(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043915
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】燃焼装置の運転停止方法
(51)【国際特許分類】
F23N 5/20 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
F23N5/20 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149156
(22)【出願日】2022-09-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日:令和4年3月17日 掲載アドレス等:HET.eigyou@heatenergytech.co.jp ウェブセミナーにて発表
(71)【出願人】
【識別番号】595080887
【氏名又は名称】株式会社ヒートエナジーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳一
【テーマコード(参考)】
3K005
【Fターム(参考)】
3K005GA16
3K005GB05
(57)【要約】
【課題】消炎後に残存燃料が着火することなく、安全に運転停止処理を実行することができる燃焼装置の運転停止方法を提供する。
【解決手段】実施形態の燃焼装置1の運転停止方法において、燃焼装置1は、燃焼室11と、燃料を噴出する燃料噴出部12と、酸化剤を噴出する酸化剤噴出部13と、燃料噴出部12に燃料を供給する燃料供給管22と、酸化剤噴出部13に酸化剤を供給する酸化剤供給管32と、燃料噴出部12に供給するためのパージ媒体を燃料供給管22に供給するパージ媒体供給管41とを備える。そして、火炎が形成されている状態において、燃料供給管22にパージ媒体供給管41からパージ媒体を供給して消炎し、消炎後に、燃料供給管22へのパージ媒体の供給を継続した状態で、燃料供給管22への燃料の供給を遮断し、燃料の供給を遮断後、所定時間、燃料供給管22へのパージ媒体の供給を継続する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤を燃焼させる燃焼室と、
燃料を前記燃焼室に噴出する燃料噴出部と、
酸化剤を前記燃焼室に噴出する酸化剤噴出部と、
前記燃料噴出部に燃料を供給する燃料供給管と、
前記酸化剤噴出部に酸化剤を供給する酸化剤供給管と、
前記燃料噴出部に供給するためのパージ媒体を前記燃料供給管に供給するパージ媒体供給管と
を備える燃焼装置の運転停止方法であって、
火炎が形成されている状態において、前記燃料供給管に前記パージ媒体供給管から前記パージ媒体を供給して消炎し、
消炎後に、前記燃料供給管への前記パージ媒体の供給を継続した状態で、前記燃料供給管への燃料の供給を遮断し、
燃料の供給を遮断後、所定時間、前記燃料供給管への前記パージ媒体の供給を継続することを特徴とする燃焼装置の運転停止方法。
【請求項2】
前記パージ媒体が、前記燃焼室内の気体であり、
前記パージ媒体供給管の一端から前記気体を導入し、前記パージ媒体供給管の他端から前記燃料供給管に前記気体を供給することを特徴とする請求項1記載の燃焼装置の運転停止方法。
【請求項3】
前記燃料供給管に供給される前記気体の流量は、前記燃料供給管において前記気体と燃料とが混合することで形成される混合気における燃料濃度が爆発下限界を下回るように設定されることを特徴とする請求項2記載の燃焼装置の運転停止方法。
【請求項4】
前記燃料供給管に供給される前記気体の流量は、前記燃料供給管において前記気体と燃料とが混合することで形成される混合気が前記燃料噴出部から噴出されるときの流速が当該混合気における燃焼速度よりも大きくなるように設定されることを特徴とする請求項2記載の燃焼装置の運転停止方法。
【請求項5】
前記燃焼装置は、前記パージ媒体供給管を流れる前記気体と前記酸化剤供給管を流れる酸化剤とを熱交換させる熱交換器を備えることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の燃焼装置の運転停止方法。
【請求項6】
前記パージ媒体が、空気であり、
前記パージ媒体供給管の一端から前記空気を導入し、前記パージ媒体供給管の他端から前記燃料供給管に前記空気を供給し、
前記燃料供給管に供給される前記空気の流量は、前記燃料供給管において前記空気と燃料とが混合することで形成される混合気における燃料濃度が爆発下限界を下回るように設定されることを特徴とする請求項1記載の燃焼装置の運転停止方法。
【請求項7】
前記パージ媒体が、空気であり、
前記パージ媒体供給管の一端から前記空気を導入し、前記パージ媒体供給管の他端から前記燃料供給管に前記空気を供給し、
前記燃料供給管に供給される前記空気の流量は、前記燃料供給管において前記空気と燃料とが混合することで形成される混合気が前記燃料噴出部から噴出されるときの流速が当該混合気における燃焼速度よりも大きくなるように設定されることを特徴とする請求項1記載の燃焼装置の運転停止方法。
【請求項8】
前記パージ媒体供給管の一端が、前記酸化剤供給管に連結され、前記酸化剤供給管から前記空気を導入することを特徴とする請求項6または7記載の燃焼装置の運転停止方法。
【請求項9】
前記パージ媒体が、不活性ガスであり、
前記パージ媒体供給管の一端から前記不活性ガスを導入し、前記パージ媒体供給管の他端から前記燃料供給管に前記不活性ガスを供給し、
前記燃料供給管に供給される前記不活性ガスの流量は、前記燃料供給管において前記不活性ガスと燃料とが混合することで形成される混合気が前記燃料噴出部から噴出されるときの流速が燃料の空気中における最大燃焼速度よりも大きくなるように設定されることを特徴とする請求項1記載の燃焼装置の運転停止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃焼装置の運転停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の拡散燃焼方式の燃焼器を備える燃焼装置において、燃焼器は、燃料を燃焼領域に噴出する燃料噴出管と、燃料噴出管の周囲から酸化剤を燃焼領域に噴出する酸化剤噴出管とを備える。
