配置されている。
これにより、
図11に示すように、日本人の20歳以上の概ね平均身長172cmを有する男性が腰を少し落として前傾姿勢になり、上腕部を概ね垂直に下ろした状態で肩幅より内側にあるハンドル70,71を握った際、手首を曲げないで持つことができた。即ち、ハンドルを握った状態で、
図12(a)の掌屈、及び
図12(c)の背屈状態にはならず、
図12(b)のように前腕と拳までが真っ直ぐになり、握る力を最も効果的に発揮できた。勿論、身長・姿勢・癖等の測定者の個性により、
図12(b)の状態に必ずなるわけではないが、大体、脇の締め具合や腕の角度等の姿勢を無理なく調整でき、ハンドル70,71は
図12(b)の状態に導くガイドの役割を発揮することとなる。
なお、図の場合、右側の角度θ1と左側の角度θ2は同じであり、それぞれ45度で設定されている。
【0033】
また、ハンドル71の外側に露出した面、即ち、指を入れる挿入空間Sと反対側の面に、測定装置本体2の中で最も明度の高い目印が設けられている。従って、薄暗い室内等の比較的暗い場所で、
図10のように蓋体62を開けて収納ケース60から測定装置1を取り出す際、ハンドル71を見つけ易くなり、深く腰を曲げた状態をいち早く解消できる。
【0034】
〔膨出部について〕
図6及び
図7に示すように、測定装置本体2のハンドル70,71と反対の正面側には、最も前方に膨出した膨出部80が形成されている。本実施形態の場合、測定装置1を立てた状態において、測定装置本体2の正面側を中央部から上側にかけて面取りするように窪ませると共に、台座部3の正面側を中央部から下側にかけて窪ませることで、膨出部80が形成されている。
そして、測定装置1を立てた状態において、ハンドル70,71とバッテリー38,39とは膨出部80を基準(境)にして上下方向の位置が異なっている。図の場合、ハンドル70,71は膨出部80から上面側(
図4の平面側)に配置され、バッテリー38,39は膨出部80から下面側(
図5の底面側)に配置されている。
そうすると、正面側を下にして寝かした
図13(収納ケースは図示せず)の状態から測定装置1を収納ケースから取り出す際、ハンドル71を持ちあげると、重いバッテリー39側が下向きに力が働き、膨出部80が支点となって梃子の原理でハンドル71側が上向きLFに回動して持ち上げ易くなり、腰を曲げた状態での力の入れ具合を抑えることができる。
【0035】
更に、本実施形態では測定装置1を持ち上げ易くするため、次の更なる特徴を有している。
〔更なる特徴1〕
先ず、
図3に示す立てた状態において、左右のバッテリー38,39の夫々を左右のハンドル70,71の夫々の直下に配置している。
図3では右側のバッテリー38は右側のハンドル70の下に、左側のバッテリー39は左側のハンドル71の下に配置されている。従って、重心を可及的にハンドル70,71側に寄せて、重い測定装置1を持ち易くできる。バッテリー38とバッテリー39とは同じ重量であることが好ましい。
【0036】
〔更なる特徴2〕
次に、
図3及び
図13に示すように、測定装置本体2の左右側面(本実施形態では托架部10の左右側面)の夫々には窪み部25が形成されている。窪み部25は、手袋をした手をハンドル70,71と測定装置本体2の左右側面との間の空間Sに容易に指を導くためのガイドである。具体的には、測定装置1を立てた状態において、手袋をはめた親指以外の4本の指に対応した高さH2(
図13の寝かせた状態の横幅であり、
図6も参照)は手袋をはめた親指以外の4本の指の幅に対応している。そして、この窪み部25が測定装置本体2の中央部から上側(
図4の平面側)にかけて(即ち、空間Sに対応した側面の上側に寄せて)配置されている。そうすると、
図13に示すように、測定者は、このスペース的に余裕のある窪み部25に導かれて、ハンドル70,71のバッテリー38,39から最も離れた位置を把持するようになり、梃子の原理でLF方向に回転させ易くなる。
なお、ハンドル70,71を最初から上側(
図4の平面側)のみに設けても本実施形態と同様の効果を得られるが、そうすると、背の高い三脚の上に測定装置1を置いて固定する際、ハンドルが上の方のみになって操作し難くなる。このため、
図3の立てた状態において、ハンドル70,71を測定装置本体2の上部から下部まで大きく設け、かつ、指を導くガイドとなる窪み部25を空間Sの上部を基準にして、手袋をはめた4本の指が入る高さH2にするのが好ましい。
【0037】
〔更なる特徴3〕
次に、
図6~
図8に示すように、測定装置本体2は、立てた状態における上面(
図4の平面から見た面)の正面側の領域2Aを、下に向って傾斜すると共に外側に凸状となる湾曲斜面にしている。具体的には、鏡筒部50と托架部10の両方の上面における正面側の領域50A,10Aを(
図8参照)、上述のよう同様に湾曲した湾曲斜面にしている。そうすると、
図13のように窓部28のある正面側を下にして収納ケースに寝かせた測定装置1を収納ケースから取り出すために、膨出部80を支点にしてLF方向に回動させる際、収納ケースの保護部材63に測定装置本体2が引っかかることを可及的に防止して、円滑に測定装置1を収納ケースから取り出せる。
なお、狭角カメラ58だけは湾曲斜面ではないが、これは狭角カメラ58の光軸とレーザ光射出部52から射出されたレーザ光軸とを平行にする必要があるからであり、このように一部に湾曲斜面が存在しない場合も本発明に含まれる。
【0038】
〔更なる特徴4〕
次に、
図2及び
図8に示すように、鏡筒部50と托架部10とは、互いの境界周辺の正面側に連なった面26,27を有している。この「連なった面」というのは、鏡筒部50と托架部10とは密着していないため境界に空間は存在するものの、互いの面26,27の境界付近が同一面であるかのように近接している様子を指す。このように連なった面26,27としたのは、収納ケースから取り出す際の引っかかりを可及的に回避するためである。