【0003】
この燃焼装置の運転を停止する際、燃料の供給の遮断後において、燃料噴出管内に空気が入り込み残存する燃料と混合し、可燃性の混合気が形成されることがある。そして、この混合気は、燃焼器の高温部が着火源となって着火することがある。この場合、安全性に問題が生じるばかりではなく、燃焼器に損傷を与えることがある。
【0004】
このような燃焼装置の運転停止の際における残存燃料への着火を防止するため、従来の拡散燃焼方式の燃焼装置において、燃料を遮断した後に、燃料噴出管内を空気によってパージする処理が実施されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の拡散燃焼方式の燃焼装置において、燃料を遮断した後に燃料噴出管内を空気によってパージする際、燃料噴出管内を流れる空気の流速によっては、局所的に残存燃料と空気とが混合して可燃性の混合気を形成することがある。そして、この混合気は、燃焼器の高温部が着火源となって着火することがある。
【0007】
すなわち、従来の拡散燃焼方式の燃焼装置において、残存燃料への着火を防止するために燃料の遮断後に空気によるパージ処理を実施しても、パージ処理中に可燃性の混合気が形成され着火することがある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、消炎後に残存燃料が着火することなく、安全に運転停止処理を実行することができる燃焼装置の運転停止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の燃焼装置の運転停止方法において、燃焼装置は、燃料と酸化剤を燃焼させる燃焼室と、燃料を前記燃焼室に噴出する燃料噴出部と、酸化剤を前記燃焼室に噴出する酸化剤噴出部と、前記燃料噴出部に燃料を供給する燃料供給管と、前記酸化剤噴出部に酸化剤を供給する酸化剤供給管と、前記燃料噴出部に供給するためのパージ媒体を前記燃料供給管に供給するパージ媒体供給管とを備える。
【0010】
そして、火炎が形成されている状態において、前記燃料供給管に前記パージ媒体供給管から前記パージ媒体を供給して消炎し、消炎後に、前記燃料供給管への前記パージ媒体の供給を継続した状態で、前記燃料供給管への燃料の供給を遮断し、燃料の供給を遮断後、所定時間、前記燃料供給管への前記パージ媒体の供給を継続する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃焼装置の運転停止方法によれば、消炎後に残存燃料が着火することなく、安全に運転停止処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置の構成を模式的に示した図である。
【
図2】第1の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置において、運転を停止するための制御を実行する制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態の燃焼装置の運転停止方法を説明するためのタイムチャートである。
【
図4】第1の実施の形態の燃焼装置の運転停止方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第2の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置の構成を模式的に示した図である。
【
図6】第3の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置の構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置1の構成を模式的に示した図である。
【0015】
図1に示すように、燃焼装置1は、燃焼器10と、燃料供給系統20と、酸化剤供給系統30と、パージ媒体供給系統40と、制御装置50とを備える。なお、ここでは、排ガス再循環(EGR)を利用した燃焼装置1を例示している。
【0016】
燃焼器10は、燃料と酸化剤をそれぞれ別個に燃焼室11に噴出する拡散燃焼方式の燃焼器である。燃焼器10は、燃焼室11と、燃料噴出部12と、酸化剤噴出部13とを備える。また、燃焼器10は、火炎を検知する火炎検知部14を備える。
【0017】
燃焼室11は、燃料と酸化剤を燃焼させる筒体である。燃焼室11内には、火炎が形成される。
【0018】
燃料噴出部12は、燃焼室11内に燃料を噴出する。燃料噴出部12は、管状部材で構成される。この燃料噴出部12を構成する管状部材は、長手方向に所定の長さを有している。燃料噴出部12は、例えば、燃焼室11の一端に備えられる。具体的には、燃料噴出部12の一端(出口端)は、例えば、燃焼室11の一端に接続されている。
【0019】
酸化剤噴出部13は、燃焼室11内に酸化剤を噴出する。酸化剤噴出部13は、例えば、燃料噴出部12を構成する管状部材と、燃料噴出部12の外周を囲う管状部材との間の環状の流路によって構成される。酸化剤噴出部13は、燃料噴出部12と同様に、長手方向に所定の長さを有している。燃料噴出部12の外周を囲う管状部材は、例えば、燃焼室11の一端に備えられる。具体的には、燃料噴出部12の外周を囲う管状部材の一端(出口端)は、例えば、燃焼室11の一端に接続されている。
【0020】
上記した燃料噴出部12および酸化剤噴出部13は、例えば、二重管構造で構成され、中央から燃料が噴出され、燃焼の周囲から環状に酸化剤が噴出される。なお、燃料噴出部12および酸化剤噴出部13の構成は、一例であり、上記した構成に限られない。燃料噴出部12および酸化剤噴出部13の構成は、それぞれ別個に燃焼室11に燃料または酸化剤を噴出する構成であればよい。
【0021】
火炎検知部14は、火炎が形成されていることを検知する。なお、火炎検知部14は、火炎を検知できる検知器であればよく、検知方法は特に限定さない。
【0022】
燃料供給系統20は、燃料噴出部12に燃料を供給する。燃料供給系統20は、燃料供給源21と、燃料供給管22と、流量調整部23とを備える。
【0023】
燃料供給源21は、燃料供給管22に供給する燃料を蓄えている。燃料供給管22は、燃料供給源21と燃料噴出部12との間を連結し、燃料供給源21から供給された燃料を燃料噴出部12に供給する。
【0024】
流量調整部23は、燃料供給管22に介在し、燃料噴出部12に供給される燃料の流量を調整する。流量調整部23は、例えば、流量調整弁などで構成される。流量調整部23は、例えば、後述するパージ媒体供給管41が燃料供給管22に連結する連結部22aと燃料供給源21との間に設けられている。
【0025】
ここで、燃料噴出部12に供給される燃料の状態は、気体である。燃料の種類は、特に限定されない。燃料として、例えば、炭化水素、水素、アンモニアなどが例示できる。また、燃料として、例えば、これらのいくつかを混合した混合燃料などが例示できる。
【0026】
酸化剤供給系統30は、酸化剤噴出部13に酸化剤を供給する。酸化剤供給系統30は、酸化剤供給源31と、酸化剤供給管32と、流量調整部33とを備える。
【0027】
酸化剤供給源31は、酸化剤供給管32を介して酸化剤噴出部13に酸化剤を供給する。酸化剤が空気の場合、酸化剤供給源31は、例えば、ファン、ブロア、コンプレッサなどで構成される。酸化剤が酸素の場合、酸化剤供給源31は、例えば、高圧の酸素を貯留する酸素ボンベなどで構成される。酸化剤供給管32は、酸化剤供給源31と酸化剤噴出部13との間を連結し、酸化剤供給源31から供給された酸化剤を酸化剤噴出部13に供給する。
【0028】
流量調整部33は、酸化剤供給管32に介在し、酸化剤噴出部13に供給される酸化剤の流量を調整する。流量調整部33は、例えば、ダンパ、流量調整弁などで構成される。
【0029】
ここで、酸化剤として、空気が使用される。また、酸化剤として、酸素を使用してもよい。例えば、燃料として水素、酸化剤として酸素を使用した場合、燃焼ガスは水蒸気となる。
【0030】
酸化剤供給系統30は、
図1に示すように、後述するパージ媒体供給管41を流れるパージ媒体と酸化剤とを熱交換させる熱交換器34を備えてもよい。熱交換器34は、例えば、流量調整部33と酸化剤供給源31との間の酸化剤供給管32に備えられる。
【0031】
このような熱交換器34の配置構成は、パージ媒体の温度が酸化剤供給管32を流れる酸化剤の温度よりも高く、パージ媒体の温度を低下させたい場合に好適である。
【0032】
パージ媒体供給系統40は、燃料噴出部12に残存する燃料を除去するためのパージ媒体を燃料供給管22に供給する。パージ媒体供給系統40は、パージ媒体供給管41と、パージ媒体圧送部42と、流量調整部43とを備える。ここでは、パージ媒体として、燃焼器10における燃焼室11内の気体を利用する場合を例示する。
【0033】
ここで、燃焼室11内の気体を燃焼室内ガスと呼ぶ。なお、燃焼室内ガスには、燃焼室11内の気体以外にも、燃焼室11からの排気が通過する排気管内のガスも含まれる。燃焼状態においては、燃焼室内ガスは、燃料と酸化剤の燃焼によって生成された燃焼ガスである。消炎後においては、燃焼室内ガスは、空気を主とするガスである。
【0034】
パージ媒体供給管41は、燃料噴出部12に供給するためのパージ媒体を燃料供給管22に供給する。パージ媒体供給管41の一端は、燃焼室内ガスを導入できるように、例えば、燃焼室11内に挿入されている。なお、パージ媒体供給管41の一端は、例えば、燃焼室11から燃焼室内ガスを排出する排気管などに挿入されてもよい。パージ媒体供給管41の他端は、燃料供給管22に連結されている。
【0035】
パージ媒体供給管41は、パージ媒体と酸化剤との熱交換が可能なように熱交換器34を介在して構成されている。また、パージ媒体供給管41には、
図1に示すように、例えば、酸化剤供給管32から酸化剤の一部を導入する酸化剤供給分岐管35が連結されてもよい。
【0036】
酸化剤供給分岐管35を備える場合、酸化剤供給分岐管35の一端は、例えば、熱交換器34と連結部22aとの間のパージ媒体供給管41に連結される。酸化剤供給分岐管35の他端は、熱交換器34と酸化剤供給源31との間の酸化剤供給管32に連結される。酸化剤供給分岐管35には、パージ媒体供給管41に導入される酸化剤の流量を調整する流量調整部36が介在する。流量調整部36は、例えば、流量調整弁などで構成される。
【0037】
なお、ここでは、通常運転時において、燃焼器10において生成された燃焼ガスの一部を酸化剤に混合させる排ガス再循環(EGR)を利用した燃焼装置1を例示しているため、燃焼ガスを酸化剤供給管32に導入するEGR用配管37が設けられている。
【0038】
EGR用配管37の一端は、パージ媒体供給管41に連結され、EGR用配管37の他端は、酸化剤供給管32に連結されている。EGR用配管37には、酸化剤供給管32に導入される燃焼ガスの流量を調整する流量調整部38が介在する。流量調整部38は、例えば、流量調整弁などで構成される。
【0039】
流量調整部43は、燃料供給管22に供給される燃焼室内ガスの流量を調整する。流量調整部43は、例えば、流量調整弁などで構成される。流量調整部43は、EGR用配管37とパージ媒体供給管41との連結部41aと、熱交換器34との間のパージ媒体供給管41に介在する。
【0040】
パージ媒体圧送部42は、パージ媒体供給管41の一端から燃焼室内ガスを導入し、パージ媒体供給管41の他端から燃料供給管22に燃焼室内ガスを導出するための圧送機能を備える。パージ媒体圧送部42は、例えば、連結部41aよりも上流側のパージ媒体供給管41に介在する。パージ媒体圧送部42は、例えば、ファン、ブロアなどで構成される。
【0041】
制御装置50は、外部から入力された運転指令信号、火炎検知部14からの信号などに基づいて、例えば、燃料供給系統20の流量調整部23、酸化剤供給系統30の酸化剤供給源31、流量調整部33、パージ媒体供給系統40のパージ媒体圧送部42、流量調整部43、EGR用配管37の流量調整部38、酸化剤供給分岐管35の流量調整部36などを制御する。
【0042】
ここで、