なお、上記連なった面は、全体的に円筒状の測定装置本体2の正面側を平坦に切り取ったような形状とされている。これにより、全体が略円筒状である場合に比べて、測定者は正面を把握し易い。
【0039】
ここで、上述のように、鏡筒部50と托架部10とが正面側に連なった面26,27であると、遠隔操作などで遠くから装置を見る際、鏡筒部50と托架部10との境界が視認し難くなる。その上、そもそも本実施形態では、托架部10から鏡筒部50が可及的に食み出ないようになっている。そうすると、このような構成では、鏡筒部50の動きが分かり難くなる。そこで、鏡筒部50の動きが分かり易くなるように、以下の更なる特徴を有する。
【0040】
〔更なる特徴5〕
先ず、
図8・9に示すように、測定装置1は、鏡筒部50が回転した際に点灯するLED等からなるインジケータ41,43を有する。インジケータ41,43は、托架部10の外面であって、鏡筒部50の下側に配置されている。図のインジケータ41,43は正面と背面に配置され、同じ色で点灯するようになっているが、正面と背面とで異なる色で点灯したり、或いは、点滅する等の異なる方法で点灯したりし、正面と背面とを区別可能にしてもよい。
【0041】
〔更なる特徴6〕
次に、本実施形態では、鏡筒部50の回転により模様がずれるようにした連続模様が鏡筒部50から托架部10にわたって施されている。
図14はこの連続模様を説明するための図であり、
図14(A)は駆動していない状態の図、
図14(B)は鏡筒部50が下回転した図である。
図14(A)のように鏡筒部50と托架部10との間には空間があるが、駆動していない状態において、鏡筒部50の托架部10側の模様D2と、托架部10鏡筒部50側の模様D1とが近接することで、連続模様DSが施されている。
図の連続模様DSは鏡筒部50から托架部10にかけて施された線ないし帯状であり、窓部28、カメラ19,58を囲むように輪状とされている。従って、鏡筒部50が垂直方向に回転すると、
図14(B)のように鏡筒部50の線・帯D2と托架部10の線・帯D1とが離間して連続模様がくずれ、これにより鏡筒部50の動きが分かる。なお、連続模様DSは統一した色彩を有し、線・帯の幅が狭くても目立つように黄色系統とされている。
【0042】
〔更なる特徴7〕
次に、上記輪状の連続模様DSで囲まれた内側領域(
図14の平行斜線の領域)GNは、連続模様DSとは異なる色彩であり、かつ、鏡筒部50の上下領域(即ち、上面における正面側の領域と、下面における正面側の領域)50A,50Bを除き統一した色彩とされている。
この内側領域GNの色彩は連続模様DSの色彩と遠いのが好ましく、本実施形態の連続模様DSは黄色系統なので、その内側領域GNは鏡筒部50の上下領域50A,50Bを除き黒系統とされている。なお、鏡筒部50の上下領域50A,50Bは、連続模様DS及び内側領域GNと異なる色彩で、好ましくは連続模様DSの色彩と内側領域GNの色彩の中間の色相であり、図の場合は銀色である。
連続模様DSで囲まれた内側領域GNは以上のように構成されているため、
図14(B)のように鏡筒部50が下回転すると、托架部10側の内側領域GNの黒系統が動かない一方、鏡筒部50の上側領域50Aの銀色が上から増していく動きになり、逆に、鏡筒部50が上回転すると、鏡筒部50の下側領域50Bの銀色が下から増していく動きになり、上下方向の動きも分かり易くなる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、
図1~
図9では、広角カメラ19のある正面に膨出部80を配置し、広角カメラ19とは反対側の背面にハンドル70,71を配置しているが、膨出部80とハンドル70,71の位置関係は水平方向中心OPを基準にした相対的なものであり、広角カメラ19は正面と背面を決める基準に必ずしもならない。
【0044】
また、
図15~
図22の破線で示す領域について、アンテナ7は内蔵式でもよく、また、無くても構わない。また、バッテリー38,39は一つにまとめてもよい。また、
図7の膨出部80は測定装置本体2側の膨出部80A、台座部3側の膨出部80Bとから構成されているが、本発明はこれに限られず、測定装置本体2側の膨出部80Aだけを膨出部80にし、台座部3に膨出部を形成しなくてもよい。
【0045】
或いは、上記実施形態では、
図6に示すように測定装置本体2の膨出部80よりも上側は、略垂直の平坦面となるように窪ませているが、変形例である
図23・24に示す測定装置90ように、測定装置本体2の膨出部80よりも上側は、測定装置本体2の外形が上面に向かうに従って窄まるようにした傾斜面とされても構わない。
なお、
図1~
図9の測定装置1では、鏡筒部50全体が垂直方向に回転して窓部28も回転していたが、
図23・24の測定装置90は鏡筒部94の外側に露出した面全体が透明な窓部であり、その内側のレーザ光射出部が垂直方向に回転してレーザ光を射出するようになっている。また、測定装置90のカメラ92は広角カメラと挟角カメラの2つの機能を持っている。以上のような構成であっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1,90・・・測定装置、2・・・測定装置本体、2A・・・湾曲斜面、3・・・台座部、10・・・托架部、25・・・窪み部、38,39・・・バッテリー、50・・・鏡筒部、52・・・レーザ光射出部、70,71・・・ハンドル、80・・・膨出部、OP・・・水平方向中心、DS・・・連続模様