図2は、第1の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置1において、運転を停止するための制御を実行する制御装置50の構成を示すブロック図である。
【0043】
図2に示すように、制御装置50は、入力部60、記憶部70、演算部75、出力部61を備える。
【0044】
入力部60は、制御パネルなどの外部入力手段からの入力信号、各種検知部などから検知信号を入力する。入力部60は、例えば、外部入力手段からの運転停止に係る信号、火炎検知部14などからの検知信号を入力する。
【0045】
記憶部70は、読み出し専用メモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などの記憶媒体で構成される。記憶部70は、パージ媒体供給記憶部71を備える。
【0046】
パージ媒体供給記憶部71は、例えば、パージ媒体を供給する際の流量調整部43、パージ媒体圧送部42、流量調整部33、36、38などを制御するためのデータを格納している。また、パージ媒体供給記憶部71は、例えば、燃焼装置1において運転を停止するための制御を実行するための各種プログラムや各種データなどを格納している。
【0047】
演算部75は、例えば、記憶部70に格納されたプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理や判定処理を実行する。演算部75は、パージ媒体供給判定部76、消炎判定部77を備える。
【0048】
パージ媒体供給判定部76は、入力信号に基づいて燃焼装置1において運転停止処理を実行するか否かを判定する。また、パージ媒体供給判定部76は、運転停止処理を実行する際、記憶部70に格納されたデータなどに基づいて、パージ媒体圧送部42、流量調整部33、36、38、43などを制御する。
【0049】
消炎判定部77は、火炎検知部14からの検知信号に基づいて、消炎したか否かを判定する。また、消炎判定部77は、消炎判定結果に基づいて、流量調整部23などを制御する。さらに、消炎判定部77は、火炎検知部14からの検知信号、流量調整部23の開度の情報などに基づいて、燃焼装置1の失火警報を出力する。
【0050】
出力部61は、例えば、パージ媒体供給判定部76からの制御信号を流量調整部43、パージ媒体圧送部42に出力する。また、出力部61は、失火警報に係る信号を、例えば、表示パネルやアラーム発信器などの外部機器に出力する。
【0051】
ここで、上記した制御装置50が実行する処理は、例えば、コンピュータ装置などで実現される。
【0052】
次に、燃焼装置1の作用について説明する。
【0053】
まず、定常運転時における燃焼装置1の作用について説明する。
【0054】
定常運転時において、燃料は、燃料供給管22を介して燃料噴出部12に供給される。酸化剤は、酸化剤供給管32を介して酸化剤噴出部13に供給される。また、排ガス再循環(EGR)を利用した燃焼装置1において、酸化剤供給管32には、EGR用配管37を介して燃焼ガスの一部が導入される。なお、この際、パージ媒体圧送部42は、EGR用配管37への燃焼ガスの圧送にも利用される。
【0055】
そして、燃焼室11内において、燃料噴出部12から噴出された燃料と酸化剤噴出部13から噴出された燃焼ガスを含む酸化剤が燃焼して火炎を形成する。
【0056】
なお、定常運転時において、パージ媒体供給管41の流量調整部43は閉じられている。また、酸化剤供給分岐管35を備える場合、定常運転時において、流量調整部36は閉じられている。
【0057】
次に、運転停止時における燃焼装置1の作用について説明する。
【0058】
ここで、
図3は、第1の実施の形態の燃焼装置1の運転停止方法を説明するためのタイムチャートである。
図4は、第1の実施の形態の燃焼装置1の運転停止方法を説明するためのフローチャートである。
【0059】
制御装置50のパージ媒体供給判定部76は、運転停止信号が入力されたか否かを判定する(ステップS10)。
【0060】
ステップS10の判定で、運転停止信号が入力されていないと判定した場合(ステップS10のNo)、パージ媒体供給判定部76は、再度ステップS10の判定を実行する。
【0061】
ステップS10の判定で、運転停止信号が入力されたと判定した場合(ステップS10のYes)、パージ媒体供給判定部76は、パージ媒体供給管41を介して燃料供給管22にパージ媒体を供給するための処理を実行する(ステップS11)。ここで、
図3において、時間t1は、パージ媒体供給管41を介して燃料供給管22にパージ媒体の供給を開始したときである。
【0062】
ステップS11において、パージ媒体供給判定部76は、パージ媒体供給記憶部71を参照して、流量調整部43の開度、パージ媒体圧送部42の回転数などを制御するための制御信号を出力部61に出力する。そして、出力部61は、その制御信号を流量調整部43、パージ媒体圧送部42に出力する。
【0063】
ステップS11の実行によって、
図3に示すように、時間t1からパージ媒体の供給が開始され、時間t2に規定流量のパージ媒体が燃料供給管22に供給される。燃料供給管22に供給されるパージ媒体の温度は、熱交換器34において酸化剤と熱交換することで低下する。パージ媒体は、燃料供給管22において燃料と混合して燃料噴出部12に供給される。すなわち、パージ媒体によって希釈された燃料が燃料噴出部12から噴出される。
【0064】
パージ媒体の規定流量は、燃焼室11内に形成されている火炎を消炎することができる流量に設定される。パージ媒体の規定流量は、例えば、燃焼室内ガスに含まれる酸素濃度に基づいて設定される。なお、酸素を含む燃焼室内ガスと燃料との混合によって混合気を形成するが、パージ媒体の規定流量は、この混合気における燃料濃度が爆発下限界を下回るように設定される。また、パージ媒体の規定流量は、燃料噴出部12から噴出される混合気の流速がこの混合気における燃焼速度よりも大きくなるように設定されてもよい。
【0065】
ここで、燃焼室11内において火炎が形成されているときにおいて、パージ媒体として燃焼室11内の気体を利用する場合におけるパージ媒体の酸素濃度は、例えば、パージ媒体として空気を使用する場合におけるパージ媒体の酸素濃度の1/5程度である。そのため、パージ媒体として燃焼室11内の気体を利用する場合は、パージ媒体として空気を使用する場合に比べて、燃料供給管22や燃料噴出部12において可燃性混合気が形成され難い。
【0066】
すなわち、パージ媒体の規定流量は、混合気における燃料濃度が爆発下限界を下回るように設定されるか、燃料噴出部12から噴出される混合気の流速がこの混合気における燃焼速度よりも大きくなるように設定されるかの少なくとも一方の条件を満たすように設定される。また、パージ媒体の規定流量は、上記の双方の条件を満たすように設定されてもよい。
【0067】
続いて、消炎判定部77は、火炎検知部14からの信号に基づいて、消炎したか否かを判定する(ステップS12)。
【0068】
ステップS12の判定で、消炎していないと判定した場合(ステップS12のNo)、火炎検知部14は、再度ステップS12の判定を実行する。
【0069】
ステップS12の判定で、消炎したと判定した場合(ステップS12のYes)、火炎検知部14は、燃料供給管22への燃料の供給を遮断するための処理を実行する(ステップS13)。
図3において、時間t3は、消炎判定部77が消炎したと判定したときである。また、消炎したとき(時間t3)に、燃焼装置1における出力は、ゼロになる。
【0070】
ステップS13の処理において、火炎検知部14は、燃料供給管22の流量調整部23を閉じるための制御信号を出力部61に出力する。そして、出力部61は、その制御信号を流量調整部23に出力する。
図3において、時間t4は、流量調整部23が閉じられたときである。
【0071】
ここで、消炎判定部77は、例えば、2秒程度のレスポンス時間で判定を実行している。消炎判定部77が消炎したと判定した場合、判定後レスポンス時間経過後に、例えば、流量調整部23が閉じられているか否かの判定を実行する。この判定において流量調整部23が閉じられていないと判定した場合、消炎判定部77は、失火警報を出力するための信号を出力部61へ出力する。そして、出力部61は、失火警報に係る信号を表示パネルやアラーム発信器などに出力する。
【0072】
ここでは、
図3に示す、消炎したと判定したとき(時間t3)から流量調整部23が閉じられるとき(時間t4)までの時間(時間t3から時間t4までの時間)は、レスポンス時間よりも短く設定される。これによって、消炎したと判定された後に流量調整部23が閉じられていない状態が存在しても、失火警報は出力されない。
【0073】
ここで、時間t3から時間t4までの間は、火炎が存在しない。また、時間t3から時間t4までの間は、火炎が存在しない状態で燃焼室11内に燃料が噴出される。そのため、パージ媒体は、微量の燃料が混合した空気となる。しかしながら、時間t3から時間t4までの間は短時間であり、パージ媒体に燃料が含まれても、燃料供給管22内を流れる混合気における燃料濃度は、爆発下限界を下回る。なお、消炎した以降(時間t3以降)も、規定流量のパージ媒体が燃料供給管22に供給されている。
【0074】
図3において、時間t4で流量調整部23が閉じられた後、燃料供給管22や燃料噴出部12に存在する燃料が噴出され、時間t5に燃焼室11に噴出される燃料の流量はゼロになる。また、燃料が存在しなくなる時間t5以降のパージ媒体は、空気となる。
【0075】
ここで、酸化剤供給分岐管35を備える場合、消炎後(時間t3後)において、流量調整部36を開き、酸化剤供給分岐管35を介して、酸化剤供給管32を流れる空気の一部をパージ媒体として燃料供給管22に供給してもよい。この場合、パージ媒体圧送部42による燃焼室11内からのパージ媒体の供給を停止してもよい。また、消炎後(時間t3後)において、EGR用配管37の流量調整部38を閉じてもよい。
【0076】
続いて、パージ媒体供給判定部76は、燃料の供給の遮断後、所定時間経過したか否かを判定する(ステップS14)。なお、パージ媒体供給判定部76は、時間をカウントする機能も備える。
【0077】
ステップS14の判定で、所定時間経過していないと判定した場合(ステップS14のNo)、パージ媒体供給判定部76は、再度ステップS14の判定を実行する。
【0078】
ステップS14の判定で、所定時間経過したと判定した場合(ステップS14のYes)、パージ媒体供給判定部76は、燃料供給管22へのパージ媒体の供給を停止するための処理を実行する(ステップS15)。ステップS15において、パージ媒体供給判定部76は、流量調整部43を閉じるための制御信号、パージ媒体圧送部42を停止するための制御信号を出力部61に出力する。そして、出力部61は、その制御信号を流量調整部43、パージ媒体圧送部42に出力する。
【0079】
図3に示すように、燃料の供給が遮断された後においても規定流量のパージ媒体は、パージ媒体供給管41を介して燃料供給管22、燃料噴出部12に供給されている。そして、燃料の供給の遮断後、所定時間経過したときにパージ媒体の供給が停止される。ここで、
図3において、時間t6は、燃料の供給の遮断後、所定時間経過したときである。すなわち、時間t6は、パージ媒体の供給が停止されたときである。
【0080】
なお、
図3において、時間t6で流量調整部43が閉じられた後、パージ媒体供給管41、燃料供給管22、燃料噴出部12に存在するパージ媒体が噴出され、時間t7に燃焼室11に噴出されるパージ媒体の流量はゼロになる。
【0081】
上記したように、第1の実施の形態の燃焼装置1の運転停止方法では、燃料の供給を遮断する前に、燃料供給管22にパージ媒体を供給して消炎することができる。
【0082】
消炎後においても、消炎させるときと同じ規定流量のパージ媒体が燃料供給管22、燃料噴出部12に供給されているため、パージ媒体と燃料の混合気における燃料濃度は爆発下限界を下回る。
【0083】
また、燃料の供給が遮断された後においても、消炎させるときと同じ規定流量のパージ媒体が燃料供給管22、燃料噴出部12に供給されているため、燃料が残存して混合気が形成されても、混合気における燃料濃度は爆発下限界を下回る。
【0084】
さらに、消炎後においてもパージ媒体を供給し続けることで、燃焼器10における、例えば、燃焼室11、燃料噴出部12、酸化剤噴出部13が冷却される。これによって、燃焼器10の構成部において着火源となる高温部が発生しないため、例えば、可燃性の混合気が形成されても着火しない。
【0085】
このように、第1の実施の形態の燃焼装置1の運転停止方法によれば、パージ処理中に残存燃料が着火することはなく、安全に運転停止処理を実行することができる。
【0086】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置2の構成を模式的に示した図である。なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置1と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0087】
第2の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置2は、パージ媒体として空気を使用するためパージ媒体供給系統40Aの構成が、第1の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置1におけるパージ媒体供給系統40の構成と異なる。そのため、ここでは、パージ媒体供給系統40Aの構成について主に説明する。なお、燃焼装置2においては、排ガス再循環(EGR)は利用されていない。
【0088】
図5に示すように、燃焼装置2は、燃焼器10と、燃料供給系統20と、酸化剤供給系統30Aと、パージ媒体供給系統40Aと、制御装置50とを備える。
【0089】
燃焼器10および燃料供給系統20は、第1の実施の形態において説明したとおりである。酸化剤供給系統30Aは、熱交換器34を備えない以外は、第1の実施の形態における酸化剤供給系統30と同じである。
【0090】
パージ媒体供給系統40Aは、燃料噴出部12に残存する燃料を除去するためのパージ媒体を燃料供給管22に供給する。パージ媒体供給系統40Aは、パージ媒体供給管80と、流量調整部81とを備える。ここでは、パージ媒体として、空気を利用する場合を例示する。パージ媒体としての空気は、酸化剤供給源31から酸化剤供給管32に供給される空気を利用する。
【0091】
パージ媒体供給管80は、燃料噴出部12に供給するためのパージ媒体を燃料供給管22に供給する。パージ媒体供給管80の一端は、酸化剤供給源31と流量調整部33との間の酸化剤供給管32に連結されている。パージ媒体供給管80の他端は、流量調整部23と燃料噴出部12との間の燃料供給管22に連結されている。
【0092】
流量調整部81は、燃料供給管22に供給される空気の流量を調整する。流量調整部81は、パージ媒体供給管80に介在する。流量調整部81は、例えば、流量調整弁などで構成される。
【0093】
制御装置50は、外部から入力された運転指令信号、火炎検知部14からの信号などに基づいて、例えば、燃料供給系統20の流量調整部23、酸化剤供給系統30Aの酸化剤供給源31、流量調整部33、パージ媒体供給系統40Aの流量調整部81などを制御する。
【0094】
なお、制御装置50の構成は、
図2に示したとおりである。ここで、パージ媒体供給記憶部71は、例えば、パージ媒体を供給する際の流量調整部81、酸化剤供給源31などを制御するためのデータを格納している。また、パージ媒体供給記憶部71は、例えば、燃焼装置2において運転を停止するための制御を実行するための各種プログラムや各種データなどを格納している。
【0095】
パージ媒体供給判定部76は、運転停止処理を実行する際、記憶部70に格納されたデータなどに基づいて、流量調整部81、酸化剤供給源31などを制御する。なお、消炎判定部77については、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0096】
出力部61は、例えば、パージ媒体供給判定部76からの制御信号を流量調整部81、酸化剤供給源31に出力する。
【0097】
次に、燃焼装置2の作用について説明する。
【0098】
まず、定常運転時における燃焼装置1の作用について説明する。
【0099】
定常運転時において、燃料は、燃料供給管22を介して燃料噴出部12に供給される。酸化剤は、酸化剤供給管32を介して酸化剤噴出部13に供給される。そして、燃焼室11内において、燃料噴出部12から噴出された燃料と酸化剤噴出部13から噴出された酸化剤が燃焼して火炎を形成する。なお、定常運転時において、パージ媒体供給管80の流量調整部81は閉じられている。
【0100】
次に、運転停止時における燃焼装置2の作用について説明する。
【0101】
ここでは、第1の実施の形態における運転停止時における燃焼装置1の作用と異なる作用について主に説明する。なお、燃焼装置2の運転停止方法を説明するためのタイムチャートおよびフローチャートは、燃焼装置1の運転停止方法を説明するためのそれらと同じであるため、
図3および
図4を参照して説明する。
【0102】
ステップS10の判定で、パージ媒体供給判定部76が運転停止信号が入力されたと判定した場合(ステップS10のYes)、パージ媒体供給判定部76は、パージ媒体供給管80を介して燃料供給管22にパージ媒体を供給するための処理を実行する(ステップS11)。ここで、
図3において、時間t1は、パージ媒体供給管80を介して燃料供給管22にパージ媒体の供給を開始したときである。
【0103】
ステップS11において、パージ媒体供給判定部76は、パージ媒体供給記憶部71を参照して、流量調整部81の開度、酸化剤供給源31から供給される空気流量などを制御するための制御信号を出力部61に出力する。そして、出力部61は、その制御信号を流量調整部81、酸化剤供給源31に出力する。なお、パージ媒体の供給の開始後は、酸化剤供給源31からの空気の供給は増加する。
【0104】
ステップS11の実行によって、
図3に示すように、時間t1からパージ媒体の供給が開始され、時間t2に規定流量のパージ媒体が燃料供給管22に供給される。パージ媒体は、燃料供給管22において燃料と混合して燃料噴出部12に供給される。すなわち、パージ媒体によって希釈された燃料が燃料噴出部12から噴出される。
【0105】
パージ媒体の規定流量は、燃焼室11内に形成されている火炎を消炎することができる流量に設定される。なお、空気と燃料との混合によって混合気を形成するが、パージ媒体の規定流量は、この混合気における燃料濃度が爆発下限界を下回るように設定される。また、パージ媒体の規定流量は、燃料噴出部12から噴出される混合気の流速がこの混合気における燃焼速度よりも大きくなるように設定されてもよい。
【0106】
すなわち、パージ媒体の規定流量は、混合気における燃料濃度が爆発下限界を下回るように設定されるか、燃料噴出部12から噴出される混合気の流速がこの混合気における燃焼速度よりも大きくなるように設定されるかの少なくとも一方の条件を満たすように設定される。また、パージ媒体の規定流量は、上記の双方の条件を満たすように設定されてもよい。
【0107】
ステップS14において、パージ媒体供給判定部76は、燃料の供給の遮断後、所定時間経過したか否かを判定する(ステップS14)。
【0108】
ステップS14の判定で、所定時間経過したと判定した場合(ステップS14のYes)、パージ媒体供給判定部76は、燃料供給管22へのパージ媒体の供給を停止するための処理を実行する(ステップS15)。ステップS15において、パージ媒体供給判定部76は、流量調整部81を閉じるための制御信号、酸化剤供給源31からの空気の供給を停止するための制御信号を出力部61に出力する。そして、出力部61は、その制御信号を流量調整部81、酸化剤供給源31に出力する。
【0109】
図3に示すように、燃料の供給が遮断された後においても規定流量のパージ媒体は、パージ媒体供給管80を介して燃料供給管22、燃料噴出部12に供給されている。そして、燃料の供給の遮断後、所定時間経過したときにパージ媒体の供給が停止される。
【0110】
上記したように、第2の実施の形態の燃焼装置2の運転停止方法では、第1の実施の形態の燃焼装置1の運転停止方法と同様の作用効果が得られる。すなわち、燃料の供給を遮断する前に、燃料供給管22にパージ媒体を供給して消炎することができる。
【0111】
消炎後においても、消炎させるときと同じ規定流量のパージ媒体が燃料供給管22、燃料噴出部12に供給されているため、パージ媒体と燃料の混合気における燃料濃度は爆発下限界を下回る。
【0112】
また、燃料の供給が遮断された後においても、消炎させるときと同じ規定流量のパージ媒体が燃料供給管22、燃料噴出部12に供給されているため、燃料が残存して混合気が形成されても、混合気における燃料濃度は爆発下限界を下回る。
【0113】
さらに、消炎後においてもパージ媒体を供給し続けることで、燃焼器10の構成部において着火源となる高温部が発生しないため、例えば、可燃性の混合気が形成されても着火しない。
【0114】
このように、第2の実施の形態の燃焼装置2の運転停止方法によれば、パージ処理中に残存燃料が着火することはなく、安全に運転停止処理を実行することができる。
【0115】
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置3の構成を模式的に示した図である。
【0116】
第3の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置3は、第2の実施の形態の運転停止方法を採用する燃焼装置2におけるパージ媒体を不活性ガスとする構成を備えている。燃焼装置3のその他の構成は、燃焼装置2の構成と同じである。ここでは、不活性ガスをパージ媒体として供給するパージ媒体供給系統40Bの構成について主に説明する。
【0117】
図6に示すように、燃焼装置3は、燃焼器10と、燃料供給系統20と、酸化剤供給系統30Aと、パージ媒体供給系統40Bと、制御装置50とを備える。
【0118】
燃焼器10および燃料供給系統20は、第1の実施の形態において説明したとおりである。酸化剤供給系統30Aは、第2の実施の形態において説明したとおりである。
【0119】
パージ媒体供給系統40Bは、燃料噴出部12に残存する燃料を除去するためのパージ媒体を燃料供給管22に供給する。パージ媒体供給系統40Bは、パージ媒体供給源90と、パージ媒体供給管91と、流量調整部92とを備える。パージ媒体は、不活性ガスである。不活性ガスとして、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが使用できる。なお、これらの不活性ガスにおいて、例えば、窒素ガスは安価であるという利点がある。ここでは、パージ媒体として、窒素ガスを使用した場合を例示して説明する。
【0120】
パージ媒体供給源90は、パージ媒体供給管91を介して燃料供給管22に窒素ガスを供給する。パージ媒体供給源90は、例えば、高圧の窒素を貯留する窒素ボンベなどで構成される。
【0121】
パージ媒体供給管91は、燃料噴出部12に供給するためのパージ媒体を燃料供給管22に供給する。パージ媒体供給管91の一端は、流量調整部23と燃料噴出部12との間の燃料供給管22に連結されている。パージ媒体供給管91の他端は、パージ媒体供給源90に連結されている。
【0122】
流量調整部92は、燃料供給管22に供給される窒素ガスの流量を調整する。流量調整部92は、パージ媒体供給管91に介在する。流量調整部92は、例えば、流量調整弁などで構成される。
【0123】
制御装置50は、外部から入力された運転指令信号、火炎検知部14からの信号などに基づいて、例えば、燃料供給系統20の流量調整部23、酸化剤供給系統30Aの酸化剤供給源31、流量調整部33、パージ媒体供給系統40Bの流量調整部92などを制御する。
【0124】
なお、制御装置50の構成は、
図2に示したとおりである。ここで、パージ媒体供給記憶部71は、例えば、パージ媒体を供給する際の流量調整部92などを制御するためのデータを格納している。また、パージ媒体供給記憶部71は、例えば、燃焼装置3において運転を停止するための制御を実行するための各種プログラムや各種データなどを格納している。
【0125】
パージ媒体供給判定部76は、運転停止処理を実行する際、記憶部70に格納されたデータなどに基づいて、流量調整部92などを制御する。なお、消炎判定部77については、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0126】
出力部61は、例えば、パージ媒体供給判定部76からの制御信号を流量調整部92に出力する。
【0127】
次に、燃焼装置3の作用について説明する。
【0128】
まず、定常運転時における燃焼装置3の作用について説明する。
【0129】
定常運転時において、燃料は、燃料供給管22を介して燃料噴出部12に供給される。酸化剤は、酸化剤供給管32を介して酸化剤噴出部13に供給される。そして、燃焼室11内において、燃料噴出部12から噴出された燃料と酸化剤噴出部13から噴出された酸化剤が燃焼して火炎を形成する。なお、定常運転時において、パージ媒体供給管91の流量調整部92は閉じられている。
【0130】
次に、運転停止時における燃焼装置3の作用について説明する。
【0131】
ここでは、第1の実施の形態における運転停止時における燃焼装置1の作用と異なる作用について主に説明する。なお、燃焼装置3の運転停止方法を説明するためのタイムチャートおよびフローチャートは、燃焼装置1の運転停止方法を説明するためのそれらと同じであるため、
図3および
図4を参照して説明する。
【0132】
ステップS10の判定で、パージ媒体供給判定部76が運転停止信号が入力されたと判定した場合(ステップS10のYes)、パージ媒体供給判定部76は、パージ媒体供給管91を介して燃料供給管22にパージ媒体を供給するための処理を実行する(ステップS11)。ここで、
図3において、時間t1は、パージ媒体供給管91を介して燃料供給管22にパージ媒体の供給を開始したときである。
【0133】
ステップS11において、パージ媒体供給判定部76は、パージ媒体供給記憶部71を参照して、流量調整部92の開度などを制御するための制御信号を出力部61に出力する。そして、出力部61は、その制御信号を流量調整部92に出力する。
【0134】
ステップS11の実行によって、
図3に示すように、時間t1からパージ媒体の供給が開始され、時間t2に規定流量のパージ媒体が燃料供給管22に供給される。パージ媒体は、燃料供給管22において燃料と混合して燃料噴出部12に供給される。すなわち、パージ媒体によって希釈された燃料が燃料噴出部12から噴出される。
【0135】
パージ媒体の規定流量は、燃焼室11内に形成されている火炎を消炎することができる流量に設定される。なお、窒素ガスと燃料との混合によって混合気を形成するが、この混合気は酸化剤が含まれないため可燃性の混合気は形成しない。
【0136】
ここで、パージ処理中において、周囲の空気が燃料噴出部12の噴出孔から内部に入り込まないことが好ましい。パージ媒体の規定流量は、例えば、燃料噴出部12から噴出される混合気の流速が燃料の空気中における最大燃焼速度よりも大きくなるように設定されてもよい。
【0137】
ステップS14において、パージ媒体供給判定部76は、燃料の供給の遮断後、所定時間経過したか否かを判定する(ステップS14)。
【0138】
ステップS14の判定で、所定時間経過したと判定した場合(ステップS14のYes)、パージ媒体供給判定部76は、燃料供給管22へのパージ媒体の供給を停止するための処理を実行する(ステップS15)。ステップS15において、パージ媒体供給判定部76は、流量調整部92を閉じるための制御信号を出力部61に出力する。なお、この際、パージ媒体供給判定部76は、酸化剤供給源31からの空気の供給を停止するための制御信号を出力部61に出力する。そして、出力部61は、その制御信号を流量調整部92に出力する。
【0139】
図3に示すように、燃料の供給が遮断された後においても規定流量のパージ媒体は、パージ媒体供給管91を介して燃料供給管22、燃料噴出部12に供給されている。そして、燃料の供給の遮断後、所定時間経過したときにパージ媒体の供給が停止される。
【0140】
上記したように、第3の実施の形態の燃焼装置3の運転停止方法では、燃料の供給を遮断する前に、燃料供給管22にパージ媒体を供給して消炎することができる。
【0141】
消炎後においても、消炎させるときと同じ規定流量のパージ媒体が燃料供給管22、燃料噴出部12に供給されているため、燃料が供給されていても、燃料供給管22、燃料噴出部12内において可燃性の混合気は形成されない。
【0142】
また、燃料の供給が遮断された後においても、消炎させるときと同じ規定流量のパージ媒体が燃料供給管22、燃料噴出部12に供給されているため、燃料が残存しても、燃料供給管22、燃料噴出部12内において可燃性の混合気は形成されない。
【0143】
さらに、消炎後においてもパージ媒体を供給し続けることで、燃焼器10における、例えば、燃焼室11、燃料噴出部12、酸化剤噴出部13が冷却される。これによって、燃焼器10の構成部において着火源となる高温部が発生しないため、例えば、燃料噴出部12の噴出孔から内部に空気が入り込んで可燃性の混合気が形成されても着火しない。
【0144】
このように、第3の実施の形態の燃焼装置3の運転停止方法によれば、パージ処理中に残存燃料が着火することはなく、安全に運転停止処理を実行することができる。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
1、2、3…燃焼装置、10…燃焼器、11…燃焼室、12…燃料噴出部、13…酸化剤噴出部、14…火炎検知部、20…燃料供給系統、21…燃料供給源、22…燃料供給管、22a、41a…連結部、23、33、36、38、43、81、92…流量調整部、30、30A…酸化剤供給系統、31…酸化剤供給源、32…酸化剤供給管、34…熱交換器、35…酸化剤供給分岐管、37…EGR用配管、40、40A、40B…パージ媒体供給系統、41、80、91…パージ媒体供給管、42…パージ媒体圧送部、50…制御装置、60…入力部、61…出力部、70…記憶部、71…パージ媒体供給記憶部、75…演算部、76…パージ媒体供給判定部、77…消炎判定部、90…パージ媒体供給源。